2022/08/05

🇵🇷腸チフス、パラチフス

チフス菌、パラチフスA菌の経口感染により、腸に潰瘍が発生

腸チフス、パラチフスとは、チフス菌、パラチフスA菌が口に入ることにより引き起こされる細菌感染症。パラチフスB菌とC菌によるものは、サルモネラ腸炎として扱われます。

腸チフス、パラチフスは世界各国でみられますが、特に衛生状態の悪い発展途上国で多くみられます。近年の日本では激減しており、90パーセントは海外での感染によるものです。 輸入食品を介して感染する危険もあり、感染症法では国内でも監視が必要な2類感染症に指定されています。

生ガキ、冷ややっこなど汚染された生の食品や、水などを摂取することによって経口感染し、食器についた少量の菌によって感染することもあります。潜伏期間は1〜3週間で、腸のリンパ組織を侵し、潰瘍(かいよう)を作る一方で、血流に乗って菌が全身に広がり菌血症の症状を起こします。

症状は頭痛、全身倦怠(けんたい)感で始まり、熱が次第に高くなり、1〜2週間後には最高に達して40度前後の高熱が続きます。発症1週間目ごろには皮膚にバラ色の発疹(はっしん)が現れます。舌が乾燥し、厚い煤(すす)色の苔(こけ)がつきます。下痢、嘔吐(おうと)の症状が現れることは、あまり多くはありません。

3週目には熱が下がり出し、食欲が出るころに、腸出血や腸穿孔(せんこう)を起こすことがあり、危険です。4週目には解熱して、回復に向かいます。

一般に、チフス菌による腸チフスより、パラチフスA菌によるパラチフスは軽い経過をとります。

腸チフス、パラチフスの検査と診断と治療

国内ではまれな疾患ですが、原因不明の発熱が続く場合には忘れてはならないものです。発展途上国など海外の旅行先から帰国して発熱が続く場合には、2類感染症につき、一定の病院を受診して検査を受けます。

医師による診断は、血液、便などからのチフス菌、パラチフスA菌の検出により確定します。菌の検出には少なくとも2〜3日はかかり、診断が確定したら、医師は保健所に届け出ます。発症2週間以内では、白血球数は正常か増加する例が多く、AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝酵素が初期から上昇します。海外渡航歴がある場合には、マラリア、デング熱、A型肝炎などとの区別が必要です。

腸チフス、パラチフスの治療は、症状がある場合は原則として入院の上、食事と安静と抗菌剤で行われます。小腸に潰瘍ができるので、下痢はなくても消化のよい食事を取り、安静を守ります。熱がなくなれば退院することは可能ですが、解熱後1週間くらいは腸出血の危険があるので、安静が必要です。

腸チフス、パラチフスに効果のある抗菌剤は限られています。クロラムフェニコール、アンピシリンまたはアモキシシリン、ST合剤が特効薬でしたが、現在は耐性菌や副作用などのために、ニューキノロン系薬剤が主に使われています。しかし、近年はそれに対しても耐性菌が出てきました。

5〜6日で解熱しますが、服薬期間は2週間が原則。きちんと治療をしても菌が残ることがあるので、治療が終わってから確認の検査が行われます。きちんと除菌をしておかないと、生涯に渡って保菌者になる可能性があります。

予防は飲食物に注意し、手洗いを励行することです。感染は発症者の便に汚染された食べ物や手指を介して広がりますので、発症者自身が手洗いを励行すれば、他人への感染を予防できます。排泄(はいせつ)の介助を必要とする子供や高齢者の場合には、介助者が手洗いを励行します。

また、感染の恐れのある海外の旅行先では、加熱した食べ物や煮沸した水を取るようにします。不衛生な飲食店や屋台での飲食は、避けるようにします。

なお、日本では腸チフスのワクチンは承認されていません。一部の医療機関では、外国から輸入したワクチンを使った予防接種を行っています。この腸チフスのワクチンは、パラチフスに対する予防効果はありません。

🇩🇲腸捻転

腸管が回転して、ねじれ、内容物の通過障害などを起こす状態

腸捻転(ねんてん)とは、腸管が腸間膜または腸管自体の長軸を軸として、ねじれている状態。腸軸捻とも呼ばれます。

潰瘍(かいよう)性大腸炎や腸チフスなどの炎症性の疾患や手術後の癒着、ヘルニアや腸重積症によって起こることが多く、高齢者では腫瘍(しゅよう)などによって腸管が狭くなって起こります。

腸はふだん、腹膜や腸間膜によって固定され、生理的運動の範囲を超えないようになっていますが、この固定されている部分が弛緩(しかん)していたり、腸管の長さが異常に長くなった時に回転し、ねじれて、腸捻転を生じます。腸間膜の主幹動脈の閉塞による虚血に加えて、腸が詰まり、腸の内容物が通らなくなるなど腸閉塞と同じ症状がみられます。

捻転する器官としてはS状結腸が最も多く、小腸、盲腸の順となっています。ごくまれに、腸以外の胃あるいは胆嚢(たんのう)の捻転が生じることもあります。

S状結腸の捻転は、中高年の便秘がちな人に多くみられます。普通、自然なαループを描いてねじれますが、逆にねじれた場合は逆αループといい、糞便が直腸に行く前に交差する個所が腸管内にできてしまい、ひどい便秘になります。S状結腸が異常に長い場合、ループコースターのように二回転することもあります。

ループが完全に360度回ってしまうと、風船のように根元が縛られてS状結腸が袋状になり、便が全く通らなくなります。袋状のS状結腸にガスがたまるために腹部が張り、急に激しい腹痛が起こって、糞便(ふんべん)状の嘔吐(おうと)物を出すこともあります。一般に腹痛が持続し、全身状態が急に悪化し ます。

小腸の捻転の多くは、小腸の一部が炎症やがん、あるいは手術後の癒着などにより固定された場合に、癒着部分を中心に回転することで生じます。急激な嘔吐、持続する腹痛などが症状です。

盲腸の捻転は、移動性盲腸の症例として生じ、腹部手術を受けたことがある人、床に長期間ふせっている人、慢性の便秘がある人、妊娠している人などにみられます。

腸捻転の検査と診断と治療

腸捻転の症状によっては、急いで適切な処置を受けないと危険なケースがありますので、消化器科、外科を受診します。

S状結腸の捻転の場合、大腸内視鏡で検査後に抜去する際、逆αループなどを解除し、整復すると、簡単に便秘が治ります。S状結腸が袋状になった場合も、大腸内視鏡で捻転部よりも上側の腸管内の貯留物を吸引してガスを抜き、ねじれを解除することで、整復できます。

大腸内視鏡による整復率が高率である反面、再発率も高率であるため、肛門(こうもん)から挿入したチューブを24時間留置し、腸内容物を持続的に体外へ除去することもあります。

小腸の捻転の場合、大半は緊急手術により捻転した腸管を元に戻します。腸管がすでに壊死に陥っている時には、その部分を切除します。

盲腸の捻転の多くは、腸閉塞の手術中に発見され、虚血がなければ捻転の解除のみが行われます。捻転の再発が認められるため、盲腸の切除を行うこともあります。

🇩🇲重複乳頭

乳輪の中に2つ以上の乳頭が存在している状態

重複乳頭とは、女性の乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の中に、複数の乳頭が存在している状態を指す症状。乳輪内多乳頭とも呼ばれます。

通常、片側の乳房の乳輪中にある乳頭は1つですが、まれに2つ、ないし2つ以上の乳頭が生まれ付き存在していたり、あるいは1つある乳頭が生まれ付き2つに分裂していたりすることがあります。乳頭が2つに分裂しているものは分裂乳頭といいます。

重複乳頭ではおおかた、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。

分裂乳頭でも同様に、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。

重複乳頭、分裂乳頭とも、生まれ付きのものがほとんどで、胎児期の発生段階での個体差によるものと考えられていますが、発症の理由はよくわかっていません。

また、一部は神経線維腫(しゅ)症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)という特定の疾患に合併して起こることが知られていますが、極めてまれです。

重複乳頭、分裂乳頭であっても、本人にとって支障がなければ治療をする必要はありませんが、見た目が気になるという問題と、授乳という機能的な問題が存在します。子供ができて実際に授乳を試みると、その形状や大きさのせいで乳児が乳頭をうまくくわえられないために、母乳育児を断念するということも少なくありません。授乳がしにくい場合や形態的異常が、医師による手術の対応となります。

乳頭の症状が明らかで目立つために、変形した乳頭を普通くらいの形状、大きさにして、授乳の際の支障を解消したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

重複乳頭の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、重複乳頭と分裂乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、重複乳頭の場合、片側の乳房の乳輪中におおかた2つある乳頭のうちの1つが十分な大きさなら、1つを残して一方を単純に切除する手術を行います。どちらか1つでは大きさが不十分なら、2つある乳頭をを1つに縫合して一体化し、通常の一つの乳頭の形状にする手術を行います。局所麻酔で行うことができ、リスクの少ない手術です。

分裂乳頭の場合も、乳頭の一部を切除して、分裂した乳頭を1つに縫合して一体化し、通常の乳頭の形状にする手術を行います。左右両側の場合でも、左右どちらかの場合でも問題なく手術でき、左右の乳頭のバランスを見ながらデザインして、乳頭を形成します。

乳腺で作られた乳汁(母乳)を乳頭へ運ぶ管である乳管をできるだけ温存し、なおかつ見栄えよく通常の乳頭に近い形状に整えることが理想的ですが、場合によっては乳管を温存できない、または一部分しか温存できないこともあります。また、完全に真ん丸な形の乳頭にすることが難しく、ややいびつさが残ることもあります。

乳管がある程度温存できていて、そこそこ丸みのある乳頭に整えることができれば、授乳が可能です。それらの条件を満たせない場合には、授乳が困難になる可能性があります。

🇩🇴重複尿道

1つの陰茎内に、尿道が2本存在する状態の先天性異常

重複尿道とは、男性の1つの陰茎内に、尿道が2本存在する状態の先天性異常。まれな疾患です。

重複尿道の原因は先天性によるもので、妊娠3カ月までの胎児の時に、尿道が正常に完成しなかったことによって起こります。遺伝とは全く関係はなく、子孫に遺伝するようなことはありません。

この重複尿道には、完全重複尿道、不完全重複尿道、二分(にぶ)尿道、副尿道があります。

完全重複尿道は、膀胱(ぼうこう)から亀頭(きとう)までの全長にわたって、2本の尿道があるものです。異常なほうの尿道は、通常、正常な尿道の上側、すなわち陰茎の背側で、本人から見ると陰茎の表側に位置し、亀頭や陰茎の背側に外尿道口が開いています。尿道括約筋の中を通らないため、尿道が閉まらず、失禁がみられます。

不完全重複尿道は、膀胱から出た2本の尿道が亀頭部の手前で、1本の尿道となるものです。

二分尿道は、膀胱から出た1本の尿道が途中から2本に分かれ、それぞれ外尿道口を持つものです。これらの異常な外尿道口は、陰茎の背腹側、会陰(えいん)部、直腸内にみられます。

副尿道は、2つの外尿道口があるものの、一方は途中で途切れて行き止まりになっているものです。異常なほうの外尿道口は、普通、陰茎の背側にあります。

重複尿道の症状としては、尿が出にくく、出ても尿流が細く、2本に分かれたりします。また、本来は出ないところから尿が出たり、完全に尿を出し切ることができず、排尿が終わっても、尿がしたたり落ちたり、残尿感が現れたりします。

重複尿道の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことで、ほぼ100パーセント確定できます。

泌尿器科の医師による治療では、症状がなく、または症状が軽くて、日常生活に支障がない場合は、処置を施さずそのまま経過観察します。

症状が重くて尿失禁、尿管閉塞、膀胱尿管逆流などがある場合は、手術によって、異常な尿道を摘出する治療を行います。具体的には、2本ある尿道のうち、尿を我慢する際に使われる筋肉である尿道括約筋に囲まれている正常な尿道を残し、もう一方の異常な尿道を手術で摘出します。

途中で途切れて、行き止まりの盲管になっている副尿道が炎症を起こした場合は、抗生剤や、痛みと炎症を抑える消炎鎮痛剤などを投与します。

🇩🇴腸閉塞(イレウス)

腸が詰まることによって、腸の内容物の通過障害が発生

腸閉塞(へいそく)とは、腸が何らかの原因によって詰まることにより、腸の内容物である食べ物や消化液の通過障害が起こる疾患。イレウスとも呼ばれます。

原因により大別すると、機械的腸閉塞と機能性腸閉塞の2つに分けられます。機械的腸閉塞というのは、腸の通過障害が機械的な原因によって起こるもので、機能性腸閉塞というのは、腸管の運動を支配する神経や血管に障害があって腸の内容物が停滞してしまうものです。

機械的腸閉塞と機能的腸閉塞は、それぞれさらに2つに分けられます。

機械的腸閉塞の1つは、腸が外側から締め付けられて起こる絞扼(こうやく)性腸閉塞。腸が複雑にねじれる、ヘルニア(脱腸)の中に腸が入り込む、腸の中に腸が入り込むなどが原因になります。急激な嘔吐(おうと)、持続する腹痛などが症状です。大半は、緊急手術が必要になります。

機械的腸閉塞のもう1つは、腸の内腔(ないくう)が異物や腸壁の変化のために詰まった状態となる閉鎖性腸閉塞。大部分が手術後、外傷、炎症などによる腸管癒着が原因です。刺すような痛み、悪心(おしん)、嘔吐、腹部膨満感、排ガス、排便の停止が現れます。

腸閉塞の9割が機械的腸閉塞で、その原因は腸管癒着によるといわれています。

機能的腸閉塞の1つは、まひ性腸閉塞。腹膜炎、胆のう炎、膵(すい)炎、子宮外妊娠、外傷による腹腔内の出血、手術後の腸まひなどが原因です。 嘔吐、排ガス、排便停止、腹痛、腹部膨満感などがみられます。

機能的腸閉塞のもう1つは、けいれん性腸閉塞。 神経衰弱、ヒステリー、鉛中毒などが原因になります。

腸閉塞で腸管が詰まると、大量の食べ物の消化途中のものや消化液、便がどんどん充満していってしまうため、進行すると内容物を嘔吐するのが特徴です。さらに進むと、腸の内容物が逆流して、便臭を伴う内容物を吐くようになります。

初期の段階で発見できれば、開腹手術をしなくても解消されることもありますが、腸に酸素や栄養分を送る血管が入った腸間膜も圧迫されたり、ねじれたりして血流障害を起こした絞扼性腸閉塞で、頻脈、発熱、脱水、尿量の減少などの全身症状が起きると非常に危険であり、緊急開腹手術が必要になります。

腸閉塞の検査と診断と治療

腸閉塞が疑われたら自然に治ることはまずないので、消化器科、外科を受診します。初期症状が腹痛なので、内科を受診することがあるかもしれませんが、それでも問題はありません。我慢して様子をみて、夜間や休日になってから病院を受診しても、適切な治療を受けられないこともあります。症状が激しければ、救急車を要請します。

医師による診断では、X線検査、超音波検査(エコー)、CT検査が行われます。腸だけでなく腸間膜も圧迫されたり、ねじれたりする絞扼性腸閉塞と区別することが大切ですが、この区別は時に困難です。絞扼性腸閉塞が疑わる場合は、手術に踏み切ります。 そのほかの腸閉塞の場合は、検査によって手術するかしないか決定されます。

手術以外の保存的治療で治す場合は、食事や飲水を中止して胃腸を休め、十分な点滴による栄養と水分の補給を行います。病状が進行して、腸の張りが強くなった場合は、鼻から胃や腸まで管を入れ、嘔吐のもととなる胃や腸の内容物を体の外にくみ上げたり、詰まっている部分でバルーンを膨らませたりして、むくみやふさがりを解消します。腸の張りが少なくなれば、腸から吸収され快方に向かいます。

排ガスや排便が起これば、腸の通過障害は一応治ったことになるものの、腸が詰まった原因である癒着や、腸がはまり込んだくぼみであるヘルニア(脱腸)は治らないため、再発の危険は残ります。

まひ性の腸閉塞に対しては、腸管運動を促進させるために薬剤が効果的で、腹膜炎、胆のう炎、膵炎などが原因となっている場合は、それらの治療も行います。

手術的治療は、腹部を切ることで新しい癒着を作ることになり、腸閉塞にいっそうなりやすくしてしまうため、避けるのが一般的。手術が必要なのは、絞扼性腸閉塞の場合のほか、保存的治療を1週間以上続けてもよくならない場合、何度も腸閉塞を繰り返す場合などです。

腹部の手術後の癒着による腸閉塞では、体調が優れない時には食事内容を軟らかく、消化のよいものにするなどの工夫は必要ですが、完全に予防する方法や注意点はありません。

🇭🇹男性型脱毛症

男性の3人に1人にみられ、遺伝的に髪の毛が薄くなる状態

男性型脱毛症とは、主に男性にみられ、遺伝的に髪の毛が薄くなる状態。男性型禿髪(とくはつ)症、AGA(Androgenetic Alopecia)とも呼ばれます。

男性型脱毛症は思春期以降、額や頭頂部の髪の毛が細く薄くなり、抜け毛が進行します。発症年齢や進行の速さには個人差がありますが、確実に進行することが特徴。日本人男性の約3人に1人が、男性型脱毛症とされます。

なぜ、髪の毛が抜け落ちて、ハゲや薄毛になるのでしょうか。ハゲることに関しては、「ホルモン悪人説」と「血統・遺伝説」という2大原因説があります。

性別を問わず、人間の毛髪はさまざまホルモンの影響を受けていますが、ハゲや薄毛には男性ホルモンが深くかかわっています。中でも、人間の毛髪に影響を及ぼす男性ホルモンは、「テストステロン」と「DHT(5αーデヒドロテストステロン)」の2種類で、とりわけDHTはハゲや薄毛の引き金となる怖いホルモンです。

DHTは、毛根鞘(しょう)にある5αーリダクターゼ2型という還元酵素によりテストステロンが変身したもので、頭髪以外の体毛には多毛化を促す反面、頭髪に対してだけは成長を抑制するため、p。これが「ホルモン悪人説」です。

このDHTは皮脂腺(せん)活性も高進させる作用を有するため、ハゲの人は皮脂過多になりやすい状況にあります。そのため、頭髪の皮脂軽減が発毛の根幹のように宣伝される傾向がありますが、皮脂の取りすぎはリバウンドで、さらに脱毛を悪化させることもありますので、適度がよいでしょう。

「ホルモン悪人説」の元凶とされるDHT以外に、人間の毛髪に影響を及ぼすホルモンには、テストステロン(男性ホルモン)、エストロジェン(女性ホルモン)、サイロキシン(甲状腺ホルモン)、 コルチゾン(副賢皮質ホルモン)があります。

テストステロンは、筋肉の増強を促し、男らしい体付きをつくります。エストロジェンは、頭髪が成長し続ける期間を長くする作用があり、全体からみれば頭髪の成長にプラスに働いているといえます。男性の頭髪成長期よりも、女性のほうが時間的に長いため、女性は腰のあたりまで髪を伸ばすことが可能なのです。

サイロキシンは、休止期にある頭髪の成長開始(成長活動)を早くするように、促す役目を持っています。同じ頭部でも、側頭部や後頭部はこの支配を受けているため、ハゲにくいといえます。コルチゾンは、甲状腺ホルモンであるサイロキシンとは逆に、頭髪成長期の開始を遅くします。しかし、分泌が過剰になると、全身多毛ということになります。

 このように頭髪にはいろいろなホルモンが複雑に関係し、毛の成長をコントロールしています。その中でも、脱毛、抜け毛、ハゲ、薄毛に大きくかかわってくるのが男性ホルモンであることは、間違いのないところです。

若いうちからハゲてしまう若ハゲ(若年性脱毛症)は、遺伝性であることが非常に多く、それも家系の中で男性だけに現れる遺伝形式(伴性優性遺伝)で受け継がれていきます。男性型脱毛症の実に80パーセント以上が遺伝性といわれるほどで、この場合もDHTに影響されやすい体質が受け継がれてしまうのです。これが「血統・遺伝説」です。

では、どのように血統が遺伝していくのでしょうか。私たちは両親から一個ずつの毛髪に関する遺伝子をもらいます。その遺伝子の組み合わせは、下の主な3つです。

1. 正常な遺伝子と正常な遺伝子、2. ハゲ・薄毛の遺伝子と正常な遺伝子、3. ハゲ・薄毛の遺伝子とハゲ・薄毛の遺伝子

男性は優性遺伝のため、ハゲ・薄毛の遺伝子が一つでもあればハゲてしまう確率は高くなり、父親にハゲ・薄毛の遺伝子が一つでもある場合は50パーセント、母親にもハゲ・薄毛の遺伝子がある場合は75パーセント。

これに比べて、両親ともに正常な遺伝子を持っていた場合、子供にハゲ、薄毛が現れることは、遺伝子学的にはありません。ただし、食生活や生活環境の乱れ、ストレスなどで薄毛になることもありますので、注意しましょう。

ちなみに女性にはハゲが少なく、あっても薄毛程度なのは、頭髪の成長にプラスに働く女性ホルモンが常に男性ホルモンより優位にあることのほかに、脱毛の仕方に違いがあるからです。

毛は通常、1つの毛根から2〜3本が生えています。脱毛の時、女性はその中から1本だけが抜けますが、男性は1つの毛根から生えているすべての毛が一度に抜けてしまうのです。

男性型脱毛症を予防する3つのポイント

遺伝的要因を退治することは、不可能です。それでは、日常生活でできる中でハゲないためには、どうしたらよいのでしょうか。ポイントは、効果的なシャンプーで頭皮を清潔に保つことと、効果的な食事とストレスからの解放により健康的な生活習慣を心掛けることにあります。

●効果的なシャンプー

毎日たくさんの脱毛に悩み、「シャンプー時には生きた心地がしない」という人は、意外に多いものです。だからといっても、頭皮を清潔に保つためにもシャンプーは欠かせません。

脱毛の悩みのある人は、皮脂過剰でベタつきがちな頭皮の場合が多いのですが、使用するとスッとするミント感覚のシャンプーや、「フケ防止」とうたう硫黄分が配合されているシャンプーは、かえって頭皮を刺激しすぎる結果となり、リバウンド現象としてますます皮脂を出してフケを増やしてしまうことがあります。

頭皮を保護するために最もお勧めできるのは、「ベビー用の低刺激性シャンプー」。頭皮を傷付けないように、毎日サッと洗うことです。もし、頭皮がパサついているようなら、シャンプー前にベビーオイルかオリーブオイルでマッサージしてから、髪を洗うようにしましょう。

●効果的な食事

ハゲ、薄毛によいというので、海藻類を多く食べるようにしたけれども、大した変化はみられなかった。こんな経験を持つ人も、少なくないと思います。そのほかにも、毛の成分であるタンパク質を多く取るのがよいという人もいます。

確かに、海藻などは毛髪の質をよくする効果はあるでしょう。しかし、それを食べることが髪が生えるための重要なポイントであるとはいえません。

より大切なことは、体の健康を保つための基本的な方法として、バランスのとれた食生活を心掛けることです。特に注意する点としては、皮脂が過剰にならないように、脂っこいものを食べすぎないようにすることです。

●ストレスからの解放

大きすぎるストレスは、脱毛を促進させるだけでなく、心身全体に悪い影響をもたらします。そこで、毎日のリラックス法をいろいろと考えましょう。

普通、人はストレスが高じるとイライラして髪をかきむしったり、食事、飲酒、喫煙などで発散させようとします。ところが、度がすぎると睡眠不足なども加わり、当然のように体や髪の健康に悪影響をもたらすことになります。

暴飲暴食は頭皮の血行を悪くしてしまい、喫煙も毛細血管を縮めるので、やはり血行を害してしまいます。髪にうまく栄養が送られなくなれば、脱毛はますます進むことになります。

また、いろいろな悩みで苦しんだりすると、精神だけでなく頭皮にも緊張が生まれ、血行が悪くなってしまいます。自分自身の心身を絶えずチェックして、ストレスを解消するように工夫し、体全体の代謝バランスを整えることが、髪にも必要なのです。

男性型脱毛症の検査と診断と治療

男性型脱毛症が気になる人は一度、皮膚科の医師に相談してみるのも一案です。男性型脱毛症に効果のある飲み薬が普及し、気軽に治療を受ける人が増えているからです。

皮膚科の医師による診断では、まずは問診と視診を行い、円形脱毛症などほかの疾患ではないかをチェックし、男性型脱毛症かどうかを確かめます。

皮膚科の医師による治療では、まず内服薬のフィナステリド(商品名プロペシア)を1カ月分処方します。服用は1日1回で、費用は1カ月分で約1万円。問題がなければ内服を続け、半数以上の人が半年から1年で効果を実感するとされます。

薬を内服することで勃起(ぼっき)不全など男性機能の低下を心配する人も多いものの、男性ホルモンそのものに働き掛ける薬ではないため、そうした副作用はありません。毛髪が丈夫になり、抜け毛が減るだけでも効果は大きく、見た目が若くなることで性格も明るくなり、前向きになる人も多いといいます。

フィナステリドは、テストステロンをDHT(5αーデヒドロテストステロン)に変身させる5αーリダクターゼ2型という還元酵素を阻害する内服薬で、1998年に米国で発売され、日本国内でも7年後の2005年から医師の処方薬として流通しています。

日本皮膚科学会は2008年4月、男性型脱毛症の治療薬について5段階で評価した初の診療指針を発表。塗り薬のミノキシジル(商品名リアップ)と内服薬のフィナステリドを強く勧められる「A」と評価しています。

🇭🇹男性性器結核

結核菌が男性の生殖器に感染することによって起こる感染症で、肺外結核の一種

男性性器結核とは、結核菌が男性の生殖器に感染することによって起こる感染症。肺外結核の一種です。

原因菌である結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌です。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、精巣(睾丸〔こうがん〕)、精巣上体(副睾丸)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って前立腺などに逆行性に感染し、炎症を起こして、硬い凹凸のあるはれを生じます。

男性性器結核で感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣などの痛み、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、それぞれ男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、精巣上体と精巣の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には精巣上体、精巣を破壊することもあります。初めは片方の精巣上体、精巣にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である男性性器結核の頻度は低下しています。

男性性器結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

前立腺や精巣、精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、精巣と精巣上体が一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

男性性器結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立腺や精巣にがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立腺がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎臓結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば性器結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...