2022/08/08

🇿🇲骨端症(成長痛)

過度のスポーツによって、成長途上の軟骨が損傷を受ける疾患

骨端(こったん)症とは、成長期の子供の成長軟骨に障害が起き、痛みを伴う疾患。特にスポーツによって起こりやすく、成長痛とも呼ばれます。

骨の両端にある骨端は軟らかい軟骨で、骨端核、骨端線、骨幹端から構成されています。いわゆる成長軟骨とは骨端線のことで、骨端線が膨張することで、骨が大きくなり、結果的に身長が高くなるということになります。このように子供の骨が成長する時には、成長軟骨が引っ張られて、傷みやすくなっています。

その時期にスポーツなどで過度の刺激が加わると、成長軟骨にストレスが掛かったり、血液供給が阻害されたりして損傷を受け、骨端症が起こります。

骨端症は、肘(ひじ)や膝(ひざ)だけでなく、あらゆる四肢の関節や脊椎(せきつい)、骨盤にみられます。代表的なものでは、膝にみられるオスグッド病、足のアキレス腱(けん)の付着部にみられる踵骨(しょうこつ)骨端症、肘にみられるパンナー病、手首にみられるキーンベック病(月状骨軟化症)、股関節にみられるペルテス病などがあります。

成長にかかわる部分だけに修復力も旺盛で、自然修復も期待できます。しかし、損傷の程度が強かったり、慢性的に損傷が繰り返されると、修復できなくなります。発見が遅れて治療が間に合わなかった場合、成長軟骨が障害されると成長が停止し、腕や下肢が短くなります。

また、骨端核が破壊されると関節が変形し、関節遊離体(関節ねずみ)を生じて、曲げ伸ばしができなくなることもあります。こういったことに気付くのは発症してから2、3年先のことで、すでに病状は進行して手術が必要になっています。

成長とともに治る場合も多いのですが、膝や腰などは重要な部分なので、できれば医師に相談し、症状によってはスポーツを中断して回復を待ったほうがよいこともあります。日常での歩行や、階段の上り下りでも痛ければ、専門医を受診しレントゲン写真などの検査が必要です。

🇿🇲骨軟化症

骨が軟らかくなって、変形や骨折を起こす疾患

骨軟化症とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。成人型のくる病に相当します。

一方、くる病は、骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態です。

カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

くる病や骨軟化症の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

骨軟化症の検査と診断と治療

確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残った場合は、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。

🇲🇿骨軟骨骨折

スポーツ時や転倒時などの外傷によって、関節軟骨をそぐような力が働き、関節の骨と軟骨に同時に生じる骨折

骨軟骨骨折とは、スポーツ時や転倒時などの外傷によって、関節軟骨をそぐような力が働き、関節の骨と軟骨に同時に生じる骨折。

関節の軟骨は、骨同士のクッションの役割を果たすために、関節の内部にあります。しかし、スポーツ時や転倒時などの外傷によって、関節が直接衝撃を受けた際、あるいは脱臼(だっきゅう)により関節が外れたり、外れた関節が元に戻ろうとする際に、軟骨に強い摩擦がかかる場合には骨折し、摩擦が軟骨の強度を超えた場合には、軟骨や骨の一部が骨からはがれて遊離することもあります。

骨軟骨骨折は、膝(ひざ)関節にある膝の皿に相当する膝蓋(しつがい)骨によく起こり、 肘(ひじ)の関節、股(こ)関節、足関節などに起こることもあります。

膝蓋骨に骨軟骨骨折が起こると、軽度では関節痛程度の痛みや違和感が生じます。

重度では、はがれた軟骨や骨の小片からなる遊離体が関節内をあちらこちらと動き回った際に、関節の動きの制限と痛みが生じます。遊離体は、関節内のくぼみに落ち込んだり、引っ掛かったりして、関節の正常な動きを妨げます。階段の上り下りやスポーツなどで関節を動かす際に、痛みが断続的、継続的に続くこともあります。場合によっては、日常生活にも支障を来します。

そのほか、膝関節のだるさ、はれを感じたり、膝の曲げ伸ばしができなくなったり、関節に水がたまったりすることもあります。

骨軟骨骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べるほか、一般にはX線(レントゲン)検査を行います。関節内の遊離体が骨を含んでいる場合には、X線写真に映し出されますが、遊離体が軟骨部分だけのような場合には、普通のX線検査では発見できません。このような場合には、空気や造影剤などを関節内に注入した上で、X線撮影を行います。

整形外科の医師による治療では、手術によって関節内の遊離体を取り除くのを基本とします。手術といっても、多くは関節鏡を用いた手術なので、発症者の身体的負担は少なくてすみます。遊離体が小さかったり、2~3個程度の数で、あまり動き回らなければ、1時間程度で手術は終わります。多くのケースでは1日~数日入院しますが、通院での手術も可能です。

遊離体が関節液から栄養をもらい、5mm~1cmくらいに大きく育った場合は、関節を切開して骨片を整復して、元の位置に戻し、ネジなどで固定する手術を行います。遊離体の数が多い場合も、関節を切開して取り除く手術を行います。

手術の目的は、軟骨片や骨片の処置とともに膝蓋骨脱臼の再発防止にあり、いろいろな方法の手術が行われています。骨軟骨骨折を起こしやすい素因である、関節が緩い状態やX脚などを矯正する手術を同時に行うこともあります。

🇲🇿骨軟骨腫

関節近くの骨がこぶのように突出する良性の骨腫瘍

骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)とは、関節の近くの骨の表面がこぶのように、外側へ突出する良性の骨腫瘍(しゅよう)。軟骨性外骨腫とも呼ばれます。

突出した骨は軟骨組織で覆われ、ちょうど帽子をかぶったように見えることから軟骨帽と呼ばれています。この軟骨帽が内側に向かって骨を作ることにより、大きくなります。

原発性骨腫瘍の中では最も発生頻度の高いもので、基本的に良性とはいえ、約1割で悪性化して軟骨肉腫になることがあります。単発性骨軟骨腫と多発性骨軟骨腫とに分けられ、単発性が約70パーセント、多発性が約30パーセントの割合で発生します。多発性は、遺伝性、家族性として起こることがあります。

成長期における正常な骨は、骨の両端近くにある骨端成長軟骨板という軟骨組織が骨を作ることによって成長し、骨端成長軟骨板の消失によって成長が停止します。この成長をつかさどる軟骨組織と同じ軟骨帽が誤った方向へ骨を作るために、骨軟骨腫が発生すると考えられています。通常、骨の成長が止まるとともに、骨軟骨腫の増殖も停止します。

年齢別では10歳代に最も多くみられ、性別では男性のほうにやや多くみられます。

骨軟骨腫を持っている多くの人は、こぶが小さくて気付かずに生活しています。外傷などほかの原因でX線検査を行い、偶然に発見されることがよくあります。大きくなると、無痛性の硬いこぶとして触れるようになって気付きます。

こぶの増大に伴い、周囲の筋肉や腱(けん)などを圧迫すると、運動障害を起こすようになります。血管や神経を圧迫すると、血行障害や神経の刺激症状として痛みを引き起こします。前腕や下腿(かたい)など2つの骨が隣接する部位では、こぶが隣の骨を圧迫して成長を妨げ、周囲の関節の変形を引き起こして関節炎などの痛みを誘発することもあります。

単発性骨軟骨腫が好発する部位は、膝(しつ)関節を形成する脛(けい)骨近位端で、大腿(だいたい)骨、上腕骨、手指の指骨、肩甲骨などにも生じます。多発性骨軟骨腫では、四肢の変形、短縮などを生じることがあります。

整形外科の医師による診断では、X線写真で骨性のこぶが確認されます。こぶの頂上に当たる軟骨帽の形状には、球状、きのこ状、台地状、珊瑚(さんご)状などさまざまななものがあります。軟骨帽の内側では、軟骨内骨化、骨形成、骨髄形成が認められます。

治療では、こぶによって運動障害や血行障害、痛みや神経まひの症状を起こした場合や、悪性化して軟骨肉腫が疑われる場合に、摘出手術を行います。

🇺🇬血友病

異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患

血友病とは、異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患。体の血液中あるいは血管外には、出血の際に血が固まるのに必要ないくつかの血液凝固因子が含まれていますが、血友病では生まれ付き、ある種の凝固因子の欠乏あるいは異常のために、血が固まりにくく、出血が止まりにくくなります。

体の中に12種類が存在する血液凝固因子のうち、性染色体であるX染色体上にある第VⅢ因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病A、同じく性染色体であるX染色体上にある第ⅠX因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病Bといいます。

血友病は伴性劣性遺伝といわれる遺伝の仕方で、その発症の多くは男性でみられます。X染色体が2本ある女性の場合には、もう一方のX染色体に異常がなければ機能が補完されますが、ごくまれに発症がみられます。男性は10万人に6〜7人の発症頻度で、血友病Aは血友病Bの約5倍です。基本的には遺伝性の疾患ながら、4分の1の例が今まで家族にみられずに、新しく突然に発生した散発例です。

血友病Aも血友病Bも症状は同じで、深部出血が中心となり、特に関節内や筋肉内で内出血が起こりやすく、一度止血しても翌日~1週間後に再出血を起こすことがあります。ひざ、足、ひじの3関節内の出血が一番多く、溢血班(いっけつはん、青あざ)、鼻出血、歯肉出血などもありますが、内臓出血、頭蓋(とうがい)内出血、腹膜に接したところにある筋肉に血の固まりができる腸腰筋血腫(けっしゅ)などが重要です。頭蓋内出血は致命的なことがあり、腸腰筋血腫は長期に療養をしなければなりません。

新生児期に出血症状がみられることはまれですが、運動量が増えてくる乳児期後半から症状がみられるようになります。歩行ができるようになると、関節内出血、さらに年長になると血尿、筋肉出血がみられるようになります。関節内出血や筋肉出血を繰り返すと、関節の変形や可動域制限が起こります。

幼児期までに大部分が発症しますが、軽症の場合は非血友病の人と変わらない生活を送り、けが、抜歯、手術の時などに血が止まりにくことで、初めて判明することもあります。

血友病の検査と診断と治療

スクリーニング検査では、出血時間、凝固系、線溶系、血小板系、血管系の検査を行い、第VⅢ因子活性または第ⅠX因子活性を測定することにより確定診断されます。

血友病の根本的治療はなく、出血時あるいは予防的d>に、欠乏している血液凝固因子を静脈注射で補充します。血友病Aには第VⅢ因子製剤が、血友病Bには第ⅠX因子製剤が使われ、補充は欠損因子の活性が20パーセント以上になる程度を目標とします。現在ではこの因子補充療法により、健常者とほぼ同じ生活が可能となっていますし、家庭内自己注射による自己管理も可能です。軽度の出血時の自己注射、あるいは定期的な予防自己注射を在宅で行うものです。

また、人から採血した血液から作る血液製剤のほか、リコンビナント製剤という最新の製剤も、現在では使用されています。製造工程中に一切の人由来、動物由来の蛋白(たんぱく)を使用せず、遺伝子工学的に製造されるのがリコンビナント製剤で、日本では50パーセント以上の発症者に使用されています。

血漿(けっしょう)中に、凝固因子の働きを阻害する物質(インヒビター)が存在する場合は、これを除去する目的で血漿交換療法が用いられます。第VⅢ因子、第ⅠX因子ともに肝臓で生成されますので、生体肝移植により血友病が完治した例も存在します。

🇺🇬ケトン性低血糖症

乳幼児の血糖値が低下し神経症状が現れる疾患

ケトン性低血糖症とは、乳幼児の血液に含まれる糖(ブドウ糖)の量、すなわち血糖値が40mg/dl以下に低下し、交感神経症状が現れる疾患。

血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。生後1年から1年半の乳児の血糖値は80~100mg/dl、満1歳から満6歳の幼児の空腹時の血糖値は70~100mg/dlが正常値と見なされています。しかし、乳幼児は大人よりも血糖値が変動しやすいのが特徴で、低血糖になりやすい傾向にあります。

食べた糖質(炭水化物)をビタミンB1がブドウ糖に変えて血液中に放出されることで、血糖値は上がります。血液中のブドウ糖をエネルギー源として脳や筋肉が活動できるわけで、糖質はゆっくりとブドウ糖に変わり、安定的なエネルギー源を供給しますが、乳幼児は1回で食べられる量が少ないので長い時間食べずにいると飢餓状態になり、低血糖になります。

乳幼児期に最も多くみられる低血糖症がケトン性低血糖症で、尿検査でケトン体という物質がたくさん認められます。1歳半から5歳ごろまでに、ケトン性低血糖症がみられます。

原因ははっきりわかっていませんが、比較的やせ形で発育のあまりよくない乳幼児に多くみられ、夕食を食べないで寝たために次の朝一時的に飢餓状態になったり、精神的ストレスや風邪などで食欲不振に陥って飢餓状態になることが、ケトン性低血糖症を発症する切っ掛けになります。

飢餓状態が短時間である場合、血糖値を回復させるため、アドレナリンやグルカゴンなどの興奮にかかわるホルモンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解しブドウ糖を放出することで血糖値は維持され得ます。しかし、乳幼児は肝臓にグリコーゲンを蓄積する機能が低いにもかかわらず、脳や筋肉での血糖の消費が盛んであるため、飢餓状態になるとグリコーゲンの分解による糖の供給は容易に不足状態に陥りやすくなります。

グリコーゲンの分解による血糖値の維持が限界になると、体は糖新生を行うことで血糖値を維持しようとします。主に糖新生を行う肝臓では、脂肪をβ酸化することによって生成されるエネルギーを利用し、骨格筋由来のアラニン、乳酸、脂肪などを原料にして糖新生を行い、ブドウ糖を供給します。脂肪のβ酸化によってできた余分なアセチルコエー(活性酢酸)は、ケトン体(アセトン体)に変換されます。筋肉、脳、腎臓(じんぞう)などでケトン体は利用されますが、余分なケトン体は血中に増加していきます。

低血糖の度合いにより症状はさまざまですが、軽度の場合は元気がない程度の症状です。ひどくなると、顔面が蒼白(そうはく)になり、嘔吐(おうと)を伴ってけいれんを引き起こすこともあります。

ケトン性低血糖症を発症しても、普通の状態の時には、血糖の異常はありません。知能の遅れはありませんが、身体的な発育が少し遅れたり、体重の増加がよくない乳幼児は多くみられます。

ケトン性低血糖症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、血糖値の低下、および血中や尿中のケトン体の増加がみられる場合に、ケトン性低血糖症と確定します。鑑別すべき疾患としては、血液中のインスリン値が高い結果起こる低血糖症、内分泌・代謝性疾患が挙げられます。

低血糖の出現時に検査をする機会が得られない場合は、12時間から18時間の絶食検査を行い、低血糖の出現を確認することもあります。ただし、この絶食検査の前には、脂肪のβ酸化を促進するカルニチン、アシルカルニチンが正常であることを確認しておかなければ危険です。

小児科の医師による治療では、軽症の場合、経口で糖分を少量ずつ頻回に与えます。嘔吐などのため経口摂取が困難な場合や、中等症から重症の場合には、20%ブドウ糖液2mg/kgの静脈注射を行い、引き続き5~10%の糖濃度を含むブドウ糖の輸液を血糖値が正常化するまで行います。

ケトン性低血糖症は予後良好な疾患であり、予防に努めていれば、一般に10歳前後には症状が出なくなります。

予防としては、乳幼児に低血糖を起こさないようにするために、常に空腹にならないように食事の回数を増やしたり、炭水化物の多い食事を取らせます。食欲がない時や風邪などを引いて元気がない時には、早めに糖分を与えることが大切です。

🇹🇿ケロイド

皮膚の傷が治る過程で、本来は傷を埋めるための組織が増殖して、しこりになったもの

ケロイドとは、傷が治る過程において、本来は傷を埋めるための組織が過剰に増殖し、皮膚が赤く盛り上がってしこりになったもの。蟹足腫(かいそくしゅ)とも呼ばれます。

ケロイドの症状は肥厚性瘢痕(はんこん)に似ていますが、組織の過剰増殖が一時的で、傷の範囲内に限られるものを肥厚性瘢痕といい、ゆっくりしながらも持続的、進行性で傷の範囲を超えて周囲に拡大するものがケロイドに相当します。

ケロイドには生まれ付きの体質的な素因も大きく影響するといわれており、本来は体を修復する機能が働いて小さな白い傷で治るはずのものが、その治る途中で組織の過剰な生体反応が起こるために、皮膚の赤く硬い状態が長く続き、徐々に赤みや硬さが強くなっていきます。蟹足腫とも呼ばれるように、しばしば皮膚の緊張する方向に蟹(かに)の足のような形状の突起を生じて広がり、大きくなっていきます。

病変部の拡大とともに、中心部はしばしば赤みが少なくなって平らになりますが、元通りの皮膚には戻りません。痛み、かゆみも伴います。

一説には、皮膚の表皮の下にある真皮を作る線維芽細胞が、コラーゲンを過剰に分泌するためにケロイドを生じると考えられていますが、詳しい原因はよくわかっていません。

帝王切開などの手術やけがの跡のほか、ピアスの穴、にきびの跡、BCG予防接種の跡、本人が気付かないような小さな傷跡から生じます。また、傷跡のないところにもできて大きくなる真性ケロイドというものもあり、あご、前胸部、肩部、上腕の外側、上背部、恥骨(ちこつ)部など、皮膚が引っ張られる部位によく発生します。同じ人でも、ケロイドを生じやすい部位と生じにくい部位とがあります。

ケロイドの見た目が気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師を受診し、病変部の大きさや時期に適した治療を受けることが勧められます。

ケロイドの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、通常、見た目だけで確定できます。ほかの疾患、特に悪性腫瘍(しゅよう)などの可能性を捨て切れない際には、組織の一部を採取して検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、圧迫療法、薬物治療、外科的治療が主となります。

圧迫療法は、スポンジ、シリコンゲルシート・クッションなどを病変部に当て、サポーター、包帯、粘着テープなどで圧迫する方法です。手術後や外傷では、傷が治ったら早いうちに圧迫療法で傷跡のケアをすると、ケロイドになる率を低く抑えることができます。

薬物治療としては、ステロイド軟こう(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン軟こう)を病変部に塗ったり、ステロイド剤を病変部に直接注射する方法が効果的です。トラニラストという抗アレルギー剤の内服が行われることもあります。

外科的治療は、ケロイドの厚みがあり大きい場合に有効です。ケロイドは引っ張られる力により悪化するため、ケロイド部分を切除し、皮膚をZ字のようにジグザグに縫い合わせると、引っ張られる力を分散させることができます。

切除後は早期から、再発を防ぐための放射線治療を行う必要があります。コラーゲンが異常に増えて再発するのを抑えるため、数日間に分けて放射線の一種、電子線を当てます。医療機関によっては、切除後早期から、ステロイド剤を病変部に直接注射することもあります。

その後、半年から1年間は傷に力が入らないような生活を心掛け、粘着テープを張るなどして皮膚を圧迫します。この方法で8〜9割は治るとされています。しかし、運動や仕事を切っ掛けに再発する例もあり、しばらく安静な生活を送る必要があります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...