2022/08/02

🇨🇴疲れ目

目の症状と全身症状が出現した状態

疲れ目とは、いわゆる眼精疲労のこと。読書や自動車の運転などのように目を持続的に使った際に、目の疲労感、重圧感など目の症状だけでなく、疲労、頭痛、肩凝り、吐き気、倦怠(けんたい)感、いらいら、めまいなどの全身症状が起こり、休息や睡眠を取っても十分に回復し得ない状態をいいます。

最初は目が重い感じがしますが、目が痛くなったり、かすんできたり、まぶしくなったり、じんじんしたり、赤くなったり、涙が出たりします。

疲れ目で体に症状が現れる理由はよくわかっていませんが、物が見にくくなるために、よく見ようとして不自然な姿勢を取るのが肩凝りなどを引き起こすということは、容易に考えられます。また、視力が低下すれば、目を凝らしたり、集中力をより高める必要があることによる緊張の連続が、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感の原因かもしれません。精神的ストレスによって、目と体の不調が同時に起きている可能性もあります。

疲れ目をもたらす原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が、多く見受けられます。

疲れ目の原因は、大きく4つに分けて考えられています。目に原因があるもの、全身疾患に原因があるもの、精神的なもの、環境的なものです。

●目に原因があるもの

屈折異常によるもの

遠視、近視、乱視があったり、両目の屈折度に著しい差がある場合に、物が適正に見えないため、それを無理に調節して見ようとして、目を無理に働かせることによって疲れ目が発生します。眼球の内部では、フィルムに相当する網膜に何とかピントを合わせようとして、レンズに相当する水晶体の厚さを調節する筋肉である毛様体の緊張が続くからです。

遠視の場合は、調節力が低下し始める30歳代後半~40歳代にかけて起こりやすいのですが、20歳代でも起こります。

近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないために疲れ目が起きることも、少なくありません。例えば、眼鏡屋で近視の眼鏡を作る時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために疲れ目を訴える人を時々見掛けます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。

調整力の低下によるもの

調整力、つまり近くの物をはっきり見る力が低下している時も、疲れ目が発生します。老視(老眼)の場合がそうですが、若い人でも起こります。特に、老視は40歳代半ばから60歳ぐらいまでの間に急速に進み、この年齢層は疲れ目を訴える人の年齢層のピークと一致します。

調整力が低下しているために目が疲れる場合には、遠用鏡と近用鏡を両方作り、使い分ける必要があります。

斜視、斜位によるもの

物を見る時には両目が連動して動き、わずかに寄り目になって視線を一点に合わせます。両目の視線が一致せずに左右別々の方角を向いてしまうことを斜視といい、疲れ目の原因になります。一方、ふだんは両眼視できても、片目を手で隠すなどすると目の位置がずれる状態を斜位といいます。

斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって疲れ目は起こりませんが、斜位の場合は両眼視をしようと努力を強いられるために、疲れ目が現れやすくなります。水平方向の眼位(目の位置)の異常よりも、上下方向の眼位の異常のほうが、左右の目に映った像を一つにまとめて見る融像という働きの幅が狭いために、疲れ目を起こしやすくなります。

程度が強い斜位は手術が勧められますが、比較的軽い場合には、目を使いすぎないようにし、プリズムの眼鏡で斜位の矯正をすることもあります。

不等像視によるもの

左右の視力差が大きく、それを無理にレンズの度が相当違う眼鏡で矯正している場合、左右の目に感じる映像の大きさが異なる不等像視によって、疲れ目が起こります。この場合は、コンタクトレンズにすると疲れ目は起こりにくくなります。

その他の目の病気によるもの

逆さまつ毛、結膜炎、角膜炎などによっても、疲れ目が起こります。最近では、特にパソコンなどを使用する機会が増えたため、VDT(Visual Display Terminal:画像情報端末)作業によるドライアイが原因の疲れ目が増えています。

一連の細かい操作が必要となるVDT作業による目の疲れは、テレビを見ているのと比べものになりません。しかも、VDT作業中は、まばたきの回数が極端に減ります。その結果、涙が蒸発して、眼球の表面の角膜や結膜が乾燥する疾患であるドライアイになりやすくなります。

緑内障も、疲れ目の原因になります。網膜の視神経が障害されて視野が狭くなる疾患が緑内障で、初期には調節力が低下してくることがあり、老視が早くきたかと思い違いすることがあります。

また、緑内障の一種である慢性閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障の場合は、時々、霧がかかったように見えたりして疲れ目と感じることがあります。緑内障をしっかり治療せずにいると、失明することもあります。緑内障の人は眼球の内圧である眼圧が高い場合が多く、眼圧が高い時には頭痛が起きやすくなります。

白内障も、水晶体が濁るために視力が低下したり、まぶしさを感じたりして、疲れ目の原因となります。白内障は手術で治せますが、手術後に少し見え方が変わるので、それが疲れ目を起こすこともあります。

まぶたが垂れ下がってくる眼瞼(がんか)下垂も、視野の上のほうが見えなくなるので、 物を見る時に頭を後ろへ反らすなどしなければならず、疲れ目の原因になります。

●全身疾患に原因があるもの

全身疾患によっても、疲れ目が起こります。高血圧、低血圧、糖尿病、バセドウ病、貧血、自律神経失調症、月経異常、更年期障害、風邪、インフルエンザなど、さまざまな疾患で疲れ目が発生します。

●精神的なもの

職場での不適合、心身症、神経症、うつ病などによっても、疲れ目が起こります。ストレスが強くなると、不安感が異常に強まったり、いらいらして落ち着かなかったり、眠れないといった精神的なことに影響が現れる一方で、体に対しても、高血圧、血行不良、胃潰瘍(かいよう)といった多様な病気を引き起こす一つとして、疲れ目が起こることがあるのです。

●環境的なもの

最近注目されているVDT作業による疲れ目のほか、紫外線や赤外線、過度の照明などの光刺激による疲れ目があります。また、機械的刺激によるものとして、エアコンの風やごみなどがあります。化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、近年では、新築の家などで起こるシックハウス症候群が注目され、住居の建材に含まれる化学物質などの影響による体調不良と疲れ目の関係も指摘されています。

疲れ目の検査と診断と治療

疲れ目(眼精疲労)の原因を特定し、それが発見されれば排除することが必要です。原因が精神的なもの、環境的なものと予想が付いた時は、自分でそれをまず除外して下さい。

眼鏡やコンタクトレンズを使用している人では、目に合っているかのチェックも重要です。眼鏡の度などが合わない人は作り直したり、使用状況に合わせて眼鏡をいくつか作って使い分け、目の負担を軽くするのも一案です。

パソコンを使用する機会の多い人では、作業時の照明の明るさ、自分の姿勢、パソコンを置く位置をチェックしてみましょう。作業中は適度な休憩をとって目を休めて下さい。

室内が乾燥したり、エアコンの風が目に当たると、ドライアイを引き起こします。また、疲れ目の意外な原因として、周囲の人のたばこの煙も挙げられます。これらについては、家庭や職場で相談して調整してもらいましょう。

そして、睡眠を十分とりましょう。寝不足の時には、目を使う時間が長くなる一方で目を休める時間が減るのですから、目が疲れて当然です。目の筋肉は、体の中で最もデリケートな筋肉で、体の疲労がすぐ目にも現れてくるのです。趣味や散歩、スポーツなどで、ストレスを解消することも大切です。

疲れ目の背後に目や全身の疾患が疑われる時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。

眼科では、視力、視野、眼圧、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などの一般検査が、まず行なわれます。目に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて原因を精密検査します。

疲れ目の的確な治療は、その原因によって異なりますので、原因追及が最も重要です。ただし、いくつかの小さな原因が重なり合って目の負担が増え、疲れ目になりますので、原因と思われる病気を治したのに、疲れ目が治らないことも少なくありません。そのようなケースでは、問診や検査で原因と考えられるものを洗い出し、それを一つひとつ治療、解決していきます。

原因を特定できない場合にも、ビタミン剤の配合された点眼薬や内服薬で、症状が改善することがよくあります。ビタミン剤は、細胞の新陳代謝を助けるのです。

🇬🇫突き目(匐行性角膜潰瘍)

目を突いた時の傷に細菌が感染して、潰瘍を生じる眼疾

突き目とは、目を突いたために起こる角膜の外傷。匐行(ふくこう)性角膜潰瘍(かいよう)とも呼ばれますが、匐行性とはある方向に進行していくという意味です。

普通は、稲や麦の穂、木の小枝、草の葉などで、黒目の表面を覆う角膜を突いたとしても、傷が小さく細菌感染が起こらなければ、角膜の表面は修復能が高いため2〜3日で完全に治ります。しかし、何かで突いた時やゴミが刺さった時などに角膜にできた傷に、細菌が感染すると潰瘍ができます。

もともと慢性涙嚢(るいのう)炎のある場合は、細菌が常駐しているために特に潰瘍ができやすくなります。 感染する細菌は、ブドウ球菌、肺炎双球菌、緑膿(りょくのう)菌のことが多く、緑膿菌や真菌(かび)が感染すると重症になります。

急激な眼痛、まぶしさ、異物感などの刺激症状が強く起こります。涙が出て、まぶたははれ、白目の表面を覆う結膜は充血します。頭痛も起こり、視力はかなり低下します。

進行は早く、角膜の中央部にできた潰瘍は周囲および深部に向かって進行し、角膜の後方の前房にうみがたまり、適切な治療が行われないと、角膜に穴が開いて失明することもあります。

潰瘍が進んで細菌が眼内にまで移行し、炎症がぶどう膜、硝子体(しょうしたい)などに波及した場合には全眼球炎となり、眼球全体がしぼむことがあります。こうなると、治ってからも、黒目を覆う角膜が白く濁ったり、時にはこぶのように突き出して角膜ぶどう腫(しゅ)を残すことがあります。角膜ぶどう腫は、虹彩(こうさい)が角膜に癒着して混濁、膨張したものです。

潰瘍があまり進まなかった時は、濁りも限局しているので、瞳(ひとみ)の中心部に濁りが残らなければ、視力もそれほど障害されません。潰瘍が進んで角膜の全面に濁りが残った場合は、視力が著しく低下します。

突き目の検査と診断と治療

目を何かで突いた時は、軽くても早くに眼科医の診察を受けます。手当が遅れると失明することもありますが、初期に適切な治療を受ければ、大部分は治ります。ゴミが刺さった時は、こすらずに目を閉じて涙で流したり、水で目を洗ったりします。それでも異物感が残れば、早くに眼科医の診察を受けます。

治療としては、角膜異物があれば除去し、抗生物質の点眼や、眼球への注射、内服、静脈注射を行います。虹彩炎が起こるのを防ぐために、アトロピンの点眼を行って瞳を広げます。

黒目を覆う結膜が白濁し、混濁が全面に残った場合は、 潰瘍が治まった状態で角膜移植を行います。

🇸🇷突き指

指先から縦軸方向に力が加わって、手足の指に起こるさまざまな外傷の総称

突き指とは、指先から縦軸方向に力が加わって、指の関節周辺に起こるさまざまな外傷の総称。手の指だけでなく、足の指でも起こり得ます。

多くのスポーツ種目で発生し、 野球、バレーボール、バスケットボールなどの球技でボールを受け損なった時や、転倒して指を突いた時に発生しやすく、スポーツ外傷の中で最も頻度が高いものの一つです。スポーツ以外にも、自動ドアやエレベーターの扉の開閉時の接触事故などでも起きます。

いわゆる突き指には、指の関節の捻挫(ねんざ)、脱臼(だっきゅう)、靭帯(じんたい)の損傷や断裂、腱(けん)の損傷や断裂、打撲、軟骨損傷、骨折などが含まれます。 医学的には、予期せぬ指の外傷で、内出血はあっても止血が必要なほどの出血がない場合が突き指とされます。

このうち、頻度が高い外傷に槌指(つちゆび)があります。これには、指先にボールなどが当たることによって、指先に最も近い第1関節を伸ばす腱が断裂する場合と、この腱のついているところの裂離骨折による場合があります。いずれも指先が曲がったまま伸ばせなくなり、欧米で使われている木槌(マレット)の形状に似ていることから、槌指(マレット指)といわれています。

槌指では指先が曲がったままになり、自分の力で伸ばせなくなるほか、痛みやはれも認められます。脱臼や骨折があった場合も、指が異常に曲がった状態になります。このような変形がなくても、はれや内出血が強い場合には、骨折や靭帯損傷が疑われます。

突き指は軽いけがと思われがちですが、さまざまな外傷が含まれますので、受傷直後に指を引っ張るという行為はやるべきではありません。無理に引っ張ると、切れかかっていた腱や靭帯をさらに損傷することがあるからです。整形外科で実施する徒手整復法という患部を引っ張る手技は、腱や靭帯損傷がないと判断してから実施しています。

患部を氷などで冷やしてはれを抑え、骨折や脱臼の可能性もあるので患部を固定し、早めに整形外科、手の外科の医師を受診することをお勧めします。

患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指を突き指した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。

医師を受診せずに放置しておくと、いつまでもはれや痛みが続いたり、指の動きが悪くなったり、指の関節の変形や不安定性が残ったままになるケースも少なくありません。

突き指の検査と診断と治療

整形外科、手の外科の医師の診断では、指の痛み、はれ、変形があればX線撮影を行って、骨折や脱臼の有無を確認します。また、関節が不安定でぐらつきがあれば指に内反ストレス、外反ストレスを加えてX線撮影を行い、靭帯損傷の有無を確認します。

整形外科、手の外科の医師の治療には、保存療法と手術療法とがあり、外傷の種類や重症度によってどちらかを行います。保存療法では、腱や靭帯の損傷と骨折がなく必要な場合に徒手整復法を行った後、副子(ふくし)や装具、テープ、包帯などで体の外からの固定を行います。

手術療法は、第1関節が曲がったまま自力で伸びない槌指(マレット指)でずれのある骨折の場合、極めて整復が困難な親指の付け根の関節の脱臼の場合、内側の腱や靭帯が完全に切れている損傷の場合、骨折で欠けた骨のかけらの除去が必要となる場合などに行います。手術療法で整復や体の内からの固定を行った場合でも、保存療法と同じように体の外からの固定をすることもあります。

いずれの治療法でも、指の動きが悪くならないようにリハビリテーションを早期に行うことが重要になります。手術後に1カ月固定した場合には、固定期間の約3倍の3カ月程度のリハビリテーションが必要となります。

しかし、手術が必要になった場合にリハビリテーションをしても、指の機能は100パーセント戻るわけではありません。通常、指を曲げる屈曲角度はほぼ戻るものの、指を伸ばす伸展角度は完全には治らないと考えられています。ただし、指は通常曲げて使うので機能的には伸びなくても、日常生活では問題はありません。

🇵🇼ツツガムシ病

ダニ類のツツガムシの幼虫に刺され、引き起こされる感染症

ツツガムシ病とは、細菌のリケッチアを保有するダニ類のツツガムシの幼虫に刺されることによって、引き起こされる感染症。症状は、リケッチアを保有するマダニに刺されることによって感染する日本紅斑(こうはん)熱と酷似しています。

日本海側の河川領域にいるネズミに寄生するアカツツガムシの幼虫、日本海側の山林にいるネズミに寄生するフトゲツツガムシの幼虫、太平洋側の山林にいるネズミに寄生するタテツツガムシの幼虫に刺されることによって、ツツガムシ病は引き起こされます。

かつては秋田県、山形県、新潟県などで夏季に河川敷でアカツツガムシの幼虫に刺されて感染する風土病(古典型ツツガ虫病)でしたが、戦後はフトゲツツガムシ、タテツツガムシの幼虫に刺されて感染する新型ツツガ虫病の出現により、北海道、沖縄県など一部の地域を除いて、全国で発症がみられるようになりました。

感染しやすい時期は、フトゲツツガムシの活動する春から初夏と、タテツツガムシおよびフトゲツツガムシの活動する秋から初冬の2つの時期で、近年は毎年500人程度の報告があります。1950年に伝染病予防法によるツツガムシ病の届け出が始まり、1999年4月からは感染症法により4類感染症全数把握疾患として届け出が継続されています。

ツツガムシの生息場所は、草むら、やぶ、林の土の中。ツツガムシの幼虫は成長過程で一度地表に出て、アカネズミ、ハタネズミといった野ネズミなどの動物に吸着して組織液を吸います。その後は、土壌中で昆虫の卵などを摂食して生活します。

人間は、リケッチアを保有するツツガムシの幼虫に刺され、吸着されると、皮膚から感染します。潜伏期間は、5~14日で、人から人への感染はありません。

よく刺される部位は、頭髪部、わきの下、腰など。刺し口は、刺されてから2~3日で赤くはれ、4~5日で水疱(すいほう)、その後潰瘍(かいよう)となり、10日目ごろには周囲が赤い陥没した黒いかさぶたとなります。

刺されてから10日目前後から、全身の倦怠(けんたい)感、手足の痛み、頭痛を伴う発熱が起こります。高熱は1~2週間続き、発疹(はっしん)は2~5日間に現れます。径5mm前後、紅斑性、丘疹性で全身に出現しますが、胸、腹部、背部に多くみられます。7日程度で、発疹は消退に向かいます。

刺し口近くのリンパ節のはれは、ほとんどでみられ圧痛を伴います。全身のリンパ節のはれも、約半数にみられます。肝臓が大きくなる肝腫大と脾(ひ)臓が大きくなる脾腫大は通常、軽度です。

重症例では、播種(はしゅ)性血管内血液凝固症候群(DIC)による出血傾向、髄膜刺激症状、昏睡(こんすい)やけいれんなどの中枢神経症状、肝障害による黄疸(おうだん)、末梢(まっしょう)血管抵抗の弱まりや心筋障害による血圧低下、間質性肺炎や胸膜炎などを合併します。

重症例で治療が遅れると、多臓器不全で死亡することもあります。

発熱、刺し口、発疹があって、感染する可能性のある場所への立ち入り、発症した時期からツツガムシ病の可能性を疑ったら、直ちに治療を受けるべきです。発症後7日以後になると重症化の傾向が高いので、早期診断、早期治療が重要となるからです。

ツツガムシ病の検査と診断と治療

内科、感染症内科、皮膚科の医師による診断では、一般検査で、細菌などに感染すると血液中で一気に増えるCRP(C反応性タンパク)強陽性、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)およびALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)などの肝酵素の上昇がほとんどの例にみられます。

確定診断は、主に間接蛍光抗体法または間接免疫ペルオキシダーゼ法という方法によってリケッチアに対する血清抗体価の4倍以上の上昇、またはIgM(免疫グロブリンM)抗体の有意の上昇を測定することで行われます。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などによって、リケッチアの遺伝子の検出も行うこともあります。検査所見は日本紅斑熱のものと類似するため、鑑別が必要となります。

内科、感染症内科、皮膚科の医師による治療では、テトラサイクリン系の抗菌薬(抗生物質)を第一選択として、点滴静脈内注射か内服で使用します。そのほか、クロラムフェニコールも使用されます。通常1~2日で速やかに解熱し、症状も軽快します。ただし、薬剤の投与は7~10日継続します。

細胞壁がペプチドグリカンを持たないというリケッチアの生物学的特性のため、ペニシリンを始めとするβ—ラクタム系抗菌薬は無効です。

ツツガムシ病の予防ワクチンはないため、ダニ類のツツガムシの幼虫に刺されないことが、唯一の感染予防法です。

そのポイントは、レジャーや作業などで、草むらややぶなどツツガムシの幼虫が多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。山野などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。

ツツガムシの幼虫に刺され、吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処理してもらうことです。

🇵🇭爪かみ

爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態

爪(つめ)かみとは、爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態。爪かみ癖、かみ爪、咬爪(こうそう)症とも呼ばれます。

自分の爪をかむ行為は、実は子供にとっては特殊なことではありません。4、5歳から10歳くらいの子供がほとんど無意識に爪をかむ癖を持っているのは、珍しいことではありません。

一般的には、長ずるにつれて自然になくなる癖ですが、時には習慣化して、大人になっても爪をかむ行為が続く場合もあります。一般に精神的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになることもあります。

爪かみの子供は、爪を切る必要がないくらい深爪で、爪の先端がギザギザになっていたり、爪の甲の表面がデコボコしていたり、指先や爪郭部が荒れて傷ができていたり、爪の根元部分の甘皮がささくれたりしています。

深爪になったばかりのころは直接皮膚がさらされているので、痛みを伴い、出血がみられたりします。また、皮膚がさらされているので細菌感染が生じ、爪の甲が完全に失われることもあります。中には、足の爪までかんでしまう子供もいます。

爪をかむ行為で、歯並びや歯のかみ合わせが悪くなることはありませんが、チック、指しゃぶり、歯ぎしり、夜驚などを併せ持っていることもあります。

一般に子供の欲求不満、過度の緊張、不安や不満、退屈など精神的緊張の置き換えと考えられ、子供は精神的な緊張を和らげる手段として爪をかみます。

爪かみの子供の性格は、神経質、緊張しやすい、敏感、活動的、攻撃的、動作が落ち着かないなどの特徴を持ち、情緒や社会性の未熟さがみられることが多いようです。

子供が緊張する背景としては、親の過干渉、放任、緊張状態が持続する厳格なしつけなど、親子関係に情緒的な安定が保たれていないことが多いようです。

爪かみの治療

子供の軽度の爪かみの場合は、保護者による指導の必要はなく、子供が緊張する心理的な背景を配慮するようにします。

小学校に入るころになると、爪かみは習慣化して、子供自身が治そうとしないとなかなかやめられません。やめさせるために家庭でできることとしては、汚れた爪をかむのは不潔なため清潔のしつけとしてやめさせる、深爪の危険を説明する、爪を保護する透明なマニキュアを塗り爪の大切さを教える、不安やストレスの要因を見付けて除去していく、やめた時のご褒美を子供と約束してカレンダーにシールを張るなどが考えられます。

ひどい場合には、精神科、心療内科を受診させます。

大人になっても爪かみがひどい場合も、精神的要因が絡んでいるなら、精神科、心療内科を受診します。爪かみは自傷行為であり、心が鳴らす警笛でもありますから、胸の中にある傷みや不安など精神的緊張と向き合い解決することは、爪かみの改善、解決につながることもあります。

爪、皮膚の症状に対しては、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診するか、ネイルサロンで相談してみるのもよいでしょう。

自分で爪の甲にマニキュアやクリームを塗ったり、爪ヤスリなどでなるべく自然の丸みを帯びた形に爪を整え、グッズで爪磨きすることで、きれいな爪を保ちたいと思い、爪をかむことを自然と避けるようになる実例は多くあるようです。爪をかむことによって変形がひどい場合は、十分に伸びて変形が治るようになるまで、付け爪(人工爪)をつけるようにし、自分自身の爪を隠して保護することが効果的な実例も多くあるようです。

また、ネイルサロンできれいにマニュキアを塗ってもらい、きれいに爪を整えてもらうことで、爪かみが治ることもあります。ネイルサロンの中には、ネイルアートだけでなく、深爪矯正に力を入れ、自爪の強化や、自爪の回復ができるネイルケアを行っている所もあります。

ひどい深爪状態になってしまった爪は、治そうとして爪を伸ばしても、先端の白い部分が伸びるだけで、皮膚から浮いた状態になってしまいますが、ネイルサロンの深爪矯正を受けることで、きれいな自爪を取り戻すことが可能です。自爪がよみがえるまでの間の人工爪も、自然に見えるものを作成してくれるため、男性でも抵抗なく付け爪をすることが可能です。

🇻🇳爪乾癬

皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れ、爪が白濁、肥厚する状態

爪乾癬(つめかんせん)とは、慢性の経過をとり治りにくい皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れた状態。

爪の水虫(爪白癬〔はくせん〕)と似た症状が現れ、爪の甲が変形して白く厚ぼったくなり、悪化すると表面がはがれ落ちます。爪の周囲に乾癬による皮膚病変を認め、頭部、腰部、下腿(かたい)前面などの好発部位にも、乾癬特有の皮膚病変を認めます。

乾癬は、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちる皮膚疾患。炎症性角化症の代表で、慢性の経過をとり、なかなか治りにくい疾患ですが、周囲の人に移ることはありません。

日本では3〜16万人の発症者がいると推定されており、近年は増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30〜40歳代に発症します。女性では、10歳代と50歳代の発症が多いともいわれています。

乾癬の起こる原因は、いまだはっきりとしていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常の皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御しています。このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。

健常の皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを、一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。

この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。

一つひとつの発疹(はっしん)は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、次第に周囲に拡大するとともに厚い鱗屑を持つようになり、ある時を境によくなって、鱗屑がなくなるということを繰り返します。その時の鱗屑の大きさは、一定していません。このように、よくなったり悪くなったりを年余に渡って繰り返します。

乾癬では、ケブネル現象といって、繰り返しこすったり、傷付いたりした個所に、数日してから新しい発疹が出てくることがあります。これは、体の中でよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻(しり)、頭の毛の生え際などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。

また、アウスピッツ血露現象といって、鱗屑を無理にはがすと、点状に出血がみられることがあります。これは、乾癬の特徴的な表皮の増殖の仕方と関係しています。すなわち、表皮が厚くなった部分と薄くなった部分が隣り合っているため、薄い表皮の下にある血管が傷付いて生じると考えられます。

鱗屑が厚い時にかゆみがありますが、基本的には自覚症状もなく、内臓にまで疾患が及ぶことはありません。

こういった乾癬の典型的症状のみがみられる例を尋常性乾癬といい、尋常性乾癬の病変が爪の表面に現れた状態が爪乾癬です。乾癬の発症者の3割から5割が爪乾癬を発症するとされますが、生涯のうちでは8割から9割が爪乾癬を発症するとされます。

爪乾癬は一度、手や足の爪に症状が現れると、一個所にとどまらず、両手や両足の爪に症状が広がります。そして、重症化すると、爪の甲が変形して白濁、肥厚するだけではなく、爪がはがれ落ちるほどになり、爪が一時的になくなってしまう状態になります。

爪乾癬の症状に気付いたら、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診し、治療法を相談します。多くのケースでは外来通院治療が行われ、重症化した場合には入院治療が必要なこともあります。

爪乾癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、爪の症状や特徴的な皮膚の発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。

治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと、診断が確定します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、一般的な尋常性乾癬や爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせたいろいろな治療を行います。

症状に合わせた治療の方法には、外用薬、内服薬、光線療法などさまざまあります。症状が軽い場合には主に外用薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。

外用薬には、炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。しかしながら、皮膚ではなく爪に現れた爪乾癬の場合、外用薬では深部に浸透させることが難しいのが実情です。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

いずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。乾癬の多くは慢性に経過しますが、自然に軽快、治癒することもあります。

生活上の注意としては、こすると新しい発疹が出てくるケブネル現象がありますので、皮膚をこすり過ぎないように注意します。入浴は構いませんが、こすり過ぎず、また鱗屑を無理にはぎ取らないようにします。ただし、鱗屑には発疹の慢性化に関係する物質も含まれていますので、ぬるま湯につかって軟らかくした後で無理なく鱗屑を取ることはよいことです。

日光浴も効果があるので、適度に行います。急激に日焼けをするとやはりケブネル現象で悪化することもあるので、あくまでも適度に。風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがあります。風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが疾患を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。

🇵🇪爪白癬(爪の水虫)

水虫が爪に発生し、爪が白濁、肥厚

爪白癬(つめはくせん、そうはくせん)とは、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもの。爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。

白癬とは、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)で、高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)質を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になり、足白癬を始めとして手白癬、頭部白癬、体部白癬などを生じます。

この足白癬や手白癬を放置していると、白癬菌が爪の中に感染して、爪白癬になります。爪は表皮が変化して硬くなった皮膚の一部であり、白癬菌の栄養源となるケラチンでできていますから、爪もまた水虫にかかるというわけです。

爪白癬は足指に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。最近の統計によると、足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。日本国内に500万~1000万人の発症者がいるという統計も報告され、60歳以上の人の4割が発症しているとも推計されていますが、治療されずに放置されたままのケースがほとんどです。

爪の症状の現れ方には、いくつかあります。最も多いのは、爪の甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪の甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなるものです。爪の甲の先端部が楔(くさび)状に濁って、角質部分が厚くもろく全体として爪が厚くなるものも、よくみられます。そのほかに、爪の甲の表面が点状ないし斑(まだら)状に白濁するのみのものもあります。まれに、爪の甲の付け根が濁ることもあります。

かゆみ、痛みなどの自覚症状は、ありません。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

爪白癬の検査と診断と治療

成人の爪白癬の発症率は、かなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立、歩行障害、転倒事故の原因になることも、指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く医師による治療を受けます。

医師による爪白癬の検査では、ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

治療法としては、水虫の外用薬はほとんど効果がなく、グリセオフルビン、イトラコナゾールなどの内服が必要です。少なくても、3〜6カ月間の内服します。硬く厚くなった爪の外側から外用薬を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

従来の飲み薬は、1年以上服用しなければなりませんでした。近年開発された薬は、内服をやめた後も有効成分が爪の中にとどまって効果が持続しますので、従来に比べ治療期間が大幅に短縮されました。しかし、肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

生活上で爪白癬に対処する注意点を挙げると、真菌(カビ)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。爪白癬や足白癬の場合、ふだんから足の清潔を心掛けることは予防のためにも大事です。家族で他に水虫の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...