性感染症の1つである梅毒の今年の感染者数が23日までに全国で1万141人に達し、現在の調査方法となった1999年以降、初めて1万人を超えました。最多だった昨年の7983人を上回り、9月に過去最多を更新したばかりでした。全国の報告数(速報値)は、東京都感染症情報センターが27日に公開した国の集計結果から判明しました。
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌が、性行為などによって性器や口などの粘膜から侵入して感染します。感染後2~3週間で性器などに赤みやしこりができます。2~3カ月後には手のひらや腹部など全身に発疹が出ますが、痛みやかゆみがないことがほとんどです。症状の出方は多様で、こうした症状は数週間から数カ月で自然に消えることがありますが、治ったわけではなく感染は続いています。
抗菌薬を4週間飲み続けるか、1回注射することで治療可能ですが、治っても何度も感染することがあります。発疹をアレルギーや風疹などと間違えることがあり、梅毒感染に気付かず放置すると、数年から十数年をかけて、脳や心臓、神経などを侵し、重大な合併症を引き起こして命を落とすこともあります。コンドームの使用で感染のリスクを下げられます。
戦後間もない時期には20万人以上の梅毒患者がいたとされます。抗菌薬の普及で大幅に減ったものの、2010年代に増え始め、2018年をピークに減少に転じた後、再び急増。昨年の7983人が、1999年以降で最多でした。
近年の増加傾向の原因は不明ですが、ネット交流サービス(SNS)やマッチングアプリを介した不特定多数との性交渉の増加が背景にあると指摘する声もあります。
日本性感染症学会理事の重村克巳・神戸大准教授は、「10カ月で1万人を超えるとは予想を超えるハイペースだ。陰部やのどの赤みなど疑われる症状があれば、すぐに受診してほしい」と呼び掛けています。
2022年10月27日(木)
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