2022/08/22

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿脊椎過敏症

精神的な状態や体質によると考えられ、一部の脊椎に過敏性の痛みが起こるもの

脊椎(せきつい)過敏症とは、一部の脊椎に過敏性の痛みが起こる疾患。特に12個ある胸椎のうち、中間部の第3胸椎から第10胸椎にかけて数個の棘突起(きょくとっき)を押すと鋭く痛むのが特徴です。

しかも、第1胸椎と第2胸椎に限局した深い所に痛みのある脊椎カリエスと違って、浅い所に痛みが生じます。

20〜30歳代の筋肉の発育の悪い女性にみられることが多く、精神的に不安定な人や神経質で敏感な人に多く、また冷え性の人など、自律神経失調症の傾向がある人によくみられます。

背中の痛みや圧迫感、肩凝りが主症状で、脊椎の炎症や外傷もなく、運動障害もみられません。脊椎のX線写真にもこれといった異常がないのが一般的で、棘突起が一直線に並んでいないで、多少左右にばらついているところから、胸椎の発育の過程で何らかの原因で左右の不均衡が起こり、棘突起についている筋肉にも不均衡な緊張が働くために起こると考えられています。

しかし、痛みを訴えない正常な人でも、このような変化は認められるものであり、放置しておいても2年以内に痛みはよくなるのが普通です。

このように因果関係についてはまだよくわかっていませんが、痛みさえ治まれば何の心配もいらないもので、疾患というよりは精神的な状態や体質によるものと考えられています。

整形外科の医師による治療では、痛みそのものに対して、鎮痛消炎剤の投与や局所麻酔剤の注射、あるいはホットパック、超短波などの温熱療法を行います。また、筋肉の発育が悪い人に起こりやすいので、疲労や前屈姿勢を長く続けることを避けることを勧めます。

脊椎過敏症の生活上の注意点としては、環境を変えるなどして不安のもとやストレスを除くことが大切です。未婚の女性は、結婚すればよくなることが多いもの。また、日常生活に軽いスポーツを取り入れ、体を鍛えるように心掛けることも必要です。

さらに、ビタミンB1、B2、ビタミンC、カルシウムなど脳神経の働きに必要な栄養素が豊富に含まれている食品を摂取することによって、精神の安定に役立ち、脊椎過敏症の原因である自律神経失調症の回復を促します。

🇬🇧脊椎カリエス

肺結核から二次的に起こる骨関節結核の一つ

脊椎(せきつい)カリエスとは、肺の病巣の結核菌が血流に乗って脊椎に到着し、転移して脊椎を破壊する疾患。肺結核から二次的に起こる骨関節結核のうちで代表的な疾患であり、結核性脊椎炎とも呼ばれます。

この脊椎カリエスは、昭和40年代に非常に多くみられました。背骨の痛みといえばカリエスといわれ、治療の困難な疾患でした。しかし、抗結核化学療法(ストレプトマイシン)が発達して以降は急激に減少し、近年ではほとんどみることがなくなりましたが、根絶したわけではありません。

現在、結核にかかっている人はもちろんのこと、過去に結核にかかった経験がある人も発症の危険性がある疾患であるため、安心することはできません。過去に結核にかかったことがある人は、結核菌が体内で生き続けていて、体力や免疫力が弱った時などに発症することがあるからです。

胸腰椎部に多く発生し、初期は背中が痛んだり、病巣部を背中からたたくと痛みを感じたりします。腰が痛んだり、足を動かすと腰の痛みが強くなったり、安静にしても痛んだりすることもあります。全身的な反応として、微熱、赤血球沈降速度の促進がみられます。

進行してくると脊椎運動制限が現れ、次に椎体運動制限現れ、さらに進むと椎体が破壊されて脊柱の後湾変形、いわゆる亀背(きはい)がみられます。この時期には、腹部や殿部(でんぶ)に大量のうみがたまり、脊椎を圧迫し、排便障害、排尿障害、下肢まひなどを生ずることもあります。

周囲に結核の人や過去に結核にかかった人がいて、症状に心当たりがある場合は速やかに整形外科、ないし内科の専門医を受診する必要があります。脊椎カリエスと診断されれば、結核予防法が適用され、結核菌を排出しているかどうかなどを調べて、周囲への感染を防ぐ必要があります。早期に発見し、治療を開始すれば、変形を残さず治ります。

医師の診断では、X線検査が不可欠で、X線写真をみると椎間板が狭くなり、脊椎の不整像や楔(くさび)状化が見られます。胸椎部では、たまったうみが脊椎周囲に紡錘状に映ることもあります。ただし、早期ではX線写真に特徴的な所見がみられないこともあるので、必ずしも安心できません。

脊椎カリエスの治療は、安静と抗結核化学療法(ストレプトマイシン)が基本です。1~2年間の抗結核化学療法とコルセットの装着が必要で、治すのに忍耐が必要です。

痛みが強く安静にしていても治る気配がない場合や、浸出したうみが神経を圧迫しているような場合、X線写真で死んだ骨(腐骨)などが見付かった場合には、手術して病巣を摘出する脊椎固定術を行うと、治癒を早めることができます。

🇬🇧脊椎後湾症

脊椎の胸椎部の後方への湾曲が極端に大きくなっている疾患の総称

脊椎(せきつい)後湾症とは、背骨、すなわち脊椎のうちの胸椎部の後方への湾曲が極端に大きくなっている疾患の総称。脊柱後湾症、円背(えんぱい)、亀背(きはい)、猫背(ねこぜ)とも呼ばれます。

人間の脊椎は、7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。正常な脊椎は体の前から見ると真っすぐですが、横から見ると、緩やかなS字の形をしています。すなわち頸椎部は前湾(前に向かって湾曲している)、胸椎部は後湾(後ろに向かって湾曲している)、腰椎部は前湾を示しています。

このように脊椎は本来、後湾している部分があるのですが、脊椎後湾症では、胸椎部の後湾している角度が極端に大きくなったり、腰椎部の前湾が失われて後湾になったりしています。

脊椎後湾症はいわゆる背中が丸くなっている疾患の総称で、背中を丸めた猫背が習慣化するなど姿勢の異常などによる機能的後湾は日常的に注意すれば治せるもので、問題はありません。しかし、病的な後湾である構築性後湾は病的な後湾であり、治療が必要になります。

構築性後湾には、青年期後湾症(ショイエルマン病)、先天性脊柱後湾症、老人性後湾症(老人性円背)、脊椎カリエス(結核性脊椎炎) による後湾、脊椎損傷後の後湾などがあります。

青年期後湾症は、成長に伴って複数の円柱状の椎体がくさび状に変形し、脊椎、特に胸椎部が丸く変形するものです。成長期は骨の発育が速いため、特に異常が発生しやすくなりますが、成長が終了すると進行も止まります。

先天性脊柱後湾症は、椎骨の前方にある円柱状の椎体の生まれ付きの変形によるもので、椎体の癒合や、くさび状の椎体がみられます。成長に伴って進行するものがあります。

老人性後湾症は、加齢が原因で多くの椎体間の椎間板が変性したり、骨粗鬆(こつそしょう)症で多くの椎体が押しつぶされることによって起こります。

脊椎カリエスによる後湾は、小児期の脊椎カリエスの後遺症としてよくみられます。

脊椎損傷後の後湾は、事故などで胸椎部と腰椎部の移行部の脊椎が高度に骨折し、さらに後方の靱帯(じんたい)の損傷を伴った場合に起こるものです。進行する場合は、手術を行う必要があります。

そのほか、椎骨の後方にあるアーチ型をした椎弓の切除後や放射線治療の後に、後湾が起こることがあります。また、強直性脊椎炎では、胸椎部に後湾が起こったまま椎体が癒着し、強直に陥るのが特徴です。脊髄髄膜瘤(りゅう)、軟骨無形成症でも、後湾が起こることがあります。

原因によって異なりますが、脊椎後湾症は、軽度では何の症状も現れない場合が多く、持続的な背中の痛みがみられることがある程度です。重度になると、腰が強く傷んだり、神経の障害を生じる場合があります。

また、脊椎がねじれを伴って側方に湾曲する脊椎側湾症と合併すると、複雑な湾曲が現れます。

脊椎後湾症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、脊椎後湾症は痛みなどの症状に乏しいため、脊椎の変形から疑います。次に、X線(レントゲン)検査を行い、画像で椎体の変形が見付かれば、比較的簡単に判断できます。

原因を知るために、さらに詳しい検査が必要な際は、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査が有用です。また、加齢が原因と疑われる際は、骨粗鬆症の検査を行います。

整形外科の医師による治療は、原因や進行度、年齢によって方法が異なります。軽度の場合は、運動療法で姿勢を正すために必要な力をつけて、経過観察します。重度の場合は、サポーターやコルセットで姿勢を固定したり、負荷を軽減する装具療法を行い、進行の防止を図ります。

先天性の後湾症や、筋力低下や感覚障害などの神経の障害が現れた場合、後湾の状態がひどい場合は、手術を行って後湾している脊椎を矯正して固定します。

ほかの疾患が後湾症の原因である場合には、その疾患の治療を行います。

脊椎後湾症と診断されたら、医師の指示に従って、運動療法や装具療法を正しく根気よく行うことが大切となります。とりわけ青年期後湾症、先天性脊柱後湾症は進行するので、途中で治療をやめたりすると、計画的な治療が受けられなくなります。また、進行するかどうかをみるために、定期的に検査を受ける必要があることもあります。

🇬🇧脊椎側湾症

背骨がねじれを伴って側方に曲がる疾患

脊椎(せきつい)側湾症とは、脊椎、すなわち背骨がねじれを伴って側方に湾曲する疾患。側湾症、脊柱側湾症とも呼ばれます。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。正常な脊椎は前あるいは後ろから見ると、ほぼ真っすぐに伸びているものですが、脊椎側湾症の場合には、脊椎が側方、すなわち横方向に湾曲し、脊椎のねじれも加わっています。

湾曲のパターンは主に、3つに分けられます。胸椎を中心に曲がる胸椎カーブ、腰椎を中心に曲がる腰椎カーブ、そして、胸椎と腰椎の間で曲がる胸腰椎カーブです。

脊椎側湾症は痛みを伴うことはまれなため初期における発見は難しく、ある程度進行してから気付く場合が多くみられます。肩や腰の高さが左右で違うなどの外見上の問題のほか、高度の湾曲になると、腰背部痛に加え胸の圧迫と変形による呼吸器障害、心臓の圧迫による循環器障害など内臓にも影響を及ぼしたりします。

日本では、乳幼児の健康診査や学校の健康診断で脊椎検査が行われており、1980年(昭和55年)年ごろよりモアレ式体型観察装置を用いた撮影による検診(モアレ検査)が普及し、早期発見が可能になりました。

脊椎側湾症のうち、原因のわからない特発性脊椎側湾症が80~90パーセントを占めています。発症時期により、0歳~3歳に発症する乳幼児脊椎側湾症、4歳~10歳に発症する学童期脊椎側湾症、10歳以降に発症す思春期脊椎側湾症に細分され、多くが思春期脊椎側湾症であることから、小学校4年生から中学校3年生までの間が特に注意が必要とされ、男子の5~7倍と女子に多く発症します。

曲がりの角度が10度以上の人は女子の2〜3パーセントにいるとされ、軽症なら疾患ではなく単なる骨格の特徴と考えられていますが、成長とともに徐々に進行することもあり、角度が20度以上になると注意が必要です。原因は不明ですが、遺伝も一部関連しているようです。

原因の特定ができている脊椎側湾症としては、先天的または発育段階に生じた脊椎の異常によって発症する先天性脊椎側湾症のほか、脳や脊髄の異常によって発症する神経原性脊椎側湾症、筋肉の異常により正常な姿勢を保てないことによって発症する筋原性脊椎側湾症、神経線維腫(しゅ)症(レックリングハウゼン病)による脊椎側湾症、間葉系疾患であるマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などによる脊椎側湾症、さらに外傷性脊椎側湾症、その他の原因による脊椎側湾症が挙げられます。

脊椎側湾症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、身長、体重の測定に始まり、肩の高さが左右同じかどうか、背中側から見て肩甲骨の高さに左右差はないか、骨盤の傾きはないか、深くお辞儀をした格好で肩や肩甲骨の高さに左右差は出ないか、という4つのチェックポイントを中心に、外観上の骨格の変形を調べます。

特発性脊椎側湾症では、出っ張った側の肋骨(ろっこつ)が盛り上がっているのがはっきりわかります。皮膚にコーヒー色の色素斑(はん)や硬い盛り上がりがあれば、神経線維腫症(レックリングハウゼン病)が原因で脊椎の側湾が起こったと見なします。神経線維腫症は、脳神経や脊髄神経および皮膚の末梢(まっしょう)神経に腫瘍(しゅよう)が発生する遺伝性の疾患で、皮膚に色素が沈着するのが特徴です。

脊椎の側湾の状態を正確にみるためには、X線(レントゲン)検査を行い、いろいろな姿勢でさまざまな角度から、頸椎から骨盤までを長いフィルムで撮影します。また、コブ法という方法で、脊椎の側湾の度合を測り、脊椎の回旋の状態、矯正の可能性なども、各種の計測によって調べます。

X線検査と計測は一定期間ごとに行い、脊椎の側湾の進行、矯正治療の効果などを観察します。特発性脊椎側湾症の場合は、骨の成長が終わる18歳ごろまで半年から1年に1回、X線検査と計測を行います。

整形外科の医師による治療では、コブ法による計測で20~50度の脊椎側弯症は、一般に脇(わき)から腰までを覆う矯正装具を身に着け、脊椎側湾症体操を毎日欠かさず行うことで、曲がった脊椎を矯正します。矯正装具による治療は、骨の成長が終わる18歳ごろまで続け、3~4カ月ごとに脊椎の側湾の状態と装具の適合性をチェックしたり、状態に応じた脊椎側湾症体操の適応を検討しながら進めます。

また、牽引(けんいん)療法やギプスなどにより、脊椎の側湾の矯正と進行の防止を行うこともあります。

コブ法による計測で50度以上に進んだ強い脊椎の側湾は、一般に手術による治療が必要になります。手術の目的は、主として、脊椎の側湾の進行防止、肺の機能障害が出ている場合の悪化防止、著しい変形に対する美容上の矯正などです。腰背部痛を起こしている場合や、神経性の疾患を合併している場合などにも、手術を行うことがあります。

手術は、牽引やギプスによって可能な限り矯正してから行い、背中などを切開して背骨にボルトを入れ、金属の棒でボルトをつなげて固定します。手術後の安静期間を含めると、3〜6カ月の長期間にわたる入院が必要になります。

🇦🇹脊椎披裂

先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害

脊椎披裂(せきついひれつ)とは、先天的に脊椎骨(椎骨)が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害の一つ。二分脊椎とも呼ばれます。

日本国内での発症率は、1万人に5人から6人と見なされています。

母胎内で、脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる神経管が作られる妊娠4~5週ごろに、何らかの理由で神経管の下部に閉鎖障害が発生した場合に、脊椎骨が形成不全を起こします。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。脊椎を構成している一つひとつの骨である脊椎骨は、椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓の2つからなっています。本来、後方部分の椎弓は発育の途中に左右から癒合しますが、完全に癒合せず左右に開いて分裂しているものが、脊椎披裂に相当します。

神経組織である脊髄や脊髄膜が、分裂している椎弓からはみ出し、皮膚が腫瘤(しゅりゅう)、すなわちこぶのように突き出します。これを嚢胞(のうほう)性(開放性)脊椎披裂といいます。

逆に、椎弓が分裂している部位がへこんでいることもあります。これを潜在性脊椎披裂といいます。

脊椎披裂は、仙骨、腰椎に多く発生し、胸椎、頸椎に発生することはまれです。

脊椎披裂の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因としては、胎生早期におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、喫煙、放射線被爆(ひばく)、遺伝要因としては、人種、葉酸を代謝する酵素の遺伝子多型が知られています。

出生した新生児に嚢胞性脊椎披裂が発生している場合、脊椎披裂の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。

多くは、脳脊髄液による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭症(すいとうしょう)を合併しているほか、脳の奇形の一種であるキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。

出生した新生児に潜在性脊椎披裂が発生している場合、無症状のケースと、脊髄神経の異常を伴っていて、幼児期はあまり症状がみられないものの、学童期や思春期になると下肢痛やしびれ感、排尿・排便障害などの症状を示すケースがあります。後者の場合、しばしば脊髄稽留(けいりゅう)症候群、神経腸嚢胞、脂肪腫、皮膚洞、類皮腫、割髄症などの合併がみられます。水頭症、キアリ奇形などの合併は、非常にまれです。

嚢胞性脊椎披裂の治療には、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる生涯にわたる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

脊椎披裂の検査と診断と治療

脳神経外科、小児外科の医師による診断では、嚢胞性脊椎披裂の場合、妊娠4カ月以降の超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には腰背部の腫瘤により病変は容易に明らかになります。脊椎部と頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、嚢胞の中の脊髄神経の有無、水頭症の有無を確認します。

また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

潜在性脊椎披裂の場合は、椎弓が分裂している部位の皮膚のへこみや色素沈着、多毛などの皮膚病変、あるいは皮膚のすぐ下に脂肪組織が蓄積して発生する脂肪腫の存在が発見の切っ掛けになりますが、気付くのが遅れることもよくあります。

脳神経外科、小児外科の医師による治療では、嚢胞性脊椎披裂の場合、生後2、3日以内に背中に露出した形になっている脊髄や脊髄膜を感染から守るために、皮膚と脊髄神経を分離し、皮膚を縫合する閉鎖手術を行います。

仙骨、腰椎、胸椎、頸椎などの奇形が発生した部位により、症状には重度から軽度まで個人差はありますが、下肢障害に対しては車いす、補装具などによる装具療法、理学療法、整形外科的手術による対処を行い、排尿・排便障害に対しては導尿、浣腸(かんちょう)、摘便(洗腸)、下剤、機能訓練による対処を行います。重症例では呼吸障害、嚥下障害による栄養障害への対処、知的障害への療育を行います。

潜在性脊椎披裂の場合、出生時に症状が出ることはないので、治療の対象にはなりません。時に脊髄神経の異常を伴っていることがあるので、経過だけは観察し、ある程度成長した時点でX線(レントゲン)検査、MRI検査などを行い、脊髄神経の状態を調べます。無処置でよいケースもありますが、脂肪腫の切除、脊髄稽留の解除、皮膚洞の切除などの手術が必要なケースもあります。

🇦🇹脊椎分離症、脊椎すべり症

脊椎が前後に分離、および椎体が前方へすべり出し

脊椎(せきつい)分離症とは、脊椎が前方部分と後方部分に切れている状態。円柱状の椎体から出ている弓状の部分である椎弓が、上下の関節突起の間でひびが入ったり分離したりします。

主に、第5腰椎に起こります。脊椎(背骨)の中でも腰椎は特に頑丈にできていますが、日常生活やさまざまな運動で強い力がかかることが多く、比較的弱い椎体と椎弓の結合部分にひびが入ったり、切れたりするのです。背筋が衰え、骨が弱くなっている中高年や、背筋や骨の形成が未成熟の小学校高学年に多くみられます。

脊椎分離症で骨が前後に分離すると、体重や上体への荷重はすべて前方の椎体に集中してかかるために、やがて椎体が前方へすべり出すことがあります。これが脊椎すべり症です。

脊椎すべり症は普通、脊椎分離症が前提にありますが、時には、分離症がないのに椎体がすべっているものがあります。これを無分離すべり症といいます。中年以降の人の第4、または第5腰椎に多くみられ、椎間板が薄く狭くなる椎間板変性や、変形性脊椎関節症の時に起こりやすいものです。

脊椎分離症および脊椎すべり症の原因としては、先天性の骨形成の不全であるとする説が有力ですが、外傷による骨折で分離が生じることもあります。年齢的には、20歳ごろから症状が現れ、年を加えるにつれてひどくなる場合と、あまり進まない場合とがあります。

分離があっても、多くのケースでは痛みがありません。分離した部分が動きすぎると、周囲の組織に炎症が発生し、痛みを感じることもあります。この場合は、脊椎の後方へ出っ張った骨の突起で、背中の正中線上の皮下に触れる骨である棘(きょく)突起を押すと痛み、また、体を動かすと痛むのが主症状。

脊椎すべり症が強くなると、腰椎部の反りが強くなり、棘突起の配列に段差が生じ、腰痛だけでなく、下肢のほうにも頑固なしびれや痛みが出てきます。これは、神経の根元が圧迫されて起こる症状です。

無分離すべり症では、ひどいすべり出しにならないので、神経を圧迫することはほとんどありませんが、変形性脊椎関節症があるために、局所の圧痛や運動痛が起こります。

脊椎分離症、脊椎すべり症の検査と診断と治療

腰の疲労感や鈍い痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。脊椎分離症では、軽症ならば痛みがあまり感じられないこともあるため、無理をして悪化させてしまうことがあるので注意が必要です。

医師のよる治療では、安静、牽引(けんいん)療法、コルセット装着のほか、薬物療法などが行われます。手術が必要な場合には、椎弓の分離した部分を固定する分離部骨接合術や、骨を移植して、2つ以上の脊椎を癒着させて動かないようにする脊椎固定術などが行われます。

脊椎分離症、脊椎すべり症の改善、予防に有効なのは、腹筋運動とストレッチです。腹筋が弱いと腹圧も弱く、腰が反り気味の姿勢になり、腰椎が前にすべりやすくなります。腹筋のトレーニングとともに、腰痛ベルトを併用するのもよいでしょう。中でも、腹圧を高めやすく、不用意に反る姿勢を制限できる幅の広いタイプの腰痛ベルトが、お勧めです。

🇦🇹赤痢

赤痢菌、あるいは赤痢アメーバという原虫の感染に起因する疾患

赤痢とは、赤痢菌あるいは赤痢アメーバに汚染された飲食物を介して感染する疾患。細菌性赤痢、疫痢、アメーバ赤痢の別があります。

このうち、疫痢はかつて乳幼児に起こっていましたが、近年はまずみられなくなりました。細菌性赤痢と同じ赤痢菌によって、高熱、けいれん、意識障害などの重い症状を起こし、多くは短時日で死亡していました。

【細菌性赤痢】

細菌性赤痢とは、赤痢菌によって引き起こされ、血便を生じる急性の感染症。世界中に広く分布する細菌感染症です。

赤痢菌には、志賀赤痢菌(ディゼンテリー菌)、フレキシネリ菌、ゾンネ菌、ボイド菌の4種があります。志賀赤痢菌は、志賀潔によって発見され、志賀毒素という腸管出血性大腸菌O—157の産生する毒素の一つとほとんど同じものを産生し、4種の中で最も病原性が強いものです。フレキシネリ菌も、典型的な赤痢の症状を示します。ゾンネ菌は、日本で70〜80パーセントを占めて最も多いものの、病原性が弱く軽症です。ボイド菌は、日本では非常にまれ。

赤痢菌に汚染された食品や水、氷などを介して感染しますが、感染に必要な赤痢菌の菌量は10〜100個と極めて少なく、食器やはしなどを介して人から人に直接感染することもあります。家庭内2次感染の危険性が高く、約40パーセントでみられます。特に、小児や老人に対しての注意が必要です。

日本でのここ数年の発症者数は年間700〜800人で、20歳代に年齢のピークがあり、14歳までの発症者は全体の約10パーセント程度。国外感染例が70パーセント程度で、国内では保育園、学校、ホテルなどでの集団発生や、牡蠣(かき)を介した全国規模での感染がありました。

典型的な赤痢では、1〜3日の潜伏期間の後、下痢、悪寒、発熱、腹痛、倦怠(けんたい)感が現れます。赤痢菌の種類によって症状の程度に差があり、最も病原性の強い志賀赤痢菌では、1〜2日間発熱があって、腸内からの出血によって粘血便がみられ、トイレにいった後でもすっきりせず、また行きたくなる渋り腹が現れることがあります。

他の3種の赤痢菌では、粘血便をみることはほとんどありません。特に、日本で多いゾンネ菌によるものは重症例が少なく、軽い下痢と軽度の発熱で経過することが多く、菌を持っていても症状のない健康保菌者もいます。

【アメーバ赤痢】

アメーバ赤痢とは、赤痢アメーバという原虫の感染に起因する疾患。消化器症状を主症状としますが、それ以外の臓器にも病変を形成します。

世界各地でみられ、特に熱帯、亜熱帯での発生が多く、年間約5000万人の感染者、4〜10万人の死亡者がいると推定されています。日本においても、マラリアやトキソプラズマ感染症など他の寄生虫感染症に比べ、多くの感染者が発生しているので注意が必要です。

海外の流行地域で感染した人は少なく、男性同性愛者または知的障害者での感染がほとんどです。感染症法において5類感染症に指定されており、医師による届け出によると年間500〜600人の感染者、数人の死亡者があります。

赤痢アメーバは人、サル、ネズミなどの大腸に寄生し、糞便(ふんべん)中にシスト(嚢子〔のうし〕)を排出します。このシストに汚染された飲食物を口から摂取することで、次の人へと感染します。急性期の感染者よりも、シストを排出する無症候性の感染者が感染源として重要です。ハエ、ゴキブリを介した感染も起こります。

感染しても症状が現れるのは、5〜10パーセント程度。現れる場合の症状は、腸管アメーバ症と腸管外アメーバ症に大別されます。

腸管アメーバ症は下痢、粘血便、渋り腹、腸内にガスがたまって腹が膨れ上がる鼓腸、排便時の下腹部痛、不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイチゴゼリー状の粘血便を排出します。多くは、数日から数週間の間隔で増悪と寛解を繰り返します。盲腸から上行結腸にかけてと、S字結腸から直腸にかけての大腸に、潰瘍(かいよう)が好発します。まれに、肉芽腫(しゅ)性病変が形成されたり、潰瘍部が壊死性に穿孔(せんこう)したりすることもあります。

腸管外アメーバ症の多くは、腸管部よりアメーバが血行性に転移することにより、肝臓の膿瘍(のうよう)が最も高頻度にみられます。成人男性に多く、高熱、季肋部痛、吐き気、嘔吐(おうと)、体重減少、寝汗、全身倦怠感などを伴います。膿瘍が破裂すると、腹膜や胸膜、心外膜にも病変が形成されます。そのほか、皮膚、脳、肺に膿瘍が形成されることもあります。

赤痢の検査と診断と治療

【細菌性赤痢】

海外旅行中や旅行後に血便を伴う下痢の症状が現れたら、赤痢を含む細菌性腸炎の可能性があります。検疫所あるいは培養検査のできる医療機関を受診し、便の細菌検査を受けることが必要です。

日本では、細菌性赤痢は感染症法で2類感染症に指定されており、発症者は原則として2類感染症指定医療機関に入院となりますが、無症状者は入院の対象とはならず外来治療も可能です。

医師による診断では、便の細菌培養を行い、赤痢菌が検出されれば確定します。他の細菌による下痢症との区別も、培養結果によります。迅速検査として、赤痢菌の遺伝子を検出する方法も開発されています。細菌性赤痢もしくは病原体保有者であると診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出ます。

治療では、成人にはニューキノロン系の抗菌剤、小児には抗菌剤のホスホマイシンを投与します。生菌整腸薬を併用し、下痢や発熱による脱水があれば点滴や経口輸液による補液を行います。強力な下痢止めは使いません。治療後に再度、便培養を行い、除菌を確認します。最近は、分離される赤痢菌の多くがアンピシリン、テトラサイクリン、ST合剤に耐性があるとされています。

赤痢は世界中どこでもみられる感染症で、特に衛生状態の悪い国に多くみられます。海外旅行中は、生水、氷、生ものは避けることが、重要な予防方法となります。屋台のヨーグルト飲料や氷で感染した例も報告されていますので、不衛生な飲食店、屋台などでの飲食も避けます。

【アメーバ赤痢】

腸管アメーバ症の症状を示す場合は、細菌性の赤痢、潰瘍性大腸炎、クローン病などと間違われることがあります。アメーバ赤痢は一般に全身状態がよく、増悪と寛解を繰り返すことがよくあるものの、腸の穿孔、腸管外アメーバ症などになると命にかかわるので、症状に気付いたら内科、感染症科などを受診します。

医師による診断は、糞便あるいは膿瘍液、大腸粘膜組織の中に、赤痢アメーバ原虫を顕微鏡下で確認することでつきます。同時に、赤痢アメーバの主要抗原蛋白(たんぱく)質を免疫酵素抗体法で検出したり、赤痢アメーバの遺伝子をPCR(DNA配列の断片を大量に増幅する分子生物学の手法)で増幅することにより、直接赤痢アメーバの存在を証明する方法が最も確実です。

また、発症者の血液の中に赤痢アメーバに対する抗体があるかどうかを調べる方法も一般的で、専門の研究、検査機関に一般の医療機関からでも依頼検査ができます。

治療では、メトロニダゾール(フラジール)、チニダゾールの経口投与が一般に有効です。重症の場合には、デヒドロエメチンの静脈注射も行われます。シスト保有者には、メトロニダゾールのほかにフロ酸ジロキサニドが用いられ、有効な場合もあります。放って置くと慢性化し、再発しやすくなります。

予防には、飲食物の加熱、手洗いの励行、適切な糞便処理が有効。また、シスト排出者との接触に注意する必要もあります。

🟥広島で被爆した在外被爆者訴訟、国に賠償命じる判決 広島地裁

 広島で被爆した後に朝鮮半島へ移り住み、健康管理手当が受けられなかった在外被爆者の遺族が国に賠償を求め、請求権が消滅したかどうかが争われた裁判で、広島地方裁判所は、時効が成立するとした国の主張は権利の乱用だとして、国に賠償を命じる判決を言い渡した。  戦後、海外に移り住んだ在外...