2022/08/22

🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿脊髄終糸症候群

脊髄の末端から伸びる終糸が硬いことが原因で、腰痛や頻尿などの症状を来たす疾患

脊髄終糸(せきずいしゅうし)症候群とは、脊髄の末端から伸びる脊髄終糸という糸状の組織が硬いことが原因で、腰痛や下肢痛、頻尿などの症状を来たす疾患。

脊髄は、脳と体の各部とを結ぶ太い中枢神経で、脳の延髄から連続して首、背中、腰の部位にあり、頸(けい)髄、胸髄、腰髄、仙髄(尾骨神経を含む)からなります。腰の部位で徐々に細くなり、第1腰椎と第2腰椎の間くらいで終わっています。この脊髄が細くなった末端部分を脊髄円錐(えんすい)と呼びます。さらに、脊髄円錐から脊髄終糸という糸状の組織が伸びており、これが骨盤につながる仙骨まで伸びて、その末端で脊髄を緩やかに固定しています。

脊髄終糸は、長さ25センチ、太さ1ミリほどで、柔らかく弾力性がある組織です。体を前屈すると、脊髄は頭側に少し移動し、それに伴って脊髄終糸も頭側に引っ張られることになりますが、通常の脊髄終糸は柔らかいゴム糸のように緩やかに伸びるので、脊髄が足側に引っ張られることはありません。

しかし、脊髄終糸が生まれ付き硬い場合、体を前屈した時に脊髄終糸が伸びないために、脊髄が足側に引っ張られ、この姿勢を続けたり繰り返したりすると、脊髄の中に血流の乏しい部分が生じ、細胞が酸素不足に陥って腰や足に通じる神経や、膀胱(ぼうこう)や腸に通じる神経が興奮し、腰痛や下肢痛、頻尿などの症状が出ることがあります。

脊髄終糸症候群は、10歳代から30歳代の若い年代に多く、日常生活で前かがみの姿勢をとると、強い痛みが腰から両足にかけて走ります。特に重い物を持ったり、床の物を取り上げたり、疲労が強まると痛みが増します。

また、ほとんどで頻尿を認め、しばしば便秘、下痢も認めます。

立位で前屈をした時、指先と床が20センチ以上離れているなど特に体の硬い人は、脊髄終糸も硬い可能性があり、こうした人が若年で腰痛や下肢の痛み、頻尿などの症状が出たら、脊髄終糸症候群を疑ってみる必要があります。

脊髄終糸症候群は従来、診断方法が確立されていなかったために、しばしば見逃され治療されずに放置されていたのが現状で、単なる腰痛、原因不明の腰痛や下肢痛などとして、治療を受けている可能性があります。症状に思い当たったら、脳神経外科や神経内科、整形外科を受診することが勧められます。

脊髄終糸症候群の検査と診断と治療

脳神経外科、神経内科、整形外科の医師による診断では、脊椎部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行っても、画像には脊髄終糸が現れないため、若年者で同様の腰痛や下肢痛の症状を起こすことが多い腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアを始め、脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎椎間孔部狭窄症などがないことを確かめた上で、体が硬く、膀胱直腸障害を伴うなど主に症状から判断します。

立位と座位で体を前屈すると、どちらも95パーセント以上に痛みがみられます。誘発テストを行うと、最大前屈位で首を下げると腰痛や下肢痛が強くなり、首を上げると痛みが軽減または消失するのが98パーセントで認められます。

脳神経外科、神経内科、整形外科の医師による治療では、コルセットや鎮痛剤などの保存的治療で改善が得られない場合、症状が強い場合に、希望があれば手術をします。

手術では、腰のあたりで脊椎骨と脊髄を包んでいる膜を切開し、脊髄終糸を選び出して切断します。手術は1時間程度で終わり、体への負担も小さいので当日から寝返りが可能で、翌日から座位がとれ、3日ほどで歩行を開始し、2週間ほどで退院可能です。

手術後の回復には個人差がありますが、ほとんどの場合、半年から1年後には症状が改善、ないし完治します。

🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿脊髄腫瘍

脊柱管内に発生し、良性腫瘍と悪性腫瘍の別

脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)とは、脊柱管内に発生する腫瘍。神経腫、髄膜腫などの良性腫瘍と、悪性腫瘍の神経膠腫(こうしゅ)(グリオーマ)がみられます。

組織の異常な増殖によるものですが、その原因が何かについては不明です。発生する頻度は10万人当たり1〜2人で、脳腫瘍の1/5~1/10程度と比較的まれです。

脊柱管は、頸(けい)骨から仙骨まで非常に長いので、その発生する部位によって症状はさまざまです。普通、腫瘍が発生した部位より下のほうの神経が、まひします。例えば、頸部に発生すれば手と足、胸部より下なら両側の足に、運動や感覚のまひが現れるのが、脳腫瘍と違った特徴です。

神経腫の場合なら、神経支配領域に一致した痛みがよく起こり、背中と手や足に放散する痛みが起こるのが、普通です。感覚の異常は、足のほうから徐々に上昇していきますが、進行すると失禁するようになります。

脊髄腫瘍の多くを占める良性腫瘍の場合は、数カ月から数年の経過で症状が進行します。悪性腫瘍の場合は、症状が早く進行します。

脊髄腫瘍の検査と診断と治療

症状や神経検査で脊髄腫瘍を疑った場合、MRI検査でほとんど診断することができます。ただし、MRIは通常、薬剤の注射が不要で痛みのない検査方法ですが、腫瘍と区別するために造影剤を少量静脈内に投与することがあります。

腫瘍が周囲の骨を壊したり、腫瘍自体に骨のような硬い組織を含む場合、あるいは脊椎(せきつい)から出た腫瘍を疑う場合には、CTスキャンや脊椎のレントゲン撮影を行います。腫瘍に血管が豊富に含まれている場合、あるいは腫瘍か血管由来の疾患か診断が難しい場合には、血管撮影を行います。

治療においては、良性腫瘍の場合には、手術で全摘出されれば脊髄機能に障害を残すことなく完全に治ります。摘出した腫瘍の病理標本で良性であることが確認されれば、放射線や薬物による治療は必要ありません。また、腫瘍が全摘出されれば、再発はまれです。

悪性腫瘍で脊髄内から出たものは、正常な脊髄構造との境界が不鮮明で、全摘出が困難な例もあります。残った腫瘍に対して、放射線照射や抗がん剤による化学療法を行うことがあります。これらの補助療法を追加しなければ、あるいは追加したとしても、発症者はいまだ短期で生命を奪われるのが実情です。

しかし、脊髄腫瘍の60〜70パーセントは、良性腫瘍です。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿脊髄小脳変性症

運動失調を主要な症状とする神経変性疾患の総称

脊髄(せきずい)小脳変性症とは、小脳および脳幹から脊髄にかけての神経細胞が遺伝的な変性や、老化などによって進行性に侵され、歩行や手足の運動ができにくくなる疾患の総称。現在、厚生労働省の特定疾患(難病)の一つで、医療費の公費負担が受けられます。

脊髄小脳変性症は総称であって、多数の病型に分類されていて、孤発性(非遺伝性)のものと遺伝性のものに大別されます。

孤発性のものには、オリーブ橋(きょう)小脳委縮症(OPCA)、皮質性小脳委縮症(LCCA)があります。 遺伝性のものには、脊髄小脳失調症1型(SCA1)、脊髄小脳失調症2型(SCA2)、脊髄小脳失調症3型(SCA3、マシャド・ジョセフ病)、脊髄小脳失調症4型(SCA4)、脊髄小脳失調症5型(SCA5)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)、脊髄小脳失調症7型(SCA7)、歯状核赤核淡蒼球〔しじょうせきかくたんそうきゅう〕ルイ体委縮症(DRPLA)、フリードライヒ失調症、遺伝性痙(けい)性まひなどがあります。また、遺伝性のものは、優性遺伝と劣性遺伝、性染色体性に分かれます。

それぞれ遺伝型式、発病年齢、臨床症状に違いがありますが、同一の病型でも発症年齢が早いか遅いかによって症状に差があり、症状のみから病型を決めるのは難しいといえます。

脊髄小脳変性症の厳密な意味での頻度は、知られていません。推定では、10万人に対して5~10人程度と考えられます。人種、性別、職業による発症の差は、認められていません。遺伝性以外の原因は、不明です。主に中年以降に発症するケースが多く見受けられますが、若年期に発症することもあります。

主な症状は、運動失調です。歩行時にふらつく、手がうまく使えない、話す時に舌がもつれるなどの症状が起きます。これらの症状が非常にゆっくりと進行していくのが特徴で、10年、20年単位で進行します。運動失調以外にも、さまざまな症状を来します。主要なものは、自律神経症状としての起立性低血圧、発汗障害、排尿障害などのほか、錐体(すいたい)路症状として下肢の突っ張り、末梢(まっしょう)神経障害、筋の委縮などです。

なお、小脳、脳幹、脊髄にかけての神経細胞は破壊されますが、大脳部分は破壊されません。そのため、アルツハイマー病などとは異なり、発症者は自分の体の運動機能が徐々に衰退していくことを、はっきりと認識できます。

脊髄小脳変性症の検査と診断と治療

特に有効な薬も、治療法も見いだされていません。専ら対症療法ということになります。

運動失調に対しては、甲状腺(せん)刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)および関連の薬が有効です。また、自律神経障害に対しては、多くの対症療法が工夫されており、起立性低血圧に対しては、ジヒドロエルゴタミン、ドプスなどが使用されます。排尿障害に対してはα交感神経遮断剤が使用されます。また、下肢の突っ張りなどに対しては抗痙縮剤が使われます。また、パーキンソン症状に対しては抗パーキンソン剤が使用されます。

いずれの病型も慢性進行性の疾患で、数年ないし数十年に渡って進行し、最後には全く歩行不能となりますが、絶えずリハビリを行って、神経の機能をうまく働かせることが必要です。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿脊髄髄膜瘤

先天的に脊椎骨が形成不全となって、脊髄や髄膜の一部が骨の外に露出する疾患

脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)とは、先天的に脊椎(せきつい)骨(椎骨)が形成不全となって、脊椎骨の背中側の一部が開放し、脊髄や髄膜の一部が骨の外に露出する疾患。

日本国内での発症率は、1万人に5人から6人と見なされています。

母胎内で、脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる神経管が作られる妊娠の4~5週ごろに、何らかの理由で神経管の下部に閉鎖障害が発生した場合に、脊椎骨が形成不全を起こします。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。脊椎を構成している一つひとつの骨である脊椎骨は、椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓の2つからなっています。本来、後方部分の椎弓は発育の途中に左右から癒合しますが、脊椎骨が形成不全を起こすと、完全に癒合せず左右に開いて分裂する二分脊椎を生じます。

分裂している椎弓からは、神経組織である脊髄や脊髄膜がはみ出し、腫瘤(しゅりゅう)、あるいは中に脊髄液がたまった嚢胞(のうほう)となって、こぶのように骨の外に露出します。嚢胞が露出した場合は、しばしば皮膚欠損による脊髄液の漏れが生じます。

脊髄髄膜瘤は、仙骨、腰椎に多く発生し、胸椎、頸椎に発生することはまれです。

脊髄髄膜瘤の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因としては、胎生早期におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、喫煙、放射線被爆(ひばく)、遺伝要因としては、人種、葉酸を代謝する酵素の遺伝子多型が知られています。

出生した新生児に脊髄髄膜瘤が発生している場合、二分脊椎の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。

多くは、脊髄液(脳脊髄液)による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭症(すいとうしょう)を合併しているほか、脳の奇形の一種で脳全体が下側に落ち込むキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。

脊髄髄膜瘤の治療には、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる生涯にわたる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

超音波検査による出生前診断で脊髄髄膜瘤が発見された場合には、産道通過の際に胎児の脊髄髄膜瘤が破れるのを予防する目的で、帝王切開を行う場合もあります。

脊髄髄膜瘤の検査と診断と治療

脳神経外科、小児外科の医師による診断では、脊髄髄膜瘤の場合、妊娠4カ月以降の超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には腰背部の腫瘤、嚢胞により病変は容易に明らかになります。

脊椎部と頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、腫瘤、嚢胞の中の脊髄神経の有無、水頭症の有無を確認します。また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

脳神経外科、小児外科の医師による治療では、出生時に脊髄液の漏れがある場合には、生後2、3日以内に腰背部に露出した形になっている脊髄や脊髄膜を感染から守るために、皮膚と脊髄神経を分離し、皮膚を縫合する閉鎖手術を行います。

手術後に水頭症の症状が顕在化、悪化するようならば、脳脊髄液の流れの一部分からシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ脳脊髄液を流す仕組みを作るシャントと呼ばれる手術を行います。

仙骨、腰椎、胸椎、頸椎などの奇形が発生した部位により、症状には重度から軽度まで個人差はありますが、下肢障害に対しては車いす、補装具などによる装具療法、理学療法、整形外科的手術による対処を行い、排尿・排便障害に対しては導尿、浣腸(かんちょう)、摘便(洗腸)、下剤、機能訓練による対処を行います。重症例では呼吸障害、嚥下障害による栄養障害への対処、知的障害への療育を行います。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿脊柱管狭窄症

脊柱の中を上下に連なる脊柱管が狭くなり、中の神経が圧迫される疾患

脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症とは、脊柱を形成する椎骨(ついこつ)の脊椎孔の連なりでできる脊柱管の内容が狭くなり、中の神経が圧迫されて、しびれや痛みが起こる疾患。

脊柱管の後方を構成する関節や靭帯(じんたい)は、加齢により変性、肥厚します。また、脊柱管の前方を構成する椎間板も突出してきます。この結果、脊柱管に収められている馬尾(ばび)神経や、座骨神経の根本である神経根が、慢性的に圧迫を受けて、主に腰部や下肢に痛みが出てきます。

脊柱管狭窄症は椎間板ヘルニアとともに腰痛の二大疾患の一つですが、ヘルニアと異なり、加齢とともに症状を訴える人が増加し、病状も進行する傾向があります。

部位として多いのは腰椎部ですが、頸椎(けいつい)部、胸椎部と、2つ以上の個所が狭窄している広範があり、その部位によって出る症状の違いもあります。

また、脊柱管の中心部で圧迫を受ける中心型と、脊柱管の外側で圧迫を受ける外側型、一本一本の神経が出て行く椎間孔というトンネルで圧迫を受ける椎間孔型の三タイプがあります。中心型は馬尾神経が圧迫され、外側型と椎間孔型は神経根が圧迫されます。

中心型の典型的な症状は、歩行とともに下肢のこわばりやしびれ、脱力が出現します。歩けなくなるほどですが、しばらく休むとまた歩けるようになるという間欠性跛行(はこう)の症状を繰り返すことが特徴です。足にまひを起こすこともあります。背筋を伸ばして歩けなくなっても、自転車ならいくらでもこげるという特徴があり、排尿・排便障害を伴う場合もあります。

外側型と椎間孔型では、片方の脚に同じような症状が現れ、椎間板ヘルニアでみられるような座骨神経痛も現れます。

整形外科の医師による初期の治療では、姿勢や日常生活の指導、および神経に効く薬を用います。温熱療法や運動療法、コルセット療法、腰の牽引(けんいん)療法、神経ブロックなども有効ですが、加齢とともに症状は悪化してきます。

症状が強く、改善しない場合は、腰の後ろ側から圧迫を取る手術を行うことになります。手術の成績はおおむね良好です。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿脊柱靭帯骨化症

脊椎ともいう脊柱を支えている靭帯に骨化が起こり、さまざまな神経障害を招く疾患の総称

脊柱靭帯骨化症(せきちゅうじんたいこっかしょう)とは、背骨とも、脊椎(せきつい)ともいう脊柱を支えている靭帯が分厚くなって骨のように硬くなる骨化が起こり、さまざまな神経障害を招く疾患。

この脊柱靭帯骨化症は、脊柱を支えている靭帯に骨化が起こる部位によって、後縦(こうじゅう)靭帯骨化症、黄色(おうしょく)靭帯骨化症、前縦(ぜんじゅう)靭帯骨化症に分けられます。

脊椎椎体の後面を上下に連結し、脊椎を縦走する靭帯が骨化する後縦靱帯骨化症

後縦靱帯骨化症は、脊椎を構成する椎体と呼ばれる四角いの骨の後面を上下に連結し、脊椎を縦走する後縦靭帯が骨化する疾患。

背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎体の後面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の前面に位置する後縦靭帯は、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。

この後縦靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、知覚障害や運動障害が症状として現れます。

胸椎にも後縦靱帯骨化症は出現しますが、頸椎(けいつい)に多く出現します。後縦靱帯が骨化する脊椎の部位によって、頸椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症に分類することもあります。

50歳以上の男性で好発し、男性は女性の2倍発症しています。また、糖尿病や肥満症の人の発生頻度が高いことがわかっています。

後縦靱帯が骨化する原因は不明。単一の原因で生じるのではなく、複数の要因が関与して発症すると推測されています。遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウムやビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、骨化部位の椎体間にある円板状の軟骨組織である椎間板脱出などいろいろな要因が考えられていますが、原因の特定には至っていません。特に家族内発症が多いことから、遺伝子の関連が有力視されています。

後縦靱帯の骨化があればすぐに症状が出現するわけではありませんが、頸椎に後縦靱帯骨化が起こった場合に最初に出てくる症状としては、首筋や肩甲骨周辺、指先の痛みやしびれがあります。

症状が進行すると、次第に痛みやしびれの範囲が広がり、脚のしびれや感覚障害、足が思うように動かないなどの運動障害、はしを使うなどの両手の細かい作業が困難となる手指の運動障害などが出現します。重症になると、排尿や排便の障害や、一人での日常生活が困難になることもあります。

胸椎に後縦靱帯骨化が起こると、下半身に症状が出ます。初発症状として、下肢の脱力やしびれなどが多いようです。腰椎に後縦靱帯骨化が起こると、歩行時の下肢の痛みやしびれ、脱力などが出現します。

症状の進行は年単位の長い経過をたどり、軽い痛みやしびれで長年経過する場合もある一方で、年単位の経過で手足の動作がかなりの程度傷害される場合もあります。また、軽い外傷、例えば転倒などを切っ掛けに、急に手足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。

脊椎椎弓の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する靭帯が骨化する黄色靱帯骨化症

黄色靱帯骨化症は、脊椎の後方部分を構成する椎弓と呼ばれる円柱状の骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する黄色靭帯が骨化する疾患。特定疾患(難病)である脊柱靭帯骨化症の一種です。

背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎弓の前面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の後面に位置する黄色靭帯は、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。

この黄色靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、知覚障害や運動障害が症状として現れます。

頸椎にも黄色靱帯骨化症は出現しますが、ほとんどは胸椎の下部に出現します。黄色靱帯が骨化する脊椎の部位によって、頸椎黄色靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症、腰椎黄色靭帯骨化症に分類することもあります。

年齢的には20歳以降に出現しますが、一般的には40歳以上に出現します。男女の性差なく出現します。

黄色靱帯が骨化する原因は不明。遺伝的素因、カルシウムやビタミンDの代謝異常、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレスなど複数の要因が関与して発症すると推測されているものの、原因の特定には至っていません。ほとんどが胸椎の下部に出現する原因は、胸椎と腰椎の連結する部分に相当し負担がかかるためと見なされています。

同じ脊柱靭帯骨化症の一種で、後縦靭帯骨化症という、脊椎の前方部分を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の後面を上下に連結し、脊椎を縦走する後縦靭帯が骨化する疾患と合併しやすく、この場合は特に家族内発症が多いことから、遺伝子の関連が有力視されています。

胸椎に黄色靭帯骨化が起こった場合に最初に出てくる症状としては、下肢の脱力やこわばり、しびれがあります。腰背部痛や下肢痛が出現してくることもあります。

また、長い距離を歩くと下肢の痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を来すこともあります。重症になると、両下肢まひを来して歩行困難となり、日常生活に障害を来す状態になります。

症状の進行は年単位の長い経過をたどり、軽い痛みやしびれで長年経過する場合もある一方で、年単位の経過で足の動作がかなりの程度傷害される場合もあります。また、軽い外傷、例えば転倒などを切っ掛けに、急に足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。

脊椎椎体の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する靭帯が骨化する前縦靱帯骨化症

前縦靱帯骨化症は、脊椎を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する前縦靭帯が骨化する疾患。フォレステイル病、強直性脊椎肥厚症と呼ばれることもあります。

背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎体の前面に位置する前縦靱帯は、後縦靭帯という椎体の後面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の前面に位置する靭帯と対をなして、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。

この前縦靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、食道が圧迫されて物を飲み込みにくくなったり、声がかれたり、背中の張りや腰痛などが現れることがあります。

高齢者、特に60歳以上の男性に多く認められ、男性は女性の2〜3倍ほど発症しています。

前縦靱帯が骨化する原因は不明。何らかの遺伝性があるとする研究もいくつか報告されており、今後明らかにされると思われます。

前縦靱帯の骨化が起こると、脊椎の可動域が低下して運動が障害されることから、体が硬くなって動きが悪くなったと感じることが多いようです。

頸椎に前縦靱帯骨化が起こると、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)困難、声がかれる嗄声(させい)の症状が出現することがあります。胸椎や腰椎に前縦靱帯骨化が起こると、背中の張りや腰痛の症状が出現することがあります。

また、骨化が途切れて脊椎が動いている部位で、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、手足の痛み、しびれ、まひなどをが出現することもあります。まれに、転倒などのけがにより、脊椎の骨折を生じたり、そのために脊髄のまひを生じることもあります。

後縦靱帯骨化症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、頸椎に多い後縦靭帯骨化症を見付けます。X線検査で見付けることが困難な場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。

整形外科の医師による治療では、症状が軽い場合、骨化によって圧迫されている脊髄や神経根を保護することを主目的にして、頸椎の外固定装具を装着します。痛みに対しては、筋弛緩(しかん)剤や消炎鎮痛剤などを用います。しびれや手指の運動障害に対しては、ビタミンB剤を用います。

脊髄症状のため日常生活に支障があり、画像検査で脊髄にある程度の圧迫が見付かった場合は、手術を行います。手術法には、首の前を切開する前方法と、後ろ側を切開する後方法があります。

頸椎の後縦靱帯骨化では、脊髄や神経根の圧迫を取るため骨化部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する前方法と、骨化部位はそのままにして脊柱管を広げる後方法があり、一般的には後方法が選択されます。

胸椎の後縦靱帯骨化では、背骨が丸くなっているため、後方法で脊柱管を広げるだけではなく、ボルトなどを用いて固定を加える手術が行われることが多くなっています。腰椎の後縦靱帯骨化では、一般的に後方法が選択されます。

後縦靭帯骨化症を完全に予防することはできませんが、日常生活で首を後ろに反らせすぎないこと、仕事や遊び、泥酔などで転倒、転落することで脊髄症状を出現させたり、悪化させたりしないことが必要です。

黄色靭帯骨化症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、まずX線(レントゲン)検査を行います。しかし、胸椎に多い黄色靭帯骨化症を見付けることが困難なことが多いため、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。

整形外科の医師による治療では、原因が不明で経過が予測できないため、消炎鎮痛剤などを投与して経過を観察します。下肢や腰背部の痛みが強い場合には、脊髄の周囲の硬膜外腔(がいくう)に局所麻酔薬を注射して、神経の痛みを和らげる硬膜外ブロックを行うこともあります。

経過観察中に進行がみられる場合や、神経症状が強い場合には、胸椎椎弓の骨化部位を取り除いて、脊髄や神経根の圧迫を解除する手術を行うこともあります。

黄色靭帯骨化症を完全に予防することはできませんが、仕事や遊び、泥酔などで転倒、転落することで神経症状を出現させたり、悪化させたりしないことが必要です。

前縦靱帯骨化症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、前縦靭帯骨化を見付けます。X線検査で見付けることが困難な場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。

嚥下障害を生じた場合は、X線による食道造影検査や咽頭(いんとう)部の内視鏡検査を行います。

整形外科の医師による治療では、背部痛、腰痛などを生じた場合は、鎮痛剤、筋弛緩剤などの投与、理学療法、運動療法で対応します。

嚥下障害の改善がみられず誤嚥の恐れがある場合は、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する手術を行います。

脊髄や脊髄から分枝する神経根が進行性に圧迫されている場合も、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、脊椎が動いている部位の圧迫を除去する手術を行います。

けがにより脊椎の骨折を生じた場合には、安静、ギプスやコルセットで治療し、骨がつかない、あるいは脊髄のまひが出現した際には金属で固定する手術を行います。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿脊椎圧迫骨折

衝撃を受けて脊椎の椎体が圧迫され、押しつぶされるように変形する疾患

脊椎(せきつい)圧迫骨折とは、衝撃を受けることによって脊椎の椎体が圧迫され、押しつぶされるように変形する疾患。骨粗鬆(こつそしょう)症がある高齢者によくみられ、多くは胸椎から胸椎と腰椎の移行部にかけて起こります。

骨が正常である成人男子にはまれな疾患で、高い所から墜落するなど、大きな力が脊椎の軸方向に加わった場合にしか起こりません。こうした事故の場合、脊椎の圧迫骨折だけでなく、骨盤骨折や下肢骨骨折、臓器の損傷を伴うこともまれではありません。

しかし、骨粗鬆症がある高齢者では骨がもろくなっている状態のため、比較的軽い衝撃が加わっただけで、あるいは、ほとんど衝撃が加わらなくても、自然に椎体の圧迫骨折が起こることがあります。多くが転倒によって生じますが、しりもち、せき、くしゃみなどでも起こります。高齢の女性の背中が丸くなっていく老人性円背(えんぱい)の原因は、胸椎に自然に起こった多発性の脊椎圧迫骨折です。

そのほか、くる病や骨軟化症、腎(じん)性骨異栄養症などのような代謝性の骨の疾患によって、骨の強度が低下している場合に、脊椎圧迫骨折が起こることもあります。

症状としては、圧迫骨折が起こった部分に、痛みを覚えます。急性期には、寝返りや前かがみさえもできないほどの強い痛みを覚えます。圧迫骨折を起こした脊椎のある部位の背中に、棘(きょく)突起が飛び出したようになり、そこを軽くたたくと痛みが増強します。

本来、折れた骨はくっついて固まるので痛くなくなりますが、骨粗鬆症が進んでいると、折れた部分が固まらない場合があります。この場合は痛みが残ったりして、安静にしている時には痛みは和らいでも、動こうとすると強く痛み、特に起床時などには痛みが激しく歩行が困難になり、次第に起き上がることすらも難しくなります。

また、症状が一度消失しても、骨折後数カ月が経過してから、足のしびれ、痛み、動きにくさなどの症状が出てくることがあります。

脊椎圧迫骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、単純X線撮影を行い、その側面像を見ると、脊椎の椎体前方(腹側)がつぶれたくさび型に見えます。ただし、がんなどの悪性腫瘍(しゅよう)が転移したために起こる圧迫骨折もありますので、正確な診断が必要です。診断を確定するために、必要に応じて血液検査、CTやMRIなどの特殊な検査を行います。

下肢の痛みやしびれなどの神経症状を伴わない骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は、2~3週間、簡単な腰椎固定バンドなどで固定し、安静にしているだけで、痛みは次第に軽くなっていきます。痛みが軽くなったら、固定バンドを腰に巻いたまま、1日も早く起きて、歩く練習を始めます。高齢者が長期間ベッドで安静にしていると、呼吸器や尿路系の感染を起こしたり、認知症を発症したり、急速に下肢の筋力が低下し、起立、歩行できるようになるまで、さらに長期間を要するのを防ぐためです。

痛みが強く現れている場合には、鎮痛薬を用いた薬物療法が行われます。骨折の程度や年齢によっては、入院した上で背骨の配列を正す整復治療と牽引(けんいん)を行って、骨の癒合を待つ方法がとられます。ただし、脊髄の圧迫症状や脊髄の損傷がみられる場合には、まひが生じることもあるために早急に手術が行われます。

近年では、脊椎圧迫骨折の急性期や、時間が経っても骨折部分が十分に治らず強い痛みが続く場合などに、骨セメントを椎体内に注入することにより骨折部を安定させて、手早く痛みを取る経皮的後湾矯正術(バルーン・カイフォプラスティ)が行われるようになっています。

X線で確認しながら、背骨の骨折部で風船(バルーン)を膨らませ、つぶれた骨をできる限り復元した後、風船によって作られた空洞に骨セメントを詰めます。極めて負担は軽く、かつ速やかに痛みが取れるため、1990年代にアメリカで開発されて以来、欧米では広く行われてきた手術方法で、日本でも2011年1月から保険診療として特定の施設で行うことが認められました。治療後の長期安静は不要で、早ければ手術の翌日に退院できます。

脊椎圧迫骨折を防ぐために最も大切なことは、転倒したりしないことです。そのためには、日ごろからできるだけ散歩などの運動をすること、外に出てさまざまな刺激を受け、はつらつとした気分を保つことです。室内に閉じこもってばかりいると、年を取るにつれて、運動能力や反射神経が減退するばかりでなく、骨粗鬆症も進行します。

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