2022/08/02

💅コルゲーテッドネイル

つめの甲を横に走る溝状の変化

コルゲーテッドネイルとは、つめの甲を横に走る水平の溝や波打った溝ができる状態。爪甲横溝(そうこうおうこう)、ボーズラインとも呼ばれます。

つめに横溝ができるのは、つめの発育を抑えるような障害がつめを作り出す爪母に作用するためで、その障害の強さや期間によって深さや幅が変わってきます。非常に障害が強く加わると深くなり、期間が長くなると幅が広くなります。

初めに、爪半月(つめはんげつ)の外側の当たりに横溝が現れ、つめの発育とともに先端に移動して行きます。この横溝は爪母に障害が加わってできるものですから、現れるのは障害が加わってから数週間後です。現在できている横溝の位置から、いつごろ障害が起こったのか推測することは簡単です。また、1本のつめに横溝が2~3本同時に見られる場合は、正常な期間をおいて繰り返し障害が加わったと考えらます。

もしも、つめの横溝ができる原因が全身性疾患によるのものであるなら、すべてのつめの同じ場所に変化が見られます。一部のつめの変化の時は、爪母近くの皮膚の病変の影響が考えられます。 また、つめの根元にけがをしたり、マニキュアや薬剤によって爪母を傷付けた時に変化が見られることもあり、この時はつめの甲が凸凹になる場合もあります。

つめの横溝が生じる原因となる全身性疾患としては、急性熱性疾患のほか、尿毒症、糖尿病、ビタミンA欠乏症、低カルシウム血症、亜鉛欠乏症などの慢性疾患が挙げられます。皮膚の疾患としては、湿疹(しっしん)、皮膚炎、円形脱毛症、乾癬(かんせん)などが挙げられます。

さまざま原因がある中で、最も多いのは高熱で発病して、1~2週間で治るチフス、猩紅(しょうこう)熱などの感染症や、中毒の場合です。慢性疾患では代謝異常による疾患が多く、疾患が一時的に悪化した後に現れ、溝は浅く幅が広いのを特徴とします。

皮膚の疾患で最も多いのは、手の湿疹。手の湿疹の大部分は水仕事の多い主婦によくみられて、治りにくい慢性的な湿疹であり、つめの周辺の病変が急激に悪化して爪母にまで広がった場合に、横溝が生じます。これと同様な症状で、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)やカンジタ菌による爪囲炎の時にも生じ、いずれもつめ周辺の疾患が治れば自然に消えて行きます。円形脱毛症や乾癬の時には、点状の凹みと同様に横溝も現れることがあります。

また、レイノー症状に伴って、横溝が現れることもあります。手が冷たい水や風に触れた時に、指が白くなる現象がレイノー症状であり、若い女性に多くみられて、指の小さな動脈が一時的に狭くなって血液が流れにくくなるために起こります。指先に血液が行かなくなると、つめの発育の障害になり、それが強く起こると横溝が現れます。何度も繰り返してレイノー症状が起こると、一枚のつめに何本もの横溝ができることもあります。

コルゲーテッドネイルの検査と診断と治療

つめに横向きの溝ができるコルゲーテッドネイルは、一時的に爪母が障害されたために起こる場合がほとんどです。つめが形成される時期に体に何か異常があったということを示しているもので、現在の異常な状態を示すものではありません。過去、数週間から数カ月前に起こった異常の結果を見ているというわけなので、あまり気にしなくてもよいと思われます。

すべてのつめに変化が見られる全身性の慢性疾患があれば、その治療を行います。一部のつめの変化がみられる皮膚の疾患があれば、その治療を行います。

🇿🇦コルサコフ症候群

ビタミンB1の欠乏などが原因となり、脳の機能が障害されて発生する健忘症

コルサコフ症候群とは、主にアルコール依存症に由来するビタミンB1の欠乏が原因となり、脳の機能が障害されて発生する健忘症状。健忘症候群とほぼ同義の疾患です。

ロシアの精神科医セルゲイ・コルサコフ(1854〜1900)が1889年に、アルコール中毒や産褥(さんじよく)熱などの栄養障害で起こり、多発神経炎を伴う本症候群を初めて報告しました。

後にビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こることがわかり、同じくビタミンB1の欠乏によって起こるウェルニッケ脳症と合わせて、ウェルニッケ・コルサコフ症候群としてまとめられる場合もあります。

コルサコフ症候群は、アルコール依存症に由来する栄養不良状態によって、ビタミンB1が欠乏することが原因となって、最も多く発症しています。大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。

そのほか、頭部外傷、一酸化炭素中毒など種々の中毒、脳卒中、ウイルス性脳炎、老年期認知症の症状としても、コルサコフ症候群が現れることがあります。

脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、視床下部、視床内側部などが、病変の好発部位となります。大脳皮質の広範な変化で起こることもあり、大脳の委縮を伴うこともあります。

アルコール依存症の経過中に、意識混濁と体の震えを起こす振戦せん妄という発作の後に、コルサコフ症候群を発症することが多く、この場合は肝障害を始め、末梢(まっしょう)神経が2カ所以上の広範囲に渡って同時に侵される多発神経炎などを伴うことが多く認められます。

発症すると、出来事を覚える記銘力の障害や、覚えた出来事をずっと保持しておく記憶力の障害、場所や時間や人物がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害が生じ、記憶の不確かな部分を作話で補おうとする「コルサコフ作り話」をしたりします。

数分前、数日前、数週間前、数年前など、過去の中間記憶や古い記憶が失われ、体験した出来事を覚え、思い出すことができなくなります。最近の出来事や体験、人間関係を思い出せないのに、社交的な付き合いや通常の会話をこなすことはできます。そういう時、自分の記憶が十分でないことを認めたくなかったり、自身の異常を相手に知られないように、作り話を創作するようになります。

実際に作り話や妄想が増えると、自身の真実の記憶と作り話との区別がわからなくなります。また、暗示にかかりやすく、例えば実際には存在しない物でも「見える」といってしまいます。同じ本や雑誌を初めて読むように、何度でも読み返します。理解力や計算などの能力は、比較的保たれます。

重症の場合には、コルサコフ症候群からさらに進行して、記憶力以外の認知機能も低下するため、アルコール性認知症を発症する場合もあります。

コルサコフ症候群の検査と診断と治療

内科、神経内科の医師による診断では、症状と神経所見からコルサコフ症候群を疑い、ビタミンB1(チアミン)不足になり得る栄養不良状態が存在したかどうかを問診し、頭部MRI(磁気共鳴画像)検査で視床や乳頭体などに病変部位が認められ、大脳の委縮が顕著で海馬の委縮が認められたりすれば、確定できます。

内科、神経内科の医師による治療では、ビタミンB1を始めとしたビタミンB群の投与をします。少量の精神安定剤の投与や、全身状態を改善するための対症療法も行われます。

アルコール依存症に由来するコルサコフ症候群は、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢神経障害を併発して手足のしびれが起こり、特に夜間に強いビリビリとした痛みが多いことがあるので、そのリハビリテーションが必要となることもあります。

長期的な断酒や、健康的な食生活、神経障害のリハビリテーションによって、数年をかけてコルサコフ症候群が次第に治っていくことがあります。飲酒をやめなければ、予後は不良です。

頭部外傷、一酸化炭素中毒の後に発症するコルサコフ症候群は一過性で、次第に軽快します。重症または再発を繰り返す脳症に続いて起こるコルサコフ症候群や、老年期認知症の症状としてみられるコルサコフ症候群は、一時軽快することもありますが、予後は不良で、治癒は困難です。

⛳ゴルフ肘

手首や腕の使いすぎで、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる障害

ゴルフ肘(ひじ)とは、手首や腕の使いすぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる関節障害。俗に、フォアハンドテニス肘、野球肘、スーツケース肘とも呼ばれ、正式には、上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくじょうか)炎と呼ばれます。

上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。

ゴルフ肘は、手首を過剰な力で手のひら側に曲げることによって、上腕骨内側上顆に慢性的な衝撃が繰り返し加わり、回内筋群や屈筋群に微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

ゴルフ肘は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。特に、中年以降のゴルフ愛好家にスイングの繰り返しで生じやすいのでゴルフ肘と呼ばれ、同じく中年以降のテニス愛好家にフォアハンドストロークの繰り返しで生じやすいのでフォアハンドテニス肘とも呼ばれたりしていますが、野球など他のスポーツや手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

ゴルフ肘を起こす要因としては、肩や手の筋肉が弱い、ゴルフの一部のスイングをやりすぎる、手首を使った手打ちのスイングをしている、自己流のフォームでインパクト時に地面やマットを強打する、ゴルフクラブが重すぎるか軽すぎる、テニスでサーブを強打したりオーバーハンドサーブやトップスピンサーブをする、濡れて重くなったボールを打つ、ラケットが重すぎるかグリップが細すぎる、ラケットのガットの張りが強すぎる、野球のカーブの投球動作をやりすぎる、重いスーツケースを持ち運びすぎるなどが挙げられます。

症状としては、ゴルフでは一部のスイングのたびに、テニスではフォアハンドストロークのたびに、利き腕の肘の内側に疼痛(とうつう)が現れます。ズキズキする痛みがあるのに運動を続けると、筋肉を骨に結び付けている腱(けん)が上腕骨内側上顆からはがれてしまい、出血を起こすこともあります。

また、ゴルフやテニス以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の内側から前腕の小指側にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

ゴルフ肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の内側に圧痛が認められます。また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘の内側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、ゴルフ肘と確定診断します。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(テニスバンド)で押さえること。2つ目は、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤と局所麻酔剤を混合して痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が3〜6カ月ほどで治ると考えられています。障害が治癒したら、患部の筋肉と、手首や肩の筋肉を強化します。手術が必要となることはまれで、多くの場合、安静や投薬といった保存的治療で治ります。治癒を早める目的で、筋肉から瘢痕(はんこん)化した組織を切除するニルシュル法が行われることもあります。

手指や前腕の筋肉は日常生活で非常によく使うため、安静がなかなか取れずに痛みが長引く場合もありますが、根気よく治療を続けることが大切です。治っていないのにゴルフやテニスなどの運動を続けると、内側側副靭帯(そくふくじんたい)の緩みや骨に付着する部分での断裂を起こし、靭帯を修復するための手術が必要になることもありますので、無茶は禁物です。

🇫🇲コレラ

コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症

コレラとは、コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症。世界中に広く分布する細菌感染症です。

コレラ菌の性質は、1960年ころまで流行したものと、現在流行しているものとでは多少異なっています。かつてのコレラ菌はアジア型(古典型)コレラと呼ばれ、大流行を幾度となく繰り返し、その病原性の強さによって何百万人もが犠牲になりました。

現在のコレラは、主にエルトール型コレラと呼ばれるもので、1961年ころからアジア地域で発生し、感染力が強いためアジア型コレラに替わって瞬く間に世界中に広がりました。この流行が現在も世界中に広がっていて、終息する気配がありません。

世界保健機関(WHO)に報告されている世界の患者総数は、ここ数年20〜30万人ですが、実数はこれを上回っていると推測されています。幸いなことにアジア型コレラに比べて病原性が弱く、死亡率は2パーセント程度といわれています。

日本では、205種類に分類されているコレラ菌のうち、O1血清型とO139血清型を原因とするものを行政的にコレラとして扱います。O1血清型コレラ菌は、生物学的な特徴によってアジア型コレラと、エルトール型コレラに分けられています。一方、O139血清型コレラ菌によるコレラは、新興感染症の1つで、1992年インド南部で発生し、瞬く間にインド亜大陸に広がり、現在もインドおよびバングラデシュにおいてO1血清型エルトールコレラ菌と交互に、あるいは同時に流行を繰り返しています。

日本におけるコレラは、最近はほとんどが輸入感染症として発見されています。すなわち、熱帯、亜熱帯のコレラ流行地域への旅行者の現地での感染例で、国内での感染例もありますが、輸入魚介類などの汚染が原因と推定されていて、二次感染例と思われる例はほとんどありません。

このコレラは、コレラ菌のうちコレラ毒素産生性の菌に汚染された水、氷、食品などを摂取することにより感染します。経口摂取後、胃の酸性環境で死滅しなかった菌が小腸下部に達して定着、増殖し、感染局所で菌が産生したコレラ毒素が細胞内に侵入して症状を引き起こします。

数時間~5日、通常は1〜3日の潜伏期間の後、下痢や嘔吐(おうと)などが起こります。アジア型コレラでは米のとぎ汁のような水様便が大量に出ますが、エルトール型コレラの場合、症状は比較的軽く、軟便程度から水様便まで幅広い下痢が主です。腹痛や発熱を伴うことはほとんどありません。

アジア型コレラでは、下痢が激しく、大量の下痢便の排出に伴って高度の脱水状態となり、収縮期血圧の下降、皮膚の乾燥と弾力の消失、意識消失、乏尿または無尿などの症状が現れます。

コレラの検査と診断と治療

海外旅行中や旅行後に下痢や嘔吐の症状が現れたら、コレラの可能性があります。検疫所あるいは培養検査のできる医療機関を受診し、便の細菌検査を受けることが必要です。

日本では、O1血清型とO139血清型を原因とするコレラは感染症法で2類感染症に指定されており、発症者は原則として2類感染症指定医療機関に入院となりますが、無症状者は入院の対象とはならず外来治療も可能です。 

医師による診断では、便の細菌培養を行い、コレラ毒素を産生するコレラ菌が検出されれば確定します。食中毒や、他の細菌による感染性腸炎との区別も、培養結果によります。迅速検査として、コレラ菌の毒素遺伝子を検出する方法も開発されています。コレラもしくは病原体保有者であると診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出ます。

治療は、大量に喪失した水分と電解質の補給が中心で、輸液の経口投与や静脈内点滴注入を行います。世界保健機関(WHO)では、食塩とブドウ糖を1リットルの水に溶かした経口輸液(ORS:Oral Rehydration Solution)の投与を推奨しています。経口輸液の投与は特に開発途上国の現場では、滅菌不要、大量に運搬可能、安価などの利点が多く、しかも治療効果もよく極めて有効な治療法となっています。

重症の場合には、抗生物質を投与して、コレラ菌の排出を促し、下痢の期間の短縮を図ります。第一選択薬となるのは、ニューキノロン系薬剤であるテトラサイクリンやドキシサイクリン。これらの薬剤にコレラ菌が耐性の場合には、エリスロマイシン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤やノルフロキサシンなどが投与されます。

予防としては、コレラが流行している海外の旅行先で、生水、氷、生の魚介類、不衛生な食品を喫食しないことが肝要です。ジュースの中の氷や、氷の上に飾られていたカットフルーツで感染したり、プールの水を誤って飲んで感染した例も報告されています。

海外旅行をする時、国によりコレラの予防接種を義務付けられているものの、接種をしても絶対に安全というものではありません。無理な旅行日程などを避け、体調を崩すことがないよう心掛けることも大切です。

🇱🇰原発性アルドステロン症

副腎皮質から分泌されるアルドステロンというホルモンの過剰分泌によって起こる疾患

原発性アルドステロン症とは、副腎(ふくじん)皮質から分泌されるホルモンのうち、アルドステロン(電解質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。報告者の名前にちなんで、コン症候群とも呼ばれます。

副腎皮質の片側の腫瘍(しゅよう)、または両側の副腎皮質の肥大増殖が原因となって、起こります。腫瘍の場合は、ここからアルドステロンが多量に分泌されますが、肥大増殖の場合は副腎全体からアルドステロンが出てきます。

アルドステロンは腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。また、尿の中にカリウムを排出する作用を持つため、アルドステロンが過剰になると血液中のカリウムが減って、低カリウム血症となり、筋力の低下による四肢の脱力や、疲れやすいなどの症状が引き起こされます。

そのほか、低カリウム血症により尿量が多くなり、口の渇きがみられたり、発作的に数時間の間、手足が動かなくなる周期性四肢まひが起こったり、テタニー発作が起こることもあります。

高血圧に低カリウム血症を合併していたら、この原発性アルドステロン症が疑われます。治療しないでほうっておくと、高血圧が長く続くために体のいろいろな臓器に障害が起こってきますので、内科、ないし内分泌代謝内科の専門医を受診することが勧められます。

原発性アルドステロン症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、アルドステロンの過剰分泌を確かめるため、血液中、尿中のホルモンを測定します。アルドステロンは腎臓から分泌されるレニンというホルモンによって調節されていますが、原発性アルドステロン症のように、副腎から勝手にアルドステロンが出てくると、レニンはその働きを控えます。そこで、診断のためには血漿(けっしょう)レニン活性が抑制されていることを確認します。

腫瘍か肥大増殖か、また、左右どちらの副腎に腫瘍があるのかなどを判断するため、腹部のCT、MRI、あるいは副腎シンチグラフィーが行われます。腫瘍はしばしば小さく、また多発性のこともあり、これらの検査で診断できない場合があります。その場合は副腎の近くの血管にカテーテルを挿入して、そこから採血する副腎静脈血サンプリングという検査が行われることもあります。

腫瘍による場合、その腫瘍を手術で摘出します。何らかの理由で摘出手術ができない場合や、肥大増殖の場合は内服薬で治療を行います。アルドステロンの産生を制限する目的でトリロスタン(デソパン)、作用を阻害する目的でスピロノラクトン(アルダクトン)などが用いられます。

原発性アルドステロン症が治れば、血圧は徐々に低下します。しかし、疾患の期間が長く高血圧が長く続いた場合は、血圧が下がりにくいこともあります。

🇻🇳原発性吸収不良症候群

もともと小腸の粘膜自体に問題があり、栄養素の吸収が障害された状態の総称

原発性吸収不良症候群とは、もともと小腸の粘膜自体に問題があり、経口摂取した栄養分の消化吸収が障害された状態の総称。障害の程度や持続時間によって、全身の栄養状態が悪くなり、いわゆる栄養失調などを起こしてきます。

この原発性吸収不良症候群には、グルテン腸症と牛乳不耐症とがあります。

グルテン腸症は、小麦に含まれる蛋白(たんぱく)質のグルテンが小腸粘膜に障害を起こし、栄養素の吸収不良が現れる疾患。グルテン過敏性腸炎、グルテン腸症候群、グルテン不耐症、スプルー、セリアック病、セリアックスプルーなどとも呼ばれます。

グルテンは主に小麦に含まれ、大麦、ライ麦、オート麦など他の麦類では含有量が比較的少量です。このグルテンに対する遺伝性の不耐症がグルテン腸症であり、発症した人がグルテンを含んだ食品を摂取すると、グルテンの分解ができず、腸管免疫システムがそれを異物と認識して過剰に働くことで、産生された抗体が小腸の絨毛(じゅうもう)を攻撃し、慢性的な炎症が起こります。

この炎症によって、上皮細胞が変性したり、絨毛が委縮して、その突起が平坦(へいたん)になったりします。その結果、平坦になった小腸粘膜は糖、カルシウム、ビタミンB群などの栄養素の吸収不良を起こし、小腸がしっかり機能しなくなることで、さまざまな症状が出てきます。

しかし、グルテンを含んだ食品の摂取をやめると、正常な小腸粘膜のブラシ状の表面とその機能は回復します。

グルテン腸症は、小児のころに発症する場合と、成人になるまで発症しない場合とがあります。症状の程度は、炎症によって小腸がどれだけ影響を被ったかで決まります。

成人で発症する場合は通常、下痢や栄養失調、体重減少が起こります。中には、消化器症状が何も現れない人もいます。グルテン腸症の発症者全体のおよそ10パーセントに、小さな水疱(すいほう)を伴い痛みとかゆみのある湿疹(しっしん)がみられ、疱疹性皮膚炎と呼ばれます。

小児のころに発症する場合は、グルテンを含む食品を食べるまでは症状が現れません。通常、パンやビスケット、うどんなどによってグルテンを摂取するようになる2歳から3歳の時に発症します。

子供によって、軽い胃の不調を経験する程度から、痛みを伴って腹部が膨張し、便の色が薄くなり、異臭がして量が多くなる脂肪便を起こすこともあります。

グルテン腸症による吸収不良から起こる栄養素の欠乏は、全身の栄養状態の悪化を招いて栄養失調を起こし、さらに別の症状を起こします。別の症状は、特に小児で現れやすい傾向にあります。

一部の小児は、成長障害を起こし身長が低くなります。鉄欠乏による貧血では、疲労と脱力が起こります。血液中の蛋白質濃度が低下すると、体液の貯留と組織の浮腫(ふしゅ)が起こります。ビタミンB12の吸収不良では、神経障害が起こり、腕と脚にチクチクする感覚を生じます。カルシウムの吸収不良では、骨の成長異常を来し、骨折のリスクが高くなり、骨と関節が痛みます。

また、カルシウムの欠乏では、歯のエナメル質の欠陥と永久歯の障害を起こします。グルテン腸症の女児では、エストロゲンなどのホルモン産生が低下し、初潮がありません。

一方、牛乳不耐症は、小腸粘膜に存在する乳糖分解酵素(ラクターゼ)が欠損していたり、少量しか産生されないために、牛乳や乳製品などの乳糖を含む食物を摂取すると、腹痛、腹鳴、腹部膨満感、水様性下痢を生じるものです。乳糖不耐症とも呼ばれます。

牛乳不耐症は緊張や不安などのストレスが原因で起こる過敏性腸症候群と似ていますが、牛乳を温めて飲んでも、それを分解する酵素がないので、吸収されず、下痢などを生じます。

乳糖分解酵素の活性は白人では高く、黄色人種、黒色人種ではあまり高くありません。従って、日本人には比較的多くみられます。また、成人になるにつれて乳糖分解酵素の活性が低下してくるので、子供のころは症状がなくても成人になってから症状が出現することがあります。

牛乳不耐症の場合、牛乳を飲まなければ、症状は治まります。自覚がないことも少なくなく、長い間下痢に悩んでいた人が、牛乳を飲むのをやめたら症状が治まったということもあります。

原発性吸収不良症候群のグルテン腸症と牛乳不耐症を疑わせる症状に気付いたら、消化器内科を受診します。

原発性吸収不良症候群の検査と診断と治療

消化器内科の医師によるグルテン腸症の診断では、小腸のX線検査と小腸の内視鏡検査を行います。小腸の繊毛が委縮、平坦化している状態が認められることと、グルテンを含む食品の摂取をやめた後に小腸粘膜の状態が改善していることにより確定します。また、グルテンを含む食品を摂取した時に産生される特異抗体の濃度を測定する検査を行うこともあります。

消化器内科の医師による牛乳不耐症の診断では、乳糖を飲ませて血糖値が上がらないこと、便中に糖が排出されることで判断できます。小腸粘膜を採取して乳糖分解酵素の活性を調べると確実ですが、乳糖除去ミルクの使用で症状が改善することが参考になります。

消化器内科の医師によるグルテン腸症の治療としては、グルテンを含まない食事を摂取し、各種の栄養剤、ビタミンを補給します。

少量のグルテンでも症状を起こすので、グルテンを含む食品をすべて避けなければなりません。グルテンを含まない食事への反応は迅速に起こり、小腸のブラシ状の表面とその吸収機能は正常に戻ります。

ただし、グルテンはさまざまな食品中に広く含まれているので、避けるべき食品の詳細なリストと栄養士の助言が必要です。

グルテンを含む食品の摂取を避けても症状が継続する場合は、難治性グルテン腸症と呼ばれる状態に進んだ可能性があり、プレドニゾロンなどのステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)で治療します。

まれに、グルテンを含む食品の摂取を避け、薬物療法を行っても改善しなければ、静脈栄養が必要となります。小児では初診時に非常に重篤な状態になっている場合もあり、グルテン除去食を開始する前にしばらく静脈栄養の期間が必要になります。

グルテンを避ければ、グルテン腸症のほとんどの発症者はよい状態を保てますが、長期間にわたってグルテン腸症が継続すると、まれに腸にリンパ腫(しゅ)を形成し、死に至ることもあります。グルテン除去食を厳格に守ることで、腸のリンパ腫やがんなどの長期間にわたる合併症のリスクを減少させられるかどうかは、不明です。

グルテン腸症の人は、グルテンを含まない穀物である米やトウモロコシを中心に、卵、肉、魚、牛乳、乳製品、果物類、野菜類、豆類を中心に摂取することになります。加工食品の場合、グルテンを含まないと表示されている物以外は注意が必要。

摂取できない食品としては、パン、うどん、ラーメン、ヌードル、パスタ(スパゲッティ、マカロニ)、ビスケット・クッキー・クラッカーなどの菓子、ケーキ、ビール、大麦水などが挙げられます。

グルテンを含んでいる可能性がある食物としては、豚肉(ソーセージ、ボローニャソーセージ)、缶詰のパテや肉、ミートボール、ハンバーガー、ホットドッグ、ソース、トマトソース、調味料、コーヒー代用品、チョコレート、ココア、アイスクリーム、キャンディー、食品色素などが挙げられます。

消化器内科の医師による牛乳不耐症の治療としては、乳糖を含む牛乳、乳製品などの食物を除去、制限します。乳製品でもあらかじめ乳糖を分解してある食品は、摂取可能です。

乳児に対しては、乳糖を含まないラクトレス、ボンラクトなどの特殊なミルクを使用します。治療薬剤として乳糖分解酵素(ラクターゼ)製剤があり、その粉薬をミルクなどに混ぜるという方法もあります。

🇲🇲原発性骨髄線維症

骨髄の中に線維が増え、骨髄での造血が低下する状態

原発性骨髄線維症とは、骨髄の中に線維が増え、骨髄での造血が低下する状態。特発性骨髄線維症とも呼ばれます。

この原発性骨髄線維症は、慢性骨髄増殖性疾患というグループに属する血液腫瘍(しゅよう)で、同じグループには慢性骨髄性白血病、真性多血症、本態性血小板血症が属しています。

血球である赤血球、白血球、血小板の産生、すなわち造血は、成人では骨髄で行われます。しかし、胎児の時期には、肝臓や脾臓(ひぞう)で造血が行われています。原発性骨髄線維症では、腫瘍細胞によって骨髄に線維化という変化が起こるため、造血が肝臓や脾臓で行われるようになり、その結果、肝臓や脾臓が次第に大きくなって、肝脾腫といわれます。特に、脾臓は非常に巨大になり、腹腔(ふくくう)の半分以上を占めるほどになることもあります。

脾臓や肝臓で赤血球や白血球が作られた場合、骨髄で作られたものと少し違って、若い細胞が血液に出てきたり、普通はみられない変形したものがみられたりします。初期では白血球数が増加し、慢性骨髄性白血病と同じように若い細胞から成熟した細胞まで、すべての段階の白血球が認められるのが特徴です。さらに、若い赤血球系の細胞や変形した赤血球も認められます。

原発性骨髄線維症の症状としては、貧血や白血球数の増加のほか、初期には血小板数も増加する傾向があります。一般的に進行は緩慢ですが、進行すると逆に貧血や血小板数の低下が著しくなります。一部の例では、急性白血病と類似した症状を示す急性期へと進展することがあります。

脾臓のはれによる腹部の圧迫感、膨満感が、比較的多く現れます。一方、無症状の段階で健康診断などにより、血液検査のデータの異常を指摘されて発見されることも、しばしばあります。貧血が進行すると、倦怠(けんたい)感、動悸(どうき)、息切れなどの症状が目立つようになります。血小板数が低下すると、皮下出血、鼻血、歯肉出血などの出血症状を認めます。

骨髄に線維化を起こす腫瘍細胞が発生する原因については、詳しくはわかっていません。しかし、約半数の例では真性多血症と同じJAK2遺伝子の異常が認められており、この異常が発症にかかわっていると考えられています。慢性骨髄性白血病と異なり、フィラデルフィア染色体の形成は認められません。また、いわゆる遺伝性疾患ではなく、子孫への影響はありません。

原発性骨髄線維症の検査と診断と治療

内科の医師による診断では、骨髄の組織の一部を採取して調べる生検により骨髄の線維化を証明することで、原発性骨髄線維症と確定します。骨髄の線維化は、白血病や悪性リンパ腫などのほかの血液腫瘍、あるいはがんの骨髄転移によっても起こり、膠原(こうげん)病や結核などが原因になる場合もあるので、これらの疾患を除外する必要があります。

骨髄穿刺(せんし)によって骨髄液を採ろうとしても、線維が増えているために骨髄液を十分に採ることができません。

一方、原発性骨髄線維症の初期段階では、若い細胞が血液に出てきたり、普通はみられない変形したものがみられたりするため、慢性骨髄性白血病と血液検査のデータが類似し、判別が難しいことがあります。慢性骨髄性白血病と判別するためには、骨髄生検の結果のほかに、フィラデルフィア染色体およびBCR/ABL遺伝子を認めないこと、一般的に好中球アルカリフォスファターゼ活性が低下しないことが重要になります。

内科の医師による治療では、根本的な治療法はまだ確立されていないため、専ら対症的に治療を行うことになります。症状に応じて、経口抗がん薬の投与や輸血療法などが選択され、条件が整えば、治癒を目的として行われる唯一の方法である造血幹細胞移植も考慮されます。

白血球や血小板の増加が著しく、脾臓のはれが目立つ場合に、メルファラン(アルケラン)、ハイドロキシウレア(ハイドレア)などの経口抗がん薬が使用されます。脾臓のはれのための圧迫感や痛みがある場合には、手術による脾臓の摘出や脾臓への放射線治療なども考慮されます。貧血や血小板減少が進行した場合には、輸血療法が行われます。

通常では50歳以下の年齢であること、白血球の型が一致したドナーがいることなどの条件が整えば、造血幹細胞移植が選択肢の一つとなります。しかし、移植に伴う合併症の危険についても十分に考慮する必要があり、その適応は慎重に検討されなければなりません。発症者には比較的高齢者が多いため、移植時に行う前処置の治療毒性を軽減した非破壊性造血幹細胞移植も試みられています。

経過はさまざまなものの、約15〜20パーセントの発症者では、急激に悪化して急性白血病などに移行します。この場合は治療が極めて難しく、予後不良です。

食事、運動、旅行など日常生活全般についての制限はほとんどありませんが、定期的に血液検査を受けることが必要です。脾臓のはれがある場合には、腹部の圧迫などに注意します。また、薬剤の副作用が疑われるような症状が現れた場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...