塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、厚生労働省は11月下旬にも緊急承認制度の適用の可否について専門家による再審議を行う方向で調整に入りました。承認されれば、5月に創設された同制度の初適用となる見通し。
ゾコーバを巡っては、塩野義が中間段階の臨床試験(治験)の結果をもとに同制度適用を目指したものの、7月の厚労省の専門家会議で「有効性が推定できない」として承認が見送られ、継続審議となりました。
再審議は前回と同様、薬事分科会と専門部会の合同で公開で行われ、塩野義が提出した最終段階の治験データをもとに適用の可否が審議されるとみられます。
同社は9月に、最終段階の治験で効果を確認できたとする解析速報を公表。オミクロン型に特徴的な症状の消失までの時間が偽薬投与群に比べて短いことが確認できたとしていました。
ゾコーバは細胞内に入ったウイルスの増殖を抑える働きがあります。軽症、中等症患者向けで、服用が感染初期に1日1回(5日間)と使いやすく、医療機関や患者の負担軽減になると期待されています。
緊急承認制度は、感染症のパンデミック(世界的大流行)などの緊急時におけるワクチンや治療薬の迅速な実用化を目指すもので、中間段階の治験でも安全性が確保され有効性が推定されれば使用が認められます。塩野義は5月に適用を申請しました。
政府は承認されれば100万人分を購入することで塩野義と合意しています。
一方、塩野義製薬の手代木功(てしろぎ・いさお)社長は10月31日の決算発表記者会見で、年内の承認申請を目指す新型コロナウイルスワクチンについて、従来型に対応したワクチンで承認を得た後、オミクロン型と従来型の両方に対応した「2価ワクチン」の準備も進めると明らかにしました。アメリカのファイザー製とアメリカのモデルナ製の2価ワクチンは追加接種で使用が始まっています。塩野義製は副反応が少ないことが指摘されており、追加接種にも使えるようにします。
塩野義はワクチンの最終段階の臨床試験(治験)を進めています。手代木社長は「どんなに遅くても年内には承認申請したい。まずは(従来型に対応した)オリジナルで承認をいただきたい」と強調。「追加接種で使ってもらえるよう、変異型に対応したワクチン製造も準備している」と述べました。
2022年11月1日(火)