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2022/08/25

🇵🇦絨毛がん

妊娠した女性の胎盤を作っている絨毛組織から発生するがん

絨毛(じゅうもう)がんとは、妊娠した女性の胎盤を作っている絨毛組織から発生するがん。

胎盤は、子宮と胎児との間でガスや栄養、老廃物を交換する器官で、母胎由来の組織と胎児由来の組織からできています。絨毛組織は胎児由来の組織であり、母胎に接する部分にあります。この絨毛組織から発生する疾患には、絨毛がんのほかに胞状奇胎、侵入胞状奇胎などがあり、絨毛性疾患と総称されます。

ほとんどの絨毛がんは、妊娠の後に発生する妊娠性絨毛がんです。大部分は子宮に病巣を作りますが、肺などの転移巣だけが認められて、子宮に病巣が見付からないこともあります。まれに、妊娠とは無関係に、卵巣や精巣にある生殖細胞から非妊娠性絨毛がんが発生することがあります。

絨毛がんのほとんどを占める妊娠性絨毛がんは、約半数が胞状奇胎後に、4分の1が正常妊娠後に、残りの4分の1が流産や子宮外妊娠後に発生します。逆に、胞状奇胎の中の約20パーセントが侵入胞状奇胎や絨毛がんになります。

そのために、胞状奇胎の治療後は定期検診が重要です。胞状奇胎の治療後に定期検診を受けている場合は、無症状の段階で絨毛がんが発見できます。

自覚症状としては、生理以外の不正性器出血や、下り物の増量がみられます。子宮、卵巣のはれや腹腔(ふくくう)内出血による下腹部痛が起こることもあります。つわりが生じることもあります。肺への転移により、胸痛、せき、血痰たん、呼吸困難が起こる場合もあります。

かつては、絨毛がんが肺、腟(ちつ)、肝臓、脳などに血行性転移を非常に起こしやすかったため、致死的とされてきました。近年では、抗がん剤による化学療法により大部分が治癒するようになりました。

絨毛がんの検査と診断と治療

絨毛性疾患は初めは正常妊娠と変わらないので、早期発見は必ずしも容易ではありません。生理以外の不正性器出血を認めた場合、出産や流産の後に子宮が大きくなってきた場合、妊娠したのに予想したような胎児の動きを感じない場合は、婦人科、産婦人科の専門医を受診します。

医師の側では、絨毛がんなどの絨毛性疾患が疑われた場合には、血液中および尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンを測定します。絨毛性疾患では、このホルモンが高値となります。ただし、正常妊娠や流産、子宮外妊娠でもhCGは高値となります。

子宮およびその他の腹部臓器への病変の広がりは、婦人科的な診察や腹部超音波検査、MRI検査、CT検査によって調べます。超音波検査などにより、豊富な血流像が観察されます。骨盤内の血管造影を行うこともあります。

絨毛性疾患は肺への転移が高率にみられるので、胸部単純X線写真も撮影します。肺への転移や神経症状がある場合は、脳への転移の有無を頭部CT検査、MRI検査で調べます。

子宮、腟、肺などの病変を切除して、病理学的に診断を確定することもあります。しかし、hCGが異常に高い場合は病理学的診断を行わずに、臨床的に診断することも少なくありません。この場合は、経過や転移部位などを点数化した絨毛がん診断スコアを用いて、臨床的侵入奇胎と臨床的絨毛がんとの区別をします。

絨毛性疾患に対する治療としては、抗がん剤による化学療法が非常に有効です。侵入奇胎に対しては通常1種類の抗がん剤による治療を行いますが、絨毛がんの場合は3〜5種類の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法を行います。

化学療法のみで効果が不十分な時は、病巣を切除する手術や、高エネルギーX線を用いる放射線療法を組み合わせて行います。

🇳🇮出血性乳房

妊娠や授乳期以外に乳頭から血液や血性分泌物がみられる状態

出血性乳房とは、妊娠期間中や授乳期以外に、女性の乳頭(乳首)の一方または両方から、血液や血液が混じった血性分泌物がみられる状態。

女性の乳頭から乳汁様、漿液(しょうえき)性、膿(のう)様、血性などのいろいろな性状の分泌物が、何もしなくても気付くほど出てきたり、軽くまたは強く乳頭を圧迫すると出てきたり、下着に染みが付いて出ていることに気付いたりするような状態を乳頭異常分泌といいます。

乳頭異常分泌のうち、特に血液や血性分泌物が出てくる場合を出血性乳房といい、多くは乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)や乳がんなど、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺(せん)で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管内の増殖病変の症状として認められます。

乳管内乳頭腫は、乳頭近くの比較的太い乳管内の上皮に発生することが多いものの、末梢(まっしょう)乳管から発生することもあります。乳管内の血管結合組織を軸とした上皮細胞と筋上皮細胞が増殖してできます。

乳管内乳頭腫ができる明らかな原因は、不明です。しかし、ほとんどの例でホルモン受容体が陽性なので、卵巣ホルモンが何らかの影響を与えているものと思われます。また、乳頭腫は高率に乳腺症に合併するので、年齢的な要因も関係している可能性があります。通常、35歳から55歳の間に発症することが多く、出産経験のない女性に多いとされています。

乳管内乳頭腫そのものががん化するとは考えられていませんが、将来的に乳がんになるリスクが高まるといわれているので、その点は注意が必要になります。

多くの例で、乳頭から分泌物が出るのが自覚症状となります。分泌物の性状は、血性のことが5割、粘り気の少ない漿液性のことが5割で、水のように透明なこともあります。分泌物の色も、赤色、赤褐色、茶褐色、白色、透明などさまざまです。分泌物の量にも個人差があり、下着に付着する程度から、大量に乳汁のように分泌するものまでさまざまです。

しこりの大きさは、数ミリから1センチ程度で、乳房を触ってもしこりを感じることは少なく、痛みもありません。分泌物が乳腺内にたまると、腫瘤(しゅりゅう)として触れるものもあります。

乳管内乳頭腫は、乳がんとの関連が深い疾患ですから、乳頭からの血性、漿液性の異常分泌に気付いたら、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診します。特に閉経期あるいは閉経後では、症状のよく似た乳がんとの区別が重要です。また、最近では乳がん検診の際に、超音波(エコー)検査で腫瘤として発見されることも多くなってきました。

乳頭から血液や血液が混じった血性分泌物がみられる場合は、乳がんの発見の切っ掛けになることもあります。分泌物に血液が混じっても良性の病変である乳管内乳頭腫や乳腺症によることがほとんどですが、約5%に悪性の病変である乳がんが見付かります。まだしこりにならない早期の無腫瘤性乳がんは乳管内にとどまっており、乳頭からの血性分泌物が唯一の症状です。この場合は、片方の乳頭の1カ所の乳管から出ます。

しかも、明らかにわかる程度の血液が混じっていることもあり、目でみてもほとんどわからない程度の血液が混入していることもあります。従って、片方の乳頭の1カ所の乳管からの血液性の分泌物を認める場合は、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診し潜血反応で血液成分が混じっているかどうかを調べることが大切です。潜血反応が陰性の場合は、がんである可能性が極めて低くなります。

悪性の病変である乳がんの場合でも、しこりが触知される前の状態なので、早期に対処すれば心配はいりません。しかし、放置しておくと乳管を破り、しこりとして触知されるようになるので、しっかりと診断しなければなりません。

出血性乳房の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、乳頭分泌物の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、血液検査、超音波(エコー)検査、乳管造影などを行います。

乳頭分泌物の検査では、まず血液成分が混じっているかどうか潜血反応を調べ、次に分泌物の中の異型細胞や悪性細胞の有無を、塗沫細胞診で調べます。また、分泌物内の腫瘍(しゅよう)マーカーをCEA簡易測定キットで測定すると、乳がんの時には極めて上昇しているのがわかります。

確実に診断するには乳管造影が有効で、血性などの分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影を行います。乳管内乳頭腫があると境界明瞭な造影欠損像や走行異常、乳管の閉塞(へいそく)、拡張、狭窄(きょうさく)、断裂像などが映りますので、小さいものでも発見することができます。

この乳管造影で発見される乳がんの多くは、乳管内進展型の早期乳がんで、非浸潤性がん、触知不能がん、微小がんです。

また、乳首から針金くらいのカメラを入れる乳管内視鏡検査を行うこともあります。

さらに、血性分泌物があって、前記の各種検査で診断がつかない場合は、分泌物が出ている乳管開口部から色素液を注入し、色素を目印に乳管が所属する腺葉区域を部分的に切除して病理組織検査を行います。この検査で、乳管内進展型の早期乳がんで、非浸潤性がん、触知不能がん、微小がんが発見されることが多くあります。広がりが少ないがんの場合は、腺葉区域の切除で診断と治療を兼ねることもできます。

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、原因に応じた処置を行います。

検査の結果、乳がんの可能性が否定された場合は、経過を観察します。原因が乳管内乳頭腫などの良性の疾患の場合は、大抵は外科手術の必要はありませんが、非浸潤性乳管がんなどとの区別がつきにくい場合や、乳頭腫が大きい場合、出血が多い場合は、乳管内視鏡下の手術で腫瘍のある乳管を切除するのが一般的です。

再発も多く、将来乳がんを発症するリスクも高いため、治療後も定期的な乳がん検診が欠かせません。予防的な乳房切断は、必要ありません。

乳がんの場合は、外科手術で腫瘍を切除し、抗がん剤による化学治療などを行います。

🇧🇿主婦湿疹(手湿疹)

水をよく使う主婦などの手に発症する皮膚炎

主婦湿疹(しっしん)とは、主婦など水をよく使う人の手に起こる皮膚病。手湿疹、進行性指掌(ししょう)角皮症とも呼ばれます。

主婦だけに限らず、調理師、美容師、理容師など毎日、水仕事をする男女にもみられます。そのほかに、紙を頻繁に扱う仕事を行っている人にもみられます。

原因は、水やお湯、洗剤やせっけん、食物の残りかすなどの物理的、化学的な刺激によって、手の表面を覆っている皮脂膜の脂が落ちることにあります。皮脂膜の脂は皮膚表面を刺激や乾燥から守る脂であり、これが落ちると角質の表面の水分保有力が低下し、外的刺激に体する抵抗力が弱くなるために、皮膚炎が生じます。

しかし、同じ程度の水仕事をしていても全く症状の出ない人もおり、皮膚表面の角質の水分保有能力の悪い体質の人、生まれ付きの過敏症であるアトピー性体質の人に生じやすいと考えられています。

主婦湿疹には、湿潤型と乾燥型という2つのタイプがあります。湿潤型は、小さな赤い発疹や水膨れできるのが特徴です。多少じくじくし、かゆみを伴います。指の腹や手のひらから発症することが多く、手の甲にも症状がみられます。

乾燥型は、皮膚がカサカサして皮がむけ、ひどくなるとひび割れが生じます。指紋が消える、皮膚が硬くなるなどの症状もみられます。かゆみよりも、ヒリヒリした痛みを伴います。個人差はありますが、利き手の親指、人さし指、中指などよく使う指先から症状が始まり、次第に手のひら全体に広がっていくこともあります。

一般には、空気が乾燥した冬に悪くなり、暖かい夏には軽くなりますが、なかなか治らず、通年で悩まされる人も少なくないようです。

主婦湿疹の検査と診断と治療

主婦湿疹の治療では、皮膚表面の皮脂膜が食べ物で補えないため、手指の休息と保護が最も大切です。

湿潤型と乾燥型では、治療法が異なります。湿潤型や、特に症状が強い部位には、市販のステロイド外用剤を使用します。乾燥型は、市販の保湿剤による治療がベースとなります。刺激物が入っていないワセリンか、保湿に優れている尿素やヘパリン類似物質などを、皮膚の症状に合わせて使用します。また、保湿成分の入った化粧品や入浴剤を合わせて使うと、より効果的です。

湿潤型と乾燥型が混在している場合には、保湿剤を塗った上に、炎症症状がある部位にのみステロイド外用剤を使うようにします。保湿剤は一日に何度使ってもよいので、水仕事の後に繰り返し塗り、刺激や乾燥から手を守ります。ステロイド外用剤は1日2回、朝と入浴後に塗ります。用法をきちんと守れば、ステロイド外用剤は安全に使える薬です。

また、水仕事をする時には、薄い木綿の手袋をした上からゴム手袋をするとよいでしょう。木綿の手袋は、ゴムの刺激から皮膚を守ります。

通気性がよく、皮膚を保護してくれる木綿の手袋をさまざまな場面で活用すれば、症状の改善を助けることになります。水仕事以外の家事で、洗濯物を干したり、布団の上げ下げをしたり、掃除機をかける時でも、木綿の手袋をします。夜寝る時には、保湿剤をたっぷり塗って木綿の手袋をすれば、保湿剤の浸透がよくなる上、寝ているうちに無意識にかいて炎症を悪化させるのも予防できます。肌寒い日や乾燥している日は、手袋をして外出します。

皮膚の負担を軽くするために、洗剤やシャンプー、ボディーソープ、せっけん、ハンドソープなどは、低刺激性のものを選ぶようにします。食器洗浄機などの機器を利用したり、症状が強い時は上手に手を抜いたり、家族に手伝ってもらうことも大事です。

薬物療法と生活改善によって主婦湿疹が治っても、根本原因である刺激や乾燥を減らさなければ再発します。手の皮膚を保護する生活を習慣にし、炎症が起こり始めたら早めに治療を行います。

🇲🇽小陰唇肥大

女性内性器の入り口の左右にある、ひだの部分が1センチ以上出ている状態

小陰唇(しょういんしん)肥大とは、脚を閉じて直立した姿勢で、女性内性器の入り口の左右にある、ひだの部分が1センチ以上出ている状態。

女性器には、体内に隠れている内性器と、表に現れている外性器とがあります。内性器は、膣(ちつ)、子宮、卵管、卵巣からなります。外性器は、膣の入り口周囲に膣前庭があり、その外側に小陰唇、陰核、大陰唇、会陰があり、総称して外陰と呼ばれています。

小陰唇は、左右2枚の薄く扁平(へんぺい)な無毛の皮膚組織。役割は、内性器のふたといえるもので、細菌や外部の刺激などから膣や、膣前庭にある尿道口を保護することです。

小陰唇は、通常は閉じていて、膣口から外側までの幅は1~2センチ、長さは5~7センチです。しかし、大きさや形状には個人差があるため、自分の小陰唇はほかの人に比べて大きいのではないかと、悩む女性も少なくないようです。

小陰唇肥大に明確な定義はありませんが、確認するためには、鏡の前に脚を閉じた状態で直立し、小陰唇の状態を目視します。幅1センチ以上、ひだの部分が大陰唇からはみ出している状態の場合は、医学的に小陰唇肥大とされます。

日本人女性では、ひだの部分が少しはみ出しているくらいは普通の大きさとされていますが、左右両方または片方が大きくはみ出していたり、垂れ下がっていたりするような場合は、小陰唇肥大の可能性があります。

小陰唇肥大については、日常生活の中で以下のような支障があるかどうかも判断材料となります。

体に密着しているジーンズや下着を履くと違和感や痛みがある、自転車に乗ると擦れたり痛みがある、生理用ナプキンが擦れて痛い、座った時に違和感がある、尿の飛び方がおかしい、スポーツをしている時に外陰部に痛みを感じる、性交時に痛みを感じ苦痛である、臭(にお)いが気になる。

以上のようなに、小陰唇に痛みや違和感がある、恥垢(ちこう)がたまりやすく臭いが気になるなど日常生活に支障を来している場合は、小陰唇肥大の可能性があります。

小陰唇肥大やそれによる支障があまりに気になる場合は、形成外科、美容外科、ウイメンズクリニック、あるいは美容整形外科での小陰唇縮小手術も可能です。

小陰唇肥大の検査と診断と治療

形成外科、美容外科、ウイメンズクリニック、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。手術を行う場合は、7日前までに血液検査を行います。

形成外科、美容外科、ウイメンズクリニック、美容整形外科の医師による治療では、肥大した小陰唇を切除して縮小し、大きさと形を整えて縫い合わせる小陰唇縮小手術を行います。この手術によって、膣に悪い影響が出ることはありません。

手術では、最初に切除する皮膚に局所麻酔をするか、静脈麻酔と局所麻酔を併用し、大きすぎる部分を切除して、大陰唇と同じ高さか、ほんの少し見える程度にします。左右差がある場合は、なるべく同じになるように形を整えます。手術は、片方だけの場合30〜40分で終了します。

手術後は3、4日、はれやすい状態にあるので、長時間立っていたり、歩き回ったりしないほうが、はれが出にくく、はれが出ても早くひきます。

シャワーやウォシュレットは翌日から使用可能です。湯船につかるのは、手術後1週間目から可能になります。水分をふき取る際には、手術部を擦らないように軽くタオルで押さえるようにふきます。

手術した翌日から普通に職場に出勤したり、学校に登校したりできますが、自転車に乗るのは10日間くらい避けます。また、手術後1週間は、ジョギング、テニス、エアロビクス、スクワットなどの下半身を激しく使う運動は避けます。

縫合は自然に溶ける糸を使用するために、基本的には抜糸での再受診の必要はありませんが、糸の結び目部分などが長く残る場合がありますので、手術から1カ月程度を目安に再受診して、検診を受けます。この際に糸の残りがあれば、抜糸を行います。

1カ月目の検診で問題がなければ、性交渉が可能になります。

🇸🇦ボーエン様丘疹症

ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器にいぼができる疾患

ボーエン様丘疹(きゅうしん)症とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型が感染して、性器や肛門(こうもん)周囲などにいぼができる疾患。ボーエン様丘疹症は皮膚科での呼び名で、婦人科では外陰上皮内腫瘍(しゅよう)と呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。

感染後3週間から6カ月程度で、性器に2ミリから1センチくらいの黒褐色のいぼ、すなわち丘疹が多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。

同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、ボーエン様丘疹症と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。

また、ボーエン様丘疹症の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。

しかし、比較的若い人に生じたボーエン様丘疹症が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ウイルスは自然消滅します。

10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセントは子宮頸(けい)がんや口腔(こうくう)がん、舌がん、喉頭(こうとう)がん、肛門がんを発症するリスクがあります。

ボーエン様丘疹症の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。

ボーエン様丘疹症の検査と診断と治療

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。判断が難しい場合は、いぼの一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、いぼが小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。

一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。

なお、ボーエン様丘疹症を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。

2022/08/24

🇱🇮小前庭腺嚢胞

膣の上部に位置する左右一対の小前庭腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患

小前庭腺嚢胞(しょうぜんていせんのうほう)とは、女性の膣(ちつ)の上部に位置する左右一対の分泌腺である小前庭腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患。

小前庭腺は、スキーン腺、スケネー腺、傍尿道腺とも呼ばれ、陰核(クリトリス)と腟口の間に位置する尿道口の左右両側に、小さな穴として開口しています。開口部の大きさは一人一人ばらつきがあり、完全に消失している女性もいるとされています。

小前庭腺からは、性的刺激によって粘液が分泌され、膣から分泌される粘液とも混ざり合い、性交時の潤滑液としての役割を果たしています。

また、小前庭腺のある位置は、女性の膣の内部にある快感スポット、いわゆるGスポット(グレフェンベルグ・スポット)として知られています。小前庭腺は発生学的に男性の前立腺に相当し、女性の射精中、俗にいう潮吹き現象で現れてくる透明、あるいは乳白色の液体は、男性の前立腺で産出される液体と非常によく似た酸性フォスファターゼなどの構成成分を持っています。この液体は、オーガスムの際に時々緊張から解放されて放たれる尿の中に混ざります。

この小前庭腺の開口部から、細菌などが侵入し、それらの細菌に感染すると、急性期には排出管に炎症が起こり、開口部が発赤して、はれが現れます。炎症が治まった後に、開口部の閉鎖が起こると、本来は外に分泌される粘液が排出管内部にたまり、拡大して嚢胞を形成します。嚢胞は液体を満たした袋を意味し、これが小前庭腺嚢胞です。

小前庭腺嚢胞はまれで、主に成人に発症します。ほとんどの嚢胞は、大きさが直径約1センチメートル未満で、症状はありません。大きくなると、性交時に痛みを感じたり、排尿のトラブルが生じることがあります。

こうした場合の初期症状には、尿道を通る尿の流れを小前庭腺嚢胞が遮るために、なかなか尿が出ない、排尿が終わる時に尿がポタポタと滴る、尿が出なくなるなどがあります。尿路感染症が生じ、切迫した尿意が頻繁にみられたり、排尿時に痛みを感じることもあります。

さらに、小前庭腺嚢胞内に細菌感染が起きると、うみが排出管内部にたまって、膿瘍(のうよう)を形成することがあります。膿瘍はうみの塊を意味し、これを小前庭腺膿瘍といいます。

膿瘍ができると小前庭腺がある部分の皮膚は赤くなり、はれが生じ、何もしていなくても痛む自発痛と、押すと痛む圧痛が生じます。発熱はほとんどみられません。膿瘍が大きくなりすぎて自然に破裂して、うみが出ることもあります。

小前庭腺嚢胞、小前庭腺膿瘍の症状に気付いたら、婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科を受診することが勧められます。

小前庭腺嚢胞の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による診断では、嚢胞や膿瘍が大きくなって症状が現れるようになると、通常、内診の際に触れることができます。

ただし、診断を確定するために、超音波(エコー)検査や、柔軟性のある内視鏡で膀胱(ぼうこう)を観察する膀胱鏡検査を行うこともあります。鑑別すべき疾患には、女性の尿道の前部3分の1に発生する遠位尿道の憩室があります。

時には、小前庭腺の排出管内部にたまっている粘液やうみを培養して、原因となっている菌を特定する細胞検査を行うこともあります。

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による治療では、症状のある小前庭腺嚢胞ができている場合、切除します。切除は、外来の処置室や手術室で行います。処置室で切除を行う場合は、通常、局所麻酔を用います。

膿瘍ができている場合は、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)のセファレキシンなどの経口剤を7~10日間投与し、その後切除を行います。あるいは、膿瘍を小さく切開して、切開創の縁を外陰部の表面に縫い合わせる造袋を行い、膿瘍内の液を出すこともあります。

🇸🇲小乳房症

女性の乳房の発育が十分ではない状態

小乳房症とは、女性の乳房の発育が十分ではない状態を指す症状。乳房発育不全とも呼ばれます。

乳房の大きさや発育度合いは個人差による部分が大きく、具体的な定義は難しいのですが、思春期に入っても乳房の発育が顕著に認められない状態を小乳房症と見なします。

両側の乳房の発育が悪い場合もありますが、片側の乳房のみ発育が悪い場合もあります。

原因不明の場合が最も多く、生まれ付き乳腺(にゅうせん)が未発達であったり、思春期に卵巣などの重要な内分泌臓器が十分に機能しないことが原因であることもあります。

思春期に入っても乳房が発育しないことで、小乳房症が疑われます。

両側、あるいは片側の小乳房症の症状が明らかで、美容的な問題により乳房を作って悩みを解消したいと望むのであれば、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、形成手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

ただし、女性としての体が完成する20歳前後に形成手術を行うことが勧められます。

小乳房症の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線撮影検査)などを行います。小乳房症の具体的な定義が難しいため、診断にも難しい面があります。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、人工乳腺(豊胸バッグ)を使った乳房形成手術(豊胸手術)を行います。小乳房症への形成手術の適用の場合は、原則的に形態のみの修復となり、 外見的な症状は改善されます。

乳房形成手術(豊胸手術)は、胸がしぼむことなく、人工乳腺(豊胸バッグ)を挿入した時点とほぼ同じ乳房の大きさを半永久的に維持できるのがメリットですが、大掛かりな手術が必要になるため、どうしても後遺症や合併症のリスクが高まります。

🇮🇪女子顔面黒皮症

化粧品などが原因で顔に色素沈着が生じる皮膚障害

女子顔面黒皮症とは、化粧品などが原因になることによって、顔に色素沈着を生じる皮膚障害。リール黒皮症とも呼ばれます。

男性に生じるケースもありますが、大部分は20~50歳の女性にみられます。

顔では、ほおを中心に耳前部、額、まぶたなどに、紫褐色から黒褐色の網状、斑(まだら)状、またはびまん性の境界のはっきりしない色素沈着を生じます。時には、首や前腕に生じることもあります。

多くの場合には、色素沈着の前に、顔のかゆみ、あるいは赤みなどがあって、その後、半月から数カ月以内に色素沈着に気付きます。色素沈着ができた後も、かゆみ、赤みが残っている場合もあります。

原因が不明のこともありますが、大部分はもともと素因のある人に、化粧品皮膚炎などの湿疹(しっしん)のような炎症反応が繰り返し起こった結果、表皮の基底部が破壊され、基底部にあるメラニン色素が真皮内に入るために生じると考えられています。

かつて、化粧品に含まれるタール系の色素や香料が原因の化粧品皮膚炎が多かった時期に、この女子顔面黒皮症も増加しました。化粧品メーカーがこれらの色素や香料を化粧品から除外してから、女子顔面黒皮症が急激に減少したことからも、化粧品皮膚炎と関連の深いことがわかります。原因物質には、タール色素の赤色219号、ズダンI、ジャスミン油、パラベンなどがあります。近年は、化粧品の品質向上によってあまりみられなくなっています。

女子顔面黒皮症に気付いたら、原因となっている化粧品などの使用を中止することが必要です。皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診して、どの化粧品が原因物質となっているかについての検査を受けることが勧められます。

また、女子顔面黒皮症と似たような症状のものに、入浴の時にナイロンタオルなどで皮膚をこすりすぎて、色素沈着するものがあります。若い女性を中心に、胸、背中、腕など下の骨が出っ張っていて、皮下脂肪の少ない部分に生じるのが特徴です。

ナイロンタオルは木綿のタオルより繊維が強いため、皮膚に加わる刺激が強すぎるのが原因と見なされますので、使用をやめれば自然に治ります。

女子顔面黒皮症の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状やその部位から原因として疑われる化粧品などを推定し、続いて貼布(ちょうふ)試験(パッチテスト)で確認します。

貼布試験では、リント布かガーゼに原因と考えられる化粧品などを塗って、皮膚に張り付け、絆創膏(ばんそうこう)で固定します。48時間後に検査の判定を行った時、貼布した部分に発赤、または小さな水膨れができていれば陽性です。貼布試験を行う際には、入浴はできず、汗をかかないように注意する必要もあります。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、大部分は顔面の湿疹様病変の結果生じるため、原因と思われる化粧品などを除くことが重要です。

女子顔面黒皮症そのものに対する特効治療法は、現在のところありません。多くの場合は、皮膚炎の症状が合併しているので、赤みがあったり、かゆみを伴う急性期には、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)の外用、抗ヒスタミン剤やビタミンCの内服などを行います。症状が激しく、範囲が広い場合には、短期間ステロイド剤の内服を行います。

化粧品などの原因物質との接触を避けることでよくなり、炎症症状が取れれば色素沈着は消えるのが一般的ですが、色素沈着が取れるまで数年かかる場合もあります。

生活上の注意としては、急性期では皮膚のバリア機能が壊れていますので、化粧は一切しないように。マッサージなどの摩擦を避け、日光にもなるべく当たらないほうが安全です。

急性期をすぎた後は、低刺激性のせっけんや、敏感肌用の化粧品を、徐々に使っていくようにします。

🇬🇧処女膜強靭症

処女膜が厚くて膣口が狭いため、性交に困難を来す状態

処女膜強靭(きょうじん)症とは、女性の腟口(ちつこう)部を取り囲むヒダ状の器官である処女膜が厚くなり、リング状に硬くなっている状態。原因は、先天的な形態異常と見なされます。

処女膜は本来、厚さが1ミリ程度の軟らかい粘膜で破れやすいものですが、処女膜強靭症の女性では生まれ付き肥厚して、膣口部が狭くかつ伸びにくいために、性交の際には男性の陰茎の挿入によって痛みを伴い、初めて異常に気付くことが多いようです。膣が完全にはふさがれていないため月経障害もなく、日常においては自覚症状はありません。

性交の際の無理な挿入で大出血して救急車で搬送されるといったケースや、大出血はしなくても性交のたびに痛みを感じたり、少量の出血を繰り返したりして、性交恐怖症になるケースもあります。

処女膜が裂傷を起こして出血する場合はすぐに止血することがほとんどなのに対して、膣壁が男性の陰茎などによって機械的に刺激を受けて裂傷を招いた場合には、生々しい血が流れ出し、出血の量も多くなる傾向があります。

ただし、処女膜強靭症ではなく腟けいれんが原因となって、性交の際の痛みが現れることもあります。腟けいれんとは、腟口部や腟周囲の筋肉が不随意にけいれん、収縮を起こし、性交時に痛みを感じたり性交ができなくなったりする状態で、単に腟けいとも呼ばれます。

性交経験のない人に起こる腟けいれんでは、初交の際に男性が陰茎を膣に挿入しようとすると痛みを覚えるため、不随意反射的に膣口の括約筋である球海綿体筋や外肛門(こうもん)括約筋を強く締めてしまい、挿入が困難か、あるいは挿入に強い痛みを伴います。挿入後に起こった場合は、陰茎を抜去するのが困難になることもあります。

腟けいれんの多くは、幼少期の性的障害や、性への消極的思考の教育、宗教的な罪悪感、望まない結婚などが関係すると見なさます。無意識の心理的葛藤が身体的症状として現れる、いわゆる心身症としてとらえることもできます。

腟けいれんの痛みのため、性交に耐えられない女性もいますが、こうした女性でもペニスの挿入を伴わない性行為であれば楽しめることがあります。逆に、月経の際の生理用タンポンの挿入にさえ耐えられないような場合もあり、こうした人では医師による検査の際に麻酔が必要となります。

性交の際に毎回痛みがあり、毎回挿入困難な場合には、処女膜強靭症によるのか、性交恐怖症が背景にある腟けいれんによるのかを知るためにも、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

処女膜強靭症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断は、発症者による症状の説明によって処女膜強靭症を疑いますが、確定診断は腟の検査を行うことになります。出血がある場合には、腟鏡を用いた視診によって裂傷の部位、裂傷の程度を確認します。

婦人科、産婦人科の医師による治療は、処女膜に一部切れ目を入れたり、処女膜を輪状に切除して辺縁を縫合するといった手術を行います。身体的負担が少なく局所麻酔でできるので、日帰り手術が可能です。

腟からの出血が断続的に起こり止まらない場合は、縫合、止血処置を行います。局所麻酔でも可能ですが、裂傷が広範な場合は全身麻酔にて、吸収糸という抜糸しなくても自然に吸収される糸で、裂傷の部位を縫い合わせます。処置後は、抗菌剤の投与を数日間行います。

ほとんどのケースでは、処女膜の手術で性交の際の痛みから開放されます。しかし、性交恐怖症が背景にある腟けいれんが原因となっているケースでは、処女膜を手術しても現状改善の可能性が低いので、性交や性器に対する不安の除去を図る精神医学的療法を行います。同時に、パートナーとの関係の見直しや、家庭環境の改善も必要になってきます。

物理的な治療として、器具の挿入による腟の段階的拡張を行うほか、局所への麻酔薬入りゼリーの塗布、向精神薬の内服などの方法があります。

腟の段階的拡張は、潤滑剤を塗ったプラスチック製の棒(拡張器)を自分で腟に挿入し、腟を徐々に広げていくという方法です。初めは細い拡張器を使用し、楽に挿入できるようになったら徐々に太いものに変えていきます。十分な太さの拡張器を入れていても不快感を感じないようになったら、改めてパートナーとの性交を試みます。

この拡張器を挿入した状態で、骨盤部の筋肉を強化するケーゲル体操を行うと効果的な場合があります。ケーゲル体操は、排尿を途中で止める時のように、腟、尿道、直腸の周りの筋肉に力を入れて約10秒間引き締め、次に力を抜いて約10秒間緩めます。この動作を10〜20回繰り返すのを1セットとして、1日に3セット以上行います。

この体操により、不随意に収縮していた筋肉をコントロールする感覚を身に着けることができ、尿失禁や便失禁の予防や軽減にもつながります。

🇬🇧女性仮性半陰陽

染色体による性別は女性なのに、外性器が男性化する先天異常

女性仮性半陰陽(はんいんよう)とは、染色体による性は女性なのに、男性のような外性器を有する先天異常。半陰陽の一種、また仮性半陰陽の一種です。

外性器は、陰核が肥大し、極端な例では陰茎のようになったり、大陰唇が陰嚢(いんのう)状に癒合したりするなど、いろいろな程度に男性化します。子宮、卵巣、卵管、腟(ちつ)の一部は、女性型に分化、発育しています。

この女性仮性半陰陽は、胎児の早い時期に大量の男性ホルモンが作用して起こると考えられ、多くは副腎(ふくじん)皮質ホルモンを作る酵素に異常のある副腎性器症候群、その代表的な疾患である先天性副腎過形成症が原因です。

ほかに、母体から男性ホルモン様作用を受けることが原因となって起こる、非進行性のものもあります。腎臓の横にある副腎の異常がなくて起こる男性化で、大部分は母親の妊娠中に流産防止の目的で使用したホルモン剤の影響によるもので、出生後は男性化は進行しません。

副腎皮質からは、コルチゾール(糖質ホルモン)とアルドステロン(鉱質ホルモン)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンもわずかに分泌されています。副腎性器症候群では、副腎皮質の働きの異常により、コルチゾールやアルドステロンの分泌が低下し、アンドロゲンが過剰に分泌されます。

この副腎性器症候群には、先天性のものと後天性のものとがあります。先天性のものは、コルチゾールの合成に必要な酵素が生まれ付き欠けているために、下垂体(脳下垂体)から副腎皮質刺激ホルモンが多量に出るようになり、副腎が過形成を起こします。その結果、アンドロゲンが過剰に分泌されるようになります。これが先天性副腎過形成症です。

コルチゾールの合成にかかわる酵素は数種類あり、欠ける酵素の種類により疾患のタイプが分かれ、症状も少しずつ違っています。いずれも常染色体劣性遺伝による異常です。日本では、21ー水酸化酵素の欠損が最も多く認められます。

後天性のものは、副腎皮質の腺腫(せんしゅ)やがんなどが原因で起こるもので、副腎皮質の機能が低下して、アンドロゲンが過剰に分泌されます。

男女にかかわりなく、先天性副腎性器症候群は発生し、女児では女性仮性半陰陽となります。陰核の肥大や陰唇の癒合がみられ、性器はどちらかというと女性よりも男性的な外見になり、男児と間違えられることが多いものです。子宮、卵巣、卵管などの生殖器官の構造は、正常です。

成長するに従って男性化が顕著になり、成人の女性では、ひげが生え、手足の毛が濃くなり、陰核が大きくなり、声変わりや月経不順、不妊、乳房の委縮が起こります。

男児では、出生時には特に異常はみられませんが、幼少時から陰茎が発育し、陰毛が生えて声が太くなります。男女児とも、早い時期に発育が停止します。

また、先天性副腎性器症候群の中でも重症のタイプでは、新生児期から副腎不全が発生します。嘔吐(おうと)、脱水、酸・塩基などの電解質の異常、不整脈などの症状が現れ、適切な治療をしないと生後数日で死亡します。

現在日本では、21ー水酸化酵素欠損症を見付けるため、新生児スクリーニング検査を行っています。尿中の副腎皮質ホルモンと、その代謝物質を測定することで、どの酵素が欠けたのか推定することができます。症状の軽い不完全型の副腎性器症候群の場合は、副腎皮質刺激ホルモンの負荷後にこれらを調べることで、ようやく診断できることもあります。

出生時に医師や看護師によって、先天性副腎性器症候群による女性仮性半陰陽が発見されることが望ましいのですが、思春期や成人後に発見されることもあります。思春期になって女の子のはずなのに初経(初潮)がなかったり、陰核の肥大や多毛などの男性化が起こってくる場合には、できるだけ早く小児科、あるいは内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

女性仮性半陰陽の検査と診断と治療

小児科、あるいは内科、内分泌代謝内科の医師による女性仮性半陰陽の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、副腎皮質ホルモンの測定や超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による女性性器の存在確認を行います。

医師による女性仮性半陰陽の治療では、副腎性器症候群によって分泌が低下したコルチゾールやアルドステロンを補い、アンドロゲンの値を正常に戻すことが目的になります。下垂体(脳下垂体)からの副腎皮質刺激ホルモンが出すぎないように、副腎皮質ステロイド剤の一種であるコルチゾンを投与します。

女児で陰核の肥大や陰唇の癒合がみられるものは、1~3歳の間に形成手術を行って、形状の異常を矯正します。成人のがん性のものは、早期に副腎摘除の手術をしたり、コルチゾンの投与を行います。

子供が副腎性器症候群による女性仮性半陰陽を持つ両親は、副腎皮質ステロイド剤の飲み方と副作用について説明を受けて下さい。けがや発熱で強いストレスを受けた時は医師に報告し、薬の量を増やしてもらいます。副腎皮質ステロイド剤の服用を突然やめると、急性副腎不全を起こしますので、注意が必要となります。

2022/08/23

🇲🇳真性陥没乳頭

乳頭が乳房の内部に埋もれていて、指でつまみ出すことができない状態

真性陥没乳頭とは、乳房の先にあって通常は突出しているはずの乳頭が、乳房の内側に埋没していて、指でつまみ出すことができない状態を指す症状。陥没乳頭の一種です。

乳頭が乳房の内側に埋没する陥没乳頭は、男女を問わず生じますが、主に女性において、外見のコンプレックスや授乳、衛生面などでのデリケートな問題が起こります。主に若い女性に多く、成人女性の1割以上が、陥没乳頭の症状に悩んでいるともいわれています。

陥没乳頭には、両側の乳房先の乳頭が埋没するケース、片側だけの乳頭が埋没するケースがあり、軽症、中等症、重症の別があります。

軽症、中等症は仮性陥没乳頭に相当し、重症が真性陥没乳頭に相当します。

軽症の仮性陥没乳頭では、乳頭を容易に指でつまみ出すことができるものの、しばらくすると埋もれてしまいます。中等症の仮性陥没乳頭では、乳頭を何とか指でつまみ出すことができるものの、指を離すとすぐに埋もれてしまいます。重症の真性陥没乳頭では、乳頭を指でつまみ出すこともできず、常にへこんでいます。

先天性と後天性の別もあります。どちらかというと、先天性の生まれ付きの体質によるほうが、多いとされています。

先天性陥没乳頭は、乳頭下にあって乳頭を支える乳管などの線維組織が発達しなかったり、繊維組織が癒着したりしたために起こります。先天性陥没乳頭が起こる根本的な原因や要因は、明確になっていません。

一説には、10歳代の成長期に、部活などで激しい運動をしたり、ストレスを感じたり、たばこを吸ったりした経験が原因で、成長ホルモンのバランスが崩れ、乳腺(にゅうせん)や乳管などが完全に発育できず、未発育にとどまってしまうために、陥没乳頭になることがあるともいわれています。

一方、後天性陥没乳頭のほとんどは、乳腺炎や乳管炎、乳がんなどが原因となって、起こります。先天性陥没乳頭は疾患を患っていませんが、後天性陥没乳頭はほかの疾患を発症している可能性もあり、やや危険です。生まれたころはごく普通な状態でも、ある日気付くと陥没乳頭になっていた場合、疾患の合図かもしれません。

原因となる疾患の一つである乳管炎では、何らかの炎症が乳管に及ぶと、乳管が委縮、屈曲、癒着および閉塞(へいそく)などを来します。つまり、炎症が及んだ乳管は伸展性が乏しく、正常な乳管の伸展性も妨げてしまい、乳頭が突出できなくなります。

陥没乳頭を起こしていると、子供ができた時の授乳の際に手間がかかります。授乳のためには、まず乳頭を突出させなくてはいけません。軽症、あるいは中等症の仮性陥没乳頭の場合は、指でつまんで乳頭を突出させることができるため、吸引反射を有する乳児は乳頭に吸い付き、自らも乳頭を突出させるようにして母乳(乳汁)を飲みます。重症の真性陥没乳頭の場合は、乳頭が突出しないため、乳児は母乳(乳汁)を飲むことをあきらめてしまいます。

衛生面での問題もあり、突出しているはずの乳頭が埋没している状態のため、清潔な乳頭を維持しにくくなります。そのために、細菌が感染しやすく、いくつかの疾患を発症することがあります。

その一つが、乳輪下膿瘍(のうよう)。乳頭の乳管開口部から化膿(かのう)菌が侵入することにより、乳輪の下に膿(うみ)がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる疾患です。乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。

ほかにも、急性うっ滞性乳腺炎や慢性乳腺炎などを発症することもあります。急性うっ滞性乳腺炎は、授乳も関係しています。慢性乳腺炎は、妊娠や授乳に関係なく起こります。急性うっ滞性乳腺炎が進行すると、急性化膿性乳腺炎を起こし、痛み、熱感、はれなどの症状が発生します。

さらには、乳がんを発症するリスクもありますし、後天性陥没乳頭が乳がんを伴っていることもあります。がん細胞が乳頭付近の乳管に浸潤すると、乳管を短縮させてしまい、乳頭が陥没します。これは乳がんの合図ですから、突然、陥没乳頭になり、痛みや体調不良も伴うようなら、その可能性も視野に入れなければなりません。

このように、陥没乳頭が原因で疾患を発症することがあります。疾患を発症してからでは遅いので、まずは陥没乳頭を改善していきましょう。

マッサージと矯正器具による仮性陥没乳頭のセルフケア

軽症、あるいは中等症の仮性陥没乳頭なら、自宅での矯正で改善できることがあり、刺激を与えることで乳頭が突出し、授乳も可能となります。

日ごろからマッサージで乳頭に刺激を与えて、突出させ、乳児に実際に乳頭を吸わせて授乳を繰り返すと、突出状態を保つようになることもあります。

マッサージ法は多々ありますが、一例を紹介します。1)親指と人差し指を乳輪の外側に置く、2)乳頭を優しく押し出す、3)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を水平に伸ばす、4)親指と人差し指を乳輪の上下に置く、5)乳頭を優しく押し出す、6)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を上下に伸ばす。

これが、基本的なマッサージ法です。マッサージは、定期的に続けることで効果が出ますから、根気よく続けることが大切です。タイミングとしては、入浴時がお勧めで、体がポカポカに温まると血行が促されるので効果的です。1日1回でも、たった2~3分でも構いません。

また、マッサージ以外にも、販売されているプチフィット、ピペトップといった吸引器などの矯正器具を利用します。吸引器の場合は、胸に吸引カップを装着して真空状態にし、吸引力によって乳頭を突出させます。毎日続けることにより、少しずつですが症状を改善していきます。

ただし、妊娠中の陥没乳頭のマッサージは、早産を招くという説もあります。慢性的な陥没乳頭の女性が、無理やりに乳頭を突出させることで、皮膚が切れて出血し、痛み、さらに感染して炎症を起こす危険もありますので、細心の注意が必要になります。

症状に合わせての治療を望む場合は、婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科などを受診することが勧められます。女性は出産や授乳などの将来性があるため、ほとんどの医療機関で保険が適応されますが、美容整形外科は適応外になることもあります。男性の場合は、適応外になることも少なくありません。

真性陥没乳頭の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科の医師による診断では、陥没乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、まず視診、触診で判断します。

続いて、治療を必要とする乳腺炎や乳管炎などの有無、腫瘍の関連の有無を調べるために、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、超音波(エコー)、MRI(核磁気共鳴画像)検査、CT(コンピュータ断層撮影法)検査、血液検査、乳頭分泌液の細胞検査、細菌検査などを行うこともあります。

婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科の医師による治療では、その症状や状態によって異なる処置で改善を図ります。

軽症、あるいは中等症の仮性陥没乳頭の場合は、乳頭吸引器などの器具を活用したり、乳房マッサージを習慣にしたり、食生活を見直したりすることで、改善することも可能です。乳頭吸引器は、専用のローションを乳頭とその周辺に塗り、吸引カップで毎日乳頭を吸引していくものです。就寝中に装着、あるいは24時間装着し、持続的な吸引の力により、乳頭を少しずつ出っ張らせていきます。

ほかの疾患により後天性陥没乳頭を発症している場合、原因となっている疾患の治療を行います。

乳腺炎の治療としては、抗生物質(抗生剤)を内服したり、状況により鎮痛薬を内服します。

乳輪下膿瘍の治療としては、炎症性の膿瘍(しゅよう)と拡張した乳管の切除と、炎症の元になっている陥没乳頭が外に出る形成手術との両方を行わなければ、必ずといっていいほど再発します。まず抗生物質などで炎症を鎮静させて、それから根治手術を行います。

急性うっ滞性乳腺炎の治療としては、乳汁のうっ滞を取り除くために、乳房を温めて血液の流れをよくし、乳頭と乳輪をよくマッサージして授乳を続ければ、症状はすぐにとれてきます。また、乳頭を乳児がくわえやすいような形にしておくなどの工夫も必要です。

急性化膿性乳腺炎の治療としては、初期には乳房を冷湿布して、乳汁は搾乳器で搾り出し、抗生物質の注射か内服と、鎮痛薬、消炎薬の内服をします。化膿が進み膿瘍ができたら、注射針を刺して膿を吸引したり、局所麻酔をかけて皮膚を切開して膿を出さなければなりません。これらの治療が功を奏すると、急速に症状は改善します。膿瘍ができた場合、抗プロラクチン薬で乳汁分泌を抑制します。

重症の真性陥没乳頭の場合など症状によっては、乳輪部分を切開し、裏側から乳頭を押し上げて突出させ、固定する形成手術を行います。手術法にはいくつものパターンがあり、大きく分けると、乳管を温存する方法と乳管を切断する方法の2種類があります。乳管を切断すると乳頭の陥没は改善されますが、母乳(乳汁)の分泌が不能になり、将来の授乳などに影響を来します。

🇯🇵性器閉鎖症

先天的に、あるいは後天的に女性性管の一部が閉鎖した状態

性器閉鎖症とは、処女膜、腟(ちつ)、子宮などの女性性管の一部が閉鎖した状態。鎖陰(さいん)とも呼ばれます。

先天的に発生することが多いものの、後天的に外傷や炎症などのために起こることもあります。性器閉鎖症に属する主なものに、処女膜閉鎖症、膣閉鎖症(腟横隔)、膣狭窄(きょうさく)症、膣欠損症があります。

処女膜閉鎖症は、腟口部を取り囲むヒダ状の器官で通常、中央部は開いているはずの処女膜が、完全にふさがっている状態。そのために閉鎖した腟内や子宮、卵管に月経血、分泌物などがたまり、下腹部痛を起こしたり、しこりを生じたり、腰痛を起こしたりします。また、膀胱(ぼうこう)刺激症状や排便痛を起こすこともあります。

腟閉鎖症は、ほとんどが膣の上部3分の1と膣の下部3分の2との境界部に好発し、腎臓(じんぞう)の奇形を合併することもあります。処女膜閉鎖症と同様、思春期以降に潜伏月経が起こっても、流出路が閉鎖しているために月経血が排出されずに腟内や子宮、卵管にたまり、月1回、定期的にかなり強い下腹部痛を起こします。

月経血の貯留が高度になると、下腹部にしこりを感じ、排尿障害、排便障害、腰痛、持続的な腹痛が起こることもあります。大量の貯留が長期間放置されると、子宮や膣が過伸展、変形して、後に不妊症の原因になることもあります。

膣狭窄症は、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じる先天性のものと、小児期のジフテリアや、はしか(麻疹〔ましん〕)などによる膣炎の後遺症として生じた癒着による後天性のものとがあります。狭窄の程度によって全く症状を欠く場合もありますが、高度の場合は月経血の排出障害、分泌物の貯留を起こしたり、膣炎が起きたり、異常な下り物をみることもあります。膣が狭いために、性行為に問題を抱えます。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症、膣狭窄症はいずれも、思春期に初経がこないため婦人科を受診し、発見される例がほとんどです。

腟欠損症は、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した状態で、腟や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。

膣狭窄症と同様、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じ、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育せず、腟も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。

腟欠損症は、医学的には上部腟欠損、下部腟欠損、全腟欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。

全腟欠損で機能性子宮を持たない場合をロキタンスキー症候群と呼び、腟欠損の中で最も頻度が高いものです。月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はなく、無月経がほぼ唯一の症状となります。卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。

一部の腟欠損で機能性子宮を持つ場合には、思春期以降、月経に伴って子宮や卵管への月経血の貯留を起こすため、月経血をみないまま周期的な腹痛が出現する月経モリミナという症状が現れます。

また、機能性子宮の有無にかかわらず、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。

腟欠損症に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。

性器閉鎖症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは小児科の医師による性器閉鎖症の診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。

医師による処女膜閉鎖症、腟閉鎖症(腟横隔)の治療は、閉鎖部位を切開して、月経血や分泌物などの通り道を作れば解決し、後遺症もなく治ります。軽度の処女膜閉鎖症では、簡単な十字切開手術ですみます。膣閉鎖症では、膜様閉鎖では切開のみで問題ありませんが、閉鎖部が厚い場合には輪状切開を行います。この輪状切開を行った場合には、手術後の瘢痕(はんこん)性委縮に注意する必要があります。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症の場合には、閉鎖している部分を切開して完治するので性交渉も可能になります。卵巣および子宮は正常なので、その後の月経も含めて問題はなくなり、正常な妊娠、出産も可能になります。ただし、長期間放置して診断が遅れた場合には、卵管卵巣の壊死(えし)や破裂による腹膜炎を来すことがあります。

膣狭窄症の治療は、程度に応じて頸管(けいかん)拡張器による膣腔(ちつくう)の拡大、狭窄部の小切開、さらに全体的膣形成までさまざまな手術が行われます。

腟欠損症の治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造腟手術を行います。子宮に異常を伴う場合には妊娠が不可能な場合もあり、造腟手術により性行為を可能にして精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。

造腟手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。

フランク法は、腟前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して腟腔を形成したのち、その腟腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、皮膚移植により腟壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して腟壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、腟壁として利用する方法。

以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。患者の体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。

このような手術の後には、膣管の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(腟ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(腟ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて腟管を形成する目的で使用されます。

🇰🇵性器ヘルペス症

単純ヘルペスウイルスによって発症する性感染症

性器ヘルペス症とは、単純ヘルペスウイルスによって発症する疾患。主に性行為によって、性器へ感染して起こります。

女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純ヘルペスウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頚部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4 週間近くを要します。

単純ヘルペスウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、性器ヘルペスの再発型を発症し、単純ヘルペスウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。多くは1週間以内に治ります。 再発の回数は月2~3回から年1~2 回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

性器ヘルペスの問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、性器ヘルペスは世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

また、妊娠末期に性器ヘルペス症になると、乳児が産道感染して重症になり、死亡することが多いので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純ヘルペスウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。

性器ヘルペス症の検査と診断と治療

急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純ヘルペスウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

症状が軽いものには、単純ヘルペスウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。

🇮🇲性腺機能低下症

類宦官症など、性腺からのホルモンの分泌不足によって起こる疾患

性腺(せいせん)機能低下症とは、性腺からのホルモンの分泌不足によって起こる疾患。

性腺は男性では精巣、女性では卵巣に相当し、その性腺の機能が、先天的に、あるいは炎症、腫瘍(しゅよう)、外傷などで後天的に障害されて、ホルモンの分泌が低下して起こります。

類宦官(るいかんがん)症、ターナー症候群は、先天性のものです。そのほか、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌不足のために、性腺ホルモンが不足して起こるケースもあります。

類宦官症は、生まれ付き男性ホルモンが不足しているために、男性性器の発育が十分でない疾患を指します。性腺に相当する精巣の機能が先天的に障害されて、ホルモンの分泌不足が起こるほかに、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌不足のために、性腺ホルモンが不足して起こるケースもあります。

思春期前に精巣機能、睾丸(こうがん)機能が低下すると、思春期になっても男性ホルモンの分泌が増えないため、精巣は4、5歳の小児のようで、陰毛もなく、体全体に皮下脂肪の沈着がみられます。声変わりもみられません。手足は長く、身長も高くなります。

この体形、外観が、古代中国で官僚の世襲を防ぐために去勢された若い宦官に似ていることに、疾患名は由来しています。

類宦官症のうち、染色体異常を伴うものはクラインフェルター症候群といい、正常男子の性染色体XYよりXが一個以上多い染色体を持っています。

内分泌専門医にかかり、男性ホルモンや性腺刺激ホルモンで治療します。

ターナー症候群は低身長を特徴とし、女性だけに起こる先天的な疾患

一方、ターナー症候群は、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。

ほかにも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。

ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達がみられない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

ターナー症候群の検査と診断と治療

早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大切です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果がみられています。

ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節(こかんせつ)の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。

🇨🇿性染色体異常

性染色体の構造異常、また、それが原因で引き起こされる先天性障害

性染色体異常とは、性染色体の構造異常、また、それが原因で引き起こされる先天性障害。

性染色体は、女性ではXX、男性ではXYの2本で1対をなしています。しかし、性染色体異常では、染色体が1本欠如しているモノソミーや、染色体が過剰となっているトリソミーなどが現れます。

モノソミーとしては女性のみに発現するターナー症候群があり、X染色体の片方が一部もしくはすべて欠損しています。

染色体過剰としては、男性のみに発現するクラインフェルター症候群、女性のみに発現するXXX症候群、男性のみに発現するXYY症候群があります。

ターナー症候群は2本で対をなしている性染色体が1本になることが原因で、引き起こされる先天性障害

ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がり、生きて生まれることはできませんので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発されてX染色体の一部欠落が原因と判明して以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。

その最も大きな特徴は、背が低いことです。ほかにも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。X染色体が少ないために、女性ホルモンや卵巣を作る能力が劣り、大人になっても女性らしい体つきになりにくい傾向があります。

ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達がみられない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。

また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

年齢により、小児科、婦人科、あるいは内分泌内科での検査が勧められます。

ターナー症候群の検査と診断と治療

早期発見が重要です。性染色体モノソミーに相当するターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果がみられています。

小児科、婦人科、内分泌内科の診断で、特徴的な症候により疑い、染色体検査でターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。

成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。

身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した部位の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、へこむこともあります。同じ部位ばかりに注射するのでなく、毎回注射する部位を変えることが重要です。

身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股(こ)関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを医師が調べる必要があります。

クラインフェルター症候群は男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことが原因で、引き起こされる先天性障害

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで、女性化とみられる特徴を生じる一連の症候群。

1942年に、ハリー・クラインフェルターによって初めて紹介された性染色体異常です。

通常の男性の性染色体XY、通常の女性の性染色体XXに対して、クラインフェルター症候群の男性の性染色体はX染色体が1つ多いXXYとなっています。一般に染色体すべてを総合して、47, XXYと表現されます。また、X染色体が2つ以上多い48, XXXY、49, XXXXYや、48, XXYY、さらに46, XY/47, XXYのモザイク型もあります。

細胞分裂期の性染色体不分離で過剰に生じたX染色体が、クラインフェルター症候群の原因です。過剰に生じたX染色体の由来は、父母半々とされており、高齢出産がその一因とされています。

クラインフェルター症候群の80〜90パーセントを占めるXXY染色体の発生頻度は、新生児の男児1000人から2000人に1人とされ、決して珍しい異常ではありません。

過剰に生じたX染色体が多いほど、障害の傾向も強くなります。しかし、X染色体の数の異常があればクラインフェルター症候群の症状が高確率で出るわけではなく、X染色体が1つ以上多い組み合わせの染色体を持ちながら症状が全く出ないケースのほうが多く認められます。

アンドロゲン不応症と似通っていますが、アンドロゲン不応症は染色体異常ではなく、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群であり、別の疾患です。

クラインフェルター症候群の男児は、通常の男性器を持って生まれ、幼児期、学童期には特に症状はみられず、ほぼ正常な第二次性徴的変化を認めます。しかしながら、第二次性徴ごろから胴体の成長が止まる一方で、首や手、足などが成長するため、肩幅が狭く高身長で、手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

原発性の性腺(せいせん)機能低下症(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示すために、思春期から精巣の発達が進まず、精巣が小さいために無精子症となります。そのため、正常な勃起(ぼっき)能力と射精能力などの完全な性能力を持ちながら、男性不妊となります。

そのほか、ひげや恥毛の発育不全、乳腺(にゅうせん)がいくらか発達した女性化乳房、腹壁脂肪過多、筋力低下、性欲低下、骨密度の低下など多彩な症状を示します。男性乳がんやメタボリック症候群、糖尿病などを成人期に発症しやすい体質も伴います。さらに、男性ホルモン不足による更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を中年以降に発症しやすい体質も伴います。

発語の障害、言語の障害の可能性も高く、これが学校や社会での学習障害の原因となります。性自認は大多数が通常男性ですが、性同一性障害を伴う人もいます。

なお、46, XY/47, XXYのモザイク型で正常なXYの染色体が混在するタイプの場合には、少ないながらも精巣内で精子形成も認められ、子供を持つことができる人もいます。

外見上からの診断が難しく、思春期前にクラインフェルター症候群と診断されるのは、10パーセントに満たないともされています。多くは成人となり、男性不妊の原因精査によって診断されています。

クラインフェルター症候群の検査と診断と治療

小児科、ないし内分泌科の医師による診断では、通常、血液を用いた染色体検査を行い、クラインフェルター症候群と確定します。

また、血液検査を行い、男性ホルモンのテストステロンの低値、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)高値を確認します。精液検査を行い、無精子症または極乏精子症を確認します。

小児科、内分泌科の医師による治療では、テストステロン補充療法を行います。通常、一生涯継続することになります。思春期に治療開始できた場合、正常な第二次性徴の発達など、良好な効果が期待できます。

男性不妊症に対する治療として、卵細胞質内精子注入法を行うと、健常児の出産も可能になってきています。

XXX症候群は女性だけにみられる性染色体異常で、言葉の障害や運動機能の遅れがみられる先天性障害

XXX症候群は、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患群。トリプルX症候群、スーパー女性、超女性とも呼ばれます。

XXX症候群の女性の場合は、性染色体がXXXと1本多く、女性約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってXが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でXが1つ多くなることで起こるとされます。母親の高齢出産で、XXX症候群の新生児女児が生まれる頻度が高いともいわれています。

このXXX症候群は、パトリシア・ジェイコブズらがイギリスのスコットランドで、染色体構成47XXXを持つ2人の女性を見付け、1961年に最初に報告しました。

染色体構成47XXXを持つ新生児女児のほとんどは、XXX症候群の症状をいくつかしか持っていないか、全く持っていません。

新生児女児のほとんどは、身体的には誕生時から正常に発育します。ただし、誕生時の平均体重値は、正常な染色体を持つ女児よりわずかに低くなっています。8歳までは、正常な染色体を持つ女児よりやや身長の伸びが速く、最終的に2、3cm高くなり、高身長で手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

ほとんどは、性関連と性ホルモン条件に関して、正常な染色体を持つ女児と違いはありません。外陰部や卵巣、子宮、膣(ちつ)に異常はなく、一般的な胸部、体毛の成長、そして第二次性徴も普通に現れます。妊娠、出産も可能で、その子供の大部分は正常な染色体を持って生まれます。

染色体構成47XXXを持つ女児のほとんどは、通常の知能、もしくは低くても通常の範囲の知能を持っています。しかし、その多くは、言葉の障害や学習障害を持ち、運動機能や感情の発達の遅れがみられます。数は少ないものの、軽い知的障害を持っていることもあります。

なお、XXX症候群の症状の現れは人によって大きく異なり、筋緊張低下によって上まぶたにしわが寄ったり、小指が短く内側に曲がった斜指症がみられることがあります。中には、発作や、腎臓(じんぞう)を含む泌尿生殖器の奇形など、より深刻な状態がみられることもあります。

普通、XXX症候群のほとんどは、治療の必要はありません。

XYY症候群は男性だけにみられる性染色体異常で、背が高く、言語発達の遅れがみられたりする先天性障害

XYY症候群は、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、男性にだけ起こる先天的な疾患群。スーパー男性症候群、スーパー男性、超男性、Y過剰男性とも呼ばれます。

XYY症候群の男性の場合は、性染色体がXYYと1本多く、47XYYということになります。性染色体が3本ある異常で、性染色体トリソミーにも該当します。トリソミーとは、3本という意味です。

47XYYの完全型のほか、性染色体異常の細胞と通常の細胞が混在する47XYY/46XYのモザイク型もありますが、大半が完全型です。

XYY症候群の男性は、約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってYが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でYが1つ多くなることで起こるとされます。

XYY症候群の男性は身長が高くなるのが特徴といわれ、出生時の身長は平均的なので、思春期に急速に伸びると考えられます。これは、Y染色体にあって身長を高くするSHOX (身長伸長蛋白〔たんぱく〕質)遺伝子が二重に働き、身長伸長蛋白質が多く作られるためと考えられます。

知能指数がほかの家族よりやや低い傾向があり、軽い言語発達の遅れがみられたりします。軽度の行動障害、多動性、注意欠陥障害、および学習障害を来すこともあります。

男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルは、先天的にも後天的にも一般の男性と同じ値で、精子の造成機能にやや難があり精子の数が少ないものの、子供を作ることは可能です。

XYY症候群の男性のほとんどは、原則として知能と生殖能力は正常で、一般の人と変わりはありません。障害が全くないこともあり、本人も家族も気が付かないまま通常に学校を卒業し、通常に就職し、通常に結婚して、一生を通じて全く気が付かないこともあります。性染色体は1本多いトリソミーになっても不活性化し、症状が軽くなるためです。

一説によると、XYY症候群の男性は男性としての特徴が極端に出て、背が高くて、攻撃的、または活動的な性格になりやすく、この性格が良い方向に向かえば成功者になる確率が高くなる一方、悪い方に向かえば犯罪に結び付くこともあるとされています。この説に対しては、現在では否定的な意見が多いようです。

1960年代のアメリカでは、1966年にシカゴの看護婦寮に押し入り8人の女性を殺害した事件など、いくつかの殺人事件の犯人が47XYYの染色体構成を持つ男性だったという報告があり、注目を集めました。

このため、要注意の染色体異常であるというイメージが広まり、47XYY型の男性に対する偏見、差別が生まれました。しかし、現在では、検査ミスであったと判明し、XYY症候群の男性と犯罪との関連性は否定されています。

XYY症候群の男性のほとんどは、普通に日常生活を送っていますので、治療の必要はありません。

🇧🇲性染色体トリソミー

XまたはYの性染色体が1本多い、3本あること、また、それが原因で引き起こされる先天性障害

性染色体トリソミーとは、XとYという2つの種類がある性染色体が1本多い、3本あること、また、それが原因で引き起こされる先天性障害のこと。

人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から継承しています。

合計46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態がトリソミーです。卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。

常染色体トリソミーには、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)があります。トリソミーが起きると、その染色体が担当する物質産生などが通常の1・5倍になって致命的な影響を及ぼし、新生児が生きて生まれた場合でも知的障害や奇形など多くの先天性障害を持つことになります。染色体のサイズが大きいほうから染色体番号は割り振られているので、染色体番号が若いほど先天性障害が重症になります。

3種類以外の常染色体トリソミーは、ごくまれにしか存在しません。この理由は、ほかの染色体にはより重要な遺伝情報が多いため、トリソミーは致死的となり早期に流産するためです。

一方、性染色体トリソミーには、クラインフェルター症候群、XXX症候群(トリプルX症候群)、XYY症候群(スーパー男性症候群)があります。性染色体はトリソミーになっても不活性化するため、常染色体トリソミーと比較して症状は軽く、一生発見されない場合もあります。

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで生じる先天的な疾患

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで、女性化とみられる特徴を生じる一連の症候群。

1942年に、ハリー・クラインフェルターによって初めて紹介された性染色体異常です。

通常の男性の性染色体XY、通常の女性の性染色体XXに対して、クラインフェルター症候群の男性の性染色体はX染色体が1つ多いXXYとなっています。一般に染色体すべてを総合して、47XXYと表現されます。また、X染色体が2つ以上多い48XXXY、49XXXXYや、48XXYY、さらに46XY/47XXYのモザイク型もあります。

細胞分裂期の性染色体不分離で過剰に生じたX染色体が、クラインフェルター症候群の原因です。過剰に生じたX染色体の由来は、父母半々とされており、高齢出産がその一因とされています。

クラインフェルター症候群の80〜90パーセントを占めるXXY染色体の発生頻度は、新生児の男児1000人から2000人に1人とされ、決して珍しい異常ではありません。

過剰に生じたX染色体が多いほど、障害の傾向も強くなります。しかし、X染色体の数の異常があればクラインフェルター症候群の症状が高確率で出るわけではなく、X染色体が1つ以上多い組み合わせの染色体を持ちながら症状が全く出ないケースのほうが多く認められます。

アンドロゲン不応症と似通っていますが、アンドロゲン不応症は染色体異常ではなく、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群であり、別の疾患です。

クラインフェルター症候群の男児は、通常の男性器を持って生まれ、幼児期、学童期には特に症状はみられず、ほぼ正常な第二次性徴的変化を認めます。しかしながら、第二次性徴ごろから胴体の成長が止まる一方で、首や手、足などが成長するため、肩幅が狭く高身長で、手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

原発性の性腺(せいせん)機能低下症(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示すために、思春期から精巣の発達が進まず、精巣が小さいために無精子症となります。そのため、正常な勃起(ぼっき)能力と射精能力などの完全な性能力を持ちながら、男性不妊となります。

そのほか、ひげや恥毛の発育不全、乳腺がいくらか発達した女性化乳房、腹壁脂肪過多、筋力低下、性欲低下、骨密度の低下など多彩な症状を示します。男性乳がんやメタボリック症候群、糖尿病などを成人期に発症しやすい体質も伴います。さらに、男性ホルモン不足による更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を中年期以降に発症しやすい体質も伴います。

発語の障害、言語の障害の可能性も高く、これが学校や社会での学習障害の原因となります。性自認は大多数が通常男性ですが、性同一性障害を伴う人もいます。

なお、46XY/47XXYのモザイク型で正常なXYの染色体が混在するタイプの場合には、少ないながらも精巣内で精子形成が認められ、子供を持つことができる人もいます。

外見上からの診断が難しく、思春期前にクラインフェルター症候群と診断されるのは、10パーセントに満たないともされています。多くは成人となり、男性不妊の原因精査によって診断されています。

小児科、ないし内分泌科の医師による診断では、通常、血液を用いた染色体検査を行い、クラインフェルター症候群と確定します。

また、血液検査を行い、男性ホルモンの一種であるテストステロンの低値、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の高値を確認します。精液検査を行い、無精子症または極乏精子症を確認します。

小児科、内分泌科の医師による治療では、テストステロン補充療法を行います。通常、一生涯継続することになります。思春期に治療が開始できた場合、正常な第二次性徴の発達など、良好な効果が期待できます。

男性不妊症に対する治療として、卵細胞質内精子注入法を行うと、健常児の出産も可能になってきています。

XXX症候群は、女性だけにみられる性染色体異常で、言葉の障害や運動機能の遅れがみられる疾患

XXX症候群は、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患群。トリプルX症候群、スーパー女性、超女性とも呼ばれます。

XXX症候群の女性の場合は、性染色体がXXXと1本多く、47XYYとなっています。性染色体が3本ある異常で、性染色体トリソミーにも該当します。トリソミーとは、3本という意味です。

XXX症候群の女性は、約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってXが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でXが1つ多くなることで起こるとされます。母親の高齢出産で、XXX症候群の新生児女児が生まれる頻度が高いともいわれています。

このXXX症候群は、パトリシア・ジェイコブズらがイギリスのスコットランドで、染色体構成47XXXを持つ2人の女性を見付け、1961年に最初に報告しました。

染色体構成47XXXを持つ新生児女児のほとんどは、XXX症候群の症状をいくつかしか持っていないか、全く持っていません。

新生児女児のほとんどは、身体的には誕生時から正常に発育します。ただし、誕生時の平均体重値は、正常な染色体を持つ女児よりわずかに低くなっています。8歳までは、正常な染色体を持つ女児よりやや身長の伸びが速く、最終的に2、3cm高くなり、高身長で手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

ほとんどは、性関連と性ホルモン条件に関して、正常な染色体を持つ女児と違いはありません。外陰部や卵巣、子宮、膣(ちつ)に異常はなく、一般的な胸部、体毛の成長、そして第二次性徴も普通に現れます。妊娠、出産も可能で、その子供の大部分は正常な染色体を持って生まれます。

染色体構成47XXXを持つ女児のほとんどは、通常の知能、もしくは低くても通常の範囲の知能を持っています。しかし、その多くは、言葉の障害や学習障害を持ち、運動機能や感情の発達の遅れがみられます。数は少ないものの、軽い知的障害を持っていることもあります。

なお、XXX症候群の症状の現れは人によって大きく異なり、筋緊張低下によって上まぶたにしわが寄ったり、小指が短く内側に曲がった斜指症がみられることがあります。中には、発作や、腎臓(じんぞう)を含む泌尿生殖器の奇形など、より深刻な状態がみられることもあります。

普通、XXX症候群のほとんどは、治療の必要はありません。

XYY症候群は、男性だけにみられる性染色体異常で、背が高く、言語発達の遅れがみられたりする疾患

XYY症候群は、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、男性にだけ起こる先天的な疾患群。スーパー男性症候群、スーパー男性、超男性、Y過剰男性とも呼ばれます。

XYY症候群の男性の場合は、性染色体がXYYと1本多く、47XYYとなっています。性染色体が3本ある異常で、性染色体トリソミーにも該当します。

47XYYの完全型のほか、性染色体異常の細胞と通常の細胞が混在する47XYY/46XYのモザイク型もありますが、大半が完全型です。

XYY症候群の男性は、約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってYが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でYが1つ多くなることで起こるとされます。

XYY症候群の男性は身長が高くなるのが特徴といわれ、出生時の身長は平均的なので、思春期に急速に伸びると考えられます。これは、Y染色体にあって身長を高くするSHOX (身長伸長蛋白〔たんぱく〕質)遺伝子が二重に働き、身長伸長蛋白質が多く作られるためと考えられます。

知能指数がほかの家族よりやや低い傾向があり、軽い言語発達の遅れがみられたりします。軽度の行動障害、多動性、注意欠陥障害、および学習障害を来すこともあります。

男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルは、先天的にも後天的にも一般の男性と同じ値で、精子の造成機能にやや難があり精子の数が少ないものの、子供を作ることも可能です。

XYY症候群の男性のほとんどは、原則として知能と生殖能力は正常で、一般の人と変わりはありません。障害が全くないこともあり、本人も家族も気が付かないまま通常に学校を卒業し、通常に就職し、通常に結婚して、一生を通じて全く気が付かないこともあります。性染色体は1本多いトリソミーになっても不活性化し、症状が軽くなるためです。

一説によると、XYY症候群の男性は男性としての特徴が極端に出て、背が高くて、攻撃的、または活動的な性格になりやすく、この性格が良い方向に向かえば成功者になる確率が高くなる一方、悪い方に向かえば犯罪に結び付くこともあるとされています。この説に対しては、現在では否定的な意見が多いようです。

1960年代のアメリカでは、1966年にシカゴの看護婦寮に押し入り8人の女性を殺害した事件など、いくつかの殺人事件の犯人が47XYYの染色体構成を持つ男性だったという報告があり、注目を集めました。

このため、要注意の染色体異常であるというイメージが広まり、47XYY型の男性に対する偏見、差別が生まれました。しかし、現在では、検査ミスであったと判明し、XYY症候群の男性と犯罪との関連性は否定されています。

XYY症候群の男性のほとんどは、普通に日常生活を送っていますので、治療の必要はありません。

🇧🇲性染色体モノソミー

2本で対をなしている性染色体が1本になること、また、それが原因で引き起こされる重度の先天性障害

性染色体モノソミーとは、通常、2本で対をなしている性染色体が1本になること、また、それが原因で引き起こされる重度の先天性障害のこと。

人間の体は、父親と母親から受け継いだ遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から受け継いでいます。

性染色体のXを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

合計46本の染色体のうち、2本ずつあるはずの染色体が1本減っているのがモノソミーです。卵子や精子が作られる過程における染色体の減数分裂に際して、ある染色体がうまく分離しなかったことにより、2本あるはずの染色体が1本しかないモノソミーになります。

通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こると、生きて生まれることはできません。常染色体の一部が欠けている常染色体部分モノソミーが起こると、生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発し、自立はほとんど期待できません。

また、通常、2本で対をなしている性染色体が1本になるY染色体モノソミー(Yモノソミー)が起こると、人間の生命に欠かせない遺伝子が入っているX染色体を全く持たないので、生きて生まれることはできません。

性染色体モノソミーとして存在するのは、X染色体が1本になっているX染色体モノソミー(Xモノソミー、モノソミーX)、いわゆるターナー症候群のみで、女性にだけ起こる先天性障害です。

このターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がり、生きて生まれることはできませんので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発されてX染色体の一部欠落が原因と判明して以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。

その最も大きな特徴は、背が低いことです。ほかにも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。X染色体が少ないために、女性ホルモンや卵巣を作る能力が劣り、大人になっても女性らしい体つきになりにくい傾向があります。

ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達がみられない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。

また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

年齢により、小児科、婦人科、あるいは内分泌内科での検査が勧められます。

性染色体モノソミーの検査と診断と治療

早期発見が重要です。性染色体モノソミーに相当するターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果がみられています。

小児科、婦人科、内分泌内科の診断で、特徴的な症候により疑い、染色体検査でターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。

成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。

身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した部位の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、へこむこともあります。同じ部位ばかりに注射するのでなく、毎回注射する部位を変えることが重要です。

身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股(こ)関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを医師が調べる必要があります。

2022/08/22

🇹🇭尖圭コンジローム

性器に軟らかい、いぼのような腫瘍ができる性行為感染症

尖圭(せんけい)コンジロームとは、男女の性器に軟らかい、いぼのような腫瘍(しゅよう)ができる疾患。尖圭コンジローマとも呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)がセックスの時などに感染することで起こります。好発するのは、いわゆる性活動の盛んな年代。

ヒト乳頭腫ウイルスに感染した人がすべてすぐに発症するわけではなく、ウイルスが体内に潜んでいるだけの人がかなりいるといわれています。そのため、移された相手がはっきりしない場合も多くみられます。潜伏期間は一定ではありませんが、一般的に感染後2~3カ月で症状が現れます。

男性では、主として冠状溝という、亀頭と陰茎の中央の間にある溝に、ニワトリのトサカのような腫瘍ができて増殖します。塊が大きくなるとカリフラワー状になることもあります。陰嚢(いんのう)、尿道口、肛門(こうもん)周囲、口腔(こうくう)にできることもあります。

女性では、大小の陰唇、膣(ちつ)、会陰(えいん)部などの皮膚と粘膜の境界にある湿った部分にでき、 尿道口、肛門周囲、口腔にできることもあります。

感染初期は異物感があるだけで自覚症状はほとんどありませんが、かゆみやひりひりする感じがあったり、ほてる、性交痛を感じる場合もあります。

いったん治療して腫瘍が消えても、ヒト乳頭腫ウイルスが皮下に潜んでいて再発を繰り返すことがよくあります。女性では、原因となるヒト乳頭腫ウイルスと子宮頸(けい)がんとの関連も推定されています。

尖圭コンジロームの検査と診断と治療

男性の場合、正常な陰茎にも1〜2ミリの小さないぼのようなぶつぶつがみられることがありますが、これは治療の必要はありません。しかし、尖圭コンジロームは悪性のものや性行為で移るものまでさまざまなものがありますので、亀頭部にできている痛みのないはれ物に気付いたら、泌尿器科か皮膚科の専門医を受診します。

医師の診断では、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジローマと違って先のとがったいぼで、多発すると鶏冠状を示すため、多くは見た目で判定できます。判断が難しい場合は、皮膚組織の一部を切除して顕微鏡検査で判定します。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

治療では、小さくて少数なら5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれていますが、一般的には液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。大きかったり、多発、再発する場合は、周囲の皮膚を含めて手術で切除します。

これらの治療によって一時的に腫瘍は消えますが、ウイルスは周囲の皮膚に潜んでいるため20〜50パーセントで再発します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。特に、女性が生理の時はふだんよりさまざまな菌に感染しやすいので、性行為は控えます。また、避妊目的でピルを服用しても、性行為感染症の予防にはなりませんので、男性にコンドームの使用を求めます。

2022/08/21

🇵🇰早発月経

一般的な年齢より早く、10歳未満で初めての月経を迎える状態

早発月経とは、初めての月経である初潮を10歳未満で迎える状態。

女児が初潮を迎える時期にはそれぞれ個人差があり、一般的には、12歳が初潮を迎える年齢の平均とされています。

個人の生活環境、遺伝、栄養状態などによって、月経が始まる時期が早まることがあります。ほかにも、性機能をつかさどる中枢である間脳の視床下部が早期に脳下垂体刺激ホルモンを分泌するようになり、そのため卵巣機能が早期に促進されることによって、月経が始まる時期が早まることあります。しかし、視床下部が早期に性中枢としての機能を発揮するようになる原因は、解明されていません。

そのほかに、脳腫瘍(しゅよう)や脳下垂体の腫瘍、脳の外傷によって、卵巣刺激ホルモンが分泌されるようになる場合や、卵巣自体や副腎(ふくじん)の腫瘍の場合などに、月経様出血が現れることもあります。

早発月経で、月経だけが早発することは少なく、多くの場合、出現時期の差はあれ、乳房発育、恥毛や腋毛(えきもう)の発毛など、ほかの二次性徴もみられる早発思春期(思春期早発症)を伴っています。

ただし、原因によっては恥毛の発毛がみられないこともあります。また、原因によっては、皮膚のカフェオレ様といわれる特徴的な斑点(はんてん)、卵巣腫瘍による腹部の膨隆、陰核の肥大がみられることもあります。

出血は起こったり止まったりすることが多く、出血が一度だけでほかの二次性徴がみられないような場合は、早発月経ではなく外傷も考えられます。

10歳未満での出血に気付いたら、外傷などによる一度きりのものでないか、乳房、腋毛、恥毛の発育状態はどうかを確認して、早発思春期の可能性があると考えられれば、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

早発月経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、問診、視診、基礎体温の測定、血液検査(ホルモン検査)、X線(レントゲン)検査(骨年齢の測定)などを行います。

場合によっては、超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査 、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などによる卵巣腫瘍や副腎腫瘍、脳腫瘍の検査も行います。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、早発月経が遺伝や体質的なものから生じている場合、特に治療の必要はありません。

ホルモン分泌異常による場合、初潮から間もないころは身長が急速に伸びるものの、成長期に入ると成長が止まってしまい、低身長のままとなることもあるため、症状によっては、同時に起こる骨の成熟を遅らせ、最終身長を伸ばすことを目標として、脳下垂体機能を抑制して女性ホルモンを下げるGnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤による治療を行います。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

ただし、すでに骨の成熟が完了していると考えられる場合は、治療の対象になりません。

卵巣腫瘍、副腎腫瘍、脳腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、化学療法や放射線療法も行います。

🇵🇰早発乳房

乳幼児期の女児の乳房が大きくなるもの

早発乳房とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。乳房早期発育症、思春期前乳房隆起とも呼ばれます。

発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。

乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。

通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。

早発乳房の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。

乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、早発乳房以外の疾患の可能性を疑う必要があります。

疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。

早発乳房の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。

思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。

🟧「酒のエナジードリンク割りは危険」、農水省が注意喚起 過去には中毒死も

 酒とエナジードリンクを一緒に飲むとカフェインの過剰摂取による健康被害につながりかねないとして、農林水産省が注意喚起しています。5月8日に問い合わせが相次いだことを受けての対応で、同省は直前に人気ユーチューバーが酒とエナジードリンクを一緒に飲む動画を投稿した影響とみています。 ...