2022/08/09

🇦🇴先天性肥厚性幽門狭窄症

胃の出口の幽門の筋肉が先天的に厚くなり、胃の内容物が停滞する疾患

先天性肥厚性幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)症とは、胃と十二指腸の境界部にある幽門の幽門輪という部分の筋肉が先天的に厚くなっていて、新生児の母乳やミルクの通りが悪くなる疾患。肥厚性幽門狭窄症、筋肥厚性幽門狭窄症とも呼ばれます。

新生児の2000人に1人の割合でみられ、新生児が飲んだ母乳やミルクを噴水状に嘔吐(おうと)するケースもあります。

先天性肥厚性幽門狭窄症の原因は、胃の出口で十二指腸につながる幽門の異常です。通常は食道から胃に食べ物が届くと、幽門を通って十二指腸に運ばれます。しかし、幽門の幽門輪の筋肉が厚くなって幽門が狭くなると、食べ物は先へ進めず逆流します。

なぜ幽門に筋肉が作用してしまうのか、根本的な理由はまだはっきりしていません。筋肉の肥厚は先天的な理由とされていますが、確定していません。しかし、統計的には男の子、特に第一子の男の子に多くみられるとされています。

先天性肥厚性幽門狭窄症の症状は、生後2~3週ころから1カ月にはわかるようになり、母乳やミルクを欲しがって飲んでも吐くようになります。最初はダラッと戻す程度ですが、嘔吐は治まらず、やがて口や鼻から噴水のように勢いよく吐き出します。

胃で消化する時間もないまま吐いてしまうので、空腹でまた飲みたがり、そして、母乳やミルクが胃にいっぱいたまったら嘔吐するという繰り返しを続けます。

結果、どんなに母乳やミルクを与えても、栄養を摂取できずに脱水します。栄養不足から体重も増加せず、元気がなくなってしまいます。

嘔吐が徐々にひどくなる、顔色が土色になる、尿量や排便量が減ってくるなどの症状がみられたら、すぐに小児科の医師を受診しましょう。

これらの症状を発見できずにいると、胃にたまった内容物が胃拡張を引き起こす恐れもあります。症状が軽いと、生理的な嘔吐と見分けが付かず、噴水状に吐き出して初めて先天性肥厚性幽門狭窄症に気が付くこともあります。

また、噴水のような嘔吐が目立たないケースもあります。しかし、嘔吐量や鼻からもミルクが戻ってしまうことも、診断ポイントです。授乳時の様子に少しでも違和感を感じた時は、早急に医師に相談すると安心です。

新生児が栄養を摂取できずに嘔吐を繰り返すと、低カリウム血症の恐れが出てきます。先天性肥厚性幽門狭窄症での激しい嘔吐により、体内のカリウムが消化液とともに吐き出されます。カリウムが欠乏すると、嘔吐や倦怠(けんたい)感が増します。

低カリウム血症は悪化すると、全身の至る個所に不具合が生じます。重症に陥ると、不整脈や四肢まひを引き起こします。

先天性肥厚性幽門狭窄症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断は、比較的容易であり、最近では超音波検査で幽門筋の肥厚の程度まで測定することができます。

小児科の医師による治療は、新生児の吐き方の程度が著しくて食べ物が摂取できない場合には、輸液で栄養を補給してから、手術(ラムステット手術)をすることが基本になります。

まず点滴をして、体液のバランスを改善します。点滴と母乳やミルクの経口摂取を中止すれば、次第に嘔吐は治まります。次に胃の幽門の筋肉に切り込みを入れて、狭くなっている部分を広げます。手術は1時間くらいで終わり、入院は1週間から10日くらいすることになります。この疾患による後遺症などの心配は、ありません。通常の手術は1回だけで済み、手術後は母乳もミルクも飲めるようになります。

また、近年は内視鏡を使って幽門筋を広げる鏡視下手術を行ったり、アトロピン(硫酸アトロピン)という薬を静脈内に注射することにより、幽門筋を弛緩させて治療する方法を使うこともあります。

低カリウム血症に対する治療は、原因となる先天性肥厚性幽門狭窄症を改善することが有効ですが、新生児が自力で回復できない場合はカリウムを補充します。

🇦🇴先天性ビリルビン代謝異常症

遺伝的体質により、ビリルビンが体内から排出されにくいために黄疸を生じる疾患の一つ

先天性ビリルビン代謝異常症とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、黄疸(おうだん)を生じる疾患。クリグラー・ナジャール症候群とも呼ばれ、体質性黄疸の一つに相当します。

血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。

本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入ってアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合(ほうごう)を受けて解毒され、続いて、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。

ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。

従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合は先天性ビリルビン代謝異常症などの体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。

先天性ビリルビン代謝異常症では、新生児期から発症し、黄疸を生じます。

特徴は、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン)を、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変換するグルクロン酸抱合酵素の活性が低下しているため、グルクロン酸抱合を受けていない間接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示すことです。

変換酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから長引く核黄疸、もしくはビリルビン脳症と呼ばれる状態を示す生命予後の不良な重症型と、酵素の活性は正常の10パーセント未満を示すものの、問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない軽症型があります。

変換酵素の活性がゼロの場合には、高度の新生児黄疸を来してビリルビンが脳細胞まで侵すことがあり、後遺症を残したり、幼児期のうちに死亡してしまうこともあります。

先天性ビリルビン代謝異常症の検査と診断と治療

小児科、あるいは内科の医師による診断では、血清中の間接型ビリルビン値の上昇、および胆汁中の直接型ビリルビン値の低下により判断します。重症型と軽症型の区別には、フェノバルビタールという薬剤を投与し、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。

小児科、内科の医師による治療では、先天性ビリルビン代謝異常症の重症型の場合、間接型ビリルビン値を下げるために、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させて排出させる光線療法を行ったり、ビリルビン合成を抑えるための薬剤、便への排出を促すための薬剤を投与します。

しかし、成長とともにこれらの治療効果が低下し、最終的には肝移植療法が必要になります。

先天性ビリルビン代謝異常症の軽症型の場合、フェノバルビタールの投与が有効です。

🇦🇴先天性風疹症候群

妊娠初期の女性が風疹ウイルスに感染し、生まれた新生児に形態異常を起こす先天異常症

先天性風疹(ふうしん)症候群とは、風疹ウイルスに免疫のない妊婦が妊娠初期に風疹にかかることにより、胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に多様な形態異常や障害を生じる先天異常症。

発疹性の皮膚伝染病である風疹(三日ばしか)を発生させる風疹ウイルスが原因で、1941年にオーストラリアの眼科医グレッグが初めて報告しています。

形態異常や障害の程度とその頻度は、風疹ウイルス感染と妊娠の時期の関係によります。妊娠1カ月以内に風疹にかかると約50パーセント、妊娠3カ月以内の場合は約20パーセントの確率で、先天性風疹症候群の新生児が生まれます。妊娠6カ月をすぎれば、胎児に感染は起こっても、先天性風疹症候群は出現しなくなります。

低出生体重のほか、形態異常や障害には、生後一過性に認められるものと永久障害を残すものとがあります。生後一過性に認められるものとしては、血小板減少性紫斑(しはん)病、肝脾腫(かんひしゅ)、肝炎、溶血性貧血、大泉門膨隆(だいせんもんぼうりゅう)、間質性肺炎などがあります。

永久障害を残すものとしては、眼球異常、心臓の奇形、聴力障害、中枢神経障害などがあります。眼球異常には白内障、緑内障、網膜症、小眼症、心臓の奇形には動脈管開存症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、肺動脈狭窄(きょうさく)症、聴力障害には感音性難聴、中枢神経障害には精神発達遅延、脳性まひ、小頭症、水頭症などがあります。

こうした先天性風疹症候群の新生児は1965年に、沖縄県で400人以上生まれました。また、1977~79年の全国的な風疹の大流行の際は、影響を恐れた多くの妊婦が人工妊娠中絶をしました。最後の全国規模の風疹流行の1993年以降は、先天性風疹症候群の発生数も対応して減少しています。

先天性風疹症候群の症状に気付いた際は、ウイルス感染症を専門とする小児科医に相談してください。

先天性風疹症候群の検査と診断と治療

ウイルス感染症を専門とする小児科医による診断は、咽頭(いんとう)ぬぐい液など患児の検体からのウイルス分離、患児血清からのIgM高値、風疹特異的IgM抗体の確認が大切です。

先天性風疹症候群の治療は、それぞれの形態異常や障害に対して行うことになります。例えば、心臓の疾患は軽度であれば自然治癒することもありますが、手術が可能になった時点で手術をします。白内障についても手術可能になった時点で、濁り部分を摘出して視力を回復します。摘出後、人工水晶体を使用することもあります。いずれにしても、遠近調節に困難が伴います。感音性難聴については人工内耳が開発され、乳幼児にも応用されつつありますが、従来は聴覚障害児教育が行われてきました。

何よりも大切な予防法は、幼児期に風疹ワクチンの接種を受け、風疹ウイルスに対する免疫性を持つ抗体を作っておくことです。

風疹ワクチンの接種の対象は1977年から94年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから風疹や麻疹にかからないようにするためです。

2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸して1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。

現在、妊娠を望むものの風疹抗体がないか少ない成人女性も、積極的に麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種を受けることが望まれます。ただし、妊婦の風疹ワクチン接種は禁忌で、風疹ワクチン接種後2~3カ月間は妊娠を避けることが望ましいでしょう。風疹抗体がないか少ない女性が妊娠した場合、風疹の流行期は特に注意が必要で、抗体価検査を定期的に行い、経過観察を続ける必要があります。

身近に妊娠を望む女性がいる場合、麻疹・風疹混合ワクチン未接種で風疹にかかったことがない成人の男性も、ワクチンを接種して予防することが望まれます。

🇳🇦先天性副腎過形成症

男性ホルモンが過剰に分泌するために、男性化症状を起こす疾患

先天性副腎(ふくじん)過形成症とは、副腎皮質から男性ホルモンが過剰に分泌するために、男性化症状を起こしてくる疾患。

副腎皮質からは、コルチゾール(糖質ホルモン)とアルドステロン(鉱質ホルモン)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンもわずかに分泌されています。先天性副腎過形成症では、副腎皮質の働きの異常により、コルチゾールの合成に必要な酵素が生まれ付き欠けているために、下垂体(脳下垂体)から副腎皮質刺激ホルモンが多量に出るようになり、副腎が過形成を起こします。その結果、アンドロゲンが過剰に分泌されるようになります。

コルチゾールの合成にかかわる酵素は数種類あり、欠ける酵素の種類により疾患のタイプが5種類に分けられ、症状も少しずつ違っています。いずれも常染色体劣性遺伝による異常です。日本では、21ー水酸化酵素の欠損が最も多く認められます。
 
男女にかかわりなく、先天性副腎過形成症は発生します。女児では、陰核の肥大や陰唇の癒合がみられ、性器はどちらかというと女性よりも男性的な外見になり、男児と間違えられることが多いものです。子宮、卵巣、卵管などの生殖器官の構造は、正常です。

成長するに従って男性化が顕著になり、成人の女性では、ひげが生え、手足の毛が濃くなり、陰核が大きくなり、声変わりや月経不順、不妊、乳房の委縮が起こります。

男児では、出生時には特に異常はみられませんが、幼少時から陰茎が発育し、陰毛が生えて声が太くなります。男女児とも、早い時期に発育が停止します。

また、先天性副腎過形成症の中でも重症のタイプでは、新生児期から副腎不全が発生します。嘔吐(おうと)、脱水、酸・塩基などの電解質の異常、不整脈などの症状が現れ、適切な治療をしないと生後数日で死亡します。

なお、家系に先天性副腎過形成症の遺伝がある人や、先天性副腎過形成症の子供を持つ人には、内科、ないし小児科で遺伝相談を受けることが勧められます。

先天性副腎過形成症の検査と診断と治療

現在日本では、21ー水酸化酵素欠損症を見付けるため、新生児の先天代謝スクリーニング検査(ガスリー検査)を行っており、全員が出生した医療施設で検査を受ける体制ができています。尿中の副腎皮質ホルモンと、その代謝物質を測定することで、どの酵素が欠けたのか推定することができます。症状の軽い不完全型の先天性副腎過形成症の場合は、副腎皮質刺激ホルモンの負荷後にこれらを調べることで、ようやく診断できることもあります。

内科、ないし小児科の医師による治療の目的は、分泌が低下したコルチゾールやアルドステロンを補い、アンドロゲンの値を正常に戻すことです。下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンが出すぎないように、副腎皮質ステロイド剤の一種であるコルチゾンを投与します。この投与は生涯に渡って必要です。

女児で陰核の大きいものや、陰唇の閉鎖がみられるものは、1~3歳の間に形成手術を行って、形状の異常を矯正します。

>子供が先天性副腎過形成症を持つ両親は、副腎皮質ステロイド剤の飲み方と副作用について説明を受けて下さい。けがや発熱で強いストレスを受けた時は医師に報告し、薬の量を増やしてもらいます。副腎皮質ステロイド剤の服用を突然やめると、急性副腎不全を起こしますので、注意が必要となります。

🇳🇦睡眠相後退症候群

夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計が固定されている睡眠障害

睡眠相後退症候群とは、夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計がセットされている睡眠障害。概日リズム睡眠障害とも呼ばれています。

毎日の生活習慣の中で、この時間までに眠りたいと望む時間には眠ることができず、そのため、朝は起きなければいけない時間に目覚めることができません。しかし、休日や起きる時間がふだんより遅くてもよい日には、必要な睡眠時間が経過した後に自然と、すっきりと目覚めることができます。

つまり、体内時計(サーカディアンリズム)が他の人より後ろへずれた状態で固定されて、狂ったまま24時間のリズムを刻んでいるのです。

体内時計を正常な状態に戻すことが難しくなってしまう病理的な原因は、はっきりしていません。体の中にいくつも存在している体内時計を同調させる機能が正常に働いていないことが、誘因の一つと推測されています。

パソコンやテレビなど体内時計のリズムを狂わせてしまう強い光を夜遅い時間まで浴びていたり、知らないうちに毎日かなりの量のカフェインを摂取していたり、太陽の光を浴びることのないい生活が長いなど、体内時計の調節機能を阻害する要素が多い生活習慣を送っていることが、誘因になっているとも推測されています。

正常な人の場合、夏休みなどの長期休暇の間に少しずつ体内時計が遅れてしまっても、数日間、早寝早起きをすることで、苦痛なく体内時計を修正することができます。しかし、睡眠相後退症候群と見なされる人は、体内時計が送れた状態が2週間~1カ月以上も続き、修正しようとしても修正できません。

また、起きなければいけない時間に無理に早起きしても、体内時計は後ろへずれたままなので、頭がボーっとしたり、集中力が続きません。次第に朝起きることができなくなり、学校や会社に遅刻したり、欠席、欠勤するといった状態に陥ってしまうこともあります。

体内時計のリズムが後ろへずれて固定された状態になっていると、朝起きるのは苦痛だし、日中眠気を感じるしと睡眠不足状態になりがちですが、睡眠相後退症候群は夜間眠れない不眠症ではありませんので、睡眠導入剤や睡眠薬など眠気を誘う薬では改善することができません。

さらに、日中の眠気を追い払うために、コーヒーや栄養ドリンクなどカフェインを多く含んでいるものを飲んでいると、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌が乱れてしまう結果、体内時計が正常に戻りにくくなります。

自分でできる対策としては、生活習慣の改善による時間療法が有効です。夜は早く眠るための工夫をし、朝起きた時には太陽の光をしっかりと浴びる習慣をつけます。例えば、眠くなるための工夫として、食事は目標とする就寝時間の3時間前までにすませる、入浴は目標時間の1時間~30分前までにすませる、就寝30分前から部屋の明かりを落としてリラックスするなどがあります。目標とする起床時間には、カーテンを開けて太陽の光を部屋に取り込むように工夫します。

専門の病院などで行われ高照度光療法も、睡眠相後退症候群の治療として有効です。毎日決まった朝の時間帯に太陽の光と同じ効果のある光を照射することで、メラトニンタイマーをリセットさせ、体内時計を早送りして調整する方法です。その際には、眠りのパターンやリズムを日誌などに書き留めておくことで眠りの状態を把握し、きちんと決められた期間続けることが必要です。

眠気を催すメラトニンの分泌量や働きが低下している場合には、メラトニンやギャバ(GABA)、ビタミン剤などといった薬を併用することもあります。

これらの治療でいったん睡眠時間帯が正常化しても、不規則な生活をすると再び入眠時間が遅れてしまうことが多いので、睡眠時間帯が安定するまで休日に夜更かししないように生活習慣を見直すことも大切となります。

🇿🇦水無脳症

脳の先天的な発育不全により、大脳半球が高度に欠如する奇形症

水無脳症(すいむのうしょう)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨(とうがいこつ)半球は形成されるものの、大脳半球が高度に欠如する奇形症。水頭症性無脳症とも呼ばれます。

人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。

水無脳症は、胎児期に内頸(ないけい)動脈に形成不全が起こって、閉塞(へいそく)するために起こります。血液が供給されないために、一度は形成されたはずの大脳が突然退化したり、発育が止まったりして欠如し、本来あるべき部位は脳脊髄液を満たして極めて大きくなった脳室が占め、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の遺残物が薄い膜様物となって、脳室を覆います。大脳の欠如は、本来なら前大脳動脈、中大脳動脈から血液の供給を受ける部位に発生する傾向があります。

通常、小脳および延髄などの脳幹は正常に発育し、頭蓋円蓋部を覆う髄膜、骨、皮膚も正常に発育します。

原因については、詳しく解明されていません。遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。

この水無脳症の胎児は、多くが死産します。出産した場合は、平均寿命3歳とされているものの、10歳を超えて生存するケースもあります。

生まれ付き水無脳症を持って生まれた乳児の症状としては、一般的な頭囲の成長の範囲を超えて頭が異常に大きくなることです。

いくつかの骨が結合してできている頭蓋骨は、生まれてしばらくの間、骨同士の結合が弱く、軟らかく組み合わさっています。水無脳症の乳児は、脳脊髄液が頭蓋内に余分にたまって極めて大きくなった脳室の圧力によって、頭蓋骨を押し広げる状態が続く結果、頭が異常に大きくなることが起こります。

嚥下(えんげ)、唾液、呼吸、循環、消化の中枢を担っている延髄は正常に発育しているため、心臓を動かす、呼吸をするなどの生命維持に関しては支障はなく、嚥下や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。

しかし、大脳が高度に欠如しているため、空腹や痛みを訴えることがあっても、人間としての感情を欠きます。乳児の正常な発達は、不可能です。

水無脳症の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断では、妊婦の出生前の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、水無脳症の診断がつくことがあります。

胎児が水無脳症と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。

出生後は、神経学的検査を行うと、異常がみられます。頭部の外観からは正常に見えますが、懐中電灯を頭に当てる透光試験を行うと、頭蓋内全体を光が透過します。診断の確定には、超音波検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI検査を行います。

産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら水無脳症の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。

脳外科、脳神経外科の医師による治療では、頭部の拡大が過度の場合に、シャントと呼ばれる手術を行います。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シリコンでできたシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、脳内と腹部をつなぎ、脳脊髄液を流す仕組みを作ります。

🇿🇦スウィート病

発熱とともに、痛みを伴う隆起性の紅斑が急に発生する疾患

スウィート病とは、急な発熱、痛みを伴う隆起性の紅斑(こうはん)、血液中での好中球の増加を特徴とする炎症性の疾患。難治性の皮膚疾患で、急性熱性好中球性皮膚症とも呼ばれます。

 1964年、イギリスの皮膚科医であるスウィート氏が初めて報告しました。原因は、細菌などに対して、白血球の一種である好中球の機能が高まって生じる過敏反応と考えられます。

約20パーセントのケースで、血液疾患や悪性腫瘍(しゅよう)を伴います。特に白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患を伴うことが多く、関節リウマチや膠原(こうげん)病を始めとする自己免疫性疾患を伴うこともあります。内臓病変と関係する皮膚変化を意味するデルマドロームの一つと考えられています。

上気道感染、いわゆる風邪に似た症状が先行して現れ、数日から数週間で39度前後の発熱とともに顔、首、四肢に、境界がはっきりした、周囲から隆起した紅斑、または毛穴の炎症である毛嚢(もうのう)炎に似た丘疹(きゅうしん)が多発します。

紅斑の大きさは1センチから3センチで、しばしば痛みや圧痛がみられます。紅斑の上に、水膨れや、膿(うみ)を持った水膨れである膿疱(のうほう)を伴うこともあります。

色調は鮮紅色ですが、経過とともに暗紅色ないし紫紅色に変わります。治療をしないと、高熱が続き、紅斑が小さくなったり大きくなったりを繰り返します.

スウィート病の症状に気付いた場合、できれば入院可能な病院の皮膚科を受診することが勧められます。スウィート病が治った後に、白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患が発症することがあり、注意が必要です。

スウィート病の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を行い、真皮に好中球やその核の破片が密に浸潤していること、血管炎がないことを確かめます。

血液検査を行うと、好中球を主体とする白血球数の増加、赤沈(血沈)やCRPなどの炎症反応の高進が認められます。CRPは蛋白( たんぱく)質の一種で、体内に炎症が起きたり組織の一部が壊れたりした場合に、血液中に現れます。

時に、原因不明の膠原病類縁疾患であるベーチェット病などとの区別が難しいことがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、軽症の場合、非ステロイド系消炎鎮痛剤などの内服を行います。一般的には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の点滴注射、または内服を行います。ヨウ素を補給するヨードカリや、皮膚の組織を守るDDS(レクチゾール)も、多くの症例で有効です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...