2022/08/06

🇮🇩分娩後甲状腺炎

痛みの出ない一過性の甲状腺炎

分娩(ぶんべん)後甲状腺炎とは、何らかの原因により甲状腺の細胞が壊れ、中に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出して、一過性の甲状腺機能亢進(こうしん)症を示す疾患。

亜急性甲状腺炎と違って、甲状腺に痛みがないので無痛性甲状腺炎とも呼ばれているほか、無痛性亜急性甲状腺炎、無症性リンパ球性甲状腺炎とも呼ばれています。

出産を切っ掛けに起こることがよく知られていますが、特に誘因がなく発症する場合もあります。原因はまだわかっていません。自己免疫性の疾患と考えられていて、慢性甲状腺炎(橋本病)をもともと持っている人がかかりやすいともいわれています。

病気の早期には、動悸(どうき)、暑がり、体重の減少などの甲状腺機能亢進症の症状が現れます。このような甲状腺ホルモンが多いための症状は、約1カ月でなくなります。この後、壊れた甲状腺の細胞が回復するまでは、一時的に甲状腺ホルモンが少なくなり、むくみ、体重増加、寒がりなどの症状が現れます。

甲状腺機能亢進症の5~10パーセント程度が、この分娩後甲状腺炎と見なされています。甲状腺機能亢進症の代表的な疾患であるバセドウ病との相違は、分娩後甲状腺炎の症状が比較的軽度であること、病気で悩む期間が短いこと、眼球突出などの眼症状がないことなどが挙げられます。

しかしながら、両者は紛らわしいために、しばしばバセドウ病と誤診されていました。バセドウ病では治療しないと甲状腺ホルモンは低下しないのに対して、分娩後甲状腺炎の甲状腺機能亢進症は一過性で、特に治療しなくても正常化します。治療法は全く異なり、両者の区別は重要です。不必要な治療は避けたいものです。

分娩後甲状腺炎の検査と診断と治療

この病気を診断するには、血液中の甲状腺ホルモンの量だけでは、バセドウ病と区別がつきません。血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定により、抗TSHレセプター抗体が陰性であって、甲状腺機能亢進症であれば、分娩後甲状腺炎の可能性が大きくなります。バセドウ病では、抗TSHレセプター抗体が陽性になるからです。

また、バセドウ病と区別する一番確実な手段は、放射性ヨード摂取率の測定です。バセドウ病では高値になり、分娩後甲状腺炎では甲状腺が壊れているために、ヨードがほとんど取り込まれず極めて低値になるので、両者の区別ができます。しかし、この放射性ヨード摂取率の測定は、どの医療機関でもできるものではありません。

自覚症状が強くない時は、分娩後甲状腺炎と考えて治療をせずに、経過をみることも重要です。

分娩後甲状腺炎であれば、最初は甲状腺組織の破壊のために、濾胞(ろほう)に蓄えられた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出て、甲状腺ホルモンが高くなります。しかし、バセドウ病と違ってホルモンが過剰に作られているわけではないので、1~2カ月すると甲状腺ホルモンは低下してきて、反対に甲状腺機能低下症になります。壊れた甲状腺組織が修復される間、甲状腺ホルモンが作れないためです。

分娩後甲状腺炎は2~3カ月で治まり、通常は元の正常な甲状腺機能に戻ります。ただし、20~30パーセントくらいの確率で、そのまま永続的な甲状腺機能低下症になる人もおり、甲状腺ホルモン剤の服用が生涯必要になります。定期的なホルモン値の検査を行い、最後まできちんと経過をみることが必要です。

通常、治療は特に必要ありません。動悸や手の震えなどの症状が強い時は、対症療法としてβ(ベータ)遮断薬を使い、過労を避けるようにして甲状腺ホルモンが低下するのを待ちます。甲状腺から血液中に漏れ出てしまった甲状腺ホルモンを減らす治療法は、ありません。

甲状腺機能低下症の症状が強い場合や、続く場合には、甲状腺ホルモン剤の内服が必要となります。

なお、この分娩後甲状腺炎は自然に治る病気ですが、亜急性甲状腺炎と違って繰り返すことがあるので、年に1~2回程度の検査を受けたほうがよいでしょう。毎年同じ時期に再発したり、一生のうちで何回も繰り返し起こすこともありますので、注意が必要です。

🇼🇸噴門けいれん症(食道アカラシア)

食道下端の通過障害と、胸部食道の拡張が起こる疾患

噴門けいれん症とは、食道と胃の接合部である噴門の神経節障害の結果、胸部の食道全体が広がる疾患。食道アカラシア、特発性食道拡張症とも呼ばれます。

食道は飲んだり食べたりした物を口から胃へ通す25センチほどの管ですが、それ自体が蠕動(ぜんどう)運動という、物を運ぶための働きを備えています。食べ物がのどを通ると、反射的に蠕動運動が起こって次第に下方に伝わり、その動きの波に乗って飲食物は運ばれます。蠕動の波が噴門に達すると、ここが緩んで飲食物を胃へ通し、通した物を再び食道へ逆流しないように、噴門は締まります。

しかし、何かの原因で食道の蠕動運動が起こらなくなると、噴門が緩まない状態になって飲食物が滞る結果として、胸部の食道が異常に広がる噴門けいれん症を生じます。

原因は、はっきりとはわかっていません。食道の蠕動運動は自律神経の働きによりますが、現在のところ、噴門の粘膜の下にある筋層内の神経節細胞の機能異常であることまでしか解明されていません。精神的なショックが誘因になることもあります。

症状としては、食べた物が胸の辺りでつかえる感じがして、すぐに満腹感が起こり、たくさん食べられません。ほかの食道狭窄(きょうさく)疾患と異なり、固形物より液体、とりわけ冷水の通過が悪い傾向にあります。

食道の広がりが高度になると嘔吐(おうと)が起こりますが、特に夜間、寝ている時にに多い傾向があります。そのほか、胸の圧迫感や痛み、背中の痛みが出て、病状が進行すると体重が減少してきます。

よくなったり悪くなったして長期間続き、精神的に緊張した時、体調不良の時には症状が悪くなります。10〜50歳代に発症して中年にピークがあり、やや女性に多くみられます。

噴門けいれん症の検査と診断と治療

食べ物のつかえ、胸痛、嘔吐などがあったら、内科、消化器科(胃腸科)を受診します。

医師による診断では、バリウムを飲んでのX線造影検査をしたり、食道内視鏡検査、食道内圧検査を行います。さらに、食べ物の長期残留によって起こる慢性食道炎、食道内容物が気道に入って起こる肺感染症、食道がんなどの合併もあるので、これらの検査も行われます。

噴門けいれん症の治療としては、精神安定剤、鎮痙(ちんけい)剤、狭心症に対する薬剤などがある程度有効なものの、大きな期待はできません。

軽症、中等症のものに対しては、噴門拡張術が有効です。食道下端の狭窄部にバルーンという袋つきのゴム管を挿入し、これに空気、水を満たして膨らませ拡張を図ります。また、内視鏡で病変を見ながら、バルーンを狭窄部に当てて膨らませるバルーン拡張術は、検査と治療が同時に行え、よい結果を得ています。

重症のものに対しては、手術が行われます。 内視鏡下に狭くなった下部食道の筋層を切開して広げ、胃液の逆流を防止する修復をします。

ただし、噴門けいれん症では、食道に食物が停滞する時間が長いので、食物中の発がん物質が食道壁に接触する時間が長くなり、食道がんを合併する確率が高くなります。定期的に内視鏡検査を受けるようにします。

🇹🇻粉瘤

表皮にできる袋状の腫瘍で、時に炎症を起こすと痛みや発赤を発症

粉瘤(ふんりゅう)とは、表皮にできる袋状の腫瘍(しゅよう)。表皮嚢腫(のうしゅ)、アテロームとも呼ばれます。

有り触れた皮膚疾患の一つで、ほくろ、いぼを除いた皮膚良性腫瘍の8割程度が、粉瘤に相当します。通常、痛みや発赤などの目立った症状がすぐに出てくることはなく、徐々に増大することが特徴で、時に感染や炎症を起こすと、化膿(かのう)して痛みや発赤、はれを生じます。この場合は、感染(性)粉瘤、炎症性粉瘤とも呼ばれます。

一般的には、毛穴が狭くなったり、ふさがったりすることが原因となり、毛穴の一部分の組織が皮膚の深い部位に蓄積し、周りの皮膚が表皮の下で袋状に形成されることで、粉瘤ができます。この場合は、皮膚の表面に細い開口部を持つことが多くなります。

また、外傷で皮膚が傷付く際、皮膚の垢(あか)である表皮の角質物質や異物の混入によって、周りの皮膚が袋状に形成され、紛瘤ができることもあります。この場合は、皮膚の表面に開口部を持つことは少なくなります。

皮膚が存在する全身のあらゆる部位に粉瘤ができる可能性がありますが、できやすい部位は、頭部、眉(まゆ)、耳の周囲、頬(ほお)、背中、臀部(でんぶ)などです。耳たぶのピアスの跡にできたり、腋臭(わきが)手術後の腋の下にできることも多く、小さな外傷を原因として手のひらや足底にできることもあります。

多発する場合は生まれ付きの体質によるところが多く、耳たぶ、腋の下、臀部などにできやすく、少しずつ大きくなり、目立ってきます。生まれ付きの体質によるものがごくまれにある一方、あらゆる年齢で発症する可能性があり、老人になってから発症することもあります。

大きさは直径数ミリから2〜3センチほどのものが多く、皮膚表面では隆起した半球形に見えますが、実際は皮膚の厚みの中に球状に存在しています。皮膚の深い部位に形成される場合は、皮膚表面から隆起せずわからないことがありますが、触ると硬いしこりが確認できます。しこりをつまんで上下に移動させると、周辺の皮膚が同時に移動することから、粉瘤であると確認できます。

基本的に初期の小さな粉瘤は、白色から肌色。年単位で徐々に大きくなるにつれて、黄色、黒色、青色など、さまざまな色に変化することがあります。

皮膚の表面に細い開口部を持っている場合は、つぶそうとしたり、つまんだりすると、銀杏(ぎんなん)のような悪臭のする白いペースト状の物質が出てくることもあります。脂肪の塊や脂肪の腫瘍と思われがちですが、正確には脂肪ではなく皮膚でできた腫瘍です。

多くの紛瘤は、ほぼ無症状のまま経過します。しかし、皮膚の表面の開口部から細菌が進入して感染すると、小さなしこりであった粉瘤が炎症のために、2〜3倍の大きさになります。鶏卵やこぶしの大きさくらいまで大きくなったり、臀部など脂肪が多く軟らかい部位ではさらに大きくなったりします。

ひどい場合には、化膿して痛み、発熱を伴って赤くはれ上がり、膿(うみ)を出すケースもあります。ごくまれには、皮膚がんを合併することもあります。

もし、粉瘤だと思っていたものが、急速に増大したり、出血が見られる場合は、皮膚がんの合併も疑わなくてはなりません。該当する症状がある場合は、早めに皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診することが勧められます。

粉瘤の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、皮膚症状から判断します。角質物質でできている粉瘤は硬いため、軟らかい脂肪腫とは簡単に区別することができます。

診断に疑いがある場合には、手術によって摘出して病理検査を行い、皮膚がんの合併を判断します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、外科的な摘出手術を行います。自然治癒しないこと、徐々に大きくなること、感染すると炎症で痛みや発赤、はれを生じること、薬で治療は不可能であることが、手術を行う理由です。

炎症を起こした場合は、まず抗菌剤、鎮痛剤の投与を行います。化膿している場合は、粉瘤の一部を切開し膿を排出する応急処置を行います。この切開排膿から1カ月ほど時間を空けて、皮膚の下にある球状の粉瘤を手術で摘出します。

炎症が起きた状態で摘出手術を行うと、粉瘤の取り残しのリスクが上がり、再発してしまう恐れがあるからです。

手術で直線状の瘢痕(はんこん)が残りますので、直線状に皮膚を縫合します。顔面などにできた粉瘤は、横じわを利用して、瘢痕を目立たなくする工夫します。

🇹🇻ビリルビン脳症

新生児の血液中の間接型ビリルビンが異常に増え、脳の神経細胞にたまって脳性まひなどの後遺症を残す疾患

ビリルビン脳症とは、新生児期に黄疸(おうだん)が出現し、血液中の間接型ビリルビン(胆汁色素)の上昇によって脳の神経細胞に蓄積、黄染していろいろな神経症状を来す疾患。核黄疸とも呼ばれます。

血液と脳の間には血液脳関門と呼ばれる組織があり、血液中の物質を簡単には脳に通さない仕組みになっています。元気な新生児であれば、生後1週間ほどたつと血液脳関門が働いて、血液中のビリルビンが脳へ移行しなくなります。しかし、低出生体重児(未熟児)、低酸素状態、低血糖などが存在すると、血液脳関門の機能が働かないためにビリルビンが脳の大脳基底核という神経細胞に移行し、ビリルビン脳症になりやすくなります。

ビリルビン脳症の発症2〜3日の第1期には、重症の黄疸症状のほかに、元気がなくなる、筋緊張が低下する、ほ乳力が低下する、1日中うとうとしているなどの症状がみられます。

次いで、発症約3日〜1週間の第2期には、筋緊張が高進する、後弓反張(こうきゅうはんちょう)という頭を後ろに反らした全身硬直を起こす、発熱する、甲高い泣き声を上げる、けいれんを起こすなどの症状をを示します。

発症1週間以降の第3期には、筋緊張の高進は弱まり、あるいは消えていきます。この時期に死亡したり、生存しても脳性まひ、知的障害、難聴などの後遺症を残し、永続的に続きます。

早発黄疸を見付けた場合、早急に診断、治療ができる医療機関を受診することが大切です。

ビリルビン脳症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、黄疸の症状があり、血液中の間接型ビリルビン値が高い場合に、ビリルビン脳症を疑います。

ビリルビンの脳神経系への影響を調べるために、聴性脳幹反応という聴力検査や、頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うこともあります。

小児科の医師による治療では、光線療法、交換輸血を行い、高ビリルビン血症の治療に努めます。

光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、脂溶性の間接型ビリルビンを水溶性のサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。水に溶けやすいサイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。

強い光線による視神経の障害を避けるため、眼帯で遮光する必要がありますが、光線治療は長時間受けても副作用はみられず、脳性まひを引き起こすビリルビン脳症に対して非常に有効な治療法です。

光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。輸血による感染症などのリスクが全くないわけではありませんが、ビリルビン脳症による後遺症を防ぐためには必要な治療です。

脳性まひに至った場合は、早期診断し、リハビリを早期に開始します。

🇳🇷ヒルシュスプルング病

腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸が拡張する先天性疾患

ヒルシュスプルング病とは、腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸が拡張する先天性疾患。先天性巨大結腸症とも呼ばれます。

大腸や小腸など消化管の壁の中には、神経節細胞があります。その細胞の刺激により、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋(輪状筋)の伸び縮みが起こり、口から摂取した食物は腸管を経由して消化され、便となって肛門(こうもん)から排出されます。

ヒルシュスプルング病は、この神経節細胞が先天的に欠損しているため腸管が細くなり、蠕動運動が起こらないために慢性の便秘となり、大腸の大部分を占める結腸が拡張します。

消化管の蠕動運動には、食べ物を後戻りさせない機能があり、周期的に環状の伸び縮みを次々と下部に伝え、食物塊を肛門側へ移動させる役割を果たしています。この蠕動運動は自律神経の働きによって行われているので、人間が意識的に調整したり、活発にさせることはできません。

ヒルシュスプルング病は1886年に、デンマークの内科医ハラルド・ヒルシュスプルングによって初めて報告されました。

出生5000人に1人の頻度でみられ、男児が女児の3倍多いとされています。原因については、いくつかの遺伝子情報の異常が深くかかわっていることが明らかにされつつありますが、十分には解明されてはいません。

生まれてすぐの新生児では、胎便の排出が遅れることが最初の症状です。排便、排ガス(おなら)ができず、腹部は風船のように膨満してきます。ほ乳力が低下し、濃緑色の胆汁の色に染まったものを嘔吐(おうと)したり、症状が進むと体重増加不良や栄養不良が現れてくることもあります。

また、嘔吐で塩分が失われるため、体内の塩分(電解質)バランスも崩れます。嘔吐物を肺に吸い込んでしまうと、重い肺炎になります。腹部が張るために呼吸がうまくできなくなり、死に至ることもあります。

約9割は生まれてすぐヒルシュスプルング病の症状が出てきますが、少数は1歳以降に症状が出てくることがあります。乳幼児では、慢性的な便秘などの排便障害がみられます。

症状の程度は、神経節細胞のない腸管の長さでおおよそ決まります。全体の約80パーセントは、直腸から比較的近いS状結腸までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。12パーセントは直腸からS状結腸を越えて結腸までの部分に、5パーセントは全結腸と小腸の一部までの部分に、3・5パーセントは小腸の口側までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。

新生児や乳幼児に頑固な便秘が続く場合は、小児科、ないし消化器科を受診することが勧められます。

ヒルシュスプルング病の検査と診断と治療

小児科、消化器科の医師による診断では、新生児では胎便が排出された時期、乳幼児では排ガスが出ているか、何をどのくらい食べているか、便の性状と排便の頻度などを確認します。その後、腹部膨満の有無を確認し、肛門から指を入れる直腸指診でガスの噴出や便の有無を確認します。

腹部X線検査を行い、拡張した腸管ガス像が腹部全体に認められ、小骨盤内の腸管ガス像が欠如していれば、ヒルシュスプルング病を疑います。

精密検査としては、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影検査を行い、大腸の肛門側の狭窄(きょうさく)と大腸の口側の拡張を確認し、肛門側と口側の口径差を確認します。

さらに、通常鎮静剤を用いて眠った状態で、直腸で風船(バルーン)を膨らませる肛門内圧検査を行い、直腸肛門反射と呼ばれる直腸が拡張した際に認められる肛門管圧の下降の欠如を確認します。また、直腸の粘膜を一部採って、特殊な染色を行った上で顕微鏡で調べる生検を行い、腸管壁内の神経節細胞の欠損に伴う外来神経の増加を組織学的に確認することもあります。

ヒルシュスプルング病と区別する疾患には、生まれながらに肛門や腸が閉鎖している鎖肛や先天性腸管閉鎖症、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込む腸重積(じゅうせき)症などがあります。

小児科、消化器科の医師による治療では、腸管壁内の神経節細胞が欠損した領域が非常に狭い場合は、浣腸(かんちょう)などでコントロールできることもあります。

ほとんどの場合は、腸管の無神経節領域を切除し、端々をつなぎ合わせる手術が必要です。手術は、小児外科という特殊な診療科で行います。

無神経節領域の広さにより、根治手術を行う場合や、人工肛門を造設する場合もあります。根治手術には複数の方法がありますが、その基本は正常な腸管を肛門部に下ろして肛門から排便ができるようにすることです。近年は、腹腔鏡(ふくくうきょう)補助下手術や、開腹しない経肛門手術が導入されています。

また、根治手術はある程度の発育を待って行うため、それまでの間は、点滴栄養、肛門拡張、浣腸などで状態を保つことになります。生後3カ月以降、体重が5〜6キログラム以上で根治手術を行うのが一般的ですが、最近では早めに生後1カ月以降、体重4キログラム以上で行う傾向にあります。

🇳🇷疲労骨折

正常な骨に骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し加わった場合に生じる骨折

疲労骨折とは、正常な骨に通常は骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し加わった場合に生じる骨折。

骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。

マラソン、長距離走では足部の中足骨(ちゅうそくこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、短距離走では下腿(かたい)の脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)、足関節内果(ないか、うちくるぶし)、サッカーでは中足骨、腰椎(ようつい)、野球では上腕骨、手根骨(しゅこんこつ)の一つである有鉤骨(ゆうこうこつ)、肋骨(ろっこつ)、テニスでは中手骨(ちゅうしゅこつ)、ゴルフでは肋骨、バスケットボールでは脛骨、腓骨、バレーボールでは脛骨、腓骨が、疲労骨折を生じやすい部位に相当します。

疲労骨折を生じても、一般の外傷性骨折のように皮下出血や著しい腫脹(しゅちょう)を伴うことはありませんが、骨折部位は軽度の腫脹を伴い、押さえると痛みを生じます。中足骨や舟状骨の疲労骨折では足の甲が、脛骨や腓骨の疲労骨折では下腿に痛みを生じます。

痛みはスポーツ活動の開始時に強く出て、運動途中は痛みが軽くなります。運動終了時から終了後にかけて、痛みが強くなります。運動を休んでいる間は、痛みはほとんど出現しません。

スポーツ活動で短期的に集中的なトレーニングを行った時に、疲労骨折が生じることが多いのも特徴です。競技者の要因としては、筋力不足、アンバランスな筋力、未熟な技術、体の柔軟性不足などが考えられ、環境の要因としては、オーバートレーニング、競技者の体力や技術に合わないトレーニング、不適切なシューズ、練習場が硬すぎたり軟らかすぎるなどが考えられます。

明らかな外傷がなく、スポーツ活動時に局所に著しい痛みを感じる場合は、疲労骨折が疑われます。整形外科を受診することが勧められます。

疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後1カ月程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることも珍しくありません。

固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。

陸上の跳躍競技などで生じた足部や下腿の難治性の疲労骨折の場合は、手術が必要となります。また、手術後のリハビリが最低6カ月間必要となります。

再発予防としては、疲労骨折が発生した要因を検討し、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。

🇰🇮貧血

貧血とは、血液中の赤血球(ヘマトクリット)の数が減少したり、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の量が減少した状態をいいます。原因によって貧血にはいくつかの種類がありますが、最も多いのがヘモグロビンの原料となる鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。

ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしているので、ヘモグロビンが少ししか作られないと、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になってさまざまな症状が起きてしまうのです。

貧血の症状としてみられるのは、めまい、立ちくらみ、頭が重い、頭痛、耳鳴り、顔色が悪い、唇の色が悪い、肩や首筋が凝る、動悸、 息切れ、むくみ、疲れやすい、体がだるい、手足が冷える、注意力が散漫になる、などです。

貧血は、その原因によって次のような種類があります。

・鉄欠乏性貧血

体内の鉄が不足することによって、ヘモグロビンの産生が不十分になるために起こります。貧血のほとんどは、この鉄欠乏性貧血です。

・再生不良性貧血

血液を作る骨髄の造血機能に異常が生じ、赤血球の母細胞がうまく作られなくなるために起こります。

・溶血性貧血

何らかの原因によって、産生された赤血球が通常の寿命である約120日より早く壊れてしまうために、赤血球が不足して起こります。

・巨赤芽球(きょせきがきゅう)性貧血(悪性貧血)

ビタミンB12や葉酸の欠乏が主な原因で、赤血球の親である赤芽球の合成に障害が生じて、赤芽球が巨大化し、赤血球がうまく作られないために貧血が起こります。また、巨赤芽球性貧血のうち、胃壁から分泌される内因子の欠乏が原因で、ビタミンB12の吸収が低下することから起こる貧血を悪性貧血といいます。

・腎(じん)性貧血

人工透析を受けている人や慢性腎不全、急性腎不全、ネフローゼ症候群などの腎疾患が原因で、腎臓から分泌される造血因子であるエリスロポエチンが減少し、赤血球の産生が低下することによって起こります。

・二次性貧血

主に腎不全、慢性感染症、膠原(こうげん)病、悪性腫瘍(しゅよう)、肝疾患、内分泌疾患など、造血器疾患以外によって起こります。続発性貧血、症候性貧血と呼ばれることもあります。特に高齢者においては、二次性貧血の頻度が最も高く、貧血を初発症状として、陰に悪性腫瘍が潜んでいることがあります。

貧血があるかどうかは、血液一般検査でわかります。徐々に貧血になると、体がそれに慣れて、かなり重症でも自覚症状があまり出ない場合があるので、定期的に検査を受けることが大切です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...