8月中旬、国立感染症研究所の研究者がチフス菌に感染した問題について、研究所は29日に、感染は実験室で起きたとみられると発表しました。研究所は、実験室での病原体の扱いについて、緊急の点検を行うなどして再発防止に努めるとしています。
国立感染症研究所は、チフス菌の検査などの業務に当たっていた研究者が、8月11日に医療機関を受診して入院し、15日に腸チフスと診断された問題について、29日に感染の経路などを安全監視委員会が調査した報告書を発表しました。安全監視委員会は外部有識者らで構成され、問題発覚後、研究所に立ち入り調査しました。
報告書によりますと、研究者から検出されたチフス菌と、研究所で取り扱っていたチフス菌の遺伝子を比較した結果などから、施設が原因の可能性は低く、感染は実験室内で起きたとみられるとしています。
感染した原因は特定できなかったとしていますが、感染を防ぐための防護服の脱着や除染についてのマニュアルが作成されていなかったことや、病原体を取り扱う区域と、それ以外の区域が明確に分けられていなかったことなどが、感染につながったと考えられるとしています。
研究者は20年以上病原体を扱うベテランだといい、報告書は「そのような者が無意識のうちに発症した事実は極めて深刻だ」と指摘しました。研究者は回復しつつあるが、今も入院中。
チフス菌などを扱うレベルの実験室は、研究所自身や外部による監査の対象となっていないということで、研究所は、実験室での病原体の扱い方について緊急の点検を行うとともに、実験室の使用マニュアルを作成するなどして、再発防止を図ることにしています。
国立感染症研究所の脇田隆字所長は、「感染研の近隣住民を始め、国民からの信頼を損ないかねない極めて重大な事故である。病原体等を取り扱うすべての職員が、再発防止策の迅速な実施に最大限努力する」とコメントしています。
2023年9月30日(土)
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