厚生労働省は、医療機関が掲げることができる診療科名に「睡眠科」を追加する方針を固めました。診療科名をわかりやすく表記することで、患者が医療機関を選択しやすくします。診療科名の見直しは2008年以来となります。日本人は睡眠時間が短く、睡眠障害は現代の「国民病」ともいわれます。さまざまな病気のリスクを高める恐れがあるため、適切な治療につながることが期待されます。
医療機関が看板などで広告できる診療科名は「標榜(ひょうぼう)診療科」と呼ばれ、厚労省が医療法に基づき定めています。「内科」「外科」「小児科」など単独で使えるものが20種類あるほか、「糖尿病内科」「脳神経外科」など組み合わせで認められているものもあります。それ以外の診療科も開設できるものの、路上や駅での広告や看板などで宣伝ができません。
追加するには、関連学会の賛同を得た上で、厚労省の医道審議会に意見を聞く必要があります。(1)国民の求めの高い診療分野であるか(2)診療科名がわかりやすいか、などの条件を満たしていることが前提となります。
専門医らでつくる日本睡眠学会の調査では、睡眠障害を治療する医療機関(約1200施設)の72%が睡眠科の標榜を希望しています。同学会は日本呼吸器学会や日本循環器学会など関連学会から賛同を得られるよう調整を進めており、今夏にも追加を求める要望書を厚労省に提出する予定です。
これを受け、厚労省は早急に手続きを進める考えです。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせで標榜できる方式を想定しています。
現在、患者は症状に応じ、精神科や耳鼻咽喉科、小児科などにかかっているとみられますが、受診先を探しにくいことが課題となっています。日本睡眠学会は「一目でわかる診療科を求めるニーズは高い」と説明しています。
経済協力開発機構(OECD)の調査(2021年版)では、日本人の1日当たりの平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国中で最短。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は2018年に21・7%に上っています。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがあります。
こうした中、睡眠への関心が高まっています。睡眠の質を高める効果をうたう乳酸菌飲料などが人気となっており、調査会社の富士経済によると、睡眠サポート市場は2015年の43億円から2022年には640億円に急拡大しています。
2024年6月7日(金)