認知機能の低下や認知症は、将来の死亡リスクを高める要因として知られています。この関係に「孤立」がどう作用しているか調べたところ、1人暮らしの場合、同居の人がいるよりも、認知機能低下が死亡につながる関係性は弱かったとの意外な分析結果を、東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームがアメリカの医学誌に発表しました。
研究チームは、2015年に東京都足立区で自宅に居住し、認知症との診断を受けていない65歳以上の約7万5000人に、認知機能や世帯構成、他者との交流頻度などに関するアンケートに答えてもらいました。このデータを、区の協力で得たその後5年間の死亡情報と突き合わせて、認知機能低下と死亡リスク、孤立の状況の関係を分析しました。
その結果、調査時に認知機能が低下していた人は、していなかった人と比べて、5年後までの死亡リスクが1・37倍高くなりました。特に、他者との交流が少ない人の死亡リスクは1・60倍と高く、交流が多い人は1・24倍と低くなりました。
誰かと同居している場合、認知機能低下による死亡リスクは1・43倍だったのに対し、独居の人の認知機能低下による死亡リスクは1・13倍と低くなりました。
調査結果をまとめた社会参加とヘルシーエイジング研究チームの村山洋史研究副部長は、「認知機能が低下すると死亡リスクが高まり、他者との交流が少ないとますますリスクが高まるが、独居は必ずしもそうではない。家事を独りでできるなど、生活力があるから独居できていることもある。孤立の実態を注意深く把握し、支援やケアの在り方に役立てるべきだ」と話しています。
2024年3月19日(火)