2025/12/09

🟥「ミニピル」国内初販売、血栓リスク少ない避妊薬

 意図しない妊娠を避ける経口避妊薬で、従来の低用量ピルとは異なり、血栓リスクのある成分を含まない新しいタイプの薬を厚生労働省が国内で初めて承認し、今年6月から販売が始まった。女性医療の専門家は、「低用量ピルが使えなかった人も使用できる。女性主体の避妊の選択肢が増えた」と歓迎している。

 従来の経口避妊薬は、卵子の発育を抑制して不正出血を減らすエストロゲン(卵胞ホルモン)と排卵を抑制し精子の進入を妨げるプロゲスチン(黄体ホルモン)との2種類の女性ホルモンを配合した薬剤。避妊作用の主体はプロゲスチンで、血管内で血が固まる血栓症の原因となるエストロゲン成分の含有量を減らしてきた経緯から、低用量ピルと呼ばれてきた。

 それに対して、近年、プロゲスチンのみを含有する通称「ミニピル」が欧米などで開発され、国内での臨床試験を経て、厚労省が5月に製造販売を承認した。商品名はあすか製薬の「スリンダ錠」。

 低用量ピルは血栓リスクがあるため、重度の高血圧の女性や、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、血栓症を発症したことのある人、前兆のある片頭痛のある人は利用できず、肥満や40歳以上の人にも処方が避けられていた。

 福島県立医大ふくしま子ども・女性医療支援センターの小川真里子特任教授(産婦人科)は、「日ごろの診療でも、ピルを処方したくてもできない例が4分の1ぐらいあった。今後は40歳以上の人や血栓リスクが心配な人でも使うことができる」と話す。ただし、いずれも使用可能な場合は「月経日の安定化や不正出血が少ないなどの点で、低用量ピルを薦める」としている。

 2025年12月9日(火)

2025/12/08

🟥高額療養費制度に年間上限額を検討 長期治療患者に配慮、「多数回該当」は負担据え置き

 「高額療養費制度」の見直しを巡り厚生労働省の専門委員会は、これまでの議論を整理し、70歳以上の通院にかかる自己負担を抑える「外来特例」については、負担上限額の見直しを検討すべきだとしている。

 一方、長期にわたって治療を続ける患者の負担を軽減する「多数回該当」の上限額は据え置くなどとしている。

 医療費が高額になった患者の自己負担を抑える「高額療養費制度」を巡り厚生労働省は、2025年8月に予定していたひと月当たりの負担上限額の引き上げを見送るとともに専門委員会を設置して、見直しに向けた検討を進めている。

 専門委員会は8日にこれまでの議論を整理し、この中では「現行の所得区分は大くくりだと言わざるを得ない」として、能力に応じた自己負担を求める観点から、所得区分の細分化などが必要だとしている。

 そして、70歳以上の通院にかかる自己負担を抑える「外来特例」については、現役世代の保険料負担を軽減するため負担上限額の見直しを検討すべきだとした上で、対象年齢の引き上げも視野に入れるべきだとしている。

 一方、長期にわたって治療を続ける患者に配慮するため、直近12カ月の間に3回以上、制度を利用した場合に4回目以降の負担が軽減される「多数回該当」の上限額は据え置き、新たに年間の負担上限額を設けるとしている。

 厚労省は専門委員会の議論などを踏まえ、年内に見直しの方向性を示すことにしている。

 2025年12月8日(月)

2025/12/07

🟥保健医療の国際人材育成拠点を東京都に設立 途上国から受け入れ

 誰もが負担可能な費用で公平に医療を受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を推進するため、日本政府と世界銀行、世界保健機関(WHO)は6日、途上国の政策担当者の育成を担う拠点「UHCレッジハブ」を東京都内に設立した。日本は国民皆保険など、保健財政にかかわる知見を生かし、途上国が自国で安定的に医療を提供する仕組みづくりを支援する。

 同日、UHCに取り組む20以上の国の閣僚や国際機関、民間団体の代表者らが集まり、各国の連携や取り組みを議論する会合を都内で開催。日本政府と世界銀行、WHOが拠点の設立文書に署名した。

 UHCレッジハブは、日本が議長国を務めた2023年の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)での議論を踏まえて設立した。発足に合わせて開いた会合で上野賢一郎厚生労働相は「我が国や世界各国が有する知見、経験を共有し、貢献をしていく」と述べた。

 UHCレッジハブは、低・中所得国それぞれの課題やニーズに合わせた1年程度の研修プログラムを提供する。まずインドネシア、エジプト、エチオピア、ガーナ、カンボジア、ケニア、ナイジェリア、フィリピンの8カ国から人材を受け入れる。

 高市早苗首相はビデオメッセージを寄せ「日本は医療アクセスの向上を通じて世界トップクラスの健康水準を誇る国となった。世界銀行やWHOなどと緊密に連携し、活動を後押しする」と語った。

 UHCについては、2030年までにすべての国や地域で実現させる国際目標が掲げられているが、達成は見通せていない。

 UHCナレッジハブには、世界銀行とUHCが専門職員を配置して活動する。

 2025年12月7日(日)

2025/12/06

🟥日本人女性、2型糖尿病発症のリスクが白人比2・29倍 肥満に当たる高BMIで顕著

 群馬大とオーストラリアのクイーンズランド大は3日、人種・民族別の女性6グループを比較した結果、日本人は生活習慣が影響する「2型糖尿病」の発症リスクが白人の2・29倍になるとの研究結果を発表した。肥満の度合いを示す体格指数(BMI)が27・5以上の場合は特に顕著という。人種やBMIとの関連が明確になり、予防や早期発見のための健康指導で活用されることが期待される。

 研究は、日中豪と欧米で暮らす女性73万408人を追跡調査しているデータを分析。グループは日本人、中国人、東南・南アジア人、白人、黒人、複数の人種・民族的背景を持つ人に分け、追跡期間は最長20年超になる。

 リスクは、年齢や喫煙歴、BMIなどが同一という条件を想定して算出。最もリスクが低い白人を基準(1)にすると、日本人は2・29で、中国人2・77、黒人2・61、東南・南アジア人は4・13などだった。

 BMIを加えた分析も行った。白人の18・5~23未満の適正体重グループを1とすると、日本人のこのグループは3・03だった。肥満に当たるBMI27・5~30未満で9・04、30以上の場合は19・67に上った。

 従来、アジア人であることや肥満は糖尿病のリスクとされていたが、今回の研究で具体的な関連がわかった。

 群馬県庁で開いた記者会見で、群馬大の長井万恵(かずえ)准教授(疫学)は「日本の糖尿病患者を減らすために早期介入の手立てを考えなければならない」と訴えた。クイーンズランド大のギータ・ミシュラ教授(疫学)は「世界で研究したことを日本の女性にも反映でき、共同研究はとても意義がある」と語った。

 70歳時点で、中高年に多いとされる2型糖尿病の発症割合をみると、白人の約7%が最も低く、日本人は約18%だった。中国人は約12%、東南・南アジア人と黒人は約25%だった。論文は3日、糖尿病に関する国際学術誌で発表された。

 両大学は女性の健康に関して体系的な研究を加速するため2023年10月、群馬大昭和キャンパスにクイーンズランド大との共同研究拠点を設置。長井氏は同大でも研究に従事した。

 2025年12月6日(土)

2025/12/05

🟥医師の偏在是正、開業抑制へ DX推進や手当増も、改正医療法が成立

 医師偏在の是正や医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた医療法などの改正法が5日、参院本会議で可決、成立した。外来医療の医師が多い地域での新規開業を抑制し、医療機関の維持が困難な区域で働く医師の手当を増額する。オンライン診療や電子カルテの活用を進める。

 偏在対策では、都市部などでの開業希望者に、地域で不足する救急や在宅の医療機能を担うよう都道府県が要請でき、開業後に従わない場合は勧告や公表することも検討する。人口より医療機関の減少スピードのほうが速い地域を「重点医師偏在対策支援区域」に設定し、診療所の承継や開業を支援。医師の手当増額の財源は、健康保険の保険者側の負担とする。

 オンライン診療の手続きや受診施設について規定を整備し、電子カルテ情報を全国の医療機関で共有できるネットワーク「電子カルテ情報共有サービス」の構築と普及を目指す。

 衆院厚生労働委員会で与党と野党の一部が修正案を共同提出。医療機関の病床削減を都道府県が支援できるとし、国が費用負担する内容などを加えた。

 2025年12月5日(金)

🟥マイナンバーカード、1億枚突破 交付開始から10年、保有率8割

 総務省は5日、マイナンバーカードの保有枚数が3日時点1億2万9804枚となり、初めて1億枚を超えたと発表した。人口に占める保有者の割合は80・3%。

 マイナンバーカードは、住民票を持つ日本国内の全住民に12桁の番号をつけて管理する「マイナンバー制度」が2015年に始まったことに合わせ、2016年1月から交付が始まった。有効期限は18歳以上が発行から10回目の誕生日までのため、更新を迎える利用者が増えている。総務省は早めの手続きを呼び掛けている。

 また、12月2日からはカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用が原則になった。

 2025年12月5日(金) 

2025/12/04

🟥ゲノム編集ベビー、初の法規制へ 受精卵の子宮への移植に罰則

 厚生労働省などは4日、遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集技術で作製した受精卵を人の子宮に戻すことを禁止し、違反した場合は罰則を設ける方針を示した。ゲノム編集を施した子「ゲノム編集ベビー」の誕生を規制する新法の制定を検討する。

 厚労省と文部科学省、こども家庭庁は同日、ゲノム編集技術を使った受精卵について具体的に議論する合同会議を立ち上げた。2019〜2024年に各省庁の審議会で議論した内容を整理した。

 規制内容としてゲノム編集を施した受精卵の子宮移植を禁止し、違反した場合は、10年以下の拘禁刑、または1000万円以下の罰金を科すことを検討する。こうした受精卵を扱う際には計画書の提出を求める規制内容を示した。今後、法制化に向けて検討を進める。法案を取りまとめて早ければ2026年の通常国会に提出する。

 受精卵は「生命の萌芽(ほうが)」と国の考え方で位置付けられており、慎重な取り扱いが求められる。ゲノム編集した受精卵を子宮に移植して出産すれば、生まれた子供は遺伝子を人工的に改変したゲノム編集ベビーになる。

 ゲノム編集ベビーは安全性や倫理面に大きな課題がある。ゲノム編集技術は遺伝性の病気の発症予防に生かせる可能性がある一方、別の遺伝子を誤って改変してしまうと、病気になるリスクもある。遺伝子の改変は将来世代にも影響が続く。狙った容姿や能力を持つ子を誕生させようとする試みにつながれば、優生思想や差別を助長する恐れがあると指摘されている。

 ゲノム編集技術を巡っては2012年、遺伝子操作が簡便な技術「クリスパー・キャス9」が開発されて関連研究が急速に発展した。中国の大学の研究者が2018年、エイズウイルスに感染しにくいようにゲノム編集した受精卵から双子の女児を誕生させたと公表し、国際的な非難が殺到した。米欧や中国、韓国はゲノム編集した受精卵の作製を禁止し、違反した場合の罰則を設ける。

 日本も2019年、政府が法規制に乗り出す考えを示し議論を続けていた。現状は政府が示した倫理指針に基づいた規制はされているが、破られた場合の罰則がない。厚労省の担当者は「国内大学でも実験動物のマウスを使った関連研究がされるなど、技術が近年発展している」とみており、早期の法制化を急ぐ。

 4日の3省庁による別の審議会では、人のiPS細胞などの万能細胞から受精卵を作製する研究の指針も議論する。細胞から精子と卵子を作って、受精卵を作製する研究は従来認められていなかったが、技術の発展を受けて、内閣府の生命倫理専門調査会は8月、研究を認める方針に転換した。

 生殖目的ではなく、科学的に合理性のある研究目的に限り受精卵の作製などを認める。培養期間を14日までとして、人の子宮への移植を禁じる。内閣府の方針を基に、各省庁は関連する研究指針を改正する。

 2025年12月4日(木)

🟥2025年の世界気温、観測史上2番目の暑さに ヨーロッパ気候監視機関

 ヨーロッパ気候監視機関「コペルニクス気候変動サービス」は9日、2025年が観測史上2番目に暑い年を記録する見通しだと発表した。  コペルニクスのデータは、地球の気温が産業革命前の水準を1・5度上回る見通しであることを裏付けるもので、これは2015年のパリ協定で合意された閾値を...