2022/08/02

🇵🇱癜風(黒なまず)

成人の胸や背中に、褐色のまだらが発生

癜風(でんぷう)とは、かびの一種である癜風菌の感染で起こる皮膚病。黒なまずとも呼ばれて有り触れた疾患ですが、あまり疾患名は知られていません。

癜風菌は皮膚に普通に存在して疾患を起こさない常在真菌で、イースト型(丸い型)として存在しています。菌糸が伸びた型で癜風を起こしますが、存在すると必ず起こるわけではありません。残念ながら、起こる人と起こらない人の差が何かかはわかっていません。癜風菌が成育するには脂分が必要なため、皮脂の分泌が関係しているといわれます。

症状としては、主に成人の胸や背中などに、1~2cmの円形または楕円(だえん)形の薄茶色のしみのような斑点(はんてん)ができます。時には、斑点がたくさんできてくっつき、次第に広がっていきます。逆に、薄く色が抜ける白色の斑点ができることもあります。かゆみなどを伴うことが少ないため、気が付かないことも少なくありません。放置すると、色素沈着や白斑が長期化することがあります。かゆみを伴うと少し赤みがあります。

癜風は、汗かきの男性に多い傾向があり、運動選手にもよくみられます。汗をたくさん吸い込んだアンダーシャツや練習着をよく洗濯をせずにそのまま干し、乾かないうちにまた着たりすることで、感染しやすいといえます。干す時の管理が悪かったり、ほかの選手のユニホームを借りて着たりすることにより、そのチーム全員がそろって癜風になることもあります。

なお、癜風菌は、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の発症への関与が疑われています。また、にきび、毛嚢(もうのう)炎に似たマラセチア毛包炎を起こすことがあるので、注意が必要です。

癜風の検査と診断と治療

癜風(黒なまず)の診断では、薄茶色や白色に変色した部分をメスなどでこすると、皮膚が粉を吹いたようになり、それをとって顕微鏡で見ると、たくさんの癜風菌が見られます。

治療は、サルチル酸アルコールや抗真菌剤の塗布、抗真菌剤の内服を、角質層の癜風菌を追い出すまで根気よく続けます。初期の癜風に対して抗真菌剤はよく効きますが、白斑が長期化した場合は治療は難しく、抗真菌剤は進行を止める程度の効果しかありません。治療によって、癜風菌の細胞膜の合成を阻害し、癜風菌がいなくなっても、しばらく薄茶色、または白色のしみが残ることがあります。

予防法として、夏に汗をかく機会の多い人は、こまめにシャーワを浴びたり、下着などを清潔に保つことが必要です。

🇺🇾椎間板ヘルニア

椎間板の一部がずれて、神経を圧迫する疾患

椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、椎間板の一部がずれて起こる疾患。椎間板とは、脊柱(せきちゅう)の椎体と椎体の間にある円板状の軟骨組織で、骨に対するクッションの役割を果たしています。

椎間板ヘルニアは、腰椎に起こるものと頸椎(けいつい)に起こるものが多く、それぞれ症状が異なります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは、脊柱のうち腰部にある腰椎の椎間板の一部がずれ、神経を圧迫する疾患。頸椎、胸椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

腰椎は、脊柱(背骨)のうちで腰の部分を構成する骨で、5つの椎骨からなります。上から第1腰椎、第2腰椎と呼び、一番下が第5腰椎。その椎骨の連結の主な部分は、前部の椎体と後部の脊椎関節突起で、前部の椎体と椎体の間にはそれぞれ椎間板が挟まっていて、クッションのような役割を果たしています。椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

体重や外部からの荷重が椎体に加わると、椎間板が分散して受け止めて次の椎体に伝え、ある程度弾力的に伸縮するために、背中や腰を曲げたり伸ばしたりすることができるような構造になっています。

ところが、椎間板には血管がないために、何かの具合で損傷を受けると、回復が遅い上に組織の老化的な変性が起こりやすく、そこに荷重が加わると線維輪に亀裂(きれつ)が入り、中にある髄核が脱出して腰椎椎間板ヘルニアを起こします。

脱出は前でも横でもどちらの方向へ出てもヘルニアですが、後方へ出たのが一番問題になります。後方の脊柱管には、脊髄ないし馬尾(ばび)神経と、それから枝分かれして末梢(まっしょう)へ分布する神経の根部があるため、ヘルニアによって圧迫されると激しい痛みやまひを起こすからです。

腰椎椎間板ヘルニアは、第4、第5腰椎間に起こることが最も多く、次いで第5腰椎とその下の仙椎間に多く認められ、10歳代の後半から30歳代までの比較的若い年齢層によく起こります。

切っ掛けとなるのは、重い物を持ち上げようとした時や、体をひねった時などです。腰がぎくりとして、そのまま立ち上がれなくなったというような急性腰痛症(ぎっくり腰)の症状で現れるのが一般的。また、顔を洗おうとして前かがみになった拍子とか、特別な動作をしないのに自然に起こることもあります。

初期は腰痛のみのことが多いのですが、次第に脚の痛みやしびれを伴ってきます。腰痛と左右どちらかの脚の痛みを現すことが多いのですが、時に両脚のしびれを来すことがあります。この脚の症状は、座骨神経を刺激することによって起こる座骨神経痛です。仰向けに寝て、ひざを伸ばしたまま痛む側の足を上げようとしても、痛みがひどくなって十分に上げられません。若年者の腰椎椎間板ヘルニアでは、脚の症状がなく腰痛のみのこともあります。

さらに症状が進むと、運動神経も障害されるようになり、脚の筋力が低下します。排尿障害、排便機能の異常が現れることもあります。

第4腰椎以下の下部腰椎部のヘルニアは、片側だけの症状にとどまることが多いのに対し、第3腰椎以上の上部腰椎部の場合は、両側に症状が起こることが多く、脊髄腫瘍(しゅよう)と同じような症状を現すことがあるので、その区別が必要になります。

頸椎椎間板ヘルニア

頸椎椎間板ヘルニアとは、背骨の最上部にある頸椎の椎間板の一部が後方へずれ、神経を圧迫する疾患。胸椎、腰椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

背骨のうちで首の部分を構成する骨が頸椎であり、7つの椎骨からなります。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、一番下が第7頸椎。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっていて、椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を果たしています。この椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

頸椎椎間板ヘルニアになると、椎間板の線維輪に亀裂が入り、中にある髄核が飛び出して脊髄や神経根を圧迫し、さまざまな神経症状が現れます。頸椎の中でも首の根元に位置し、頭蓋(とうがい)骨を支えるのに最も負担が強いられる下位の頚椎である第5、第6頸椎間に、最も多くヘルニアが認められます。

椎間板の年齢的な変性が基盤となり、頸椎への運動負荷が加わることが原因となって発生します。このために、頸椎椎間板の変性がある程度進み、頸椎への運動負荷の多い年代である30〜50歳代が好発年齢になります。

椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、手足の痛みやしびれなどのさまざまな症状が出てきます。代表的な症状は首の痛みや凝りで、午前中は比較的症状が軽くても、午後から夕方になるにつれて症状が強くなります。

脊髄が圧迫されている場合、手のしびれが現れます。手のしびれは片側だけの時もあり、次第に反対側にも現れることもあります。最初から両側にしびれが現れていることもあります。手指の細かな運動もしづらく、字を書いたり、はしで豆をつまんだり、魚肉をほぐすことができにくくなったり、衣服のボタン、特に目で見ることのできない首回りのボタンの止め外しが難しくなります。

脚にも症状が出て、腱(けん)反射が高進し、脚がこわばって歩きにくくなる痙性(けいせい)歩行が現れます。階段の昇降に手すりが必要になり、特に階段を降りにくくなることが多くみられます。

神経根が圧迫されている場合、主に後頸部から肩、手指にかけてズキズキする痛みが現れます。この痛みは、首を後ろに反らすと強まるのが特徴で、神経根の圧迫がますます増強されるためです。そして、上肢、手指の筋力低下も現れます。

また、頸椎椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手足に発生するしびれや痛みの部位、触覚や痛覚などの知覚障害が起こる部位に違いがみられます。排尿、排便の障害を起こすこともあります。

椎間板ヘルニアの検査と診断と治療

腰椎椎間板ヘルニア

腰痛だけではなく、脚の痛み、特にひざよりも先まで痛みがある場合は、整形外科を受診します。無理に腰椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、腰椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。近年は、MRI検査によって診断が容易になりましたが、無症候性のヘルニアが多数見付かる問題も生じています。症例によっては、脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

治療では、骨盤の牽引(けんいん)療法が効果的です。腰部の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、腰部のコルセットなども効果的です。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤が投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するためにホットパックなどの温熱療法、体操療法、腰部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

頸椎椎間板ヘルニア

頸椎椎間板ヘルニアの症状に気付いたら、整形外科を受診します。無理に頸椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、頚椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。症例によっては、脊椎・脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

治療では、頭蓋の牽引(けんいん)療法が効果的です。首の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、頸部のカラー(えり巻き式補装具)なども効果的です。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤を投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するために温熱療法、体操療法、頚部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

🇦🇹椎間板変性症、変形性脊椎症

長年の使用による椎間板の変性と変形

椎間板(ついかんばん)変性症とは、椎骨をつないでいる椎間板に老化など何らかの変性が生じ、組織の構造や成分が変化したために起こってくる疾患。軟骨である椎間板が変性すると、次第に厚さが薄くなり、椎間が狭くなります。

壮年期から老年期によくみられ、無症状のこともありますが、体を動かすと腰痛が起こることがあります。

椎間板変性症が進むと、椎間板のクッション性が少なくなり、椎間板に接する椎体と椎体がぶつかりやすくなります。同時に、靭帯(じんたい)の変化も加わった結果、骨のふちに骨棘(こっきょく)という、とげができてきます。これはちょうど、長く使った金づちのように、椎体の周辺に骨の突起物ができた状態で、骨の輪郭がでこぼこした感じになります。そして、とげが神経を刺激したり、圧迫したりすることで、痛みが引き起こされます。これが変形性脊椎(せきつい)症です。

変形性脊椎症は、高齢者や重労働者に多くみられる疾患で、長年の過度の使用による組織の変化を基盤にして起こります。高齢者では程度は違いますが、ほとんどの人に症状がみられるので、加齢に伴う生理的な変形ともいえます。若い頃に重労働や激しいスポーツを行ってきた人では、40歳以降に発症する場合が多く、頸椎(けいつい)や腰椎に起きやすくなります。

脊椎の変形が長期間に渡って、徐々に進行する場合は、痛みなどの自覚症状を伴わないことが少なくありません。比較的急速に進行する場合には、症状も強く、体を動かすと痛んだり、押すと痛みが起こることがあります。

変形が発生する場所によって、痛みを感じる場所が違います。頸椎に発生した場合は、自覚症状がない時もありますが、多くは脊髄圧迫による手足のしびれ、肩凝りを感じたり、首の後ろに痛みを感じます。頸髄が圧迫されると、手足のしびれを感じたり、細かい字を書いたりボタンをかけるなどの軽作業が困難になったり、けいれんして歩きにくくなったりします。腰椎に発生した場合は、腰痛はもちろんのこと、下肢のしびれがあります。腰を曲げたり、反らしたりすると痛み、足に力が入らなくなることもあります。

変形性脊椎症に加えて、脊髄や馬尾(ばび)神経が収まっている脊柱管が狭くなる脊柱管狭窄(きょうさく)症や、椎間板ヘルニアなどを引き起こすと、症状はさらに悪化します。

椎間板変性症、変形性脊椎症の検査と診断と治療

椎間板変性症、変形性脊椎症は主に老化によるもので、でき上がった変形を元に戻すことは困難なため、治療は対症療法になります。安静にした上で、薬物療法、温熱療法、牽引(けんいん)療法、体操療法などの治療法を行い、それらで症状が改善されない場合や、神経がまひしたりした場合は手術療法が行われることもあります。

しびれや痛みがある場合は、まず局所の安静を保つことが大切で、しばらく床に就いているとか、コルセットを着用します。症状が薄れてきたら、温熱療法や頸椎牽引(けんいん)、骨盤牽引も有効です。強い痛みに対しては、消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの薬剤を使用したり、ビタミン剤を補助的に使用します。注射しやすい場所ならば、ステロイド剤と局所麻酔剤とを注射するのも効果的です。

症状が軽症であれば、できるだけ体を動かして、体を軟らかくするようにします。多少痛いからといって安静にしすぎると、背骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)が少しずつ弱くなるために腰痛が出るなど、かえって症状が悪化したりする場合がありますので注意が必要です。コルセットなどを着用して負担を少なくする方法もありますが、日常あまり使いすぎると筋肉が弱ってしまいますので、最小限に抑える必要があります。

軽い体操、ウオーキング、水中ウオーキングなどの運動をしたり、風呂に入って体を温めた後ストレッチをすることで、周りの筋肉の緊張や、こわばりがとれます。重い物を持つなど、無理な姿勢や動作は避けます。

🇧🇴椎骨動脈解離

首の左右を通る椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が動脈の壁の中に入る疾患

椎骨(ついこつ)動脈解離とは、首の左右を通って脳に血液を送っている椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が壁の中に入る疾患。

動脈の壁は内膜、中膜、外膜の三層構造から成り立っています。この動脈の壁が層と層の間や、層内で裂けて、血流が壁の中に入る状態を動脈解離と呼びます。

椎骨動脈の血管が裂ける原因は、はっきりとはわかっていません。中年の成人に、はっきりした誘因なしに発生します。しかし、頭をぶつけたり、首を回したりしたことが、引き金になることがあります。ゴルフのスイング中や、カイロプラクティックなどでの治療中、美容院などでのシャンプー後に起こる場合もあります。

椎骨動脈解離を起こした場合、たいてい急に首の後ろや後頭部に激しい痛みを感じます。

解離を起こした動脈の内腔(ないくう)は狭くなって、この狭窄が高度になれば一過性脳虚血発作を起こしたり、裂けた血管の壁に血液が入り込んで膨らんで血管をふさぐと脳梗塞(のうこうそく)を起こすことがあります。さらに、内出血したところから血管が破れると、くも膜下出血を起こして激しい頭痛がし、命にかかわる危険もあります。

40〜60歳代の発症が多く、くも膜下出血の患者の中では5パーセント程度、脳梗塞の患者の中では1パーセント程度いると考えられています。

椎骨動脈解離は古くから知られてはいましたが、臨床的に明確に認識されるようになったのは、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像診断が普及してきた最近のこと。ここ数年の間に、椎骨動脈解離と診断されるケースは急速に増加しています。その多くは症状を残さず杜会復帰しているので、従来ならば原因の明かでない後頭部痛ないし後頸部(こうけいぶ)痛として、対症療法のみが施されていたケースであろうと考えられています。

現在でも、多くの自然経過のよいケースが椎骨動脈解離とは診断されないで、対症療法のみを受けている可能性があります。通常は自然経過がよいので大きな問題にはなりませんが、脳梗塞、くも膜下出血など重篤な症状を起こすこともあるので、注意する必要があります。

椎骨動脈解離の検査と診断と治療

脳神経外科の医師による診断では、椎骨動脈解離を疑ったならば、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)、血管造影検査を行って確定します。くも膜下出血の有無はその後の治療を大きく左右するので、一般的な方法で確定します。くも膜下出血の状況はCT(コンピューター断層撮影法)検査によって判明し、出血量が少なくCTでははっきりしない場合は髄液を採取して検査します。

脳神経外科の医師による治療は、椎骨動脈の解離だけなら、通常1カ月の安静で血管の裂け目が固まるので、痛み止めを注射しながら安静にします。血栓ができないような薬を点滴することもあります。

椎骨動脈解離が再発することはまれで、同じ場所がもう一度、裂けることはあまりありませんが、避けたところがこぶになった場合は、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの検査を行い、破裂の危険性を調べます。

予防法としては、たばこは血管に悪影響を及ぼすので、禁煙、節煙を心掛けます。

🇨🇱通年性アレルギー性鼻炎

季節を問わず1年中、鼻詰まりなどの症状が現れやすい鼻炎

通年性アレルギー性鼻炎とは、季節に関係なく、年間を通じて起こりやすい鼻炎。

アレルギー性鼻炎は、季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎の2種類に分かれています。季節性アレルギー性鼻炎のほうは、特定の季節にのみ起こる鼻炎で、そのほとんどが日本人の国民病とも呼ばれる花粉症です。花粉症は、風の媒介で受粉する風媒花の花粉を抗原(アレルゲン)としますので、花粉が飛ばない季節には発症しません。

通年性アレルギー性鼻炎のほうは、季節に関係なくいつでも発症し、1年中続くこともあります。症状は、季節性アレルギー性鼻炎と変わらず、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)が主となります。

鼻から吸い込まれた抗原が鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして、通年性アレルギー性鼻炎を発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ダニ、ハウスダスト(室内のほこり)、カビや細菌です。

日本の住宅の布団やカーペットなどに潜むダニの約九割を占めるヒョウヒダニ、中でもヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類が、主な原因となります。人やペットの抜け毛、フケなどが含まれているハウスダストをエサとして繁殖するダニの死骸(しがい)も、原因となります。

人やペットの抜け毛、フケ、ゴキブリなどの虫の死骸やフン、織物の繊維が含まれているハウスダストも、原因となります。室内の空気中を浮遊しているカビの胞子や室内の細菌も、原因となります。現代の住宅は密閉度が高く、湿度も高いため、ダニ、カビ、細菌が繁殖しやすくなっています。

外部からダニ、ハウスダストなど異物である抗原が侵入した時に、その抗原に対応する特定の抗体(IgE抗体)が体内に存在すると、抗原と抗体が結合し、抗原抗体反応が起こります。抗原抗体反応が起こると、肥満細胞や好塩基球などの細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学伝達物質が遊離され、その作用でアレルギー反応が起こります。

ヒスタミンが鼻の粘膜の三叉(さんさ)神経を刺激したり、自律神経のバランスを崩して副交感神経の働きを優位にするために、くしゃみや、透明なさらさらとした鼻水の過剰分泌、鼻のかゆみなどが起こります。ロイコトリエンやトロンボキサンなどは、鼻の粘膜の血管を刺激して拡張させるために、鼻詰まりも起こります。

鼻詰まりが強く、くしゃみや鼻水を感じない場合や、くしゃみと鼻水が強く、鼻詰まりを感じない場合などがあります。アレルギー性結膜炎を合併することも多く、目のかゆみや充血、流涙がみられることもあります。口の中とのどのかゆみ、のどの痛み、皮膚の炎症などが起こることもあります。

鼻の奥と中耳をつないでいる耳管がはれることもあり、特に小児では聴力が低下したり、慢性中耳炎になったりすることがあります。また、鼻の周囲にあって骨で囲まれた空洞である副鼻腔(ふくびくう)炎を繰り返すことで、鼻の粘膜組織が増殖して鼻ポリープができることもあります。

ダニやハウスダストを抗原とする通年性アレルギー性鼻炎では、しばしば気管支喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎を併せ持っています。

近年、冷暖房が普及して住宅の空気が密閉されるようになったことで、ダニやハウスダストが室内に蓄積されやすくなり、通年性アレルギー性鼻炎を発症する人が増えたとされています。さらに、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎と、通年性アレルギー性鼻炎の両方を発症する人も増加傾向にあります。

常に鼻炎に悩まされている人は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して、症状を引き起こす原因が何かを調べることが勧められます。原因が特定できれば、日常生活の中でそれを避ける工夫ができ、症状の軽減につなげることが可能になるためです。

通年性アレルギー性鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず鼻炎の症状がアレルギー性かどうかを検査で調べます。検査には、問診、鼻鏡検査、鼻汁検査などがあります。

問診では、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が始まった時期、症状が1年中起こるのか季節と関連して起こるのか、症状の種類と程度、過去の病歴、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などほかのアレルギー性疾患の併発の有無、副鼻腔炎や鼻ポリープの併発の有無、家族の病歴などを明らかにします。

鼻鏡検査では、専用のスコープを使って直接鼻の粘膜の状態を観察します。通年性アレルギー性鼻炎の場合は、鼻の粘膜が全体的にはれ上がって白っぽく見え、透明の鼻水が認められます。また、副鼻腔炎、鼻ポリープなどほかの疾患があるかどうかも観察します。

鼻汁検査では、綿棒などで採取した鼻水の中に、白血球の一種の好酸球という細胞がどの程度含まれているかを調べます。抗原抗体反応が起こると、鼻水中の好酸球が増加するので、アレルギー性鼻炎の診断の助けになります。

アレルギー性であれば、原因となる抗原は何かを検査します。検査には、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストがあります。

特異的IgE抗体検査では、抗原抗体反応を起こす抗体(IgE抗体)が血液中にどの程度含まれているか、その抗体がどんな種類の抗原(アレルゲン)と結合するか、採血して調べます。

皮膚テストでは、可能性のある抗原のエキスを前腕の皮膚に注射するか、皮膚につけた引っかき傷に滴下して反応を調べます。15〜20分後に、皮膚が赤くはれる面積と程度で判定します。

鼻粘膜誘発テストでは、可能性のある抗原エキスの染み込んだ小さな紙を鼻の粘膜に張り付け、アレルギー反応を調べます。5分後にくしゃみ、鼻水、鼻詰まりがどの程度出現するかで判定します。

鼻汁検査、特異的IgE抗体検査または皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストの3つのうち2つ以上が陽性の場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず抗原の除去、回避に努めます。ダニやハウスダストが抗原であれば、室内の清掃をこまめに行い、布団や枕(まくら)に防ダニカバーを付け、空気清浄器を使用するのも有効です。

次に、減感作療法(特異的免疫療法)という体質改善の治療や、抗アレルギー薬で症状を抑える治療を行います。

減感作療法は、抗原に体を慣れさせ、抗原に接しても症状を起こしにくくする治療です。現在のところ、長期にわたって症状の出現を抑えることが可能な唯一の方法であり、週に1回くらいの割合で抗原希釈液を注射し、徐々に濃度を濃くしていく治療を2~3年続けます。治療終了後にも、症状の改善が持続します。

最近、長期にわたる通院の負担を軽減するのを目的として、急速減感作療法がいくつかの医療機関で行われています。副作用の出現も危ぶまれるために入院して行う場合もありますが、従来の減感作療法と同じか、それ以上の効果があるといわれています。

薬物療法では、ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用を抑える抗ヒスタミン薬や、化学伝達物質の遊離を抑えるいわゆる抗アレルギー薬、副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬、自律神経薬などを、症状やそのほかの状況に応じて内服薬、点鼻薬として使用します。

症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいため、長期間の経過観察も行います。

薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。

副鼻腔炎や鼻ポリープがある場合も、副鼻腔からの粘液の排出をよくしたり、感染物質を除去したり、鼻ポリープを切除したりするために、手術療法を行うこともあります。手術の前後に、温水や生理食塩水で副鼻腔を定期的に洗浄すると有効なこともあります。

🇭🇳痛風

痛風とは、血液中の尿酸量が高い値を示す高尿酸血症が原因となって、関節が痛む発作症状です。「風が吹いても痛い」といわれるほど、激しい痛みを感じます。

圧倒的に中年以後の男性に多く、約70パーセントの確率で、足の親指の付け根の関節に痛みが起こります。時に、足、ひざの関節が痛むことも。女性はめったに発症せず、なぜ男女差があるのか理由は不明です。

痛みの発作は、血液中に増えて溶け込めなくなった尿酸が尿酸塩結晶となって関節にたまり、この結晶を異物と判断した白血球が攻撃して起こるといわれています。

発作がある時の治療には、鎮痛消炎剤の投与が行われ、発作がない時は、尿酸降下薬を服用します。治療が正しく行われていれば、再発作はほとんどありません。しかし、尿酸を正常域に保つ治療は、ずっと続けなければなりません。

日常生活では、発作の誘因となるストレス、過度の飲酒、プリン体を多く含む臓物や豆類の過剰摂取に注意すべきです。

🇸🇻痛風腎

尿酸の結晶が腎臓に沈着することで発症する腎臓病

痛風腎(つうふうじん)とは、尿酸の結晶が腎臓に沈着することで発症する腎臓病。

血液中の尿酸の量が高い値を示す高尿酸血症や、高尿酸血症が原因となって関節が痛む痛風に合併して、痛風腎は起きます。

尿酸は、体内でプリン体という蛋白(たんぱく)質が分解されてできる老廃物で、血液中に混じる尿酸は、腎臓から尿の中に溶けた状態で排出されています。その尿酸の生成が過剰であったり、腎臓での尿酸の排出がうまくいかない場合には、血液中の尿酸値が高くなり、高尿酸血症となります。

この高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、尿酸は尿酸塩という結晶の形になって、関節や腎臓などに沈着するようになります。このように高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が関節に沈着することによって急性の関節炎を起こす疾患が痛風です。痛風にかかると、足の親指の付け根の関節などがはれて、激しく痛みます。

一方、高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が腎臓の髄質や尿細管、間質などに沈着することによって腎臓の機能を低下させる疾患が痛風腎です。特に腎臓の髄質では尿が酸性に傾いており、尿酸はより結晶化しやすくなり、それらが腎臓組織に沈着して、こぶ状の物ができ、炎症を起こします。

痛風腎の初期には、静かに進行し自覚症状が現れにくいので、気付かれません。かなり進行すると、尿酸結石ができやすくなり、それが尿路に詰まって尿管を刺激したり傷付けたりすると、腹部や背中が激しく痛んだり、場合によっては血尿も出ることがあります。

また、痛風腎を発症すると、尿細管を取り囲む間質の線維化が進む慢性間質性腎炎を示して、腎臓の機能が低下し、慢性腎不全の原因となります。

痛風腎の検査と診断と治療

内科、腎臓内科などの医師による診断では、通常の腎臓疾患の検査と同じように、尿検査で血尿や蛋白尿を調べますが、痛風腎の初期ではどちらも異常が認められないことがあります。しかし、尿酸値が高い場合には痛風腎が疑われることになります。

痛風腎の確定には、尿濃縮力試験(髄質機能検査)で腎臓の髄質の状態を確認します。尿細管には尿を濃縮する働きがあり、痛風腎ではこの尿細管に異常が出ますので、判定できます。尿路結石の疑いがある場合には、超音波検査で確認します。

内科、腎臓内科などの医師による治療では、薬物療法としては尿酸の排出を促す尿酸排泄(はいせつ)促進薬、体内で過剰な尿酸の生成を抑制する尿酸生成抑制薬、酸性尿を改善する尿アルカリ化剤などを用います。

食事療法としては、尿酸値を下げることを目的に、食生活全体を見直し、改善します。肉類は食べ過ぎることにより、尿を酸性に傾け尿酸が溶けにくくなりますので、野菜を多く摂取しアルカリ性に持ってゆきます。

また、魚卵、内臓類、大豆などプリン体を多く含む食品や、アルコール類、特に体内でプリン体の合成を促すビールは控えなければなりません。肥満、高血圧、高脂血症、ストレスなどにも注意が必要になります。

腎臓の機能が低下していないようであれば、尿酸の排出を促すために、水分を多く摂取することも勧められます。適切な運動も必要ですが、痛風発作を起こす可能性もありますので、医師の指示通りに行動することが大切となります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...