医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京都千代田区)が2018年から2022年度に自社製品を販売した全国42の医療機関・大学と医師37人に対し、実態のない「市販後調査(PMS)」の謝礼名目などで現金計約1億2000万円を提供していたことが、業界団体「医療機器業公正取引協議会」の調査で明らかになりました。販売促進のためだったといい、業者から医師への不透明な資金提供の構図が浮き彫りになりました。
ゼオンメディカルを巡っては、昨年9〜10月、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医療機器の選定・使用に絡み、市販後調査の謝礼名目で担当医師に約320万円の賄賂を贈ったとして、元社長の柳田昇被告(68)が警視庁に贈賄容疑で逮捕され、その後、起訴されています。
公取協は事件を受け、今年3〜6月ごろゼオンメディカルへの調査を実施。ゼオンメディカルが医療機器を販売後、安全性や品質などを検証する市販後調査に協力した謝礼などの名目で、病院や医師らに資金を提供していたことが判明しました。市販後調査に実態はなく、ゼオンメディカル社内では製品の売り上げを伸ばす手法として「見なしPMS」と呼ばれていました。
資金提供は2018〜2022年度に39の医療機関で141件(約3700万円)、国立大を含む3大学で3件(約100万円)確認されました。このうち10医療機関は公立や独立行政法人運営の病院で、2大学は国立大学だったといいます。
医師への資金提供も、37人に計220件(約8100万円)確認されました。このうち5人は公的病院に勤務していましたが、警視庁は収賄容疑で逮捕・起訴された国立がん研究センター東病院の医師以外の4人については、雇用形態や<ins></ins>勤務実態を踏まえ、収賄容疑での立件は難しいと判断したとみられます。
公取協は医療機器の販売方法について、消費者庁と公正取引委員会の認定を受けた規約を定めている業界団体。医師や医療機関への資金提供は、相手が民間病院の医師であれば贈収賄罪に当たらないものの、不当な顧客の誘い込みを規制する景品表示法に抵触する恐れがあり、公取協は26日午前、悪質な規約違反に当たるとして、ゼオンメディカルに厳重警告しました。
ゼオンメディカルは東証プライム上場の化学メーカー「日本ゼオン」の子会社。民間信用調査会社によると、主に消化器系と循環器系の医療機器を製造販売し、昨年3月期の売上高は38億円。
2024年8月26日(月)
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