2022/08/11

👣開張足

足の前半分の前足部が扇状に広がって足の指同士が広くなり、足の甲の幅が普通より広くなった足

開張足(かいちょうそく)とは、足の前半分の前足部が扇状に広がって足の指同士が広くなり、足の甲の幅が普通より広くなった足。

足の裏にはアーチと呼ばれる緩やかな盛り上りがあり、内側の縦アーチ、外側の縦アーチ、横アーチ(メタタザールアーチ)の3つから構成されています。内側の縦アーチは土踏まずとして知られていますが、3つのアーチのうち、足の親指の付け根から小指の付け根までを結ぶ横アーチの機能が低下したものが、開張足に相当します。

横アーチの機能低下により、横アーチの盛り上がったラインが下がって落ちるため、ラインの中央部に、くぼみがなく、ベタッとした平らな足になります。

この開張足の人は、横アーチのラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。足指の第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。最近、足の幅が広くなって、スリムな靴が履きにくくなったと感じることがあれば、それは開張足かもしれません。

生まれ付き関節や靭帯(じんたい)などの結合組織が弱いために、開張足になりやすいという先天的な原因もあります。後天的な開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、足の甲に5本ある中足骨(ちゅうそくこつ)をつなぐ靱帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、横アーチを支える筋肉である横アーチ筋の緊張が衰えることで、開張足を起こします。

体重が重すぎたり、足に合わない靴や高いヒールの靴を履いていたり、急激な運動によって足に高負荷がかかったりした場合は、それが増悪因子となります。

開張足になると、足の甲に5本ある中足骨の間が均等に広がるのではなく、特に第1中足骨と第2中足骨の間と、第4中足骨と第5中足骨の間が広がります。また、横アーチの機能が低下すると、第1中足骨と第5中足骨が持ち上げられ、第2中足骨と第3中足骨の骨頭で体重を支えるようになりますので、足指の第2指と第3指の付け根に、たこや魚の目ができやすくなります。第2中足骨と第3中足骨の骨頭の部分に、痛みが出ることもあります。

さらに、開張足になると、横アーチの機能低下が2つの縦アーチの機能低下を誘発して、扁平足(へんぺいそく)を起こしやすい傾向もあります。外反母趾(がいはんぼし)、内反小趾、ハンマートゥ(槌指〔つちゆび〕)、クロウトゥ(鷲爪指〔わしづめゆび〕)、マレットトゥ(マレット指)などの足指の変形がみられることもあり、これらの変形した足指の先や関節の背面にたこができて、痛みを生じることもあります。

開張足の検査と診断と治療

整形外科、ないし足の外科の医師による診断では、外観上の変形から容易に判断できます。骨の状態を把握して重症度を判定するためには、X線(レントゲン)検査が必要で、通常、立って体重をかけた状態で撮影します。

整形外科、ないし足の外科の医師による治療は、専ら保存的に行われ、下がって落ちた横アーチをできるだけ正常な状態に近付けるために、横アーチの補正パッドやパッド付き中敷(インソール)を靴に装着したり、横アーチの形をつけるように足底に装具を入れた治療靴を用いたり、足の筋肉の強化などを行います。

なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。

🇲🇳回内筋症候群

肘関節周辺で正中神経が圧迫され、肘関節前面の痛みや、手のしびれが生じる疾患

回内筋(かいないきん)症候群とは、手にとって最も重要な神経である正中神経が肘(ひじ)関節周辺で圧迫されることにより、肘関節の前面の筋肉に痛みが生じたり、手のしびれが生じたりする疾患。円回内筋(えんかいないきん)症候群とも呼ばれます。

回内筋は、上腕の骨である上腕骨と尺骨(しゃくこつ)、橈骨(とうこつ)という計3つの骨をつなぎ、肘から前腕の中間までに付いている筋肉で、主に肘を曲げたり、腕を内側に回転したり、ひねったりする際に使われます。正中神経は、肘の辺りの上腕骨内側上顆(じょうか)の下方2・5から4センチを通ってから、上腕骨頭と尺骨頭の間にある回内筋の2つの筋繊維の間を通ります。この部位で、正中神経が圧迫されることがよく起こります。

ちなみに、正中神経は回内筋を横断するように通り過ぎると、浅指屈筋と深指屈筋という指を曲げる筋肉の間を通り、手首の辺りを通過します。その後、手の関節や指まで伸びます。

回内筋症候群の症状は、正中神経が圧迫を受けている部位より手に近い部位に現れ、肘関節の前面の筋肉の痛みが生じ、手のしびれや知覚障害が生じます。この手のしびれや知覚障害は、正中神経が手首周辺で圧迫される手根管症候群と同様、親指、人差し指、中指の3本の指全体と、薬指の親指側半分に認められます。小指には、しびれなどは生じません。

通常、腕に徐々にだるさや倦怠(けんたい)感を覚えて後に、主に親指、人差し指、中指にしびれなどが生じます。そして、筋肉の衰えで指の力が入らなくなったり、指を曲げづらくなったりして、字を書く動作や物をつまむ動作が困難になるケースが多くみられます。手根管症候群と異なり、手のひらにも、はれや知覚異常が生じるのが特徴です。

回内筋症候群を起こしやすい人は、この回内筋を酷使している人で、回内筋に過緊張や炎症が発生すると正中神経を圧迫し、神経障害が発症する場合があります。例えば、大工でドライバーをよく使う人、工場などの作業で繰り返し手や腕を使う人、前腕の筋肉を酷使するテニス、バドミントン、野球、ボーリングなどのスポーツをする人、長時間のパソコン作業をする人、ピアニストなどにみられます。また、腕を伸ばして重たい荷物を押したり、突然重い荷物を持ち上げた際に、発症する人もいます。

回内筋症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、症状や電気生理学的検査などにより判断します。神経伝導検査と筋電図検査を行うことで、正中神経の障害の程度や正確な障害部位が評価できます。

整形外科、神経内科の医師による治療では、軽症の場合は誘引となるような動作の中止、肘と手関節の安静、軽いマッサージ、低周波治療器の使用、消炎鎮痛剤の服用、ステロイド注射などを行います。一般に、回内筋症候群は一時的な神経まひで、肘と手関節の安静や消炎鎮痛剤の服用などの保存療法によって、50パーセントから70パーセントのケースでは数カ月以内に治ると見なされています。

症状が続きなかなか治らない場合は、手術により肘の部位で正中神経の圧迫を取り除きます。手術の結果は良好で、診断が間違っていない限り、80パーセント以上のケースで有効と見なされています。

🇰🇵外脳症

胎児の頭蓋骨半球、大脳半球が正常に発達しない奇形症

外脳症(がいのうしょう)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨(とうがいこつ)半球、大脳半球、小脳の欠如を伴う奇形症。無脳症、無頭蓋症とも呼ばれます。

人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。

脊髄や脳は、胎児の神経管から形成されます。外脳症の症状が現れた胎児は、妊娠4週間程度までの超初期の段階で、神経管前部の閉鎖不全などが起こって神経管の発達が阻害されることで、後々の脊髄や脳の成長が妨げられます。妊娠4カ月ころまでは脳のある程度の発育がみられるものの、妊娠5カ月ころから一度は形成されたはずの大脳、小脳のほか、生命の維持に重要な役割を果たす延髄などの脳幹が突然退化したり、発育が止まったります。

原因については、詳しく解明されていません。人種によって発現の頻度に差があるため遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。

発現の頻度は、国によって異なり、アメリカでは出産1000人当たり1人程度。日本では1970年代から1980年代前半には出産10000人当たり10人程度であったものが、近年は出産10000人当たり1人程度に減少傾向を示しています。その理由として、胎児の超音波検査などの進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性が指摘されています。

人工的に出産を誘発する措置が行われない場合、外脳症の症状が現れた胎児が母胎内で死亡して流産となるケースは少なく、出産の時までは生命を維持します。しかし、脳幹も欠損して死産となる確率が約75パーセントで、残る新生児も出生直後に死亡し、ある程度脳が残存している場合は生後数日間生存します。

部分的に大脳皮質が形成されて機能し脳波が測定される場合は、生後1週間~2週間程度生存するものの、まれです。海外では、奇跡的に1年以上生存しているケースもありますが、日本では、そのようなケースはありません。

外脳症の新生児では、頭で帽子をかぶる部分に相当する頭蓋骨や頭頂部が大きく欠如し、大脳半球は通常欠如して全くないか、小さな塊に縮小しているため、頭蓋の基底面が露出するとともに、基底面に付着するように変性し、表面が薄い皮膜で覆われた脳の一部が露出しています。

顔貌(がんぼう)は特徴的で、前から見ると蛙(かえる)状です。そのほか、眼球の突出や欠如、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)を合併していることもあります。

延髄の下半分が存在していれば、嚥下(えんげ)や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。正常な幼児が特有の刺激に応えて示す原始反射は、存在しており、腱(けん)反射は高進しています。

外脳症の胎児を身ごもった妊婦に関しては、妊娠中期までは母体に自覚症状があることはほとんどありませんが、妊娠後期に入ると羊水過多になる傾向があります。これは外脳症により脳幹にまで障害があり、嚥下運動ができなくなるためといわれています。

羊水は胎児にとって絶対に必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。ひどい場合は、腹が異常に膨らみ、呼吸器が圧迫されて呼吸困難にるケースもあります。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるため、母体への負担を考えて、多くの場合で人工的に出産を誘発する措置が行われます。

外脳症の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断は通常、分娩(ぶんべん)の前に超音波断層法を用いて行われます。胎児の超音波検査により、妊娠4カ月以降であれば、出生前診断が可能となります。また、羊水または母体の血清から血清蛋白(たんぱく)α-フェトプロテインが検出されます。

胎児が外脳症と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。

産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら外脳症の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。

予防に関しては、原因に多因性があることと、遺伝子研究がその段階に至っていないことから、確実なものは発見されていません。

日本では、ビタミンB群の一種である葉酸が遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠で、その摂取が外脳症や二分脊椎(せきつい)症などの神経管閉鎖障害という先天性異常になるリスクを低減するとして、厚生労働省が2000年に、妊娠を希望している女性に対して、1日当たり0・4ミリグラム以上の摂取を推奨しています。ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などに多く含まれる葉酸は、水溶性ビタミンで熱に弱く5割が調理でなくなってしまうので、サプリメントなどから摂取するのが効率的です。

👣外反母趾(ぼし)

足の親指の先端が小指側へ曲がり、痛みを伴う

外反母趾(ぼし)とは、足の親指(母趾)の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態。通常、痛みを伴います。

発生の原因としては、先天性あるいは遺伝性の解剖学的要素と、足の指に外から加わる環境因子とが組み合わさって発生したり、関節リウマチなどの疾患で発生します。

解剖学的要素とは、親指が人差指より長いエジプト型前足部であったり、親指の骨頭が巨大であったり、偏平足であったり、親指の骨が内反していたり、腱(けん)、筋(すじ)などの走行に異常があった場合などに出現します。環境因子は、窮屈な履物の常用であり、また路面や床面が硬くなったことが原因として挙げられます。

男女の発生では女性が男性の10倍ぐらい発生し、好発年齢は初経期(13~14歳頃)と閉経期(50歳代)の2つのピークがみられます。また、前者には高頻度の家族内発生がみられます。

足の親指の付け根関節において、親指のそれより先端が外反して小指側へ曲がると、関節の内側が突出して、時にはこの部分に炎症を引き起こし、痛みを生じます。そして、外反変形が進むと親指が人差し指の底側に入り込み、人差し指と中指の付け根関節の底側に痛みを伴うタコを形成します。

発症の初期には、窮屈な履物を履いて行動した時しか親指の基部に痛みは生じませんが、症状が進むと、裸足で立っているだけで疼痛(とうつう)が出るようになります。症例によっては、親指以外の他の足指の骨頭部が痛んだり、痛みのあるタコができます。

外反母趾の検査と診断と治療

外反母趾に特徴的な症状で、ほぼ診断はつきます。そして、荷重時、非荷重時の足部X線撮影を行い、外反母趾角および親指、人差し指角を測定します。外反母趾角は15°以上、親指、人差し指角10°以上を病的と診断し、また親指の付け根関節の変形性変化、脱臼(だっきゅう)、亜脱臼の有無、側面像では偏平足のチェックも行います。

外反母趾があっても、痛みがなければ特に治療はしないことが原則です。治療にも含まれますが、日常生活において窮屈な革靴、例えばハイヒールなどの履物をやめ、窮屈すぎない靴、材質が柔らかく、靴の先端が広くかつ足のアーチ構造が無理なく保持できるアーチ・サポートがあるものを選びます。

そして、体重を増やさないこと、長時間の立位、歩行を避けること、親指の付け根関節の内反、外旋運動、足部の筋肉の強化訓練などを行います。症例により、靴の中に入れる足底挿板、靴型装具を作成する場合もあります。それで、痛みはかなり軽減されるはずです。

治療用装具としてゴム、革、プラスチックなどを材料とした各種装具が開発されていますが、これらの装具を徹底して装着するのは無理なようです。そのためにかえって、鎮痛消炎剤の経口投与、湿布などが必要となったり、また、なるべく気に入った靴などを履きたい要望が多くなります。そのような人には、夜間のみでもよいので装具を付けるよう指導します。また、関節リウマチなどの疾患で発症している場合は、それに対する治療が必要です。

手術療法は、保存療法をいろいろ行っても治療効果のない場合に行われます。手術法にもいろいろありますが、マックブライト法が一般的に行われています。これは軟部組織の手術を主体としたもので、親指の基節骨外側に付いている内転筋を切り離して、親指頸部(けいぶ)外側に移行するもので、比較的軽症の人に行われます。重症例には、親指の骨切り術を主体とするハーモン法、ミッチェル法が行われます。変形性関節症が強い症例では関節固定術が行われる場合がありますが、最終的な手術法と見なされています。

💒開放隅角緑内障

自覚症状に乏しく、徐々に視野が欠損するタイプの緑内障

開放隅角(ぐうかく)緑内障とは、眼球内での房水(ぼうすい)の流れが悪いために眼圧が上昇し、慢性的に視神経が圧迫されて、徐々に進行する緑内障。原発開放隅角緑内障とも呼ばれます。

眼球には、角膜や強膜でできた壁の内側に、眼内液である房水が入っていて、その壁の弾力と房水の充満状態によって、一定の硬さを保っています。この硬さが眼圧であり、正常眼圧は平均15mmHgと外気圧より高いことで、眼球の形を保っています。眼内を満たす房水は主に毛様体で作られて後房に分泌され、前房へ流れて水晶体や角膜に酸素や栄養を与え、前房隅角より出て静脈に戻ります。

ほとんどの緑内障は、前房隅角に問題があり、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。この開放隅角緑内障では、前房隅角は広く開いているものの、それより先の部分の排水路である線維柱帯が目詰まりしているために、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。線維柱帯が目詰まりする原因としては、コラーゲンや異常な蛋白(たんぱく)質の蓄積、線維柱帯を構成している細胞の減少などがいわれています。

開放隅角緑内障は、慢性緑内障の典型的な病型といえ、青そこひとも呼ばれる緑内障の約90パーセントを占めます。
 
目が重い、目が疲れやすい、肩が凝るなどの症状が出ることもありますが、多くはかなり進行するまで無症状です。気が付かないうちに徐々に視神経が侵され、中期〜末期になると視野欠損を自覚します。

視野の欠損の初めは、光の感度が落ちる程度で、いきなり黒い物が出現するわけではありません。また、両目で物を見る場合には脳が不具合を補正する両眼視機能が働くために、たとえ片方の目に開放隅角緑内障による視野の欠けがあったとしても、視野の欠けが消失してしまうのです。両眼視機能には視力を向上させる働きもあり、片目だけの時よりも、両目で見ると少し視力が上がるため、片目の視神経の50パーセントを失っても、まだ自覚症状がありません。

初期の視野欠損の段階では、視野の中心部分から欠けていくことは、まずありません。通常、中心の少し上あたりか、鼻側から欠けていき、次に、耳側のほうが欠けていきます。視野の中心部分は、網膜の黄班(おうはん)部や中心窩(か)に映っている映像で、黄斑部や中心窩は視神経の線維が強くできているためです。最終的には、中心部分だけが見えるため、まるで筒からのぞいているような見え方になります。

このまま何もせず開放隅角緑内障の症状を放置すると、失明することになりますが、検診で見付かるケースが多くみられます。

開放隅角緑内障の検査と診断と治療

開放隅角緑内障を予防する方法はないものの、視野が狭くなる、目が重い、目が疲れる、軽い頭痛がする、肩が凝るといった自覚症状があれば、眼科医の診察を受け、早期の治療で進行を食い止めます。

開放隅角緑内障では、眼圧検査で22mmHgを超えることがあること、視神経乳頭の検査で緑内障性の視神経乳頭の障害を認めること、視野検査で視野欠損を認めること、隅角検査で開放隅角であること、原因となるようなそのほかの目や全身の病気がないことが、診断基準になります。

開放隅角緑内障の治療では、まず薬物による眼圧下降が選択されます。点眼治療から開始し、効果が不十分な場合は内服薬、レーザー治療、手術と順次疾患の進行によって選択されます。点眼薬はまず1剤から開始し、眼圧下降の効果をみながら追加していき、次いで、炭素脱水酵素阻害剤を内服するようにします。

薬物、レーザー治療、手術治療を問わず、眼圧を10〜12mmHg程度にコントロールすることが、視野異常の進行を止めるのに効果的だとされています。

開放隅角緑内障は、慢性の進行性の疾患ですので、長期に渡って定期的な眼科受診が必要です。薬による治療はきちんと続ける必要がありますが、必要以上に気にしないことも大切。特に生活上の規制は必要ありません。

🇨🇦開放性二分頭蓋

胎児の頭蓋骨半球、大脳半球が正常に発達しない奇形症

開放性二分頭蓋(にぶんとうがい)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨半球、大脳半球、小脳の欠如を伴う奇形症。無脳症、無頭蓋症、外脳症とも呼ばれます。

人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。

脊髄や脳は、胎児の神経管から形成されます。開放性二分頭蓋の症状が現れた胎児は、妊娠4週間程度までの超初期の段階で、神経管前部の閉鎖不全などが起こって神経管の発達が阻害されることで、後々の脊髄や脳の成長が妨げられます。妊娠4カ月ころまでは脳のある程度の発育がみられるものの、妊娠5カ月ころから一度は形成されたはずの大脳、小脳のほか、生命の維持に重要な役割を果たす延髄などの脳幹が突然退化したり、発育が止まったります。

原因については、詳しく解明されていません。人種によって発現の頻度に差があるため遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。

発現の頻度は、国によって異なり、アメリカでは出産1000人当たり1人程度。日本では1970年代から1980年代前半には出産10000人当たり10人程度であったものが、近年は出産10000人当たり1人程度に減少傾向を示しています。その理由として、胎児の超音波検査などの進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性が指摘されています。

人工的に出産を誘発する措置が行われない場合、開放性二分頭蓋の症状が現れた胎児が母胎内で死亡して流産となるケースは少なく、出産の時までは生命を維持します。しかし、脳幹も欠損して死産となる確率が約75パーセントで、残る新生児も出生直後に死亡し、ある程度脳が残存している場合は生後数日間生存します。

部分的に大脳皮質が形成されて機能し脳波が測定される場合は、生後1週間~2週間程度生存するものの、まれです。海外では、奇跡的に1年以上生存しているケースもありますが、日本では、そのようなケースはありません。

開放性二分頭蓋の新生児では、頭で帽子をかぶる部分に相当する頭蓋骨や頭頂部が大きく欠如し、大脳半球は通常欠如して全くないか、小さな塊に縮小しているため、頭蓋の基底面が露出するとともに、基底面に付着するように変性し、表面が薄い皮膜で覆われた脳の一部が露出しています。

顔貌(がんぼう)は特徴的で、前から見ると蛙(かえる)状です。そのほか、眼球の突出や欠如、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)を合併していることもあります。

延髄の下半分が存在していれば、嚥下(えんげ)や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。正常な幼児が特有の刺激に応えて示す原始反射は、存在しており、腱(けん)反射は高進しています。

開放性二分頭蓋の胎児を身ごもった妊婦に関しては、妊娠中期までは母体に自覚症状があることはほとんどありませんが、妊娠後期に入ると羊水過多になる傾向があります。これは開放性二分頭蓋により脳幹にまで障害があり、嚥下運動ができなくなるためといわれています。

羊水は胎児にとって絶対に必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。ひどい場合は、腹が異常に膨らみ、呼吸器が圧迫されて呼吸困難にるケースもあります。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるため、母体への負担を考えて、多くの場合で人工的に出産を誘発する措置が行われます。

開放性二分頭蓋の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断は通常、分娩(ぶんべん)の前に超音波断層法を用いて行われます。胎児の超音波検査により、妊娠4カ月以降であれば、出生前診断が可能となります。また、羊水または母体の血清から血清蛋白(たんぱく)α-フェトプロテインが検出されます。

胎児が開放性二分頭蓋と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。

産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら開放性二分頭蓋の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。

予防に関しては、原因に多因性があることと、遺伝子研究がその段階に至っていないことから、確実なものは発見されていません。

日本では、ビタミンB群の一種である葉酸が遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠で、その摂取が開放性二分頭蓋や二分脊椎(せきつい)などの神経管閉鎖障害という先天性異常になるリスクを低減するとして、厚生労働省が2000年に、妊娠を希望している女性に対して、1日当たり0・4ミリグラム以上の摂取を推奨しています。ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などに多く含まれる葉酸は、水溶性ビタミンで熱に弱く5割が調理でなくなってしまうので、サプリメントなどから摂取するのが効率的です。

🇵🇷海綿状血管腫

誕生時からみられる皮膚の下の腫瘤で、血管の奇形が原因

海綿状血管腫(しゅ)とは、誕生時からみられる皮膚の下の腫瘤(しゅりゅう)。静脈奇形、海綿状血管奇形とも呼ばれます。

皮膚の表面は正常な皮膚色や、薄い紫紅色、薄い青色を示し、皮膚の下の腫瘤は大きくて軟らかくなっています。皮膚の表面に、数珠状に拡張した静脈が観察されることもあります。これは皮膚の深層で、静脈を中心とした奇形性血管が増殖して、塊となっていることが原因で発生します。

腫瘤は手足を始めとして体のどの部位にでも生じ、形は大小さまざま。皮膚の下に発生していることが多いのですが、筋肉や肝臓、腎(じん)臓、脳など深部にまたがって発生していることもあります。非常に広範な病変である場合は、生命にかかわる重篤な症状を示すこともあります。

しかしながら、皮膚の下に発生する多くの海綿状血管腫は、症状も軽微であり、長期に渡って安定しています。自然に消失することはありませんが、圧痛は認められません。皮膚の表面がうんだり、外傷によって皮膚の下に広がった病変が大量出血を起こした場合は、皮膚科や形成外科を受診する必要が生じます。

腫瘤が筋肉に発生している場合は、小児期よりも少し大きくなってから、痛みなどで気が付くことも多くなります。しかし、痛みがない場合もあり、疾患に全く気が付かないこともあります。

深部の海綿状血管腫では、出血などによって急激な痛みを感じることがありますが、通常、その痛みは数日で自然に軽快します。小児の場合は、脚の長さに差が出ることがあり、多くは腫瘤のある脚のほうが長くなります。広範な病変がある場合では、体全体の血液凝固の異常が起きることもあります。

海綿状血管腫は手足に好発するため、基本的な受診科は皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科となるものの、発生した臓器によって受診科は異なります。耳や鼻、口であれば形成外科でも診療されますが、肝臓であれば消化器外科、腎臓なら泌尿器科、脳なら脳神経外科となります。

海綿状血管腫の検査と診断と治療

皮膚科や形成外科などの医師による診断では、皮膚の色の変化、数珠状に拡張した静脈などでわかることもあります。病変の確認のために、超音波検査、MRI、血管造影検査などの画像検査も行われます。

皮膚の下に発生する多くの海綿状血管腫は、うんだり、出血したり、痛みがあるといった症状がなければ経過観察で問題ありません。深部の海綿状血管腫も、ある程度以上は大きくならないので、放置して経過観察をするのが基本となります。

症状を伴う場合は、放射線治療やレーザー治療に効果が認められないため、外科的に血管を切除する方法がとられます。また、近年では、血管内治療である硬化療法、塞栓(そくせん)硬化療法も多く行われるようになっています。硬化療法は、奇形性血管に硬化剤という薬剤を注入して血管を固める方法です。塞栓硬化療法は、まず塞栓子と呼ばれる物質を用いて奇形性血管へ流入する血管を詰め、その後、奇形性血管に硬化剤を注入して血管を固める方法です。

病変が広範な場合は、手術が不可能なこともあり、現在でも治療は困難です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...