2023/06/04

🟧出血性胃潰瘍で死亡の男性を労災と認定 富山労基署が消化器系疾患では「異例」の判断

 富山市の電気設備工事会社に勤める男性(当時62)が2021年、出血性胃潰瘍(かいよう)を発症して死亡したのは長時間労働などが原因だとして、富山労働基準監督署が5月、労働災害と認定したことが、明らかになりました。消化器系の疾患で過労による労災が認められるのは異例。国の労災認定の基準が脳・心臓疾患と精神障害・自殺に限られている現状への課題を指摘する声もあります。

 遺族や代理人の松丸正弁護士(大阪弁護士会)によると、男性は1986年から技術者として勤務し、2020年8月の定年退職後にも再雇用され、嘱託で働き続けていました。大手ゼネコンから受注した放送局の電気設備工事の現場責任者を務めていたものの、徐々に長時間勤務となる日が増え、2021年12月に自宅で出血性胃潰瘍を発症して倒れ、病院に搬送されたものの死亡しました。

 男性の時間外労働は、死亡前の直近1カ月が約122時間、その前の1カ月が約113時間に上りました。国が定める労災認定の目安は消化器系の疾患にはなく、脳・心臓疾患は「月100時間、または2~6カ月間平均でおおむね月80時間」などとされます。労基署は、男性が現場責任者として、ゼネコンとの打ち合わせや部下への指示、工期や仕様の変更への対応などもあり、長時間労働やストレスで胃潰瘍を発症したと認定しました。

 消化器系の疾患で労災が認められるケースは極めて少なくなっています。国は2001年、脳・心臓疾患について労災の認定基準を策定。2010年改正の労働基準法施行規則には、精神障害・自殺を加えた3種類を、長時間労働や、業務による心理的負担との因果関係が医学的に確立したものとして明記しました。労基署の認定業務の迅速化につながり、2017~2020年度、計2989件の労災が認定されました。

 一方、これら以外の疾患は「その他」と分類されて認定基準がなく、同じ期間中の労災認定はわずか2件。厚生労働省の検討会で5年に1回ほど、追加すべき疾患があるかが議論されるものの、消化器系は「過去10年ほど逆上ったが議論になっていない」と同省はいいます。

 認定基準がない疾患は労災認定のハードルが高いとみられ、労働者や家族らが申請自体を控える事例もあるとみられます。申請しても労基署で労災と認められず裁判で争い、十二指腸潰瘍を発症した貿易会社員の男性をストレスが原因の労災として認めた最高裁判決(2004年)があります。

 男性の勤務先の電気設備工事会社は、「労災認定の事実確認ができておらずコメントは差し控えます」としています。

 島田陽一・早大名誉教授(労働法)は、「認定基準のない消化器系の疾患で労災が認められた意義は大きい。今後、過労による消化器系疾患についても認定基準が設けられる可能性があり、行政はすでに基準のある心臓・脳疾患、精神障害以外でも起こり得ることを前提に丁寧に認定業務に当たるべきだ。また、定年後の再雇用は1年更新などと短い場合が多く、その不安定さや賃金の安さが労働者のストレスになるリスクもある。国や企業は「労働力を安く使う制度」となっていないか、働き手の保護策が十分か見詰め直す必要がある」と話しています。

 2023年6月4日(日)

🟧秋田県の自殺率、3年ぶり全国ワースト 10万人当たり22・6人

 厚生労働省が2日発表した2022年の人口動態統計(概数)で、秋田県の「自殺率」(人口10万人当たりの自殺者数)が前年から3・8ポイント増の22・6となり、2019年以来、3年ぶりに全国ワーストとなりました。全国平均の17・4を大きく上回っています。

 自殺者数は前年比32人増の209人でした。秋田県の自殺率は1963年以降、全国平均を上回っており、2003年は44・6に達しました。民間団体と行政、大学が連携して相談窓口の充実や啓発、居場所づくりを展開して、自殺率は徐々に下がり、2020年には初めて20・0を切りました。2021年も18・8となっていました。

 秋田県は大学と連携して自殺予防に取り組む相談員向けの講習会を充実させたり、経営者向けのストレスマネジメント研修を強化したりするとしています。

 一方、出生数の減少も深刻で、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数「合計特殊出生率」は、前年から0・04ポイント減の1・18と過去最低を記録しました。

 2022年の1年間に生まれた子供の人数(出生数)は3992人で、前年から343人減り、過去最も少なくなりました。人口1000人当たりの出生数を示す出生率は前年から0・3ポイント減の4・3、死亡率は前年から1・6ポイント増の18・6で、いずれも全国ワーストを記録しました。出生率から死亡率を差し引いた「自然増減率」はマイナス14・3でした。

 婚姻数も前年比171組減の2447組。婚姻率は前年比0・2ポイント減の2・6で、23年連続で全国最下位。

 秋田県の自殺率について佐竹敬久知事は「全国以上の増加率となっており年代や原因に応じた対策を強化し、支援を更に充実させる」とし、少子化対策については「若年女性の県内定着と回帰の促進や賃金水準の向上に一層力を入れて取り組む」とコメントしています。

 このほか、がんと脳血管疾患の死亡率が全国で最も高く、新型コロナウイルスの死亡率は全国で3番目に高くなりました。県は高齢化率の高さが原因としています。

 2023年6月4日(日)

2023/06/03

🟧富山化学開発の「アビガン」、希少疾病用医薬品に指定へ マダニ感染症の治療に期待

 富士フイルム富山化学(東京都中央区)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」が、5月29日の厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で、薬事承認申請の優先審査など優遇措置を受けられる「希少疾病用医薬品」への指定を認められました。アビガンはマダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症に効果があるとされ、実用化に向けた試験開発の加速化が期待されます。 

 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件に合う医薬品として、厚労相が指定します。アビガンは6月にも指定される見通し。

 アビガンは新型コロナウイルスの治療薬としては承認を得られなかったものの、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」 (SFTS)に効果がある医薬品として関係者から注目されていました。

 SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もあります。国内では昨年、過去最多の118人(速報値)、今年も5月14日時点で43人が感染しています。ワクチンや有効な治療薬はありません。富山県内では昨年5月、犬2匹が感染し、11月には60歳代女性の陽性が確認されました。

 過去の臨床研究では、アビガンを投与した患者23人のうち19人が回復し、致死率が17・4%まで低下しました。

 希少疾病用医薬品の指定を受けると、研究開発促進に向けた国の支援が受けられます。助成金の交付、試験開発の指導・助言を受けることができ、他の製品より先に承認審査が行われます。

 アビガンの共同開発者で富山大名誉教授の白木公康氏は、「死亡率が30%のSFTSに対し、富山発のアビガンが使用されることはよいニュースだ」と話しています。

 2023年6月3日(土)

🟧「国立健康危機管理研究機構」創設へ コロナを教訓に感染症研究と臨床の融合

 今後の新たな感染症に備え、アメリカの疾病対策センター(CDC)をモデルにした「国立健康危機管理研究機構」を創設する法律が、参議院本会議で可決・成立しました。

 成立した法律は、新型コロナ対応を教訓に、新たな感染症の発生に備えて、基礎研究などを行う「国立感染症研究所」と臨床医療を行う「国立国際医療研究センター」を統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を創設するものです。

 厚生労働省によりますと、患者の診療とウイルスなどの分析を同時に行うことで、感染症が流行した初期段階で、患者の待機期間やワクチン接種の考え方などを政府に示すことができるとしています。

 5月31日の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。

 一方、立憲民主党や共産党、れいわ新選組は、「統合しただけでは実効性が不十分だ」などとして反対しました。

 新機構は「特殊法人」となり、理事長は厚生労働大臣が任命します。政府は、2025年度の創設を目指しています。

 2023年6月3日(土)

🟧味の素、「Cook Do」約11万個を自主回収 社内基準以上の水が含まれる

 味の素は2日、合わせ調味料の「『Cook Do きょうの大皿』〈肉みそキャベツ用〉3~4人前」の一部製品が社内の品質基準を満たしておらず、自主回収すると発表しました。

 製造工程で使用する水が規定以上に含まれ、品質基準を満たしていないためといいます。水は飲料水で、食べても健康被害はないとしています。

 同社によると、回収対象は3月16日に製造され、商品記載の賞味期限が2024年9月で、横に「/HN+A」と記載されている商品で、11万2360個が対象となります。消費者からの指摘で判明しました。

 同社は「お客さま、取引先に深くおわびする」としています。

 着払いで送付すると、商品代金相当のクオカードが送られます。問い合わせ先はフリーダイヤル(0120)394010で、午前9時半~午後4時半に受付。  

 2023年6月3日(土)

🟧東京都の補助金不正請求は11事業者で計183億円に コロナのPCR検査数を水増し

 東京都で新型コロナウイルスの無料PCR検査事業を行っていた事業者が不正に補助金を請求していたとして、都は一部の事業者に対する補助金約183億円の交付を取り消し、そのうちすでに交付された17億円については返還を求める命令を出しました。

 東京都は2021年12月末から今年5月7日まで、無症状の都民を対象に無料PCR検査を実施していて、医療機関などの事業者には検査数に応じた補助金を交付していました。

 しかし、検査が適切に行われていなかったとして、東京都は2日、2022度に検査を行っていた588の事業者のうち11の事業者に対し、合わせて183億円の補助金の交付を取り消したと発表しました。このうち5つの事業者に対しては、すでに合わせて約17億円の補助金が交付されていて、都の要請で6億3000万円は返還されました。都は引き続き返還を求めていくといいます。

 11の事業者は美容外科や医療検体の輸送会社、薬局など。所在地は都内のほか、埼玉、神奈川、大阪、和歌山の4府県。最高額は美容外科「medical(メディカル)4 men clinic(メン クリニック)」(東京都中野区)の69億円でした。実際の検査数の8〜9倍を申請した事業者もいました。

 都は感染者数が減少傾向にある時期でも検査数が減らないなど、不正が疑われる事業者への交付を保留してきました。

 東京都によりますと、事業者へのヒアリングや現地調査で、検査数の水増しや、患者の検体採取の際に事業者が立ち会わない、などの不正が確認されたということです。

 都の担当者は、「今年度の実績報告についても徹底的に調査し、不正があった場合は厳正に対処していく」としています。

 2023年6月3日(土)

2023/06/02

🟧マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ、改正法可決・成立 健康保険証は来年秋に廃止

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化や、マイナンバーの利用範囲の拡大などを盛り込んだ改正マイナンバー法など改正関連法が、2日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

 改正法の成立によって健康保険証は来年秋に廃止され、マイナンバーカードと一体化されます。

 一方で、カードをなくした人なども保険診療を受けられるように、健康保険組合などが「資格確認書」を提供し、現在の健康保険証も廃止後、最長1年間は有効にする経過措置を設けることなどが盛り込まれています。

 マイナンバーは法律により、社会保障と税、それに災害対策の3分野に利用できる範囲が限定されていますが、今回の改正法によって自動車にかかわる登録、国家資格の更新、外国人の行政手続きなどの分野にも、範囲が広がります。

 例えば、自動車の登録では引っ越しで住所が変わり、車の保管場所の証明などを申請する際、マイナンバーカードを使ったオンライン申請が可能になり、住民票の写しを取得する必要がなくなります。

 美容師や建築士などの国家資格では、資格を更新する際にオンラインでの申請が可能になります。

 これまでは法律でマイナンバーを使える行政機関やその内容などが規定され、新たに追加する場合は、その都度、法律の改正が必要でした。

 今後は法律で規定されている3つの分野と、今回新たに定められる分野では、すでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば、法律の改正をしなくても省令などで定めれば利用の範囲を拡大できるようになります。

 マイナンバーの改正法などの成立を受けて河野太郎デジタル大臣は、閣議後の会見で、「今回の法改正によって各種の事務手続きや添付書類の省略など、マイナンバーカードの利用の促進が実現され、国民生活の利便性の向上につながっていくと思います」と述べました。

 2023年6月2日(金)

🟩世界の糖尿病患者、過去32年で倍増

 世界の成人の糖尿病患者の割合は過去30数年で倍増し、特に途上国での増加が著しいとする論文が14日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載されました。  イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らによると、成人の糖尿病患者は1990年には全成人のうち7%でしたが、202...