塩野義製薬が10日に発表した2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、同社が開発した国産初の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」などが貢献し、売上高に当たる売上収益は前期比27・3%増の4266億円、最終利益は62・0%増の1849億円で、いずれも過去最高を更新しました。2024年3月期の業績予想では、昨年11月に承認申請した新型コロナワクチンとゾコーバを合わせた売上高計1050億円を見込みました。
ゾコーバは昨年11月に緊急承認されて、政府が200万人分を購入し、今年3月末に一般流通が始まりました。ゾコーバの売上高は政府の購入分で1000億円、一般流通分が47億円でした。研究開発費は同社全体で過去最高の1024億円に上り、手代木(てしろぎ)功社長は記者会見で「それでも最高利益を更新できたことに自信を深めている」と述べました。
2024年3月期連結業績予想は、売上収益が5・5%増の4500億円、最終利益が16・2%減の1550億円。
コロナの飲み薬はアメリカのメルク製、アメリカのファイザー製と合わせた3剤とも国内での処方が伸び悩んでいます。手代木社長は「医療機関で実績を積み重ね、最新の安全性データを提供するなどの活動を地道に続けていくしかない」と語りました。
ゾコーバは9月末まで全額が公費負担となるものの、特例措置が終わると、窓口で3割負担の場合は治療1回当たり1万5000円超の自己負担となる見通し。手代木社長は「(10月以降の)下期はかなり使用が減る」とし、承認申請済みの韓国と台湾などを念頭に「アジアの市場に期待している」と語りました。
一方、コロナのワクチンは定期接種での使用を想定しています。手代木社長は「政府が懸命に審査しており、今年の秋ごろまでに提供開始できれば」と期待を示しました。
2023年5月11日(木)