動脈硬化などで血液の流れが悪くなり、脳内の血管や中枢神経が障害を受けると、突然手足が動かなくなったり意識がなくなる発作が起こります。これが脳卒中です。 治療技術の進歩により、年々死亡率は低下していますが、逆に脳卒中にかかる人の数は増加しています。高齢化が進んだり、食生活が欧米化することによって、動脈硬化の原因となる高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が増えてきたことに原因があると思われます。
脳卒中は、以下の2つに大きくわけられます。
脳出血(脳内出血、クモ膜下出血) 脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)
脳内出血は、長期間の高血圧状態により、脳内の動脈に強い圧力がかけられた結果、血管がもろくなり破れて出血するものです。
症状は出血した部位により異なりますが、出血によって脳内の圧力が高まるため頭痛や吐き気が見られ、時間の経過とともに半身が麻痺したり、意識がもうろうとすることもあります。
出血が少なければ症状は軽く薬物療法で対応することも可能ですが、根本的には高血圧体質を改善する必要があります。
日中に起こることが多く、仕事中や運動中、入浴時などに起こります。
クモ膜下出血は、脳の表面にある血管が破裂して、脳を覆っている柔らかい膜(クモ膜)の下に出血が広がった状態です。
原因は脳の表面を走る動脈にできたこぶが破裂するものが最も多く、中高年の人に多くみられます。
症状としては、前触れなしに突然激しい頭痛が起こり、「バットで殴られたような痛み」とも表現されます。嘔吐、痙攣が見られることもあります。
また、時間とともに後頭部から首の後ろが痛んで硬くなり、首が曲がらなくなり硬直してきます。出血が起こるのが脳の表面であるため、発作時に手足の麻痺が起こることは少ないものの、出血がひどくなると、時には言語障害や半身麻痺を引き起こします。
発作後2週間以内の再発率が高く、その場合は死亡の確率が非常に高くなるため、繰り返し頭痛が続くなどの兆候がある場合は、いつでも医療機関と連絡がとれるような体制をつくっておくことが必要です。
脳血栓は、脳の血管に動脈硬化などが起こり、細くなった部分に血栓が詰まった状態です。血圧が低下すると血流がさらに弱まるため、血圧の低い睡眠中や起床時に起こりやすい病気です。
突然、手足に力が入らなくなったりする症状が出たら要注意で、そこから少しずつ麻痺が進んでいくケースが一般的です。
症状は、動脈硬化とともに徐々に進行していきますが、発症の兆候としては頭痛、めまい、言語障害、半身麻痺などが見られます。
脳塞栓は、血栓が血液の流れに乗って脳の血管の中に入り、血流を止めてしまう状態です。
発作は突然起こり、手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らなくなるなどのほか、言葉が出ない、人の顔の判断がつかない、道がわからない、など痴呆に似た症状が出ることもあります。
私たち人間の脳には身体全体の約30%の血液が必要ですが、血流が不足して酸素が行きわたらなくなると、脳細胞は大きなダメージを受けます。
今までに脳卒中を起こしたことがある人や、高血圧、心臓病、糖尿病、高脂血症などの病気にかかったことがある人、オーバーウエイトの人は、特に注意が必要です。
脳卒中は、命はとりとめても言語や運動機能に大きな障害を残すことが多いため、早期発見と予防が何よりも大事です。
* 手足のまひ
* ろれつが回らない
* 激しい頭痛・めまい・吐き気がある
* 視野がせばまる
など脳卒中の前ぶれがあった時は、ただちに医療機関にかかるようにします。
血管は加齢とともに弾力性が落ちていきますから、年齢が上がると発症しやすくなります。また、心臓に障害がある場合に起こりやすくなるので、不整脈、弁膜症、心筋梗塞などの心配がある方は、特に注意が必要です。
食生活などに気を配り、ストレスをためないようにしましょう。定期的に脳ドックによる検査を受けることも、お勧めします。
このほか、夏は脱水症状にならないよう適度な水分補給を心掛けましょう。夏は発汗のために血液が濃くなり、血栓ができやすくなるからです。
また、冬は気温が下がり、血管が収縮して血圧が高くなる傾向にあるので、入浴や外出時など急激な温度差には十分注意して、心臓や血管に過度の負担をかけないようにしましょう。