2022/08/23

🇲🇸精巣腫瘍(睾丸腫瘍)

精巣にはれ物ができ、がんであることが多い疾患

精巣腫瘍(しゅよう)とは、男性の生殖器官である精巣に、はれ物ができる疾患。悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、睾丸(こうがん)腫瘍とも呼ばれます。

精巣、すなわち睾丸は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。精巣腫瘍の頻度としては10万人に1〜2人の非常に珍しい疾患ですが、好発年齢は0~10歳、20~40歳、60歳以上の3つのピークがあります。

精巣腫瘍は、セミノーマ、胎児性がん、卵黄嚢(のう)腫瘍、奇形腫、絨毛(じゅうもう)がんと呼ばれるものに区分されます。これらのいずれも成人にはみられますが、セミノーマが最も多く、全体の約半数。乳幼児にみられるのは、卵黄嚢腫瘍と奇形腫。

がんでは進行が速く、リンパ管や血管を通じて容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命にかかわることがあります。しかし近年では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになりました。転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治りますが、進行した状態では治療が困難な場合もあります。

なぜがんができるのか、本当の原因はまだわかっていません。ただ、停留精巣や精巣発育不全などの疾患を持っている人、胎児期に母親がホルモン剤投与を受けた人は、精巣のがんになりやすいと見なされています。

症状で最も多いのは、痛みのない精巣のはれです。時には、痛みを伴うこともあります。一般に、痛みもなく、熱もないために放置しておくと、陰嚢の中の精巣の一部が硬くゴツゴツしたり、全体的にはれて大きくなってきます。かなり進行すると、腹部が膨らんだり、せきが出て胸が苦しくなるなど精巣腫瘍の転移による症状が現れます。

精巣腫瘍の検査と診断と治療

精巣のはれ物に気付いた場合には、恥ずかしがらずに泌尿器科の専門医を受診します。

医師による診断では、ほとんどの場合、触っただけで判断できます。判断に迷う場合は、懐中電灯を当てて中身が詰まっているかどうか調べたり、超音波で腫瘍の内部を検査します。診断が確定すれば、血液検査で腫瘍マーカーを調べ、がんが他の臓器に転移していないかどうかを全身のCTやアイソトープを使った検査で詳しく調べます。

治療では、まず腫瘍ごと精巣を取り除きます。陰嚢を切開せず、おなかの下のほうに傷ができる高位除精巣術と呼ばれる方法です。精巣は左右一対ありますから、片方を摘出しても、もう一方が正常に機能していれば、男性ホルモンや精子を産生する能力が低下したり、勃起(ぼっき)能が衰えるような後遺症はありません。

精巣を摘出した後、疾患がまだ全身に広がっていない時は、一般に再発予防の治療が行われます。医療機関によっては、摘出した後、定期的な精密検査のみの場合もあります。このような治療法で転移がない場合には、9割以上治ります。

すでにリンパ節や肺、肝臓、骨、さらに脳などに転移している場合は、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種の抗がん剤による治療が追加されます。1回5日間の点滴を3〜4週間おきに繰り返す方法で、3〜4回行うことが標準的。成人に最も多いセミノーマの場合は、放射線治療も有効です。このような治療で転移があるような進んだがんでも、7〜8割が完治します。

なお、転移が見付からないような初期のがんでも、将来2〜3割に転移が現れるため、予防的な抗がん剤投与や放射線治療を行う場合もあります。

🇲🇸精巣上体炎(副睾丸炎)

精巣に付着している精巣上体に、炎症が起こる疾患

精巣上体炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、炎症が起こる疾患。副睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

発症経過によって、急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)と慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)に分けられます。

【急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)】

急性精巣上体炎の多くは、精巣の上面に付着している精巣上体に起こります。尿の中の細菌などが精巣上体に入り込んで、感染を起こすことが原因です。

通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性精巣上体炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が精巣上体に至ることによって、炎症を起こします。

症状は、陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、精巣そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。精巣に炎症がおよぶことはまれで、精巣にはれ、圧痛は認められません。

【慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)】

慢性精巣上体炎は、急性精巣上体炎の局所症状が完全に消えないで慢性症に移る場合が多いのですが、初めから慢性あるいは潜行性に起こることもあります。また、外傷が誘因となって起こることもあります。さらに、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で炎症が長引く場合とがあります。

尿道炎や前立腺炎を起こした時に、大腸菌、ブドウ球菌などの一般細菌や、クラミジア、淋菌などの性行為感染症菌が尿道や前立腺から精巣上体に逆流し、炎症を起こすのが急性精巣上体炎であり、この治療が不十分であると、細菌が精巣上体の中にこもってしまい、慢性的精巣上体炎を生じると考えられます。

結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされます。尿路性器結核の部分現象として発症するので、睾丸を除く前性器が侵されていることが多く、尿路結核を合併することがしばしばあります。20~30歳代に多い疾患です。

慢性精巣上体炎では、全身症状は乏しく、陰嚢内の違和感や不快感、鈍い痛みが長期に渡って続きます。陰嚢に触ると、精巣上体に硬いしこりを感じます。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いません。結核性の場合も、精巣上体が数珠状に硬くはれ、鈍い痛みが続きます。

精巣上体炎の検査と診断と治療

【急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)】

適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精巣(精索)捻転(ねんてん)症や精巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。精巣上体のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には精巣上体に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、精巣を含めて精巣上体を摘出しなければならないこともあります。

後遺症として、慢性精巣上体炎に移行したり、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

【慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)】

激しい症状がないので放置してしまう場合もみられますが、徐々に悪化してしまったり、他の疾患が見付かったりすることもありますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の側はまず、尿中の白血球や細菌の検査をします。しかし、慢性精巣上体炎では細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定ができないことがあります。細菌が検出されない場合は、結核性を疑って特殊な検査で尿中の結核菌の有無を調べますが、結核菌は検出されずに、手術で精巣上体を摘出した結果、結核感染が証明されることもあります。

また、慢性前立腺炎などの慢性尿路感染や、前立腺肥大症などの他の疾患を合併している場合もあるので、腎臓(じんぞう)、膀胱、前立腺など他の尿路に異常がないかどうか検査します。

治療においては、抗生剤の投与では効果が得られない場合が多いため、消炎鎮痛剤などの痛みと炎症を抑える薬を長期間投与します。不快な痛みが続く場合は、精巣上体を摘出することもあります。

結核性の場合は、他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、結核菌が臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核剤を投与します。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)に、ストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。それでも改善しなければ、精巣上体だけを摘出する手術、あるいは精巣上体を含めて精管、精嚢、前立腺まで摘出する根治手術を行うこともあります。

後遺症として、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

🇨🇿精巣上体結核

結核菌が男性の生殖器である精巣上体に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

精巣上体結核とは、結核菌が男性の生殖器である精巣上体に感染することによって起こる疾患。

副睾丸(ふくこうがん)結核とも、結核性精巣上体炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

精巣上体、すなわち副睾丸は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣、すなわち睾丸の上面、および後面に付着している精巣付属器の一つになります。精巣上体は、内部に精巣上体管を内包していて、この精巣上体管は、精巣で産生している精子の通路である精路の一部になります。 また、精巣上体は、精子を運ぶだけでなく、精液の液体成分である精漿(せいしょう)の一部の産生も行っています。

精路はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

精巣上体結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺、精巣上体、精巣、精嚢腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の精巣上体結核は、結核菌が精巣上体に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、また精路周囲のリンパ管からリンパ行性に感染し、炎症を起こして、精巣上体などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、精巣上体と精巣の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には精巣上体と精巣を破壊することもあります。初めは片方の精巣上体と精巣にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である精巣上体結核の頻度は低下しています。

精巣上体結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、精巣と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

精巣上体結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立線や精巣などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立線がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、精巣上体だけを摘出する外科的療法、あるいは精巣上体を含めて精巣、精嚢腺、前立腺まで摘出する外科的療法を検討することもあります。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば精巣上体結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇨🇿精巣性女性化症候群

男性ホルモンの受け皿が働かないために、外性器が女性化する先天性異常

精巣性女性化症候群とは、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群。アンドロゲン不応症とも呼ばれます。

男性仮性半陰陽(はんいんよう)の発生の原因となる疾患の1つに数えられます。この精巣性女性化症候群では、染色体による性は46XY型の男性であり、男性の性腺である精巣からテストステロンを主とするアンドロゲン(男性ホルモン)が分泌されています。しかしながら、体の中の細胞の表面にあるアンドロゲン(男性ホルモン)受容体という、ホルモンの受け皿のような構造に遺伝子異常があるために、男性ホルモンの全部または一部を感知できません。その結果、外性器になる組織が男性型へ発達することができなくなります。

そもそも、性分化は性染色体による性に規定されます。具体的にはY染色体の有無が性を決定し、Y染色体上のSRY遺伝子が精巣決定因子として作用します。SRY遺伝子を有する男の胎児では未分化性腺から精巣が分化、発生し、SRY遺伝子を有しない女の胎児では卵巣に分化、発生し、それぞれ配偶子が精子と卵子に分かれていきます。

次いで、男の胎児では胎児期精巣のセルトリ細胞からミュラー管抑制因子、ライディッヒ細胞からアンドロゲンが分泌され、それぞれミュラー管の退縮とウォルフ管の発育が起こって、性器の男性化が起こります。

ところが、精巣性女性化症候群の場合、ミュラー管抑制因子は正常に分泌される一方、アンドロゲンの作用が発現しません。その結果、ミュラー管由来の女性内性器(子宮、卵管、腟〔ちつ〕上3分の1)と、ウォルフ管由来の男性内性器(精巣上体、精管、精嚢〔せいのう〕、射精管)はみられないということになります。

精巣性女性化症候群は、X染色体に依存する伴性遺伝であり、多くは母親が保因者となっています。染色体による性が46XX型の女性であれば、精巣性女性化症候群であっても特に症状はなく、疾患として発見されずに保因者となり、家族性に受け継がれることもあります。

精巣性女性化症候群は、アンドロゲンを全く感知しない完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンを不完全に感知する不完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンの一部を感知しない部分型精巣性女性化症候群の3型に分かれます。

完全型精巣性女性化症候群では、外性器は女性型で、上端がふさがっている腟があり、内性器は精巣を持つ男性型で、子宮、卵巣はありません。その精巣は体内にとどまる停留精巣で、造精機能は著しく低下しています。鼠径(そけい)ヘルニア、尿道下裂の合併が多い傾向も示します。第二次性徴は女性化乳房などがみられる女性型を示しますが、子宮、卵巣を持たないため月経はなく、妊娠、出産は不可能です。乳房はやや未発達で、陰毛、わき毛はありません。

不完全型精巣性女性化症候群では、外性器に軽度の男性化が認められ、陰核肥大、陰唇癒合などの男性化兆候がみられます。部分型精巣性女性化症候群では、外性器が男女中間型を示し、男性器とも女性器とも判別しがたい形になることが多く認められます。外性器の形状により、女児もしくは男児として育てられます。

完全型精巣性女性化症候群では、出生時に発見されることはほとんどないため、通常の女児として育てられ、本人も女性として認識して成長します。外見上は正常な女性で、膣も持ち、性交も可能。思春期になって第二次性徴が起きても初潮がない(原発性無月経)ことから、あるいは結婚後に妊娠しないことから、産婦人科などを受診して発見されるケースが多くみられます。

女性として育てられ、思春期あるいは結婚後に、染色体上は男性であるということが診断され、妊娠、出産は不可能と告げられるので、大きな精神的打撃を受ける恐れが大きく、精神的なケアが重要となります。本人や親、夫のショックを配慮して、医師が診断結果を告げないケースもあるといわれています。

出生時に医師や看護師によって、精巣性女性化症候群が発見することが望ましいのですが、思春期や成人後に発見されることもあるのが実態です。思春期になって女の子のはずなのに初潮(初経)がなかったりした場合には、できるだけ早く小児科、あるいは婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

精巣性女性化症候群の検査と診断と治療

小児科、婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科の医師による精巣性女性化症候群の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。

精巣性女性化症候群の治療では、戸籍上の性として育てていく性、生きていく性を決めることが最も大事です。一般的には、染色体や精巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、本人の希望や心理状態をも考慮して、男性か女性かを決めます。完全型精巣性女性化症候群の場合、女性として生きていく人がほとんどとなります。

選択した性に合わせて、女性として生きていく決定をした場合で膣が短く、性交に支障を来すケースでは、腟形成術を行って膣を延長します。男性として生きていく決定をした場合には、陰茎形成術を行います。

体内にとどまる停留精巣はがん化するリスクが高いために早期に摘出手術を行う必要があるといわれていますが、成人前にがん化することは少ないため、現在では第二次性徴が完了した思春期以降に精巣摘出が行われています。思春期前に性腺を除去してしまうと、第二次性徴に必要なホルモン量が自前では不足するためです。

一般の男女でもそうですが、分泌された男性ホルモンの一部は体内で女性ホルモンに変換されて機能しており、完全型精巣性女性化症候群であっても精巣からのホルモン分泌が乳房の発育や女性らしい体形を形作るための重要な供給源となっています。

精巣摘出後は、更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を防ぐために、ホルモン補充療法によって女性ホルモンを補充します。ホルモン補充療法は一生涯に渡るため、精巣摘出の判断は慎重にしなければならず、精巣を摘出せず、こまめに検診を受けて経過観察を行う場合もあります。

部分型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが50パーセントと高いのに対し、完全型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが2パーセントと高くなく、あえて摘出を必須とするほどではないと見なされています。

🇨🇿精巣捻転症(精索捻転症)

男性の精巣が回転して精索がねじれ、精巣への血流が妨げられる疾患

精巣捻転(ねんてん)症とは、精巣が回転して精索がねじれ、精巣への血流が妨げられる疾患。精索捻転症とも呼ばれます。

男性の精巣、すなわち睾丸(こうがん)と、精巣上体、すなわち副睾丸は、陰嚢(いんのう)の底部の固定にされていて、それにひも状の精索がつながっています。精索には、精巣に出入りする血管と、精液の通り路の精管が入っています。精索がねじれると、精巣に通じる血管がふさがれて血行障害を起こすために、6〜12時間で精巣は壊死(えし)に陥ります。

新生児期と、思春期から25歳ごろまでの間に多く発生しますが、どの年齢でも起こる可能性があります。新生児期では、精巣が陰嚢の中で底部に十分固定されておらず回転しやすいことが原因です。思春期では、第二次性徴といって精巣の重量が増える際に、周囲の支持組織が十分でないことが原因と考えられています。

症状としては、精巣部から下腹部にかけて突然、強い痛みが起こります。吐き気、嘔吐(おうと)、時にはショック症状となることもあります。局所は赤くなり、はれを生じ、触ると強い圧痛を覚えます。その際、精巣は上方へ上がっています。

精巣捻転症の検査と診断と治療

発症者は夜中から明け方に突然、激しい陰嚢部の痛みで目が覚めることが多いようです。足の付け根から下腹部にかけて痛みが響くことがあるので、単なる腹痛や虫垂炎(盲腸炎)と間違われることもあります。少しでも精巣捻転症が疑われる場合は、泌尿器科のある総合病院を一刻も早く受診します。

医師の診断は、発症者の症状説明と臨床所見に基づいて行われますが、血液検査、尿検査で感染症が疑われるような異常がないことが1つのポイントとなります。陰嚢を上方に持ち上げた時に痛みが強まるプレーン徴候があり、反対に痛みの和らぐ精巣上体炎と区別できるといわれていますが、はっきりしないことが多いようです。

精巣の血液の流れを確認するためにドプラー超音波検査を行い、血流が確認できないことで診断がより確実になります。

治療としては、精巣捻転症の可能性が高い、あるいは精巣捻転症が否定できない場合は、緊急手術でできるだけ早期に陰嚢を切開し、捻転症であれば精索のねじれを元に戻します。この時、精巣の血流が再開されてきれいな色に戻れば、そのまま陰嚢の中に戻し、精巣を周囲の組織に縫い付ける処置を行い、二度と捻転が起こらないようにします。反対側の精巣もねじれやすいと考えられるので、予防のため同様に固定します。

精索のねじれが強かったり、時間がたちすぎていて、精巣への血液の流れが回復せず壊死してしまった場合は、そのままだと反対側の精巣にも悪影響を及ぼすため、精巣を摘出せざるを得ません。約1時間の簡単な手術で、新生児では全身麻酔、中学生以上なら下半身麻酔で行われます。

🇸🇰声帯委縮

声帯の容積が減少して、声門に透き間ができ、声がかすれる状態

声帯委縮とは、声帯の容積が減少して弓状になり、声を出そうと声門を閉じても透き間ができ、声がかすれる状態。

声帯は、のど仏を形成する甲状軟骨の中にある縦16~20ミリ、横10ミリ、厚さ3ミリほどの細長い粘膜とその回りにある結合組織に包まれた帯状の器官。左右1枚ずつ、計2枚の対になっています。

声の元になる音は、左右2枚の帯状声帯の声門が男性で毎秒100回、女性で毎秒250回左右に開閉して振動を生じ、その振動が口や鼻の中で響きや音色が変えられて実際の声になるのです。また、声帯は、飲食物が誤って肺に入らないように閉じて誤嚥(ごえん)を防ぎ、肺炎を起こさない役目も果たしています。

この楽器の弦のような声帯の容量が減少し、委縮するのが、声帯委縮です。声門がきちんと閉じなくなるため、その透き間から息が漏れて、声がれ、すなわち嗄声(させい)を生じたり、声が小さく弱々しくなる、声が震える、声が詰まって長く続かなくなる症状が起きます。また、声に力が入りにくい、せき込む、のどがむせるなどの症状が同時に現れる場合もあります。

声帯委縮を来す代表的な要因としては、加齢に伴う変化、声帯まひ、声帯溝症があります。加齢に伴う変化は高齢者、特に男性に多くみられ、声帯全体が弓状に委縮して生じます。声帯まひは、声帯を動かす神経のまひによって生じます。声帯溝症は、声帯粘膜の縁に前後に走る溝状のくぼみができるもので、生まれ付きのこともありますが、後から炎症などが原因となって生じることもあります。

長年の声の使いすぎによるものや、原因不明のものもあります。20歳代~50歳代の人に起こる場合もあります。

嗄声が続く場合には、とりわけ喫煙者は喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)の可能性も念頭に入れて、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

声帯委縮の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、喉頭ファイバースコピー検査、喉頭ストロボスコピー検査、発声機能検査などを行います。喉頭がんを疑う声帯の所見がある時には、組織を採取して調べる病理組織検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、音声治療を行い、発声訓練によって声帯を若返らせたり、筋肉訓練によって声帯に強い力が働くようにしたりします。

保存的治療を行っても効果がない時や、ある程度以上の声帯委縮がある場合は、手術的治療を行います。手術的治療には声帯内注入術があり、アテロコラーゲンや自家脂肪などを声帯内に注入し、声帯の厚みを回復させます。手術は局所麻酔で行い、声を出しながらよい声が出るまで調節します。手術後は、音声治療による発声訓練などを行います。

手術的治療には喉頭顕微鏡下手術として行う甲状軟骨形成術1型、甲状軟骨形成術4型などもあり、1型では声帯を内部に移動させて、声帯の間の透き間を少なくし、声を出しやすくします。4型では、甲状軟骨とその下にある輪状軟骨とを近付けることで、声帯を前後に引っ張り、緊張を高め、声を高くします。

甲状軟骨形成術1型と4型の手術は全身麻酔で行い、入院が必要です。手術の前日に入院し、入院期間は約3~5日間。また、この手術の後には声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。

声帯委縮を予防するためには、ふだんから声の衛生観念を持って過度の喫煙や飲酒、乾燥した空気を避け、声帯を大事にすることが大切です。声帯の疾患になりやすい声を使う環境を考慮しないと、症状が悪化したり、治療後に病変が再発する可能性があります。

🇸🇰声帯ポリープ、声帯結節

声の乱用で、声帯のふちに結節やポリープが発生

声帯結節とは、声帯のふちに小さな、いぼのような突起ができるもの。声帯ポリープとは、声帯結節が大きくなって、キノコ状になったもの。

声帯結節は、両側の声帯のふち、それも前3分の1くらいにできます。この声帯結節はまた、歌を歌う人にできやすいため、謡人(ようじん)結節とも呼ばれています。声帯ポリープも、声帯の前3分の1にできることが多く、通常片側に発生します。ポリープの大きさはさまざまで、まれに両側の声帯にできることもあります。ポリープができると、発声時の声帯の強い振動で、ポリープの中に出血することがあります。

また、声帯全体がぶよぶよに、カエルの水かきのようにはれることもあります。これをポリープ様声帯と呼んでいます。さらに、声帯のすぐ上に喉頭(こうとう)室というくぼみがありますが、その粘膜がぶよぶよとはれ、声帯ポリープのように飛び出してくることがあります。これを喉頭室脱出症と呼んでいます。

声帯ポリープなどの原因は慢性喉頭炎と同じように、声の使いすぎにあるといわれていますが、不明な点もたくさんあります。カラオケ、怒鳴り声、演説などの一過性の急激な発声が誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて内出血を起こし、ポリープなどを形成するという説が有力です。

声がれ、すなわち嗄声(させい)が声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、喉頭室脱出症ともの主症状ですが、のどの違和感や発声時の違和感などの症状を示すこともあります。突起が大きくなると、息苦しさなどの呼吸困難を起こすようになります。

声帯ポリープ、声帯結節の検査と診断と治療

疾患の症状に気付いたら、声をなるべく使わないようにして、のどの安静を心掛けます。それでも2週間で改善しなければ、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診します。

医師による診断は、喉頭に小さな鏡である喉頭鏡を入れたり、鼻からファイバースコープを入れて、声帯を直接観察し、ポリープなどを確認すればすぐつきます。喉頭がんなど他の疾患との鑑別が、必要なこともあります。

治療では、突起がごく小さい場合は、発声を制限し、消炎剤の投与や蒸気吸入、薬剤吸入(ネブライザー)を行います。この治療法以外では、手術が早くて確実です。声帯は狭く、深く、小さいところなので、手術は一般的には入院の上、全身麻酔で顕微鏡下に行い、ぶよぶよの個所を切開したり、切除します。

全身麻酔が不可能な場合や、入院を希望しない場合などは、外来でファイバースコープを用いて摘出することもあります。また、この手術の後には声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。

声帯ポリープは悪性化はしませんが、まれにポリープのような外観のがんがあるので、摘出されたポリープは病理組織検査で、悪性化の有無をチェックします。

なお、声帯ポリープや声帯結節などは、職業で声帯を酷使しなければならない場合には、再発の可能性があります。

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