2022/08/10

🇮🇳内耳炎

中耳炎の炎症が鼓膜より奥にある内耳に広がることで炎症が起こる疾患

内耳炎とは、主に中耳炎の炎症が鼓膜よりもさらに奥にある内耳に広がることで、炎症が起こる疾患。

耳は、外耳、中耳、内耳の3つの部分からできています。外耳は、体の外に出ている耳介と外耳道とを合わせた部分を指します。その奥の中耳には、鼓膜、耳小骨、中耳腔(くう)などがあり、音を伝える要所です。中耳のさらに奥にある内耳には、平衡機能をつかさどる三半規管と耳石、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)などがあります。

内耳炎は、三半規管や蝸牛に炎症が生じ、機能が低下するために起こります。一般には、急性中耳炎や、慢性化膿(かのう)性中耳炎、真珠腫性中耳炎などの慢性中耳炎の炎症が、内耳へと波及することで起こります。

急性中耳炎によって炎症が内耳へと波及した場合には、難聴や耳鳴り、回転性のめまい、吐き気、嘔吐(おうと)といった激烈な症状が出ます。平衡感覚や回転感覚が強く障害され、もはや真っすぐに歩くことはできません。

好酸球性中耳炎などの慢性中耳炎によって炎症が徐々に内耳へと波及した場合には、耳鳴りや進行性難聴、軽度のめまい、ふらふら感といった症状を示します。さらに症状が進行すると、黄色もしくは白色の耳垂れが出るようになります。これは、細菌感染による膿(うみ)が原因です。

また、髄膜炎が内耳道を経由して広がって内耳炎が起こった場合は、重度の難聴を来します。

炎症が内耳に広がる経路としては正円窓や卵円窓、外側半規管、内耳道の4つがあり、そのほかの経路はまれです。真珠腫性中耳炎が原因の場合は、内耳の骨が破壊され中耳の炎症が内耳に波及することで起こります。

急性中耳炎では耳が痛くなります。それに引き続いてめまいや強い難聴が起こったら、急性内耳炎と見なされますので、耳鼻咽喉科の専門医を受診します。

また、慢性中耳炎がある場合には長期にわたって放置せず、内耳に影響が出ないうちに受診します。抗生物質の普及によって通常の中耳炎から内耳炎まで進行する例は激減しましたが、現在でも好酸球性中耳炎では内耳炎が起こることがよくあります。

内耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、難聴がある場合には聴力検査、めまいがある場合には平衡機能検査を行います。

平衡機能検査では、めまいが起こる頭の位置で、眼球が不随意に小刻みに揺れ動く自発眼振(がんしん)が認められることがよくあります。また、外耳道に冷たい水や温かいお湯を入れると、内耳の三半規管が刺激されて眼振、めまいが起きる温度眼振反応が低下していることもあります。外側半規管が壊れているために、耳の入り口を指で圧迫したり離したりすると、めまいが起きる瘻孔(ろうこう)症状があったりすることもあります。

耳のCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査による画像診断も、有効です。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、細菌感染による炎症の場合には、抗生物質を用いて中耳炎と内耳炎を同時に治療します。内耳の機能低下に対しては、ビタミン剤やステロイド剤を用いて対処します。

真珠腫性中耳炎などの慢性中耳炎が基礎疾患である場合には、抗生物質を用いて炎症を抑えながら、内耳の骨が破壊されているケースでは、鼓室形成術という手術によって外科的に治療します。また、外側半規管などに内耳瘻孔という管状の欠損があるケースでは、破壊された骨を修復して瘻孔を閉鎖する処置を講じます。

髄膜炎による内耳炎の場合も、基本は抗生物質で治療します。この場合、早期に適切な治療が施されないと、難聴などの後遺症が残ることがあります。

🇮🇳特発性正常圧水頭症

頭蓋内の圧力が上がった症状を示さず、明らかな原因が不明な水頭症

特発性正常圧水頭症(すいとうしょう)とは、脳の内側にある脳室が拡大しているにもかかわらず、頭蓋(とうがい)内の圧力が正常範囲内で、明らかな原因が不明な水頭症。

水頭症自体は、脳の中や脊髄(せきずい)の表面を流れる脳脊髄液(髄液)が頭蓋内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなり、周りの脳を圧迫する疾患です。

脳脊髄液は、脳全体を覆うように循環して脳保護液として働き、脳を浮かせて頭部が急激に動くことによる衝撃を柔らげたり、部分的な脳の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。脳室で血液の成分から1日約500ミリリットル産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環し、最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。

水頭症では、この脳脊髄液の産生、循環、吸収などいずれかが障害されることで、頭蓋内の圧力が高まり、さまざまな症状が出ます。

大きく分けて、胎児期に障害が生じる先天性水頭症と、生後に脳腫瘍(しゅよう)、がん、細菌・ウイルス・寄生虫などの感染で起こる髄膜炎、頭部外傷、脳動脈瘤(りゅう)の破裂や高血圧が原因で起こる脳内出血、脳室内出血、脳室内腫瘍などによって起こる後天性水頭症があります。

後天性水頭症では、脳圧が正常であるにもかかわらず症状が出現する場合もあります。これが正常圧水頭症であり、さらに、くも膜下出血、髄膜炎などといった明らかな原因がある続発性(症候性)正常圧水頭症と、明らかな原因が不明な特発性正常圧水頭症に分けられます。

特発性正常圧水頭症は、高齢者に多く発症し、その症状が認知症と混同されやすいことがあります。物忘れ外来を受診する人の3パーセント程度、認知症と診断されている患者の5〜6パーセントで、特発性正常圧水頭症が疑われるといわれています。早期に適切な治療を受ければ、症状が改善する可能性が高いため、特発性正常圧水頭症は「治る認知症」ともいわれています。

特徴的な症状は、歩行障害、認知障害、尿失禁の3兆候。発症者の約60パーセントに3兆候がみられますが、ほかにも表情が乏しくなったり、声が出にくくなったりすることもあります。

3兆候では、最初に歩行障害が現れることが多いとされます。足を左右に広げ、すり足や小刻みな歩き方になるのが特徴で、方向転換などでバランスを崩して転倒しやすくなるほか、次第に第一歩が出なくなり、立っていたり座っていたりする状態を維持できなくなります。

認知障害では、思考や行動が緩慢になり、放置すると物忘れがひどくなって、興味や関心の低下、さらには無反応へと進行します。アルツハイマー病のように、自宅から勝手に出てしまい近所をウロウロするような徘徊(はいかい)は認めません。また、パーキンソン病のように、手の震えは出ません。

尿失禁には、歩行障害や認知障害も影響しており、尿意切迫感や頻尿が出現することもあります。

特発性正常圧水頭症の診断は、神経を専門とする内科や脳外科、脳神経外科が行います。歩行の不自由さに、物忘れとトイレの問題などが加わって疾患が進行してしまうと、治療効果が少なくなりますので、早めの受診が勧められます。

特発性正常圧水頭症の検査と診断と治療

内科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行います。脳脊髄液のたまりと脳室の拡大が確認できれば正常圧水頭症が疑われますが、アルツハイマー病などとの鑑別が難しい場合もあり、両者が併存することもあります。

そのため、腰椎(ようつい)から髄液を20〜30ミリリットル抜き取って症状の変化を調べるタップテスト(髄液排除試験)を行います。タップテストによって、症状が1~2日程度で軽くなれば、手術で改善する可能性が高いと考えられます。そのほか、頭蓋内圧測定、脳血流測定などを行うこともあります。

内科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、タップテストで髄液を抜き取って反応があった場合は、シャントと呼ばれる手術を行います。

本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シリコンでできたシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ余分な脳脊髄液を半永久的に流す仕組みを作ります。もしくは、できるだけ脳を傷付けないために、腰椎から腹腔へシャントチューブを通して、余分な髄液を半永久的に流す仕組みを作ります。

脳脊髄液(髄液)を流しすぎると頭蓋内出血を来すことがあるため、シャントチューブには流れる量を調整する圧可変式バルブと呼ばれる部分がつけられます。

シャント手術後の特発性正常圧水頭症で示している症状の改善度は、治療の時期や症状の程度によって異なります。歩行障害で60〜90パーセント、認知障害で30〜80パーセント、尿失禁で20〜80パーセントとされますが、中には劇的に回復する例もあります。一般的には、最も改善しやすいのは歩行障害で、次いで尿失禁、記憶障害の順です。

手術後の合併症として、脳を覆う硬膜下血腫などのリスクはありますが、シャント手術自体はそれほど難しい手術ではありません。

3兆候が軽くなれば、日常生活の質(QOL)が向上して家族の負担も軽減されます。治療を受けた後は、定期的な医師の診察を受けることが必要です。

🇻🇳特発性脱疽

手足の指の動脈が詰まって、指が腐ってくる疾患

特発性脱疽(だっそ)とは、手足の爪(つめ)の周りや指の間に、治りにくい傷ができて、ひどくなると足の指が腐ってくる疾患。最初に報告者したアメリカ人の名前からバージャー病とも、閉塞(へいそく)性血栓血管炎とも呼ばれます。

体の組織の一部が生活力を失う状態を壊疽(えそ)または脱疽といいますが、このような病変が手足の指に起こるのは動脈が詰まるためです。特に膝(ひざ)から下の足と腕の動脈が、原因不明の炎症によって血管の壁が厚くなり、血流障害ができるために、そこで血液が固まり、詰まってきます。

原因は不明ですが、発症には喫煙が深く関係していて、たばこをやめると疾患が進行しない特徴があります。一説によると、原因は口腔内の細菌、特に歯周病菌によるという可能性が指摘されています。発症者数は、日本国内で推定約1万人。男女比は10対1と男性が多く、20〜40歳代を中心に発症しています。

症状としては、膝の下の血管が詰まった場合、足先が腐ってきます。ほとんどの場合、両方の足先に病変が出現します。腕の動脈が詰まれば、手の指に壊疽が出現します。

壊疽は血管に閉塞性の病変が起きた後、数年間この閉塞に近い状態が続いた場合に起こるので、特発性脱疽の始まりの血管炎では、指先のしびれ感、冷感として自覚されます。進行すると、長い距離を歩くと痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を生じます。さらに進行すると、手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って赤く腫(は)れ、安静にしていても激しく痛み、壊疽の状態となります。

動脈硬化によって下肢の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症も、特発性脱疽と同じような症状を来しますが、閉塞性動脈硬化症は高齢者に多く、40歳以下の青年や壮年にはほとんど発症していません。

特発性脱疽の検査と診断と治療

検査をすると、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、下肢虚血の重症度の判定に役立ちます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。血液検査では、特徴的な所見はありません。

壊疽、脱疽というと、すぐに手足の切断を思い浮かべる人が多いようですが、傷が治りにくくても、疾患が指先などに限られている間は治療が可能です。

薬物療法としては、血液の循環を改善して血栓を予防するために、血管拡張薬や抗血小板薬が用いられます。重症例に対しては、多くの場合、詰まっている動脈を元通りに開通させることは不可能ですが、閉塞している部位の状態によって可能であれば、バイパス手術などの血行再建を行います。

バイパス手術が適さない場合は、交感神経を切除することによって、末梢(まっしょう)血管を拡張させ、血流をよくすることを目的に交感神経節ブロックが行われています。足の場合には腰の交感神経、手の場合には胸の交感神経を手術で切除します。壊疽が進行して各種の治療が無効な場合には、手足の切断が必要になります。

治療後の生活上の注意としては、手足の保温と清潔を心掛けます。傷を付けると、壊疽の再発の引き金となりますので、靴下を履く、靴擦れを起こさないように大きめの靴を履くなど、注意が必要です。散歩などの適度な運動は、お勧めです。また、この特発性脱疽はたばこを吸う人の発症率が高いので、禁煙を守ることも必要です。

発症した人のうち、多くは動脈の病巣は詰まったままの状態で、血行再建のバイパス手術などができるのはごく少数です。しかしながら、日ごろの注意をよく守れば、疾患の進行を食い止め、再発を減らすことができます。直接、生命に関係するような大切な臓器である心臓、脳、内臓などの動脈が侵されることはありません。予後も同年代の健常者と変わりありませんが、手足の切断を必要とすることもあり、生活の質(QOL)が脅かされることは否めません。

🇻🇳特発性慢性胃炎

胃の炎症が慢性的に起こるものの、原因の特定が難しい疾患

特発性慢性胃炎とは、原因または原因との関連が不明なままに、胃の内側に炎症が慢性的に起こる疾患。突発性慢性胃炎とも呼ばれます。

慢性胃炎には、随伴性慢性胃炎もあり、こちらは胃がんや胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍などの疾患に伴って、胃の内側に炎症が慢性的に起こる疾患です。

特発性慢性胃炎は、さらに表層性胃炎、委縮性胃炎、肥厚性胃炎の3つのタイプに分類されます。

表層性胃炎は胃の粘膜の表面だけに炎症が起こる疾患

表層性胃炎は、胃の粘膜の表面に慢性の炎症が起こる疾患。

慢性胃炎の初期症状ともいえる状態で、胃腺(せん)の委縮はあまり目立たず、胃の出口近くの粘膜の表面にびらんやむくみ、発赤などの症状がみられるのが特徴です。

飲酒やたばこ、香辛料の摂取、熱いものの刺激、薬物による刺激が原因になるほか、感染したピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に対して、人体の免疫が反応している状態であるために炎症が起こっているのが原因の場合もあります。また、表層性胃炎は不安やストレスなどの精神的な状態との関連もあるようです。

胃の粘膜の表面のみの炎症ですから、それほど症状は強くなく、自然と改善していく場合もあります。しかし、そのまま進行して長期化してくると、胃粘膜は次第に委縮し、胃液(胃酸)や粘液を分泌しない状態になり、委縮性胃炎になってしまう恐れがあります。

表層性胃炎はどちらかといえば若い人に多く、胃に不快感があり、胃もたれを起こしたり、食後に腹痛を起こすことがあります。場合によっては、胃潰瘍と同様に空腹になると胃に痛みを感じたり、重苦しさが起こってくることがあります。食事をすると軽減されますが、げっぷや胸焼けなどを伴うこともあります。

胃の炎症症状の強い時には、食欲不振に陥ることもありますし、吐き気を覚えることもあります。このような症状は、1〜2年に及ぶこともあります。

委縮性胃炎は慢性的な胃の炎症により胃の粘膜が委縮する疾患

委縮性胃炎は、慢性的な胃の炎症によって、胃液を分泌する胃腺の部分の粘膜が委縮していく疾患。

胃粘膜の委縮の度合は人によってさまざまで、胃の一部しか委縮してない人から、胃全体まで委縮している人もいます。

委縮性胃炎の経過はまず、胃の粘膜が赤く痛んだ状態になることから始まり、胃の粘膜の細胞が次第に少なくなって、胃液(胃酸)を分泌する力が次第に衰えていきます。さらに進行すると、粘膜の性質が変わって、腸の粘膜に近いような細胞に姿を変えます。これを腸上皮化生(じょうひかせい)といい、委縮性胃炎の最も進行した病態です。

A型胃炎(自己免疫性胃炎)は、胃の真ん中の部分を中心として、広い範囲で委縮が広がり、主に胃液を出す壁細胞という細胞が減っていきます。その進行した病態は腸上皮化生で、自分の細胞に対する抗体ができることによる疾患であり、一種の自己免疫疾患です。

悪性貧血という貧血を伴い、カルチノイドという腫瘍(しゅよう)を誘発しやすいのも特徴です。このタイプは、海外に比較的多く、日本では非常にまれだと見なされています。

その一方で「自己免疫性胃炎」の原因は不明で、こちらもピロリ菌が関わっているのでは、という意見もありますが、どちらかといえば少数派です。

B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)は、ほとんどの場合、委縮が胃の出口の付近から始まり、進行とともに、次第に胃の上のほうへと上がっていきます。進行すると、胃の全体に広がり、腸上皮化生がみられるようになります。

委縮の進行した粘膜には遺伝子異常が起こり、これが胃がんの大きな原因となるのも特徴です。このタイプが、日本人の委縮性胃炎の大部分を占めます。

B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の原因の大部分は、ピロリ菌の感染であると見なされています。

人間の胃にピロリ菌が感染すると、まず表面が赤くはれるようなタイプの胃炎が起こります。その中には潰瘍化するものもあり、しばらくすると、胃の出口から胃の細胞の減少、すなわち委縮が始まります。

さらに進行すると、胃の粘膜の細胞に遺伝子異常が起こり、腸上皮化生が起こります。この腸上皮化生が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下します。

ピロリ菌は胃粘膜の環境に適合しているので、委縮性胃炎が高度になると、ピロリ菌はかえって減少し、時には胃の中からいなくなります。つまり、委縮性胃炎の原因はピロリ菌なのですが、進行した委縮性胃炎では、往々にしてピロリ菌は見付からないことがあるのです。

ピロリ菌の感染から数十年を掛けて、委縮性胃炎が発生し、それからさらに十数年を経て腸上皮化生が生じるというのが、一般的な時間経過と考えられています。従って、高齢者に多くみられ、食欲不振、食後のもたれ、上腹部の張りを覚える人もいます。

肥厚性胃炎は胃の粘膜表面が正常より厚くなった状態

肥厚性胃炎は、胃の粘膜の筋肉が緊張して、胃の粘膜表面が正常より厚く、硬くなった状態。慢性肥厚性胃炎とも呼ばれます。

この肥厚性胃炎では、胃液やその中の胃酸の分泌が増加し、過酸症がみられることがあります。原因の多くはピロリ菌の感染と考えられていますが、病態は完全には解明されていません。

症状としては、みぞおちから胸にかけて焼けるような不快感がある胸焼け、げっぷ、胃の酸っぱい液体が口まで逆流してくる呑酸(どんさん)、空腹時の胃の痛み、胃もたれなどの症状が現れます。大きな自覚症状が出ない場合もあります。

肥厚性胃炎に過酸症を伴う場合は、酸度の高い胃酸が食後に大量に分泌されることが一般的なため、食後1~2時間で胸焼け、げっぷ、呑酸の症状が現れます。また、食べ物が胃に入っていない空腹時に胃液が大量分泌し、とりわけ夜間に分泌量が増える傾向がある過酸症を伴う場合は、空腹時の胃の痛み、胃もたれ、食欲減退などの症状が現れます。

これらの症状は肥厚性胃炎だけではなく、十二指腸潰瘍、食道がん、胃がんなどでもみられる症状なので、検診などで肥厚性胃炎が発見された際には、消化器科、消化器内科、内科を受診することがお勧めです。

特発性慢性胃炎の検査と診断と治療

表層性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃の出口近くの粘膜に多数のびらんやむくみ、発赤が観察されます。正確な診断には、組織の一部を採取して調べる生検による病理学的検索が必要です。 組織を調べると、原因となるピロリ菌がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科、内科の医師による治療では、症状がみられるようであれば、胃液の分泌を抑える制酸剤や抗コリン剤(自律神経遮断薬)を使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

薬の効果によって一時的に回復しますが、炎症が治まっていなければ、薬の服用をやめれば再発することも考えられます。薬の服用が必要だと判断された場合では、医師の指示を守り正しく服用することが必要です。

日常生活では、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。ストレスを改善する方法も見付けましょう。

委縮性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、内視鏡で胃の粘膜の状態を見て、委縮しているかどうか判断します。通常の粘膜であれば胃の血管は見えませんが、委縮している場合は粘膜が薄くなり、胃の血管が黄色っぽく見えてきます。

消化器科、内科の医師による治療では、委縮してしまった粘膜を元に戻す画期的な方法はありません。ピロリ菌が原因のB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の場合は、除菌という方法があります。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べ、陽性の場合は、除菌すれば胃の壁の状態が回復し、胃液分泌も元に戻ります。しかし、除菌したからといって、委縮が治るわけではありません。

胃がんを発症した人はほぼ100パーセントがピロリ菌に感染していたことがわかっており、ピロリ菌の除菌をすれば、胃がんのリスクの減少につながります。もちろん、ピロリ菌に感染している人がすべて胃がんになるわけではなく、1000人の陽性者のうち胃がんを発症する人は2~3人にすぎません。

除菌だけで、すべてが解決するわけでもありません。委縮性胃炎の状態では、胃液の分泌が少ないため、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。

委縮性胃炎を持っている人は胃がん発症のリスクが高くなりますから、最低でも年に一度の内視鏡検査は必ず受けることも大切です。委縮の程度が軽度であれば、少し間隔を空けても構いませんが、中等度から重症といわれている場合は、定期健診は欠かせません。

たとえ胃がんが発生したとしても、早期発見ならば内視鏡による胃粘膜切除手術で、簡単に切除することができます。早期の胃がんの5年生存率は90パーセント以上と高くなっています。

肥厚性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科などの医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃粘膜の筋肉の緊張による粘膜表面の肥厚が観察されます。

また、胃内視鏡検査の時に胃粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、原因となるピロリ菌がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科などの医師による治療では、胃の粘膜の状態に応じて、胃の中に放出された胃酸を中和する制酸剤や、胃酸の分泌を減少させる抗コリン剤(自律神経遮断薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを使用します。

食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

ピロリ菌が胃に感染している場合には、根本的な治療の見地から、抗生物質(抗菌剤)の投与によるピロリ菌の除去が選択肢の一つになります。

ピロリ菌に対しては、2~3種類の抗生物質を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。

肥厚性胃炎、過酸症において日常で注意することは、脂肪食、香辛料、コーヒー、炭酸飲料、漬物、アルコール、たばこなどの胃酸の分泌を促進するものと、精神的疲労によるストレスを避けることです。ストレスがあると、血流が悪化し胃粘膜の防御機能が低下します。

🇧🇷特発性門脈圧高進症

腸から肝臓につながる血管内で、血圧が上昇

特発性門脈圧高進症とは、腸から肝臓につながる血管である門脈や肝臓に特別な病変が存在しないにもかかわらず、門脈から枝分かれした血管内で、血圧が異常に高くなる状態。これに伴って食道静脈瘤(りゅう)、胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)、腹水など、二次的な症状が現れます。

大静脈である門脈には、腸全体を始め、脾臓、膵臓(すいぞう)、胆嚢(たんのう)から流れ出る血液が集まります。門脈は肝臓に入ると左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。血液は肝細胞との物質の交換を行った後は、末梢(まっしょう)の肝静脈に流れ出して、大きな3本の肝静脈に集められ、さらに下大静脈を介して体循環に戻り心臓へと向かいます。

門脈の血圧、すなわち門脈圧の高進により、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回(うかい)するルートが形成されます。この側副血行路と呼ばれるバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入り込むようになります。

側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、時に大出血を起こし、吐血や下血などの症状が現れます。

側副血行路はへその周辺部や直腸で発達することもあり、胃の上部にできた静脈瘤も出血しやすく、時には大出血となりますし、直腸にできた静脈瘤もまれに出血することがあります。

脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の高進はしばしば脾臓のはれを引き起こします。脾機能高進による血球破壊のために、貧血を生じることもあります。蛋白(たんぱく)質を含む体液である腹水が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔(ふくくう)が膨張することもあります。

特発性門脈圧高進症の有病率は、人口100万人当たり約7人と推定されています。欧米より日本にやや多い傾向があり、日本では都会より農村に多い傾向があります。男性より女性のほうが3倍ほど多く、また、発症年齢のピークは40~50歳代といわれています。

正確な原因は不明ですが、中年女性に好発し、血液検査で免疫異常が認められることがあることから、自分自身の体に対して自分の免疫が働く自己免疫異常の関与が推測されています。さらに最近の研究により、血液中の一部のリンパ球の働きの異常が指摘されています。

遺伝性に関して明らかなデータはありませんが、自己免疫異常は一般的に家系内に多発する傾向があることから、何らかの遺伝子異常の関与が否定できません。

特発性門脈圧高進症の検査と診断と治療

内科、消化器科の医師による診断では、肝機能検査を始め、超音波検査、血管造影、CT、MRIなど各種の画像検査により確定します。食道静脈瘤、胃静脈瘤の有無と、その静脈瘤が出血しやすいかどうかを調べるためには、内視鏡検査が最も重要で、早急を要します。

脾腫では、触診で腹壁越しに、はれた脾臓が感じられることから、腹水では、腹部の膨らみや、軽くたたいて打診を行うと鈍い音がすることから確定されます。ごくまれに、腹壁を通して肝臓や脾臓に針を挿入し、門脈内の血圧を直接測定することがあります。

治療では、門脈圧の上昇から生じる二次的な病態である静脈瘤、脾腫、腹水などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。

予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。

静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。

内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路を遮断するのが目的です。静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。

これらの治療には、側副血行路の状態をみるために、血管造影や超音波を用いた検査が行われます。胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓(そくせん)療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。

出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧のほうがはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。

脾腫を伴う場合は脾臓摘出術あるいは脾動脈塞栓術、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。

特発性門脈圧高進症は肝機能は一般に正常のことが多いので、食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば、予後の経過は良好です。

💅時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)

つめが肥大化、変形して指先を丸く包むような状態

時計ガラスつめとは、つめの成長が著しくて湾曲度を増し、指先を丸く包むような状態。ヒポクラテスつめ、時計皿つめとも呼びます。

見た目は、つめの甲が時計の風防ガラスのようになります。さらに変化が強くなると、指の末端も肥大してきて、見た目は、太鼓のバチのような感じになります。

こういう状態は、指の末端の軟部組織にムコ多糖類が沈着するために生じ、肺の慢性疾患である肺がん、肺膿瘍(のうよう)、気管支拡張症、肺気腫(きしゅ)、肺結核などのほか、チアノーゼを伴う先天性心臓疾患および亜急性心内膜炎、甲状腺(せん)機能高進症、肝硬変、潰瘍(かいよう)性大腸炎などの時に、その一症状として現れます。

ほかに、内臓の疾患と関係のない特発性のもの、厚皮骨膜症の一症状として現れる遺伝性のものもあります。

片側だけのつめが肥大化し、変形した場合は、その側の大きな血管に異常があることがあります。

時計ガラスつめの検査と診断と治療

思い当たる疾患がないのに症状が出た場合は、どこか悪いところがあるというサインかもしれないので、早めに病院で診てもらうようにします。

医師による治療では、原因となっている疾患の治療を最優先します。

🟥日本人の人口1億2322万人余、13年連続減少 東京圏も減少に転じる

 総務書jは9日、住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口を発表。日本人の人口は、1億2322万3561人(前年比61万9140人減)で、2009年をピークに13年連続で減少しました。減少数は今の調査が始まった1968年以降最大。東京圏の日本人の人口が、1975年の調査開始以降初めて減少に転じました。

 日本人の出生者数は81万2036人と、調査を始めた1979年度以降で最少、逆に死亡者数は、144万1739人で最多でした。この結果、亡くなった人が生まれた人を上回る「自然減」の数は62万9703人と、14年連続で拡大しました。

 日本人の人口が増加したのは沖縄県のみで、昨年よりも1478人、率にして0・1%の増加となりました。市区部でみると、増加人数ではさいたま市の8031人、増加率では千葉県流山市の2・13%が最多でした。

 東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)、名古屋圏(岐阜、愛知、三重)、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)の「3大都市圏」に住む日本人は、6426万4479人と4年連続で減少したものの、16年連続で全国人口の半数を超えました。

 東京圏の日本人人口は3561万115人(前年比3万4498人減)で、初めて前年比で減りました。東京都も、26年前の1996年以来の減少となりました。

 総務省の担当者は、出生者数から死亡者数を引いた「自然減」が拡大したこと、コロナ禍で国外からの転入が減少したこと、東京都から他県への転出が増えたことなどが要因だとみています。

 2022年8月10日(水)

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...