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2022/08/23

🇨🇿精巣捻転症(精索捻転症)

男性の精巣が回転して精索がねじれ、精巣への血流が妨げられる疾患

精巣捻転(ねんてん)症とは、精巣が回転して精索がねじれ、精巣への血流が妨げられる疾患。精索捻転症とも呼ばれます。

男性の精巣、すなわち睾丸(こうがん)と、精巣上体、すなわち副睾丸は、陰嚢(いんのう)の底部の固定にされていて、それにひも状の精索がつながっています。精索には、精巣に出入りする血管と、精液の通り路の精管が入っています。精索がねじれると、精巣に通じる血管がふさがれて血行障害を起こすために、6〜12時間で精巣は壊死(えし)に陥ります。

新生児期と、思春期から25歳ごろまでの間に多く発生しますが、どの年齢でも起こる可能性があります。新生児期では、精巣が陰嚢の中で底部に十分固定されておらず回転しやすいことが原因です。思春期では、第二次性徴といって精巣の重量が増える際に、周囲の支持組織が十分でないことが原因と考えられています。

症状としては、精巣部から下腹部にかけて突然、強い痛みが起こります。吐き気、嘔吐(おうと)、時にはショック症状となることもあります。局所は赤くなり、はれを生じ、触ると強い圧痛を覚えます。その際、精巣は上方へ上がっています。

精巣捻転症の検査と診断と治療

発症者は夜中から明け方に突然、激しい陰嚢部の痛みで目が覚めることが多いようです。足の付け根から下腹部にかけて痛みが響くことがあるので、単なる腹痛や虫垂炎(盲腸炎)と間違われることもあります。少しでも精巣捻転症が疑われる場合は、泌尿器科のある総合病院を一刻も早く受診します。

医師の診断は、発症者の症状説明と臨床所見に基づいて行われますが、血液検査、尿検査で感染症が疑われるような異常がないことが1つのポイントとなります。陰嚢を上方に持ち上げた時に痛みが強まるプレーン徴候があり、反対に痛みの和らぐ精巣上体炎と区別できるといわれていますが、はっきりしないことが多いようです。

精巣の血液の流れを確認するためにドプラー超音波検査を行い、血流が確認できないことで診断がより確実になります。

治療としては、精巣捻転症の可能性が高い、あるいは精巣捻転症が否定できない場合は、緊急手術でできるだけ早期に陰嚢を切開し、捻転症であれば精索のねじれを元に戻します。この時、精巣の血流が再開されてきれいな色に戻れば、そのまま陰嚢の中に戻し、精巣を周囲の組織に縫い付ける処置を行い、二度と捻転が起こらないようにします。反対側の精巣もねじれやすいと考えられるので、予防のため同様に固定します。

精索のねじれが強かったり、時間がたちすぎていて、精巣への血液の流れが回復せず壊死してしまった場合は、そのままだと反対側の精巣にも悪影響を及ぼすため、精巣を摘出せざるを得ません。約1時間の簡単な手術で、新生児では全身麻酔、中学生以上なら下半身麻酔で行われます。

2022/08/22

🇹🇭線維性海綿体炎

陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患

線維性海綿体炎とは、男性の陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患。形成性陰茎硬化症、陰茎形成性硬結症、陰茎硬化症、ペロニー病、パイロニー病、ペイロニー病、ヴァン・ビューレン病などとも呼ばれます。

30~70歳代の男性にみられ、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができます。白膜は伸び縮みする弾性線維と硬い膠原(こうげん)線維の組み合せでできていて、ある程度伸びると止まる構造になっていますが、膠原線維が増えてしこりになります。

しこりは陰茎の陰嚢(いんのう)と反対側の面にできることが多く、すじ状のものから板状で骨のようなものまで、さまざまな形があります。

勃起(ぼっき)すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、性交に支障を来すこともあります。

平常時は痛くもかゆくもなく、しこりそのものは無害と考えられ、自然によくなることもあります。逆に、徐々に進行することもあります。

詳細な原因は、まだよくわかっていません。慢性陰茎海綿体炎、糖尿病、痛風、外傷などとの関連が疑われています。

手の小指や薬指の内側の腱(けん)が引きつって内側に曲がったり、手のひらや足の裏が短縮したりするデュプイトラン拘縮という疾患と一緒に現れることもあります。デュプイトラン拘縮は、中年以降の男性に多くみられて、長期にわたるアルコール摂取が危険因子の一つと見なされており、糖尿病に合併することもあります。

線維性海綿体炎らしいと思い当たり、性生活に支障を来すようであったり、ほかの疾患、例えば陰茎がんなどとの見極めが困難な場合は、泌尿器科などの医師に相談することが勧められます。

線維性海綿体炎の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、特徴的なしこり(硬結)の症状の視診、触診で確定できます。以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。

超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察でき、しばしば石灰化が確認できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。

この線維性海綿体炎ががんになることはありませんが、しこりや痛みが同じように現れる陰茎がんとの見極めは難しく、正確に診断するためにしこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります。

線維性海綿体炎に特に有効な根本的な治療法は、現在のところありません。勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療(体外衝撃波治療)、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。

痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。

性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。手術には、しこりがある反対側の白膜を切り詰めて湾曲を矯正する縫縮法(プリケーション法)と、白膜のしこり自体を切除し、欠損部に皮膚や静脈を移植する移植法の2つがあります。

通常、軽い場合は縫縮法、症状が進んでいれば移植法が行われます。縫縮法は湾曲の改善のみを目的とした方法で、移植法に比べて簡単ですが、しこりや痛みの改善はできないことと陰茎の短縮が問題となります。移植法も、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して手術前より悪化したり、切除しても再発することがあるのが問題となります。

いずれも2時間ぐらいの手術で、3日間程度のの入院が必要です。糖尿病のある人の場合は、血糖コントロールが必要のため入院期間が少し長くなります。縫縮法を局所麻酔で行う場合は、日帰り手術も可能です。

症状が進んで陰茎海綿体にまで影響するなど重い勃起障害がある場合は、陰茎の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。デュプイトラン拘縮が一緒に現れている場合は、基本的に薬物療法や注射は治療効果がなく、手術による治療になります。

2022/08/21

🇮🇳造精機能障害

精巣で精子を作る機能に障害がある状態で、男性不妊症の原因の一つ

造精機能障害とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)で精子を作る機能に障害がある状態。男性不妊症の原因の一つになっています。

男性不妊症は、避妊をせずに性交の機会を持ち続けているにもかかわらず、1年以上子供ができない不妊の原因が男性側にある状態です。その原因の9割を造精機能障害が占めています。

造精機能障害では、精巣で精子を作る機能に障害があるために、射精される精液中の精子の数、運動率、形態などに問題があり、無精子症、乏精子症、精子無力症、精子不動症、精子奇形症、精子死滅症に分けられます。

無精子症

無精子症は、男性の精液の中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められない状態。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

男性の100人に1人は、無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞(へいそく)性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。

閉塞性無精子症は、精巣の中で精子が作られているものの、精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞しているために、精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。

原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。

一方、非閉塞性無精子症は、精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射精された精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。

原因となる疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張しこぶができた精索静脈瘤(りゅう)などです。

乏精子症

乏精子症は、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。

乏精子症は男性不妊症の原因となり、夫婦生活による自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。

精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。

精子無力症

精子無力症は、男性の精液内の精子の運動率が低下した状態。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。

精子不動症

精子不動症は、男性の精液中に精子を認めるものの、ほとんどの精子の動きがない状態。重度の精子無力症であり、精子の運動率が低下した状態にあります。

精子不動症の多くでは、精子の少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。

例えば、常染色体の劣勢遺伝でカルタゲナー症候群を発症した人では、慢性副鼻腔(びくう)炎、右胸心、気管支拡張症を合併していて、精子の鞭毛のみならず全身の線毛の機能障害が特徴的で、精子も完全に不動化しています。

精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

精子が不動化する原因は、尾部の鞭毛を構成している中心部分の2本、および周囲の9本の軸糸の配列が壊れていて、運動のエネルギー源となる中片部のミトコンドリア鞘(しょう)の発育が不十分なためです。

精子不動症になってしまう原因は、精子無力症と同じで先天的なものが大半を占めます。

精子奇形症

精子奇形症は、精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。奇形精子症とも呼ばれます。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、精子奇形症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

精子死滅症

精子死滅症は、男性の精液中に精子を認めるものの、その精子が全く動いておらず、しかもほとんどが死んでいる状態。死滅精子症とも呼ばれます。

精液検査における精子濃度には問題はないものの、精子のほとんどが死滅してしまっているという状態です。精子不動症とともに重度の精子無力症であり、精子不動症では精子の運動率が数パーセントに低下した状態にあるのに対して、精子死滅症では運動率が0パーセントに低下した状態に陥っています。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精巣上体において成熟しますので、この精子を作る造精機能や造精過程に何らかの障害があると、ほとんどの精子が死んでしまうことになります。

精巣の中で精子となる細胞自体にもともと何らかの原因があるケースと、精巣上体の分泌液に異常があって精子が死んでしまうケースなどがあります。それがどの過程で起こり、なぜ起こるのかについては、不明な点が多く残っています。

精子死滅症になる原因は、精子無力症や精子不動症と同じで先天的なものが大半を占めます。

造精機能障害の検査と診断と治療

無精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。

精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精管に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。

また、精液検査の結果、精液中に精子が一つも存在しないという場合でも、数少ない精子が精巣内で作られていることがあり、それを調べるために精巣組織検査を行うことがあります。

泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、自然妊娠も期待できます。

先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに体外受精という方法を用いて妊娠を期待します。

泌尿器科の医師による非閉塞性無精子症の治療では、精巣組織検査で数少ない精子が精巣内で作られていることが確認された場合に限り、顕微鏡下精巣精子採取法によって精巣の中を隅々まで観察し、精子がいる可能性の高い精細管を採取して精子を探し出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに顕微受精という方法を用いて妊娠を期待します。精子が一つでも探し出せれば、妊娠する確率はゼロではありません。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

乏精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。

精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。

精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

精子無力症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。

薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。

中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。

精子不動症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に数パーセント以下の場合に精子不動症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の授精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子不動症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

精子奇形症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である精子奇形症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射出精子中には奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

精子死滅症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に0パーセントの場合に精子死滅症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが受精、妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の受精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOSテストを行い、浸透圧の異なる培養液に採取した精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。精子死滅症の場合は3回程度精液を採取し、その中に1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

2022/08/19

🇻🇳副睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である副睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

副睾丸(ふくこうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である副睾丸に感染することによって起こる疾患。

精巣上体結核とも、結核性精巣上体炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

副睾丸、すなわち精巣上体は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている睾丸、すなわち精巣の上面、および後面に付着している睾丸付属器の一つになります。副睾丸は、内部に副睾丸管(精巣上体管)を内包していて、この副睾丸管は、精巣で産生している精子の通路である精路の一部になります。 また、副睾丸は、精子を運ぶだけでなく、精液の液体成分である精漿(せいしょう)の一部の産生も行っています。

精路はこの副睾丸から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

副睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺、副睾丸、睾丸、精嚢腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の副睾丸結核は、結核菌が副睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、また精路周囲のリンパ管からリンパ行性に感染し、炎症を起こして、副睾丸などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、副睾丸の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、睾丸の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、副睾丸と睾丸の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には副睾丸と睾丸を破壊することもあります。初めは片方の副睾丸と睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である副睾丸結核の頻度は低下しています。

副睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

副睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のある数珠状のはれがみられたり、睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

副睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立線や睾丸などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立線がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、副睾丸だけを摘出する外科的療法、あるいは副睾丸を含めて睾丸、精嚢腺、前立腺まで摘出する外科的療法を検討することもあります。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば副睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

2022/08/18

🇹🇲左腎静脈捕捉症候群

左側の腎臓の静脈が動脈に圧迫されることが原因となって、目で見て赤い尿が出る疾患

左腎静脈捕捉(ひだりじんじょうみゃくほそく)症候群とは、左側の腎臓からの出血のために、目で見て明らかに赤い尿が出る疾患。ナットクラッカー症候群、ナッツクラッカー症候群、くるみ割り症候群、腎臓くるみ割り症候群、左翼腎静脈わな症候群などとも呼ばれます。

まれな疾患で、その多くは小児期から思春期前後に発症します。成人では、やせた人によくみられるともいわれています。

右側の腎臓の静脈は下大静脈にすぐに合流しますが、左側の腎臓の静脈は下大静脈に合流する途中で、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間を通り、くるみ割りの器具(ナットクラッカー)に挟まったような状態になっています。この静脈が2つの動脈に挟まった部位で、動脈圧が高く静脈圧が低いために静脈が押しつぶされると、静脈内圧が上がって静脈の血液の流れが悪くなるために、左側の腎臓の毛細血管がうっ血や出血を来し、排尿時に赤い尿が出ます。

身体的には無症状で、目で見て赤い肉眼的血尿のみが認められる場合が多く、一定の時を置いて起こる間欠的な血尿が認められます。血尿は、ピンク色から鮮紅色で、コーラのように色の濃いこともあります。

尿の中に混ざる赤血球の程度によって、多ければ目で見て明らかに赤い肉眼的血尿となり、少なければ見た目は正常な尿の色でも赤血球が混ざっている、いわゆる尿潜血、または顕微鏡的血尿の状態になります。左腎静脈捕捉症候群でも、検診などによって尿潜血を認めることによって発見されるケースが多くみられます。

症状が重いケースでは、血尿のほかに、片腹部痛、腰痛、貧血、精巣静脈瘤(りゅう)、卵巣静脈瘤、起立性蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。精巣静脈瘤、卵巣静脈瘤があると、不妊の原因になることもあります。

こうした一部のケースを除き、左腎静脈捕捉症候群の予後は良好で、多くは時間の経過とともに、他の静脈への側副血行路といわれる血液の別ルートが発達しますので、自然に治ることがほとんどです。

左腎静脈捕捉症候群の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、出血の部位が左側の腎臓であることを膀胱(ぼうこう)鏡で確認後、造影剤を静脈注射して撮影する造影CT(コンピューター断層撮影)検査、腹部超音波(エコー)検査などを行います。

腹部超音波検査の際には、左側の腎臓静脈、卵巣静脈、副腎をよく観察し、それぞれの拡張や、腎臓静脈の周囲の循環系による圧迫、狭窄(きょうさく)がないかどうかに注意します。超音波検査法の一種である超音波ドップラー法という検査を行い、腎臓静脈を観察し、狭窄部位から下大静脈への血流速度の計測をすることもあります。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療は、基本的には不要で、側副血行路が発達し自然に治ることが多いものの、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。

貧血が進行するほどの肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂(じんう)内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

それでもうまく出血のコントロールができない場合には、左側の腎臓静脈の狭窄部位に、血管の中で拡張して適切な太さに保つステントと呼ばれる機器を挿入する手術を行うこともあります。あるいは、左側の腎臓静脈が下大静脈に合流する部位を切り離し、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間の距離が広い下側につなぎ直す、左腎静脈転位術という手術を行うこともあります。

🇸🇨パイロニー病

陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患

パイロニー病とは、陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患。陰茎形成性硬結症、陰茎硬化症、ペロニー病、ペイロニー病とも呼ばれます。

30~50歳代の男性に多く、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができます。しこりは陰茎の陰嚢(いんのう)と反対側の面にできることが多く、すじ状のものから板状で骨のようなものまで、さまざまな形があります。

勃起(ぼっき)すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、パートナーとの性交に支障を来すこともあります。

平常時は痛くもかゆくもなく、しこりそのものは無害と考えられ、自然によくなることもあります。

詳細な原因は、まだよくわかっていません。慢性陰茎海綿体炎、糖尿病、痛風、外傷などとの関連が疑われています。

また、手のひらや指の腱膜(けんまく)の肥厚と収縮によって、主として小指や薬指が次第に曲がって変形するデュプイトラン拘縮という疾患が、パイロニー病に合併して起こることがあります。デュプイトラン拘縮は北欧系の白人に多く、日本人には比較的少ないものの、中年すぎの50~60歳での発症が時々みられ、5対1の割合で男性に多く、半数以上は両手に起こります。

パイロニー病らしいと思い当たり、性生活に支障を来すようであったり、ほかの疾患、例えば陰茎がんなどとの見極めが困難な場合は、泌尿器科などの医師に相談することが勧められます。

パイロニー病の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、特徴的なしこり(硬結)の症状の視診、触診で確定できます。以前に外傷や炎症などがあったかどうかが、参考になります。パイロニー病ががんになることはありませんが、がんによるしこりと区別するために、しこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります

パイロニー病に特に有効な根本的な治療法は、現在のところありません。勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。

性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。陰茎海綿体を包む硬化した白膜を切除し、欠損部には皮膚の移植をします。ただし、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して、手術前より悪化することがあります。

2022/08/17

🇹🇱多睾丸症

男性の睾丸が3個以上存在する先天性奇形

多睾丸(たこうがん)症とは、男性の下腹部に睾丸が3個以上存在する状態の先天性異常。睾丸過剰症、多精巣症、精巣過剰症とも呼ばれます。

泌尿器系と生殖器系には、その胎生期の複雑な発生過程のために多くの先天性異常が生じやすく、男性の生殖器官である睾丸、すなわち精巣についても数、形態、位置などの異常が知られています。多睾丸症も、比較的まれにみられる先天性異常です。

睾丸は本来、陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生していますが、多睾丸症では真ん中にある陰嚢縫線で区切られた左右の陰嚢内に、余剰な睾丸を含めて2個の睾丸が重複して存在します。左の陰嚢内に2個存在することが多く、右の陰嚢内に2個存在することもありますが、左右両側の陰嚢内に2個存在することはまれです。

余剰な睾丸はほとんどが陰囊内に存在しますが、睾丸の下降が不十分で陰嚢内に位置せずに途中でとどまっている停留睾丸(停留精巣)などに合併して、脚の付け根の鼠径(そけい)部に存在することもあります。

余剰な睾丸が発生する理由として、胎生6週で構成される生殖隆起(生殖堤)の分割過程での異常、生殖隆起の重複、胎生5週で構成される胎芽期の腎臓(じんぞう)に相当する中腎の部分的な退化の3つが考えられています。

多精巣症は、睾丸(精巣)、精液の通り路である精管(輸精管)、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸(精巣上体)の関係から6型に分類されています。

第1型は、睾丸、精管、副睾丸を重複するもの。第2型は、重複する一方が睾丸、副睾丸のみで精管を有しないもの。第3型は、重複する一方が睾丸、精管のみで副睾丸を有しないもの。第4型は、重複する一方が睾丸のみで副睾丸、精管を有しないもの。第5型は、重複する睾丸に副睾丸が付着し、これに続く1本の精管を共有するもの。第6型は、重複する睾丸、副睾丸が1本の精管で連結されているもの。このうち、第5型が最も多いとされています。

多睾丸症には、停留睾丸のほか、鼠径ヘルニア、陰囊水腫(すいしゅ)、精索水腫、精巣捻転(ねんてん)、睾丸(精巣)腫瘍(しゅよう)、奇形腫、胎児性がんなどを合併することがあります。

多精巣症を発見された年齢は、2歳から49歳と幅広いものの、平均年齢は20歳で若年者に多くなっています。幼少時は、停留睾丸、鼠径ヘルニアなどほかの疾患の治療時に発見されることが多く、幼少時以降では無痛性陰囊内腫瘤(しゅりゅう)を主訴として受診した際に、診断されることが多くなっています。

多睾丸症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず陰嚢の触診による腫瘤の触知を図ります。超音波(エコー)検査を行うと、睾丸と等信号の像が得られ、陰囊水腫、精索水腫との鑑別が可能となります。悪性腫瘍の可能性もあるため、 CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行い、骨盤内病変の有無を調べることもあります。

最終的には、余剰な睾丸に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行う生検も含め、手術で摘除した組織の病理組織診によって、確定します。

鑑別すべき疾患としては、悪性腫瘍のほか、睾丸腫瘍、副睾丸腫瘍、精液瘤などがあります。

泌尿器科の医師による治療では、ほとんどの場合は診断も兼ねて、余剰な睾丸を手術で摘除します。余剰な睾丸が小さい場合はもちろん、特に、陰囊外の鼠径部に存在する余剰な睾丸は、がん化の危険を考慮し手術で摘除するべきと考えられています。

また、陰囊内にあり妊孕(にんよう)性を期待できるものに関しても、生検で悪性・異型性を認めるもの、解剖学的には精路を認めても造精能を欠くもの、超音波検査で悪性所見を認めるもの、あるいは本人に余剰な睾丸の摘除の希望がある時、定期的な経過観察が望めない時は、手術で摘除するのが一般的です。

生検で余剰な睾丸が睾丸実質であり、悪性腫瘍でないことを確認した後に温存した場合は、慎重を期した定期的な診察と超音波検査が必要になります。

🇲🇻早漏

パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

早漏の検査と診断と治療

精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。

🇨🇻後天性陰茎湾曲症

生まれてから生じた異常によって、男性の陰茎が勃起した時に湾曲する状態

後天性陰茎湾曲症とは、生まれてから生じた異常によって、男性の陰茎が勃起(ぼっき)した時に根元から、あるいは途中から湾曲する状態。

上下に曲がる場合や左右に曲がる場合、両方が混在した場合などがあり、陰茎の中ほどから下方向にへの字型に折れ曲がる場合が一番多くみられます。

勃起していない時はほとんど目立たない場合が多いのですが、勃起すると明らかな曲がりが確認できます。湾曲が強いと勃起自体に陰茎の痛みが伴うことがあるものの、勃起していない状態では陰茎の痛みはありません。

陰茎の湾曲のほか、勃起弱化が起こることもあります。

ほとんどの男性の陰茎はどこかの方向に曲がっているものの、大半は真っすぐといえる範囲に収まっています。陰茎湾曲症でも軽度の湾曲は問題ないものの、陰茎の湾曲が強ければ、性行為の際にペニスを挿入しにくかったり、挿入後にすぐに抜けてしまったり、パートナーの女性が痛がったり、男性自身も亀頭部の摩擦が多くて痛みを生じるなどという問題が生じやすくなります。

変形によるコンプレックスや、勃起に伴う陰茎の痛みに対する不安など、精神的なストレスから勃起不全(インポテンツ)に陥ることもあります。

後天性陰茎湾曲症は、陰茎形成性硬結症(ペロニー病)や、外傷による陰茎折症(陰茎折傷)によって生じます。

陰茎形成性硬結症は陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患

陰茎形成性硬結症は、陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患。疾患名は1743年に最初に報告したフランスの医師フランソワ・ジゴ・ラ・ペロニーにちなみ、ペロニー病、パイロニー病、ペイロニー病、陰茎硬化症などとも呼ばれます。

30~70歳代の男性に多く、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができます。白膜は伸び縮みする弾性線維と硬い膠原(こうげん)線維の組み合せでできていて、ある程度伸びると止まる構造になっていますが、膠原線維が増えてしこりになります。しこりは陰茎の陰嚢(いんのう)と反対側の面にできることが多く、すじ状のものから板状で骨のようなものまで、さまざまな形があります。

勃起すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、性交に支障を来すこともあります。

平常時は痛くもかゆくもなく、しこりそのものは無害と考えられ、自然によくなることもあります。逆に、徐々に進行することもあります。

詳細な原因は、まだよくわかっていません。慢性陰茎海綿体炎、糖尿病、痛風、外傷などとの関連が疑われています。手の小指や薬指の内側の腱(けん)が引きつって内側に曲がったり、手のひらや足の裏が短縮したりするデュプイトラン拘縮という疾患と一緒に現れることもあります。デュプイトラン拘縮は中年以降の男性に多くみられ、長期にわたるアルコール摂取が危険因子の一つと見なされ、糖尿病に合併することもあります。

陰茎形成性硬結症らしいと思い当たり、性生活に支障を来すようであったり、ほかの疾患、例えば陰茎がんなどとの見極めが困難な場合は、泌尿器科などの医師に相談することが勧められます。

陰茎折症は陰茎に過度の力が加わり、著しく変形したり、はれ上がった状態

陰茎折症は、勃起した陰茎に過度の力が加わったために、あるいは事故などによる外傷のために、陰茎海綿体を包む白膜が断裂して、陰茎が折れ曲がる状態。陰茎折傷とも呼ばれます。

陰茎白膜のみにとどまらず、陰茎海綿体に裂傷が生じたり、尿道海綿体や尿道に損傷が生じることもあります。

年間の発生率は10万人に0・3人との報告もあり、まれです。20〜40歳の性的活動性の高い年齢層に多く発生し、その原因として、自分の手で曲げる行為、性行為、自慰、寝返り、転倒などが挙げられます。

陰茎白膜が断裂する部位は、陰茎中央部が最も多く、陰茎根部、亀頭近接部にもみられます。勃起した陰茎が無理やり曲げられた場合などでは、ほとんどのケースで、伸展して薄くなった陰茎白膜が穀物の茎の折れる音、あるいはガラス棒の折れる音と形容されるようなブチッという異常音を立てて、断裂します。

その瞬間から、激しい痛みが起こります。陰茎は勃起状態から普通の状態に戻るとともに、激痛は持続的な鈍痛あるいは刺痛に変わり、浅陰茎背静脈などの血管の破裂による内出血のために、徐々に皮下血腫(けっしゅ)ができてきます。そして、破裂した部位とは反対側に、陰茎が折れ曲がります。陰茎は著しくはれ上がり、陰茎の皮膚は暗紫色をみせます。

皮下血腫の圧迫により排尿困難を起こしたり、尿道に損傷が生じた場合には、外尿道口からの出血、血尿、尿閉を伴うこともあります。

陰茎根部に接する陰嚢の鞘膜(しょうまく)も破裂すると、鼠径(そけい)部、会陰(えいん)部、恥骨(ちこつ)部に斑状(はんじょう)の皮下血腫ができることもあります。

誘因として尿道炎、尿道周囲炎、尿道狭窄(きょうさく)、陰茎白膜の硬化性変化、陰茎海綿体の変性が挙げられ、陰茎にわずかに異常な外力が加わっただけで陰茎折症が起こりやすく、尿道の損傷などの合併症が起こる危険性が増すともいわれています。

陰茎折症の症状が出たら、早期に泌尿器科、ないし外科の医師を受診する必要があります。放置すると、勃起力の減退、勃起時の陰茎の湾曲、有痛性勃起、勃起障害、排尿障害などが起こり得ます。軽度の場合のはれ上がりがない状態でも、受診は必要になります。

後天性陰茎湾曲症の検査と診断と治療

陰茎形成性硬結症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による陰茎形成性硬結症(ペロニー病)の診断では、特徴的なしこり(硬結)の症状の視診、触診で確定できます。以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。超音波検査やMRI検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察でき、しばしば石灰化が確認できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。

この陰茎形成性硬結症ががんになることはありませんが、しこりや痛みが同じように現れる陰茎がんとの見極めは難しく、正確に診断するためにしこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります。

陰茎形成性硬結症に特に有効な根本的な治療法はありませんが、勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療(体外衝撃波治療)、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。

性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。手術には、しこりがある反対側の白膜を切り詰めて湾曲を矯正する縫縮法(プリケーション法)と、白膜のしこり自体を切除し、欠損部に皮膚や静脈を移植する移植法の2つがあります。

通常、軽い場合は縫縮法、症状が進んでいれば移植法が行われます。縫縮法は湾曲の改善のみを目的とした方法で、移植法に比べて簡単ですが、しこりや痛みの改善はできないことと陰茎の短縮が問題となります。移植法も、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して手術前より悪化したり、切除しても再発することがあるのが問題となります。

いずれも2時間ぐらいの手術で、3日間程度の入院が必要です。糖尿病のある人の場合は、血糖コントロールが必要のため入院期間が少し長くなります。縫縮法を局所麻酔で行う場合は、日帰り手術も可能です。

症状が進んで陰茎海綿体にまで影響するなど重い勃起障害がある場合は、陰茎の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。デュプイトラン拘縮が一緒に現れている場合は、 基本的に薬物療法や注射は治療効果がなく、手術による治療になります。

陰茎折症の検査と診断と治療

泌尿器科、ないし外科の医師による陰茎折症(陰茎折傷)の診断は、発症時のブッチという断裂音の問診と、陰茎白膜の断裂部位と反対側への陰茎の屈曲、陰茎の暗紫色のはれ上がりなど独特な形態変化から、臨床的に下します。

皮下血腫が広範であれば、陰茎白膜などの断裂部位の確定は触診のみで困難なことも多く、MRI検査が行われることもあります。尿道の損傷の発生率が高いため、陰茎尿道X線撮影(逆行性尿道造影)が行われることもあります。

泌尿器科、ないし外科の医師による治療は、尿道の損傷がない場合や軽い尿道断裂と見なした場合、保存的に治療することもあります。局部の安静、陰茎および陰嚢の挙上などにより血腫の吸収を促進し、圧迫包帯、湿布、止血剤、消炎鎮痛剤などを使用して治療します。

しかし、保存的治療だけでは、陰茎の変形、勃起障害などの後遺症が生じる割合が高いため、陰茎白膜の断裂が高度で出血が著しい場合や尿道損傷のある場合は、手術が行われるのが一般的です。まず血腫がある場合にはこれを取り除いて、最小限の皮膚切開で陰茎白膜の断裂部分を縫い合わせます。早期に適切な手術を行えば、後遺症はまず生じません。

早期に適切に対応しないと、後遺症が残る可能性が高くなります。また、尿道断裂に至るなど重度なものは予後はよくなく、陰茎形成術、尿道形成術などを要します。

2022/08/16

🇫🇯埋没陰茎

下腹部に陰茎が埋もれて、実際のサイズよりも小さく見える疾患

埋没陰茎とは、男性の陰茎が周囲の皮下脂肪に埋もれたり、恥骨上の過剰な皮下脂肪に埋もれたりして、実際のサイズよりも小さく見える疾患。

先天的に発症する場合と、後天的に発症する場合があり、先天的な発症は幼小児に多くみられます。

幼小児にみられる埋没陰茎では、陰茎は皮下脂肪に埋もれながらも、そのサイズは長さ、太さとも年齢相応に発育していくケースが多いとされています。陰茎を持ち上げると、正常の外観となります。

陰茎は基本的に、陰茎ワナ靭帯(じんたい)と陰茎提靭帯という靭帯で、骨盤の前面にある左右2つの恥骨とつながっています。靭帯と恥骨とのつながり方が先天的に悪い場合には、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。

また、陰茎を包み込む皮膚の内側にある浅陰茎筋膜(ダルトス筋膜、コーレス筋膜 )、深陰茎筋膜(バック筋膜)という筋膜の付着異常で先天的に進展性が悪い場合にも、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。

程度にもよりますが、基本的には埋没陰茎に包茎を伴います。仮性包茎ならば、思春期以後から包皮を押しのけて亀頭が現れるようになりますが、真性包茎を伴っていると、陰茎が年齢相応に発育せず亀頭も露出しません。

埋没陰茎に真性包茎を伴って、生殖年齢になっても埋没陰茎が自然に改善していない場合、表面に出ているいる陰茎が短いために、パートナーの女性との性行為の際に陰茎を膣(ちつ)に挿入することが困難となり、性交困難症の原因になることがあります。このことがコンプレックスとなり、心因性(機能性)勃起障害(ED )の原因となる場合もあります。

一方、後天的に発症する埋没陰茎は、肥満によって起こります。恥骨付近に皮下脂肪がたまったり、肝臓や腸管などの内臓の周囲に脂肪がたまったりした結果、陰茎が下腹部に埋もれ、表面に出ている陰茎が割合として少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。皮下脂肪が厚ければ厚いほど、つまり肥満であればあるほど陰茎が埋もれた状態になります。

肥満をベースとするので、多くは後天的に発症する埋没陰茎ですが、まれにプラダー・ウィリー症候群という先天的な肥満疾患が、埋没陰茎の原因となる場合もあります。

なお、外傷によっても埋没陰茎が生じることがあり、この場合は外傷性埋没陰茎として、別に扱われます。埋没陰茎といった場合は、一般的に非外傷性を指します。

先天的に発症する埋没陰茎の多くは、両親などが気付いて心配し、小児泌尿器科、小児外科などを受診します。後天的に発症する埋没陰茎の場合は、生殖年齢になって本人が悩み、泌尿器科、外科などを受診します。

埋没陰茎の検査と診断と治療

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による診断では、ほとんどのケースで、体形や陰茎の視診と触診、生下時からのエピソードの問診によって判断します。陰茎の根元周囲や恥骨上の皮膚を抑えて、陰茎を引き出して触診すると、年齢相応のサイズの陰茎と亀頭を触知することが可能です。

診断に際しては、矮小陰茎(ミクロペニス)との鑑別を行い、矮小陰茎の原因となる疾患である性腺(せいせん)機能低下症、類宦官(るいかんがん)症、クラインフェルター症候群などを除外します。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による治療では、基本的に形成手術は必要ないとされ、問題の多い重症例が形成手術の対象になります。

形成手術を行う場合は、陰茎の根元周囲の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法、恥骨上の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法があります。

さらに、陰茎と恥骨の結合部にある靭帯の一部を剥離(はくり)し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定す方法、浅陰茎筋膜や深陰茎筋膜を剥離、切除し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定する方法などがあります。

通常の包茎として間違えて包皮切除術を行うと、埋没陰茎自体に対する改善処置が行いにくくなってしまう場合があるので、 その鑑別は慎重に行います。

一方、肥満によって後天的に陰茎が埋もれている場合は、食生活など生活習慣を改善することによる減量が治療となります。重症例では、恥骨付近の皮下脂肪を減らす脂肪吸引なども行います。

🇪🇸慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)

精巣に付着している精巣上体に、慢性的な炎症が生じている疾患

慢性精巣上体炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、慢性的な炎症が生じている疾患。慢性副睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

慢性精巣上体炎は、急性精巣上体炎の局所症状が完全に消えないで慢性症に移る場合が多いのですが、初めから慢性あるいは潜行性に起こることもあります。また、外傷が誘因となって起こることもあります。さらに、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で炎症が長引く場合とがあります。

尿道炎や前立腺(せん)炎を起こした時に、大腸菌などの一般細菌や、クラミジア、淋菌(りんきん)などの性感染症菌が尿道や前立腺から精巣上体に逆流し、炎症を起こすのが急性精巣上体炎であり、この治療が不十分であると、細菌が精巣上体の中にこもってしまい、慢性的精巣上体炎を生じると考えられます。

結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされます。尿路性器結核の部分現象として発症するので、睾丸を除く前性器が侵されていることが多く、尿路結核を合併することがしばしばあります。20~30歳代に多い疾患です。

慢性精巣上体炎では、全身症状は乏しく、陰嚢内の違和感や不快感、鈍い痛みが長期に渡って続きます。陰嚢に触ると、精巣上体に硬いしこりを感じます。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いません。結核性の場合も、精巣上体が数珠状に硬くはれ、鈍い痛みが続きます。

慢性精巣上体炎の検査と診断と治療

激しい症状がないので放置してしまう場合もみられますすが、徐々に悪化してしまったり、他の疾患が見付かったりすることもありますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の側はまず、尿中の白血球や細菌の検査をします。しかし、慢性精巣上体炎では細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定ができないことがあります。細菌が検出されない場合は、結核性を疑って特殊な検査で尿中の結核菌の有無を調べますが、結核菌が検出されずに、手術で精巣上体を摘出した結果、結核感染が証明されることもあります。

また、慢性前立腺炎などの慢性尿路感染や、前立腺肥大症などの他の疾患を合併している場合もあるので、腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)、前立腺など他の尿路に異常がないかどうか検査します。

治療においては、抗生剤の投与では効果が得られない場合が多いため、消炎鎮痛剤などの痛みと炎症を抑える薬を長期間投与します。不快な痛みが続く場合は、精巣上体を摘出することもあります。

結核性の場合は、他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、結核菌が臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核剤を投与します。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)に、ストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。それでも改善しなければ、精巣上体だけを摘出する手術、あるいは精巣上体を含めて精管、精嚢(せいのう)、前立腺まで摘出する根治手術を行うこともあります。

後遺症として、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

🇲🇳勃起障害(ED)

精神的、ないし身体的な原因で満足な性行為が行えない状態

勃起(ぼっき)障害とは、性的な刺激を受けても、陰茎の形や大きさが不足したり、勃起を射精時まで維持できなかったりして、満足な性行為が行えない状態。勃起不全、ED(Erectile Dysfunction)、インポテンツ(性交不能症)とも呼ばれます。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。

勃起障害は心因性(機能性)の障害と、身体的(器質性)の障害に大別することができますが、大部分は前者です。

心因性(機能性)障害は、基本的には体に異常がないものの、精神的な原因で勃起の障害を来します。具体的には、不安、ストレス、心の病、性器や性行為能力への不信、家の構造上の問題などが原因となります。勃起が起こるには基本的に性的な刺激が必要で、精神的ストレスなどがある時はいくら刺激を受けても、勃起を起こす大脳中枢神経、自律神経、ホルモン系などに悪影響を及ぼし、勃起のメカニズムが正常に作用しなくなります。

身体的(器質性)障害では、糖尿病によるものが著しく増加しています。そのほか、脊髄損傷、脳障害、動脈硬化、高血圧、泌尿器疾患、内分泌機能障害、薬の副作用が、原因となっています。内分泌機能障害の一つには、男性ホルモンの低下が挙げられます。

勃起障害の検査と診断と治療

現在のところ、勃起障害には絶対的な解決策は存在しません。 状態が緊急を要したり、症状が重い場合は、医師へ相談することも選択肢の一つです。

医師による心因性(機能性)障害の場合の治療は、カウンセリング、性的教育などが主体となりますが、薬物療法を用いることもしばしばあります。

身体的(器質性)障害の場合は、陰圧式勃起補助具の使用や、陰茎プロステーシスの海綿体内埋め込み手術などがありますが、保険診療では認められていません。

勃起障害の治療薬としては、厚生労働省にも認可されているバイアグラ(クエン酸シルデナフィル)や、レビトラ(バルデナフィル)が有名です。バイアグラの作用は、勃起のメカニズムのうちでサイクリックGMPの代謝を抑制します。このことで海綿体平滑筋の弛緩(しかん)が増強されるために、勃起も増強されます。つまり、勃起の増強剤であり、決して万能の薬ではありません。

勃起に関する神経や血管の完全障害の人には、バイアグラは全く効果がありません。また、心臓病でニトログリセリンなどの血管拡張剤を使用している人では、死亡ケースも出ており使用できません。動脈硬化の強い人や高齢者などの使用にも、十分な注意が必要です。専門の医師にも相談の上、使用することが大切となります。

なお、生活習慣の改善、禁煙・禁酒の実行、性行為時のちょっとしたアイデアで、勃起障害を解決したというケースもあります。

🇨🇫非閉塞性無精子症

精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていなかったりする状態

非閉塞(へいそく)性無精子症とは、男性の精子が精巣(睾丸〔こうがん〕)から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射出精液中に精子が認められない状態。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持ち、卵子と結合して個体を生成する男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

男性の100人に1人は、射出精液中に精子が認められない無精子症といわれています。この無精子症は、非閉塞性無精子症と閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。

非閉塞性無精子症は精巣自体の造精機能に障害があるのに対して、閉塞性無精子症は男性の精巣の中で精子が作られているものの、精子が精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞している状態。精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、射出精液中に精子が認められません。

非閉塞性無精子症は、無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。閉塞性無精子症のほうは、無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。

非閉塞性無精子症の原因となる疾患は、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張した精索静脈瘤(りゅう)などです。

一方、閉塞性無精子症の原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。

非閉塞性無精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。精巣が小さく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が著しい上昇(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)、もしくは著しい低下(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示し、精路に閉塞部位が認められれば、ほぼ非閉塞性無精子症と判断できます。

また、性腺刺激ホルモンの値が正常値を示した場合でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。

さらに、精液検査の結果、射出精液中に精子が一つも存在しないという場合でも、数少ない精子が精巣内で作られていることがあり、それを調べるために精巣組織検査を行うことがあります。

泌尿器科の医師による治療では、精巣組織検査で数少ない精子が精巣内で作られていることが確認された場合に限り、顕微鏡下精巣精子採取法によって精巣の中を隅々まで観察し、精子がいる可能性の高い精細管を採取して精子を探し出し、人工授精、体外受精、顕微授精などという方法を用いて妊娠を期待します。

精子が一つでも探し出せれば、妊娠する確率はゼロではありません。精子が一つも探し出せなくても、後期精子細胞が探し出せた場合には、顕微授精という方法を用いて妊娠を期待します。

クラインフェルター症候群や脳下垂体と視床下部の障害など何らかの原因により、性腺刺激ホルモンが低下して造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

2022/08/14

🇧🇴停留精巣

男児の精巣が陰嚢内に位置せず、下降途中でとどまっている状態

停留精巣とは、男児の精巣の下降が不十分で、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置せずに、途中でとどまっている状態。停留睾丸(こうがん)とも呼ばれます。

性腺(せいせん)に相当する精巣は本来、妊娠3カ月ごろから9カ月ごろまでの胎児期に、腹腔(ふくくう)の腎臓(じんぞう)に近いところから次第に下降し、鼠径管(そけいかん)という下腹部の決まった道を通ってから陰嚢まで下降し、出生時には陰嚢内に位置するようになります。陰嚢からの牽引(けんいん)、ホルモン(内分泌)などの働きにより精巣は下降しますが、何らかの原因によって下降が途中で止まったものが停留精巣です。

片側性と両側性があり、多くは股(また)の付け根の鼠径部に精巣を触れることができます。新生児の3~4パーセント、低出生体重児では20パーセントの頻度でみられ、珍しい疾患ではありません。

生後3カ月ごろまでは精巣の自然下降が期待でき、1歳時には新生児の1パーセント程度、低出生体重児では2パーセント程度となります。1歳を過ぎると、精巣の自然下降はほとんど期待できません。

普段は陰嚢が空のようであっても、風呂に入っている時や、リラックスして座っている時などに精巣が陰嚢内に触れるような場合には、移動性精巣と呼びます。移動性精巣は緊張や刺激により位置が高くなりますが、リラックスしている状態では陰嚢内に位置します。

陰嚢の中に精巣がある場合に比べ、それ以外のところに精巣がある場合は、2〜4度高い温度環境にさらされていることになります。陰嚢内にあると33度、鼠径管内にあると35度、腹腔内にあると37度というデータもあります。高い温度環境にある停留精巣を放置しておくと、精巣は徐々に委縮してしまいます。精子を作る細胞も少しずつ機能を失い、数も減少してゆきます。この変化は高い温度環境では常に進行してゆき、成人になってからの男性不妊の原因になると考えられています。

さらに、停留精巣から悪性腫瘍(しゅよう)ができやすい、停留精巣が外傷を受けやすく、精巣捻転(ねんてん)を起こしやすいなどともいわれます。

1歳の誕生日を過ぎても精巣が陰嚢内に触れない場合には、小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診察を受けることが勧められます。また、移動性精巣と停留精巣の区別が難しいことも多いため、正しい治療方針を立ててもらいます。

停留精巣の検査と診断と治療

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診断では、陰嚢の中に精巣を触れない場合に、鼠径部にあるのかどうかをよく触診します。この触診で精巣を触知する場合には、停留精巣か移動性精巣です。

精巣を触れない時には、精巣がない疾患である無精巣症と区別する必要があるため、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡などにより、腹腔内に精巣があることを確認することがあります。同じ目的で、精巣を刺激するホルモンを注射して、男性ホルモンの分泌能力をみるホルモン検査を行う場合もあります。

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による治療では、停留精巣に対しては精巣を固定する手術を行います。手術前および手術中には、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡などにより、停留精巣の位置、大きさを確認することが重要です。

手術の時期に関しては、1歳から1歳6カ月ごろまで、遅くとも2歳までに手術をするのがよいとされています。移動性精巣であれば、治療の必要はありません。

幼児期の手術は、将来の男性不妊症の予防と、合併しやすい鼠径ヘルニア、精巣腫瘍の早期発見に役立つとされています。 ただし、手術を行っても精巣腫瘍の発生を防げるかどうかは不明です。

手術でなく男性ホルモンを使って精巣の下降を促す方法もありますが、副作用もあり日本ではあまり行われていません。

🇵🇪短小陰茎

男性の陰茎が年齢相応の平均サイズよりも小さな状態

短小陰茎とは、男性の陰茎が年齢相応の平均サイズよりも小さな状態。

医学的に疾患と認められているものではなく、個人差の範囲にすぎない状態を指している場合も多く認められます。医学的に疾患と認められている状態には、矮小(わいしょう)陰茎があります。

矮小陰茎のほうは、男性の陰茎が基準サイズよりも大幅に小さい状態にあり、生殖や性行為に支障を来す性機能疾患として認められている疾患の一つです。

陰茎の形態は正常であるものの、陰茎の大きさが平常時はもちろん、勃起(ぼっき)時でも一定の基準サイズよりも小さく、成人男性で勃起時の長さが5センチ以下のものが、矮小陰茎と定義されています。勃起時でも長さ太さともに5ミリに達せず、陰嚢(いんのう)に埋没して、外見上は生まれ付き陰茎を所有しない陰茎欠損症に見える極端な例もあります。

性腺(せいせん)からのホルモンの分泌不足によって起こる性腺機能低下症が、原因と考えられています。また、全身的な症候群の一症状として、矮小陰茎がみられることもあります。

短小陰茎のほうは、生殖や性行為に支障を来すことがなければ、特に疾患として扱う必要性はありませんが、コンプレックスなどの心理的障害のベースになる可能性もあります。短小陰茎に関連した精神的トラウマが、心因性(機能性)勃起障害(ED )の原因になることもあります。

現在、日本男性の3人から5人に1人の割合で、短小陰茎の悩みを抱えているといわれています。矮小陰茎のように極端に陰茎が小さい状態ではないため、中には、客観的には平均サイズなのに主観的に小さいと思い込み、悩んでいる人も少なくないと見なされます。

短小陰茎の明確な基準サイズというものは存在していませんが、一般的に最も多く基準サイズとして扱われるのは、日本人男性の平均サイズです。

陰茎の勃起時の長さの平均は、12センチから15センチといわれています。ただし、多少の幅があり、12センチから13センチが最も多いようで、15センチとなるとかなり大きめのサイズになると思われます。

12センチから15センチの半分の6センチから7センチ以下であれば、明らかな短小陰茎とみなしていいのかもしれません。

ちなみに、平常時の場合は、8センチ前後が平均サイズといわれています。こちらは暖かい時、寒い時で、勃起時以上にかなりの差があります。

では、日本人男性の平均サイズを下回ると、性行為に際してパートナーの女性を満足させられないのかというと、そうともいい切れません。平均サイズを下回っている場合でも、女性側の体のサイズに合ってさえいれば、性行為には問題はないことになります。

女性の膣(ちつ)の長さにも個人差がありますが、最奥部まではおよそ7センチから10センチとされています。つまり、陰茎の勃起時の長さが10センチあれば、支障はないことになります。

短小陰茎の治療

泌尿器科、形成外科、美容整形外科などの医師による治療では、陰茎のサイズを増大し、短小を改善する形成手術を行うのが一般的です。

形成手術には、長茎手術、脂肪吸引手術、亀頭増大手術、陰茎増大手術などがあります。

長茎手術では、下腹部に埋まっている陰茎の部分を引っ張り出して、陰茎と恥骨の結合部にある陰茎堤靭帯(じんたい)を補強、固定します。効果には個人差がありますが、手術後は陰茎が下腹部に埋まり込むことがなくなり、平常時で2センチから5センチくらい長くなります。場合によっては、7センチ以上長くなることもあります。勃起時では、約1センチの伸長効果が期待できます。

脂肪吸引手術では、太ももの付け根を小さく切開し、吸引管を使って恥骨周囲の皮下脂肪を吸引することで、脂肪の中に埋もれていた陰茎を長く見せます。特に余分な皮下脂肪が付いた肥満の人に、有効な方法となっています。

亀頭増大手術では、高分子ヒアルロン酸を注射で亀頭全体の皮下、あるいは亀頭の一番広がり、くびれた部分であるカリ首(亀頭冠)の皮下に注入します。短小や先細りの人に、有効な方法となっています。亀頭を大きく、硬くすることにより、亀頭に包皮がかぶりにくくなるため、軽度の包茎を治すことができることもあります。

陰茎増大手術では、高分子ヒアルロン酸やコラーゲン、自己脂肪を注射で陰茎の皮下に注入することで、陰茎を太くします。通常時、勃起時ともに、太くなります。また、注入物により陰茎が重くなりますので、寒い時や緊張した時などに陰茎が縮こまりにくくなります。注入物の層が陰茎への刺激を和らげ、早漏の予防になることもあります。

🇻🇪真性女性化乳房

男性に乳房の発育を認める疾患

真性女性化乳房とは、男性の乳房が女性のような乳房に膨らむ疾患。乳がんと間違われやすい疾患です。

本来、男性の乳房は女性の乳房のように発育しませんが、乳房に膨らみや、しこりが現れたり、自発痛や圧痛を感じることがあります。肥満により脂肪のボリュームが増えたことによる乳房の肥大は、偽性女性化乳房であり、真性女性化乳房とは区別されています。

真性女性化乳房は、両側もしくは片側の乳腺(にゅうせん)が一時的に増殖して、乳頭部や乳輪の下に腫瘍(しゅよう)のようなものが現れ、時に痛みを生じる症状をいいます。

このような男性の真性女性化乳房には、思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性のもの、肝臓の機能障害による女性ホルモン(エストロゲン)の増加によるもの、内分泌疾患によるもの、薬剤の副作用によるもの、先天性もしくは遺伝性によるものがあります。また、原因がわからないものも多くあります。

思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性の真性女性化乳房は、思春期の13~14歳、更年期から老年期の50~80歳に起こり、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れるのが原因となって、乳腺が異常に増殖して乳房が肥大します。普通は、ほうっておけば自然によくなります。

肝臓の機能障害による女性ホルモンの増加による真性女性化乳房は、重い肝臓障害や肝硬変などを患っている男性に起こることがあります。男性ホルモンは精巣で作られ、血液中に入って全身に運ばれ、筋肉、骨、脂肪、皮膚などにたどり着き、その後一部は女性ホルモンに変わります。この女性ホルモンが骨を強くしたり、抜け毛を防いだりする役割をしています。

役割を終えた女性ホルモンは、その後肝臓に向かい、最終的には肝臓で分解されます。そのため、肝臓の機能に障害があると、女性ホルモンがうまく分解できなくなる結果、男性の乳房に女性ホルモンがたまって乳房が膨らむことがあります。

内分泌疾患による真性女性化乳房は、睾丸(こうがん)、下垂体、副腎(ふくじん)、甲状腺などの疾患に伴って起こることがあります。

薬剤の副作用による真性女性化乳房は、女性ホルモンに似た働きをする薬剤などを摂取したことによる副作用として起こりますが、理由ははっきりわかっていません。薬剤としては、女性ホルモン剤、前立腺(ぜんりつせん)疾患治療剤、男性型脱毛症治療剤、利尿剤、降圧利尿剤、血管拡張剤、降圧剤、強心剤、抗結核剤、抗潰瘍(かいよう)剤、抗アレルギー剤、抗けいれん剤、胃腸運動賦活剤、抗真菌剤、向精神剤などで起こっています。

先天性もしくは遺伝性による真性女性化乳房には、小児期より発症する遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)というものがあります。女性ホルモンの過剰分泌により、思春期より前ごろから症状が現れ始め、父親または兄弟に同様の症状がある場合には、この遺伝性女性化乳房症が疑われます。大きな症状としては、乳房の肥大を繰り返したり、低身長、性欲の減退などがあります。この疾患は、女性にも発症することがあり、症状は巨大乳房症や不正出血になったりします。

男性の真性女性化乳房の多くは問題のないものですが、原因がはっきりしないものもあり、乳がんなどのほかの疾患と区別するためには、外科、乳腺外科を受診することが勧められます。また、女性のように乳房が大きくなることで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

真性女性化乳房の検査と診断と治療

外科、乳腺外科の医師による診断では、原因がわからないものも多いため、問診を行って、合併症の有無や服薬の有無とその種類について聞きます。

続いて、触診と、乳がんと鑑別するための超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線検査)を行います。

触診した時の多くは、乳頭部や乳輪を中心とした境目の不明瞭な堅い塊として触れます。片側の乳房だけにしか認められない場合や、比較的境目が明瞭で弾力があって、硬く平らなしこりとして触れる場合もあります。

超音波(エコー)検査では、境界が不明瞭な低エコー像として見られることが多く、マンモグラフィー(乳房X線検査)では、乳頭部の下に広がる乳腺の肥大が腫瘍様の濃厚陰影として見られます。

確定診断のためには、穿刺(せんし)吸引細胞診、あるいは、針生検(せいけん)を可能な限り行います。

穿刺吸引細胞診は、専用の針をしこりに刺して一部の細胞を吸引して取り、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、しこりとして触れないような小さながんなどは、診断できないことも少なくありません。

針生検は、少し太めのコア針で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は何度も刺す必要があったり、診断が付かないこともあります。

この際、初回の細胞診、組織診で悪性像がない場合でも、中~高年齢者では、一定期間は外来で経過観察を続けます。

外科、乳腺外科の医師による治療では、ホルモン異常などの疾患による真性女性化乳房の場合でも、原則的には経過観察のみで薬物療法などの治療は必要ありません。薬剤の副作用として現れている真性女性化乳房の場合、服用を一度中止したりして原因を調べ、さらには肝硬変などの重篤な肝機能障害などほかの疾患がないか精査します。

痛みがひどい時は、状況によって非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使い、痛みを和らげます。遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)の場合、脂肪組織で女性ホルモン(エストロゲン)を作っている酵素であるアロマターゼの働きを妨げるアロマターゼ阻害剤が有効とされています。

副作用の原因になる薬剤を軽減しても症状が改善されない場合や、女性のように乳房が大きくなることで悩んでいる場合は、外科的手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部切除します。

手術後、乳腺を切除した部分に空洞ができるため、血液がたまって血腫ができた場合は、ドレーンチューブを留置します。細菌が感染した場合は、抗生物質を投与したり、乳腺を切除した部分を洗浄したりしながら経過をみていきます。乳頭部や乳輪の血流障害や皮膚の壊死が起こった場合は、皮膚がゆっくり覆うのを待つ必要があります。

🇵🇦真性半陰陽

男性の精巣と女性の卵巣の両方を有する先天異常

真性半陰陽(はんいんよう)とは、男性の性腺(せいせん)である精巣(睾丸〔こうがん〕)と女性の性腺である卵巣の両方を有する先天異常。半陰陽の一種に相当します。

その半陰陽は、外性器の形態からでは男性か女性かが判断できない状態、あるいは外性器の形態と染色体によって決められる性とが異なっている状態。半陰半陽、インターセックス、両性具有などとも呼ばれます。また、この状態を有する人を半陰陽者、インターセクシュアル、両性具有者、あるいは、ふたなりと呼ぶこともあります。

胎児期の性の分化発達の過程で生じた単体奇形の一種で、その過程で細胞分裂がうまくいかなかったり、性を決定する遺伝子に異常が起こったりすると半陰陽が起こると考えられています。

半陰陽には、真性半陰陽のほか、仮性半陰陽などがあります。仮性半陰陽は、性腺は男女いずれか一方のみしかないものの、外性器の形が染色体による性別と逆になっている状態。染色体による性は男性なのに女性のような外性器を有する男性仮性半陰陽と、逆に染色体による性は女性なのに男性のような外性器を有する女性仮性半陰陽とがあります。

真性半陰陽は、半陰陽のうちでは最も高度な先天性の形態異常で、まれな疾患です。精巣と卵巣が別々に存在するものと、一つの性腺内に精巣と卵巣の両方の組織が共存するもの(卵精巣)とがあります。外性器は女性的なことも、男性的なこともあり、そのいずれとも決定しにくいこともあります。真性半陰陽の染色体は、46XXの女性型が約60パーセントを占めます。

思春期になると、精巣と卵巣からホルモンが分泌されるため、二次性徴の異常が現れてきます。男児として育てられてきた人では、女性ホルモンが卵巣から分泌されるために、生理が始まったり、乳房が大きくなったりします。女児として育てられてきた人では、精巣から分泌される男性ホルモンの作用で、ひげが生えたり、声変わりしたりします。

真性半陰陽の多くは、出生直後に医師や看護師によって発見されます。すでに外性器の形態を見ても男女の判別ができない場合には、性別の決定に染色体や性染色体の検査が必要となることがあります。

新生児では、染色体上の性と社会生活上の性とを一致させないほうがよい場合、つまり染色体は男性型であっても女性としたほうが自然な社会生活を送れるであろうと考えられる場合もあるので、子供の性の決定に関しては、外性器や内性器の有無を参考に医師と両親がよく話し合って行います。

出生時に発見することが望ましいのですが、思春期や成人後に真性半陰陽が発見されることもあります。幼児期から早くも第二次性徴が起こった早発思春期の場合、あるいは思春期になって女児のはずなのに初経(初潮)がなかったり、陰核の肥大や多毛などの男性化が起こってくる場合、反対に男児のはずなのに乳房の肥大が認められるなどの場合には、できるだけ早く小児科、あるいは内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

真性半陰陽の検査と診断と治療

小児科、内科、内分泌代謝内科の医師による真性半陰陽の診断では、染色体検査や、ホルモン測定などの検査を行います。最終的には、試験開腹をし、性腺の生検をして精巣、卵巣の両方があることを確認します。

この真性半陰陽の治療で最も大事なことは、育てていく性を決めることです。一般的には、染色体や精巣、卵巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、本人の希望や心理状態をも考慮して、男性か女性かを決めます。性腺は、選択した性に従って男性は精巣を、女性は卵巣を残します。精巣と卵巣が共存する卵精巣は、性のいかんによらず切除します。

真性半陰陽の子供は陰茎も腟(ちつ)も未熟なことが多いので、男性として生きていく決定をした場合には陰茎形成術を、女性として生きていく決定をした場合には腟形成術を行います。また、選択した性に応じた性ホルモンの補充療法も必要に応じて行います。

2022/08/13

🇷🇴形成性陰茎硬化症

陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患

形成性陰茎硬化症とは、男性の陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患。陰茎形成性硬結症、陰茎硬化症、線維性海綿体炎、ペロニー病、パイロニー病、ペイロニー病、ヴァン・ビューレン病などとも呼ばれます。

30~70歳代の男性にみられ、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができます。白膜は伸び縮みする弾性線維と硬い膠原(こうげん)線維の組み合せでできていて、ある程度伸びると止まる構造になっていますが、膠原線維が増えてしこりになります。しこりは陰茎の陰嚢(いんのう)と反対側の面にできることが多く、すじ状のものから板状で骨のようなものまで、さまざまな形があります。

勃起(ぼっき)すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、性交に支障を来すこともあります。

平常時は痛くもかゆくもなく、しこりそのものは無害と考えられ、自然によくなることもあります。逆に、徐々に進行することもあります。

詳細な原因は、まだよくわかっていません。慢性陰茎海綿体炎、糖尿病、痛風、外傷などとの関連が疑われています。手の小指や薬指の内側の腱(けん)が引きつって内側に曲がったり、手のひらや足の裏が短縮したりするデュプイトラン拘縮という疾患と一緒に現れることもあります。デュプイトラン拘縮は中年以降の男性に多くみられ、長期に渡るアルコール摂取が危険因子の一つと見なされ、糖尿病に合併することもあります。

形成性陰茎硬化症らしいと思い当たり、性生活に支障を来すようであったり、ほかの疾患、例えば陰茎がんなどとの見極めが困難な場合は、泌尿器科などの医師に相談することが勧められます。

形成性陰茎硬化症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、特徴的なしこり(硬結)の症状の視診、触診で確定できます。以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。超音波検査やMRI検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察でき、しばしば石灰化が確認できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。

この形成性陰茎硬化症ががんになることはありませんが、しこりや痛みが同じように現れる陰茎がんとの見極めは難しく、正確に診断するためにしこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります。

形成性陰茎硬化症に特に有効な根本的な治療法は、現在のところありません。勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療(体外衝撃波治療)、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。

性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。手術には、しこりがある反対側の白膜を切り詰めて湾曲を矯正する縫縮法(プリケーション法)と、白膜のしこり自体を切除し、欠損部に皮膚や静脈を移植する移植法の2つがあります。

通常、軽い場合は縫縮法、症状が進んでいれば移植法が行われます。縫縮法は湾曲の改善のみを目的とした方法で、移植法に比べて簡単ですが、しこりや痛みの改善はできないことと陰茎の短縮が問題となります。移植法も、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して手術前より悪化したり、切除しても再発することがあるのが問題となります。

いずれも2時間ぐらいの手術で、3日間程度のの入院が必要です。糖尿病のある人の場合は、血糖コントロールが必要のため入院期間が少し長くなります。縫縮法を局所麻酔で行う場合は、日帰り手術も可能です。

症状が進んで陰茎海綿体にまで影響するなど重い勃起障害がある場合は、陰茎の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。デュプイトラン拘縮が一緒に現れている場合は、 基本的に薬物療法や注射は治療効果がなく、手術による治療になります。

🇱🇮血精液症

男性の精液の中に、血液が混じる疾患の総称

血精液(けつせいえき)症とは、男性の精液の中に血液が混じる疾患の総称。

精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢(せいのう)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。精液が射精によって尿道から出てくる場合には、最初は主に前立腺からの成分で、それから精嚢の成分が出てきます。

血精液症の大多数は、原因がはっきりしません。前立腺肥大症の初期や、後部尿道炎、前立腺炎など付近の炎症や充血によることもあり、精嚢から出血することもあります。前立腺や精嚢腺の奇形、血管の異常によることもあります。 他の原因としては、外傷、結核を含めた感染症、クラミジアや淋病(りんびょう)などの性感染症、血液疾患、寄生虫、40歳以上では前立腺がん、血液凝固を抑える薬の服用などが考えられます。

ほとんどは射精痛などの自覚症状はなく、出てきた精液の中に血液が混じっていることで、偶然に気付くことがよくあります。 新鮮な血液が混じる場合はピンク色や真っ赤になり、古い血液が混じる場合は茶褐色になります。赤黒い小さな点々が混じることもあります。

出血量は微量なので、精液内に炎症を示す細胞がない限り精子に悪影響はなく、妊娠がしにくくなったり、母胎内での胎児の発育に対する影響はありません。

後部尿道炎、前立腺炎が原因の場合には、 排尿時の痛み、射精時の痛み、 頻尿、尿道の不快感、発熱などの自覚症状が出ます。

血精液症の検査と診断と治療

様子をみて、精液の中に血液が混入する状態が続くようならば、泌尿器科を受診します。

医師による診断では、直腸診、精管や精巣上体の触診、尿や精液を採取しての細菌や結核菌の顕微鏡観察、血液検査で原因を探ります。超音波やCT、MRI検査などで前立腺、精嚢腺の形態も検査します。不妊症になっている場合は、造影検査をすることもあります。

結核は前立腺などにできると、こぶのようになるので、直腸診などによって発見できます。精液のどの部分に血液が混入しているかが確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。前立腺や精嚢、尿道の腫瘍(しゅよう)も調べ、高齢者では前立腺がんなどの悪性腫瘍との関連も調べます。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれなものの、可能性はあります。

一連の検査で尿や精液に異常のないことが確認できれば、特に治療する必要もありません。大部分は2、3週間で自然治癒します。

炎症が確認された場合には、止血剤の投与、抗菌剤の投与などが行われます。短期間の抗菌剤の投与は、精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。前立腺炎の治療には、主に原因の菌に対する抗生剤が使用され、治療期間は約4~12週間となります。治療期間が半年や1年と長くかかることもあります。

血精液症は一度治っても、また再発することがあります。長く続く場合には、精液内にみられる細菌を再確認する必要があります。

軽症の場合は、日常の生活で特に気を付けることはありません。2週間くらい射精を控えてみてもいいですが、それほどこだわる必要はありません。

🇮🇹奇形精子症

精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態

奇形精子症とは、射精された精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。精子奇形症とも呼ばれます。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体(副睾丸)において成熟し、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、奇形精子症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

奇形精子症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛(べんもう)を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

奇形精子症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤(りゅう)、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

奇形精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である奇形精子症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射精された精液中に奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

🟧アメリカの病院でブタ腎臓移植の男性死亡 手術から2カ月、退院して療養中 

 アメリカで、脳死状態の患者以外では世界で初めて、遺伝子操作を行ったブタの腎臓の移植を受けた60歳代の患者が死亡しました。移植を行った病院は、患者の死亡について移植が原因ではないとみています。  これはアメリカ・ボストンにあるマサチューセッツ総合病院が11日、発表しました。  ...