2023/09/05

🟧マダニが媒介するSFTSの感染者が過去最多ペース 北日本に分布拡大

 マダニが媒介する感染症の患者が増加しています。かまれて感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の2023年の報告は8月下旬までに100人を超え、過去最多だった2022年の同時期を上回りました。ウイルスを持つマダニの分布が北日本に拡大しているとの研究もあります。専門家は山や草むらで肌を露出しないよう注意を呼び掛けています。

 SFTSの潜伏期間は6〜14日間ほどで、発熱や全身のだるさ、下痢といった症状が出ます。重症化すると意識障害や出血症状が起き、死亡することもあります。現時点で有効な薬やワクチンはなく、治療は対症療法が中心。

 国立感染症研究所によると、8月20日までに108人の感染が報告されました。2022年の同じ期間と比べて約3割多く、通年(116人)に迫る水準となっています。感染したネコやイヌを診療した時などに獣医師らがうつったとみられる事例もあります。

 福岡県では8月に、マダニにかまれた80歳代女性が死亡しました。久留米市保健所によると、1日に農作業中に足をかまれて受診。発熱や下痢が続き、転院先で13日に亡くなりました。県の研究機関による検査で、SFTSへの感染が確認されました。

 SFTSは2013年に、海外渡航歴のない人の感染が国内で初めて報告されました。感染症研究所によると、同年から2023年7月末までに確認された患者900人のうち、少なくとも101人が死亡しました。患者数は2022年まで2年連続で、過去最多を更新しました。

 背景について、札幌市医務・健康衛生担当局長を務める西條政幸・感染症研究所名誉所員は、「認知が進み、診断につながるケースが増えたことが大きい」と分析します。マダニが吸血するシカやイノシシといった野生動物が人の生活圏で確認される頻度が高まっていることも一因とみています。

 マダニの分布は拡大しているとみられます。山形大学と森林研究・整備機構は8月下旬、東北地方の離島で複数の南方系マダニ類の生息を確認したと発表しました。この離島には哺乳類がほぼ生息しておらず、渡り鳥に付いて離島を経由するなどして北方に生息を広げている可能性があります。

 見付かった南方系マダニ類の中にはSFTSを媒介する種もいました。研究を率いた山形大の小峰浩隆助教は、「気候変動に伴い、南方系マダニ類の生息に適した環境が北に広がりつつあることが考えられる」と説明しています。

 マダニが媒介する感染症はSFTSのほかに、日本紅斑熱などがあります。分布の拡大で、こうした感染症の発生地域の北方への拡大も懸念されます。

 マダニから身を守るには、肌の露出を減らすことが重要。感染症研究所は長袖、長ズボンの着用に加え、タオルを巻いて首を覆う、ズボンの裾を靴下の中に入れるといった対策を挙げています。

 かまれた場合に無理に取り除こうとすると、マダニの口が皮膚に残って化膿(かのう)する恐れがあります。皮膚科など医療機関で処置を受け、数週間は発熱など体調の変化に注意する必要があります。

 2023年9月5日(火)

🟧熱中症で救急搬送、全国で4195人 前年同期比3倍に上る

 危険な暑さが相次ぐなど厳しい残暑となった3日までの1週間に熱中症で病院に運ばれた人は全国で4100人余りと、前の週と比べ減少しましたが、昨年の同じ時期と比べて3倍に上っていることが、総務省消防庁のまとめでわかりました。

 総務省消防庁によりますと、8月28日から9月3日までの1週間に熱中症の疑いで病院に救急搬送された人は、全国で合わせて4195人でした。

 前の1週間より3229人少なくなったものの、昨年の同じ時期と比べて3倍余りに上っています。

 このうち死亡したのは3人で、入院が必要な「重症」や「中等症」が合わせて1335人、「軽症」が2813人でした。

 年齢別では、65歳以上の高齢者が2402人と最も多く半数余りを占めたほか、18歳以上65歳未満が1357人、7歳以上18歳未満が413人、0歳から7歳未満が23人でした。

 都道府県別では、東京都が335人と最も多く、次いで埼玉県が308人、愛知県が260人、大阪府が240人、千葉県が207人などとなっています。

 このほか、記録的な残暑となった北海道と東北の6県を合わせると596人で、昨年の同じ時期と比べると約10倍となっています。

 また、場所別では、住居が1611人と最も多く、次いで道路が742人、屋外の競技場や駐車場が512人などとなっています。

 総務省消防庁は、「搬送者数は高止まりの状態から減少に転じたとはいえ、例年と比べると、まだまだ多い状況となっている。だんだん涼しくなっていくとはいえ、残暑が続くとされているので、油断せず熱中症への対策をしてほしい」と呼び掛けています。

 2023年9月5日(火)

🟧高齢者のてんかんに注意を 70歳以上での発症多数

 脳の神経細胞の過剰な活動により、けいれんや体の硬直などの発作が起きる「てんかん」の人口当たり有病率や発症率が70歳以上で特に高いというデータを、厚生労働省研究班が初の全国規模の調査で明らかにしました。発作が起きても認知症など別の病気と診断されている可能性もあり、てんかんであることも想定して治療を考える必要があると指摘しています。

 「有病率」はある時点でその病気になっている人の割合を指し、「発症率」は一定の期間に新たにその病気を発症した人の割合を指します。病気の実態を把握し、保健医療の施策を考えるために重要なデータですが、てんかんでは全国規模で調べられてきませんでした。

 研究班は、2012~2019年に全国の健康保険組合加入者で74歳以下の約990万人から、診断名や使用している薬の情報を手掛かりに約7万7000人のてんかん患者を見付けました。

 有病率は、2012年から2019年にかけて人口1000人当たり5・4人から6・0人とわずかに増えていました。ほかの先進国と同水準だといいます。特に有病率が高いのは70~74歳で、10歳代がそれに続きました。

 発症率は、1年間に人口10万人当たり72・1人でした。男性より女性で少し高く、世代別では0歳と70~74歳が特に高くなりました。

 調査に中心的にかかわった広島大学病院てんかんセンターの飯田幸治センター長は、「子供の病気と考えられがちだが、高齢者が脳卒中や認知症などの神経疾患と合併して発症するケースが多い」とし、高齢化により発症率が高まる可能性を指摘。「てんかんと認知症の症状は似ており、てんかんの薬を使うなど適切な治療で回復が見込めるかもしれない」と話しています。 

 2023年9月5日(火)

2023/09/04

🟧解毒剤に国未承認の「美白」効能広告 名古屋市が薬局チェーンに行政指導

 名古屋市は1日までに、医療用医薬品のインターネット広告で国に承認されていない効能をうたい、医薬品医療機器法に違反したとして関東、中部、関西で「おだいじに薬局」「セルフケア薬局」など約40店舗を展開する「GOOD AID(グッドエイド)」(名古屋市)に広告を取り下げるなど改善を行政指導しました。

 市によると、同社は無料通信アプリ「LINE(ライン)」で登録した顧客に対し、解毒剤成分「グルタチオン」を含む医薬品の広告で、国から未承認の「美白・日焼け予防」「アンチエイジング作用」の効能をうたっていました。また、特定の整腸剤の広告で、「太りにくい体質になりたい人向け」などと宣伝する文章を日常的に送信していました。

 医療用医薬品を一般向けに宣伝することを禁じた「医薬品等適正広告基準」にも抵触していました。

 2023年9月4日(月)

🟧遺体保管中のドライアイスによる中毒死事故、5年間に4件発生 換気の重要性強調

 遺体の腐敗防止を目的に使われるドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んで中毒死したとみられる事故が、2018年以降の5年間に少なくとも4件発生していることがわかりました。いずれもひつぎに納められた遺体に寄り添うなどしていました。全日本葬祭業協同組合連合会(東京都港区、全葬連)は、遺体の安置時は換気に注意するよう呼び掛けています。

 全葬連と消費者庁によると、遺体保存用のドライアイスが原因で二酸化炭素中毒となり死亡したとみられる事故は、2018年に青森県の住宅で1件、2020年に沖縄県の住宅で1件、2021年に宮城、宮崎両県の葬祭施設で1件ずつの計4件ありました。

 亡くなったのは40~70歳代の親族ら。ドライアイスで冷やされた遺体を納めたひつぎにもたれかかったり、近くで横たわったりした状態で見付かりました。故人の顔を見ようとしてひつぎに近寄った際、ドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んだとみられます。

 ドライアイスは、二酸化炭素を冷却して固体にしたもので、常温常圧では気体になります。二酸化炭素は無色無臭で、空気中に約0・03%の濃度で存在しています。濃度が3~4%を超えると、頭痛やめまいを引き起こします。10%になると、視覚障害や耳鳴りを引き起こし、1分程度で死に至ります。

 臨床中毒に詳しい、元筑波大教授で茨城県西部医療機構理事長の水谷太郎さんは、「二酸化炭素は空気より重く、低い方に滞留する性質がある。ひつぎのような閉鎖環境では、ふたが開いていてもたまりやすく、ドライアイスの量などによって、近付いた際に二酸化炭素中毒になる危険性は十分にある」と指摘しています。

 全葬連によると、故人の体格や火葬するまでの時間などによって使用する量は異なるものの、遺体の保管にドライアイスは欠かせないため、今年8月に会員企業に同種事故の有無などを確認するとともに、遺体安置時は換気に十分配慮することや遺族らに注意喚起を行うことなどを求めました。

 水谷さんは、「注意すれば防げる事故。ひつぎに納められた遺体との対面は、換気の行き届いた場所で、複数人で手短に行うことが大事だ」と話しています。

 2023年9月4日(月)

🟧高齢者の電動車いす事故、過去10年で最多ペース 新型コロナ後の久しぶりの操作原因か

 製品評価技術基盤機構(NITE)は8月31日、65歳以上の高齢者による電動車いすの事故が今年1~7月に8件発生し、過去10年で最多だった2018年と2020年の年間発生件数に並んだと発表しました。新型コロナウイルスの「5類」移行で外出機会が増える中、久しぶりの車いす操作に不慣れなことが原因とみています。

 被害状況別では、死亡6件、重傷1件、製品破損1件。事故内容別では電車との接触3件、転倒3件、転落2件でした。

 NITEによると、2013年~2023年7月に発生した高齢者の電動車いすの事故は52件で、死亡(26件)と重傷(16件)で約8割を占めます。

 NITEは、「乗車前に十分に練習し、利用する道路などの状況を介護者とよく確認してほしい」としています。

 2023年9月4日(月)

2023/09/03

🟧訪問介護事業所220カ所が休廃止 市区町村の社協で運営、5年間で13%減

 社会福祉法に基づき全市区町村にある社会福祉協議会(社協)で運営する訪問介護事業所が過去5年間に少なくとも約220カ所、廃止や休止されたことが2日、マスコミの調査で明らかになりました。5年間で約13%減り、現在は約1300カ所。都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるものの、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化などが響いています。

 公的な性格を持つ社協が事業をやめると、採算面などで民間事業者が受けたがらない利用者にサービスがゆき届かなくなる恐れがあります。政府は「住み慣れた地域で最期まで暮らせるように」という理念を掲げていますが、厳しい現実が浮き彫りとなりました。

 調査は、都道府県が所有する介護保険の事業所データから社協の訪問介護を抽出。2018年と2023年(一部は期間が異なる)を比較し、2023年データに載っていない事業所について各社協に廃止や休止かどうか尋ねました。

 社協の訪問介護は2023年現在、全国に1302カ所(休止中は除く)。5年間に44都道府県で218カ所が廃止(統廃合を含む)や休止となっていました。

 都道府県別で訪問介護事業所の減少率が高いのは、鳥取県53・3%(減少数8)、次いで大分県38・5%(同10)、千葉県30・4%(同7)、茨城県28・6%(同10)、栃木県27・8%(同5)の順でした。

 2023年9月3日(日)

🟧摂食障害専門の病院、長野県で初開設へ 全国に患者22万人、県内に患者4000人と推計

 長野県は2025年度上半期にも、摂食障害の患者の専門的な治療、相談を担う「支援拠点病院」を開設することを決めました。県内の医療機関1カ所を指定する方針で、設置されれば県内初となります。県は早期に医療、相談支援につなげ、当事者が安心して暮らせる体制を整備する考えです   摂食障...