2022/08/06

🇧🇩尿毒症

尿中に排出されるべき物質が血液中に蓄積

尿毒症とは、腎(じん)臓の機能が極端に低下し、本来なら尿の中に排出される老廃物や毒素が血液中にたまって現れる、さまざまな中毒症状の総称です。慢性腎不全の末期の状態を指します。

食べ物の多くは、体内で代謝され、大部分は水と炭酸ガスになります。蛋白(たんぱく)質などは尿素窒素、尿酸、クレアチニンなどの窒素代謝産物となり、正常では尿中より排出されますが、尿毒症では十分排出できずに体内にたまります。そのために、高血圧、むくみ、倦怠(けんたい)感、貧血、出血傾向などのほか、骨や筋肉、神経、循環器、消化器、皮膚など、全身にさまざまな症状が現れます。重症になると幻覚や昏睡(こんすい)を引き起こす危険性があり、放置すると死に至ります。

また、腎臓には老廃物や毒素を排出する以外に、水や、ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質のバランスと酸塩基平衡の維持、ホルモンの産生および不活性化の機能などがあります。これらの腎臓の機能すべても、尿毒症では阻害されます。

水、電解質の異常に関しては、ナトリウムやクロールの蓄積は体内の水分の増加をもたらし、高血圧、むくみ、心不全などを起こします。カリウムの増加は不整脈を起こし、カルシウムやリンの異常は腎性骨異栄養症といわれる骨の代謝異常を起こします。腎不全によるリン酸と有機酸の蓄積、アンモニアの生成と排出障害、水素イオンの排出障害などは、代謝性アシドーシス、骨代謝異常、アルブミンの合成低下、筋力低下などを来します。

血液の異常に関しては、尿毒症に伴う貧血である腎性貧血を起こします。腎性貧血の主な原因は、造血ホルモンであるエリスロポエチンの腎臓での産生低下であり、さらに造血抑制因子や赤血球寿命の短縮、低栄養による鉄と葉酸不足、出血傾向などが関わってきます。

骨代謝異常に関しては、リンの排出障害により高リン血症、また腎臓のビタミンDの活性障害により、腸からのカルシウム吸収や骨吸収、腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、低カルシウム血症となります。その結果、二次性副甲状腺(せん)機能高進症となり、さらには代謝性アシドーシスも加わって腎性骨異栄養症が発生します。そのため骨折、骨格の変形、骨や関節の痛み、石灰沈着などが起こります。

免疫の異常に関しては、尿毒症では免疫不全の状態となっているため、ウイルスや細菌に感染しやすく、またワクチンなどによる免疫獲得率も弱くなります。

代謝系の異常に関しては、インシュリン抵抗性や膵(すい)臓の細胞の糖に対する感受性の低下のため、耐糖能異常やインシュリン分解能低下が起こって高インシュリン血症となります。脂質代謝異常として、中性脂肪分解酵素の低下のため中性脂肪が高値となります。また、アミノ酸代謝異常、代謝性アシドーシス、尿毒性物質の蓄積などで体内の蛋白質の分解が高進している状態であり、さらに食欲不振などによるカロリー不足となり、栄養障害やビタミン不足の状態になりやすいと見なされています。

神経と内分泌の異常に関しては、尿毒性物質の貯留によると思われる神経精神異常が認められます。眠気から意識障害や精神症状まで、程度も症状もさまざま。内分泌系の障害として、性ホルモンの低下、成長ホルモンの異常、甲状腺ホルモンの異常も指摘されています。

尿毒症の検査と診断と治療

尿毒症の診断、検査では、血圧、脈拍、呼吸状態、体温、胸腹部聴打診、尿検査、尿生科学検査、血液検査、心電図検査、腎部超音波検査などが行われ、原因究明とともに治療が開始されます。血液検査で調べる項目は、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス、出血時間、尿酸。

尿毒症の治療には入院が必要になる場合多く、障害の度合いを考え食事療法と透析治療を併用して治療を行います。重篤の場合は、生体腎移植も考えます。

食事療法では、蛋白質を厳重に制限し、糖質と脂肪で十分なエネルギーを摂取します。蛋白質を制限するのは、蛋白質の代謝産物である尿素窒素やクレアチニンなどが体内に蓄積されないようにするためです。具体的には、体重1キログラム当たり1日0・5グラムの蛋白質の量とします。1日の総エネルギーは、2000キロカロリーを目安とします。

食塩は1日8グラムぐらいとし、高血圧やむくみの程度が強ければ、3グラム以下とします。また、カリウムを多く含んだ果物、野菜、生ジュースなどは、控えるようにします。

しかし、尿素窒素の量が増え、食事療法や薬物療法でも尿毒症の症状が解消されない時には、早めに人工透析療法を行うほうが安全です。透析を嫌がってタイミングを逃がすと、まれに死亡することもあります。

人工透析療法で主流を占めるのは血液透析で、人工腎臓といわれる透析装置を用いて、血液を浄化する方法です。まず発症者の動脈から血液を体の外に導き出し、透析装置の中に送って、ここできれいにされた血液を静脈に戻します。

透析装置の原理は、小さな穴の開いている薄いセロハン膜を境として、一方から血液、他方から透析液が流されて、血液からは尿素窒素やクレアチニンなどの代謝物質やそのほかの有害物質が透析液に入り、逆に透析液からはブドウ糖や栄養物が血液に入って、発症者の血液が浄化されます。

血液透析を行うには、安定した体外循環を確保する必要があります。動脈と静脈を吻合(ふんごう)して、内シャントと呼ばれる処置を行う必要があります。普通は左手前腕にこれを作り、この部位に2本の穿刺(せんし)針を刺して透析を行います。人工血管を体外に留置する外シャントと呼ばれる処置を行う方法もあります。

血液透析は一般的に、1回3~5時間、週2~3回の透析時間を必要とします。透析を始めて間もなくは、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛、血圧変動などの不均衡症候群で悩まされることもあります。食事や水分の摂取の制限など、厳しい自己管理も要求されます。

通常は中心的なセンター病院と、入院設備を持たない地域透析施設のサテライトとで協力し合って、治療を行っています。安定した状態の時は、日常生活に便利なサテライトで治療が行えるシステムになっています。

近年は、連続携行式腹膜透析法(CAPD)も行われています。あらかじめ腹腔(ふくくう)内に腹膜透析用の管を入れて固定し、プラスチックバッグに入った透析液を、この管で腹腔内に注入して血液を浄化します。体外の装置ではなく、自身の腹膜を透析膜として利用する手法のため自宅でできますが、一般的には、1日3〜4回、透析液の注入、交換が必要です。

頻繁な通院から解放されるという利点がありますが、腹腔に異物を留置することから腹膜炎の原因になることがあります。このため、若年者が長期に渡って腹膜透析を用いることは、奨励されていません。

腎臓移植は、肉親などから2つある腎臓の1つをもらったり、死亡した人の腎臓をもらって、これを発症者に移植し、血管や尿管をつないで腎臓の代用にするものです。移植には、死後間もない腎臓ほど移植成績がよいことから、脳死を巡る論争や、脳死と臓器提供を巡る訴訟問題などが起こり、近年は移植例が減少してきています。

🇵🇰尿毒症性ニューロパチー

尿毒症がもとになって、末梢神経の感覚障害などが現れる疾患

尿毒症性ニューロパチーとは、体内の老廃物が尿と一緒に排出できなくなる尿毒症がもとになって、感覚障害が現れる疾患。

食物は体内で代謝され、大部分は水と炭酸ガスになりますが、たんぱく質などは尿素窒素、尿酸、クレアチニンなどの窒素代謝産物となり、正常では尿と一緒に排出されますが、腎(じん)機能の低下に伴って引き起こされる尿毒症では、十分排出できずに体内にたまり、体内にたまった老廃物の中に含まれる物質によって神経細胞が傷害されて、感覚障害が現れると考えられています。

尿毒症性ニューロパチーの症状としては、手足の先端を中心としたしびれ、灼熱(しゃくねつ)感、痛みが起こり、やがて感覚が鈍くなり、筋力低下などが現れます。

尿毒症性ニューロパチーの検査と診断と治療

泌尿器科の医師による尿毒症性ニューロパチーの治療では、原因疾患である尿毒症の治療が主体となります。適切な人工透析療法を行って、体内の有害な老廃物を排除すれば、神経の感覚障害なども改善されてきます。

人工透析療法で主流を占めるのは血液透析で、人工腎臓といわれる透析装置を用いて、血液を浄化する方法です。まず発症者の動脈から血液を体の外に導き出し、透析装置の中に送って、ここできれいにされた血液を静脈に戻します。

血液透析は一般的に、1回3~5時間、週2~3回の透析時間を必要とします。透析を始めて間もなくは、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛、血圧変動などの不均衡症候群で悩まされることもあります。食事や水分の摂取の制限など、厳しい自己管理も要求されます。

近年は、連続携行式腹膜透析法(CAPD)も行われています。あらかじめ腹腔(ふくくう)内に腹膜透析用の管を入れて固定し、プラスチックバッグに入った透析液を、この管で腹腔内に注入して血液を浄化します。体外の装置ではなく、自身の腹膜を透析膜として利用する手法のため自宅でできますが、一般的には、1日3〜4回、透析液の注入、交換が必要です。

頻繁な通院から解放されるという利点がありますが、腹腔に異物を留置することから腹膜炎の原因になることがあります。このため、若年者が長期に渡って腹膜透析を用いることは、奨励されていません。

人工透析療法はずっと定期的に行っていかなければなりませんが、腎臓を移植できれば開放される可能性があります。腎臓移植は、肉親などから2つある腎臓の1つをもらったり、死亡した人の腎臓をもらって、これを発症者に移植し、血管や尿管をつないで腎臓の代用にするものです。

🇵🇰内痔核

肛門周囲の静脈が膨らんで、歯状線の内側の直腸にいぼ状のこぶできる痔核

内痔核とは、直腸と肛門(こうもん)を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にいぼ状のこぶできる痔核。歯状線を境にして、外側の肛門部にいぼ状のこぶできる痔核は、外痔核です。

内痔核は、肛門の内側、直腸の一番下にいぼ状のこぶがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼ状のこぶが見え、自分で触ることができます。

内痔核と外痔核とがある痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

内痔核は、主に不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて腹圧が過度にかかることで、直腸の静脈がだんだんうっ血し、膨らんで発生します。立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかることも、内痔核の原因となります。

内痔核の初期状態では痛みなどがほとんどないので自覚症状がなく、知らない間に症状が進行していくという特徴があり、症状を大きく分けると4段階に分類されます。

第1段階では、排便時に出血し、トイレットペーパーに真っ赤な血が付着しているものの、痛みなどはほとんどありません。内痔核ができるのが直腸と肛門を隔てる歯状線の内側で、自律神経が支配していて痛みの神経がない場所に相当するため、痛みを感じにくいのです。

第2段階では、排便時の出血に加え、痛みを生じます。出血の量としては、トイレットペーパーに付着する程度のものから、ポタポタと出たり、ひどくなると、ほとばしるように出るものまでさまざまです。出血の回数も、初めは1カ月に1回など、たまに出るだけなのが、1週間に1回とか2回、ひどくなると排便のたびに毎日出るようになります。大きくなったいぼ状のこぶが肛門の外に飛び出す脱肛を伴う場合もありますが、脱肛した場合でも自然に戻ります。

第3段階では、排便時の脱肛が自然に戻らなくなり、自分の手で押し込まなければ戻らなくなります。また、排便時だけでなく、日常生活を送っている時に運動をしたり、力仕事をしたり、せきやくしゃみをして腹に力が入った場合にも、脱肛するようになります。

第4段階では、常に脱肛している状態となり、粘液によって下着が汚れたりします。この段階になると出血や痛みを伴わないことが多くなり、逆に肛門周辺がかぶれたり、かゆみを伴うことが多くなります。 この脱肛したまま、手で押し込んでも戻らなくなってしまった状態を、嵌頓(かんとん)痔核と呼ぶこともあります。また、内痔核だけでなく外痔核部分も合併するようになると、内外痔核と呼びます。

痔の場合、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。

排便時の出血や痛み、脱肛といった気になる症状があれば、自己判断せずに、肛門科を受診するのがよいでしょう。

内痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による診断では、肛門を診察し、血栓性外痔核、直腸脱、肛門周囲膿瘍(のうよう)、肛門がんなど大腸肛門病の有無を検査し、内痔核との鑑別を行います。

肛門科の医師による治療では、内痔核の症状によって治療法が異なってきますが、基本的にはまず生活習慣を改善することが大切になってきます。初期段階では、これに加えて塗り薬、座薬、内服薬を用いれば、多くの場合は症状が改善されていきます。

しかし、いわゆる第3段階~第4段階以上の内痔核の場合は、脱肛が自然に戻らなくなったり、常に脱肛している状態にあるため、手術が必要になることもあります。

手術が必要になった場合には、硬化療法(注射療法)、レーザー療法、結さつ療法(輪ゴム結さつ法)、ジオン(消痔霊治療)、ICG併用半導体レーザー療法、半閉鎖法、PPH法などが行われ、内痔核の症状が改善することが期待できます。

内痔核に限らず、どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。内痔核は、悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、下痢、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、内痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

便秘の逆といえる下痢も、よくありません。下痢便はすごい勢いで排便されるので、どうしても肛門部を刺激し負担をかける結果となります。

長時間の同一姿勢も、よくありません。肛門は体の下のほうに位置し、同一姿勢が長くなると、どうしても肛門部にうっ血を来し負担がかかってしまいます。 激しい力仕事、運動も原因となり得ます。妊娠、出産も肛門部へ負担をかけてしまうため、内痔核の原因となります。

嗜好品(しこうひん)ではアルコール、辛い物も、よくありません。アルコールは肛門部の血管を拡張させ、うっ血を来すもとになりますし、飲みすぎれば下痢となり、やはり肛門部へ負担がかかります。唐辛子(とうがらし)、わさび、こしょう、カレー粉などの辛い物も、排便の際に肛門部へ刺激を加え、負担をかけます。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。

特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

🇮🇳内側型野球肘

手首や腕の使い過ぎで、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる障害

内側(ないそく)型野球肘(ひじ)とは、投球動作による手首や腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる関節障害。正式な医学的名称は上腕骨内側上顆(じょうか)炎で、一般にはリトルリーガー肘、リトルリーガーエルボー、ベースボール肘、ベースボールエルボーとも呼ばれます。

利き腕の上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。

内側型野球肘は、手首を過剰な力で手のひら側に曲げる投球動作によって、上腕骨内側上顆に慢性的な衝撃が繰り返し加わり、回内筋群や屈筋群に微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

内側型野球肘は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。特に、成長期に当たる少年野球の投手がボールを投げすぎると生じやすいことが知られていますが、中年以降のテニス愛好家にフォアハンドストロークの繰り返しで生じやすいためにフォアハンドテニス肘、ゴルフの一部のスイングをやり過ぎると生じやすいためにゴルフ肘、重いスーツケースを持ち運び過ぎると生じやすいためにでスーツケース肘とも呼ばれ、スポーツや手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

内側型野球肘を起こす要因としては、肩や手の筋肉が弱い、投球動作をやり過ぎる、投球フォームに無理がある、テニスでサーブを強打したりオーバーハンドサーブやトップスピンサーブをする、濡れて重くなったボールを打つ、ラケットが重すぎるかグリップが細すぎる、ラケットのガットの張りが強すぎるなどが挙げられます。

症状としては、野球では投球のリリースのたびに、テニスではフォアハンドストロークのたびに、ゴルフでは一部のスイングのたびに、肘の内側に疼痛(とうつう)が現れます。ズキズキする痛みがあるのに運動を続けると、筋肉を骨に結び付けている腱(けん)が上腕骨内側上顆からはがれてしまい、出血を起こすこともあります。

また、野球やテニス、ゴルフ以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の内側から前腕の小指側にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

内側型野球肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の内側に圧痛が認められます。また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘の内側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、内側型野球肘、すなわち上腕骨内側上顆炎と確定診断します。X線(レントゲン)検査やMRI検査も、診断に有効です。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(エルボーバンド、テニスバンド)で押さえること。2つ目は、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤と局所麻酔剤を混合して痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が3〜6カ月ほどで治ると考えられています。障害が治癒したら、患部の筋肉と、手首や肩の筋肉を強化します。手術が必要となることはまれで、多くの場合、安静や投薬といった保存的治療で治ります。治癒を早める目的で、筋肉から瘢痕(はんこん)化した組織を切除するニルシュル法が行われることもあります。

手指や前腕の筋肉は日常生活で非常によく使うため、安静がなかなか取れずに痛みが長引く場合もありますが、根気よく治療を続けることが大切です。治っていないのに野球やテニスなどの運動を続けると、内側側副靭帯(そくふくじんたい)の緩みや骨に付着する部分での断裂を起こし、靭帯を修復するための手術が必要になることもありますので、無茶は禁物です。

🇻🇺内側側副靭帯損傷

野球の投球動作の繰り返しによって、肘関節の内側を支える靱帯に生じる障害

内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)損傷とは、野球の投球動作の繰り返しによって肘(ちゅう)関節の内側を支える靱帯に生じる障害。肘尺側側副靭帯損傷とも呼ばれます。

肘関節は、上腕骨と橈(とう)骨と尺骨という3骨の間に生じた複関節であり、その周りは靭帯や腱(けん)などによって支えられています。

野球の投球動作では、テークバックからの加速期には、腕が前方に振り出される際に肘を外側に広げ、さらにその後のボールリリース期からフォロースルー期には、手首を手のひら側に曲げ、前腕を内側にひねるため、手首を曲げる作用をする屈筋と、前腕をひねる作用をする回内筋が付着している上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)という、肘関節の内側にある骨性の隆起に牽引(けんいん)力が働きます。

この投球動作の長年にわたる繰り返しにより、肘関節の内側にあって上腕骨と尺骨をつなぎ、肘関節の横ぶれを防ぐ役目をしている内側側副靱帯が損傷します。回内・屈筋群筋筋膜炎を起こしたり、上腕骨内側上顆炎を起こすこともあります。

野球の投球動作での内側側副靭帯損傷では、繰り返す牽引により内側側副靱帯が伸びた状態になっていることがほとんどです。これは、小さな断裂の繰り返しや靭帯組織の劣化によるもので、投球歴の長いピッチャーに多く発症します。

バランスのとれたフォームでの投球動作ならば、投球歴の長いピッチャーでも肘関節への負担は少なくなりますが、フォームのバランスが悪かったり、変化球を多投したりすると、内側側副靭帯損傷を発症する可能性が高くなります。

投球時の肘関節内側痛が、主な症状です。特に、テークバックからの加速期に痛みが起こります。通常、徐々に痛みが起こりますが、急に痛みが起こり投球が不能になることもあります。

日常動作では無症状のことがほとんどなものの、重症例では日常動作で肘がぐらつくような不安定性が生じたり、痛みが起こることもあります。

また、頻度は低いものの、不安定性により肘の内側の表面近くを走行する尺骨神経が損傷され、手の小指側(尺側)にしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が生じることもあります。

野球によって内側側副靭帯損傷が生じるほか、転落などで手を突いて肘に外力が加わった時、スキーで転倒して肘に外力が加わった時、柔道などで肘の固め技を受けた時、アームレスリングで肘に強い外力が加わった時など、1回の外力で内側側副靱帯が損傷したり、完全に断裂することもあります。

外傷性の内側側副靭帯損傷では、受傷後すぐに肘が痛くなり、はれが生じ、痛みのため肘関節の運動が制限されます。

投球時に肘の内側が痛む場合は、内側側副靭帯損傷が疑われます。適切な治療を受けないと、競技生活を引退しても変形性肘関節症により肘の可動域が低下したり、尺骨神経遅発性まひを起こし、日常生活にも支障を来すことがありますので、早期に整形外科を受診することが勧められます。

内側側副靭帯損傷の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、投球時の痛みに加え、肘関節の内側にある骨性の隆起である上腕骨内側上顆の下端前方に圧痛があり、肘を外側に開くように力を加えると痛みが誘発される場合に、内側側副靭帯損傷を疑います。

X線(レントゲン)検査を行うと、靭帯付着部から剥離(はくり)した小さな骨片を認めることもありますが、正常な場合もあります。肘を外側に開くように力を加えて行うストレスX線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査により、靭帯付着部に異常が認められることもあります。

整形外科の医師による治療では、投球禁止をした上、テーピングやギプスによる外固定を行って局所安静を図り、その後の筋力トレーニングで、手首を動かす屈筋と、前腕を内側にひねる回内筋の強化を行います。

ハイレベルの競技活動の継続を希望する野球選手などの場合や、不安定性により肘の内側を走行する尺骨神経に障害を来す場合、強い痛みと不安定性により日常生活に支障を来す場合には、膝(ひざ)や爪先(つまさき)の靱帯、腱、あるいは長掌(ちょうしょう)筋という前腕の筋肉にある腱を移植し、靱帯を再建する手術を行うことがあります。

スキーでの転倒、柔道などの固め技による外傷性の内側側副靭帯損傷の場合は、軽度から中等度の損傷であれば、テーピングやギプスによる外固定を2〜3週間行い、その後、徐々に筋力トレーニングを始めます。

🎐夏風邪

夏もウイルス感染症がはやりやすい季節

夏風邪とは、夏にかかる感冒性疾患の総称。特定の病名ではありません。

普通、ウイルス感染症や寝冷えに対する反応なども含まれます。ウイルス感染症は夏もはやりやすい季節で、200種類以上ある風邪の原因になるウイルスのうち、夏の暑さと湿気を好むウイルスが流行します。

夏風邪の代表的なものは、ヘルパンギーナ、手足口(てあしくち)病、プール熱。このうちヘルパンギーナとプール熱は高い熱が出ますが、手足口病は高熱になることがほとんどなく、代わりに手足に発疹(はっしん)ができます。このほかにも、名前は付いていませんが、熱が出るだけの夏風邪も多くみられます。冬の風邪と違い、せき、鼻水がなく、寒気もあまりありません。

いずれの夏風邪も、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経の中に入り込みやすい性質があり、髄膜炎を引き起こすことがありますので注意が必要です。

ヘルパンギーナは乳幼児を中心に流行

ヘルパンギーナとは、俗にいう夏風邪の一種。6〜7月をピークに、主に4~10月ころに多く、6カ月から4歳ぐらいの乳幼児を中心に流行します。

原因となるウイルスとして、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなど多数が知られていますので、何回でもかかってしまう感染症です。

経口、経気道感染でウイルスが侵入し、2〜4日間の潜伏期間を経て、突然、38~40度の高熱とともに発症します。この時に熱性けいれんを起こすこともあります。口腔(こうくう)の上壁に当たる軟口蓋(なんこうがい)、俗にいうのどちんこに当たる口蓋垂(すい)の周囲の粘膜に、周囲が赤くなった小水疱(すいほう)や直径1〜5ミリぐらいの小さい潰瘍(かいよう)ができ、咽頭(いんとう)は赤くなります。

食欲不振や咽頭痛のために嚥下(えんげ)困難があったり、まれに大きい子供では腹痛や頭痛を覚えることもあります。発熱期間は1〜4日で、全経過は約1週間以内にとどまります。

陰部に潰瘍ができたり、おたふく風邪のような耳下腺(じかせん)炎や、無菌性髄膜炎を起こすことがあります。高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎を合併していることもあるので注意が必要です。鼻炎や中耳<炎などの合併症を起こすことは、まれです。

症状に気付いたら、すぐに小児科の専門医を受診します。

小児科の医師による診断では、役に立つ特別の検査はなく、夏の流行期に口内所見が認められれば確定できます。

小児科の医師による治療では、原因となるウイルスに対する特効薬がないため、症状を抑える対症療法が中心になります。解熱剤や鎮静剤、抗けいれん剤などを投与します。

家庭では、安静、保温、消化のよい食べ物、特に飲み込みやすい食事を与えることが大切です。乳児では、脱水が起こらないように、十分な水分を補給するようにします。適しているのは、麦茶、イオン飲料、ヨーグルト、アイスクリームなど。熱があっても特に具合が悪そうでなければ、入浴して汗を流すことはかまいません。

この疾患の特別な予防法はありません。

手足口病は乳幼児の間で5月から9月に流行

手足口病は、腸管系ウイルスによって起こる感染症で、手のひらや足の裏に小さな水疱、口の中の粘膜に小さな発疹がたくさんできます。軽い病気ながら、感染力はかなり強く、夏を中心に5月から9月にかけて、乳幼児の間で流行します、

代表的な原因ウイルスはコクサッキーA16、あるいはエンテロ71という名前のウイルスですが、原因となるウイルスがそれ以外にも何種類もあるため、以前にかかったことがある乳幼児でも、またかかることがあります。

潜伏期は2~7日で、多くの乳幼児はほとんど前駆症状なしに発症します。発熱も約半数にみられますが、高熱になることはあまりなく、3日以内に解熱します。

手足の水疱は、痛くありません。ひざやおしりなどにも、多数の水疱が現れることもあります。おしりだけの場合もあり、おむつかぶれと間違えられることも。これらの水疱は、一週間ほどで消失します。

口の中はひどく痛くなることがあるので、酸っぱい物、辛い物など刺激性の食べ物は避け、乳児では脱水を起こさないように水分を与えましょう。口内痛が強くて、全く飲んだり食べたりできない時や、高熱が続いて、頭痛を訴えたり、嘔吐(おうと)を繰り返す時は、早めに小児科の医師の診察を受けましょう。無菌性髄膜炎を合併して起こすこともあります。

プール熱は幼児から学童に多く流行

プール熱とは、アデノウイルスによって起こる急性ウイルス感染症で、結膜充血、咽頭発赤(いんとうほっせき)、発熱が三大症状です。幼児から学童に多く見られ、夏期に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられています。別名は咽頭結膜炎。

原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

39度前後の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜充血、咽頭発赤、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

小児科の医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、プール熱の特効薬はありません。

家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。プール熱が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。

2022/08/05

🟥東京都で3万7767人が新型コロナ感染 前週比950人余り増

 東京都は5日、都内で新たに10歳未満から100歳以上の3万7767人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

 1週間前の金曜日より950人余り増え、依然、高い水準で感染者が出ています。5日までの7日間平均は3万2836・1人で、前の週の104・0%でした。

 新規感染者を年代別にみると、20歳代が7924人と最も多く、30歳代が6684人、40歳代が6501人と続きました。65歳以上の高齢者は3574人でした。

 ワクチンの接種状況別では、2回接種済みが2万4879人、未接種は6646人でした。

 また、人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO<エクモ>)を使っている重症の患者は、4日より1人減って38人でした。

 一方、都は、感染が確認された21人が死亡したことを発表しました。1日に発表される死亡した人の数が20人を上回るのは今年3月18日以来です。

 東京都の累計の感染者数は233万1579人となり、累計の死者数は4729人になりました。

 2022年8月5日(金)

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...