水俣病特別措置法に基づく救済策の対象外となった13府県に住む原告128人全員を水俣病と認め、国や熊本県、原因企業チッソに賠償を命じた大阪地方裁判所の判決を不服として、国と熊本県は10日、大阪高等裁判所に控訴しました。いずれも「過去の判決と大きな相違がある」などと理由を説明しました。控訴期限は11日で、チッソは4日付ですでに控訴しています。
国は、今回の判決を受け入れれば、感覚障害とほかの症状の組み合わせを原則とした1977年判断条件による患者認定の枠組みに影響を与えかねないと判断。新潟、東京、熊本の各地裁で同種の訴訟が係争中であることも考慮したとみられます。
環境省で記者団の取材に応じた伊藤信太郎環境相は大阪地裁判決について、世界保健機関(WHO)の基準値を下回るメチル水銀の濃度でも水俣病発症を認めているなどと指摘。「これまでの国際的な科学的知見や最高裁判決の内容と大きく異なる」として、高裁の判断を仰ぐ必要があることを控訴理由に挙げた。熊本県の蒲島郁夫知事も、「過去の判決と大きな相違があると判断した。苦渋の決断だ」と説明しました。
2009年に施行された特措法は約3万8000人を新たな救済対象とし、一時金を支給するなどしました。一方で原則として、水俣病に関しては不知火海(八代海)周辺の熊本、鹿児島両県の9市町の沿岸部などに居住歴があり、チッソがメチル水銀排出を止めた翌年の1969年11月末までに生まれた人などに限定した。
大阪地裁判決は、特措法の対象の地域や年代から外れた人でも、メチル水銀に汚染された魚介類を多食すれば発症する可能性があると指摘。水銀暴露から長期間が経過した後に発症する遅発性水俣病の存在を認めました。
2023年10月10日(火)
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