ラベル 女性の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 女性の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/08/21

🇵🇰ターナー症候群

低身長を特徴とし、女性だけに起こる先天的な疾患

ターナー症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。

他にも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。

ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達が見られない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

ターナー症候群の検査と診断と治療

早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。

ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。

🇮🇶大前庭腺炎

膣の入り口付近に位置する左右一対の大前庭腺に、細菌が侵入して炎症が起こる疾患

大前庭腺炎(だいぜんていせんえん)とは、膣(ちつ)の入り口付近に位置する左右一対の分泌腺に、細菌が侵入し、その細菌に感染することが原因で炎症が起こる疾患。バルトリン腺炎とも呼ばれます。

大前庭腺は、バルトリン腺とも呼ばれ、女性が性的興奮を起こした時に、性行為を滑らかにする薄い乳白色の粘液を分泌する働きがあります。男性の尿道球腺、あるいはカウパー腺、クーパー腺とも呼ばれる分泌線に相当します。

大前庭腺の存在について最初に記述されたのは17世紀で、デンマークの解剖学者キャスパー・バルトリン(1655年〜1738年)によります。

その粘液の排出管である大前庭腺は、長さ約2センチのスポイトのような袋で、腟の入り口の横、小陰唇の下端にある腟前庭に開口しています。

エンドウ豆ほどの大きさの大前庭腺の開口部から、ブドウ球菌、淋菌(りんきん)、クラミジア・トラコマーティス、あるいは腸内細菌のバクテロイデスや大腸菌などが侵入し、それらの細菌に感染すると、急性期には排出管に炎症が起こり、開口部が発赤して、はれ、痛み、違和感が現れます。時には、小陰唇の外側、大陰唇にまで、発赤、はれ、痛みが現れます。

大前庭腺炎による炎症が治まった後に、開口部の閉鎖が起こると、本来は外に分泌される粘液が排出管内部にたまり、拡大して嚢胞(のうほう)を形成します。嚢胞は液体を満たした袋を意味し、これを大前庭腺嚢胞といいます。

多くは大前庭腺の片側だけに形成され、小さい際には気が付かないこともあります。次第に大きくなって、嚢胞がクルミ大ないし鶏卵大などさまざまな大きさになると、膣の入り口付近の時計に例えると5時または7時の位置に、紙でふいた際に丸いものが手に触れるようになってきます。

歩行時や性交時に軽い痛みが生じることもありますが、細菌感染を伴っていなければ無痛性のことも多く、また自然に開口部が再び開いて、排出管内部にたまった粘液が流れ出して、嚢胞が縮小してしまうこともあります。

一方、大前庭腺嚢胞内に細菌感染が起きると、うみが排出管内部にたまって、膿瘍(のうよう)を形成します。膿瘍はうみの塊を意味し、大前庭腺膿瘍といいます。

発赤、はれ、痛みがはっきりしてきて、膿瘍全体に押すと痛む圧痛を認めます。

さらにひどくなると、大陰唇も膨張して熱感を伴う腫瘤(しゅりゅう)を形成し、歩行時や性交時に痛みが生じたり、何もしていないのに感じる自発痛が生じたりします。ひどい痛みによって、歩行困難に陥ることもあります。

大前庭腺炎が悪化して、大前庭腺膿瘍になる前に症状に気付き、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

大前庭腺炎の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、嚢胞のある位置や、圧痛のある膿瘍の位置で判断し、排出管内部にたまっている粘液やうみを培養して原因となっている菌を特定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、急性期では、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の全身投与、局所の湿布を行います。大前庭腺炎の段階では、多くが抗生物質の投与で治ります。

慢性化して嚢胞を形成した場合は、排出口をつくる手術を行うこともあります。膿瘍を形成し、痛みが強い場合は、切開してうみを出す手術を行います。再発を繰り返す場合や、嚢胞や膿瘍が大きい場合は、嚢胞や膿瘍を摘出する手術を行います。

予防法は、膣や外陰部の清潔を保ち、大前庭腺内への細菌の侵入を防ぐ以外にありません。特に、大小便の排出の時や性交渉の時に清潔を心掛けることです。

2022/08/19

🇮🇶二分裂乳頭

乳輪の中にある乳頭が2つに分裂している状態

二分裂乳頭とは、乳房の先にある乳頭が生まれ付き2つに分裂している状態を指す症状。分裂乳頭、分裂乳首とも呼ばれます。

乳輪の内部に、乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房ともに乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。

生まれ付きのものがほとんどで、発生段階での個体差によるものと考えられていますが、二分裂乳頭になる理由はよくわかっていません。

また、一部は神経線維腫症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)という特定の疾患に合併して起こることが知られていますが、極めてまれです。

しかし、女性には比較的多くみられる症状なので、特別珍しいということはなく、奇形でもありません。

見た目が気になるという問題と、授乳という機能的な問題が存在します。子供ができて実際に授乳を試みると、その形状や大きさのせいで乳児が乳頭をうまくくわえられないために、母乳育児を断念するということも少なくありません。

乳頭の分裂症状が明らかで目立つために、変形した乳頭を普通くらいの形状、大きさにして、授乳の際の支障を解消したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

二分裂乳頭の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、二分裂乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、乳頭の一部を切除して、二分裂した乳頭を1つに縫合して一体化し、通常の乳頭の形状にする手術を行います。左右両側の場合でも、左右どちらかの場合でも問題なく手術でき、左右の乳頭のバランスを見ながらデザインして、乳頭を形成します。

乳管をできるだけ温存し、なおかつ見栄えよく通常の乳頭に近い形状に整えることが理想的ですが、場合によっては乳管を温存できない、または一部分しか温存できないこともあります。また、完全に真ん丸な形の乳頭にすることが難しく、ややいびつさが残ることもあります。

乳管がある程度温存できていて、そこそこ丸みのある乳頭に整えることができれば、授乳が可能です。それらの条件を満たせない場合には、授乳が困難になる可能性があります。

乳頭が二分裂しているだけでなく、大きさが気になっている場合、二分裂乳頭の修正手術と同時に、乳頭の大きさを縮小するデザインで手術することもできます。

乳頭が二分裂しているだけでなく、乳頭や乳輪の黒ずみが気になっている場合、色を薄くするデザインで手術することもできます。黒ずみの原因はメラニン色素の沈着によるものなので、トレチノインやハイドロキノンなどの軟こう薬でメラニン色素を脱色して、色を薄くします。乳頭縮小手術の前に脱色することもできますし、乳頭縮小手術の後に脱色することもできます。

🇮🇶乳暈炎

乳暈の皮膚が過敏になって炎症を起こし、湿疹、ただれ、かゆみが生じる状態

乳暈(にゅううん)炎とは、女性の乳暈に湿疹(しっしん)や、ただれが生じ、かゆみを伴っている状態。乳輪炎とも呼ばれます。

乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位で、4センチから5センチが標準的な大きさである乳輪、すなわち乳暈には、多くの皮脂腺(せん)があり、皮脂腺から分泌される皮脂によっていつも保護されているのですが、皮脂の分泌の減少などによって皮膚が乾燥して過敏になると、炎症が起こることがあります。ここに主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、時には大腸菌、緑膿(りょくのう)菌などの細菌が入り、感染すると化膿が起こることがあります。

また、母乳をつくる乳腺が発達する思春期の女性では、ホルモンのバランスが不安定になって、乳頭から分泌液が出現し、乳暈炎や乳頭炎になることもあります。

乳暈炎になると、湿疹や、ただれが生じ、かゆみを伴います。はれが認められることもあります。

大体は、両側に症状が現れます。かゆみを伴うため、無意識のうちにかいてしまって悪化したり、治ってもまた再発し、繰り返すこともあります。下着のサイズや形が合っていないために、乳首や乳暈が下着と擦れ合い、炎症を繰り返すこともあります。また、化膿している状態であれば、下着にくっ付き、かさぶたのようになることもあります。

乾燥肌、アトピー性皮膚炎、陥没乳頭の女性が、乳暈炎、乳頭炎になりやすいとされています。

乳暈炎になった場合には、化学繊維でできた下着を着用していたならば、木綿やシルクなどの自然素材でできた下着に替えて、症状が治まるかどうか確かめます。また、患部を軟こうで覆い、下着と擦れ合わないようにガーゼ付きのばんそうこうなどで保護して、経過を観察すればよいでしょう。

それでも症状が改善しない場合には、皮膚科、ないし婦人科、乳腺科を受診することが勧められます。

乳暈炎、乳頭炎とよく似た症状が、乳房パジェット病よって引き起こされることがまれにあります。乳房パジェット病は、乳がんの特殊なタイプであり、乳暈炎、乳頭炎と同じように湿疹、ただれ、かゆみを伴います。そして、乳がん全体の1~2パーセントを占めるという非常にまれな疾患のため、見落とされがちです。発症年齢は乳がんよりやや高く、50歳代の女性に最も多くみられます。

症状としては、ヒリヒリとした痛みを伴う場合もあり、乳頭からの分泌物や出血もみられる場合もあります。通常の乳がんのようにしこりを触れることはないので、急性湿疹やたむしなどの皮膚病と間違えられやすく、乳がんの一種とは思われないこともあり注意が必要です。

進行すると、表皮が破れてただれ、円状に乳頭や乳暈を超えて拡大したり、乳頭が消失してしまうこともあります。

しかし、長期に放置したとしても進行する速度が遅いので、乳腺内のがん細胞が表皮内に浸潤することはまれであるとされています。早期に治療すれば予後は良好ながんで、転移が確認されなければ心配はないといわれています。

乳暈炎の検査と診断と治療

皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による診断では、視診、触診で判断し、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、超音波(エコー)などで検査することもあります。

乳房パジェット病との鑑別が必要な場合は、顕微鏡で乳頭分泌物やかさぶたなどの細胞を見る細胞診で、パジェット細胞という特徴的な泡沫(ほうまつ)状の細胞が認められるかどうか調べます。

皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による治療では、乳暈(乳輪)、乳頭(乳首)を清潔に保ち、塗り薬を使用します。

細菌の感染があれば、抗生物質入りの軟こうを塗り、感染がなければ、ステロイド剤などの軟こうを塗り、落ち着いたら保湿剤を塗ります。

乳房パジェット病の場合は、早期の乳がんと同じ治療法を適応し、病変部だけを切除して乳房を温存するケースと、乳房全体を切除するケースとがあります。検査の段階で病変が乳腺レベルにとどまっている場合は、美容的な観点を考慮して、放射線治療を併用しての乳房温存療法が選択される可能性が高くなりますが、進行程度や広がり具合によっては、乳房全体を切除するケースや乳頭を切除しなければならないケースもあります。

🇮🇷乳管炎

乳管が詰まりかけたり、詰まることによって起こる炎症

乳管炎とは、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺(せん)で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管が炎症を起こす疾患。授乳中の女性に起きます。

乳首が傷付いて、乳首にある乳管開口部から細菌が感染して炎症が起きる乳口炎から広がって、乳管炎になったり、乳管が直接、詰まりかけたり、詰まることによって炎症を来して乳管炎になったりします。

直接、乳管炎になるのは、乳児に母乳を与える間隔が空きすぎて、たまった古い母乳が絹糸くらいの細さの乳管に詰まるケースや、授乳中の女性が脂質や糖質の多い高カロリーの食事を続けているために、血液中の脂肪分が増えすぎて乳管に詰まるといったケースです。

乳頭に赤いはれができたり、水膨れができます。授乳の際に、乳児に乳首周辺をくわえられると、乳房の深い部分まで響くような強い痛みを感じます。

炎症が乳管を通して深部に広がると、乳房の中にしこりができたり、炎症がひどくなると発熱や全身の筋肉痛などといった状態になってしまう可能性があります。

乳管炎の症状がひどいと、母乳を分泌する乳腺に炎症が起こる乳腺炎に移行することがあります。

一時的に授乳をやめ、乳頭を強い力でしごかない搾乳に切り替えると状態がよくなります。それでも痛みがひどいようなら、婦人科、乳腺科、産婦人科を受診します。

乳管炎の検査と診断と治療

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による診断では、乳管炎は見た目にも明らかになることが多いので、まず視診、触診で確認します。

次に、白血球の増加やCRP(C反応たんぱく)値の上昇をみるための血液検査や、超音波(エコー)検査などを行います。膿(うみ)がたまっていることが確認できれば、そこから膿を採取し培養により起因菌を調べ、抗生剤(抗生物質)の感受性検査を行います。また、症状が似ている炎症性乳がんと区別するために、細胞診断を行います。

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による治療では、抗生剤(抗生物質)を内服したり、状況により鎮痛薬を内服します。

また、乳房を冷却し、刺激を与えずに安静を保ちます。痛みが少し和らいできたところで、母乳の通り道を確保するために軽いマッサージを始め、搾乳も少しずつ始め、定期的に搾乳を続けることで、必要以上に母乳をためこまないようにします。

授乳を再開する場合は、セルフケアを行います。まず、授乳前と授乳後に必ず乳管開通のマッサージを行い、授乳後に搾乳をします。しこりの部分はもみほぐしたりせず、しこり部分を手で軽く押さえるようにして排乳します。

次に、乳児が乳首の根元からしっかりくわえられるような抱き方を探し、例えば、いつも同じ抱き方はせずに、フットボール抱き、横抱き、斜め抱き、縦抱きなどいくつかの抱き方をローテーションで行うと、母乳の詰まりを解消できます。

さらに、間隔を空けすぎると母乳がたまって、乳房が張ってしまい、乳管への負担が大きくなりますので、授乳間隔を空けないようにします。最低でも3時間に1回は授乳をして、乳児の昼寝などで間隔が長く空いてしまいそうなら、力をかけすぎないように搾乳をしておきます。

食生活を見直すのも効果的。母乳が詰まる原因につながる脂質や糖質の多い食事、乳製品は控え、できるだけ薄味の和食に慣れるのがお勧めです。ジュースやスポーツドリンクにも多くの糖分が含まれており、大量に飲むと、母乳の詰まる原因となります。水分量が減るのも母乳が詰まる原因につながるので、授乳期にはカフェインが少なめの麦茶や番茶などをたくさん飲むのがお勧めです。

🇮🇷乳管拡張症

乳汁の通り道となる乳管が病的に拡張する疾患

乳管拡張症とは、乳腺(にゅうせん)から分泌される乳汁(母乳)の通り道となる乳管が異常に拡張する疾患。

比較的まれな疾患で、40歳代から50歳代にかけての更年期の女性に多くみられます。

主な原因は、乳腺の分泌異常によるもので、乳管内に分泌物などがたまり、それによって乳管が拡張します。そのほかの原因には、乳管周辺の炎症や、乳がんや乳管内乳頭腫(しゅ)などの腫瘍(しゅよう)からの出血があります。

ほとんどの場合、症状が出ることはありません。時に、非周期性の乳腺痛、乳頭からの異常分泌液、乳頭の陥没、乳輪下のしこり、皮膚のただれ、へこみ、痛みなどを認めることがあります。

乳管周辺が炎症を起こしたり、乳がんなどの腫瘍が関係している場合、乳頭から茶褐色、あるいは血液や膿(うみ)が混じった分泌液が出たり、しこりができたりします。しこりに触れると硬く、境界が不明瞭で乳がんに類似しており、その横のわきの下に、はれたリンパ節を触れることがあります。

乳管拡張症になっても多くは自覚症状がないため、気付かずにいる人が少なくなく、検診などの超音波検査で発見されるという場合が少なくありません。

大抵の乳管拡張症は良性ですが、乳がんに発展しかねない悪性のものもありますので、乳腺科、乳腺外科、ないし産科、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

乳管拡張症の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科、産科、婦人科、産婦人科の医師による診断では、まず問診や視診、触診によって、乳房の状態を調べます。

続いて、乳管拡張が治療を必要とする状態かどうかや、腫瘍の関連の有無を調べるために、マンモグラフィー(乳腺X線検査)や超音波(エコー)、MRI(核磁気共鳴画像)検査、CT(コンピュータ断層撮影法)検査、乳頭異常分泌液の細胞検査、細菌検査などを行うこともあります。

乳腺科、乳腺外科、産科、婦人科、産婦人科の医師による治療では、乳管が拡張しているだけであれば、経過観察を行います。

乳頭からの異常分泌液を認めたり、乳管内にしこりがある場合は、外科手術によって拡張した乳管を切除することがあります。この切除手術は、局所麻酔で行います。

また、悪性腫瘍の関連が認められた場合は、外科手術によって腫瘍などを取り除くとともに、放射線療法、抗がん剤による化学療法などを組み合わせて行います。

🇮🇷乳管内乳頭腫

乳管内にできる、いぼのような良性のしこり

乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)とは、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺(せん)で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管内に、いぼのような乳頭状の構造を持った良性のしこりができる疾患。

乳管内乳頭腫は、乳頭(乳首)近くの比較的太い乳管内に発生することが多いものの、末梢(まっしょう)乳管から発生することもあります。乳管内の血管結合組織を軸とした上皮細胞と筋上皮細胞が増殖してできます。

乳管内乳頭腫ができる明らかな原因は、不明です。しかし、ほとんどの例でホルモン受容体が陽性なので、卵巣ホルモンが何らかの影響を与えているものと思われます。また、乳頭腫は高率に乳腺症に合併するので、年齢的な要因も関係している可能性があります。通常、35歳から55歳の間に発症することが多く、出産経験のない女性に多いとされています。

乳管内乳頭腫そのものががん化するとは考えられていませんが、将来的に乳がんになるリスクが高まるといわれているので、その点は注意が必要になります。

多くの例で、乳頭から分泌物が出るのが自覚症状となります。分泌物の性状は、血性のことが5割、粘り気の少ない漿液(しょうえき)性のことが5割で、水のように透明なこともあります。分泌物の色も、赤色、赤褐色、茶褐色、白色、透明などさまざまです。分泌物の量にも個人差があり、下着に付着する程度から、大量に乳汁のように分泌するものまでさまざまです。

しこりの大きさは、数ミリから1センチ程度で、乳房を触ってもしこりを感じることは少なく、痛みもありません。分泌物が乳腺内にたまると、腫瘤(しゅりゅう)として触れるものもあります。

乳管内乳頭腫は、乳がんとの関連が深い疾患ですから、乳頭の異常分泌に気付いたら、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診します。特に閉経期あるいは閉経後では、症状のよく似た乳がんとの区別が重要です。また、最近では乳がん検診の際に、超音波(エコー)検査で腫瘤として発見されることも多くなってきました。

乳管内乳頭腫の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、マンモグラフィー(乳腺X線検査)や乳頭分泌物の細胞診を行います。

確実に診断するには、乳管造影を行います。分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影を行うもので、乳管内乳頭腫があると境界明瞭な造影欠損像や走行異常、乳管の閉塞(へいそく)、拡張、狭窄(きょうさく)、断裂像などが映りますので、小さいものでも発見することができます。

また、乳首から針金くらいのカメラを入れる乳管内視鏡検査を行うこともあります。

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、検査の結果、乳がんの可能性が否定された場合は、経過を観察します。

非浸潤性乳管がんなどとの区別がつきにくい場合や、乳頭腫が大きい場合、出血が多い場合は、乳管内視鏡下の手術で腫瘍(しゅよう)のある乳管を切除するのが一般的です。

再発も多く、将来乳がんを発症するリスクも高いため、治療後も定期的な乳がん検診が欠かせません。予防的な乳房切断は、必要ありません。

🇦🇫乳がん

急増している、女性がかかるがんの第1位

乳がんとは、乳房に張り巡らされている乳腺(にゅうせん)にできる悪性腫瘍(しゅよう)。欧米の女性に多くみられ、従来の日本人女性には少なかったのですが、近年は右肩上がりに増加の一途をたどっています。すでに西暦2000年には、女性のかかるがんの第1位となり、30~60歳の女性の病気による死亡原因の第1位となっています。

2006年では、4万人を超える人が乳がんにかかったと推定され、女性全体の死亡数を見ると、乳がんは大腸、胃、肺に次いで4位ですが、1年間の死亡者数は1万1千人を超え、30~60歳に限ると1位を維持しています。

乳がんは転移しやすく、わきの下のリンパ節に起きたり、リンパ管や血管を通って肺や骨など他の臓器に、がん細胞が遠隔転移を起こしやすいのですが、早期発見すれば治る確率の高いがんでもあります。

代表的な症状は、乳房の硬いしこり。乳がんが5ミリから1センチほどの大きさになった場合、しこりがあることが自分で注意して触るとわかります。普通、表面が凸凹していて硬く、押しても痛みはありません。しこりが現れるのはむしろ、乳腺炎、乳腺症、乳腺嚢胞(のうほう)症など、がんではないケースの方が多いのですが、痛みのないしこりは乳がんの特徴の一つ。

さらに、乳がんが乳房の皮膚近くに達した場合、しこりを指で挟んでみると、皮膚にえくぼのような、くぼみやひきつれができたりします。乳首から、血液の混じった異常な分泌液が出てくることもあります。

病気が進むと、しこりの動きが悪くなり、乳頭やその周辺の皮膚が赤くなったり、ただれてきて汚い膿(うみ)が出てきたりします。

わきの下のリンパ節に転移すると、リンパ節が硬く腫(は)れてきて、触るとぐりぐりします。さらに進んで、肺、骨、肝臓などに転移した場合、強い痛みやせき、黄疸(おうだん)などの症状が現れます。

ただし、乳がんは他の臓器のがんとは異なり、かなり進行しても、疲れやすくなったり、食欲がなくなってやせてきたり、痛みが出るというような全身症状は、ほとんどありません。

乳がんが最も多くできやすい場所は、乳房の外側の上方で、全体の約50パーセントを占めます。次いで、内側の上方、乳頭の下、外側の下方、内側の下方の順となっていて、複数の場所に及んでいるものもあります。乳がんが乳房の外側上方にできやすいのは、がんの発生母体となる乳腺組織が集まっているためです。

乳がんの原因はいろいろあって、特定することはできませんが、日本人女性に増えた原因として、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の過剰な分泌が関係していると見なされます。

そのエストロゲンの分泌を促す要因として挙げられるのは、生活様式が欧米化したこと、とりわけ食生活が欧米化したことです。高蛋白(たんぱく)質、高脂肪、高エネルギーの欧米型の食事により、日本人の体格も向上して女性の初潮が早く始まり、閉経の時期も遅くなって、月経のある期間が延びました。その結果、乳がんの発生や進行に関係するエストロゲンの影響を受ける期間が長くなったことが、乳がんの増加に関連しているようです。

ほかに、欧米型の食事の影響である肥満、生活習慣、ストレス、喫煙や環境ホルモンによる活性酸素の増加なども、エストロゲンの分泌を促す要因として挙げられます。

乳がんにかかりやすい人としては、初潮が早い人、30歳以上で未婚の人、30歳以上で初めてお産をした人、55歳以上で閉経した人、標準体重の20パーセント以上の肥満のある人などが挙げられています。また、母親や姉妹が乳がんになった人や、以前に片方の乳房に乳がんができた人も、注意が必要です。

特殊なタイプの乳がんも、まれに発生しています。乳首に治りにくいただれや湿疹(しつしん)ができるパジェット病と、乳房の皮膚が夏みかんの皮のように厚くなり、赤くなってくる炎症性乳がんと呼ばれる、非常に治りにくい種類です。

なお、乳がんにかかる人はほとんど女性ですが、女性の約100分の1の割合で男性にもみられます。

自己検診による乳房のチェックを

乳がんは、早期発見がとても大切な病気。乳房をチェックする自己検診の方法を覚えて、毎月1回、月経が終了して1週間後の乳腺の張りが引いているころに、実行するとよいでしょう。閉経後の人は、例えば自分の誕生日の日付に合わせるなど、月に一度のチェック日を決めておきます。

こうして、自分の乳房のふだんの状態を知っておくと、異常があった時にすぐにわかるのです。

自己触診は、目で乳房の状態を観察することと、手で触れて乳房や、わきの下のしこりの有無をみるのが基本です。鏡に向かって立ち、両手を下げた状態と上げた状態で、乳房の状態をチェックします。

具体的には、乳首が左右どちらかに引っ張られたり、乳首の陥没や、ただれがないか。乳房に、えくぼのような、くぼみやひきつれがないか。乳輪を絞るようにし、乳頭を軽くつまんで、血液や分泌液が出ないか。

以上の点に注意します。さらに、乳房を手の指の腹で触り、しこりの有無をチェックします。指をそろえて、指の腹全体で乳房全体を円を描くように触ります。乳房の内側と外側をていねいにさすってみましょう。調べる乳房のほうの腕を下げたポーズと腕を上げたポーズで、左右両方の乳房をチェックします。

そして、わきの下にぐりぐりしたリンパ節の腫れがないかどうかもチェックします。

少しでも、しこりや異変に気が付いたら、ためらわずに外科を受診することが大切です。専門家によって、自己触診では見付からないようながんが発見されることもありますから、定期検診も忘れずに受けましょう。

検査はマンモグラフィが中心

乳がんは、乳腺外科、あるいは外科で専門的に扱う場合がほとんどです。検査は、視診と触診、さらにマンモグラフィが中心ですが、超音波検査(エコー)もよく利用されています。

マンモグラフィは、乳房用のレントゲン検査で、早期乳がんの発見率を向上させた立役者といえます。乳房全体をプラスチックの板などで挟み、左右上下方向からレントゲン写真をとります。

乳房のしこりだけではなく、石灰化像といって、しこりとして感じられないような小さながんの変化も捕らえることができます。この段階で発見できれば、乳がんもごく早期であることがほとんどですから、乳房を残したままがんを治療することも可能になります。

現在の日本では、乳がん検診にアメリカほどマンモグラフィが普及していません。検診では、触診や視診だけではなく、マンモグラフィの検査が含まれているかどうかを確認したほうが安心です。

超音波検査は、超音波を発する端子を乳房に当てて、その跳ね返りを画像にするもの。痛みなどはなくて受けやすい検査で、自分ではわからないような小さな乳がんを発見することが可能です。

しこりや石灰化像などの、がんが疑われる兆候が発見された場合には、良性のものか、がんかを判断する検査が行われます。従来、穿刺(せんし)吸引細胞診、針生検(せいけん)や切開生検が中心に行われていましたが、近年はマンモトーム生検という検査法が登場しました。

穿刺吸引細胞診は、専用の針をしこりに刺して一部の細胞を吸引して取り、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、しこりとして触れないような小さながんなどは、診断できないことも少なくありません。

針生検は、少し太めのコア針で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は何度も刺す必要があったり、診断が付かないこともあります。

切開生検は、メスで乳房に切開を入れ、がんと思われる部位の組織の一部を取ってきて、顕微鏡で調べる検査。穿刺吸引細胞診や針生検で、確定診断ができない場合に行われてきましたが、外科手術になりますので、体への負担が大きいのが欠点です。

マンモトーム生検は、超音波やマンモグラフィで見ながら、疑わしい部分に直径3ミリの針であるマンモトームを刺して、自動的に組織の一部を吸引してきて、顕微鏡で調べる検査。広範囲の組織が取れて、切開生検より傷口が小さいため、テープで止めるだけで糸で縫う必要がないのが利点です。とりわけ、しこりとして触れない小さながんや、石灰化の段階のがんの診断に、威力を発揮します。

乳がんとわかった場合には、がんの広がりの程度、他の部位への転移の有無を調べるために、胸や骨のレントゲン検査、CT、超音波検査、アイソトープ検査などが行われます。その程度や有無によって、治療の方針が決められることになります。

早期がんでは温存も可能

乳がんの治療法は、その進み具合によって、いろいろな方法が選ばれます。一般的には、まず手術により、乳がんの病変部をできるだけ取り除く治療を行います。

従来は、乳房と胸の筋肉とわきの下のリンパ節をひと塊として、完全に取ってしまうハルステッドという手術が、定型的な乳房切除術として長い間、行われていました。この手術によって、乳がんの治療成績は飛躍的に向上しました。しかし、手術後に腕がむくんで動かしにくくなるなどの障害と、肋骨(ろっこつ)が浮き出て見えたりする美容的な問題が、難点でした。

ところが、乳がんも早期発見が多くなったため、このように大きな手術をすることは少なくなりました。現在では、がんが胸の筋肉に深く食い込んでいる場合などごく一部を除いて、ハルステッド法はほとんど行われなくなっています。

代わりに、胸の筋肉は残して、乳房とわきの下のリンパ節を取る胸筋温存乳房切除術という手術が、行われるようになりました。

乳房のすぐ下には大胸筋、その下には小胸筋という筋肉がありますが、この胸筋温存乳房切除術にも、大胸筋だけを残す大胸筋温存乳房切除術と、両方の筋肉を残して乳房を切除する大小胸筋温存乳房切除術があります。

リンパ節転移が多い場合などは、リンパ節を確実に切除するために、小胸筋を切除することがありますが、最近は両方の筋肉を残して乳房を切除するケースが多くなっています。腕を動かす時に主に使われる大胸筋を残すだけでも、ハルステッド法に比べればかなり障害は少なくなります。

さらに、近年では、早期に発見された乳がんに対しては、乳房を全部切り取らずに、しこりの部分だけを取り除いて、残した乳腺に放射線をかける乳房温存療法が、盛んに行われるようになりました。日本では2003年に、乳房温存療法が乳房切除術を数の上で上回るようになり、標準的な手術法となっています。

この乳房温存療法では、乳房を残して、がんの病巣をできるだけ手術によって切除し、残ったがんは放射線の照射で叩くというのが基本的な考え方ですので、放射線治療は必須です。一般的には、わきの下のリンパ節転移があるかどうかにかかわらず、しこりの大きさが3センチ以下で、乳房の中でがんが広範囲に広がっていないことなどが、適応の条件とされています。

また、しこりが3センチ以上でも、手術前に化学療法を行ってしこりが十分に小さくなれば、可能であるとされています。ただし、医療機関によって考え方には多少違いがあり、もっと大きな乳がんにも適応しているところもあります。

わきの下のリンパ節をたくさん取らない方法も、最近では検討されています。手術中に、センチネルリンパ節(見張りのリンパ節)という最初にがんが転移するリンパ節を見付けて、そこに転移がなければリンパ節はそれ以上は取らないという方法です。まだ確立はされた方法ではありませんが、腕の痛みやむくみなどの障害が出ないので、今後急速に普及していくと考えられます。

乳がんはしこりが小さくても、すでにわきの下のリンパ節に転移していたり、血液の中に入って遠くの臓器に広がっていることもあります。転移の疑いがある場合、術後の再発予防のために抗がん薬やホルモン薬による治療を加えると、再発の危険性が30~50パーセント減ることがわかってきました。抗がん薬やホルモン薬においても、副作用が少なく、よく効く薬が開発されてきて、再発後の治療にも効果を上げています。

🇦🇫乳口炎

乳首にある母乳の出口に炎症が起きた状態

乳口(にゅうこう)炎とは、女性の乳首にある乳管開口部である乳口に炎症が起きた状態。授乳中の女性に起きます。

乳口炎が起こる一番の原因は、乳首が傷付くことです。乳児が効率よく母乳を飲むためには乳首周辺を深くくわえる必要があるのですが、体勢がしっくりこない状態や添い寝で授乳をすると、乳児が乳首周辺を浅くくわえてしまい、乳首に余計な負担がかかって乳首の先を傷付けることがあります。乳首が傷付いて、そこから細菌が感染すると炎症が起き、乳口炎を引き起こします。

また、授乳中の女性が脂質や糖質の多い食事を続けていたり、過度なストレスがかかったりすると、母乳が詰まりやすくなり、乳口炎を引き起こすといわれています。

乳首に水疱(すいほう)ができて、次第に白斑(はくはん)と呼ばれる、1〜2ミリくらいの白いニキビのような点ができて、母乳の出口をふさぐのが、乳口炎の始まりです。初期は、乳頭が赤くなったり黄色くなったりすることがあります。

ただ、片方の乳首に15~25個ある乳口のうち一部だけが詰まって、ほかの乳口は開通している状態なので、母乳の出具合にはあまり変化がなく、最初のうちは詰まっていることを自覚しにくい傾向があります。

その後、症状が進行すると授乳中に痛みを覚え、その時に初めて炎症が起きていることを自覚する場合がほとんどです。中には、血胞と呼ばれる血が混じったものが乳首にできることもあります。

乳口炎は、原因を解消しない限り繰り返し発症することが多く、一度なってしまうと授乳中ずっと悩まされるという人も多いようです。

乳口炎の自己対処法

母乳の詰まりを解消しようと、水疱を針で刺してつぶそうとしたり、白斑を無理に取ろうとしたりする人がいますが、雑菌が入って炎症を悪化させる可能性があるため、やめておきましょう。

また、乳口炎になったために授乳をやめてしまう人がいますが、母乳がいっそう詰まって逆効果で、場合によっては乳管が炎症を起こす乳管炎や、乳腺(にゅうせん)が詰まって炎症を起こす乳腺炎を引き起こす危険性があります。

乳口炎の特効薬はありませんが、傷付いた乳口のケアと、母乳が詰まらないようにする適切な対処を行い、授乳を続けましょう。

傷付いた乳口の炎症を抑えるには、乳児の口に入っても大丈夫な口内炎治療薬のデスパコーワなどや、保湿剤のラノリン、スクワランやホホバや馬油(マーユ)などのオイルを毎回の授乳後、乳口に塗ってラップで押さえるのが、お勧めです。

母乳の詰まりを解消するには、乳児に乳首をきちんと吸ってもらうための工夫を行いましょう。

まず、乳児が乳首の根元からしっかりくわえられるような抱き方を探しましょう。また、いつも同じ抱き方はせずに、フットボール抱き、横抱き、斜め抱き、縦抱きなどいくつかの抱き方をローテーションで行うと、詰まっている乳口を吸ってもらえるようになります。

また、授乳間隔を空けないようにしましょう。間隔を空けすぎると母乳がたまって、乳房が張ってしまい、授乳時に乳口への負担が大きくなります。最低でも3時間に1回は授乳をして、乳児の昼寝などで間隔が長く空いてしまいそうなら、力をかけすぎないように搾乳(さくにゅう)をしておきましょう。

食生活を見直すのも効果的。母乳が詰まる原因につながる脂質や糖質の多い食事、乳製品は控え、できるだけ薄味の和食に慣れるのがお勧めです。ジュースやスポーツドリンクにも多くの糖分が含まれており、大量に飲むと、母乳の詰まる原因となります。水分量が減るのも母乳が詰まる原因につながるので、授乳期にはカフェインが少なめの麦茶や番茶などをたくさん飲むのがお勧めです。

乳房を温めるのも効果的。乳房が冷えて硬くなると、分泌される母乳や筋肉が冷えて出具合が悪くなります。ゆっくり風呂に入り、マッサージをして乳房を少し温めてから授乳すると、母乳の詰まりが解消されやすくなります。

ストレス解消も効果的。ストレスや疲れがたまると、体を緊張状態にさせ、乳口を収縮させて母乳の流れを滞らせます。夜の授乳で満足に睡眠が確保できない場合は、日中に乳児と一緒に昼寝をしたり、天気のよい日は散歩に出て気分転換したりするとストレス解消ができます。

乳口炎は、上手に授乳をすることができれば1週間程度で自然治癒するケースが多いのですが、痛いから、触るのが怖いからと放置しておくと、1カ月以上もつらい症状が長引くこともありますので、注意が必要です。

自分で改善できない場合は、母乳外来や助産院に相談してください。

🇸🇬乳汁分泌性無月経

妊娠や授乳期以外に乳汁分泌と無月経が起こる状態

乳汁分泌性無月経とは、妊娠や授乳期以外の時期に、乳頭からの乳汁分泌と無月経がみられる状態。無月経・ 乳汁分泌症候群とも呼ばれます。

主に20~30歳代の性成熟期の女性において、大脳の下部にある小さな分泌腺(せん)である下垂体(脳下垂体)から分泌されるプロラクチンというホルモンが増加して、血液中のプロラクチン値が上昇した状態である高プロラクチン血症が生じると、通常、乳汁分泌と無月経が起こります。

下垂体はプロラクチンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモンの6つのホルモンを分泌し、プロラクチンは乳腺の発育促進、乳汁産生・分泌促進、排卵や卵胞の成熟抑制にかかわるホルモンです。

下垂体から分泌されるプロラクチンが増加すると、黄体化ホルモンと卵胞刺激ホルモンの分泌が低下するので、プロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が低下し、無排卵、無月経などの月経異常の原因になります。

乳汁分泌性無月経を招く高プロラクチン血症は、種々の原因によって起こります。妊娠女性では、妊娠の進行とともにプロラクチン値が高くなります。

高プロラクチン血症の原因としては、下垂体におけるプロラクチン産生腫瘍(しゅよう、プロラクチノーマ)が最も多くみられます。

ほかには、大脳の下部にある視床下部・下垂体系の腫瘍や炎症のため、プロラクチンの産生を抑制する脳内物質であるドーパミンの下垂体への作用が阻害されると、下垂体からのプロラクチン分泌への抑制という調節がなくなり、血液中のプロラクチン値が増加します。

また、頭蓋咽頭(ずがいいんとう)腫、 胚芽(はいが)腫などの脳腫瘍や、結核を始めとする感染症によく似た病巣を全身のいろいろな臓器に作る疾患であるサルコイドーシスなどでも、高プロラクチン血症が高頻度に出現します。

プロラクチン分泌を促進する甲状腺刺激ホルモンの分泌が過剰になる原発性甲状腺機能低下症や、腎(じん)不全でも、高プロラクチン血症が出現することがあります。胸壁の外傷、手術や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などの胸壁疾患でも、プロラクチンの分泌が促進されることがあります。

さらに、薬剤の副作用によることがあります。ある種の抗うつ剤や胃薬は、ドーパミンの作用を阻害することによりプロラクチンを増加させます。降圧薬の一種もプロラクチンを増加させます。低用量ピルなどの経口避妊薬も、視床下部のドーパミン活性を抑制するとともに下垂体に直接作用して、乳汁を産生するプロラクチンの産生や分泌を刺激させます。

高プロラクチン血症であっても、必ずしも症状を伴うものではありません。性成熟期の女性では、乳汁分泌と無月経が主要な兆候となります。下垂体のプロラクチン産生腫瘍が大きい場合には、腫瘍による視神経圧迫のため視野狭窄(きょうさく)、視力低下、頭痛を伴うことがあります。

乳汁分泌性無月経に気付いたら、婦人科 、内科、乳腺科を受診することが勧められます。

乳汁分泌性無月経の検査と診断と治療

婦人科 、内科、乳腺科の医師による診断では、血中プロラクチン値を測定するとともに、出産経験や内服薬の確認を行います。

血中プロラクチンが高値の時は、下垂体のプロラクチン産生腫瘍の可能性が高いため、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査やCT(コンピュータ断層撮影法)検査を行い、下垂体病変を調べます。血中プロラクチン値が軽度から中等度の時には、薬剤服用の有無を重視し、下垂体のプロラクチン産生腫瘍以外の原因について検査を行います。

婦人科 、内科、乳腺科の医師による治療では、乳汁分泌性無月経の原因がはっきりとしたら、その原因に応じた治療を行います。

内服している薬剤が原因と考えられる場合は、その薬剤を中止します。乳汁分泌がみられるだけで、ほかに特別な異常や兆候がなければ、経過観察も可能です。不快ならば、プロラクチンの産生を抑制する脳内物質であるドーパミンの分泌を促すドーパミンアゴニスト製剤(ドーパミン受容体刺激薬)により、プロラクチンの分泌を抑えると症状は消えます。

無月経を伴う場合には、排卵や月経を誘発する処置を行います。

下垂体のプロラクチン産生腫瘍が原因と考えられる場合は、現在、薬物療法が第一選択となります。ドーパミンアゴニスト製剤の内服により、血中プロラクチン値は低下し、腫瘍も縮小します。一方、腫瘍が直径1センチ以上と大きく、視野障害や頭痛などがあり、腫瘍サイズの縮小が急がれる場合は、手術が選択されることもあります。

原発性甲状腺機能低下症が原因と考えられる場合、甲状腺ホルモンの補充により血中プロラクチン値は正常化し、卵巣機能は回復します。

🇸🇬乳汁漏出症

妊娠や授乳期以外に起こる乳汁などの分泌

乳汁漏出症とは、妊娠や授乳期以外に乳頭から分泌物がみられる状態。乳頭異常分泌症、乳汁漏、異常乳頭分泌とも呼ばれます。

妊娠期間中や授乳期に女性の乳頭から乳汁(母乳)が出るのは普通ですが、乳汁漏出症ではそれ以外の時期に乳頭から分泌物がみられるわけです。

乳頭の片方からだけ分泌物がみられることもあれば、乳頭の両方から分泌物がみられることもあります。何もしなくても気付くほどの分泌物がみられることもあれば、軽くまたは強く乳頭を圧迫しないと分泌物がみられないものもあります。

分泌物は乳汁のようなさらっとした白色のものもありますが、膿(うみ)が混じって黄色や緑色っぽく、粘り気があることもあります。また、分泌物に血が混じって茶褐色であることもあります。

その原因は、さまざまです。乳汁をつくる乳腺(せん)に何らかの異常がみられる場合と、乳腺以外の部分の異常が原因の場合とがあります。

ほとんどは乳腺に異常がある場合に生じ、乳腺症や乳管内乳頭腫(しゅ)などによって生じます。また、割合として多くはないものの、乳がんによって生じることもあります。

乳腺以外に原因があるものとしては、薬剤の副作用による場合があります。ある種の抗うつ剤や胃薬、降圧剤、経口避妊薬(低用量ピル)などが原因で、乳汁を産生するプロラクチンというホルモンの分泌を刺激することがあり、そのような薬剤を長期服用することで乳汁漏出症の症状がみられることもあります。

さらには、下垂体の疾患や脳の疾患、甲状腺や卵巣の異常による乳汁漏出症もあります。

乳汁のような白色もしくは透明の分泌物が出る場合は、大抵の場合、ストレスなどによりホルモンバランスが乱れたりすることが原因で、深刻な問題ではないことがほとんどです。

それ以外の分泌物が出た場合は、早めに婦人科 、内科、乳腺科などを受診することが勧められます。

乳汁漏出症の検査と診断と治療

婦人科、内科、乳腺科などの医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、分泌物の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、血液検査、超音波(エコー)検査、乳管造影などを行います。

薬剤が原因のこともありますから、服用中の薬についても問診し、血液中のプロラクチン濃度を測定することもあります。

婦人科、内科、乳腺科などの医師による治療では、原因に応じた処置を行います。

原因が薬剤の服用である場合は、減量もしくは休薬を考えます。乳汁の分泌が見られるだけで、ほかに特別な異常や兆候がなければ、経過観察も可能です。

原因が乳管内乳頭腫などの良性の疾患の場合は、大抵は外科手術の必要はありません。乳がんなどの場合は、外科手術で腫瘍(しゅよう)を切除し、抗がん剤による化学治療などを行います。

🇲🇾乳腺炎

乳房の炎症性疾患の代表

乳腺(にゅうせん)炎とは、乳汁を分泌する乳腺に炎症が起こる疾患で、急性のものと慢性のものがあります。

急性乳腺炎のほとんどは、授乳期、ことに産褥(さんじょく)期にみられ、うっ滞性乳腺炎と化膿(かのう)性乳腺炎の2つに分けられます。慢性の乳腺炎には、授乳期以外に膿(うみ)の塊ができる乳輪下膿瘍(のうよう)があります。

急性うっ滞性乳腺炎は、若い初産の女性の出産後2~3日のころによくみられるもので、乳管からの乳汁の排出障害があるために、乳房の腫(は)れと軽い発赤と熱感が起こります。痛みはあっても、激しい全身症状はでません。

初産の場合、乳管が狭いので乳汁が乳腺内に詰まってしまうことが、その原因と考えられています。乳児への授乳が十分でない場合にも起きます。

急性化膿性乳腺炎は、出産後2~6週のころに乳腺内に乳汁がたまり、ここに主にブドウ球菌による細菌感染が起きて、乳房全体に腫れが生じます。炎症が進むと、乳房が硬く赤く腫れて、激しく痛み、熱感があります。

その後、炎症が1カ所に固まってくると、膿瘍を作り、時には自然に破れて膿が外に出ることもあります。わきの下のリンパ

急性化膿性乳腺炎を予防するためには、乳汁をためないように積極的に授乳をして、乳腺を空にしておくことと、乳頭を清潔にして細菌感染を防ぐことが大切。

乳輪下膿瘍は、授乳やホルモン分泌とは関係なく、若い女性によくみられる疾患です。乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。陥没乳頭の人に多くみられますが、乳首が陥没していない人でもみられます。

乳管の膨大部に、乳管の細胞の老廃物、ケラチン破片などがたまり、刺激して、主に無菌性の炎症を起こします。膿瘍ができるころには、混合感染もみられます。

それぞれの疾患に対する治療法

急性うっ滞性乳腺炎の治療としては、乳汁のうっ滞を取り除くために、乳房を温めて血液の流れをよくし、乳頭と乳輪をよくマッサージして授乳を続ければ、症状はすぐにとれてきます。また、乳首を乳児がくわえやすいような形にしておくなどの工夫も必要です。

急性化膿性乳腺炎の治療としては、初期には乳房を冷湿布して、乳汁は搾乳器で搾り出します。乳房は安静を保つためブラジャーなどで固定し、マッサージはしてはいけません。

抗生物質の注射か内服と、鎮痛薬、消炎薬の内服をします。抗生物質ではペニシリンやセフェム系の薬がよく使用されますが、耐性菌を生じやすいので注意が必要です。

化膿が進み膿瘍ができたら、注射針を刺して膿を吸引したり、局所麻酔をかけて皮膚を切開して膿を出さなければなりません。これらの治療が功を奏すると、急速に症状は改善します。膿瘍ができた場合、抗プロラクチン薬で乳汁分泌を抑制します。もちろん、授乳はストップしなければなりません。

乳輪下膿瘍の治療としては、炎症性の膿瘍と拡張した乳管の切除と、炎症の元になっている陥没乳頭が外に出る形成処置との両方を行わなければ、必ずといっていいほど再発します。まず抗生物質などで炎症を鎮静させて、それから根治手術を行います。

2022/08/18

🇷🇪白斑

母乳による育児中の女性の乳頭にできる、白いニキビのような出来物

白斑(はくはん)とは、授乳中の女性の乳頭(乳首)にできる、白色でニキビのような出来物。

女性の乳頭にある乳管開口部である乳口(にゅうこう)に炎症が起きた乳口炎の初期症状として、白斑は母乳による育児中の女性の乳頭にできます。

白斑をもたらす乳口炎が起こる一番の原因は、乳頭が傷付くことです。乳児が効率よく母乳を飲むためには乳頭周辺を深くくわえる必要があるのですが、体勢がしっくりこない状態や添い寝で授乳をすると、乳児が乳頭周辺を浅くくわえてしまい、乳頭に余計な負担がかかって乳頭の先を傷付けることがあります。乳頭が傷付いて、そこから細菌が感染すると炎症が起き、乳口炎を引き起こします。

また、授乳中の女性が脂質や糖質の多い食事を続けていたり、過度なストレスがかかったりすると、母乳が詰まりやすくなり、乳口炎を引き起こすといわれています。

乳頭に水疱(すいほう)ができて、次第に1〜2ミリくらいの白いニキビのような白斑と呼ばれる出来物ができて、母乳の出口をふさぐのが、乳口炎の始まりです。初期は、乳頭が赤くなったり黄色くなったりすることがあります。

ただ、片方の乳頭に15~25個ある乳口のうち一部だけが詰まって、ほかの乳口は開通している状態なので、母乳の出具合にはあまり変化がなく、最初のうちは詰まっていることを自覚しにくい傾向があります。

その後、症状が進行すると授乳中に痛みを覚え、その時に初めて炎症が起きていることを自覚する場合がほとんどです。中には、血胞と呼ばれる血が混じったものが乳頭にできることもあります。

乳口炎は、原因を解消しない限り繰り返し発症することが多く、一度なってしまうと授乳中ずっと悩まされるという人も多いようです。

白斑の自己対処法

母乳の詰まりを解消しようと、水疱を針で刺してつぶそうとしたり、白斑を無理に取ろうとしたりする人がいますが、雑菌が入って炎症を悪化させる可能性があるため、やめておきましょう。

また、乳口炎になったために授乳をやめてしまう人がいますが、母乳がいっそう詰まって逆効果で、場合によっては乳管が炎症を起こす乳管炎や、乳腺(にゅうせん)が詰まって炎症を起こす乳腺炎を引き起こす危険性があります。

乳口炎の特効薬はありませんが、傷付いた乳口のケアと、母乳が詰まらないようにする適切な対処を行い、授乳を続けましょう。

傷付いた乳口の炎症を抑えるには、乳児の口に入っても大丈夫な口内炎治療薬のデスパコーワなどや、保湿剤のラノリン、スクワランやホホバや馬油(マーユ)などのオイルを毎回の授乳後、乳口に塗ってラップで押さえるのが、お勧めです。

母乳の詰まりを解消するには、乳児に乳頭をきちんと吸ってもらうための工夫を行いましょう。

まず、乳児が乳頭の根元からしっかりくわえられるような抱き方を探しましょう。また、いつも同じ抱き方はせずに、フットボール抱き、横抱き、斜め抱き、縦抱きなどいくつかの抱き方をローテーションで行うと、詰まっている乳口を吸ってもらえるようになります。

また、授乳間隔を空けないようにしましょう。間隔を空けすぎると母乳がたまって、乳房が張ってしまい、授乳時に乳口への負担が大きくなります。最低でも3時間に1回は授乳をして、乳児の昼寝などで間隔が長く空いてしまいそうなら、力をかけすぎないように搾乳(さくにゅう)をしておきましょう。

食生活を見直すのも効果的。母乳が詰まる原因につながる脂質や糖質の多い食事、乳製品は控え、できるだけ薄味の和食に慣れるのがお勧めです。ジュースやスポーツドリンクにも多くの糖分が含まれており、大量に飲むと、母乳の詰まる原因となります。水分量が減るのも母乳が詰まる原因につながるので、授乳期にはカフェインが少なめの麦茶や番茶などをたくさん飲むのがお勧めです。

乳房を温めるのも効果的。乳房が冷えて硬くなると、分泌される母乳や筋肉が冷えて出具合が悪くなります。ゆっくり風呂に入り、マッサージをして乳房を少し温めてから授乳すると、母乳の詰まりが解消されやすくなります。

ストレス解消も効果的。ストレスや疲れがたまると、体を緊張状態にさせ、乳口を収縮させて母乳の流れを滞らせます。夜の授乳で満足に睡眠が確保できない場合は、日中に乳児と一緒に昼寝をしたり、天気のよい日は散歩に出て気分転換したりするとストレス解消ができます。

乳口炎は、上手に授乳をすることができれば1週間程度で自然治癒するケースが多いのですが、痛いから、触るのが怖いからと放置しておくと、1カ月以上もつらい症状が長引くこともありますので、注意が必要です。

自分で改善できない場合は、乳房マッサージをしてくれる母乳外来や助産院に相談してください。

🇵🇬乳腺症

生理周期に同調する症状

乳腺(にゅうせん)症とは、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称。

30~40歳代でよく見られる良性疾患で、乳がんや乳腺炎のようにはっきりとした病気ではありません。

生理前に乳腺が張る、乳房が痛むという経験は、女性なら誰でも経験があることでしょう。乳腺症も、女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。

症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。

20歳代の女性の乳房では、妊娠、授乳に備えて、ほどんどが乳汁を分泌する乳腺組織で占められていますが、閉経後の女性の乳房では、役割を終えた乳腺組織が脂肪組織に置き換わります。

30歳代から40歳代の女性の乳房は、その間の過渡期で、乳腺組織と脂肪組織が混じった状態にあります。また、乳腺内に増殖をしている部分と、委縮、線維化している部分が混在するようになり、大小さまざまな硬いしこりを感じるようになるのです。

同時に、20歳代の時には、乳腺や周りの組織に弾力性があって、乳腺が生理前に張って、生理が終わると元に戻る変化に対応しますが、加齢とともに、乳腺の変化を痛みとして感じるようになるのです。

乳腺症の中には、ごくまれにがんに移行しやすいタイプもあり、乳がんとの区別が重要です。症状が多様なだけに、素人判断は危険です。乳房にしこりや痛みを感じたら、まず外科医に診てもらうように。原因が不明なら、乳がんを専門とする医療機関で精密検査を受ける必要があります。

半数以上の人は薬で症状が軽減

乳房のしこりや痛みで医師の診察を受けると、乳がんの可能性も考慮し、触診、マンモグラフィー(乳房のレントゲン撮影)、超音波などで検査します。

明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と診断されます。

痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法が行われます。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬が処方され、2~3カ月使うと効果が現れます。

薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。

乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などが行われます。

顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、専門医の診察を受けて精密検査を行うことになります。

🇰🇮乳腺線維腺腫

思春期から20歳代の女性に多くみられる乳房のしこり

乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)とは、女性の乳房内の乳腺が増殖することで形成される良性のしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)。

乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。

はっきりとした原因はまだわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる腫瘤として自覚されることが多いようです。

線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。

乳がんと同様に、痛みを伴わないしこり、すなわち乳房腫瘤として発症します。乳がんと比べれば軟らかく、弾力性に富むことが多いといわれていますが、線維腺腫が乳がんに進行することはほとんどありません。

しこりの大きさは、小豆大からうずらの卵大のことが多いものの、時には鶏卵大になることもあります。形は、球状や卵形が多く、時にはしこりの縁がくびれたような切れ込みになっていることもあります。

しこりの表面は滑らかで、普通の消しゴムぐらいの硬さです。しこりと周囲との境界がはっきりしていて、触るとしこりが乳腺の中でコロコロと動くのが特徴です。

しこりは、1個だけでなく、いくつもできることがあります。押しても痛みはなく、しこりに触れて、偶然、気が付くことが多いようです。

経過を観察すると、しこりの大きさは多少増大しますが、時間の経過とともに際限なく増大することはなく、急速に増大することもありません。大多数は、閉経期をすぎると自然退縮します。

しこりに気が付き、母親など近い家族に複数の乳がんの経験者がいる場合は、婦人科、乳腺科、産婦人科を受診し、念のために乳がんなどの悪性疾患ではないか確認することが勧められます。

乳腺線維腺腫の検査と診断と治療

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による診断では、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。

若い女性は乳腺の密度が濃いため、マンモグラフィーでは診断しにくいことが多く、超音波検査のほうが腫瘤の特徴を映し出すことができます。

鑑別診断で重要なのは、限局性の乳がんです。厳密には触診だけで区別することは困難で、マンモグラフィーや超音波検査でも区別が難しいことがあるので、乳房のしこりに針を刺し、しこりの細胞を微量採取して病理学的に細胞を調べる穿刺(せんし)細胞診や、局所麻酔をしてからしこりの一部を切り取り、顕微鏡で調べる針生検を行うことがあります。

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による治療では、小さなしこりの場合には、穿刺細胞診などで良性の腫瘤であることを確認し、その後、年1、2回の定期な診察で、経過を観察していきます。

明らかに美容上の問題となるほど大きなしこりの場合や、経過を観察して急速に大きくなった場合には、手術をして、しこりを切除することもあります。

手術は、局所麻酔をして乳房の皮膚を数センチ切開し、しこりを切除して取り出すだけですので、外来で受けられます。手術により、乳房に変形が残ることはありません。

🇰🇮乳腺葉状腫瘍

短期間のうちに増大することを特徴とする乳腺腫瘍

乳腺葉状腫瘍(にゅうせんようじょうしゅよう)とは、女性の乳房内の乳腺が増殖することで形成される腫瘍。急速に増大することが、特徴です。

組織学的には乳腺線維腺腫(せんいせんしゅ)に類似していますが、主に乳腺の小葉(しょうよう)内の結合組織が増殖する線維腺腫に対し、乳腺葉状腫瘍では線維性間質(かんしつ)と乳管上皮が急速に増殖し、生物学的には血液や骨などの腫瘍に近い性質のものです。

短期間のうちに増大して、巨大な腫瘤(しゅりゅう)をつくるのが特徴で、7割は5センチを超え、わずか数カ月で10センチ以上になることも珍しくありません。中には、30センチ以上になることもあります。

大きさや増大速度、そして組織学的所見から良性、境界病変、悪性の3段階に分類され、悪性の場合は肉腫に分類されます。

乳腺葉状腫瘍にかかりやすい年齢は、30歳~55歳。しかし、10歳~20歳の非常に若い人にも発症することもあります。原因などは、不明とされています。

初めのうちは、乳腺線維腺腫に似たしこり、すなわち腫瘤ができ、形は分葉状です。しこりの中に液状成分を持つ嚢胞(のうほう)ができるので、硬いところと弾力のある部分とが入り交じっている感じで、しこりと周囲の境界ははっきりしています。

しこりができてから数カ月で大きくなり、握りこぶし大や、それ以上になり、左右の乳房のバランスが著しく違ってきて気付くこともあります。

時には、自発痛、圧迫感、皮膚の発赤、皮下静脈の怒張(どちょう)による血管の盛り上がりなどの症状がみられます。

しこりに気が付いた場合は、乳腺科、乳腺外科を受診します。

乳腺葉状腫瘍の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科の医師による診断では、視診、触診で乳房の形の変化や皮膚の色の変化などをみてかなり判断できますが、乳腺線維腺腫や炎症性乳がんとの鑑別が必要ですので、マンモグラフィー(乳腺X線検査)と超音波(エコー)検査を行います。

そこで疑わしい場合は、乳腺のしこりに針を刺し、しこりの細胞を微量採取して病理学的に細胞を調べる穿刺(せんし)細胞診や、局所麻酔をしてからしこりの一部を切り取り、顕微鏡で調べる針生検を行います。悪性の場合は、転移していないか調べるため、CT(コンピュータ断層撮影法)検査やPET(陽電子放射断層撮影)検査などを行います。

乳腺科、乳腺外科の医師による治療では、手術による切除を行います。良性とされる乳腺葉状腫瘍でも、周囲の健常な乳腺組織を含めて切除しないと、同じ部位に再発を起こしやすいためです。

小さな腫瘍は、外来で局所麻酔のもとで手術できますが、大きな腫瘍になると、入院して全身麻酔のもとで切除します。切除直後はかなり乳房の変形が著しくても、圧迫されていた乳腺が次第に元通りになることが多く、人工乳腺などで形成を要することはあまりありません。

腫瘍が大きく、境界病変や悪性の場合には、乳房切除術が必要となります。

🇹🇴乳頭異常分泌症

妊娠や授乳期以外に起こる乳頭からの乳汁などの分泌

乳頭異常分泌症とは、妊娠や授乳期以外に乳頭から分泌物がみられる状態。異常乳頭分泌とも呼ばれます。

妊娠期間中や授乳期に女性の乳頭から乳汁(母乳)が出るのは普通ですが、乳頭異常分泌症ではそれ以外の時期に乳頭から分泌物がみられるわけです。

乳頭の片方からだけ分泌物がみられることもあれば、乳頭の両方から分泌物がみられることもあります。何もしなくても気付くほどの分泌物がみられることもあれば、軽くまたは強く乳頭を圧迫しないと分泌物がみられないものもあります。

分泌物は乳汁のようなさらっとした白色のものもありますが、膿(うみ)が混じって黄色や緑色っぽく、粘り気があることもあります。また、分泌物に血液が混じって茶褐色であることもあります。

その原因は、さまざまです。乳汁をつくる乳腺(せん)に何らかの異常がみられる場合と、乳腺以外の部分の異常が原因の場合とがあります。

ほとんどは乳腺に異常がある場合に生じ、乳腺症や乳管内乳頭腫(しゅ)などによって生じます。また、割合として多くはないものの、乳がんによって生じることもあります。

乳腺以外に原因があるものとしては、薬剤の副作用による場合があります。ある種の抗うつ剤や胃薬、降圧剤、経口避妊薬(低用量ピル)などが原因で、乳汁を産生するプロラクチンというホルモンの下垂体(脳下垂体)からの分泌を刺激することがあり、そのような薬剤を長期服用することで乳頭異常分泌症の症状がみられることもあります。

さらには、下垂体(脳下垂体)の疾患や脳の疾患、甲状腺や卵巣の異常による乳頭異常分泌症もあります。下垂体(脳下垂体)に腫瘍(しゅよう)があり、プロラクチンの分泌が高まると、乳汁のような分泌物が左右の乳頭から出ます。指で乳頭をつまむと、ピューっと出ることもあります。

乳管内に、いぼのような乳頭状の構造を持った良性のしこりができる乳管内乳頭腫では、多くの例で、乳頭から分泌物が出るのが自覚症状となります。分泌物の性状は、血性のことが5割、粘り気の少ない漿液(しょうえき)性のことが5割で、水のように透明なこともあります。分泌物の色も、赤色、赤褐色、茶褐色、白色、透明などさまざまです。分泌物の量にも個人差があり、下着に付着する程度から、大量に乳汁のように分泌するものまでさまざまです。

血液が混じった血性分泌物の場合は、乳がんの発見の切っ掛けになる場合もあります。分泌物に血液が混じっても良性の病変によることがほとんどですが、約5%に乳がんが見付かります。まだしこりにならない早期のがんは乳管内にとどまっており、乳頭からの血性分泌物が唯一の症状です。この場合は、片方の乳頭の1カ所の乳管から出ます。

しかも、明らかにわかる程度の血液が混じっていることもあり、目でみてもほとんどわからない程度の血液が混入していることもあります。従って、片方の乳頭の1カ所の乳管からの分泌は、潜血反応で血液成分が混じっているかどうかを調べることが大切です。潜血反応が陰性の場合は、がんである可能性が極めて低くなります。

膿が混じって黄色や緑色っぽく、粘り気がある分泌物の場合は、乳房の先にあって通常は突出しているはずの乳頭が乳房の内側に埋没した陥没乳頭により、乳頭の乳管開口部から化膿(かのう)菌が侵入することにより、乳輪の下に膿がたまる乳輪下膿瘍を起こしている可能性があり、片方の乳頭から出ます。

乳汁のような白色もしくは透明の分泌物が少量、いくつかの乳管から出る場合は、大抵の場合、ストレスなどによりホルモンバランスが乱れたりすることが原因で、深刻な問題ではないことがほとんどです。

それ以外の分泌物が出た場合は、早めに婦人科 、内科、乳腺科などを受診することが勧められます。

乳頭異常分泌症の検査と診断と治療

婦人科 、内科、乳腺科などの医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、分泌物の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、血液検査、超音波(エコー)検査、乳管造影などを行います。

薬剤が原因のこともありますから、服用中の薬についても問診し、血液中のプロラクチン濃度を測定することもあります。

婦人科、内科、乳腺科などの医師による治療では、原因に応じた処置を行います。

原因が薬剤の服用である場合は、減量もしくは休薬を考えます。乳汁の分泌が見られるだけで、ほかに特別な異常や兆候がなければ、経過観察も可能です。

原因が乳管内乳頭腫などの良性の疾患の場合は、大抵は外科手術の必要はありません。乳がんなどの場合は、外科手術で腫瘍を切除し、抗がん剤による化学治療などを行います。

原因が陥没乳頭による乳輪下膿瘍の場合は、炎症性の膿瘍と拡張した乳管の切除とともに、炎症の元になっている陥没乳頭が外に出る形成手術を行わなければ、必ずといっていいほど再発します。まず抗生剤などで炎症を鎮静させて、それから根治手術を行います。

🇹🇴乳頭炎、乳輪炎

乳頭や乳輪の皮膚が過敏になって炎症を起こし、湿疹、ただれ、かゆみが生じる状態

乳頭炎、乳輪炎とは、女性の乳頭や乳輪に湿疹(しっしん)や、ただれが生じ、かゆみを伴っている状態。

乳首、すなわち乳頭や、乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪には、多くの皮脂腺(せん)があり、皮脂腺から分泌される皮脂によっていつも保護されているのですが、皮脂の分泌の減少などによって皮膚が乾燥して過敏になると、炎症が起こることがあります。ここに細菌が入り、感染すると化膿(かのう)が起こることがあります。

また、母乳をつくる乳腺が発達する思春期の女性では、ホルモンのバランスが不安定になって、乳頭から分泌液が出現し、乳頭炎、乳輪炎になることもあります。

乳頭炎、乳輪炎になると、湿疹や、ただれが生じ、かゆみを伴います。分泌液が出現したり、はれが認められることもあります。

大体は、両側に症状が現れます。かゆみを伴うため、無意識のうちにかいてしまって悪化したり、治ってもまた再発し、繰り返すこともあります。下着のサイズや形が合っていないために、乳首や乳輪が下着と擦れ合い、炎症を繰り返すこともあります。また、化膿している状態であれば、下着にくっ付き、かさぶたのようになることもあります。

乾燥肌、アトピー性皮膚炎、陥没乳頭の女性が、乳頭炎、乳輪炎になりやすいとされています。

乳頭炎、乳輪炎になった場合には、まず化学繊維でできた下着をやめ、木綿やシルクなどの自然素材でできた下着に替えて、症状が治まるかどうか確かめます。また、患部を軟こうで覆い、下着と擦れ合わないようにガーゼ付きのばんそうこうなどで保護して、経過を観察すればよいでしょう。

それでも症状が改善しない場合には、皮膚科、ないし婦人科、乳腺科を受診することが勧められます。

乳頭炎、乳輪炎とよく似た症状が、乳房パジェット病よって引き起こされることがまれにあります。乳房パジェット病は、乳がんの特殊なタイプであり、乳頭炎、乳輪炎と同じように湿疹、ただれ、かゆみを伴います。そして、乳がん全体の1~2パーセントを占めるという非常にまれな疾患のため、見落とされがちです。発症年齢は乳がんよりやや高く、50歳代の女性に最も多くみられます。

症状としては、ヒリヒリとした痛みを伴う場合もあり、乳頭からの分泌物や出血もみられる場合もあります。通常の乳がんのようにしこりを触れることはないので、急性湿疹やたむしなどの皮膚病と間違えられやすく、乳がんの一種とは思われないこともあり注意が必要です。

進行すると、表皮が破れてただれ、円状に乳頭や乳輪を超えて拡大したり、乳頭が消失してしまうこともあります。

しかし、長期に放置したとしても進行する速度が遅いので、乳腺内のがん細胞が表皮内に浸潤することはまれであるとされています。早期に治療すれば予後は良好ながんで、転移が確認されなければ心配はないといわれています。

乳頭炎、乳輪炎の検査と診断と治療

皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による診断では、視診、触診で判断し、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、超音波(エコー)などで検査することもあります。

乳房パジェット病との鑑別が必要な場合は、顕微鏡で乳頭分泌物やかさぶたなどの細胞を見る細胞診で、パジェット細胞という特徴的な泡沫(ほうまつ)状の細胞が認められるかどうか調べます。

皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による治療では、乳頭、乳輪を清潔に保ち、塗り薬を使用します。

細菌の感染があれば、抗生物質入りの軟こうを塗り、感染がなければ、ステロイド剤などの軟こうを塗り、落ち着いたら保湿剤を塗ります。

乳房パジェット病の場合は、早期の乳がんと同じ治療法を適応し、病変部だけを切除して乳房を温存するケースと、乳房全体を切除するケースとがあります。検査の段階で病変が乳腺レベルにとどまっている場合は、美容的な観点を考慮して、放射線治療を併用しての乳房温存療法が選択される可能性が高くなりますが、進行程度や広がり具合によっては、乳房全体を切除するケースや乳頭を切除しなければならないケースもあります。

🇹🇴乳頭亀裂、乳頭裂傷

授乳に際して乳頭にひびが入って裂けたり、傷ができる状態

乳頭亀裂(きれつ)、乳頭裂傷とは、女性が出産を経験して新生児に授乳する際に、乳頭(乳首)の皮膚にひびが入って裂けたり、傷ができたりする状態。皮がむけてしまうこともあり、状態が悪化すると出血することもあります。

誕生後1年ぐらいまでの乳児は、母親の母乳を飲んで育ちます。特に新生児のころは、1度に飲める母乳の量が少ないため、1日の授乳回数は12回ほどで、多いケースでは15回にも及びます。

新生児が口で乳頭周辺をくわえて母乳を吸う吸綴(きゅうてつ)刺激を受けることで、母乳を作る働きをするプロラクチンや、母乳を出す働きをするオキシトシンなどのホルモンの分泌が上昇し、母親は母乳を分泌するようになりますが、生まれてすぐの新生児は想像以上に強い力で乳頭をしごくように吸ってきます。

新生児が乳頭に吸着するたびに、わずかな不快感や痛みが起こることがあります。この出産早期の乳頭の痛みは、ほとんどが母乳分泌のメカニズムが完全に機能し始めるまでに感じる一過性の乳頭痛です。多くの場合は出産後3~6日にピークを迎えて、その後母乳分泌が増加するに従って、痛みは消失していきます。

しかし、新生児が上手に乳頭周辺に吸着し、母乳を吸えない場合は、出産後すぐから始まる1日12回前後の授乳期ばかりか母乳育児をしている間はいつでも、乳頭の先端や根元の部分に亀裂、裂傷ができ、乳頭の痛みが起こる可能性があります。

新生児が乳頭を吸う力は強い上に、歯茎や舌でしごくように乳頭を刺激します。唾液(だえき)でぬれた乳頭の皮膚はふやけて傷付きやすいため、授乳中の乳頭は亀裂が入りやすく、裂傷ができやすい状態といえるでしょう。授乳時や、乳頭が下着でこすれた時に痛み、出血することもあります。

乳頭が指先ほど突出している通常の乳頭と異なって、乳頭の出っ張りが短く全体的に平たくなっている扁平乳頭、乳頭が乳房の内側に埋没している陥没乳頭だと、新生児が母乳を飲みづらく、より強く吸うことがあり、乳頭の先を傷付けることがあります。

また、新生児が効率よく母乳を飲むためには乳頭周辺を深くくわえる必要があるのですが、体勢がしっくりこない状態や添い寝で授乳をすると、乳頭周辺を浅くくわえてしまい、乳頭に余計な負担がかかって乳頭の先を傷付けることがあります。

授乳姿勢(抱き方)や新生児の口の乳頭周辺への含ませ方だけではなく、授乳後に新生児を乳頭から離す時も注意が必要です。まだ吸っているのに引っ張って引き離すと、乳頭の先を傷付けることがあります。

乳頭亀裂、乳頭裂傷ができて、そこから細菌が感染すると炎症が起き、乳口(にゅうこう)炎、乳腺(にゅうせん)炎を引き起こすこともあります。

乳頭亀裂、乳頭裂傷の自己対処法

乳頭亀裂の段階で授乳を続けられそうなら、授乳姿勢(抱き方)や、傷が当たらないような含ませ方を工夫して負担を軽くします。

まず、新生児に大きな口を開けてもらい、乳頭から乳輪部全体を含ませます。新生児が寝てしまう時は、足裏を刺激して起こして、口が大きく開いた時に首の後ろを支えてパクリと吸わせましょう。新生児の下唇と上唇がドナルドダックのように外側にめくれて、角度は130度ぐらいに大きく開きます。

次に、しっかり大きく含ませながら、傷付いた個所が新生児にしごかれないように、フットボール抱き、横抱き、斜め抱き、縦抱きなどいくつかの抱き方を行って吸ってもらい、どこか痛くない個所がないか探しましょう。片方だけの乳房の乳頭に傷付いた個所があるのであれば、もう片方だけで授乳を行い、症状の改善を待つこともできます。

新生児を乳頭から離す時は要注意で、乳頭を伸ばしながら無理やり離すのではなく、指を新生児の口角から入れるようにして透き間を作って引き離します。

傷が痛む時は、新生児がなめても大丈夫な薬を塗布しましょう。授乳後に、ピュアレーンやランシノーのような羊のオイルを塗布します。ピュアレーンやランシノーは付けたまま授乳しても差し支えありませんが、病院などで抗生物質配合の軟こうなどを処方された場合は、清浄綿などで拭き取ってから授乳をするようにしましょう。

乳頭裂傷まで進んで痛みを伴う場合は、直接の授乳を休むことをお勧めします。搾乳してほ乳瓶に移したものを飲ませるか、ミルクを飲ませてください。少し休むことで、症状は随分と改善されます。

乳頭保護器(ニップルシールド)を用いるのもよいのですが、傷の状態によっては悪化してしまう場合があります。

🇹🇻膣委縮症

閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態

膣(ちつ)委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。閉経後膣委縮症とも呼ばれます。

生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、膣委縮症です。

女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。

それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。

委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。

エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。

膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。

膣委縮症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。

明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。

近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。

軽度の膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。

外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。

🟪島根県大田市内の養鶏場で鳥インフルエンザ確認 ニワトリ40万羽殺処分始まる 

 島根県は31日未明、会見を開き、大田市にある県内最大の養鶏場で、死んでいたニワトリから高病原性の鳥インフルエンザウイルスが検出されたと発表しました。午前9時すぎから、この養鶏場で飼育されている採卵用のニワトリ40万羽の殺処分を始めました。  県は、「感染したニワトリの卵や肉は...