アメリカ食品医薬品局(FDA)は8日、アメリカのイーライ・リリーの肥満症治療薬「ゼプバウンド」(一般名:チルゼパチド)を新薬として承認しました。この薬はアメリカで2型糖尿病の治療薬として承認を受け、「マンジャロ」の商品名で販売しています。減量への効果から、肥満症向けに適用外で使用する例が増えていました。今回、肥満症薬として正式に承認されたことで、利用がさらに広がりそうです。
ゼプバウンドはホルモンに働き掛けてインスリンの分泌を促す新しいタイプの肥満症薬です。アメリカで2021年に承認されたデンマークのノボ・ノルディスクの「ウゴービ」と似た仕組みで、血糖値を下げたり、食欲を抑えたりする作用があります。
ゼプバウンドは週1回の注射で投与します。高血圧、2型糖尿病、高コレステロールなど少なくとも1つの体重関連疾患を有する肥満または過体重の人を適用対象としています。
イーライ・リリーの発表によると、肥満または過体重の患者2539人(平均体重105キログラム)が参加したゼプバウンドの後期臨床試験(治験)で、食事療法や運動と組み合わせた72週間の治療の結果、最も多い用量(15ミリグラム)を投与したグループでは平均21・8キログラムの減量効果がありました。
最も少ない用量(5ミリグラム)を投与したグループでも、平均15キログラムの減量効果がありました。偽薬(プラセボ)のグループでは体重の減少は平均で3キログラム程度でした。
FDAによると、ゼプバウンドの既知の副作用には、吐き気、下痢、嘔吐(おうと)、便秘、腹部の不快感や痛み、注入部位反応、倦怠(けんたい)感、アレルギー反応、げっぷ、脱毛、胃食道逆流症などがあります。
イーライ・リリーはゼプバウンドの薬価を1回の投与につき1059・87ドル(約16万円)と設定しました。6種類の用量を提供します。
成人の約70%が肥満か過体重に相当するアメリカでは、減量効果が高い新しいタイプの治療薬の需要が急拡大しています。ウゴービやマンジャロは発売以来、供給が追い付かず、品不足の問題がたびたび報告されてきました。アメリカのモルガン・スタンレー・リサーチは同薬の世界市場が2030年に770億ドルに達すると予想しています。
イーライ・リリーが11月に発表した2023年1〜9月期決算では、マンジャロの売上高は29億5800万ドルと前年同期の2億300万ドルから急増しました。
2023年11月10日(金)
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