2022/08/03

🇰🇿尿路感染症

尿の通り道である尿路、すなわち腎臓、尿管、膀胱、尿道などに、主に細菌が感染して起きる疾患

尿路感染症は、尿の通り道である尿路、すなわち腎杯(じんぱい)、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道、前立腺(ぜんりつせん)などに、主に細菌が感染して起きる疾患。

尿は腎臓の実質で産生され、複数の腎杯から、尿を集める腎盂に送られた後、尿管を通って膀胱に一度ためられます。一定の量がたまると、尿道を通って外に流れます。

腎臓は血液をろ過することで、血液から蛋白(たんぱく)質の老廃物、余分な水分、ぶどう糖、アミノ酸、電解質を除き、尿として体の外に出します。腎臓で作られた尿は、基本的は無菌です。しかし、尿には細菌やウイルスが増えるための細胞や栄養が含まれているために、増殖して尿路感染症を起こします。また、腎臓などに入る血液から細菌やウイルスが侵入し、尿の中にも侵入して増殖し、尿路感染症を起こします。

子供と高齢者に多く、また男性よりも尿道が短い女性に多いのが、尿路感染症の特徴です。腎杯、腎盂、尿管に感染が起こる上部尿路感染症と、膀胱、尿道、男性の尿道後部を囲む前立腺などに感染が起こる下部尿路感染症に分けられます。

上部尿路感染症には、急性腎盂腎炎、急性巣状細菌性腎炎があり、主に腎臓に細菌が感染し、増殖することで症状が出ます。腎臓は左右で対になっているため、一方のみに感染が起きることもあれば、両方に感染が起きることもあります。

症状としては、寒けを伴った39度以上の高熱が出て、背中から腰にかけて痛みがあり、吐き気、嘔吐(おうと)があります。膀胱炎から起こったものは、尿を出す時に痛む排尿痛、何度もトイレに行く頻尿があります。

特に子供の場合は、せき、鼻水がなくて、1週間ごとに高熱だけを繰り返す場合は、上部尿路感染症の可能性があります。1歳までの子供は、尿が膀胱から腎臓へ逆流するために、たまたま膀胱に入った細菌が腎臓に入りやすく、大人より上部尿路感染症を起こしやすいといえます。

下部尿路感染症には、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎があります。

症状としては、尿を出す時に痛む排尿痛、何度もトイレに行く頻尿や残尿感、夜尿、尿が赤い血尿、濁り尿、蛋白尿、37度前後の微熱などがあります。

細菌などの病原体が尿路に侵入する経路としては、尿道から膀胱などへ逆流して入る上行性感染と、血液から腎臓などに入る血行性感染があります。

原因の病原体としては、大腸菌が最も多く、それ以外はほとんど腸内細菌です。膀胱炎では、アデノウイルスというウイルスによって出血性膀胱炎を起こし、血尿が見られます。

上行性感染としては、膀胱から腎臓へと尿が逆流する膀胱尿管逆流、1つの腎臓から尿管が2本出ている重複尿管など、腎臓から尿道までの尿路に奇形があって尿路感染症を繰り返すことがあります。

尿路感染症の検査と診断と治療

泌尿器科、内科、ないし小児科の医師による診断では、まず尿の検査を行います。見た目で、濁り尿、血尿、膿(うみ)が混じった膿尿(のうにょう)を認めることがあり、はっきりしない場合でも、顕微鏡で観察すると、白血球や細菌を認めることができます。

検尿の試験紙で、尿蛋白をチェックします。尿が清潔に採取できたら、2〜3日間、尿を体温と同じ環境において、尿の中から増えてくる細菌の種類を調べる培養検査を行います。

上部尿路感染症の場合は、血液中に細菌が存在しますので、血液検査を行うと、白血球の数が増えていたり、CRP(C反応性蛋白)が上昇しています。

尿路奇形の検査として、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査、腹部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、カテーテルで膀胱に造影剤を入れて検査する排泄(はいせつ)性膀胱造影、血管に造影剤を入れて腎臓から膀胱、尿道までを検査する経静脈性腎臓造影を行うことがあります。

泌尿器科、内科、ないし小児科の医師による治療では、ウイルスが感染した場合は、水分を摂取し、ウイルスをできるだけ早く膀胱から除きます。

細菌が感染した場合は、最も効果のある抗生物質(抗生剤、抗菌剤)を使用します。上部尿路感染症であれば、1週間程度、長めに治療することが一般的です。

抗生物質には、内服と点滴があり、状態のよくない場合や、小さい子供の場合、血液に細菌がある可能性のある場合などは、点滴での治療が望まれます。

上部尿路感染症を繰り返していると、腎臓の組織が障害を受け、将来、腎不全となり腎機能が低下する可能性がありますので、感染の予防を行います。特に、尿路奇形や膀胱尿管逆流が見付かった場合は、尿路感染症の再発予防に、抗生物質の予防内服を行います。

🇷🇺尿路憩室

尿路の壁にほころびができ、尿が通過する際の圧力により、袋状の憩室が外側に突出する疾患

尿路憩室とは、尿路の内腔(ないくう)の壁の弱い部分が排尿の圧力によって膨らみ、袋状の憩室ができて外側に突出する疾患。

腎臓(じんぞう)で作られた尿は、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道と続く尿路を通って体の外に出ます。それらの尿路の内腔の壁に、外側にまで通じる完全な穴ではなく、不完全なほころびができ、その弱くなった壁の一部が、排尿に際して内腔を通過する尿の圧力により、風船のように膨らんだ憩室として外側に向かって突出します。

尿路の発生部位により、腎杯憩室、尿管憩室、膀胱憩室、尿道憩室に大別されます。

生まれ付きの原因で発症する場合と、尿路の通過障害によってその上流部に圧力がかかり、発症する場合とがあります。前立腺(ぜんりつせん)の肥大に伴って尿道の狭窄(きょうさく)が起こり、それによって上流部に圧力がかかり、膀胱憩室を発症するというのが、その例です。

尿路憩室を発症すると、尿が出にくくなり、高度の排尿困難を起こすことがあります。尿道口に近い部分に憩室ができると、排尿後、尿道憩室にたまっていた尿が滴ることがあります。陰部に痛みやはれを感じることもあります。

また、憩室内部には尿がたまりやすいので、細菌感染や結石、腫瘍(しゅよう)などが起こりやすくなります。

尿路憩室の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、造影剤を膀胱内に注入し尿路を撮影する尿路造影検査や、柔軟性のある内視鏡を挿入して観察することで確定します。結石や腫瘍があるのではと疑って検査した際に、憩室が見付かることもあります。

泌尿器科の医師による治療では、尿路憩室そのものは問題となることが少ないものの、細菌感染や結石、腫瘍が起こりやすいため、内視鏡を尿道から入れて憩室を切除したり、憩室が大きい場合は、開腹して憩室を切除する手術を行うことになります。

■熱中症で搬送、全国で1週間に7116人 猛暑で前週の1・7倍に

 各地で猛暑日が相次いだ7月31日までの1週間に、熱中症で病院に運ばれた人は、総務省消防庁のまとめで全国で7116人(速報値)と、前の週から3000人余り増えました。来週にかけても厳しい暑さが続くため、熱中症への一層の警戒が必要です。

 総務省消防庁によりますと、7月25日から31日までの1週間に、熱中症で病院に救急搬送された人は、全国で7116人と前の週から1・7倍、3077人増加しました。このうち死亡した人は6人です。

 症状別にみますと、入院が必要な「重症」や「中等症」が合わせて2318人、「軽症」が4704人でした。

 搬送された人の年齢別では、65歳以上の高齢者が3820人と最も多く、半数以上を占めていて、18歳以上65歳未満が2491人、7歳以上18歳未満が759人、0歳から7歳未満が45人となっています。

 発生場所では、自宅の敷地内などの「住居」が2586人、次いで、歩道などを含む「道路」が1259人、駐車場などの「屋外」が996人などとなっています。

 気象庁によりますと、3日も西日本と東日本を中心に危険な暑さが予想されるほか、来週にかけても厳しい暑さが続き、猛烈な暑さとなるところもある見込みです。

 新型コロナウイルスの急激な感染拡大で、救急患者の受け入れ先がすぐに決まらないケースも相次いでおり、日中は外出をできるだけ避けたり、エアコンを適切に使ったりして、引き続き熱中症に厳重に警戒してください

 2022年8月3日(水)

■国内で21万1058人が新型コロナに感染 死亡143人、重症464人

 2日は午後6時30分の時点で、東京都で3万842人、大阪府で2万5134人、愛知県で1万6923人、神奈川県で1万2565人、福岡県で1万996人、兵庫県で9621人、埼玉県で7267人など全47都道府県と空港検疫で、新たに21万1058人の新型コロナウイルスへの感染が発表されました。20万人を超えるのは3日ぶりで、1週間前からは1万4000人余り増えました。山形や静岡、愛知、滋賀など13県で新規感染者が過去最多を更新しました。

 また、大阪府で23人、神奈川県で13人、愛知県で12人、東京都で9人、北海道で7人、千葉県で6人、栃木県で6人、長野県で6人、群馬県で5人、兵庫県で4人、奈良県で4人、広島県で4人、静岡県で4人、埼玉県で3人、宮崎県で3人、福岡県で3人、茨城県で3人、三重県で2人、和歌山県で2人、富山県で2人、山口県で2人、岩手県で2人、愛媛県で2人、新潟県で2人、熊本県で2人、鹿児島県で2人、京都府で1人、佐賀県で1人、大分県で1人、山形県で1人、岐阜県で1人、島根県で1人、滋賀県で1人、長崎県で1人、香川県で1人、高知県で1人の、合わせて143人の死亡の発表がありました。

 国内で感染が確認された人は、空港検疫などを含め1314万6093人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1314万6805人となっています。

 感染して亡くなった人は、国内で感染が確認された人が3万2850人、クルーズ船の乗船者が13人の、合わせて3万2863人です。

 厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けるなどしている重症者は、前日より36人増えて2日時点で464人となっています。

 一方、症状が改善して退院した人などは2日時点で、国内で感染が確認された人が1104万9714人、クルーズ船の乗客・乗員が659人の、合わせて1105万373人となっています。

 大阪府は2日、新たに2万5134人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。先週火曜の2万5748人に次いで、これまでで2番目に多くなっています。

 これで大阪府内の感染者の累計は140万3550人となりました。

 また、23人の死亡が発表され、府内で感染して亡くなった人は合わせて5377人になりました。

 2022年8月3日(水)

🇰🇿尿路結石

尿の通り道である尿路に、結石ができる疾患

尿路結石とは、尿の通り道である尿路、すなわち腎杯(じんぱい)、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道に結石ができる疾患。

尿路結石は女性の2倍以上男性に多く、男性では30歳代から60歳代に多くみられます。腎杯、腎盂、尿管の上部尿路に結石ができるものと、膀胱、尿道の下部尿路に結石ができるものに分けられます。尿路結石が増えている近年の日本では、上部尿路結石が約95パーセントを占めています。

結石は、腎臓で尿の中の結晶成分を核にしてできます。約90パーセント以上はカルシウムを含むカルシウム結石で、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはその複合結石が大多数を占め、そのほかに尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。

尿の停滞と細菌感染、代謝異常、ホルモン、薬など、結石ができる原因のはっきりしているものもありますが、およそ約8割は原因不明です。

その結石は、腎杯や腎盂の中で大きくなったりしますが、結石が腎臓の中にあるだけでは、基本的には無症状です。小さい結石であれば、尿と一緒に自然に体の外に排出されます。

腎臓から尿管に下降して詰まると、いろいろな症状が出ます。一番多いのが、突然に起こる腰背部や側腹部、下腹部の痛みです。安静にしても痛みは楽にならず、痛みがひどいと、苦しくて一定の姿勢で寝ていられません。吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともあります。

また、結石が膀胱に近付くと、その刺激で尿が近い、排尿後すっきりしないといった膀胱炎のような症状が出ることもあります。尿に、目で見てわからない血が混じったり、目で見てわかる血が混じることも珍しくありません。

尿路結石の多くは、痛みで苦しむものの、命にかかわるような経過をたどりません。しかし、結石が詰まった状態で腎盂腎炎を起こすと、最悪の場合、腎臓に膿(うみ)がたまって敗血症になり、重篤な全身症状を引き起こすこともあります。時には、両側の尿管に結石が詰まって尿毒症になり、全身にさまざまな症状が現れることもあります。

尿路結石の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず尿検査を行い、血尿や尿路感染の有無を確認します。次に、腹部超音波(エコー)検査、X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査を行います。特に、CT検査では小さい結石も見付けることが可能です。

そのほか、造影剤によって結石の大きさや場所を調べる排泄(はいせつ)性尿路造影と呼ばれる検査を行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、結石がどこにあり、どんな大きさで、その成分は何かによっては異なります。5ミリ以下の小さい結石では、多くのケースで自然排出が期待できますので、水分を多量に摂取したり補液を行って、尿管の蠕動(ぜんどう)運動を活発にさせることで、結石の下降を促します。

6ミリから9ミリ程度の結石でも、水分を多量に摂取することで、およそ3カ月以内に排出される可能性があります。

激しい痛みがある場合には、鎮痛薬としてインドメタシン座薬を使用したり、ペンタゾシンを注射したり、鎮けい薬を使用したりしながら、結石形成抑制薬などを投与します。

また、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変えるクエン酸カリウムか重炭酸ナトリウムを服用して、結石を溶かす治療を行います。これには数カ月、あるいはそれ以上を要します。

自然排出が期待できない10ミリ以上の結石の場合、体外衝撃波砕石術(ESWL)が治療の第1選択となります。衝撃波発生装置から出た衝撃波を皮膚を通して、結石に収束させて、自然に排出される大きさまで細かく破砕するものです。さまざまなタイプの優れた機種が広く普及して、ごく一般的に使用されています。

しかし、衝撃波砕石術も万能ではありません。衝撃波をあまり当てすぎると、腎臓に障害を生じます。衝撃波で割れない結石もあります。また、衝撃波では割るだけで、大きな結石では割れた結石を自然排出するのが大変です。

今日では、体外衝撃波砕石術と併行して、内視鏡によって結石を取り出したり、同じく内視鏡的に超音波、レーザー、圧搾空気で結石を砕く治療も行われています。かつて主に行われていた切開手術は、まれにしか行われなくなっています。

一部の結石では、結石を作りやすい疾患が合併しているものもあり、元になる疾患の治療も行います。尿路感染症を伴っている場合には、原因となる菌を特定し、抗生剤の投与を行います。

原因がはっきりしないため、予防には難しい面があります。ただし、尿路結石で最も多い成分のシュウ酸カルシウムに関していえば、食物中のシュウ酸が体内に吸収されて、尿になる時にカルシウムと結合して結石になるため、予防にはシュウ酸の多く含まれた食物を控えるか、腸で吸収されて血液中に入る前に、腸内でカルシウムと結合させることです。

それには、シュウ酸の多いコーヒー、紅茶にはカルシウムを含むミルクをたっぷり入れたり、結石を溶かす作用があるクエン酸を含む食べ物を取ることです。クエン酸を含む食べ物は、レモン、みかん、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、キウイ、梅干し、酢などです。

日本で尿路結石が増えてきた背景には、食生活が欧米型になったこともあると見なされるで、魚や野菜中心の日本型食生活を心掛けることも有効。逆に、ビールにもシュウ酸が多く含まれているので、注意が必要です。

さらに、尿路結石では一般に、尿の濃縮と運動不足が結石の増大を促しますので、水分をよく摂取し、縄跳びやジョギングなど適度の運動を続けることが大切です。

🇺🇿妊娠高血圧症候群

主として妊娠後期にみられ、高血圧とたんぱく尿を主症状とする疾患群

妊娠高血圧症候群とは、高血圧とたんぱく尿を主症状とし、主として妊娠後期にみられる一連の疾患群の総称。妊産婦の死亡率が高く、流早産や低出産体重児の出生率が高い疾患群です。

旧来より妊娠中毒症と呼ばれてきましたが、2005年に日本産科婦人科学会により、妊娠高血圧症候群と名称が変更され、定義も変更されました。改名の大きな理由としては、病態が明らかにされてきたことと、妊娠に関連した何らかの毒物が存在するわけではないことが大きいとされています。

妊娠中毒症は高血圧、たんぱく尿、むくみにより規定されていましたが、妊娠高血圧症候群は高血圧、たんぱく尿により規定されることになりました。母子に障害が起こる可能性が高くなるのは高血圧がある場合に限ることがわかり、その一方で、むくみだけの場合は乳児の発育や予後はかえって良好となります。

妊娠高血圧症候群の定義は、妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または、高血圧にたんぱく尿を伴う場合で、これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものをいいます。

特に高血圧にたんぱく尿が一緒に現れる妊娠高血圧腎(じん)症と、高血圧だけの妊娠高血圧により、母子の障害が起こりやすいとされています。高血圧については、収縮期血圧が140mmHg~160mmHg未満で、拡張期血圧が90mmHg~110mmHg未満を軽症、収縮期血圧が160mmHg以上で、拡張期血圧が110mmHg以上を重症とします。発症時期に関しては、妊娠32週未満を早発型、妊娠32週以降を遅発型とします。

妊娠後期になると、子宮内の胎児にたっぷり血液を送り込むために、体内の血流量が非妊娠時の約1・3~1・5倍になります。この変化に対して、正常な妊婦では血管抵抗を低下させ、血管は拡張してその容積を増加させるので、妊娠後期はやや血圧は上昇してきますが、初期から中期では、かえって血圧は少し低下する傾向にあります。

ところが、何らかの理由で変化に対する適応が起こらないと、血管は拡張せず高血圧になり、いろいろな症状に発展し、母子ともに危険な状態の妊娠高血圧症候群に陥ることがあります。妊娠中期などに早めに発症した場合は、悪化する傾向があります。

重症になると、頭痛、耳鳴り、かすみ目などの症状が出たり、子癇(しかん)という意識がなくなるけいれん発作を起こしたり、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、肺に水がたまり呼吸が苦しくなったりする肺水腫(すいしゅ)、出血が止まりにくくなる播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)という状態になったりします。

出産前に胎盤がはがれる常位胎盤早期剥離(はくり)とも関連があります。また、胎盤に送られる血液量や酸素が不足するため、胎児の発育が遅れ、子宮内で苦しい状態になったりもします。

血管が十分に拡張できなくなることが、妊娠高血圧症候群の病態の一つではありますが、はっきりした原因は明らかになっていません。

約1割程度の妊婦が妊娠高血圧症候群を発症し、35歳以上の高齢初産の人、多胎(双子や三つ子)の人、肥満体形の人、妊娠中に体重を増やしすぎた人、ハードワークやストレスが多い人、高血圧・糖尿病・腎臓の疾患がある人などは、発症しやすい傾向にあります。妊娠という負荷が体にかかっている限り、完治することはありません。

妊娠高血圧症候群の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断では、検査で高血圧を確認した時、あるいは高血圧にたんぱく尿を伴うことを確認した時に、妊娠高血圧症候群であると確定します。たんぱく尿に関しては、尿中たんぱく質量30mg/dl〜200mg/dlが2回以上みられる場合に軽症、200mg/dl以上が2回以上みられる場合に重症と見なします。

産科、産婦人科の医師による根本的な治療は、分娩(ぶんべん)により妊娠を終わらせることです。しかしながら、早期に発症した場合は胎児の成熟度、予後を考え、母子の状態の許す限り待機的治療を行います。

待機的治療としては、自宅での食事療法と安静を基本とし、必要があれば薬物を使用します。

食事療法は、減塩、低カロリー、高たんぱくの食事を主体にします。以前は厳重な塩分制限が推奨されていましたが、最近では塩分制限の効果を疑問視する考えもあり、1日7~8gが適当とされています。逆に、極端な塩分制限は逆効果といわれています。カロリーやたんぱく質は、BMI(肥満度)に応じた基準値が設定されています。動物性脂肪と糖質を制限し、高ビタミン食が勧められています。重症例を除き、水分を制限する必要はありません。

そして、妊娠中は安静にして過ごし、睡眠不足や過労は避けるようにします。安静にすることで、母体の循環と子宮胎盤の循環が改善されます。重症の場合は、入院して十分な安静が保てるようにします。

薬物療法としては、高血圧に対して降圧剤、子癇発作の予防と治療に対して硫酸マグネシウムなどが用いられます。妊娠高血圧症候群では尿の中にたんぱくが漏れ出て、たんぱく質不足になりがちですが、利尿薬は循環血液量の低下を招くために胎児への悪影響が考えられ、原則として使用されません。

妊娠37週以降の場合は、待機的治療よりはまず分娩を考慮します。妊娠32週未満の早発型では、母子双方の状態を検討し、母体のリスクと胎児の成熟度、胎内環境を考慮して分娩時期を決定します。入院治療中に症状の悪化を認めた場合、子癇、常位胎盤早期剥離、眼底出血、溶血・肝酵素上昇・血小板減少を主な兆候とするヘルプ症候群などを発症した場合は、母体保護のために分娩を選択します。

また、胎児低酸素血症を認めた場合や、2週間に渡って発育傾向を認めない場合は、胎児保護のために分娩を選択します。

妊娠高血圧症候群は分娩がすむと高血圧やたんぱく尿が一気に軽快する傾向が強いのですが、重症だった人、早い時期から症状が出た人、家系的に高血圧や腎炎になりやすい人などでは、産後も症状が残ります。産後1カ月健診の後も、定期的に受診し、食事療法を続ける必要があります。

産後2〜3年は避妊をすることも必要です。次の妊娠までの期間が短いほど、再発しやすく、重症になりやすいためです。

🇧🇾軟骨性外骨腫

関節近くの骨がこぶのように突出する良性の骨腫瘍

軟骨性外骨腫(がいこつしゅ)とは、関節の近くの骨の表面がこぶのように、外側へ突出する良性の骨腫瘍(しゅよう)。骨軟骨腫とも呼ばれます。

突出した骨は軟骨組織で覆われ、ちょうど帽子をかぶったように見えることから軟骨帽と呼ばれています。この軟骨帽が内側に向かって骨を作ることにより、大きくなります。

骨自体から発生する原発性骨腫瘍の中では最も発生頻度の高いもので、基本的に良性とはいえ、約1割で悪性化して軟骨肉腫(がん)になることがあります。単発性の軟骨性外骨腫と多発性の軟骨性外骨腫とに分けられ、単発性が約70パーセント、多発性が約30パーセントの割合で発生します。多発性は、遺伝性、家族性として起こることがあります。

成長期における正常な骨は、骨の両端近くにある骨端成長軟骨板という軟骨組織が骨を作ることによって成長し、骨端成長軟骨板の消失によって成長が停止します。この成長をつかさどる軟骨組織と同じ軟骨帽が誤った方向へ骨を作るために、軟骨性外骨腫が発生すると考えられています。通常、骨の成長が止まるとともに、軟骨性外骨腫の増殖も停止します。

年齢別では10歳代に最も多くみられ、性別では男性のほうにやや多くみられます。

軟骨性外骨腫を持っている多くの人は、こぶが小さくて気付かずに生活しています。外傷などほかの原因でX線検査を行い、偶然に発見されることがよくあります。大きくなると、無痛性の硬いこぶとして触れるようになって気付きます。

こぶの増大に伴い、周囲の筋肉や腱(けん)などを圧迫すると、運動障害を起こすようになります。血管や神経を圧迫すると、血行障害や神経の刺激症状として痛みを引き起こします。前腕や下腿(かたい)など2つの骨が隣接する部位では、こぶが隣の骨を圧迫して成長を妨げ、周囲の関節の変形を引き起こして関節炎などの痛みを誘発することもあります。

単発性の軟骨性外骨腫が好発する部位は、膝(しつ)関節を形成する脛(けい)骨近位端で、大腿(だいたい)骨、上腕骨、手指の指骨、肩甲骨などにも生じます。多発性の軟骨性外骨腫では、四肢の変形、短縮などを生じることがあります。

整形外科の医師による診断では、X線写真で骨性のこぶが確認されます。こぶの頂上に当たる軟骨帽の形状には、球状、きのこ状、台地状、珊瑚(さんご)状などさまざまななものがあります。軟骨帽の内側では、軟骨内骨化、骨形成、骨髄形成が認められます。

治療では、こぶによって運動障害や血行障害、痛みや神経まひの症状を起こした場合や、悪性化して軟骨肉腫が疑われる場合に、摘出手術を行います。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...