2022/08/05

🛏ナルコレプシー

突然に起きる強い睡眠発作を中核症状とする神経疾患

ナルコレプシーとは、突然に眠り込んでしまう激しい睡眠発作を中核症状とする神経疾患。過眠症、居眠り病とも呼ばれます。

夜の睡眠は十分に取れていても、昼間、急に睡魔が襲ってきて自分では抑制できず、眠ってしまいます。会話中、車の運転中、食事中、はたまたセックスの最中など、通常では考えられない状況で、突然、すーっと眠り込んでしまうといった具合です。

睡眠発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下。意図的に短い仮眠を取った時には、すっきりと目覚めます。この睡眠発作は、ノンレム睡眠を経過せずに、いきなりレム催眠に入るのが特徴です。

ナルコプレシーのもう1つの特徴は、脱力発作(情動脱力発作、カタプレキシー)です。笑ったり、喜んだり、怒ったり、驚いたり、自尊心がくすぐられたりなどの突発的な感情が誘因となって、全身の脱力発作が起こって力が抜け、物を落としてしまったり、ろれつが回らなくなったり、数秒~数分間、筋肉がまひしてその場に崩れ込んでしまったりします。

意識ははっきりしているし、見たり聞いたりもできますが、ただ動けないだけです。この脱力発作は、レム睡眠に入ると筋肉の緊張が完全に消えることと似ています。

ほかに、睡眠まひ、入眠時幻覚を伴います。睡眠まひでは、寝入ったばかりや目が覚めた直後に、体を動かそうとして動かせない状態になります。いわゆる金縛りと呼ばれる状態で、開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができません。本人は非常な恐怖に駆られますが、他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、まひは数分後には自然に治まります。

入眠時幻覚では、睡眠発作により眠り込んだ際や、夜間に寝入った直後、まれに目覚めた際に、現実感の強い幻覚、幻聴を経験します。これらの幻覚、幻聴は正常な夢に似ていますが、もっと強烈で鮮明です。

夜間は、頻回の中途覚醒(かくせい)や、睡眠まひ、幻覚を体験するなどのため、睡眠も妨げられます。

日本人のナルコレプシーの有病率は、1万人当たり16人~18人といわれています。すべての人種において発病がみられる中で、日本人の有病率は世界で最も高く、欧米では1万人に2~4人といわれています。

家族内に起こる傾向がありますが、原因は不明です。ナルコプレシーのほとんどは通常、思春期から青年期にかけて発症するため、脳の性的成熟と関係があるとも考えられています。また、オレキシンという視床下部から分泌される神経伝達物質の欠乏と関係があるとも考えられています。

症状は一生涯続きますが、症状のすべてが現れる人は全体の約10パーセントにすぎず、大部分の人は2、3の症状が出るだけです。

ナルコレプシーの検査と診断と治療

昼間に強い眠気を感じる時は、内科や睡眠外来、神経内科を受診します。

診断は症状に基づいて行われますが、別の疾患が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠まひと幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こり得ます。診断が確定しない時は、脳波検査を行って脳の電気活動の記録を取ります。ナルコレプシーがあると、寝入りばなにレム睡眠の活動が起きていることを示す典型的な波形が現れます。正常であれば、レム睡眠は睡眠サイクルの後のほうで起こります。画像診断で見付かるような異常によっては、ナルコレプシーは起こりません。

根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。中枢神経刺激剤を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリンアンフェタミン、デキストロアンフェタミンなどが使用されます。中で、モダフィニルは他より副作用の少ない薬剤です。脱力発作や睡眠まひの症状を軽くするためには、イミプラミン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ剤、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使用されます。

イライラ、異常行動、体重減少などの副作用が起こらないように薬剤の量の調整が必要なため、薬物療法を行っている人の体調は慎重に監視されます。

抗うつ剤によって夜の眠りを安定させ、中枢神経刺激剤を朝と昼に服用することにより、日中の睡眠発作をほとんどなくすことができます。しかし、根気よく治療を続けることが必要で、長い年月がたつと症状がかなり軽くなり、多くのケースでは薬剤の量を減らすことができるようになります。

治療では、薬剤によって症状を軽減するとともに、生活習慣の改善も図ります。大事なのは規則正しく生活をし、夜にしっかり睡眠を取ることで、睡眠表をきちんとつけることにより、自分の睡眠生活が理解できるようになります。日中に15〜20分程度の短い昼寝をこまめに取ると、睡眠発作の予防効果があります。

🇵🇬兎唇

上唇の一部に裂け目が現れ、兎の唇のような形を示す先天性異常

兎唇(としん)とは、上唇(うわくちびる)の皮膚と筋肉の一部に縦の裂け目が現れ、兎(うさぎ)の唇のような形を示す先天性異常。口唇裂、唇裂、三つ口、いぐち、欠唇(けっしん)とも呼ばれます。

妊娠初期に複雑な発生の過程をへて、胎児の顔面が形成されます。胎生期第4~7週ころに、前頭突起(内側鼻隆起)と左右の上顎(じょうがく)突起が癒合して上唇ができます。この癒合が障害されると、兎唇になります。兎唇といえば通常、上唇の皮膚と筋肉の一部に裂け目が現れる上唇裂をいい、下唇に裂け目が現れる下唇裂は非常にまれです。

この兎唇は、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂、裂け目が鼻まで達しない不完全口唇裂、左右の唇のどちらか一方に裂け目がある片側口唇裂、左右両側に裂け目がある両側口唇裂、さらに、唇の縁の小さなへこみや、唇から鼻の穴までの傷跡のように見える軽微な兎唇である痕跡(こんせき)口唇裂に分けられます。

兎唇は、さまざまな要因が複雑に絡み合って現れると考えられており、特定の原因があるわけではありません。口腔(こうくう)の発生にかかわる遺伝子の変異が関係したり、妊娠中の喫煙、胎内での風疹(ふうしん)感染、胎児脳内圧の異常高進、薬物、放射線障害などの環境要因が関係していると考えられています。染色体異常に伴う場合は、内臓疾患や生後の発育、発達の遅れがみられる場合があります。

兎唇は単独でみられることもありますが、口と鼻を隔てている上顎(うわあご)に先天性に破裂が現れる口蓋裂(こうがいれつ)と合併した口唇口蓋裂が多くみられます。さらに、歯を支えている顎骨である歯槽骨の破裂が現れる顎裂(歯槽裂)を合併することもあります。

兎唇の発生頻度は、全出産の0・08パーセントといわれています。兎唇、口蓋裂、口唇口蓋裂、顎裂を含めた発生頻度は、全出産の0・2パーセントといわれています。

胎児の顔面の口や鼻が形成された後、胎生期第7~12週ころの間に、口の中では口蓋がつくられます。口腔と鼻腔の間に口蓋突起が左右から伸び、前方から後方へと癒合が進んで上顎(口蓋)が形成されます。この過程が障害されると、口蓋突起が最期まで癒合せずに口腔と鼻腔が破裂したままになり、口蓋裂ができます。

口蓋裂は、口蓋の奥の部分の軟口蓋に破裂があるもの、口蓋の前方3分2の部分の硬口蓋に破裂があるもの、軟口蓋と硬口蓋の両方に破裂があるものに分けられます。

生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、兎唇が認められます。

口唇口蓋裂があると、歯の形態異常、欠損、歯列不正などが認められます。授乳障害もあり、母乳やミルクが鼻から逆流しやすくなったり、発音が鼻に抜けたりする症状がみられ、中耳炎、誤嚥(ごえん)性肺炎を合併することが多くみられます。

出生後、兎唇のほか、口蓋裂、口唇口蓋裂、痕跡口唇裂が認められた場合は、口唇口蓋裂を専門に治療し、発育、発達の定期的なフォローも含め、総合的に診療している口腔外科、形成外科を紹介してもらい、受診することが望まれます。痕跡口唇裂の場合、外見上は軽微な変化であっても、その下にある口輪筋への影響があり、深刻度を判断してもらう必要があります。

兎唇の検査と診断と治療

口腔外科、形成外科の医師による治療は、矯正歯科、小児歯科、耳鼻咽喉(いんこう)科、言語聴覚士、小児科など各科の医師とのチーム医療で行われることが一般的です。

口腔外科、形成外科の医師による治療は、兎唇手術(口唇裂形成手術)が主体で、手術前にはホッツ床という柔らかい樹脂でできた入れ歯のようプレートを上顎にはめて、授乳しやすくします。

手術時期は、兎唇と口蓋裂で異なり、発音機能と上顎の発育の両面を考えながら決めます。一般的には、兎唇はミラード法などで生後3カ月以後、体重5キログラムを目安に実施し、裂けた口唇の閉鎖と再建、変形した鼻の位置の適正化、口輪筋の連続性の再建を図ります。

口蓋裂は1歳以降に、ファーロー法などの手術を実施し、口蓋部分における口腔と鼻腔の閉鎖、軟口蓋における口蓋帆挙筋などの左右に分かれた筋群の再建を図ります。

 高度な兎唇完全型(完全口唇裂)では、初回の手術だけで完全な形態の再建が完成するとは限らず、就学前あるいは青年期に、口唇や鼻の二次的な修正手術を必要とすることがあります。言語聴覚士による発音の訓練も必要です。

🇸🇧突発性難聴

ある日、突然に起こる内耳性の難聴で、最近増えている病気です。いつ、どこで起きたか、自覚できることが多いほどです。片方の耳だけに発症するケースが多く、耳鳴りや、めまいを伴うこともしばしばあります。

原因は不明。疑われているのは、ウイルス感染や、内耳の血流の循環障害などです。

早く治療すれば、治る場合が多いようです。高度の難聴が起きたり、めまいを伴う場合には、難聴の回復はむずかしいのですが、メニエール病のように発作を繰り返すことはありません。

医師による治療では、血管拡張剤、ビタミン剤、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンのステロイド剤の投与などが行われています。

🇸🇧突発性発疹

乳児期に多発する急性ウイルス性疾患で、突然の高熱で発症

突発性発疹(はっしん)とは、生後6カ月から3歳まで、大部分は1歳半までにかかる比較的予後のよい急性ウイルス性疾患。突発性発疹症とも呼ばれます。

ヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)という水痘(すいとう)と同じグループのウイルスが原因です。一部、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV7)やエンテロウイルスによるものも存在します。主な感染経路として、ヒトヘルペスウイルス6型抗体陽性の家族の唾液中のウイルスによる水平感染が考えられています。流行に季節性はなく、ほぼ1年中発症をみます。

約7〜17日の潜伏期間の後、急に39〜40度に達する高熱で発症するのが特徴で、この急な高熱のために、乳幼児では初めてのけいれんを起こすことがあります。発熱時には、安眠しない、食欲不振などのほか、のどの炎症がみられたりしますが、高熱の割にそれほど不機嫌にならないのが特徴で、一般状態は比較的良好です。発熱の時期に、まぶたがむくんだようになったり、頭部の前面にある大泉門(だいせんもん)が盛り上がることもあります。

2〜4日間続いた高熱が下がると同時に、発疹が現れ、全身状態が回復します。経過中に軟便や下痢が続くこともよくあります。

発疹は、麻疹(はしか)や風疹(三日ばしか)に似た淡紅色のもので、主に胴、首、耳の後ろに現れ、顔面や手足には少なめのようです。この発疹は数時間後から薄れて、2〜3日以内に跡も残さず、きれいに消えます。発疹の最もひどい時期には、頭や耳の後ろのリンパ節がはれることがあります。

突発性発疹の検査と診断と治療

小児科の医師による診断に、検査を必要とすることは通常ありません。好発年齢、高熱の割に機嫌が悪くないこと、発熱と発疹の関係、まぶたのむくみなどが診断の手掛かりになります。

高熱の時期には、急性中耳炎、急性腎盂(じんう)腎炎、肺炎、化膿(かのう)性髄膜炎などと間違わないよう、鑑別に注意を要します。客観的に診断を確定するためにはウイルスの分離、または血液中の抗体検査をします。

突発性発疹に有病期間を短縮したり、予防したりする特別な治療法はなく、対症療法だけになります。発熱期間中の解熱剤の投与で十分で、機嫌が悪くないので結果的には使用されないことも多いようです。熱性けいれんの既往があるなどでけいれんを起こす危険性が高いと考えられる場合は、予防的に抗けいれん剤が投与されることがあります。基礎疾患や熱性けいれんの既往がない場合は、抗けいれん剤が処方されることは通常ありません。

隔離しなくても、ほかの乳幼児に感染することはありません。生後初めての高熱のため、母親の驚き、心配は大きいようですが、予後の悪い疾患ではないので、それほど心配はありません。発熱期間中は安静にさせ、脱水予防のため十分に水分を飲ませ、消化のよい流動食か半流動食を与えます。

🇳🇿とびひ(伝染性膿痂疹)

化膿菌がついて全身のどこにでも炎症が起こる皮膚病

とびひとは、虫刺されやけがによる傷をかき壊したところに、化膿(かのう)菌がついて起きる皮膚の炎症。正式には、伝染性膿痂疹(のうかしん)と呼びます。

幼児にできやすい疾患で、全身のどこにでも、水膨れと、かさぶたのついたジクジクしたびらん面ができ、かゆみが強いためにかくと、どんどん広がっていきます。

原因菌は、黄色ブドウ球菌と溶血性連鎖球菌(溶連菌)という二つの菌が主体になります。この化膿菌は、毛包とか汗管を通らないで、直接に表皮角質の間を侵入、感染して、炎症が起こります。

黄色ブドウ球菌の時は大きな水膨れになる水疱(すいほう)性膿痂疹、溶血性連鎖球菌の時は大きな水膨れにならず、かさぶたが厚くつく結痂性膿痂疹に分類されますが、両方の菌が感染していることも多く、はっきりと区別のつけにくいこともあります。黄色ブドウ球菌は、扁桃(へんとう)炎の原因にもなる菌で、鼻など体のどこにでもいます。この菌が健康な皮膚についても何の症状も起こしませんが、虫刺されやけがでできた傷、あせもやアトピー性皮膚炎などをかいてできた傷などにつくと、そこから感染して化膿します。

最初の症状は、粟(あわ)粒からクルミの実くらいの大きさで、膜の薄く、破れやすい水膨れが多発します。皮膚に赤みがある場合と、赤みがない場合とがあります。水膨れはすぐにつぶれて、かさぶたのついたジクジクしたびらん面になり、その周囲に新たに、小さい水膨れが拡大していきます。びらん面は1週間ほどで治りますが、次々に新しい水膨れができていきます。

かゆみが強いため、そこをかいた手でほかの部分をかくと、手についた菌がついて、全身のどこにでも広がっていきます。本人だけでなく、幼くて皮膚の抵抗力が低い兄弟姉妹など周囲の人にも感染していきます。

季節的には一年中できる可能性はありますが、やはり高温多湿の8月から9月にかけてが最も多くみられます。

まれに、黄色ブドウ球菌の持つ毒素が全身に回って、全身の皮膚が真っ赤になり、やけどのように皮膚がはがれるなどの、激しい症状が出る場合があります。これはSSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)と呼ばれ、入院治療が必要になります。

また、生後間もない新生児がとびひにかかると、敗血症や肺炎などを併発する場合があるので、注意が必要です。

とびひの検査と診断と治療

とびひの最中に、幼児の口、目の回り、わきの下、またの付け根などが赤くなり、痛がり、発熱することがあります。これはSSS症候群で、とても危険な状態ですので、すぐに皮膚科を受診します。また、腎(じん)炎を併発することもあるので、顔にむくみが出たら小児科を受診します。

軽い場合は、患部を消毒して、皮膚科で処方された抗生物質の入った軟こうを塗ります。全身に広がっていたり、ジクジクがひどい場合は、さらに抗生物質を内服したり、注射します。抗生物質での治療は、効果が十分に出て化膿菌が完全に死滅するまで時間がかかるため、医師にいわれた期間は必ず続けるけることが必要。途中でやめてしまうと、すぐに再発して、治るまでに時間がかかります。

また、入浴は最低でも1日1回、できれば何回でも、幼児にさせます。とびひは感染力が強いので、湯船には入れずに、シャワー浴にしたほうが無難です。殺菌効果の高いせっけんを使って、ガーゼでかさぶたや水膨れを取るようにして、よく洗います。洗ったあとは、患部をよく乾燥させてから、消毒し軟こうを塗ります。

兄弟姉妹がいる場合は、タオルの共用は避けます。完治するまでは、プールや大衆浴場へは行かないようにします。

黄色ブドウ球菌は、鼻の中にたくさんいます。鼻水や鼻くそは、ガーゼなどできれいに掃除します。アトピー性皮膚炎を起こす子供の場合は、もともと皮膚のバリア機能が弱くて、ブドウ球菌への抵抗力が備わりにくく、とびひになりやすい傾向にあります。早めのケアを心掛けます。

🇦🇺どもり

頭の中で思い描いた言葉を円滑に発することができない疾患

どもりとは、頭の中で思い描いた言葉を発する際に舌や口唇などがうまく動かず、言葉を円滑に発することができない疾患。吃音(きつおん)、吃音症とも呼ばれます。

話し言葉の流暢(りゅうちょう)性とリズムの障害であり、コミュニケーション障害の一種に相当します。

このどもりには、大きく分けて連声型どもり(連発型どもり、連続型どもり)、伸発型どもり、難発型どもり(無声型どもり、無音型どもり)の3つがあります。

連声型どもりは、ありがとうが「あ、あ、あ、ありがとう」のように、最初のある言葉を連続して発するもの。

伸発型どもりは、ありがとうが「あーーーーりがとう」のように、語頭のある音を引き伸ばして発するもの。

難発型どもりは、ありがとうが「あ…………(無音)」のように、最初のある言葉から続く言葉を発することができないもの 。

原因は特定されていませんが、素因的なものがあるともいわれ、それに加えて発達的な要因、環境的な要因、つまりコミュニケーションの環境や親の養育態度、さらに自律神経の失調などが複合的に関係しているのではないかと見なされています。

どもりは一般的に、言葉の数が急に増え、話し言葉が活発になる2歳から5歳位の幼児期に始まります。特別な原因はないのに言葉がつかえ始める場合がほとんどで、これらを発達性どもり(吃音症)といい、どもりの9割以上が相当します。

一方、成人になって言語を習得した後に、疾患によって失語症など言語に障害を生じ、その症状として言葉がつかえることがあります。また、心理的に大きなショックを受けた場合に、言葉がつかえることがあります。これらを獲得性どもり(吃音症)といいます。

発達性どもりは、子供の5パーセント弱にみられます。とりわけ男子に多く、女子1人に対して男子は3~7人位の割合です。その原因は不明ですが、男子のほうが言葉の発達がやや遅めで、ストレスの影響を受けやすいからではないかなどといわれています。

どもりには、1~4段階のレベルがあります。第1段階レベルのどもりは、本人がどもりだとあまり自覚していない時期。第2段階レベルのどもりは、本人が連声型のどもりを気にし始める時期で、次第に語頭の音を引き伸ばす伸発型のどもりが現れるようになります。

第3段階レベルのどもえいは、自分がどもりだと強く自覚するようになる時期で、伸発型のどもりの時間が長くなり、最初の言葉から続く言葉を発することができない難発型のどもりになります。この時には、口元のけいれん、身振り、身悶(もだ)えなどの随伴運動が起こります。

第4段階レベルのどもりは、気にせずにはいられず、どもりそうな言葉や場面をできるだけ避けたり、話すこと自体や人付き合いを避けたりします。さらに、自分がどもりだと自覚した後でどもりを放っておくと、対人恐怖症や緊張症などの二次障害を引き起こす可能性があります。

主に、幼児期には連声型のどもりが多くみられ、成長するにつれ難発型のどもりが現れるようになります。難発型のどもりが現れるのは、連発型のどもりを隠そうとするゆえに無意識的に獲得した条件反射であると見なされます。

幼児期にどもりを発症しても、小学校入学前後で平均50パーセント位の子供が自然に、あるいは軽い治療や指導でよくなります。大人になると、有病率は1パーセント弱になります。

どもりの症状が激しく、自分のどもりに関して深刻に思い悩んでいるのは思春期から30歳代にかけての比較的若い世代が多く、40歳代、50歳代と年を重ねるにつれて、どもりの症状が目立たなくなって、どもりの率も軽減してくるという傾向もあります。

これは生理的な自然治癒力によるものと考えるより、仕事や家庭を持つことによって、どうしても話さざるを得ない機会が増えてくることによって、話す量も増えてゆく結果、話すこと自体がリハビリの効果を生み、自然と慣れてくるためだと見なされます。そのため、ある程度年配でも、どもりの症状が変わらないという人も見受けられます。

子供にどもりの心配がある際は、言語聴覚士のいる医療機関を受診することが勧められます。基本的には、言語聴覚士が言語障害などを治療しますが、診断はどもりの治療を手掛けている言語聴覚士がいる耳鼻咽喉(いんこう)科などの医師が行います。

また、神経内科などでも医師にどもりの知識があり、どもりの治療を行う言語聴覚士がいれば、診断可能な場合もあります。精神科や心療内科などでも、通院・在宅精神療法や投薬治療を受けず、初診料と再診料のみの診療報酬請求しか行わないならば、どもり(吃音症)のみの診断名で基本的には受診可能です。

どもりの治療

言語聴覚士による治療では、精神の緊張を取り除き、話すトレーニングを忍耐強く行います。一般的に完璧などもり(吃音症)に対する医学的な治療法はないといわれていますが、トレーニングで改善することは可能とされています。

その中で最も多く取り入れられているのが、発音トレーニング。息を大きく吸って、何度でもいいので、1語1語を少し長めに伸ばすような勢いで発音してゆきます。下腹部に力を入れ、普段の会話を意識しながら、すべての発音が難しければ最初の一言だけでかまわないので、慣れるように無理せず少しずつ発音してゆくことが肝心です。

そして、慣れてきたら少しずつ長めの単語を話すようにしてゆきます。この時点でも無理はせず、その様子を録音して定期的に改善されているかチェックします。

すぐに効果が出るのは難しいものの、忍耐強く少しずつ1日数分でもやることによって、改善されていくケースも多くみられます。

🇦🇺出べそ

生後間もなくへその緒が取れた後、へそが飛び出してくる状態

出べそとは、生後間もなくへその緒が取れた後に、へそが飛び出してくる状態。乳幼児期特有の疾患で、正式には臍(さい)ヘルニアと呼ばれます。

へその緒(臍帯)が取れた生まれて間もない時期には、まだへその真下の臍輪が完全に閉じていないために、乳児が泣いたり息んだりして腹に圧力が加わった時に、筋肉の透き間から腸管が皮下に飛び出してきて、へそが膨らんだ出べその状態となります。

触れると柔らかく、圧迫するとグジュグジュとした感触で簡単に腹の中に戻りますが、乳児が再び泣いたり息んだりして腹に圧力が加わると、すぐに元に戻ってしまいます。腸管が腹腔(ふくくう)内に入ったり、出たりする結果です。

臍帯付着部の臍輪の閉鎖不全が、原因です。臍輪の下方には正中(せいちゅう)臍靭帯(じんたい)、外側(がいそく)臍靭帯があり、上方には肝円(かんえん)靭帯があります。特に、臍上部が弱く、出生までに臍輪が閉じられない場合に、出べそが発症します。

この出べそは、新生児の5~10人に1人、出生体重1000〜1500グラムの未熟児の80パーセント以上にみられるといわれています。生後3カ月ころまで大きくなり、ひどくなる場合は直径が3センチ以上にもなることがあります。しかし、4カ月ころには日1日と急速に小さくなり、ほとんどの出べそは左右の腹直筋が発育してくる1〜2年の間に完全に臍輪が閉じて、自然に治ります。

ただし、1~2歳を超えても出べそが残っている場合や、ヘルニア(脱腸)は治ったけれども皮膚が緩んでしまって、へそが飛び出したままになっている場合には、手術が必要になることがあります。

出べそで痛みがある場合は、大網(だいもう)がヘルニア嚢(のう)に癒着しているためと考えられます。大網とは、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄い膜で、ヘルニア嚢とは、飛び出してくる腸管を包む腹膜です。乳幼児の出べそでは、腸管がヘルニア嚢内に陥入し、腸管血行障害を起こす嵌頓(かんとん)は極めてまれです。

出べその検査と診断と治療

1~2歳を超えても出べそ(臍ヘルニア)が残っている場合や、出べそは治ったけれども皮膚が緩んでしまって、へそが飛び出したままになっている場合には、小児外科の専門医を受診します。

医師が指で圧迫すると、腸管はグル音という腹腔内に戻る時の音を伴い、簡単に還納できることで、確定診断ができます。

乳幼児期に自然に治る可能性が高いので、まずは手術はせずに外来で経過観察します。腸が腐る危険はまずありませんし、どんなに大きくても皮膚が破裂することもありません。へその形をよくする意味で、絆創膏(ばんそうこう)固定を行う医師もいます。

生後1年以内に、80〜95パーセントは自然に治ります。2歳までに治らなければ、外科的治療を行います。臍輪の穴を閉じるとともに、へそのへこみを人工的に作ります。成人の場合は、出べそ内に腸管嵌頓が起こる頻度が高いので、発見次第、外科的治療を行います。合併症がなければ、予後は良好です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...