内臓脂肪による肥満が新型コロナウイルス感染症の重症化リスクになっていることを人やマウスで確かめたと、東京医科歯科大などのチームが5月25日、発表しました。論文が5月22日、アメリカの「科学アカデミー紀要」に掲載されました。
内臓脂肪の蓄積はメタボリック症候群の診断基準の一つで、内臓脂肪の過度な蓄積による肥満は、日本などアジアの人に多いとされます。新型コロナに感染すると、肥満のほか、高齢や糖尿病などが重症化リスクになるといわれているものの、詳しいメカニズムはわかっていません。
チームが、同大学病院に入院した感染者250人の症状を調べると、内臓脂肪の量が一定以上の人は重症化する傾向がみられました。チームは肥満との関連性を確かめようと、遺伝的に内臓脂肪が多いマウスと正常なマウスを約10匹ずつ使い、新型コロナに感染させて症状を比較する実験を行いました。
その結果、内臓脂肪の多い肥満の個体は7日後にすべて死んだのに対して、正常な個体は10日後もすべて生存していました。内臓脂肪の多い個体でも、食欲を抑えるホルモンを投与して肥満を改善すると生存率が上昇したといいます。
チームは、内臓脂肪が多い人は体内の免疫細胞が変化し、免疫が暴走する「サイトカインストーム」が悪化しやすいとみています。
同大の保田晋助教授( 膠原(こうげん)病・リウマチ内科学)は、「高齢者だけでなく、肥満の人も感染対策が必要だ。健康的な生活習慣が、新型コロナ重症化リスクの軽減につながる可能性がある」と話しています。
白川純・群馬大教授(代謝・内分泌学)は、「これまで不明だった肥満によって重症化するメカニズムの一端を示した重要な成果だ」と評価しています。
2023年6月1日(木)
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