十二指腸虫が人体に寄生することで引き起こされる寄生虫病
十二指腸虫症とは、線虫類に属する十二指腸虫、すなわち鉤虫(こうちゅう)の幼虫が口や皮膚から人体に入り、成虫となって引き起こす寄生虫病。鉤虫症とも呼ばれます。
人間に寄生する鉤虫には、ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫などがあり、口に当たる部分に歯のような器官を持ち、これで小腸粘膜に食いついて血液、および体液を養分として摂取します。大きさは、体長1センチ前後のものがよくみられます。
今の日本では輸入感染症と考えてよく、国内で感染する例はほとんどありません。世界的にみれば、熱帯から亜熱帯の湿潤な地方には鉤虫が広く分布しているので、これらの地域の農村部に仕事や旅行で滞在する時には注意が必要です。
人体の小腸粘膜などにいる成虫から産卵された卵は、糞便(ふんべん)とともに外界に排出され、野菜類などの表面に幼虫として付着しています。ズビニ鉤虫では、野菜を食べることで口から体内に入り、アメリカ鉤虫では、土壌中にいる幼虫が皮膚から人体に移り、1〜2カ月で成熟して小腸上部に寄生します。小腸の一部である十二指腸への寄生は、あまり多くありません。十二指腸虫という名称は、たまたま十二指腸で発見されたことに由来しています。
初期の症状は2〜3日の潜伏期間をへて、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、咽頭(いんとう)の異物感、ぜんそく様発作などが現れます。後期の症状は1〜2カ月の潜伏期間をへて、小腸粘膜から鉤虫に血液などを摂取されるために、鉄欠乏性の貧血、めまいなどが現れます。重症になると、動悸(どうき)、全身倦怠(けんたい)感、頭痛、手足のむくみなどが現れ、まれに毛髪、土、炭など異常な物を食べる異味症が現れることもあります。
鉤虫の寄生数が少ない場合は、目立った症状が現れないこともあります。
十二指腸虫症の検査と診断と治療
南米やアフリカ、インド、中国、東南アジアなどの流行地の農村にある程度の期間滞在したことがあり、帰国して1〜2カ月の間に動悸、息切れ、めまいなどの貧血症状があるなら、この十二指腸虫症、すなわち鉤虫症も疑って医療機関を受診し、そのことを医師に伝えます。
医師による診断では、抗体検査も有効ですが、糞便の検査で虫卵を見付けることで確定します。
診断がついたら、駆虫剤のコンバントリン(成分はパモ酸ピランテル)を内服すれば治ります。鉄欠乏の程度がひどい時は、鉄剤も内服します。少数寄生では症状もなく、反復感染しなければ自然に治ります。
寄生虫病は日本では珍しくなったので、医師が的確に診断できないことも十分考えられますので、たかが寄生虫と考えず、感染しないための予防にも注意する必要があります。海外の流行地に滞在する際は、野菜、特に葉野菜によって感染するケースが多いため、きれいに洗ってあるもの以外は口にしないことです。南米や中米、アメリカ、メキシコなどにいるアメリカ鉤虫は皮膚からも感染しますので、裸足は禁物。
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