2022/08/04

🇸🇷骨軟骨腫症

関節包の滑膜の一部が軟骨を作って、関節内へはがれ落ちる疾患

骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)症とは、関節を包む関節包の内側にある滑膜に腫瘍(しゅよう)性変化が起こって、軟骨や骨に変化し、これが関節内に遊離する疾患。滑膜骨軟骨腫症とも呼ばれます。

良性腫瘍ですが、関節を侵します。原因は不明です。通常、関節内に米粒大の多数の遊離体がみられ、そのあるものは滑膜とつながっていたり、滑膜の中に埋まっていたりして、完全に遊離していないものもあります。

遊離体の多くは軟骨中に骨の成分も含んだものですが、軟骨だけのこともあり、この場合は軟骨腫症と呼ばれます。

膝(しつ)関節(しつかんせつ)に多くみられるほか、肘(ひじ)、足および股(こ)関節にみられることもあります。

骨軟骨腫症の主な症状は、関節の痛みと動きの制限です。遊離した軟骨や骨の小片は、関節内のくぼみに落ち込んだり、引っ掛かったりして、関節の正常な動きを妨げます。関節を動かす時に、痛みや引っ掛かりを感じ、関節が伸ばせない、曲げられないなどの症状がみられます。

時には、遊離体が関節内をあちらこちらと、ネズミのように動き回るのを感じることもあります。また、膝関節では、その刺激によって水がたまってくることもあります。

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べるほか、一般にはX線検査が行われます。遊離体が骨を含んでいる場合には、X線写真に映し出されますが、遊離体が軟骨部分だけのような場合には、普通のX線検査では発見できません。このような場合には、空気や造影剤などを関節内に注入した上で、X線撮影が行われます。

治療は、手術によって関節内の遊離体を取り除くとともに、滑膜を切除するのが基本。手術といっても、多くは関節鏡による治療なので、発症者の身体的負担は少なくてすみ、回復も早まります。遊離体の数が多い場合は、関節を切開して取り除く手術が必要があります。

🇸🇷骨肉腫(しゅ)

青少年に発症しやすい、骨のがん

骨肉腫(しゅ)とは、骨の悪性腫瘍(しゅよう)。発症しやすいのは、主に7歳くらいから10歳代にかけての青少年です。

日本全国で1年に200人弱しかみられない、比較的まれな疾患といえます。そのために、一般の医師が診断や治療に精通していることが少なく、手遅れになりやすい疾患ともいえます。

症状として、上肢や下肢の骨がはれるために、腫瘍部が太くなってきます。筋肉の厚い個所では、骨がはれてきたことがわかりにくく、痛みや骨折が起こったためにX線写真を撮り、初めて異常に気付くこともあります。

発症しやすい個所は、ひざの近くの大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨。この個所に、骨肉腫の約70パーセントが生じます。次いで、肩の近くの上腕骨や、またの近くの大腿骨に生じます。

一般に腫瘍部ははれて、熱を持っていますが、皮膚が赤くなっていることは少ないようです。運動や圧迫によって、痛みが強くなることもあります。

骨肉腫の検査と診断と治療

骨の変化を知るためには、X線検査が診断の基本となります。できるだけ早期の変化を見逃さないためには、症状のある個所だけでなく、反対側も撮影し、慎重に比較して診断することが大切。そのためには、骨のX線診断に習熟した整形外科専門の医師に診てもらうようにします。

X線写真で骨肉腫が疑われた場合、病巣部からごく少量の組織を切り取り、顕微鏡で観察して診断を確定します。この検査からは、腫瘍専門医のいる医療機関で受けるほうがよいでしょう。

骨肉腫の治療は、手術療法と化学療法が大きな柱です。放射線療法を行うこともありますが、これは手術療法がむずかしいケースに限定すべきと見なされています。

その理由は、3つあります。1つは、骨肉腫の細胞は大量の放射線でないと死滅しないこと。2つ目は、放射線照射を行うと皮膚が醜くただれたり、骨組織の一部が死ぬ壊死(えし)が生じ、仮に最初は手足を切断しないですんでも、やがて切断せざるを得ない状態になること。3つ目は、10年くらいたつと、その部分に放射線による別のがんができることもあること。

手術療法としては近年、人工関節やそのほかの生体材料、すなわち人体の機能と同じような役目を果たす人工的な器官が開発され、上肢、下肢の機能を十分に残した腫瘍切除術が開発されています。

しかし、腫瘍が大きくなりすぎると、切断のほうが安全です。腫瘍の手術の場合に、一歩間違えて腫瘍細胞が手術後の傷の中に残ったりすると、病態をさらに悪化させることがあるためです。

化学療法は、手術の前から開始されます。使用されるのは抗がん剤で、一般に多種類の薬を繰り返し投与します。投与の開始後、多くのケースでは2カ月くらいの時期に手術を受けます。手術後も傷が治ったら、1年間は何回も投与を繰り返し続ける必要があります。

これは、肺などへの転移がない時期から予防的に投与するもので、補助化学療法といいます。転移が起こらないように、副作用が強いので多少苦しくても、補助化学療法を徹底して受けるように、努力することが大切です。もしも肺などに転移が生じた時は、その部分の手術を受ける必要があります。

手術を受け、腫瘍部を除去した、普通の健康体と同じです。たとえ下肢全体の切断術を行ったとしても、近年の義足はきわめて機能的で、日常生活にそれほど支障は生じてきません。積極的にリハビリテーションを受けて、社会へ復帰する心構えを持つことが大切です。

ただし、手術後1年間は補助化学療法を繰り返し受けることと、定期検診を医師の指示どおりに受けることが必要。補助化学療法を受けなくてよくなった後も、間隔は前ほどではなくなりますが、定期検診はきちんと受ける必要があります。

かつては不治の病のようにいわれていた骨肉腫も、ほかのがんと同様、現在では著しく予後がよくなり、約60〜70パーセントの発症者は治っています。

🇺🇦骨盤底筋協調運動障害

排便時に肛門周辺の筋肉をうまくコントロールできないために起こる便秘

骨盤底筋協調運動障害とは、肛門(こうもん)周辺の筋肉の機能が悪化し、排便時にうまくコントロールできないために便秘が起こる状態。協調障害性排便障害、アニスムスとも呼ばれます。

正常な排便ならば、便意の起きたタイミングで洋風便座に座れば、特に息む必要もなくスムーズに便が出ます。少し便が出にくい際は腹部に力を入れて息めば、肛門周辺の筋肉である骨盤底筋や肛門括約筋はリラックスしている状態なので協調して緩み、肛門が開いて便が出てきます。

この排便に際して息めば息むほど、骨盤の底にあって下腹部の臓器を支えている骨盤底筋や、普段は収縮し排便時に広がる肛門括約筋、肛門括約筋の一つである恥骨直腸筋が緊張して収縮し、肛門が閉じるために排便が困難になるのが、骨盤底筋協調運動障害です。

骨盤底筋は排便に際して緩むことで、直腸と肛門を真っすぐにつなげる役割を持ち、その作用で便をスムーズに送り出すことが可能になっています。この骨盤底筋の機能が悪化して、排便時に緩まずに緊張した状態が続くと、便の通り道ができなくなり、排便が困難な状態になります。

便意はあるのに、便がなかなか出ず、残便感もあります。便秘薬を飲むと、一転して下痢をします。これは大腸の運動能力には問題がないため、正常な大腸が便秘薬で刺激されて、動きが活発になりすぎるためです。

また、便秘を治すために食物繊維や水分をいくら補給しても、便の通り道がなくては腸内にたまる一方で、便秘を逆に悪化させることになります。

骨盤底筋協調運動障害は、女性に多いものの男性にも起こります。無意識の内に習慣化していることが多く、自分では気付きにくい症状です。

便がなかなか出ないために、むやみやたらに息むと肛門が閉じてしまうので逆効果。便秘が長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、食欲の低下などの症状がみられます。また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

骨盤底筋協調運動障害の検査と診断と治療

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師による診断では、肛門から指を入れる直腸の指診で、息む動作を行った時に肛門が緩まずに肛門括約筋と恥骨直腸筋が収縮するのを確認できれば、ほぼ診断可能です。

より客観的に調べるためには、造影剤を混ぜた模擬便を直腸に入れて、排便時の直腸の形や動きをX線透視下で調べる排便造影検査(デフェコグラフィー)や、小さな錠剤のようなX線マーカーを服用して大腸における通過時間を調べる検査を行います。排便造影検査では、息んだ際に直腸から肛門に連なる直腸肛門角の角度が緩まず、鋭角になるのがわかります。

また、肛門内圧検査(マノメトリー検査)を行うことがあります。肛門管に圧力を感知するカテーテルを入れて、息んだ際や肛門を締めた際の圧力の変化を測定します。骨盤底筋協調運動障害の人は、排便しようとする時に骨盤底筋が緊張し、緩めるところを逆に力が入ってしまうため、圧力のかかり方を測定することで確認できます。正常な人ならば、息んでも骨盤底筋は緩んだ状態で、ほとんど力は入りません。

さらに状況に応じて、大腸内視鏡検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことがあります。

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師による診断では、排便時の姿勢や息み方を正して骨盤底筋を矯正する指導をしたり、座薬などを用いて治療します。

まずは、和風便所を使い、しゃがんだ排便姿勢をとることが、直腸肛門角が開くために推奨されます。より一般的な洋風便所で骨盤底筋を矯正する手順は、1)排便時には上体を前傾させて両ひじを太ももの上に置く(前傾姿勢になると直腸肛門角が開いて便がスムーズに直腸へ送られるため)、2)かかとをおよそ20度上げる(腹筋の力を腸にかけやすくなるため)、3)息む時は、腰に手を当ててせきをした時に動く筋肉である腹筋だけに力を入れる(肩や背中に力を入れて全身で踏ん張らないようにするため)。トイレに行った時に、この手順を繰り返すようにすることで、骨盤底筋の機能を回復させることができます。

正しい排便姿勢や息み方を身に着けるために、バイオフィードバック療法(直腸肛門機能回復訓練)を行うこともあります。これは肛門筋電計という圧力センサーを肛門管から差し入れて、息んだ時の肛門括約筋や恥骨直腸筋の動きを、医師と一緒にモニターで視覚情報として確認し、排便時に緩めるべき肛門周辺の筋肉を無意識に締めないで腹圧をかける感覚をつかみます。

次に、直腸内に入れたバルーン(風船)を50ccほどの空気や水で膨らませて便に見立て、そのバルーンを排出する訓練を行います。水を入れるとバルーンの重みや形状が便に似てくるため、便意を感じる、我慢する、便を出すという排便に関係する筋肉の正常な協調運動を実践的に練習できることになります。

🇮🇹骨盤裂離骨折

骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で、骨盤の骨端線の部分が裂離骨折する障害

骨盤裂離骨折とは、骨盤の骨端線という、骨の端にある軟骨が骨に変わってゆく境目の部分が裂離骨折する障害。骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害です。

骨盤の中でも、腰ベルトのかかる出っ張り部分にある腸骨の上前腸骨棘(こっきょく)には大腿(だいたい)筋膜張筋と縫工筋が付着し、股(こ)関節の前方部分にある下前腸骨棘には大腿四頭筋の1つである大腿直筋が付着し、臀部(でんぶ)の下にある坐骨(ざこつ)結節にはハムストリングスが付着し、骨盤の最も上の部分にある腸骨稜(りょう)には腹筋が付着しています。

これらの付着している筋肉が、スポーツで生ずる疾走動作やキック動作などで収縮することによって、骨盤付着部を急激に牽引(けんいん)するために、成長期の骨盤に残っていて、力学的に弱い骨端線の部分が裂離骨折します。

骨盤裂離骨折は、上前腸骨棘、下前腸骨棘に発生することが多く、まれに坐骨結節、腸骨稜(りょう)に発生しています。

上前腸骨棘の裂離骨折は、スポーツの種目では陸上、サッカー、野球の順で多く、疾走する動作で縫工筋が急激に収縮するために発生することが多いのが特徴的です。発生すると、多くは股関節に突然の激痛が出現し、走行不能、歩行困難になり、股関節周囲の圧痛が認められます。 

下前腸骨棘の裂離骨折は、スポーツの種目では圧倒的にサッカーが多く、次いで陸上、野球の順です。股関節伸展位から急激な屈曲動作が加わるキック動作により、大腿直筋が急激に収縮するために発生することが多いのが特徴的です。

坐骨結節の裂離骨折は、疾走による発生が最も多く、ジャンプ、スケートなどでハムストリングスが急激に収縮するために発生することもあります。発生すると殿部に痛みを生じますが、痛みの軽度が軽く、肉離れと自己診断し診断が遅れることがあります。

腸骨稜の裂離骨折は、非常にまれで、バスケットボールや野球のスイング、柔道や相撲の投げ技などで無理に体をひねった時に生じます。

骨盤裂離骨折は、中学生、高校生である12~18歳に好発し、14~16歳がピーク。女子より強い筋力を持つ男子に圧倒的に多く、ほとんどは右側の骨盤部分に発生しています。

骨盤裂離骨折の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行うと、受傷時はわかりにくいものの、腸骨部などに剥離(はくり)した骨折片を認めます。必要に応じてCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、こちらでも骨折片を確認できます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、上前腸骨棘と下前腸骨棘の裂離骨折の場合、基本的に、骨盤付着部が筋肉に引っ張られないように、股関節を軽度に曲げた肢位での安静による保存的治療を行います。1週間のアイシングを徹底し、1~2週間の安静後に松葉杖(づえ)歩行を行い、歩行時痛がなくなってから可動域訓練と筋力訓練を行います。少しずつ負荷を増やし、8~12週でのスポーツ活動への復帰を目指します。

成長期の障害であるため、骨の癒合は良好で、多少の骨変形が残存しても、骨の癒合が完了して十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障は少なく、比較的予後は良好です。

骨折片が大きい時、骨折部のずれの大きい時、早期のスポーツ活動への復帰を望む時は、骨折片をスクリューなどで整復固定する手術を行うこともあります。

坐骨結節の裂離骨折の場合、骨折部のずれが少なければ、安静による保存的治療を行います。4週間程度の松葉杖(づえ)歩行を行い、X線検査で骨の癒合を確認しながら、12~16週でのスポーツ活動への復帰を目指します。

骨折部のずれが大きく、保存的治療で骨の癒合が図れない時は、そのほかの裂離骨折に比べて治癒まで長期間を要するため、手術を行うこともあります。

腸骨稜の裂離骨折の場合、ほとんどは安静による保存的治療を行います。安静後2~3週間の比較的短期間で歩行可能となり、6~8週間でのスポーツ活動への復帰を目指します。

再発予防のためには、骨盤周囲の筋肉や股関節のストレッチを十分に行うことが重要です。

🇵🇪ゴナドトロピン依存性思春期早発症

性腺刺激ホルモンの影響を受けて性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴が早く起こる疾患

ゴナドトロピン依存性思春期早発症は、下垂体(脳下垂体)から性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンが分泌され、それにより性腺からの女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴の成熟が通常の思春期よりも2〜3年程度早い年齢で起こる疾患。

中枢性思春期早発症、真性思春期早発症、脳性思春期早発症とも呼ばれます。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が、思春期の開始です。この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、ゴナドトロピン依存性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣( 睾丸〔こうがん〕)が4ミリリットル以上の大きさになった時が、思春期の開始です。この精巣の発育が9歳未満で起こった時、ゴナドトロピン依存性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

このゴナドトロピン依存性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン〔GnRH〕または 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕)の分泌が高進し、これが下垂体からの性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン(黄体形成ホルモン〔LH〕および卵胞刺激ホルモン〔FSH〕)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、二次性徴が早く起こります。

また、ゴナドトロピン依存性思春期早発症は、胚芽腫(はいがしゅ)・過誤腫・星状細胞腫などの脳腫瘍(しゅよう)や脳炎後遺症、水頭症などによる器質性思春期早発症と、明らかな原因が認められない特発性思春期早発症の2つに大きく分けられます。

女子に起こるものの多くは、原因不明の特発性思春期早発症ですが、男子に起こるものは脳腫瘍などによる器質性思春期早発症が多くみられます。

女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。女子に男子の約3〜5倍多く、起こります。

原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛、視野狭窄(きょうさく)などが起こることがあります。

未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

ゴナドトロピン依存性思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性腺刺激ホルモンや性ホルモンの分泌状態、頭部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳腫瘍などの病変の有無、腹部超音波(エコー)検査で副腎や卵巣の腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

ホルモン検査では、性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇が認められるとともに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)負荷試験( 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕テスト)では、性腺刺激ホルモンの思春期レベルの反応が認められます。また、骨年齢が促進し、成長率も高くなります。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、GnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

器質性思春期早発症の場合、脳腫瘍が原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。手術により切除が難しい場合は、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を行います。しかし、過誤腫が原因であれば、腫瘍そのものによる圧迫症状などがなければ、薬物療法を行います。また、脳炎後遺症、水頭症が原因であれば、薬物療法を行います。

🇪🇨ゴナドトロピン非依存性思春期早発症

性腺刺激ホルモンの影響を受けずに性ホルモンの分泌が盛んになり、第二次性徴が早く起こる疾患

ゴナドトロピン非依存性思春期早発症とは、性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンの影響を受けることなく、早期に女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、第二次性徴が早く起こる疾患。仮性思春期早発症、偽性思春期早発症、末梢(まっしょう)性思春期早発症とも呼ばれます。

ゴナドトロピン非依存性思春期早発症に対して、ゴナドトロピン依存性思春期早発症があります。

ゴナドトロピン依存性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモンの分泌が高進し、これが下垂体(脳下垂体)からのゴナドトロピン(LHおよびFSH)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣( 睾丸〔こうがん〕)からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、第二次性徴が早く起こる疾患を指します。

ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の場合は、下垂体からのゴナドトロピンの分泌が抑制されているにもかかわらず、性腺である卵巣、精巣、または副腎(ふくじん)で性ホルモンがつくられて、第二次性徴が早く起こります。

副腎腫瘍(しゅよう)、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、治療不十分な先天性副腎皮質過形成症、特殊な遺伝子異常によるマッキューン・オルブライト症候群、家族性男性性早熟症などが、その原因です。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が思春期の開始ですが、この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣が4ミリリットル以上の大きさになった時が思春期の開始ですが、この精巣の発育が9歳未満で起こった時、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。

 未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性ホルモンの分泌状態、腹部超音波(エコー)検査で副腎腫瘍や卵巣腫瘍、精巣腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

ホルモン検査では、性ホルモンの上昇は認められますが、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌は抑制されています。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、原因となる病変がある場合、それを治療します。先天性副腎皮質過形成症が原因であれば、副腎皮質ホルモンを投与します。

副腎腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、化学療法や放射線療法も行います。

すでに起きている早発月経や陰茎発育などの症状については、特別な治療をせず、社会的心理的サポートを行います。

🇵🇪顕在性二分脊椎

先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害

顕在性二分脊椎(にぶんせきつい)とは、先天的に脊椎骨(椎骨)が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害の一つ。嚢胞(のうほう)性二分脊椎、開放性二分脊椎とも呼ばれます。

日本国内での発症率は、1万人に5人から6人と見なされています。

母胎内で、脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる神経管が作られる妊娠の4~5週ごろに、何らかの理由で神経管の下部に閉鎖障害が発生した場合に、脊椎骨が形成不全を起こします。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。脊椎を構成している一つひとつの骨である脊椎骨は、椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓の2つからなっています。本来、後方部分の椎弓は発育の途中に左右から癒合しますが、完全に癒合せず左右に開いて分裂しているものが、二分脊椎に相当します。

神経組織である脊髄や脊髄膜が、分裂している椎弓からはみ出し、皮膚が腫瘤(しゅりゅう)、あるいは中に脊髄液がたまった嚢胞となって、こぶのように突き出します。これを顕在性二分脊椎といいます。

逆に、椎弓が分裂している部位がへこんでいることもあります。これを潜在性二分脊椎といいます。

二分脊椎は、仙骨、腰椎に多く発生し、胸椎、頸椎に発生することはまれです。

二分脊椎の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因としては、胎生早期におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、喫煙、放射線被爆(ひばく)、遺伝要因としては、人種、葉酸を代謝する酵素の遺伝子多型が知られています。

出生した新生児に顕在性二分脊椎が発生している場合、二分脊椎の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。

多くは、脳脊髄液による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭症(すいとうしょう)を合併しているほか、脳の奇形の一種であるキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。

顕在性二分脊椎の治療には、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる生涯にわたる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

顕在性二分脊椎の検査と診断と治療

脳神経外科、小児外科の医師による診断では、顕在性二分脊椎の場合、妊娠4カ月以降の超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には腰背部の腫瘤により病変は容易に明らかになります。脊椎部と頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、腫瘤、嚢胞の中の脊髄神経の有無、水頭症の有無を確認します。

また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

脳神経外科、小児外科の医師による治療では、顕在性二分脊椎の場合、生後2、3日以内に背中に露出した形になっている脊髄や脊髄膜を感染から守るために、皮膚と脊髄神経を分離し、皮膚を縫合する閉鎖手術を行います。

仙骨、腰椎、胸椎、頸椎などの奇形が発生した部位により、症状には重度から軽度まで個人差はありますが、下肢障害に対しては車いす、補装具などによる装具療法、理学療法、整形外科的手術による対処を行い、排尿・排便障害に対しては導尿、浣腸(かんちょう)、摘便(洗腸)、下剤、機能訓練による対処を行います。重症例では呼吸障害、嚥下障害による栄養障害への対処、知的障害への療育を行います。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...