意図しない妊娠を避ける経口避妊薬で、従来の低用量ピルとは異なり、血栓リスクのある成分を含まない新しいタイプの薬を厚生労働省が国内で初めて承認し、今年6月から販売が始まった。女性医療の専門家は、「低用量ピルが使えなかった人も使用できる。女性主体の避妊の選択肢が増えた」と歓迎している。
従来の経口避妊薬は、卵子の発育を抑制して不正出血を減らすエストロゲン(卵胞ホルモン)と排卵を抑制し精子の進入を妨げるプロゲスチン(黄体ホルモン)との2種類の女性ホルモンを配合した薬剤。避妊作用の主体はプロゲスチンで、血管内で血が固まる血栓症の原因となるエストロゲン成分の含有量を減らしてきた経緯から、低用量ピルと呼ばれてきた。
それに対して、近年、プロゲスチンのみを含有する通称「ミニピル」が欧米などで開発され、国内での臨床試験を経て、厚労省が5月に製造販売を承認した。商品名はあすか製薬の「スリンダ錠」。
低用量ピルは血栓リスクがあるため、重度の高血圧の女性や、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、血栓症を発症したことのある人、前兆のある片頭痛のある人は利用できず、肥満や40歳以上の人にも処方が避けられていた。
福島県立医大ふくしま子ども・女性医療支援センターの小川真里子特任教授(産婦人科)は、「日ごろの診療でも、ピルを処方したくてもできない例が4分の1ぐらいあった。今後は40歳以上の人や血栓リスクが心配な人でも使うことができる」と話す。ただし、いずれも使用可能な場合は「月経日の安定化や不正出血が少ないなどの点で、低用量ピルを薦める」としている。
2025年12月9日(火)