北海道大学の前仲勝実教授と松田彰名誉教授らは、新型コロナやデング熱などのウイルス増殖を抑える化合物を新たに発見しました。細胞には強い毒性を持たず、デングウイルスなど複数のウイルス種に対して強力な抗ウイルス活性を示す化合物を同定しました。
ウイルスのリボ核酸(RNA)の合成伸長を阻害し、投与によりウイルス感染マウスの生存率が向上しました。デング熱など有効な治療薬のない新興・再興ウイルス感染症に対する抗ウイルス薬開発が期待されます。
北大創薬科学研究教育センターの化合物ライブラリーを用いてスクリーニングし、デングウイルス感染モデルで薬効評価した結果、「2―Thiouridine(s2U)」という化合物が強力な抗ウイルス活性を持つことを見いだしました。
s2Uは、デングウイルスだけでなく、人に重篤な疾患を引き起こすジカ、黄熱、日本脳炎ウイルスやオミクロン型を含む複数の新型コロナウイルスなどプラス鎖RNAをゲノムに持つ多数のウイルスにおいて、その複製を強力に抑制しました。
デングウイルスなどのRNAウイルスは、自身のゲノム複製時にRNA依存性RNAポリメラーゼという酵素を介して核酸合成します。s2Uはこの酵素に作用し、酵素によるウイルスRNAの合成伸長を妨げることでウイルス増殖を抑えます。
実際にデングウイルスと新型コロナウイルスの感染マウスでの試験において、投与量に応じて体内のウイルス量が減少し、致死抑制効果を認めました。
前仲教授は、「将来起きうるパンデミック(世界的大流行)にいち早く対応できる新薬の開発につながる可能性がある」と述べています。
2023年11月8日(水)
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