アスベスト(石綿)を扱う工場で働き、じん肺を患ったとして元労働者の遺族が訴えた裁判で、国に賠償を命じた2審の判決について国は上告せず確定しました。これを受けて厚生労働省は被害者が賠償金を請求できる開始時期を見直し、これまでより遅くなっても受け取れるようにしました。
アスベストを扱う工場で働き1999年にじん肺と診断され、翌年、労働局から健康被害を認定された兵庫県尼崎市の男性の遺族が国に約600万円の賠償を求めた裁判では、20年が過ぎると賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」の起算点について争われました。
遺族側は「行政が健康被害を認定した時」だと主張したのに対し、国はこれよりも早い「医師の診断日」が起算点になり、尼崎市の男性の場合、権利は消滅していると主張しましたが、4月、2審の大阪高等裁判所は遺族側の訴えを認める判決を言い渡しました。
厚労省は期限の5月1日までに最高裁判所に上告せず、この判決が確定しました。
そして、アスベストを扱う工場で働きじん肺になった人について「除斥期間」の起算点を見直し、これまでよりも遅い時期で、行政がじん肺の症状の重さなどを区分する「じん肺管理区分」を決定した日を新たな起算点とし、この日から20年以内であれば賠償金を受け取ることができるようにしました。
厚労省は、「慎重に検討を重ねた上、関係省庁とも協議した結果、最高裁への上告は行わないこととした」とコメントしています。
2025年5月3日(土)
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