2023/12/08

🟧名古屋大学が針を使わぬ「貼る注射器」を開発 衝撃波を発生させ薬剤を粒子で注入

 名古屋大学工学研究科の市原大輔助教らは、針なしで薬剤を体内に注入できる注射器を開発しました。薄いシートを皮膚に貼り、ロケットの打ち上げ時などに生じる衝撃波を発生させて、皮下組織まで薬剤を届けます。自己注射が必要な糖尿病患者や不妊治療中の人などの注射への負担を減らす医療機器として、実用化を目指します。

 物体が音速を超えて進む時に、衝撃波が発生します。爆発が起きた際、離れた場所の窓ガラスが割れるのは衝撃波が出ているためです。

 市原助教らは衝撃波を駆使することで、針なしで薬剤を注入できる手のひらサイズの貼る注射器を開発しました。ばんそうこうのような厚さ0・3ミリメートルの薄いシートで、皮膚に貼って使います。

 瞬間的に高い電流を与えて衝撃波を発生させることで、薬剤を体内に高速で注入することができます。使用する電気エネルギーはごくわずかで、痛みを感じるレベルでもないとしています。

 シートは3層構造になっており、皮膚から一番遠い上層が電流を供給する基盤になっています。中間層は「ブリッジ部」という構造で、電流が流れると一部分にエネルギーが集中して衝撃波が発生します。皮膚に一番近い下層は絶縁体のポリイミドでできており、粒子状の薬剤を塗布し、衝撃波によって皮下組織に注入される仕組みです。

 通常の針がある注射器では、薬剤の粒子を液体に溶かしてから注入していますが、新しい注射器は液体で薄めずに粒子のまま注入します。

 人肌を模したゲルに貼って作動させ、約50マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの粒子が中に入るのを確認しました。この大きさは、市販の注射用の薬剤を液体に溶かす前の粒子の大きさとほぼ同じになります。皮膚から約2ミリメートルの深さまで届き、皮下注射をする時の深さに相当します。粒子が小さいため、針を刺すより痛点を刺激する確率が低く、痛みは少なくなるとみています。

 シートの上層の基盤は導電性のインクを使って印刷して作ることができるため、大量生産が可能。針がないため、廃棄時の管理費用も抑えられる利点があります。

 まずは糖尿病治療や不妊治療などのホルモン剤での実用化を目指し、自己注射の体への負担軽減につなげたい考えです。将来は他の薬剤でも使えるようにして、針あり注射器に取って代わる機器になることを目指します。

 市原助教は、「衝撃波は航空業界では本来は厄介者になる。うまく使いこなすことで、今回、注射器という異分野のデバイスにたどり着いた」と話しています。

 市原助教らは人の皮膚に一番近いとされるブタでの実験を進めています。安全性を確かめ、数年以内の実用化を目指すといいます。

 2023年12月8日(金)

🟧大麻グミ「HHCH」類似商品を取り扱う全国の店舗に立ち入り検査 厚労省麻薬取締部

 食べた人が相次いで体調不良を訴えたいわゆる「大麻グミ」を巡っては、グミに含まれていた成分が指定薬物に追加され、12月から販売などが禁止されています。

 こうした中、厚生労働省の麻薬取締部が、指定された成分に近い別の成分が入った商品を取り扱う全国各地の店舗に対しても、健康被害を広げる恐れがあるとして、立ち入り検査などを行っていたことがわかりました。

 大麻に近い「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という成分が入ったグミ、いわゆる「大麻グミ」を巡っては、食べた人が体調不良を訴えて救急搬送されるなどのケースが相次いだことから、厚労省が「HHCH」を医薬品医療機器法に基づく指定薬物に追加し、12月2日から「HHCH」入りの商品の販売などが禁止されています。

 しかしその後も、「HHCH」に近い「HHCP(ヘキサヒドロカンナビフォロール)」など、類似の成分を含んだ商品が、店舗やインターネットで販売され、体調不良を訴えている人もいるということで、厚労省の麻薬取締部は、健康被害につながる恐れがあるとして、8日までに「HHCP」などの成分が入った商品を扱う東京都新宿区の販売店など、全国各地の店舗に立ち入り検査を行い、販売停止命令を出していたことがわかりました。

 厚労省は「HHCP」など類似の成分についても、早ければ年明け以降にまとめて指定薬物に追加し、規制対象とする方針を示しています。

 2023年12月8日(金)

🟧新型コロナの全国の患者数が2週連続増加 前週比1・18倍

 新型コロナウイルスの全国の感染状況は、11月27日から12月3日までの1週間では、1つの医療機関当たりの平均の患者数が2・75人で、前の週の1・18倍となっています。

 厚労省によりますと、12月3日までの1週間に全国約5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から2084人増えて1万3583人となりました。

 また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は2・75人で、前の週の1・18倍となりました。9月から減少傾向が続いていましたが、前の週から2週連続で増加しました。

 都道府県別では、多い順に北海道が6・82人、山梨県が6・39人、長野県が5・78人、新潟県が4・33人、福島県が4・04人などとなっています。少なかったのは沖縄県1・35人、島根県1・53人、神奈川県1・60人など。

 12月3日までの1週間に、全国約500の医療機関から報告された新たに入院した患者の数は1022人で、前の週と比べて76人増加しました。

 厚労省は全国の流行状況について、「全国的に感染が広がり、2週連続で増加傾向となった。冬になり感染拡大の時期であることからも、感染対策を続けてもらいたい」としています。

 2023年12月8日(金)

🟧「石油・ガス脱炭素憲章」に50社が署名 COP28

 国連(UN)気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)のホスト国であるアラブ首長国連邦(UAE)は2日、サウジアラビアとともに、会議期間中、世界の石油生産量の40パーセント以上を占める50以上の石油・ガス企業が「石油・ガス脱炭素憲章」に署名したと発表しました。

 この憲章は、石油・ガス産業における気候変動対策を加速させることを目的としています。50社のうち、国営石油会社が署名企業の60パーセント以上を占め、脱炭素イニシアチブの実施に向けたコミットメント数としては史上最多となりました。

 憲章は、石油・ガス産業がネットゼロ(カーボンニュートラル))、メタン排出ゼロを達成し、2050年またはそれ以前に日常的なフレアリング(焼却処分)を廃止し、2030年までに業界をリードする排出削減の実践に取り組むことを規定しています。

 同日、COP28議長を務めるUAEのスルタン・アル・ジャベール産業・先端技術相は、世界気候行動サミットの中で、エネルギー転換を加速し、世界の排出量を大幅に削減するための一連の画期的な取り組みである「グローバル脱炭素化アクセラレーター」を発表しました。

 アクセラレーターは、明日のエネルギーシステムの迅速な拡大、今日のエネルギーシステムの脱炭素化、メタンやその他の非CO2温室効果ガスの削減という3つの柱に焦点を当てています。石油・ガス企業に「石油・ガス脱炭素憲章」への参加を促すことも、このイニシアチブの一環です。

 2023年12月8日(金)

2023/12/07

🟧孤独で縮む寿命、アリの研究で改善に手掛かり ストレスで活性酸素増加

 群れで暮らす社会性昆虫のアリを1匹だけで孤立させると寿命が短くなる理由の一端を明らかにしたと、産業技術総合研究所などのチームが7日までに発表しました。ストレスに反応して体内でつくられる活性酸素が、肝臓に相当する器官で増えていました。活性酸素から体を守る抗酸化剤を投与すると、生存期間が改善しました。

 孤立した環境が健康に悪影響を与えるというデータは、人間でも得られています。ただ、他の動物を含めて、何が寿命を縮めているのか詳しくはわかっていません。

 アリは生殖機能を持つ女王アリや雄アリと、生殖機能を持たない働きアリがそれぞれの役割を果たしながら集団生活する社会性生物で、働きアリは孤立すると寿命が縮むことが知られています。そこで、オオアリに2次元バーコードを取り付けて、働きアリを1匹で飼育する孤立アリと、10匹で飼育するグループアリに分け、それぞれの行動量を比較しました。

 その結果、孤立アリは1日目から飼育箱の壁際にいる時間が長くなり、身を隠すための巣の中で過ごす時間が短くなりました。また、グループアリに比べて長い距離をより速い速度で移動することがわかりました。そこで、さらに行動観察を24時間続けた後、孤立アリとグループアリの遺伝子がどのように働いているかを解析しました。

 その結果、孤立アリでは407個の遺伝子がより多くのタンパク質を作るなど活性化する一方、487個の遺伝子の活性が低下していました。特に、過剰になると細胞を傷付ける酸化還元酵素活性を持つタンパク質を作る遺伝子群の働きが大きく変化することや、壁際にいる時間が長いほど酸化ストレスにかかわる遺伝子の活性が高まることなどが明らかになりました。

 そこで酸化ストレスを和らげる薬剤「メラトニン」を投与したところ、孤立アリでは寿命短縮が緩和された一方、グループアリでは寿命に変化はありませんでした。メラトニンと同様の抗酸化作用を持つ他の薬剤を使用しても、同様の結果が得られました。

 この結果から、チームは「酸化ストレスを和らげることで孤立したアリの行動の異常や寿命の短縮を緩和させることを初めて実証した」と結論付けました。

 さらに、同じ社会的生物である人についても、今回の成果が社会的環境ストレスの緩和や寿命の延伸につながる手掛かりになると期待しています。

 チームの古藤日子(ことう あきこ)・産業技術総合研究所主任研究員(行動生態学)は、「孤立死の仕組みがアリと人間で全く同じだとはいえないが、活性酸素は多くの生物が持っている物質なので、アリを通じて人間で使える薬の候補を探せる可能性がある」と話しています。

 2023年12月7日(木)

🟧イベント弁当を食べた82人が下痢や発熱、ノロウイルス検出で食中毒と断定 愛知県豊橋市の弁当店営業禁止

 12月1日、愛知県豊橋市のスポーツ関係のイベントで配られた弁当でノロウイルスによる食中毒が起きました。82人が下痢や発熱などの症状を訴えています。

 食中毒が起きたのは、豊橋市新栄町にある弁当店「タイショク」が提供した幕の内弁当です。

 豊橋市保健所によりますと、12月3日に、「ソフトテニスの大会で、配られた弁当を食べた複数の人に嘔吐や下痢などの症状が出ている」と大会関係者から連絡がありました。

 保健所が調べたところ、12月1日に市内で開かれていたテニス大会で役員らに幕の内弁当244食が配られ、午前11時~午後8時に弁当を食べたとみられる20~70歳代の男女82人が下痢や嘔吐、発熱などの症状を訴えていることがわかりました。

 このうち男性1人が入院しているということですが、快方に向かっているということです。

 幕の内弁当の中身は、ごはん・ハンバーグ・ミートソーススパゲティ・焼肉・揚げ物(エビフライやコロッケ)・サラダなどが入っていたということです。

 市の保健所は、症状のある人や弁当の調理従事者からノロウイルスが検出されたことなどから、集団食中毒が発生したと断定。6日付けで、弁当店に対し再発防止策が講じられるまでの間、営業を禁止する行政処分を行いました。

 豊橋市は、この時期はノロウイルスによる食中毒が増えることから、トイレの後や調理前は手洗いを十分行うよう呼び掛けています。

 弁当店「タイショク」は保健所から連絡があった4日から自主的に営業を取りやめているということで、「誠に申し訳ない。調理場の除菌と清掃を行い、再発防止をしていく」としています。

 2023年12月7日(木)

🟧ふるさと納税返礼品のそうめんにカビ毒小麦を使用 岩手県花巻市が発送を停止

 JA全農いわてが販売した岩手県産小麦の一つ「ナンブコムギ」から、食品衛生法の基準値を超える「カビ毒」が検出された問題で、岩手県花巻市のふるさと納税の返礼品にも対象の小麦が使われた食品があったことが7日、わかりました。

 基準値を超えるカビ毒が検出された小麦が使われていたのは、花巻市のふるさと納税の返礼品の1つ、「花巻産南部小麦そうめん」です。

 JA全農いわての発表を受けて花巻市は11月29日、この商品の発送を取りやめるとともに寄付の受付を停止しました。

 しかし、7月14日以降に発送され、賞味期限が「2025年5月」と表示されているものが334件あり、市では食べるのを控えるよう寄付をした人にメールで呼び掛けています。

 市は発送されていないぶんを含む合わせて357件、392万7000円の寄付金を返還することを決め、代替品の発送にも対応することにしています。

 これまでのところ健康被害の情報は寄せられていないということです。

 一方、宮城県石巻市は7日、9~10月に市内の小中学校でカビ毒が検出された小麦を使った給食が計3回提供されていたと発表しました。この給食は市内の21の小中学校に提供されましたが、健康被害は確認されていないとされています。

 また、宮城県気仙沼市の小中学校の給食でも、カビ毒が検出された小麦を使ったせんべい汁が提供されていたことがわかりました。

 2023年12月7日(木)

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...