感染力が非常に強いはしか(麻疹)の流行が、4年ぶりに懸念されています。新型コロナウイルスの5類感染症への移行で海外との往来が復活する中、感染者の報告が相次いでいます。専門家によると、はしかは潜伏期間が10日~12日と長く、ほかの感染症との区別が難しいため、発見が遅れるケースもあります。
国立感染症研究所が発表した6月7日までの感染症発生動向調査週報によると、2023年第1週からの累計は東京都で5人のほか、大阪府で3人、兵庫県で2人、千葉県、茨城県、神奈川県、北海道でそれぞれ1人で、合わせて14人が感染しました。
日本は2015年に土着の麻疹ウイルスの排除に成功したものの、海外からの流入の影響で4年前の2019年には全国で744人が感染しました。百貨店などで集団感染が発生した大阪府は感染者が全国最多の149人となりました。
はしかは、麻疹ウイルスに感染して起こる感染症で、発熱や発疹などが主な症状となります。免疫をつけるためには、1歳と小学校入学前の計2回の予防接種「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)」が必要とされます。
はしかは季節性インフルエンザの10倍ともいわれるほど感染力が強く、空気感染するため、手洗いやマスクのみで予防ができず、予防接種が最も有効な予防法とし、厚生労働省は、海外渡航を計画している成人や、はしかの罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合は、予防接種を検討するよう呼び掛けています。
宮城大看護学群の風間逸郎教授(病態生理学)によると、典型的なはしかの経過は、初期が「カタル期」と呼ばれ、鼻水や熱、せきなどの症状が出て、頰粘膜に白い斑点「コプリック斑」が現れることがあります。その後にいったん解熱するものの、「発疹期」になると全身性の発疹や高熱が出現し、カタル期の症状が強くなることもあります。これらの症状は3日程度持続した後、やがて改善し「回復期」に向かうといいます。
風間教授は、「初期のカタル期は風邪の症状に似ているために見過ごされる可能性がある」と明かし、発疹についてもはしかの場合、発疹同士が融合することが特徴で、1回だけのワクチン接種など、はしかに対する免疫が不完全な人が発症する軽症で典型的な症状が出現しない不全型の「修飾麻疹」の場合には、風疹などとの鑑別が難しくなると指摘しています。
ほかにも、発疹が出る「りんご病(伝染性紅斑)」や、2歳以下でかかることが多い「突発性発疹」、薬の内服や注射によって起きる「薬疹」などとも間違われやすいといいます。こうしたことから、はしかの見落としを防ぐため、医療機関では麻疹特異的IgM抗体などの血清抗体価の測定や、行政ではPCRなどの遺伝子検査が求められています。
厚労省は、はしかの疑いがある場合、かかりつけ医または医療機関に電話などで伝え、受診の要否や注意点を確認してから指示に従うことを求めています。また、周囲への感染を広げないため、医療機関に移動する時は、必ずマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り、避けるよう呼び掛けています。
2023年6月13日(火)
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