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2022/08/13

🇸🇰血管拡張性環状紫斑

下肢に環状の紫斑ができ、慢性化して褐色調の色素沈着をみる皮膚疾患

血管拡張性環状紫斑(しはん)とは、主に下肢の両側に紫色の点状斑が多発して環状に配列し、慢性化するうち、次第に褐色調の色素沈着をみるようになる皮膚疾患。マヨッキー紫斑、マヨッキー血管拡張性環状紫斑とも呼ばれます。

この血管拡張性環状紫斑は、慢性(特発性)色素性紫斑という疾患群の一つに分類されています。その慢性色素性紫斑には、血管拡張性環状紫斑のほかに、不規則な斑(まだら)ができるシャンバーグ病、丘疹(きゅうしん)状の皮疹をみる色素性紫斑性苔癬(たいせん)様皮膚炎(グージュロー・ブルム病)、かゆみの強い瘙痒(そうよう)性紫斑など、いくつかの型があります。

血管拡張性環状紫斑は比較的まれな皮膚疾患ですが、中年以降の人に好発し、やや女性に多くみられます。時に小児、若年者にもみられます。

真の原因は不明ながら、静脈性の微小循環障害と毛細血管壁の弱さが関係するものと考えられています。また、何らかの遅延型過敏反応であるという説もあり、衣類の接触、扁桃(へんとう)炎などからの病巣感染、ある種の薬剤の関与などを指摘する報告などがあります。

紫色の点状斑の多発で始まり、毛細血管が拡張し、次第に進行して環状に配列する紫斑となります。この環状の紫斑が主体で、通常、かゆみなどの自覚症状はありません。紫斑は赤血球を主とする血液が皮膚の表面近くの微小な毛細血管壁から漏れた状態で、皮膚に出血がみられますが、血液学的に異常はなく、内臓などの全身臓器からの出血はありません。内臓疾患、他の全身症状を伴うことはなく、予後も心配ありません。

基本的に下肢、特に下腿(かたい)の裏側が好発部位で、おおかたは両脚に発症します。紫色の環状斑が大腿、腰臀(ようでん)部へと拡大することもあり、ひどいと手や上半身にも出ることもあります。色はやがて薄れてゆきますが、しばしば新生を繰り返して慢性化し、数年に渡ることもあります。

慢性化すると、褐色調の色素沈着を来します。沈着する色素は、メラニンだけでなく主にヘモジデリン。ヘモジデリンは、赤血球の中にあるヘモグロビンに由来する褐色調の顆粒状あるいは結晶様の色素であり、鉄を含んでいます。

血液の疾患や血管の疾患で、血管拡張性環状紫斑と似たような症状が出ることもあります。血管拡張性環状紫斑に気付いたら、疾患を正しく把握するためにも、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師に相談してみることが勧められます。

血管拡張性環状紫斑の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、出血傾向の一般検査を行い、血液学的に異常をみないことを確認します。組織を病理検査すると、慢性的な出血性の炎症がみられ、真皮上層の血管周囲にリンパ球浸潤、血管拡張および出血を認めます。病変部は明らかな色素の沈着を残すので、診断は比較的容易です。うっ滞性紫斑との鑑別が必要です。

積極的な治療の必要はありません。症状の程度によって、ビタミンCなどの血管強化剤、止血剤、抗プラスミン剤、抗炎症剤などが使用されます。病因を絶つ根本治療ではなく、対症的治療にとどまります。

適当な強さの副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の外用が有効なことがあります。慢性かつ進行性で一進一退を繰り返し難治性ですが、自然軽快もあり得ます。

対症的治療にとどまるため、症状が悪化しないように下肢の安静や、足先を少し高くして休むようにする挙上を心掛けることが重要です。弾性ストッキングの着用が有効な場合もあります。

衣類の接触とともに、使用中の薬剤などが疾患を悪化させているかどうかを観察し、日常生活の中で関係していると思われるものがあれば、それを避けるようにします。下肢の血液の循環に負担をかけないように心掛けることが大切で、長時間の歩行、立ち仕事などは避けるようにします。

🇸🇰血管脂肪腫

脂肪腫の特殊なタイプで、血管成分が多く、四肢や体幹の皮下組織に多発する腫瘍

血管脂肪腫(しゅ)とは、四肢や体幹などの皮下組織に多発し、脂肪組織と血管組織からなる良性の腫瘍(しゅよう)。多発性血管脂肪腫とも呼ばれます。

皮膚のすぐ下に脂肪組織が蓄積して発生する良性腫瘍である脂肪腫の特殊なタイプで、脂肪腫の約10パーセントを血管脂肪腫が占めると見なされます。

通常の脂肪腫は痛みやかゆみなどの自覚症状がなく、ゆっくり増大する軟らかな腫瘍であるのに対して、血管脂肪腫では軽い自発痛や圧痛が認められることが多いのが特徴の一つで、脂肪腫より境界がはっきりとし、やや硬い感じがします。

血管脂肪腫の大きさは直径1〜2センチ程度までのものが多く、小さめです。しかし、腫瘍が発生してから大きくなるまでの期間が短く、まれに鶏卵並みの大きさになることもあります。

中高年の男性に好発し、上肢、下肢、腰腹部にしばしば多発しますが、頭部、顔面、手のひら、足底に発生することはまれです。

血管脂肪腫は繊維質の薄い膜に包まれてできていることが一般的で、赤色が混じった白色をしています。顕微鏡で組織を検査した場合、さまざまな割合で脂肪組織と毛細血管組織から構成されています。

血管脂肪腫が発生する詳しい原因は、不明です。元々ある血管腫が脂肪組織内に侵入して血管脂肪腫になるという説や、脂肪腫として発生した組織の辺縁にある血管が外的刺激で血栓を生じ、内皮細胞が増殖して血管脂肪腫になるという説などがあります。

残念ながら、一度発生すると自然に消えることはまずありません。血管脂肪腫の受診科は、皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科です。

血管脂肪腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による診断では、ほとんどの場合は皮膚症状だけで判断できます。触診で疑問があったり、変わった部位に発生している場合は、そのほかの種類の腫瘍である疑いも出てきますので、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。

それでもはっきりしない場合は、確定診断のために、局所麻酔をしてから腫瘍の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。画像検査では、悪性腫瘍に分類される脂肪肉腫と区別が困難なこともあり、生検を行ったほうがよいこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による治療では、部位的に接触することが多くて痛みを感じる場合、化膿(かのう)した場合、関節の部位に発生して普通の動きを妨げる場合、大きくなってきた場合、体の比較的目立つ部位に発生し見掛けが気になる場合は、手術によって血管脂肪腫を摘出します。

手術では局所麻酔をした上、腫瘍の直上をほぼ腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲組織からはがして、赤色が混じった白い脂肪の塊を摘出します。摘出後は、血がたまる血腫を予防するため十分に止血し、縫合処置を施します。

必要に応じて、ドレーン(誘導管)という合成樹脂性のゴムを挿入し、貯留する血液や浸出液を体外へ排出する処置を施し、切開部を圧迫、固定する縫合処置を施すこともあります。ドレーンは2日後に取り除き、1週間後に抜糸します。

このようにして摘出した血管脂肪腫の再発は、まれです。

🇨🇿血管腫(赤あざ)

皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤あざ

血管腫(しゅ)とは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見えるので、赤あざとも呼ばれます。

異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。

また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。このあざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

血管腫の検査と診断と治療

血管腫を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。

🇨🇿血管性紫斑病

手や足のいわゆる四肢末梢に紫斑ができる疾患で、4~7歳の小児に好発

血管性紫斑(しはん)病とは、手や足のいわゆる四肢末梢(まっしょう)に、軽く盛り上がった紫斑ができる疾患。アレルギー性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病とも呼ばれます。

この血管性紫斑病は上気道感染後に発症することが多く、ウイルスや細菌に対するアレルギーが原因だといわれていますが、はっきりしたことはまだ解明されていません。血管性紫斑病の障害部位にIgAなどの特異的な免疫物質が沈着しているのが特徴であり、それが皮膚のほか、腸管、関節、腎臓(じんぞう)、時に精巣や脳などに障害を起こします。また、服用中の薬や食べ物との関連性も研究されています。

それほど多くみられる疾患ではなく、発症者は年間10万人当たり10~20人といわれているものの、4~7歳の小児に好発し、女児より男児の発症が若干多い傾向にあります。多くは冬に発症し、人から人への感染はありません。今の段階では予防策がないというのが現状です。

皮膚の紫斑は手足の左右両側対称に、とりわけ関節付近に出現します。体や顔に出る場合もあります。初めはかゆみを伴ったじんましんのような発疹(はっしん)で始まり、次第に紫色に変色していきます。じんましんなどの紅斑は上から押すと赤みが消えるのに対して、紫斑は色が消えません。

紫斑ができるのは、血管が炎症を起こしているからです。紫斑は血管から出てしまった血液が皮膚の奥で滞留した状態なので、上から押しても色が消えることはありません。血小板減少性紫斑病とは異なり、わずかに隆起しているのも特徴で、「触れることができる紫斑」と呼ばれています。紫斑の形は点状のものから不整形のものなどさまざまで、新しいものと古いものが混在します。

通常、毛細血管になる前に存在する細静脈を中心に血管が炎症を起こしますが、放置したままにしておくと、大動脈の血管壁が薄くなり、そこから大量に血液成分が漏れ、強いむくみが出現することもあります。

腹痛も半数ほどの発症者に認められます。腸管内の血管透過性の高進によるむくみや、腸管内の血管の炎症が原因で、しばしば血便や便潜血も認められます。

腹痛は嘔吐(おうと)を伴う激しいものであることも少なくなく、紫斑が起こる前に腹痛が起きたケースなどでは、虫垂炎や腸重積、腸閉塞(へいそく)などの内臓疾患が疑われることもあります。腹痛がひどく、日常生活を行えないレベルのものであれば、入院して治療を受けることが必要になります。

関節炎、関節痛もおよそ3分の2の発症者にみられます。足の関節、手の関節に起こることが多く、股(また)や肩の関節には普通起こりません。関節炎を起こすと、その部分ははれ、痛みのため動かすのも苦痛になります。痛みで歩くことができなくなることもしばしば起こり、日常生活が困難になった場合にも、入院して治療を受けることが必要になります。

局所的な大きなむくみも、顔、体、手足、陰嚢(いんのう)などに痛みを伴って現れますが、発赤はみられません。

さらに、尿の異常が半数の発症者に認められ、血尿、蛋白(たんぱく)尿が現れます。紫斑病性腎炎を合併する率が高いため、定期的に尿検査をする必要が生じます。腎炎の多くは軽症ですが、中には急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしたり、慢性の腎不全に陥るケースもあります。

血管性紫斑病の検査と診断と治療

血管性紫斑病を発症した時に受診する診療科としては、小児の場合はやはり小児科が適しています。小児科医にとって、この疾患はポピュラーなものであり、症状を見れば容易に判断が付きます。

紫斑病性腎炎が出現し、蛋白尿が悪化した場合には、小児腎臓医に相談するのがよいでしょう。専門の機器、専門の治療方法を有した病院の専門の医師に診てもらうことは、小児が成人した後の将来を見据えた治療につながります。

成人が行く診療科としては、皮膚科、内科のほか、皮膚泌尿器科も適しています。皮膚泌尿器科とは、本来別々であった皮膚科と泌尿器科が一緒になったもので、性感染症などが両科にまたがることから標榜されるようになったようです。血管性紫斑病は皮膚症状のほかに、泌尿器科の分野である腎炎の症状もしばしば伴うので、長期に渡って経過を観察しなければならないことも考慮して、皮膚泌尿器科で診てもらうのもよいかもしれません。

血管性紫斑病を根本的に治療する薬剤や方法は、現状ではありません。急性期は安静を保つことが大切で、症状に見合った対症療法が中心となります。

紫斑は動きの激しい部分にできやすいので、軽い運動制限をすることもあります。腹痛が強い場合は、入院治療をすることが多くなります。腹痛の急性期には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤が有効で、消化管からの吸収は期待できないため、静脈内に投与し、症状の改善を図ります。

また、関節炎、関節痛で歩行困難を来した場合も、入院治療が必要となります。関節の炎症や痛みには、経皮鎮痛消炎剤や、作用の穏やかな解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを投与し、症状の改善を図ります。

合併した紫斑病性腎炎で血尿が出たり、蛋白尿が出たりということは珍しくなく、多くは治療しなくても、徐々にその症状も消失していきます。ただ、急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしている重症の場合は、ステロイドパルス治療などを行います。また、急激に症状が悪化しなくても、数カ月~数年経ってから慢性の腎不全を起こすこともあるので、定期的な検査が必要となってきます。血管性紫斑病は腎臓の機能の経過を見るという点でも、完治までに時間のかかる疾患だといえます。

血管性紫斑病の薬物治療を長期に渡って行うことになった場合、小児慢性特定疾患という医療費の補助を受けることもできます。補助を受けられる診断基準などを地域の保健所に問い合わせてみるとよいでしょう。

🇨🇿月経痛

●女性の誰にでもある月経痛

 「月経痛」は、程度の差こそあっても、ほとんどの女性が悩まされるものです。月経が始まる2〜4日前から月経中にかけて起こる下腹痛、腰痛、頭痛、下痢などの症状を総じて、月経痛と呼びます。多くの人の場合、月経が始まった1〜2日目が痛みのピーク。

 月経とは、卵巣から出るホルモンの働きにより、子宮の内側にある子宮内膜がはがれ落ちて起こる出血のこと。毎月、一定の周期で行われ、卵子が受精しなかったために、不要になった子宮内膜がはがれ、子宮口から血液とともに排出されます。

 この月経時には、プロスタグランディンというホルモンが子宮内膜で作り出され、子宮の筋肉を収縮させて、子宮内にたまった月経血の排出を促す働きをします。本来、プロスタグランディンとは、出産に際して大量に分泌されて陣痛を起こすものであり、子宮はたとえ妊娠していなくても、出産用のホルモンの分泌により、毎回、陣痛のような収縮を行っているのです。

 月経に際して、このプロスタグランディンの分泌量が多いと、子宮の収縮が強くなり、月経痛がひどくなります。不規則な生活やストレスによって、ホルモンのバランスが乱れたり、骨盤内の血液循環が悪くなると、症状が重くなるケースもあります。

 また、夏より冬のほうが、月経痛が激しくなります。月経痛は子宮の収縮によって起こるもので、子宮は筋肉でできています。寒い冬は筋肉が縮こまり、体がスムーズに動くのに時間がかかるのと同じような原理で、子宮の動きも収縮がスムーズにゆかず、痛みを強く感じるのです。加えて、冬は毛細血管まで血液が届くのが遅くなり、体が冷えると痛みが起こりやすくなります。

 女性が一度出産すると、子宮の入り口が広がって、月経血がスムーズに出やすくなるため、月経痛が軽くなる人がほとんどです。妊娠、出産経験のない若い女性は子宮口が狭く、血液がスムーズに流れないと下腹痛、腰痛などの月経痛が生じます。20代後半からの痛みは、子宮内膜から出るプロスタグランディンが体質的に多いことが挙げられます。

●月経痛から考えられる病気

 月経が始まると、下腹痛や腰痛を伴う人は多いもので、中には、頭痛や吐き気を伴う人もいます。これらの症状が寝込むほどに重く、家事や仕事ができなくなるなど、日常生活に支障がある場合を、「月経困難症」といいます。

 月経困難症には、特に原因となる病気がない「機能性の月経痛」のケースと、骨盤腔内に隠れている病気が原因となる「器質性の月経痛」のケースとがあります。同じ月経困難症でも、器質性の月経痛には注意が必要です。引き起こす病気としては、子宮筋腫(きんしゅ)、骨盤内の炎症、子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)などが考えられます。

現在、毎月、耐えられないほどの月経痛に悩んでいる人は、子宮の収縮からくる機能性の月経痛なのか、器質性の月経痛なのか、婦人科医に相談してください。以前の月経時と比較して、痛みが強くなったり、出産後に症状が重くなったという人も、婦人科を受診して、検査を受けましょう。

 医師の側では、原因となる病気が見付かれば、その治療を行います。特に原因となる病気がなければ、鎮痛剤、漢方薬、ピルなど、体質や副作用を考慮した上で、受診者に適した内服薬を処方します。

 「毎回の月経痛はつらいけど、薬を飲むと体によくないのでは?」などと、薬を飲むことに抵抗があり、ためらってしまう人も、少なくないようです。しかし、用法と用量を守って正しく飲めば、心配ありません。

 むしろ「また、あのつらい症状に悩まされる」という恐怖心や、ストレスで痛みが増すこともありますから、あまり我慢しないほうがいいでしょう。症状を和らげるための鎮痛剤や漢方の服用で、痛みを緩和するのは、問題ありません。ピルなどで排卵を抑えることにより、痛みがとれる場合もあります。

 薬を服用する際は、痛みが軽いうちに飲むのがコツです。自分の月経痛が起こるパターンがわかっている人なら、痛みが出る前に飲んでもいいでしょう。

 市販の薬が効かない時や、薬を飲む量が次第に増している時は、婦人科を受診したほうがよいでしょう。

●月経痛を乗り切る方法と予防法

 月経痛とは、女性としての機能がちゃんと働いている証として、上手に付き合いたいものです。

 月経中は心も体もブルー。ふだんより、睡眠をたっぷりとりましょう。月経痛が激しい時には、楽な姿勢で睡眠をとるのが一番です。横向きに寝て、お腹にクッションを抱えるようにすると楽になる、という人が多いようです。  

 とにかく、月経中は無理をせずに、リラックス。血行を妨げるようなキツイ服装はやめましょう。薄着や冷たいものの取りすぎも、禁物です。月経時の基礎体温は低温期で、体が冷えて血行が悪くなっているところに、さらに体を冷やせば、痛みを強く感じやすくなるからです。

 温かい下着を身に着けたり、冬なら使い捨てカイロなどで、おなかや腰を温めると、楽になります。足浴で下半身を温めるのも、痛みを和らげる良案です。

 残念ながら、月経痛を軽くする食品はありません。ふだんから、バランスのよい食事を取るように心掛け、血液となる食べ物を意識して取るのもよいでしょう

 血行をよくするビタミンE、月経血を抑える働きをするマンガン、貧血に効く鉄分にビタミンCをプラスして、鉄分の吸収率を高めましょう。

ビタミンEを多く含む食品

アーモンド、ごま、かぼちゃ、サフランなど

マンガンを多く含む食品

アーモンド、ほうれん草、アサリなど

鉄分を多く含む食品

干しえび、海苔、昆布、ひじき、レバー、卵黄、にんにく、ごまなど

ビタミンCを多く含む食品

緑黄色野菜、果物、緑茶など

 また、便秘や排便痛といった症状がある人は、食物繊維を取りましょう。辛いものやアルコールは、痛みが強くなることもあるので、控えめに。

 ストレスをためないことも大切。入浴、アロマ、好きな音楽を聴くなど、自分に適したリラックス方法を見付けましょう。適度な運動やストレッチを行って、気分転換をはかるのもよいでしょう。骨盤の血液の流れをよくするので、痛みも和らぎます。

🇱🇮月状骨軟化症

手首を構成する骨の一つである月状骨が壊死する疾患

月状(げつじょう)骨軟化症とは、手首を構成する8個の骨の一つである骨に、血流障害による壊死が起こる疾患。キーンベック病とも呼ばれます。

1910年、キーンベックによって初めて報告されました。月状骨は、手首(手関節)を構成する8個の小石のような骨(手根骨)のほぼ中央に位置します。つまり、周囲がほぼ軟骨に囲まれていて血行が乏しいために、血流障害に陥って壊死を起こしやすく、つぶれて偏平化します。体の中で、このような血流障害による壊死を起こしやすい部位は、ほかに大腿(だいたい)骨頭が挙げられます。

月状骨軟化症はバドミントン、テニスなどの手首をよく使うスポーツで発症することが多く、捻挫(ねんざ)や打撲などの軽微な外傷を切っ掛けに発症することもあります。職業的には工員、大工、農漁業など手をよく使う20、30歳代の男性に多く発症します。明らかな外傷や職歴のない女性、高齢者に発症することもあります。

何らかの原因で月状骨への血行が絶たれて発症すると考えられていますが、根本的な原因は不明です。

一説には、手首の使いすぎ、軽微な外傷の繰り返しなどが月状骨に損傷を起こし、血行障害に陥った骨では修復能力が乏しいため、次第に偏平化を引き起こすと考えられています。また、肘(ひじ)と手の間に位置する前腕に2本ある骨、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の長さのバランスの違いにより、手関節内の月状骨にかかる圧力が強くなる場合に、発症しやすいと考えられています。

主な症状は、手首を動かしたり力を入れた時の痛みや、はれ、握力の低下、手首の動きの制限。壊死が進行すると、痛みのために手関節の変形性関節症の状態になり、日常生活で多大な不自由を生じるようになります。

10歳代前半で発症した場合などは自然治癒も期待できますが、成人では完全な治癒は期待しにくく、壊死が進みます。しかし、手首の使いすぎを抑えるとともに、痛みが落ち着いてくることもあります。

整形外科の医師による診断では、X線検査で月状骨に輝度変化が生じていたり、硬化像、偏平化が認められれば確定できます。MRI検査をすれば、より詳しい状況がわかります。

治療法は、症状、年齢などによって変わります。初期や痛みが強い時には、ギプス、装具などで固定を行い、しばらく安静にします。治らない時には、進行度などに応じていろいろな手術が行われます。月状骨にかかる力を減らして痛みを緩和するために橈骨短縮骨切り術や、部分手関節固定術が行われたり、手首のそばから血管や、血管をつけた骨を月状骨内に移植する方法なども行われます。

末期では、壊死した月状骨を隣の舟状骨、三角骨とともに切除する近位手根列切除術などが行われます。変形性関節症が生じた場合は、手首が動かないように固める全手関節固定術などが行われます。

🇱🇮血精液症

男性の精液の中に、血液が混じる疾患の総称

血精液(けつせいえき)症とは、男性の精液の中に血液が混じる疾患の総称。

精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢(せいのう)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。精液が射精によって尿道から出てくる場合には、最初は主に前立腺からの成分で、それから精嚢の成分が出てきます。

血精液症の大多数は、原因がはっきりしません。前立腺肥大症の初期や、後部尿道炎、前立腺炎など付近の炎症や充血によることもあり、精嚢から出血することもあります。前立腺や精嚢腺の奇形、血管の異常によることもあります。 他の原因としては、外傷、結核を含めた感染症、クラミジアや淋病(りんびょう)などの性感染症、血液疾患、寄生虫、40歳以上では前立腺がん、血液凝固を抑える薬の服用などが考えられます。

ほとんどは射精痛などの自覚症状はなく、出てきた精液の中に血液が混じっていることで、偶然に気付くことがよくあります。 新鮮な血液が混じる場合はピンク色や真っ赤になり、古い血液が混じる場合は茶褐色になります。赤黒い小さな点々が混じることもあります。

出血量は微量なので、精液内に炎症を示す細胞がない限り精子に悪影響はなく、妊娠がしにくくなったり、母胎内での胎児の発育に対する影響はありません。

後部尿道炎、前立腺炎が原因の場合には、 排尿時の痛み、射精時の痛み、 頻尿、尿道の不快感、発熱などの自覚症状が出ます。

血精液症の検査と診断と治療

様子をみて、精液の中に血液が混入する状態が続くようならば、泌尿器科を受診します。

医師による診断では、直腸診、精管や精巣上体の触診、尿や精液を採取しての細菌や結核菌の顕微鏡観察、血液検査で原因を探ります。超音波やCT、MRI検査などで前立腺、精嚢腺の形態も検査します。不妊症になっている場合は、造影検査をすることもあります。

結核は前立腺などにできると、こぶのようになるので、直腸診などによって発見できます。精液のどの部分に血液が混入しているかが確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。前立腺や精嚢、尿道の腫瘍(しゅよう)も調べ、高齢者では前立腺がんなどの悪性腫瘍との関連も調べます。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれなものの、可能性はあります。

一連の検査で尿や精液に異常のないことが確認できれば、特に治療する必要もありません。大部分は2、3週間で自然治癒します。

炎症が確認された場合には、止血剤の投与、抗菌剤の投与などが行われます。短期間の抗菌剤の投与は、精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。前立腺炎の治療には、主に原因の菌に対する抗生剤が使用され、治療期間は約4~12週間となります。治療期間が半年や1年と長くかかることもあります。

血精液症は一度治っても、また再発することがあります。長く続く場合には、精液内にみられる細菌を再確認する必要があります。

軽症の場合は、日常の生活で特に気を付けることはありません。2週間くらい射精を控えてみてもいいですが、それほどこだわる必要はありません。

🇱🇮結節腫

手の甲などの関節にできる良性腫瘍で、若い女性に多く発生

結節腫(しゅ)とは、手の甲などの関節にゼリー状の液体がたまり、円い結節状に膨れる疾患。ガングリオンと呼ばれることもあります。

男性より女性のほうが発症率が高く、若い女性によく発生します。症状としては、手の甲、手のひら、手首、足首、足底、ひざなどの皮下の関節包、腱鞘(けんしょう)に付着して、こぶ状の腫瘍(しゅよう)ができます。痛みはないことが多く、腫瘍の中にはゼリー状の内容物が入っています。腫瘍の大きさは、米粒大から小豆大までさまざま。

腫瘍の内容物は脂肪や線維質などで、皮膚を通して腫瘍に触れると、ゼリー状の内容物が入っているとは思えないほどカチカチに硬いことが多くなっています。

原因は不明ですが、良性の腫瘍であり悪性になることはありません。悪性ではないので放置してもかまわないものの、手首などにできると人目について目立つことがあります。肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して、痛みが出ることもあります。

結節腫の検査と診断と治療

結節腫(ガングリオン)によるこぶ状の腫瘍が自然に小さくなることは、かなりまれなことです。腫瘍が目立ったり、痛みが出た場合は、整形外科の専門医を受診します。

医師による治療には、注射で腫瘍中のゼリー状の内容物を抜く方法と、手術で腫瘍そのものを摘出する方法とがあります。

手術が嫌いな人には、太めの針の注射器でゼリー状の内容物を穿刺(せんし)吸引すれば、しぼみます。ただし、この方法だけではいずれまた、はれてきます。 注射器による穿刺吸引を繰り返すと、感覚障害や運動障害を残すこともあります。

再発を繰り返す場合には、手術による腫瘍の摘出が必要です。しかし、手術においても、腫瘍が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな腫瘍がたくさん付属していることがあるため、切除して摘出するのはそう簡単ではありません。熟練した医師によって丁寧に行われないと、再発しやすいものです。

肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して痛みがある時も、手術で摘出することが望まれます。

🇨🇭結節性紅斑

皮膚の下に硬いしこりのある紅斑ができる炎症性の疾患

結節性紅斑(こうはん)とは、皮膚の下に硬いしこりのある紅斑ができる炎症性の疾患。病理学的には、皮下脂肪組織を中心とする炎症です。

若い成人、特に女性が最も発症しやすく、数カ月から数年に渡って繰り返し再発します。細菌、ウイルス、真菌などの感染アレルギーが、主な原因と考えられています。そのほか、サルファ系抗菌薬や経口避妊薬などの薬剤によるもの、内臓の悪性腫瘍(しゅよう)、ベーチェット病、結核、サルコイドーシス、クローン病などに伴うものがあります。

円形ないし不規則形の紅斑が主にむこうずねに現れ、徐々に赤色から青みがかった茶色へと変化するところは、はれ物やあざに似ています。圧痛を伴い、時には何もしなくても痛みます。重症の場合は、紅斑が太ももや腕にまで広がることがあります。通常、数日から数週間で、紅斑、圧痛、しこりは消えます。繰り返して発症しますが、それ以上悪化することはありません。症状が出る時には、発熱や関節痛、全身の倦怠(けんたい)感を伴うこともあります。

結節性紅斑の検査と診断と治療

類似の症状を示す疾患が多数あるので、皮膚科専門医を受診し、皮膚生検により確定診断を受けることが勧められます。

医師は、皮膚を数ミリ切り取って調べる検査である皮膚生検を行い、皮下脂肪組織を中心とする炎症であることを確認します。病理組織学的な特徴から、バザン硬結性紅斑、結節性多発動脈炎、スウィート病、深在性エリテマトーデス、ウェーバー・クリスチャン病などと区別します。血液検査では白血球の増加、赤沈やCRPなどの炎症反応の高進がみられます。

治療では、ベッドで安静にしていることが最も重要です。薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤やヨウ化カリウムの錠剤の内服が一般的ですが、重症例では副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の内服も行われます。原因となる薬剤がある場合は、その使用を中止します。感染症など基礎疾患がある場合は、その治療を行います。

🇨🇭結節性多発動脈炎

全身の中小動脈に炎症が起こる疾患

結節性多発動脈炎とは、全身の中小動脈の動脈壁に炎症が起こる疾患。中小動脈に血管炎が起こる本症と、細小動脈から静脈に血管炎が起こる顕微鏡的多発血管炎とを併せて、結節性動脈周囲炎とも呼ばれます。

膠原(こうげん)病の中でも非常にまれで重い疾患といえ、全身の諸臓器に分布する中小動脈に血管炎が生じるため、多様な症状を示します。ほかの膠原病が女性に多くみられるのと異なり、やや男性に多く、通常中年から壮年に発症します。日本では、国の特定疾患(難病)に指定されています。

原因は不明です。B型肝炎ウイルスやヘアリーセル白血病、大気汚染などの関与が、示唆されています。初発症状としては、高熱が出て、関節痛、筋肉痛が起こり、体重減少、全身の消耗がみられます。

侵される血管の部位によって、引き起こされる障害は異なります。皮膚の場合は、結節性紅斑(こうはん)や紫斑、潰瘍(かいよう)、時に指先に壊疽(えそ)が起こることがあります。心臓の場合は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)が起こります。腎(じん)臓の場合は、高血圧、腎不全が起こります。腸管の場合は、激しい腹痛、嘔吐(おうと)、下血などがみられます。神経の場合は、末梢(まっしょう)神経障害が起こります。筋肉の場合は、筋肉痛の原因となります。目の場合は、黒内障といって突然失明することがまれにあります。

結節性多発動脈炎の検査と診断と治療

結節性多発動脈炎はまれな疾患ながら、生命や臓器不全の危険性があるので、専門医の意見を聞いて入院治療を受けることが重要です。早期診断、早期治療が望まれますので、膠原病内科、腎臓内科などを受診します。

血液検査によって、血管の炎症の程度を調べます。皮膚や筋肉などの生検、血管造影、障害が起こっている臓器を調べる検査なども、診断のために重要です。区別すべき疾患は、顕微鏡的多発血管炎など他の血管炎および膠原病です。

治療には、高用量の副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と免疫抑制剤が用いられます。重篤な臓器病変が生じたら、それに応じた治療も行われます。腎臓が侵されやすく、腎不全では人工透析が行われます。心筋梗塞では、冠動脈形成術も行われます。

🇨🇭血栓症

血栓症とは、血管の中にできる血の固まりである血栓が血管を詰まらせ、組織や臓器に障害を引き起こす病状です。

血栓は破れた血管を修復し、止血するために不可欠のもので、健康な場合は血栓を作る働きと、それを溶かす働きのバランスがとれています。まず、血管が傷付いて破れた際には、血液中の血小板がその傷口に集まり、止血します。 そこへフィブリンという血液中の繊維素が凝集して血栓となり、完全に止血します。続いて、血管壁細胞の増殖が起こって血管が修復され、その後、血栓を溶かす成分が働いて、血流が元通りになります。

しかし、加齢などで血栓を溶かす働きが衰えると、血栓が血管中に残ってしまい、動脈硬化で動脈が狭くなるなどの条件が重なることで血液の流れが滞ると、血栓症にかかりやすくなります。この血栓が心臓の血管をふさぐと心筋梗塞(こうそく)、脳の血管をふさぐと脳梗塞が起こります。ある部位にできた血栓がはがれて、血流に乗って移動し、他の部位の血管をふさぐと塞栓(そくせん)症が起こります。

日本人では、40歳代の5人に1人、50歳代で3人に1人、60歳代で2人に1人、70歳代ではほぼ全員血栓症であるといわれています。

血栓症を引き起こす要因となるのは、凝固しやすくなるなどの血液の性状変化、炎症や損傷などによる血管壁の変化、 血流のうっ滞、加齢による血管の老化、誤った食生活、運動不足、血中の中性脂肪やコレステロールの増加などが挙げられます。

医師による治療においては、脳血管障害や虚血性心疾患を起こす可能性のある人に対して、予防目的で抗血栓治療を行うことがあります。活発になっている凝固因子の働きを抑える抗凝固薬や 、血小板の働きを抑える抗血小板薬、血栓溶解薬などが使用されます。

それぞれの薬は、出血した際、血を止めるのに必要な血栓ができる過程も抑えますので、出血しやすい、また、出血した際に止まりにくいという副作用がありますので、注意する必要があります。

🇦🇹血栓性外痔核

血栓が肛門の周囲にたまって、はれてくる疾患

血栓性外痔核(がいじかく)とは、血栓が肛門(こうもん)周囲にたまって、はれてくる疾患。

外痔核は、直腸と肛門を隔てる歯状線(しじょうせん)よりも外側にできた痔核です。痔核は、肛門周囲の静脈が膨らんで、こぶになったものです。歯状線よりも外側にできたこぶである外痔核は、歯状線よりも内側にできた痔核である内痔核の肛門外への脱出に伴って、大きくなってくるのが普通です。

外痔核は、排便時の強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

この外痔核がある時に、下痢のために頻繁に排便したり、便秘のために力んで便を出したりすると、静脈叢(そう)のうっ血が急にひどくなり、よどんでいる血液の中に血液の固まりである血栓ができ、強い痛みを伴った青黒いはれ物となります。一種の血豆のようなもので、これが血栓性外痔核です。

血栓性外痔核は、2~3日で痛みのピークとなります。しかし、血栓性外痔核が小さなうちは、軟こうや座薬などを使用するだけで、血栓はすぐに溶けてきます。溶け始めると、完全に詰まっていた血管が流れ出します。そうすると、はれもひいてきて、痛みも次第に少なくなってきます。はれがひくのに1カ月くらいかかりますが、完全に治ります。

しかしながら、肛門に負担をかけるようなことをしているとまた、何度でも血栓性外痔核になります。どこに血栓ができるかによってはれる場所が決まりますので、いつも同じところがはれるとは限らず、はれる場所はその時々によって違います。

この血栓性外痔核は、肛門に一時的に急激に負担がかかった時にできます。多い原因としては、便秘、下痢のほか、冷え、飲酒が挙げられます

血栓性外痔核が大きくなってしまうと、痔核を保護している皮膚が圧迫されて潰瘍(かいよう)ができ、出血を起こしますし、血栓が吸収されても皮膚の盛り上がりは残って、皮垂(ひすい)というこぶのような高まりが肛門の入り口にできます。

1カ月以上たってもはれがひかない、あるいはどんどんはれてくるようであれば、すぐに肛門科を受診して下さい。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の痛みや出血といった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

血栓性外痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による治療は、保存的治療と血栓切除に分けられます。

小さくて痛みが強くない場合には、ほとんど軟こうによる保存的治療で改善してきます。血栓が大きくて痛みが強い場合、軟こうを3~4週間使っても治らない場合、何回も同じところがはれる場合、表面が破れて多量の出血が起こっている場合には、痛みを除き皮膚の変形を防止するためにも、痔核の部分を舟型に切開し、血栓を摘出(てきしゅつ)する結紮(けっさつ)切除法という簡単な処置を行います。この血栓切除は、外来で3分くらいでできます。

血栓を切除すれば、すぐに痛みが消失します。切除後1週間くらいは無理せず、運動や旅行などを控える必要があります。血栓を切除した後は1~2週間ほど、傷口から少しずつ出血が続くことがありますが、血栓が吸収されてなくなれば、自然にしぼんで消えてなくなります。

🇦🇹血栓性静脈炎

皮膚の浅い部分にある静脈が血液の固まりで栓をしたように詰まる状態

血栓性静脈炎とは、皮膚の浅い部分にある表在静脈(皮〔ひ〕静脈)に炎症と血栓が生じる疾患。表在性血栓性静脈炎とも呼ばれます。

全身の静脈は、表在静脈と深部静脈に分類されます。この血栓性静脈炎が表在静脈に血の固まりである血栓が生じる疾患であるのに対して、深部静脈に血栓が生じる疾患は深部静脈血栓症と呼ばれるほか、ロングフライト血栓症、旅行者血栓症、エコノミークラス症候群、静脈血栓塞栓(そくせん)症とも呼ばれ、飛行機内などで長時間、同じ座席で同じ姿勢を取り続けることにより血栓が生ずる疾患として知られています。

同じように静脈に血栓ができても、表在静脈に起こる血栓性静脈炎と深部静脈に起こる深部静脈血栓症とでは、症状の出方は全く違います。血栓性静脈炎は軽くてすむのに対して、深部静脈血栓症は重症化しやすくなります。

血栓性静脈炎は脚の表在静脈に最も多く発生しますが、鼠径(そけい)部や腕の表在静脈にみられることもあります。腕の血栓静脈炎は自然に起きる場合もありますが、最も起こりやすいのは、繰り返し静脈注射を行った場合です。注射針や薬の刺激で静脈の壁に損傷や変化が起き、この部分の血液が固まって血栓を作ります。

心臓や血管の病気の治療を目的に、血管中に挿入するカテーテルという細長い管を静脈内に長期間入れたままでいることでも、血栓性静脈炎は起こります。

そのほか、ベーチェット病、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、血小板増多症、悪性腫瘍、膠原(こうげん)病で、血栓性静脈炎を伴うことがあります。とりわけ、手足のあちらこちらに細長いしこりのようなものが次々に現れて消えていくものは、遊走性静脈炎あるいは遊走性血栓静脈炎といい、バージャー病や内臓の悪性腫瘍の可能性があります。また、静脈瘤(りゅう)に血栓性静脈炎を合併する場合もあります。

血栓性静脈炎では急性の炎症反応が起こり、局所的な痛みとはれが急速に現れ、炎症を起こしている静脈の周囲の皮膚が赤く熱っぽくなり、触れると痛みます。中の血液が凝固するため、この状態の静脈は正常な静脈や静脈瘤のように軟らかくはなく、皮膚の下に硬いしこりがあるように感じられます。このような静脈は、全長にわたって硬い感触がすることもあります。

時には、発熱や悪寒などの全身症状もみられます。

血栓性静脈炎の検査と診断と治療

内科、循環器科などの医師による診断では、 急性期の血栓性静脈炎に対しては、下肢のはれ、色調、皮膚温、表在静脈の拡張など、視診や触診で診断が可能です。また、下肢の血栓の最も有効な検査法は、超音波ドプラー法であり、現在最も頻用されています。時には静脈造影を用いて、血栓の局在や圧の上昇を測定することもあります。

慢性期の血栓性静脈炎に対しては、皮膚や皮下組織が厚くなるリンパ浮腫との区別が難しく、リンパ管造影や静脈造影が必要になる場合もあります。

遊走性静脈炎の場合の基礎疾患には、難病といわれるベーチェット病やバージャー病、悪性腫瘍などが含まれますので、静脈炎を繰り返す時は精査が必要です。

内科、循環器科などの医師による治療では、血液疾患や悪性疾患などの合併症がある場合は基礎疾患の治療が優先されます。それ以外の急性期の血栓性静脈炎は、局所の安静と湿布、弾性包帯などを用い、痛みがある場合には、対症療法として炎症鎮痛剤などを使います。

薬剤の静脈注射やカテーテルの使用による静脈損傷が判明した場合は、速やかに薬剤の中止や変更、カテーテルの抜去を行った後、局所の治療を行います。

静脈瘤が原因の場合は、局所の対症療法を行って症状が軽快した後、原因である静脈瘤を治療します。静脈瘤に生じた血栓性静脈炎は他の原因に比べて血栓量が多いため、炎症が強い際は静脈を小切開して血栓を絞り出すことで、早期に症状を改善することができます。また、弾性ストッキングによる圧迫も有効です。

薬剤やカテーテル、静脈瘤などの原因を取り除くことができれば、局所的な痛みやはれは速やかに消退することがほとんどです。しこりや色素沈着は、数週間残る場合もあります。

難治性のものには、抗凝固剤や血栓溶解剤を使って血栓の治療と予防を行い、対症療法として炎症鎮痛剤などを使います。症状がひどい場合は、外科的手術による血栓の除去、静脈の切除、バイパス形成を行います。

🇦🇹結腸性便秘

結腸の緊張が緩んで、蠕動運動が弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘

結腸性便秘とは、大腸の大部分を占める結腸の緊張が緩んでいて、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘。弛緩(しかん)性便秘とも呼ばれます。

便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。

便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。

便秘の症状の現れる時期は、さまざまです。一般には、加齢とともに増加する傾向にありますが、女性のほうが男性より多いと見なされ、若い女性の便秘は思春期のころに始まることも少なくありません。

その便秘の多くは結腸性便秘で、日本人の常習化した慢性便秘の約3分の2を占めるとされています。慢性便秘は症状が1〜3カ月以上続く便秘で、旅行や生活の変化に伴う数日間だけの一過性の便秘と区別されます。

また、結腸の緊張の緩みと腸管の蠕動運動の低下のために起こる結腸性便秘と、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる直腸性便秘とが重なって、慢性便秘が起こることもあります。

結腸性便秘になると、便が大腸を通過するのに時間がかかり、水分の吸収が必要以上に増加するために、出てくる便は太くて硬くて量が少なくなり、排便回数も少なくなります。

もともと排便に関与する腹筋が弱い女性に、結腸性便秘は多くみられます。腸が緩んで、便を送り出す力も便意を感じる力も弱まってしまうため、排便時に上手に腹圧をかけて息むことができなくなった結果、起こるものです。

高齢者、内臓下垂のある人、経産婦、長期臥床(がしょう)者、虚弱体質の人、体力が低下している人、運動不足の人などにも、結腸性便秘は多くみられます。高齢者では、入れ歯がかみ合わなかったり、歯の数が少なかったりして、食事量や食物繊維の摂取不足になる傾向から、大腸を刺激する力が弱まるとともに、腹筋などの筋力が弱まる結果、起こるものです。

また、下剤を使いすぎた場合も、薬の刺激で便意を催させるため、腸の機能が低下して結腸性便秘になることがあります。

結腸性便秘になると、腹痛などの強い症状を生じることは少ないものの、長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、残便感、食欲の低下などの症状がみられます。頭痛や肩凝り、手足の冷え、倦怠(けんたい)感などの症状を伴うこともあります。

また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

結腸性便秘の検査と診断と治療

肛門(こうもん)科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、結腸性便秘を詳しく調べるために、X線マーカーを服用して大腸の通過時間を調べる検査や、バリウムによる模擬便を用いて、排便時の直腸の形や動きを調べる排便造影検査を行います。

肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による治療では、食事指導、生活指導、運動、緩下剤といった保存的治療法が主体となり、これらをうまく取り入れて便通をコントロールするようにします。

日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補うためには、市販の食物繊維サプリメントであるオオバコ、小麦ふすまなどを活用するのもよい方法です。運動で腹筋を鍛え、蠕動運動を活性化するためには、ウオーキングやジョギングを行うのもよい方法です。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

🇻🇦血尿

腎臓や尿路などからの出血のために、尿中に血液が混入している状態

血尿とは、腎臓(じんぞう)や尿路などからの出血のために、尿中に血液が混入している状態。赤血球尿とも呼ばれます。

血尿の中には、目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的血尿と、目で見てもわからないけれども顕微鏡で見ると尿の中に赤血球が存在する顕微鏡的血尿との2つがあります。正常の人では尿中に赤血球が混入することはなく、尿を遠心分離器にかけた際に、尿中に含まれる固形物が沈殿して底にたまる尿沈渣(ちんさ)を顕微鏡で調べ、一視野に4個以上の赤血球を認めた場合が、顕微鏡的血尿に相当します。

女性生殖器からの出血のために、尿中に血液が混入しているものは、血尿とは呼びません。

尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱(ぼうこう)に至り、一度貯留された後、尿道から排出されます。従って、この経路のどこかに腫瘍(しゅよう)、結石、炎症などが存在し出血していると、血尿を生じます。男性の場合は、生殖器である前立腺(ぜんりつせん)や精巣(睾丸〔こうがん〕)と泌尿器がつながっているため、前立腺からの出血でも血尿を生じることがあります。

高齢者で血尿をみた時に、最も注意しなければいけない疾患は、悪性腫瘍、すなわちがんです。血尿を来すがんは、腎臓がん、腎盂(じんう)がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がんなどです。そのほか、尿路系臓器の周囲の臓器からのがんが浸潤し、血尿を生ずることもあります。例えば、大腸がん、子宮がんの転移が、それに当たります。

がんによる血尿は通常、肉眼的血尿なので、気付いたらすぐに検査を受ける必要があります。顕微鏡的血尿でも、まれにがんによって起こされることがあります。腎臓がんでは背部痛を生じることもありますが、無症状のことも多く、肉眼的血尿があった時には他の症状がなくても検査を受ける必要があります。

血尿を生ずる疾患としては、結石もあります。腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂の中で形成された結石が、尿管の細い部分に詰まると、痛みと血尿を生じます。尿管には、腎盂と尿管の移行部、総腸骨動脈圧迫部、尿管と膀胱の移行部という3つの狭窄(きょうさく)部があり、そこに結石が詰まりやすくなっています。狭窄部に詰まっていない状態では、痛みもなく血尿もほとんど認めません。

尿管、膀胱でも結石ができることがあり、特に感染、異物の存在などが結石の核となるとされています。

膀胱炎もしばしば血尿の原因となり、急性膀胱炎の場合は通常、排尿時痛、頻尿、白血球が混入した膿尿(のうにょう)を伴います。慢性膀胱炎の場合には、血尿と膿尿だけで、痛みや頻尿の症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。

尿路系臓器の炎症では、細菌がついて起こる前立腺炎、腎盂腎炎、尿道炎も、血尿の原因となります。高齢者になってから発症することは少ない疾患で血尿を生じるものに、慢性糸球体腎炎(特にIgA腎症)、急性糸球体腎炎、多発性嚢胞(のうほう)腎、腎結核などが挙げられます。青年期からの無症候性血尿としては、遊走腎、薬剤性血尿などがあります。

血尿の発症者の約10人に1人は原因を特定できないことがあり、特発性血尿といいます。また、健常者でも激しい運動後、一時的に血尿を認めることがあります。いずれにおいても血尿が認められた時は、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。

血尿の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、血尿の原因を確定します。

血尿に排尿時痛を伴う時は、膀胱炎、膀胱結石を疑います。血尿に腹痛、背部痛を伴う時は、腎結石、尿路結石を疑います。血尿に浮腫(ふしゅ)、高血圧などを伴う時は、腎糸球体病変を疑います。

肉眼的血尿の場合、ある期間持続すると貧血が進行する恐れがあり、早急に精密検査を行います。尿の通過経路である腎臓、尿管、膀胱などに血尿の原因となり得る腫瘍、結石などの病変はないかを調べます。腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行い、異常所見を検索します。特に中高年の場合は悪性疾患を疑い、尿中に混入している異常細胞を調べる尿細胞診を繰り返し行うことがあります。

無症候性の顕微鏡的血尿を各種の健康診断で指摘されている場合、尿沈渣を行い、赤血球円柱、赤血球の変形などがあれば、腎糸球体疾患を疑います。IgA腎症、急性糸球体腎炎などが考えられ、診断のため血液検査を行います。尿沈渣に異常がみられない場合、尿管、膀胱などの下部尿路系の病変を考え、肉眼的血尿の時と同様に腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行います。

そのほかの尿所見で、白血球の混入が認められれば膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症、異型細胞が認められればがんを疑います。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、血尿そのものより、血尿の原因となる疾患の治療、経過観察を重視します。 

がんの治療では、三大治療と呼ばれる外科療法、放射線療法、化学療法の3つを駆使し、状況に合わせて組み合わせた集学的治療を行います。腎臓がん、膀胱がんの早期には手術を行いますが、転移がひどい場合や年齢的に手術不可能の場合は、インターフェロン療法などの化学療法を行います。

尿路結石では、痛みや繰り返す膀胱炎、腎盂腎炎などの症状がなければ、尿とともに自然に出てくるまで経過観察で様子をみることもあります。症状がある場合や大きな結石の場合は、結石に超音波などの物理的エネルギーを加え、そのエネルギーで結石を粉砕し、体外に出す破砕療法や、手術によって除去します。

膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症では、感染している細菌に有効な抗生物質、抗菌剤を投与します。効果は比較的早い段階で現れます。どこで炎症を起こしているかにもよりますが、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

🇻🇦結膜炎

結膜炎とは、目の結膜に炎症が起こる病気の総称で、大きく分けて、急性結膜炎と慢性結膜炎とがあります。

結膜とは、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ること。そこで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しているのですが、多くの細菌にさらされたり、睡眠不足、過労などで抵抗力が落ちている時には、炎症を起こすことがあるのです。

結膜炎の症状は引き起こす原因によって異なりますが、共通する症状として白目の充血、目やになどが現れます。

急性結膜炎は、主に細菌、ウイルス感染によって引き起こされます。アデノウイルスによる流行性角結膜炎(はやり目)や咽頭結膜炎(プール熱)では、患者の分泌物などから伝染し、しばしば地域や学校で集団感染し、大量の目やに、リンパ腺(せん)のはれが生じます。そのほか、エンテウイルスによる急性出血性結膜炎などもあります。

慢性結膜炎は、細菌の感染、ダニや花粉などのアレルギー、目をこすりすぎるなどの機械的刺激、薬品などの化学的刺激といった、種々の原因によって引き起こされます。

🇻🇦結膜下出血

突然、目の白目に赤い出血斑が現れる状態

結膜下出血とは、突然、目の白目に赤い出血斑(はん)現れる状態。白目の一部分がわずかに赤く見えるもの、黒目の回りが真っ赤になるものなどがあります。

目をぶつけたり、強くこすったりした時、または、そのような原因が思い当たらない場合にも起こります。通常は痛み、かゆみなどの自覚症状はないため、朝起きて鏡を見て見付けたり、周囲の人に指摘されたりして気が付くこともよくあります。

赤い出血斑は、白目の表面を覆っている眼球結膜に存在する大小の血管が破れて、結膜の下に広がったものです。小さな点状のものから、斑状、時に眼球結膜全体を覆う広範なものもあります。また、血腫(けっしゅ)を作ることもあります。

通常の出血では多少、目がごろごろする程度で、ほとんど痛み、かゆみ、目やになどの症状は伴いません。また、眼球内部に血液が入ることはないため、目が見えにくくなったり、視野が狭くなったりすることもありません。

普通は、1~2週間で自然に吸収されてきれいな白目に戻ります。出血斑の状態は、赤色、茶褐色、黄色、白色と変化することになります。まれに、茶褐色が比較的長期間残ることがあります。中には、出血が自然に吸収されてきれいな白目に戻るまで、2~3カ月かかるものもあります。時間はかかりますが、出血は吸収されますので心配はいりません。

多くの場合、結膜下出血は特別な治療の必要はなく、放置しておいてもかまいませんが、目に外傷を受けた場合、痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合、熱を伴う場合は、自分の症状をしっかりと眼科医に伝えアドバイスを受けます。

なお、出血と充血の違いを挙げると、出血は血管が破れて血液が出たもので、血管の走行が見えません。一方、充血は細い血管が拡張した状態で、血管の走行が見えます。充血の場合は、血管収縮剤を使うと赤みが少なくなります。

結膜下出血の検査と診断と治療

結膜下出血で痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合には、高血圧症や動脈硬化症、出血しやすくなる疾患などの有無を検査します。

医師の治療では、目の疾患や全身性疾患が要因になっている場合は、原因疾患の治療を行います。目に外傷を受けている場合は、感染の予防などのため直ちに穿孔(せんこう)部を閉じる必要があります。隠れた目の外傷があって結膜下出血がなかなか消えない場合も、穿孔部を閉じる必要があります。

出血が止まっても赤目が広範で長引いているひどい場合は、吸収促進のために血栓溶解剤などを結膜下注射することもあります。

ほとんどの場合、結膜下出血が起こった後に眼底出血が起こることはありません。しかし、動脈硬化、高血圧、糖尿病、出血性素因(貧血、白血病、紫斑病など)、腎炎(じんえん)に伴って起こるような疾患が原因の場合は、眼底出血が起こり、失明することもありますので注意が必要です。

🇸🇲結膜結石

眼瞼結膜に白色ないし黄色をした小さな硬い感じの結石ができる疾患

結膜結石とは、上下のまぶたの裏側を覆っている眼瞼(がんけん)結膜に、白色ないし黄色をした小さな硬い感じの塊である結石ができる疾患。

目の結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、半透明の薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分が眼瞼結膜、白目の表面を覆っている部分が眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ることで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しています。また、結膜には適度な緩みがあり、上下左右などの眼球運動に耐えられるようになっています。

その結膜にできる結膜結石は、カルシウムや脂質、組織中の老廃物などが集まって沈着したもので、眼瞼結膜下のある程度深いところにでき始めます。

初期には無症状で、無症状のまま経過することがほとんどなのですが、時に少しずつ眼瞼結膜の表面に移動してきて、露出することがあります。こうなるとまばたきするたびに、隆起した結膜結石が白目の表面を覆っている眼球結膜や、黒目の部分を覆っている角膜を直接こすることになるため、「ゴロゴロする」「何か入っているような感じがする」といった異物感、違和感、不快感を感じるようになります。

結膜結石が角膜に当たって角膜の上皮に傷が付くと、痛みで目が開けられなくなることや、目が充血したりすることがあります。

年齢とともに結膜結石がある人が増え、50歳以上の人に多くみられるので、老化現象の一つとしてできることも多いと見なされます。ただ、根本的な発生メカニズムはわかっていませんが、慢性的な結膜炎やドライアイがあったり、さらには目をよくこすったり、コンタクトレンズを長期装用したりしていると、若い人でもできることはあります。

体質的に結膜結石のできやすい人もおり、よく再発することがあります。

結膜結石の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、左右上下すべてのまぶたをめくって、スリットランプ(細隙灯〔さいげきとう〕)と呼ばれる検眼用の顕微鏡を使って視診することで、容易に診断できます。

眼科の医師による治療では、自然に、ないし洗眼や点眼などによって結膜から結石が脱落することがあるため、2~3日様子をみて、強い異物感がなくないようであれば手術で結石を除去します。

手術では、表面麻酔剤を点眼してまぶたをめくり、細い針の先で引っ掛けるようにして結石を取り除きます。通常2~3分以内に、手術は終わります。出血することがありますが、2~3日以内に止まります。

まれに、感染を起こすことがあるため、医師の指示通りに抗菌薬としての点眼液や、抗炎症薬としての点眼液を点眼する必要があります。結石を除去すれば、90パーセント以上よくなります。

しかし、眼球に接していない小さな結石は除去できないため、それが月日の経過で老廃物などが蓄積して大きくなり、異物感や不快感、痛みが再発することもあります。体質的に結石のできやすい人では、よく再発することがあります。再発した場合は、再度眼科を受診してもらい、新たに露出した結石を手術で除去することになります。

🇸🇲結膜弛緩症

結膜が平均より強く弛緩した状態になり、異物感、流涙、出血を生じる眼疾患

結膜弛緩(しかん)症とは、結膜が平均より強く弛緩した状態になり、異物感、流涙、出血などを生じる眼疾患。

目の結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、半透明の薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ることで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しています。

また、結膜には適度な緩みがあり、上下左右などの眼球運動に耐えられるようになっています。この緩みが眼球結膜の部分で平均より強くなっている状態が、結膜弛緩症です。

緩んだ結膜は下まぶたに沿って存在し、程度が強い時は角膜へ乗り上がっていることもあります。

結膜弛緩症の原因はよくわかっていませんが、加齢とともに増える傾向にあります。

結膜弛緩症を発症すると、眼球運動や、まばたきに伴って、弛緩結膜(余剰結膜)が過剰に動くため、異物感を生じます。強い痛みではなく、ごろごろする、しょぼしょぼする、何か挟まっている感じがするなど、不快感に近いような症状です。

また、下まぶたと結膜の間の空間にたまるようになっている涙が、その空間に弛緩結膜があるためにたまらず、弛緩結膜が形成するひだ、あるいはしわの間に涙がたまり、揚げ句に、外にこぼれ落ちるため、流涙を生じます。

さらに、弛緩結膜が過剰に動くことから、結膜の毛細血管が引っ張られて切れ、白目から出血する結膜下出血の原因となります。結膜下出血を繰り返す人には、しばしば結膜弛緩症がみられます。

こういった症状から眼科を受診した場合、しばしば疲れ目、いわゆる眼精疲労などと診断され、結膜弛緩症が見過ごされていることがあり、眼精疲労などの点眼薬を処方されることもあります。しかしながら、結膜弛緩症は物理的に結膜が余っている状態なので、点眼薬だけで症状が軽快することはあっても、完治は難しくなります。

結膜弛緩症はドライアイとも深い関係があり、下まぶたに沿って弛緩結膜が存在するため、弛緩結膜が形成するひだや、しわの間に涙がたまったり、こぼれ落ちるため、角膜に涙がゆき渡らなくなり、ドライアイと同じ状態になります。弛緩結膜に隣接した部分の角膜に、傷が生じることもあります。

本当に涙の分泌量が少ないドライアイがある場合には、結膜弛緩症によりさらに目の表面に涙がゆき渡らなくなるために、ドライアイの症状の悪化につながります。ドライアイの人は、点眼薬をむやみに使用すると点眼薬毒性が出ることがありますが、ドライアイと結膜弛緩症の合併を見過ごされ、過剰な点眼薬の使用によって悪循環に陥ることもあります。

目に慢性の異物感や不快感を覚えている人、涙があふれる傾向がある人、白目からの出血を繰り返す人、いろいろな点眼薬を使ってもドライアイの症状が改善しない人は、結膜弛緩症がないかどうか一度、眼科を受診し、正しく診断してもらうことが勧められます。

結膜弛緩症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、結膜の過度の弛緩は下の白目を覆っている眼球結膜に現れやすいため、下まぶたを下に引き、さらに軽く目の奥のほうへ押し付けながらそのまま上へ持ち上げると、眼球と下まぶたの間に、半透明の弛緩結膜(余剰結膜)現れることで、確定できます。

目の表面の状態を調べるために、スリットランプ(細隙灯〔さいげきとう〕)と呼ばれる検眼用の顕微鏡を使って、フルオレセインという黄色の染色液を少量点眼すると、よりはっきり弛緩結膜の存在を見ることができます。

眼科の医師による治療では、一般的に、下の白目の部分にある弛緩結膜を手術で切除します。手術は局所麻酔で15分程度で、弛緩結膜を切除した後、糸で縫合します。

手術後に強く目をこすると糸がとれるので、1週間は寝る際に眼帯をします。手術後に糸による異物感が生じますが、1週間程度でよくなります。手術後の充血も、1週間程度で消えます。手術後の傷跡はほとんど残らず、結膜は再生します。

2022/08/08

🇺🇬血友病

異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患

血友病とは、異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患。体の血液中あるいは血管外には、出血の際に血が固まるのに必要ないくつかの血液凝固因子が含まれていますが、血友病では生まれ付き、ある種の凝固因子の欠乏あるいは異常のために、血が固まりにくく、出血が止まりにくくなります。

体の中に12種類が存在する血液凝固因子のうち、性染色体であるX染色体上にある第VⅢ因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病A、同じく性染色体であるX染色体上にある第ⅠX因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病Bといいます。

血友病は伴性劣性遺伝といわれる遺伝の仕方で、その発症の多くは男性でみられます。X染色体が2本ある女性の場合には、もう一方のX染色体に異常がなければ機能が補完されますが、ごくまれに発症がみられます。男性は10万人に6〜7人の発症頻度で、血友病Aは血友病Bの約5倍です。基本的には遺伝性の疾患ながら、4分の1の例が今まで家族にみられずに、新しく突然に発生した散発例です。

血友病Aも血友病Bも症状は同じで、深部出血が中心となり、特に関節内や筋肉内で内出血が起こりやすく、一度止血しても翌日~1週間後に再出血を起こすことがあります。ひざ、足、ひじの3関節内の出血が一番多く、溢血班(いっけつはん、青あざ)、鼻出血、歯肉出血などもありますが、内臓出血、頭蓋(とうがい)内出血、腹膜に接したところにある筋肉に血の固まりができる腸腰筋血腫(けっしゅ)などが重要です。頭蓋内出血は致命的なことがあり、腸腰筋血腫は長期に療養をしなければなりません。

新生児期に出血症状がみられることはまれですが、運動量が増えてくる乳児期後半から症状がみられるようになります。歩行ができるようになると、関節内出血、さらに年長になると血尿、筋肉出血がみられるようになります。関節内出血や筋肉出血を繰り返すと、関節の変形や可動域制限が起こります。

幼児期までに大部分が発症しますが、軽症の場合は非血友病の人と変わらない生活を送り、けが、抜歯、手術の時などに血が止まりにくことで、初めて判明することもあります。

血友病の検査と診断と治療

スクリーニング検査では、出血時間、凝固系、線溶系、血小板系、血管系の検査を行い、第VⅢ因子活性または第ⅠX因子活性を測定することにより確定診断されます。

血友病の根本的治療はなく、出血時あるいは予防的d>に、欠乏している血液凝固因子を静脈注射で補充します。血友病Aには第VⅢ因子製剤が、血友病Bには第ⅠX因子製剤が使われ、補充は欠損因子の活性が20パーセント以上になる程度を目標とします。現在ではこの因子補充療法により、健常者とほぼ同じ生活が可能となっていますし、家庭内自己注射による自己管理も可能です。軽度の出血時の自己注射、あるいは定期的な予防自己注射を在宅で行うものです。

また、人から採血した血液から作る血液製剤のほか、リコンビナント製剤という最新の製剤も、現在では使用されています。製造工程中に一切の人由来、動物由来の蛋白(たんぱく)を使用せず、遺伝子工学的に製造されるのがリコンビナント製剤で、日本では50パーセント以上の発症者に使用されています。

血漿(けっしょう)中に、凝固因子の働きを阻害する物質(インヒビター)が存在する場合は、これを除去する目的で血漿交換療法が用いられます。第VⅢ因子、第ⅠX因子ともに肝臓で生成されますので、生体肝移植により血友病が完治した例も存在します。

🟧1人暮らしの高齢者6万8000人死亡 自宅で年間、警察庁推計

 警察庁は、自宅で亡くなる1人暮らしの高齢者が今年は推計でおよそ6万8000人に上る可能性があることを明らかにしました。  1人暮らしの高齢者が増加する中、政府は、みとられることなく病気などで死亡する「孤独死」や「孤立死」も増えることが懸念されるとしています。  13日の衆議院...