2022/08/04

🇧🇷減酸症

胃で分泌される胃液中の胃酸が少ない状態

減酸症とは、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液中の塩酸、すなわち胃酸が少ない状態。胃酸減少症、低酸症とも呼ばれます。

胃液の中に、胃酸がほとんどないか、全くない状態は、無酸症(胃酸欠如症)といいます。

胃液は、強酸性で、pHは通常1〜1・5程度。塩酸、すなわち胃酸、および酸性条件下で活性化する蛋白(たんぱく)分解酵素のペプシンが含まれており、これによって蛋白質を分解して、小腸での吸収を助けています。同じく酵素のリパーゼは、主に脂肪を分解しています。

胃液はまた、感染症の原因になる細菌やウイルスを殺菌したり、一部の有害物質を分解したりすることで、生体防御システムとしての役割も担っています。例えば、コレラ菌は胃酸によってほとんどが死滅してしまうため、大量の菌を摂取しない限り感染は起こりませんが、胃酸の分泌量が少ない減酸症の人、胃酸の分泌がほとんどないか、全くない無酸症の人などでは少量のコレラ菌でも発症します。

減酸症は、胃液総酸度が30以下、塩酸含量0・1パーセント以下、pH1・59以上が相当します。

この減酸症を示す疾患の代表的なものは、慢性胃炎の中の委縮性胃炎。これは多くの日本人にみられますが、高齢になるに従い胃粘膜に委縮性変化が生じ、胃酸を分泌する壁細胞という細胞の数が減ってくるために、まず減酸症の状態となり、これが高度になると無酸症になると考えられています。

そのほかに、ビタミンB12や葉酸の欠乏によって生じる悪性貧血や、進行した胃がんなどで、胃粘膜に委縮性変化が生じた場合に、減酸症がみられます。手術によって胃を切除した時にも、減酸症が当然起こります。

胃酸が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起き、食後の胃のもたれ、膨満感、胸焼け、食欲不振、軽い下痢など、さまざまな症状が現れます。

胃のもたれ、胸焼けなどの減酸症で現れる症状は、慢性胃炎、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状であるため、異変に気付いたら内科、胃腸科、消化器科を受診して検査を受け、原因を確かめることが先決です。

減酸症の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器科の医師による診断では、ガストリン、またはヒスタミンを注射し、チューブから胃液を採取する胃液検査で、胃酸分泌能を測ります。また、血中ペプシノーゲン値、特にペプシノーゲンのⅠ/Ⅱ比は、胃粘膜の委縮度と相関しているので、これを測ることによって胃酸分泌能を推測できます。

慢性胃炎や胃がんの診断には、X線検査や内視鏡が必要となります。

内科、胃腸科、消化器科の医師による治療では、検査によって他の疾患が除外され、単に減酸症で塩酸、すなわち胃酸の分泌量が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起きている場合は、塩酸リモナーデなどの消化剤を服用します。

慢性胃炎による胃の粘膜の委縮も、胃腺(いせん)の委縮も、元に戻すことはできません。安静を心掛ける、ストレスを避ける、消化のよい食事を取る、コーヒーや香辛料などの刺激物の摂取を避けるなど、日常生活の中で注意をしていきます。

悪性貧血の治療は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。

🇧🇷腱鞘炎

腱鞘炎(けんしょうえん)とは、筋肉を骨に結び付けている腱の外囲を筒状に包む腱鞘に、発生する炎症です。腱鞘の中には滑液という油のようなものがあって、ひも状の組織である腱がスムーズに動くようにしています。

この腱鞘と腱の摩擦などで炎症が発生しますが、関節の使いすぎや加齢、関節リウマチ、細菌による化膿(かのう)などが原因となります。症状は、痛みと腫(は)れ、だるさ、動きにくさなど。

手の指や手首、ひじに多く起こりますが、ひざや足首に炎症が出ることもあります。手をよく使う楽器の演奏家、パソコンなどの入力作業者などのうち、中高年の女性に発生しがちです。

専門家による治療では、痛みの誘因となった作業や運動を控えて、湿布やサポーターなどで手などの患部を安静に保つほか、短期間の非ステロイド系抗炎症剤を処方したり、リハビリテーションとして温熱療法や手首などのストレッチが行われます。痛みが強い難治例では、痛む腱へのステロイド注射が検討されます。

これら手術をしない保存的治療が数カ月行われても、改善の得られない症例では、腱鞘を切開し、滑りを良くする手術が検討されます。

🇵🇪懸垂性線維腫

鼠径部、わきの下などにできて、皮膚面より垂れ下がっている良性腫瘍

懸垂性線維腫(しゅ)とは、鼠径(そけい)部、わきの下、臀(でん)部、外陰部にでき、皮膚面より垂れ下がっている良性の腫瘍。

感染性はなく、皮膚の老化や体質でできるもので、中年以降の女性に多く発生します。

直径1センチ程度の肌色から褐色調の半球状から有茎性の軟らかい腫瘍で、体に単発するものを軟性線維腫ないし線維性軟疣(なんゆう)と呼びますが、これがさらに巨大になり皮膚面から垂れ下がるようになったものが懸垂性線維腫です。

鼠径部などの摩擦を受ける個所で、皮膚の角質が増殖して少し飛び出すために、軟性線維腫や懸垂性線維腫ができます。

懸垂性線維腫は有茎性で、くびれが表面にあります。線維や脂肪からできていて、皮膚面から垂れ下がっているものの、痛みやかゆみはありません。かゆみがある場合も軽度です。

良性の腫瘍で、がん化するなど特に心配な疾患ではありませんが、衣類でこすれて炎症を起こすことがあります。

見た目に気になる、衣服の脱着時に引っ掛かってじゃまになるという場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。

懸垂性線維腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、特に検査は行いません。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療では、塗り薬や食生活の改善で完治させるのは難しいため、一般的には、中程度の大きさのものは、まず-200℃近い超低温の液体窒素で冷凍凝固して小さくした後、電気メスで焼灼します。1~2週間後に、かさぶたになります。かさぶたはかなり色が濃く、治療後はかなり目立つこともありますが、自然に脱落し、半年くらいすると赤みもひいて、きれいになります。

大きいものは、メスで茎のある懸垂性線維腫を切除します。大きさによっては、局所麻酔で切除して、糸で縫合する必要があります。抜糸まで1週間くらいかかり、その間は入浴禁止です。

🇻🇪見当識障害

認知症などにより、自分が置かれている環境を理解する能力が障害された状態

見当識(けんとうしき)障害とは、自分自身が現在置かれている環境を理解する能力が障害された状態のこと。認知症、高次脳機能障害などでみられます。

見当識とは、時、所、人などについて見当が付いていることを意味します。だから、見当識障害は、今日は何日で、今どこにいて、目の前の相手は誰かなどがわからなくなります。

季節や日付、朝と夜などが認識できない「時間の見当識障害」、自分が現在いる場所または住んでいる場所が認識できない「場所の見当識障害」、日常的に接している家族や周囲の人達を認識できない「人物の見当識障害」に大別されます。

見当識障害は、知能活動の中核である大脳皮質の細胞が壊れることによって起こります。脳の外側を広く覆っている大脳皮質は大脳新皮質と呼ばれることもあるように、進化の過程で獲得した新しい脳の構造であり、人間固有の理性的思考、学習、記憶、計画、判断、共感などの高次脳機能を発現するために必要不可欠な部位であり、問題なく日常生活を送るために欠かせない見当識も高次脳機能の一つです。

そのため、大脳皮質が物理的に損傷したり、病理的な異常がみられたりすると、見当識にさまざまな障害がみられることになります。

見当識障害が発生する疾患として最もよく知られているものは、脳血管型認知症、アルツハイマー型認知症などの認知症です。事故やけがによる脳の器質的障害によっても、見当識障害が発生し得ます。一時的な軽度の見当識障害であれば、頭を激しくぶつけた時に意識がもうろうとする脳震盪(しんとう)でも起こるし、重度の車酔いで三半規管の機能が低下した時にも、見当識失調と呼ばれる平衡感覚の乱れや意識レベルの低下がみられることがあります。

幻覚、妄想の陽性症状が頻繁に出現する重症の統合失調症や、過去の記憶内容を想起できなくなり自己アイデンティティが拡散する深刻な解離性障害(ヒステリー)でも、各種の見当識障害が発症することがあります。

🇨🇴原爆症

原子爆弾(原爆)による被災によって生じた疾病を、一般に「原爆症」と呼んでいます。原子爆弾症、原子爆弾傷とも呼ばれます。

1945年8月、広島、長崎に投下された原爆は、通常兵器とは段違いの威力を発揮し、熱風、爆風、放射線によって人々の体を破壊しました。とりわけ、放射線による傷害は、これまで人類が体験したことのない戦争被害でした。

広島、長崎の両市では、被爆直後は健康に見えた人の容態が突然悪化し、死亡したケースが数多く確認されています。多くの場合、まず体にだるさを感じ、目が見えなくなったり、節々に痛みを感じたりした後、死亡。爆発後に市内に入った人々も放射線に侵され、無傷なのに亡くなる人もありました。

生き残った被爆者の体にも、放射線の影響が深く刻み込まれています。発生から10年、20年たった後に発症するケースも、少なくありません。母胎内で被爆して生まれた子供にも、発症しています。

各種のがんにかかる人が多いのが実情で、放射線は骨髄などの細胞周期の短い細胞に大きな影響を与える確率が高いため、白血病などの血液がんを引き起こすのです。ミクロネシアでの核実験では、島民の免疫能力の大幅な低下も指摘されています。また、がん抑制遺伝子に放射線が突然変異を起こさせた場合、被爆の数十年後の発がんの確率が高まります。

こうした原子爆弾被爆者に対しては、被爆者援護法によって被爆者健康手帳が交付されています。現在、被爆者健康手帳を持つのは約25万人。被爆者健康手帳を持つ人が、がん、白血病などを発症した場合に、原爆症と認定されれば月約14万円の医療特別手当が支給されます。

しかし、厚生労働大臣の下にある審査会が判断する原爆症認定は非常に厳しく、近距離での直接被爆以外は、救護や肉親を探すために後から爆心地に入った人はほとんど却下されています。現行での認定者は約2200人で、被爆者健康手帳を持つ人の1パーセント未満にすぎません。

原爆症の新たな認定基準を検討してきた厚生労働省では、2008年1月、原爆と疾病の因果関係を判断する「原因確率」が10パーセント以上であれば、無審査で認定する方針を固めました。

原因確率とは、2001年に導入された原爆症の認定基準で、爆心地からの距離などを基に被曝(ひばく)線量を推定し、性別、被爆時の年齢、かかっている疾病といった要素を加味して算出。現行の審査基準では、原則として50パーセント以上は認定、50~10パーセントはおおむね認定されるが、10パーセント未満は除外されてきたため、被爆者らから「機械的な切り捨て」と批判されていました。

今後は、10パーセント未満で審査が必要なケースについても、(1)被爆地点が爆心地から約3・5キロ前後、(2)爆心地付近に約100時間以内に入った、(3)その後1週間程度滞在したとの条件で、がん、白血病、副甲状腺機能高進症、放射線白内障、心筋梗塞(こうそく)にかかっていれば原則認定し、この基準から漏れても、個別審査で認定の可能性を残すことになります。

厚生労働省が2008年の春から、新基準での審査を実施することにより、現行の約10倍の年間約1800人が、原爆症に認定されると見込まれます。

🇨🇴クラミジア結膜炎

性行為によって、微生物のクラミジア・トラコマーティスが目に感染し、引き起こされる結膜炎

クラミジア結膜炎とは、性行為によって、細菌よりも微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物が目に感染し、引き起こされる結膜炎。

封入体結膜炎とも呼ばれます。この疾患名は、まぶたの裏側から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。

同じクラミジア・トラコマーティスによって引き起こされる結膜炎にトラコーマがありますが、こちらはクラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こり、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。

クラミジア結膜炎は、クラミジア・トラコマーティス血清型D、E、F、G、H、I、J、Kによって起こり、成人に多くみられます。同じクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kは、性行為により性器に感染して性器クラミジア感染症も引き起こします。

クラミジア結膜炎はほとんどの場合、性器にクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kの感染を持っている人との性行為の後、発症します。まれに、汚染されたプールの水から伝染し、発症することもあります。また、新生児が母親から産道感染して、発症することもあります。

2〜19日の潜伏期の後、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性の炎症として、まぶたがはれ、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが出ます。

かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。下のまぶたの眼瞼結膜には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。

眼球の黒目の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れることもあります。

目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。

非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。

通常、初めは片目だけに症状が現れることが多いものの、放置しておくと両目ともに症状が現れることもあります。

目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。

出生時に、母親の産道を通る際に感染した新生児では、生後1週間前後で発症し、まぶたのはれ、充血、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜という分泌物の塊が結膜にできます。

中耳炎や肺炎を合併することもあります。性器クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に産道のクラミジア・トラコマーティスが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。

なお、新生児のクラミジア結膜炎では、眼瞼結膜に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。

クラミジア結膜炎に気付いた、早めに眼科の専門医の診察を受けることが勧められます。

クラミジア結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、症状の視診と目の検査を行います。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。

また、点眼麻酔後、結膜表面から綿棒で擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が見付かります。血液検査でクラミジア・トラコマーティス抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジア・トラコマーティスを培養する方法もありますが、時間がかかります。

性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為とクラミジア結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器に性器クラミジア感染症があります。

眼科の医師による治療では、クラミジア・トラコマーティスに有効な、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の点眼剤や、眼軟こうが用いられます。

点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟こうは長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。

重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、抗生物質の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、女性では子宮の入り口に当たる子宮頸管(けいかん)、尿道などでクラミジア・トラコマーティスが増殖しているからです。

治療の原則は、抗生物質の眼軟こうを8週、抗生物質の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジア・トラコマーティスそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。

クラミジア結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。

さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、ほかのタオル類と別にしておかなくてはいけません。

クラミジア結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーの検査、治療も必要です。

🇵🇦クラミジア肺炎(オウム病)

微生物のクラミジアを吸入して、肺に起こる感染症

クラミジア肺炎とは、ウイルスに近いクラミジア・シッタシという微生物が原因となって生じる肺炎。オウム病とも呼ばれます。

クラミジア肺炎は本来、動物の疾患であり、人はクラミジア・シッタシに感染したオウムやインコなどの鳥類から感染する人畜共通の感染症の一つです。病原体がオウムから初めて分離されたことからオウム病と名付けられましたが、インコ、ハト、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒルなどオウム以外のペット鳥、家禽(かきん)類、野鳥でも、クラミジアに感染した鳥が確認されています。

クラミジアに感染している鳥は、糞便(ふんべん)中にクラミジアを排出します。乾燥した糞便が、ほこりや羽毛などとともに舞い上がり、人はそれを吸入することで感染します。感染している鳥に口移しで餌(えさ)を与えたり、鳥の羽根や排出物や鼻汁に直接触れたりなど、鳥との濃厚な接触で感染することもあります。

クラミジア肺炎は小児よりは成人に、男性よりは女性に多くみられ、発症は5〜6月に多い傾向がみられます。地域的に流行することもあれば、散発的に発生することもあります。肺炎に占めるクラミジア肺炎の頻度は、1〜2パーセント程度。

症状は軽度のインフルエンザ様から、多臓器障害を伴う劇症型まで極めて多彩です。 一般的には、感染後1〜2週間の潜伏期間を経て急激に発症します。頭痛や筋肉痛、関節痛を伴って、発熱、せき、胸痛、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、血たんなどの症状が現れます。重症になると、肺臓を主体に、全身の臓器に病変が認められるようになります。特に、肝臓、脾臓(ひぞう)、心臓が炎症を起こし、さらに、脳神経に異常を来して意識障害が現れ、死亡するケースもあります。

クラミジア肺炎の検査と診断と治療

鳥との接触歴があったり、鳥の飼育をしている人に発熱、せきが現れた場合はクラミジア肺炎(オウム病)が疑われるので、内科、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。ペット鳥、家禽類が死んでいる場合は、特に疑いが濃くなるので、そのことを受診先の医師に伝えます。

医師による診断では、原因菌に対する抗体の検出のほか、原因菌の分離、原因菌の遺伝子の検出が行われることもあります。

治療には、テトラサイクリン系の抗生物質、またはマクロライド系の抗生物質が用いられます。ニューキノロン系の抗生物質も有効ですが、セファム系の抗生物質は無効です。早期診断と早期治療で完治できます。

クラミジア肺炎の予防ワクチンは、開発されていないので、感染している鳥への接触には注意が必要です。鳥ではクラミジア菌を保有していても、外見上ほとんど健常にみえます。弱った時や、ヒナを育てる時期などでストレスが加わった時、他の感染症を合併した時などに、糞便中に菌を排出し、人への感染源になります。

鳥への過度の接触を避けること、鳥にストレスを与えないように飼育すること、鳥に触れたらよく手を洗うこと、かごや飼育舎の掃除をこまめに行うこと、素手で糞便に触れないことなどが、予防のために大切となります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...