2022/08/10

🇾🇪肝吸虫症

肝吸虫の寄生によって引き起こされる寄生虫病

肝吸虫症とは、肝吸虫のメタセルカリアが寄生しているコイ、フナ、モツゴなどの淡水魚を刺身、または加熱処理が不十分な状態で食べて、引き起こされる寄生虫病。

肝吸虫は、朝鮮半島、日本列島、台湾、中国南部など極東に広く生息し、東南アジアのベトナムにも生息しています。日本では、八郎潟、利根川流域、琵琶湖湖畔、岡山県の児島湾沿岸、四国の吉野川流域、九州の筑後川流域などに広く生息しています。

淡水魚を刺身や加熱処理が不十分な状態で人が摂食すると、メタセルカリアは人の腸管で幼虫となり、逆行して肝臓内の胆管や胆囊(たんのう)に至り、約1カ月で成虫となります。 成虫は雌雄同体で、平たい柳の葉のような形をしており、体長10~20ミリ、体幅3~5ミリで、20年以上生存することができます。

この成虫は寄生している胆管内などで、1日に約7000個の虫卵を産みます。虫卵は胆汁とともに十二指腸に流出、最終的に糞便(ふんべん)とともに水中に流出しても、孵化(ふか)しません。第1中間宿主(しゅくしゅ)で、湖沼や低湿地に生息する巻貝の一種、マメタニシに摂食されると、消化管内で孵化してセルカリアに成長、さらに第2中間宿主の淡水魚に入り、メタセルカリアに成長します。第2中間宿主となる淡水魚は、コイ科を中心にコイ、フナ、ウグイ、モツゴ、ホンモロコ、タモロコ、タナゴなど約80種を数えます。

軽症の肝吸虫症では通常、無症状に経過します。重症の肝吸虫症になると、腹部不快感、食欲不振、発熱、悪寒、上腹部痛、圧痛を伴う肝腫大(しゅだい)、下痢、軽度の黄疸(おうだん)、および好酸球増加が起こります。慢性に経過すると、胆管炎が肝実質の委縮、門脈線維症、肝硬変に進行することもあり、多量の肝吸虫が胆道を閉塞(へいそく)すると、黄疸が起こります。その他の合併症として、化膿(かのう)性胆管炎、慢性膵(すい)炎、胆管がんが起こることもあります。

肝吸虫症の検査と診断と治療

日本での肝吸虫症はほとんどが軽症ですが、重症の肝吸虫症に気付いた際には、内科、消化器科の専門医を受診します。

医師による診断では、逆行性膵胆管造影、CT、エコーなどで検査すると、胆管の拡張、肥厚像や異常が認められます。糞便あるいは胆汁中から虫卵が検出されれば診断が確定しますが、肝吸虫特異抗体を検出する免疫血清学的診断も有用です。血液生化学検査では、好酸球増多、トランスアミナーゼ、ビリルビンの上昇がみられることがあります。

治療は、吸虫駆除剤のプラジカンテル、またはアルベンダゾールの経口内服で行われます。古くは塩酸エメチン、クロロキン、ジチアザニン、ヘキサクロロフォン、ヘトール、ビレボンなど副作用の強い薬を用いざるを得ませんでしたが、1980年代以降はプラジカンテルの登場によって、1日3回の経口内服のみで根治が可能になりました。アルベンダゾールでは、1日1回、7日間の経口内服で根治します。

胆管が閉塞した場合は、手術を要することがあります。

予防法としては、流行地の河川や湖の淡水魚は十分に加熱調理して食べることに尽き、刺身、酢漬け、ワイン漬けで食べないことです。モツゴやホンモロコ、タナゴ類のような小型のコイ科魚類を流行地で生食するのが最も危険で、コイやフナはモツゴなどに比べるとメタセルカリアの保虫率ははるかに低いものの、刺身などにして生で食べる機会が多いため、用心しなければなりません。

🇾🇪ガングリオン(結節腫)

手の甲などの関節にできる良性腫瘍で、若い女性に多く発生

ガングリオンとは、手の甲などの関節にゼリー状の液体がたまり、円い結節状に膨れる疾患。適当な訳がないためにガングリオンというラテン語がそのまま使われていますが、結節腫(しゅ)と呼ばれることもあります。

男性より女性のほうが発症率が高く、若い女性によく発生します。症状としては、手の甲、手のひら、手首、足首、足底、ひざなどの皮下の関節包、腱鞘(けんしょう)に付着して、こぶ状の腫瘍(しゅよう)ができます。痛みはないことが多く、腫瘍の中にはゼリー状の内容物が入っています。腫瘍の大きさは、米粒大から小豆大までさまざま。

腫瘍の内容物は脂肪や線維質などで、皮膚を通して腫瘍に触れると、ゼリー状の内容物が入っているとは思えないほどカチカチに硬いことが多くなっています。

原因は不明ですが、良性の腫瘍であり悪性になることはありません。悪性ではないので放置してもかまわないものの、手首などにできると人目について目立つことがあります。肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して、痛みが出ることもあります。

ガングリオンの検査と診断と治療

ガングリオン(結節腫)によるこぶ状の腫瘍が自然に小さくなることは、かなりまれなことです。腫瘍が目立ったり、痛みが出た場合は、整形外科の専門医を受診します。

医師による治療には、注射で腫瘍中のゼリー状の内容物を抜く方法と、手術で腫瘍そのものを摘出する方法とがあります。

手術が嫌いな人には、太めの針の注射器でゼリー状の内容物を穿刺(せんし)吸引すれば、しぼみます。ただし、この方法だけではいずれまた、はれてきます。 注射器による穿刺吸引を繰り返すと、感覚障害や運動障害を残すこともあります。

再発を繰り返す場合には、手術による腫瘍の摘出が必要です。しかし、手術においても、腫瘍が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな腫瘍がたくさん付属していることがあるため、切除して摘出するのはそう簡単ではありません。熟練した医師によって丁寧に行われないと、再発しやすいものです。

肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して痛みがある時も、手術で摘出することが望まれます。

🇯🇴眼瞼縁炎(ただれ目)

まぶたの縁に起こり、再発を繰り返す炎症

眼瞼縁(がんけんえん)炎とは、まぶたの縁のまつ毛の毛根を中心に、炎症が起きて赤くなる疾患。俗に、ただれ目と呼ばれます。

原因には、体質、環境、感染、ビタミン不足、化粧品や薬剤に対するアレルギー反応などが考えられています。再発を繰り返し、長期経過をたどるものが多いようです。

主に黄色ブドウ球菌がまつ毛の毛根、汗腺(せん)、皮脂腺に感染することで発症し、目やにが出て、まぶたの縁が赤くなり、小さいぽつぽつとした湿疹(しっしん)、膿疱(のうほう)ができ、かゆみを伴います。場合によっては、湿疹が破れたり、皮脂腺の分泌が少ないために黄色いかさぶたが付着することもあり、目の回りの皮膚がかさかさになってきます。

体質的なアレルギーが原因で発症した場合は、ひどいかゆみを伴ってきます。再発を繰り返すことが多く、好転したり悪化したりしながら何年間も続くことがよくあります。まぶたが厚くなったり変形したりすることや、まつ毛の生え方の方向が不ぞろいになる睫毛乱生(し ょうもうらんせい)を起こすこともあります。重症化すると、まつ毛の欠損が起こることもあります。

眼瞼縁炎の検査と診断と治療

眼瞼縁炎(ただれ目)の症状が現れたら、慢性にならないように早めに医師の治療を受けるようにします。途中で治療をやめると、再発を繰り返すこともあります。

細菌感染による眼瞼縁炎の治療では、目の回りを洗浄した上で、抗生物質を点眼します。また、抗菌剤の点眼薬を利用したり、かさぶたができた部分に抗生物質あるいは副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の軟こうを塗る方法もあります。

アレルギーによる眼瞼縁炎の治療では、 化粧品や点眼薬、目の回りに付着した物など原因となっている物の使用をやめたり、取り除くことで治るため、全身検査を行って調べることもあります。原因となる物質には多くのものがあり、再発を防ぐためにも検査によって特定しておくとよいでしょう。薬剤や食物により、発疹やじんましんなどアレルギーを起こしたことのある人は、医師に報告しておくとよく、原則的に再使用すべきではありません。

場合によっては、まつ毛を抜いて治療をしたり、抗生物質の全身投与を行います。治りにくい場合では、自己免疫療法を行うこともあります。ビタミン不足によるものでは、ビタミン剤の局所および全身投与を行います。

日常生活における注意としては、目の回りに異常が見られたら、手でこすったりせずに安静を心掛け、清潔にして感染を広げないようにします。せっけんなどを使ってもよいのですが、なるべく皮膚に刺激が少ない物を利用するようにします。

予防にも、顔を洗って清潔を心掛けることが一番。ビタミン不足など栄養問題があると、眼瞼縁炎を起こしやすくなりますから、日ごろから食事のバランスを保つことも心掛けます。

🇸🇦慢性肥厚性胃炎

胃の粘膜表面が正常より厚くなった状態

慢性肥厚性胃炎とは、胃の粘膜の筋肉が緊張して、胃の粘膜表面が正常より厚く、硬くなった状態。

慢性肥厚性胃炎は慢性胃炎の一種で、慢性胃炎は胃の粘膜が持続的に炎症を起こして、粘膜の性状が変質し、胃が重いとか軽く痛むなどの症状を伴うこともある疾患です。

慢性肥厚性胃炎では、胃液やその中の胃酸の分泌が増加し、過酸症がみられることがあります。原因の多くはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染と考えられていますが、病態は完全には解明されていません。

症状としては、みぞおちから胸にかけて焼けるような不快感がある胸焼け、げっぷ、胃の酸っぱい液体が口まで逆流してくる呑酸(どんさん)、空腹時の胃の痛み、胃もたれなどの症状が現れます。大きな自覚症状が出ない場合もあります。

慢性肥厚性胃炎に過酸症を伴う場合は、酸度の高い胃酸が食後に大量に分泌されることが一般的なため、食後1~2時間で胸焼け、げっぷ、呑酸の症状が現れます。また、食べ物が胃に入っていない空腹時に胃液が大量分泌し、とりわけ夜間に分泌量が増える傾向がある過酸症を伴う場合は、空腹時の胃の痛み、胃もたれ、食欲減退などの症状が現れます。

これらの症状は慢性肥厚性胃炎だけではなく、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状なので、検診などで慢性肥厚性胃炎が発見された際には、消化器科、消化器内科、内科を受診することがお勧めです。

慢性肥厚性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科などの医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃粘膜の筋肉の緊張による粘膜表面の肥厚が観察されます。

また、胃内視鏡検査の時に胃粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、原因となるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科などの医師による治療では、胃の粘膜の状態に応じて、胃の中に放出された胃酸を中和する制酸剤や、胃酸の分泌を減少させる抗コリン剤(自律神経遮断薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを使用します。

食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が胃に感染している場合には、根本的な治療の見地から、抗生物質(抗菌剤)の投与によるピロリ菌の除去が選択肢の一つになります。

ピロリ菌に対しては、2~3種類の抗生物質を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。

慢性肥厚性胃炎、過酸症において日常で注意することは、脂肪食、香辛料、コーヒー、炭酸飲料、漬物、アルコール、たばこなどの胃酸の分泌を促進するものと、精神的疲労によるストレスを避けることです。ストレスがあると、血流が悪化し胃粘膜の防御機能が低下します。

🇸🇦慢性びらん性胃炎

慢性の胃の炎症によって、胃の粘膜にびらんおよび欠損が現れる疾患

慢性びらん性胃炎とは、慢性の胃の炎症によって、胃の粘膜表面にびらんと呼ばれる組織が多数現れ、わずかにえぐれた欠損も現れる疾患。

原因としては、アルコールの摂取、アスピリンや抗生物質・非ステロイド性抗炎症剤・副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤など薬の副作用、ストレス、細菌やウイルスによる感染症、クローン病などが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が慢性びらん性胃炎の原因となることは、まれです。

慢性のびらん性胃炎の病変は通常、少し赤く、胃の出口近くの前庭部に多発する傾向があります。症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。

また、初期症状がないのが慢性びらん性胃炎の特徴なので、悪化してきて、急に症状が出てくることもあります。胃の粘膜のびらんが悪化して2~5日後に、下血や吐血で症状が現れます。出血の程度は軽度から中等度で、胃潰瘍(かいよう)と比較すると粘膜の損傷は軽くなります。

不快感、胃痛、出血など、びらん性胃炎の症状がみられる場合は、内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師の治療を受けるようにしましょう。

慢性びらん性胃炎の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査で多発性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、慢性びらん性胃炎と確定します。びらんが認められる部位は、足の裏にできるたこ、いぼ状の形態を示し、胃の出口近くの前庭部に多くみられます。

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、出血している場合は必要に応じて、静脈内輸液および輸血によって出血を管理します。内視鏡で観察しながら、出血部を熱で凝固させて一時的に止血することもあります。

比較的軽度の慢性びらん性胃炎の場合は、アルコールや薬物といった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。細菌やウイルスによる感染症が併発している場合は、抗生物質を利用して治療します。

薬物療法によって、慢性びらん性胃炎の症状がとれたとしても、胃炎が治ったとは限りません。症状がなくなったからといって薬をやめると、抑えられていた胃酸の分泌が高まり、胃炎が再発することもあります。出された薬剤は、きちんと終わりまで服用する必要があります。

胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、その改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。

食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。

十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。

運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。

🇸🇦慢性副睾丸炎

睾丸に付着している副睾丸に、慢性的な炎症が生じている疾患

慢性副睾丸(こうがん)炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている睾丸の上面、および後面に付着している副睾丸に、慢性的な炎症が生じている疾患。慢性精巣上体炎とも呼ばれます。

副睾丸、すなわち精巣上体は、精巣から出た精子を運ぶ精管が睾丸、すなわち精巣のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの副睾丸から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

慢性副睾丸炎は、副睾丸に急性の炎症が起こった急性副睾丸炎の局所症状が完全に消えないで慢性症に移る場合が多いのですが、初めから慢性あるいは潜行性に起こることもあります。また、外傷が誘因となって起こることもあります。さらに、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で、炎症が長引く場合もあります。

尿道炎や前立腺炎を起こした時に、大腸菌などの一般細菌や、クラミジア、淋菌(りんきん)などの性感染症菌が尿道や前立腺から副睾丸に逆流し、炎症を起こすのが急性精巣上体炎であり、この治療が不十分であると、細菌が副睾丸の中にこもってしまい、慢性副睾丸炎を生じると考えられます。

結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされます。尿路性器結核の部分現象として発症するので、睾丸を除く前性器が侵されていることが多く、尿路結核を合併することがしばしばあります。20~30歳代に多い疾患です。

慢性副睾丸炎では、全身症状は乏しく、陰嚢内の違和感や不快感、鈍い痛みが長期に渡って続きます。陰嚢に触ると、副睾丸に硬いしこりを感じます。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いません。結核性の場合も、副睾丸が数珠状に硬くはれ、鈍い痛みが続きます。

慢性副睾丸炎の検査と診断と治療

激しい症状がないので放置してしまう場合もみられますすが、徐々に悪化してしまったり、他の疾患が見付かったりすることもありますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の側はまず、尿中の白血球や細菌の検査をします。しかし、慢性副睾丸炎では細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定ができないことがあります。細菌が検出されない場合は、結核性を疑って特殊な検査で尿中の結核菌の有無を調べますが、結核菌が検出されずに、手術で副睾丸を摘出した結果、結核感染が証明されることもあります。

また、慢性前立腺炎などの慢性尿路感染や、前立腺肥大症などの他の疾患を合併している場合もあるので、腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)、前立腺など他の尿路に異常がないかどうか検査します。

治療においては、抗生剤の投与では効果が得られない場合が多いため、消炎鎮痛剤などの痛みと炎症を抑える薬を長期間投与します。不快な痛みが続く場合は、副睾丸を摘出することもあります。

結核性の場合は、他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、結核菌が臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核剤を投与します。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)に、ストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。

それでも改善しなければ、副睾丸だけを摘出する手術、あるいは睾丸を含めて精管、精嚢(せいのう)、前立腺まで摘出する根治手術を行うこともあります。

後遺症として、副睾丸部の精子通過障害をもたらすことがあります。睾丸にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

🇱🇧ボツリヌス菌食中毒

ボツリヌス菌の作る毒素によって起こる食中毒

ボツリヌス菌食中毒とは、強力な毒素を産生するボツリヌス菌によって引き起こされる食中毒。

ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。この菌による食中毒は、欧米では古くからハム、ソーセージなどによる腸詰め中毒として恐れられていて、ハム、ソーセージに発色剤として添加される硝酸塩は発色作用よりも、ボツリヌス菌の繁殖を抑える目的で使用されています。

酸素がなくて水分や栄養分があるなど一定の発育条件がそろった食品中で、猛毒の神経毒素であるボツリヌス毒素を産生。食品とともに摂取された毒素は、主に小腸上部で吸収され、リンパ管をへて血液中に入り、末梢(まっしょう)性の神経まひ症状を起こします。現在知られているものでは最強の毒力があるといわれ、テロリストによって生物兵器として使われるのではないかと心配されています。

菌は毒素の抗原性の違いによりA~Gまでの型に7分類され、人に対する中毒はA、B、E、F型で起こります。A、B型は芽胞の形で土壌中に分布し、E、F型は海底や湖沼に分布します。

日本では、缶詰、ビン詰、容器包装詰低酸性食品(レトルト食品類似食品)、自家製の飯鮨(いずし)などによる食中毒がみられます。海外では、キャビア、野菜などの自家製ビン詰や缶詰、ハム、ソーセージによる食中毒がみられます。

日本では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品、飯鮨(いずし)による食中毒が数多く知られています。飯鮨は生魚、飯、酢、食塩、砂糖などを混ぜた自家製の保存食品で、調理に加熱工程がないことや、海底にボツリヌスE型菌が分布していることなどが、発生原因とされています。

しかし、1998年と1999年に連続して、容器包装詰低酸性食品を原因とするA型およびB型毒素による食中毒が発生して以降、ボツリヌス菌食中毒の発生はありません。

潜伏期間は平均1〜2日で、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの腹部症状に続いて、物が二重に見える複視、発語困難、舌のもつれ、口渇、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などの神経まひ症状が現れます。さらに症状が進むと、便秘、尿閉、四肢のまひが現れ、次第に呼吸困難に陥ります。

10日以上経過すれば死亡を免れますが、それ以前に呼吸筋のまひによる呼吸不全などで死亡することも少なくありません。

ボツリヌス菌食中毒の検査と診断と治療

ボツリヌス菌食中毒は極めて致死率が高いため、医師による検査および診断は、迅速な対応が求められます。診断は中毒の原因と推定された食品、発症者の糞便(ふんべん)、血液、胃内容、吐物などから毒素の証明をし、菌を分離することで行われます。

近年では、糖とボツリヌス毒素を結合させ、毒素遺伝子を迅速かつ特異的にレーザーで検出する遺伝子増幅法が普及しています。区別が必要な疾患には、脳卒中、急性球まひ、メタノール中毒などがあります。

治療では、抗毒素を注射で投与するとともに、輸液によりブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。さらに症状の経過に応じて、 人工呼吸器による呼吸の補助など、さまざまな対症療法も行われます。日本では1962年に抗毒素療法が導入された結果、致命率は著しく低下しました。

 このボツリヌス菌食中毒のほとんどは、自家製食品によって起こっています。菌の食品汚染は、原材料に由来するとされています。食中毒を防ぐためには、以下のことを心掛けます。

新鮮な原材料を用いて十分に洗浄する。低温下で素早く調理する。飯鮨などの魚肉発酵食品には、酢酸を添加する。食肉製品や魚のスモークは十分に加熱する。自家製の缶詰、真空パック、びん詰を製造後は、冷蔵あるいは冷凍下で保存する。製造後あるいは保存中に異臭がする食品や、容器包装詰低酸性食品の食べ残しなどは廃棄する。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...