ヨーロッパでは1980年代以降、世界平均の2倍のペースで温暖化が進んでいることが、19日公開された国連(UN)とヨーロッパ連合(EU)による報告書で明らかになりました。昨年は観測史上最も暑い夏となりました。
国連の世界気象機関(WMO)とEUの気候監視ネットワークであるコペルニクス気候変動サービス(C3S)がまとめた報告書「ヨーロッパの気候の現状2022」は、ヨーロッパではこの結果、干ばつで作物が枯れるほか、記録的な海水面温度や前例のない氷河の融解が起きると指摘しています。
昨年の気温は産業革命前に比べ、約2・3度高くなりました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインなどでは史上最も温暖な1年となりました。報告書は、気候変動に伴い、生命を脅かすような熱波がより頻繁に起きるようになると指摘しています。
世界の気温は、1800年代中ごろと比べ平均1・2度近く上昇しています。
報告書によると、ヨーロッパの気温は1991~2021年の30年間で1・5度上昇しました。
ヨーロッパでは昨年、高温により1万6000人以上が死亡。極端な気候を原因とする損害額は20億ドル(約2830億円)相当に上り、その大半は洪水や嵐によるものでした。
C3S幹部、カルロ・ブオンテンポ氏は報告書で「残念ながら、一度限りの出来事や変則的な現象だと考えることはできない」と指摘しました。
ヨーロッパの大半の地域では昨年、降水量が例年を下回りました。農業生産は打撃を受け、貯水池の水位は下がり、山火事が発生しやすい条件がそろいました。フランス、スペイン、ポルトガル、スロベニア、チェコの各地で大規模な山火事が発生。総延焼面積はヨーロッパ史上2番目の規模となりました。
スペインの貯水量は昨年7月までに、総貯水容量の半分以下にまで減りました。フランスでは農地の一部でかんがいができず、ドイツでは干ばつで穀物やブドウの収穫に大きな影響が出ました。
報告書は、今後、干ばつや熱波などはより頻度が増え、激しくなるとして警鐘を鳴らしています。
一方で、昨年の風力と太陽光の発電の合計は、石炭や天然ガスの発電量をいずれも上回ったとしていて、WMOは、化石燃料への依存を減らすためにも再生可能エネルギーなどの利用を増やすことが欠かせないと訴えています。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前と比べた地球の平均気温の上昇幅を1・5度に抑えることを目標にしています。
2023年6月21日(水)