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2022/08/27

🇨🇬後脛骨筋腱炎

土踏まずの内側から内くるぶしの後ろ側にかけて痛む疾患

後脛骨筋腱炎(こうけいこつきんけんえん)とは、土踏まずの内側から内くるぶしの後ろ側にかけて痛む疾患。

足関節の周囲には、一般的によく知られているアキレス腱のほかに、前脛骨筋、後脛骨筋、腓骨(ひこつ)筋などの腱があります。足関節の内側、内くるぶしの後方から下方を通っているのが後脛骨筋で、荷重時に足や体を安定させたり、着地時の衝撃を和らげる働きがあります。

ランニング、ジャンプ、ウォーキングなどのスポーツや、長時間の立ち仕事で、後脛骨筋に負担がかかり、腱が引き伸ばされたり、断裂することで炎症を起こすと後脛骨筋腱炎を発症し、痛みやはれが生じます。

ランニングや立ち仕事などによる酷使、過体重、硬い路面の歩行や走行、磨耗したり劣化したシューズ、足に適合していないシューズの使用、扁平足(へんぺいそく)や外反拇趾(がいはんぼし)、足首の柔軟性の低さといった、さまざまな要素が関与して発症します。ランニングやジャンプなどの運動時の痛みが多く、進行すれば歩行やストレッチでも痛むようになります。

痛みが続いたり、強くなったりして日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診します。

医師による検査では、触診とMRI(磁気共鳴画像)により、後脛骨筋腱の損傷とその程度を確認します。腱の触診は通常、痛みを誘発します。つま先で立つことは通常、痛みを伴い、腱が断裂している場合は不可能であるかもしれません。

医師による治療では、痛み、はれが強ければ、運動を制限または休止し、アイシングや温熱療法を行います。また、足の形に合わせて作成した足底板(アーチサポート)やテーピングを使用し、足にかかる負荷を軽減します。足関節周囲筋のストレッチやマッサージ、弱化している筋肉の筋力強化も行います。

しっかりと治療、コンディショニングを行わずにスポーツなどを続けた場合、足関節の動きが制限され、腰や股(また)、膝(ひざ)関節の障害を引き起こす原因となる可能性があります。

完全断裂には手術を必要とし、スポーツ障害による急性断裂には手術が特に重要です。

🇨🇬後脛骨神経炎

足首にある足根管で神経が圧迫、損傷されて、足の裏に痛みとしびれが起こる疾患

後脛骨(こうけいこつ)神経炎とは、足首内のトンネルである足根管の中を走る後脛骨神経が圧迫、損傷されて、足の裏に痛みとしびれが生じる疾患。足根管(そくこんかん)症候群とも呼ばれます。

足根管は内踝(うちくるぶし)の下にあり、足指を曲げる腱(けん)と後脛骨神経が一緒に通っています。この足根管の入り口の部位では、後脛骨神経は骨の上を通るために外からの圧迫に弱く、損傷を受けやすくなっています。

後脛骨神経炎の原因としては、事故やスポーツによる足首の強い圧迫、深い切創(せっそう)、骨折、足首の変形やゆがみ、静脈瘤(りゅう)、ガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、腱鞘(けんしょう)炎などが挙げられます。

発症すると、立ったり、歩いたりする際に、足底(足の裏)に痛みとしびれが生じます。しかし、両方の足底に同時に痛みとしびれが生じることはありませんし、足背(足の甲)と踵(かかと)に痛みとしびれが生じることもありません。足首を動かすと痛んだり、内踝の下を押すと痛い部位があり、足の裏から足先に痛みが響きます。

休んでいると痛みは基本的に治まってきますが、安静にしていても痛みが続くこともあります。ピリピリと焼き付くような痛みが出る場合もあり、特に夜間や就眠時に症状が悪化する傾向があり、つま先にまで痛みの範囲が広がっていきます。

特定の靴を履いた場合に、痛みを感じることもあります。

足根管の後脛骨神経を圧迫するような原因に心当たりがある場合は、これを取り除いて様子をみます。心当たりがなければ、整形外科、神経内科の医師を受診することが勧められます。足の裏が痛み、しびれる疾患はたくさんありますので、自己診断は簡単ではありません。

後脛骨神経炎の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。足根管症候群では、足の裏から足先に痛みが広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、後脛骨神経の伝導速度に遅れが認められると、後脛骨神経炎と確定されます。

整形外科、神経内科の医師による治療は、まず神経ブロック注射により患部の炎症を抑えます。靴の中に特殊な矯正用具を入れておくと、後脛骨神経の圧迫が軽減されることもあります。効果がみられない場合は、足根管を広げて後脛骨神経の圧迫を取り除く手術が必要となってきます。

🇧🇮高血圧合併症

高血圧を放置しておくことが原因となって、進行する別の疾患

高血圧合併症とは、血圧が高い状態を放置しておくことが原因となって、進行するさまざまな別の疾患。致死率が高い疾患が多くみられます。

高血圧の合併症の起こり方は、人によってそれぞれで多種多様です。頭痛、頭重感、吐き気、動悸(どうき)、倦怠(けんたい)感、むくみなど、高血圧による不快症状が続いた後に起こる時もあれば、全く自覚症状もないまま突然激しい発作に見舞われて最悪の場合、命を落とすケースもあります。

そのような大事に至らないように血圧をコントロールし、合併症の予防も心掛けるとともに、早期発見と早期治療を心掛けたいもの。近年は、合併症の有無や進行程度を把握できる精度の高い検査が多くあり、予防対策をしっかり行えるようになっています。

高血圧に合併する疾患として、脳では脳卒中、すなわち脳出血と脳梗塞(こうそく)が挙げられ、脳出血には脳内出血、くも膜下出血があり、脳梗塞には脳血栓、脳塞栓(そくせん)があります。

脳には大動脈と、そこから枝分かれしている細動脈がありますが、特に細動脈の硬化が進んでこぶ状の動脈瘤(りゅう)ができ、それが破裂して起こるのが脳出血です。その一種のくも膜下出血は、血圧の急上昇と関係が深く、非常に致死率が高い疾患です。一方、脳梗塞は、動脈硬化が進んだ血管に血の塊である血栓が詰まって血流が途絶え、酸素と栄養分の供給ができなくなった細胞が壊死します。細動脈では大事に至らないこともありますが、大動脈では致死率が高くなり、一命を取り留めたとしても、体のまひや言語障害などの後遺症が残る場合が多くなります。

また、動脈硬化で血管が狭くなり、一時的に脳への血流が不足して起こる疾患に、一過性脳虚血発作があり、突然、手足のしびれやまひ、視力障害などの発作が起こり、短時間のうちに回復して、後遺症状を残さないものの、脳出血や脳梗塞の前兆となります。

さらに、高血圧性脳症があり、これ血圧が調整できる以上に上昇した場合に、血管の中の水が外に漏れて脳浮腫(ふしゅ)の症状を起こす疾患です。頭痛や吐き気、まひ、錯乱といった症状が起きますが、血圧を下げればすぐに改善されます。

高血圧に合併する疾患として、心臓では狭心症、心筋梗塞、心肥大、心不全、高血圧性心疾患があります。

心臓に酸素や栄養を送り込んでいる冠動脈の内腔(ないくう)が、動脈硬化によって狭くなり、一時的に血流が途絶えて起こる発作のことを狭心症といいます。胸部に痛みを感じ、安静にしていると治まりますが、一度発作が起きると、心筋梗塞につながる危険が高まります。その心筋梗塞は、冠動脈に血栓が詰まり血流が途絶えることで起こり、血液と栄養分を供給できなくなった心筋が壊死(えし)します。胸部に激痛を伴う発作を生じ、そのまま死亡してしまうこともあります。

また、高血圧が続くと、心臓は高い圧力で血液を送り出し続けるため、大動脈に血液を送り出している左心室が肥大化する心肥大が起こりやすく、この状態が長く続くと、オーバーワークのため心機能が低下する心不全に陥ります。

さらに、高血圧性心疾患があり、これは高血圧が原因で左心室の壁が肥大し、心機能に障害が起こる疾患です。高血圧性心疾患は最初は症状がほとんどみられませんが、心疾患が起こると、うっ血性心不全や虚血性心疾患の症状が現れ、息切れ、不整脈、動悸、せき、疲労、脱力感、失神、胸痛などの症状が起きます。

高血圧に合併する疾患として、腎臓(じんぞう)では、たんぱく尿、腎硬化症、腎不全、尿毒症があります。

腎臓は尿を生成、排出し、ろ過する重要な臓器で、このろ過機能を持つフィルターの役目をするのが、毛細血管が糸玉状に集まった糸球体です。高血圧の状態が長く続くと糸球体に負担がかかり、細動脈の動脈硬化(糸球体硬化)を起こします。すると、たんぱく尿が出て尿細管を傷め、糸球体の線維化が始まり、やがて腎臓全体の血流も妨げられます。それが続くことで腎臓が硬く小さく委縮してしまうのが、腎硬化症です。

それに伴ってナトリウムや水分を尿中に排出する能力が衰え、体液量が増加し、さらに血圧が高くなるという悪循環が生まれます。腎硬化症が進むと、やがて腎不全となり、生命を維持するために血液透析(人工透析)が必要となってきます。悪化して尿毒症を起こすと、命にかかわります。

高血圧に合併する疾患として、そのほかでは、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症などがあります。

大動脈の硬化が進行すると、血管壁が弾力性を失ってもろくなって、強い血流が加わるところにこぶ状の大動脈瘤ができます。この部分が破裂する大動脈瘤破裂が起こると、出血死につながります。

また、動脈に脂肪分が沈着して粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)が起こると、血管の内膜が肥厚して内腔が狭くなったり、潰瘍(かいよう)ができたりします。結果として、血流に障害が起き、血液が固まって血栓を生じ、詰まりやすい状態になります。こういった血管の病変が末梢(まっしょう)動脈、すなわち手足の動脈に慢性的に起こっているのが、閉塞性動脈硬化症です。初期の症状は足の冷感やしびれで、進行すると、短い距離を歩いただけで、ふくらはぎや太ももの裏側が重くなってきたり、痛みを感じるようになります。さらに進行すると、安静時にも痛みが現れるようになります。

高血圧に因果関係がある疾患として、糖尿病があります。糖尿病は高血圧から起こる合併症ではないものの、高血圧の人は糖尿病になりやすく、同様に、糖尿病の人も高血圧になりやすいという因果関係があります。これには、インスリン抵抗性と高インスリン血症のメカニズムが関与していると考えられます。高血圧と糖尿病を合併すると、血管障害が進行しやすく、高血圧と糖尿病双方の合併症が次々と起こってきます。脳卒中、心筋梗塞のリスクも高まるので、高血圧の人は血圧コントロールと一緒に、血糖値の検査を行い、適正値内でコントロールすることが大切です。

高血圧合併症の検査と診断と治療

内科、循環器科、神経内科などの医師による高血圧合併症の治療は、高血圧を下げるための治療と合併症そのものの治療を同時に行っていくことになります。

治療法は薬物治療が中心で、薬を使う場合には、合併した症状によって、注意が必要になります。悪化したり重度のケースでは、手術を行うことになります。

脳血管に障害がある場合には、血圧を標準値に保ちながら、治療します。 また、食事による療法などにより動脈硬化を進行させないことが大切です。 心臓病と高血圧が合併した場合、特に狭心症や心筋梗塞と合併した場合は、非常に危険な状態です。この場合は、血圧をコントロールし、発作を防止することにを重点に置きます。 腎臓病と高血圧が合併している場合は、両方同時に治療することになります。

糖尿病と高血圧の合併の場合は、動脈硬化が促進されているため、心筋梗塞や脳卒中などが起こりやすい状態になっています。薬を使う時も、糖尿病の薬と血圧降下剤の両方の薬の相性や作用を考えなければならず、十分な注意を払うことが必要になってきます。

どのような高血圧合併症でも、生活の改善をすることは必要です。喫煙などは動脈硬化を促進させるので、断つ必要があります。 塩分を控えた低カロリーな食事や適度な運動で、血圧を低下させることも常に頭に入れて置く必要があります。

🇧🇮高血圧緊急症

血圧が急激に上昇するとともに臓器障害が生じ、直ちに血圧を下げる必要がある状態

高血圧緊急症とは、著しく血圧が上昇するとともに、脳、腎臓(じんぞう)、心臓、網膜などの心血管系臓器に高血圧による急性障害が生じ、進行している状態。高血圧性緊急症、高血圧性クリーゼとも呼ばれます。

高血圧緊急症を放置すれば、不可逆的な臓器障害のため致命的であることから、極めて危険な状態であり、直ちに血圧を下げる必要があります。

症状として、まずは血圧が急激に上昇します。通常、収縮期血圧(最大血圧)で180mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)で120mmHg以上を超えます。このような高い数値が出た場合には、念のために、数分間待ってからもう一度血圧を測定し直すべきです。

血圧の急激な上昇の際に、激しい頭痛、強い不安感、息切れ、鼻出血、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が現れるのは、危険な兆候です。

これらの症状が現れた場合、または2回目に測定した収縮期血圧(最大血圧)が依然として180mmHg以上の場合、血圧が自然に下がるのを待つことなく、速やかに救急受診するべきです。それができない場合は、救急車を呼ぶか、誰(だれ)かに救急医療施設に連れていってもらうべきです。

放置しておくと、肺に水がたまったり、脳出血を起こしたり、脳がむくんできたり、心臓から出る太い血管である大動脈が破裂したりする危険性もあります。

なお、著しく血圧が上昇し、収縮期血圧(最大血圧)で180mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)で120mmHg以上を超えるのが認められる場合でも、多くの場合は臓器障害を伴わない高血圧切迫症、または一過性血圧上昇と呼ばれる状態です。高血圧切迫症では、吐き気、嘔吐などの症状を示す程度です。

高血圧緊急症の検査と診断と治療

内科や循環器科の医師による診断では、拡張期血圧(最小血圧)が130mmHg以上、眼底うっ血乳頭による出血、腎機能の進行性の悪化、意識障害・頭痛・悪心・嘔吐・局所神経症状の4項目中、2項目以上が認められれば高血圧緊急症と判断します。

また、高血圧緊急症を引き起こす障害として、高血圧性脳症、脳血管障害、肺水腫(はいすいしゅ)を伴う急性心不全・急性冠症候群、妊娠中毒症・子癇(しかん)、高血圧を伴う解離性大動脈瘤(りゅう)、悪性高血圧、褐色細胞腫などの疾患や病態があるため、これらを評価します。

内科や循環器科の医師による治療では、高血圧緊急症の状態が持続すると障害がどんどん悪化してしまうため、速やかに降圧を行います。降圧に使用される薬剤は、短時間作用型の調整可能な静注薬です。

しかし、急激な降圧や血圧の下げすぎは、脳などの血流を低下させてしまうため、好ましくありません。拡張期血圧(最小血圧)を100~110mmHg程度にするのが、治療の目標となります。

高血圧緊急症は1時間以内に血圧を下げる必要のある状態ですが、その緊急度は原因となる疾患、合併症の状況により異なり、個々の患者の状態により判断します。

例えば、高血圧緊急症を引き起こす原因が褐色細胞腫だという診断がついた場合、手術によって副腎の髄質にできた腫瘍(しゅよう)を摘出することで完全に治り、その後、高血圧緊急症を起こすことはありません。

🇷🇼高血圧緊張症

急激に悪化し、腎不全、心不全などを起こして生命にかかわる重症の高血圧

高血圧緊張症とは、本態性高血圧などから急激に悪化し、合併症を併発して生命にかかわる重症の高血圧。悪性高血圧、悪性高血圧症ともいいます。

高血圧は慢性の経過をたどる疾患で、合併症を起こすにしても、10年、20年といいう月日がかかるのが一般的です。ところが、高血圧緊張症では2~3年のうちに、生命にかかわる腎(じん)不全、心不全、眼底出血、昏睡(こんすい)などの合併症を起こす場合があります。比較的若い30歳~50歳代の人に多くみられるのが特徴ですが、全体の高血圧の1パーセント未満にしかみられないまれな疾患とされます。

厚労省の研究班が作成した診断基準では、最低血圧が130mmHg以上あること、眼底検査で著しい出血や動脈硬化がみられ、眼底にある視神経の乳頭にうっ血がみられること、腎機能障害が急速に進み腎不全を示すこと、頭痛、嘔吐(おうと)、昏睡などの脳圧高進症状や心不全を伴うことが多い、などが高血圧緊張症の特徴です。

高血圧緊張症による腎機能障害では、急激な血圧の上昇によって血管が傷付き血栓ができてしまうことで、狭まった血管に血液の流れをよくしようと働き、さらに血圧を上昇させる悪循環が生じていきます。

高血圧緊張症が進まないうちに適切な降圧治療を行わないでいると、失明したり生命にかかわるほど悪化する場合があるので、早期発見、早期治療が必要となってきます

高血圧緊張症の検査と診断と治療

内科や循環器科の医師による診断では、眼底に蛋白(たんぱく)尿性網膜炎が見られる場合、つまり、眼底所見の第4度高血圧を高血圧緊張症と確定します。

内科や循環器科の医師による治療は、複数の強力な血管拡張剤を使用して血圧を下げます。その後は、腎硬化症の程度に準じて治療します。

昔は予後が悪く、1年か長くても2年で多くの人が死亡していましたが、現在では降圧剤療法によって第2度高血圧症程度に転化させられるようになり、予後は大変よくなりました。

🇷🇼高血圧症

高血圧のためにいろいろな症状が現れてくる状態

 高血圧症とは、血圧の値が高いためにいろいろな症状が現れてくる状態。高血圧とは、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)の両方、あるいはいずれかの血圧が一定以上高い場合を指します。

 血管壁に及ぼす血液の圧力であるところの血圧は、寒暖、季節、精神活動、肉体活動などの変化によって容易に揺れ動きます。そのため、医師が高血圧と診断するには、「いつ血圧を測っても高い」ことを証明する必要があります。初めて来院した発症者が高血圧の範囲に入る血圧値を示したとしても、すぐには降圧薬を出しません。日を変えて何回か血圧を測定し、いつも最低血圧が90mmHg以上、あるいは最高血圧が140mmHg以上であることを、高血圧の診断目安としています。

 高血圧の血圧値の基準は、しばしばガイドラインで示され、世界共通に用いられています。この現在の基準によると、正常血圧は最高血圧が120mmHg未満、かつ最低血圧が80mmHg未満とされています。120〜139/80〜89mmHgは、高血圧前状態と定義されています。

 高血圧では一般に自覚症状はない場合が多く、健康診断や病気で病院に行った時、たまたま血圧を測って発見されるというのが普通です。症状が現れやすいのは、血圧が高くなり始めた初期です。主な症状は、脳神経症状である頭痛、頭重(ずじゅう)感、めまい、耳鳴り、肩凝り、手足のしびれと、循環器症状である動悸(どうき)、脈の乱れ、心臓部の圧迫感などです。

これらの症状は、ある程度の期間、高血圧が持続すると、むしろ軽減するか、消失することが多いといえます。ところが、血圧の治療を受けずに放っておくと、高血圧が引き金となっていろいろな重大な疾患が起こってきます。例えば、いつもの血圧値より大幅に、しかも急激に血圧が上昇し、激しい頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)などに見舞われることがあります。高血圧性脳症といわれるもので、最高血圧は200mmHgを超えていることも少なくありません。

 血圧の高い状態をそのまま放置すると、脳や心臓の合併症を起こし、この合併症によって死亡する頻度も高くなります。日本人の死亡原因の第1位はがんですが、第2位は心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓病、第3位は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害です。この第2位と第3位の疾患はいずれも、その原因に高血圧が大きく関与しているのです。

 また、高血圧が長く続くと、腎(じん)臓の細い動脈に動脈硬化が起こって腎臓の機能が失われ、人工腎臓や腎臓移植を必要とすることもあります。動脈硬化は眼底の細動脈にも出現し、眼底出血を起こして突然目が見えなくなることも少なくありません。

 現在の日本では、約3000万人が高血圧症にかかっていると見なされています。成人男性の約45パーセント、成人女性の約35パーセントは高血圧症で、年齢とともに罹患(りかん)率は上昇しています。

 なお、高血圧には大きく分けて、本態性高血圧と二次性高血圧といわれる2つのタイプがあります。90パーセント程度が原因となる疾患がない本態性高血圧で、残りの約10パーセントが何らかの原因で高血圧になっている二次性高血圧です。

 本態性高血圧は、生活習慣の乱れや遺伝素因、加齢などが相互に関連し合って発症すると考えられています。通常、30歳代の後半、ないし40歳代に始まり、10年以上の長い経過をたどって心血管臓器の障害を来し、合併症を起こしてくるものです。

 二次性高血圧は、腎臓の疾患によって起こるものが最も多く、急性腎炎、慢性腎炎、糖尿病性腎症などによるものが挙げられます。さらに、腎血管性高血圧、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫(しゅ)、クッシング症候群、大動脈炎症候群、大動脈縮窄(しゅくさく)症などによるものがあります。二次性高血圧では、原因により特徴的な症状を示すものもあります。

高血圧症の検査と診断と治療

 高血圧症を予防ためには、症状がないからといってそのままにしておかず、血圧を時々でもよいので測るということが大切です。最近は、簡便な自動血圧測定器が市販されていますから、家庭でも血圧測定が可能になっています。健康診断などで高血圧の指摘を受けたり、自己測定した血圧値がガイドラインの高血圧の範囲に入るなら、循環器専門医の診察を受け、高血圧の重症度判定、鑑別診断、治療方針決定などについて相談することです。

 なお、自己測定する場合は、測定精度の面から上腕にカフを巻いて測定できる血圧計が勧められます。自己の測定値は、診察室での測定より低めになる傾向があります。広く合意された家庭血圧の基準はありませんが、135/85mmHg以上は高いと考えるべきです。

 医師による高血圧症の検査と診断では、正確な血圧測定のためには、水銀血圧計を用いて聴診法で測定します。最低5分間、座位安静にして足を床に置き、腕を心臓の高さに保って測定します。高血圧と診断されれば、生活習慣のチェック、高脂血症や糖尿病などの他の心血管危険因子の合併確認、二次性高血圧の精密検査、高血圧の影響を強く受ける心臓、脳、腎臓、目などの臓器の障害の程度を評価するための検査が行われます。これらの評価は、治療方針を決める上で非常に重要です。

 医師による本態性高血圧の治療では、生活習慣改善と薬物療法の2本立てとなります。まず薬に頼らない生活習慣の改善が重要で、これだけで治療効果の上がらない場合に初めて降圧薬を使います。二次性高血圧の場合は、高血圧の原因となる疾患を治すことが主体になります。

 生活習慣改善では、(1)食塩摂取の制限や肥満の解消など食事療法、(2)ストレスの軽減や適度の運動など日常生活の改善、(3)禁煙や深酒の禁止など、嗜好(しこう)品の摂取の改善などを行います。

 以上の療法を1カ月以上行ってもなお血圧値が高い場合に、降圧薬が処方されます。高い血圧を下げるための降圧薬の進歩は目覚ましく、今日ではいろいろの種類のものが用いられ、血圧のコントロールは多くの場合、可能となっています。

 しかし、降圧薬を内服しているからといって、生活習慣改善を軽んじることはできません。高血圧症治療はあくまでも食事療法と日常生活の改善などが中心であり、その効果を高めるために行われるのが薬物療法です。一般に降圧薬は長期に服用し続ける必要があり、発症者と高血圧症との戦いは短期決戦ではなく、長い長い戦いです。その戦いに勝つか負けるかは、発症者自身の生活態度にかかっているといっても過言ではありません。

🇸🇹高血圧性クリーゼ

血圧が急激に上昇し、直ちに血圧を下げる必要がある状態

高血圧性クリーゼとは、著しく血圧が上昇するとともに、脳、腎臓(じんぞう)、心臓、網膜などの心血管系臓器に高血圧による急性障害が生じ、進行している状態。高血圧性緊急症、高血圧緊急症とも呼ばれます。

クリーゼとは、危険な状態に陥っていることを指すドイツ語で、英語のクライシスに相当します。高血圧性クリーゼを放置すれば、不可逆的な臓器障害のため致命的であることから、極めて危険な状態であり、直ちに血圧を下げる必要があります。

高血圧クリーゼの症状として、まずは血圧が急激に上昇します。通常、収縮期血圧(最大血圧)で180mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)で120mmHg以上を超えます。もしこのような高い数値が出た場合には、念のために、数分間待ってからもう一度血圧を測定し直すべきです。

血圧の急激な上昇の際に、激しい頭痛、強い不安感、息切れ、鼻出血、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が現れるのは、危険な兆候です。

これらの症状が現れた場合、または2回目に測定した収縮期血圧(最大血圧)が依然として180mmHg以上の場合、血圧が自然に下がるのを待つのではなく、速やかに救急受診をするようにするべきです。それができない場合は、救急車を呼ぶか、誰(だれ)かに救急医療施設に連れていってもらうべきです。

放置しておくと、肺に水がたまったり、脳出血を起こしたり、脳がむくんできたり、心臓から出る太い血管である大動脈が破裂したりする危険性もあります。

なお、著しく血圧が上昇し、収縮期血圧(最大血圧)で180mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)で120mmHg以上を超えるのが認められる場合でも、多くの場合は臓器障害を伴わない高血圧切迫症、または一過性血圧上昇と呼ばれる状態です。高血圧切迫症では、吐き気、嘔吐などの症状を示す程度です。

高血圧性クリーゼの検査と診断と治療

内科や循環器科の医師による診断では、拡張期血圧(最小血圧)が130mmHg以上、眼底うっ血乳頭による出血、腎機能の進行性の悪化、意識障害・頭痛・悪心・嘔吐・局所神経症状の4項目中、2項目以上が認められれば高血圧性クリーゼと判断します。

また、高血圧性クリーゼを引き起こす障害として、高血圧性脳症、脳血管障害、肺水腫(はいすいしゅ)を伴う急性心不全・急性冠症候群、妊娠中毒症・子癇(しかん)、高血圧を伴う解離性大動脈瘤(りゅう)、悪性高血圧、褐色細胞腫などの疾患や病態があるため、これらを評価します。

内科や循環器科の医師による治療では、高血圧性クリーゼの状態が持続すると障害がどんどん悪化してしまうため、速やかに降圧を行います。降圧に使用される薬剤は、短時間作用型の調整可能な静注薬です。

しかし、急激な降圧や血圧の下げすぎは、脳などの血流を低下させてしまうため、好ましくありません。拡張期血圧(最小血圧)を100~110mmHg程度にするのが治療の目標となります。

高血圧性クリーゼは1時間以内に血圧を下げる必要のある状態ですが、その緊急度は原因となる疾患、合併症の状況により異なり、個々の患者の状態により判断します。

例えば、高血圧性クリーゼを引き起こす原因が褐色細胞腫だという診断がついた場合、手術によって副腎の髄質にできた腫瘍(しゅよう)を摘出することで完全に治り、その後高血圧性クリーゼを起こすことはありません。

🇸🇹高血圧性脳症

著しい高血圧を伴って、頭痛、悪心、意識障害など脳の障害を示す症状

高血圧性脳症とは、著しい血圧上昇に伴って、頭痛、視力障害、けいれん、意識障害など脳に起因する症状が起こる症候群。

脳の血管には、血圧の上昇・下降に対して血管を収縮・拡張させて血管抵抗を増大・減少させ、脳の血流を一定に保とうとする働きがあります。これを脳血管の自動調節能といいます。しかし、その調節能の範囲を超えて血圧が著しく持続的に上昇すると、脳の血流は異常に増え、脳の毛細血管内から血管外へ血漿(けっしょう)成分が染み出して脳浮腫(ふしゅ)を起こし、頭蓋(ずがい)内圧が高進します。このような現象が高血圧性脳症で、もともと高血圧のある人や、腎(じん)機能障害のある人に起こりやすく、降圧剤の中断や腎機能障害の悪化などが誘因となります。

もともと高血圧のある人といっても、ほとんどは腎機能障害を持つ重症高血圧、あるいは悪性高血圧の人に起こるほか、急性腎炎や妊娠高血圧症候群(旧妊娠中毒症)の人にも起こることがあります。従って、その発生には年齢や性別などによる特徴はありません。

頭痛、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)など、いわゆる頭蓋内圧高進症状が起こります。頭痛の多くは後頭部から後頸部(けいぶ)にかけての激しい痛みで、著しい高血圧と悪心、嘔吐を伴うためにくも膜下出血とよく似ています。血圧は、最高血圧(収縮期血圧)が200mmHgを大幅に超え、最低血圧(拡張期血圧)も130mmHgを超えることが多く、異常な高血圧を示します。

両側性の視力低下を訴えるケースも少なくありません。初めのうち不安感や興奮、失見当識などの精神症状がみられるケースもあり、中には昏睡(こんすい)状態に至るケースもあります。まれに、全身の強直性けいれんを起こすケースがあります。放置すると、脳出血や心不全、腎不全により死亡します。

高血圧性脳症に気付いたら、直ちに神経内科の専門医の診察を受け下さい。

高血圧性脳症の検査と診断と治療

神経内科の医師による診断では、著しい高血圧を伴って、頭痛、悪心、嘔吐、意識障害など脳の障害を示す症状から、高血圧性脳症を念頭に置きます。似たような症状を示すもので最も重要なのは、脳卒中、とりわけくも膜下出血で、その鑑別にはCTスキャンやMRIを用います。高血圧性脳症の画像では、大きな梗塞(こうそく)や出血の所見はなく、ほぼ正常ないし脳が全般的にはれている脳浮腫の所見が得られます。

血液検査も診断に有用です。高血圧性脳症では腎機能障害を基盤とすることが多く、クレアチニン値の上昇などの所見が得られます。また、高血圧性脳症と似た症状を示す肝性脳症、糖尿病性昏睡など代謝性の脳症との鑑別に、血中アンモニア値、血糖値などの検索が必要です。

神経内科の医師による治療では、速やかに血圧を下げます。降圧が速やかに得られ、用量を調節しやすく、また効果が確実な静脈内投与の降圧剤で治療します。血圧を測定し神経症状を監視しながら、降圧速度を調整します。

意識障害などを示す脳症状の強い場合では、脳の浮腫に対する静脈内投与の抗脳浮腫剤で治療します。強直性けいれんがある場合では、静脈内投与の抗けいれん剤で治療します。

速やかに降圧が得られれば、1~2日で症状は消失します。降圧治療が多少遅れた場合には、症状の改善に数日を要することもありますが、一般に予後は良好です。ただし、治療開始までにあまりにも時間を要した場合には、脳症の不可逆的な進行や脳卒中の合併で後遺症を残したり、肺水腫(すいしゅ)の併発で死亡に至る例もあり注意が必要です。

腎機能障害などの基盤となる疾患がある場合には、それらに対する治療の継続がその後も必要です。

高血圧性脳症の予防のためには、高血圧症を治療している人は、自己判断で降圧剤の中断をしないようにすることが必要です。特に、腎機能障害を伴っている慢性高血圧症の人の場合は、内服の継続による厳重な血圧の管理が必要です。

🇨🇻高血圧性網膜症

高血圧に伴う血管障害などにより、網膜の出血や浮腫などの障害が出る疾患

高血圧性網膜症とは、高血圧に伴う血管障害などにより、網膜の出血や浮腫(ふしゅ)などの障害が出る疾患。高血圧性眼底とも呼ばれます。

高血圧に伴って網膜の毛細血管が障害を受けると、網膜への血液の供給が悪くなり、血管の壁から血液や血液成分が染み出す出血や滲出(しんしゅつ)、血流が不足している部位の白斑(はくはん)、血管から漏れ出た血液成分が網膜内にたまる浮腫などを生じます。特に、網膜の中心部にあって、視力の最も鋭敏な部位である黄斑(おうはん)で出血や浮腫が起こると、早期から視力が低下します。

初期では、目の自覚的な症状はほとんど現れません。急激に血圧が上がって急性症状が現れる悪性高血圧では、網膜の出血や浮腫が急性に起こるために視力が低下することがありますが、高血圧症の大部分を占める原因不明の本態性高血圧では、症状が現れるのはむしろまれです。

しかしながら、軽度の高血圧であっても、長い間治療しないで放置していると、網膜の血管が障害を受けることがあります。例えば、網膜内に血流が途絶えた部位ができると、そこに酸素や栄養を届けようとして、新たな血管である新生血管が伸びてきますが、この血管はもろくて破れやすく、出血が硝子体(しょうしたい)内に広がる硝子体出血に至ったり、出血から網膜剥離(はくり)に至ることがあり、高度の視力障害が残ってしまう可能性が高くなります。

また、高血圧性網膜症が網膜動脈閉塞(へいそく)症や網膜静脈閉塞症、虚血性視神経症などの原因となることがあり、その時にも高度の視力障害が残ってしまう可能性が高くなります。

初期では目に異常を感じることは少ないのですが、眼底検査を行うと、高血圧の程度によって網膜にさまざまな変化がみられます。高血圧症の人は、よく内科の医師によって眼底検査を受けるよう指示されます。人間ドックや成人病検診(生活習慣病予防検診)でも、眼底検査や眼底写真の撮影が行われます。これらは、眼底の血管すなわち網膜血管が直接目で見ることのできる体内唯一の血管系であり、眼底検査の結果が高血圧症などの診断や治療にも広く利用されているためです。

高血圧性網膜症の検査と診断と治療

眼科の医師による高血圧性網膜症の診断は、眼底検査により行われます。高血圧で起こる眼底の異常所見としては、動脈が細く狭くなる、網膜の出血や白斑、網膜や視神経乳頭の浮腫などがあります。

高血圧性網膜症の治療の第一は、全身的な高血圧の治療です。眼科として重要なのは、網膜動脈閉塞症や網膜静脈閉塞症、虚血性視神経症など視力を大きく低下させる疾患の原因となることがあるので、早期に高血圧性網膜症を発見し、内科での血圧のコントロールを患者に勧めることです。

高血圧性網膜症が進行し、網膜に出血、白斑、浮腫が高度に現れた場合や新生血管が生じた場合には、新生血管発生の抑制、硝子体出血の予防などを目的に、レーザー光凝固術による治療を行います。さらに、硝子体出血や網膜剥離が起きてしまった場合には、硝子体手術により硝子体の透明化、網膜の剥離部分の復位を行い、視力の回復を目指します。

しかし、かなりの重症例でも、高血圧性網膜症に対しての眼科的な治療は必要ありません。内科での高血圧の治療が、目の治療になります。網膜血管に動脈硬化がなければ、血圧を下げることで血管の状態は元に戻りますし、出血や滲出も消失します。薬物療法では、アンジオテンシン2受容体拮抗(きっこう)薬やカルシウム拮抗薬など、血管の収縮を抑える薬が主に用いられます。動脈硬化がある場合には、交感神経抑制薬(心臓の収縮機能を抑える薬)で、血管の負担を軽減します。

高血圧性網膜症を進行させないためには、内科での高血圧の治療とともに生活習慣を改善し、定期的な眼底検査などを忘れずに受けることが重要となります。

🇨🇻高血糖

血液に含まれる糖が必要以上に増えすぎた状態

高血糖とは、余った糖が血液中に停滞し、必要以上に糖の量が多くなった状態。

血液に含まれる糖(ブドウ糖)は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。食後、食物に由来するブドウ糖やアミノ酸が体に吸収されると、膵(すい)臓からホルモンのインシュリンが分泌され、その働きにより食物から吸収されて血液に入ったブドウ糖が筋肉組織などへ取り込まれ、血糖値が一定値以上に上昇しないようになっています。

しかし、糖尿病の人では、インシュリン作用の低下のため、この糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れたブドウ糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に糖尿病の薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。

「食べすぎることがよくある」「菓子やジュースがやめられない」「これといった運動はしていない」「最近太り気味」といった項目に思い当たる人は、余った糖が血液中に停滞し、必要以上に糖の濃度が高まった高血糖になっている可能性があります。

遺伝的な素因や心理的ストレスの影響も大きく、さらには、ただ年を取るだけでも、高血糖のリスクは高まります。

健康診断で「血糖値は正常」といわれた人も、安心できません。空腹時の血糖値が高くなってくるよりも前に、食事の後にだけ血糖値が急上昇する食後高血糖を起こしている可能性があるからです。食後高血糖を繰り返すうちに空腹時の血糖値も上がり、ついには糖尿病を発症します。

2016年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる成人と糖尿病の可能性が否定できない予備群とされる成人の合計は約2000万人。成人の4~5人に1人が該当します。その人数は増え続けており、もはや国民病という域に達しています。

高血糖が引き起こすトラブルは、糖尿病だけではありません。血糖値上昇に伴う酸化ストレスや炎症、余った糖と体内の蛋白(たんぱく)質が結び付く糖化、そして高血圧や脂質異常、肥満などの影響が複雑に絡み合い、全身のさまざまな部位に悪影響を及ぼします。

大きな血管では動脈硬化が進行し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のリスクが高まります。空腹時血糖値が正常でも、食後高血糖がある人では死亡リスクが約1・5〜3倍に跳ね上がることが大規模な疫学研究で明らかになっています。

高血糖に引き続いて起こる糖尿病が進行すると、失明の原因となる網膜症や、腎不全に発展して人工透析が必要になることもある腎症といった、生活の質を著しく損なう疾患になることもあり、神経障害により足先が腐って切断を余儀なくされることもあります。

このほか、血液の流れが悪くなり、神経も傷み、免疫力も低下するといったことが連鎖的に起こることで、歯周病や皮膚炎、感染症、勃起不全(ED)と いった疾患にかかりやすくなり、高血糖が認知症や骨の弱化、がんと関連していることも、数々の研究報告から明らかになってきました。

さらに、血糖値が著しく上昇して500mg/dl以上になると、糖尿病性昏睡(こんすい)という状態に陥って意識を失い、命にかかわる危険な状態になる恐れがあります。

糖尿病性昏睡に陥る切っ掛けは、糖尿病の治療を放置した状態にある人に感染が加わったり、ストレスや疲労、暴飲暴食によって血糖値が上昇したり、インシュリンの注射を中止したり、インシュリンの注射の量が適切でなかったりと、いろいろなケースがあります。

病態によって、主に糖尿病性ケトアシドーシス(ケトン性糖尿病性昏睡、ケトン性昏睡)と、高血糖性高浸透圧状態(非ケトン性高浸透圧性昏睡)に分類されます。

糖尿病性ケトアシドーシスは、インシュリンの絶対的不足に伴って細胞内の糖が欠乏し、慌てて脂肪酸からエネルギーを取り出そうとするために、副産物として生じる弱酸性のケトン体が全身性の代謝性ケトアシドーシスを引き起こし、血液が酸性に傾いて起こります。口の渇き、低体温、多尿、脱力感に続いて、腹痛、嘔吐(おうと)が2〜3日あり、次第に意識が消失していきます。統計的には、1型糖尿病(インシュリン依存型糖尿病)の患者に多くみられます。

一方、高血糖性高浸透圧状態は、高血糖に脱水が加わって起こります。尿中の糖が多くなると、糖の濃度を薄める方向に血液中から水が流れ込みます。その結果として、細胞内脱水が起こります。 意識障害が主症状で、高齢者はそもそも脱水状態になりやすいので、この病態にもなりやすい傾向があります。統計的には、高齢の2型糖尿病(インシュリン非依存型糖尿病)の患者に多くみられます。

上記2つの高血糖による意識障害のほか、糖尿病患者は治療薬の副作用によって低血糖による意識障害や、乳酸アシドーシスを示す場合もあります。

糖尿病性昏睡は早く治療を開始しないと死亡するため、糖尿病の悪化症状がある時は、すぐに医師に連絡をとる必要があります。

内科、内分泌代謝内科などの医師による高血糖の治療では、原因となる基礎疾患を除去することが必要になります。例えば糖尿病が原因であれば、糖尿病の治療ということになります。糖尿病性昏睡は多くの場合、血液中の糖分を低下させるホルモンのインシュリンを静脈に注射し、血糖値を下げることによって治療が可能です。

🇦🇴膠原病

膠原(こうげん)病とは、全身の細胞と細胞を結び付けている結合組織に、炎症による病変が現れる病気の総称。免疫の働きに異常が生じて、血管や皮膚、筋肉、関節、内臓など、体のさまざまな場所に同時に炎症を起こします。発熱や湿疹、関節の痛みなどの症状が、共通して見られます。

全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎などの病気が、膠原病に含まれています。厚生労働省では、治療に公費負担のある特定疾患、いわゆる難病に、その多くを指定しています。

日本の最新医療技術をもってしても完治はせず、改善したり悪化したりを繰り返して、長期の治療を必要としますので、早期の診断と治療開始が大切。ステロイドや消炎剤などを使用することで、炎症が抑制され、日常生活に支障のない程度にコントロールすることは可能です。 ステロイドだけでは制御できない症状には、漢方薬などの治療法も試みられています。

なお、全身のコラーゲン(膠)に変性が見られる一連の疾患群の総称として、1942年に膠原病という名称が定義され、後に、コラーゲンの変性が病態の本質ではないことが明らかになって、「結合組織病」とも呼ばれるようになりました。

🇦🇴厚硬爪

爪の甲が異常に厚くなり、硬くなった状態

厚硬爪(こうこうそう)とは、爪(つめ)の甲が異常に厚くなり、硬くなった状態。厚硬爪甲とも呼ばれます。

多くは、爪の先端の皮膚の隆起を伴っており、爪の甲が前に伸びていきません。主に足の親指(第1指)の爪に症状が現れ、厚く、硬くなった爪の伸びる方向は上方から真上へ向かい、高度になると爪の先端が後方へ向かうこともあります。

爪の色は混濁して、灰色から茶褐色に変色し、爪の表面もでこぼこになり、光沢がなくなります。

一度、痛みを感じるほどに厚硬爪の症状が悪化すると、歩いた時の足を後ろにけり出す力により、厚く、硬くなった爪が皮膚に食い込んだり、靴先にぶつかったりして、痛みは余計に増していきます。

加齢とともに生じる場合が多く、高齢者に多くみられます。年齢を増すごとに、栄養が足の爪までゆき届かずに、靴や靴下などによる摩擦からも爪の水分や油分が奪われて、爪の甲が厚く、硬くなります。

また、靴による慢性的な足先への圧迫が原因で、生じることもあります。小さい靴を無理に履いたり、ハイヒールをいつも履いていたりすると、爪の先端の軟らかい皮膚の部分が歩いた時に地面から受ける圧力によって隆起するために、足の親指の爪が正常に伸びることができずに変形し、厚硬爪となります。

外傷、血行障害が原因で、生じることもあります。極めて少ないものの、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症を始めとする内分泌系の疾患や、下肢の静脈瘤(りゅう)性症候群、血管閉塞(へいそく)、末梢(まっしょう)神経障害が原因で起きることもあります。

厚硬爪を治療せずに放置すると、爪甲鉤弯(こうわん)症といって、金具の鉤(かぎ)や鳥のくちばし、羊の角のように、爪が分厚く変形して、弓なりに曲がったり、後ろを向く症状が現れることがあります。

爪甲鉤弯症になると、普通の爪切りでは切れなくなって爪が長くなり、靴を履くことができなくなります。時々、変形した部位が痛むこともあります。

厚硬爪は、いくつかの疾患が合わさって生じていることや、爪の水虫といわれる爪白癬(はくせん)により悪化していることもあるので、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

厚硬爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、まず爪の水虫といわれる爪白癬の検査をするのが一般的です。爪に白癬菌などが認められなければ、爪の形状から厚硬爪と確定することになります。甲状腺機能低下症など原因となり得る疾患を確認することもあります。

皮膚科の医師による治療では、厚く、硬く変形した爪を専用の爪切りで処置したり、爪やすりでできるだけ薄くなるように削ります。

日常生活に支障を来すような場合や、爪が下の皮膚から浮いている場合には、外科的に爪をすべて取り除くこともあります。変形した爪が、血管や神経にダメージを与える可能性もあるからです。爪を切除することで、痛みを緩和することにもつながります。

爪を取り去った後、アクリル樹脂製の人工爪を取り付けることもあります。この方法は、治療直後から痛みが軽減し靴を履いて帰宅できますし、入浴も可能です。また、人工爪が外れても繰り返し取り付けることができます。

足の親指の先端の皮膚の隆起が硬くなっている場合、爪の伸びを妨害する骨や皮膚の盛り上がりを外科的に取り除くこともあります。爪の甲の前方だけを外科的に取り除き、その爪床部を開けて骨を削り、人工爪を取り付けることもあります。

甲状腺機能低下症などの疾患が原因になっている場合は、その疾患の治療がそのまま厚硬爪の治療になります。

予防法としては、足先への圧迫、血行障害も厚硬爪の原因となりますので、足指を圧迫することがないようサイズの合った靴を履くことが大切です。複数の靴を毎日履き替え、爪が当たる位置を変えてみたり、靴ひもをしっかり結んで爪が当たらないようにするのも一案です。

🇳🇦後骨間神経まひ

前腕の2つ骨の間をつなぐ骨間膜を走る後骨間神経が圧迫され、引き起こされる神経まひ

後骨間(こうこつかん)神経まひとは、前腕の親指側にある橈骨(とうこつ)と小指側にある尺骨(しゃくこつ)、この2つの細長い骨の間をつなぐ骨間膜の前後を走る後骨間神経が圧迫され、引き起こされる神経まひ。回外筋症候群とも呼ばれます。

運動神経である後骨間神経は、鎖骨の下から手首、手指まで走る知覚神経である橈骨神経から、肘(ひじ)の辺りで分岐して、手の甲を顔に向ける回外筋の浅層と深層の間に潜り込み、指を伸ばすいくつかの筋肉を支配しています。

後骨間神経が肘の下で、回外筋の浅層で形成されたフローゼのアーケードと呼ばれる骨間膜の部位を通る際に、何らかの原因で圧迫(絞扼〔こうやく〕)されると、後骨間神経まひが引き起こされます。

上腕骨や上腕骨顆上(かじょう)の骨折などの外傷が原因で引き起こされるものの、一般には使いすぎが原因で引き起こされるため、手や腕を内側に回す回内、外側に回す回外を多く繰り返す、指揮者やギター奏者、あるいはテニスやバドミントンなどのスポーツ選手に起こることがあります。

発症すると、肘周辺や前腕部が痛み、肘が伸ばしにくい日が続きますが、3~7日で痛みは消えます。その後、まひが生じて、下垂指(ドロップフィンガー)になります。

下垂指になると、手首の関節の背屈は可能なものの、手指の付け根の関節の背屈が不可能になり、指のみが下がった状態になります。重度の場合は、手指を付け根から全く伸ばせなくなり、親指を広げられなくなります。まひの状態が長く続くと、筋肉の委縮が起こり、腕の筋肉がやせ細ってきます。

後骨間神経は運動神経であるため、手の甲から前腕の皮膚を触った感覚には異常はありませんが、まれに知覚異常を認めることもあります。

後骨間神経まひに気付いた場合には、整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。

後骨間神経まひの検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、下垂指と皮膚の感覚障害のないことで判断します。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)、超音波(エコー)検査などを必要に応じて行います。

後骨間神経まひの初期では、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)との鑑別が大切となります。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものに対しては、局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具、運動療法などの保存療法を行います。薬剤内服では、 ビタミンB12 、消炎鎮痛剤などを服用することが有用です。

ほとんどは保存療法で回復しますが、数パーセントは回復しないこともあります。中にはフローゼのアーケードの部位の前後で後骨間神経の砂時計様のくびれが存在することもありますので、3~6カ月ほど様子をみて全く回復しないもの、まひが進行するもの、骨折などの外傷で手術が必要なもの、腫瘤(しゅりゅう)のあるものでは、手術を行います。

神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術を行います。神経の手術で回復の望みの少ないものでは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術を行います。

🇳🇦虹彩炎(虹彩毛様体炎)

瞳孔を囲む茶褐色の膜である虹彩に、炎症が起こる眼疾

虹彩(こうさい)炎とは、瞳孔(どうこう)を取り囲む茶褐色の膜である虹彩に、炎症が起こる疾患。正面からドーナツ状にみえる虹彩は、目に入る光の量を調節しています。

虹彩炎の多くは、隣接する毛様体といわれる組織の炎症を合併するため、虹彩毛様体炎とも呼ばれます。

サルコイドーシス、ベーチェット病、ぶどう膜炎の一つの型である原田病、リウマチなどの全身疾患の一症状として出現する場合のほかに、外傷、局所的な感染症も原因となります。原因不明の場合も数多くあります。

症状としては、目に強い痛みがあり、光が当たるとまぶしく、茶褐色の虹彩の周囲の白い部分に充血がみられます。視力が低下したり、目がかすんだり、涙が出たり、瞳孔が小さくなるなどの症状が起こることもあります。

失明することはまれですが、白内障や緑内障を合併して重大な視力障害が起こることもあります。逆に、白内障や緑内障による視力低下や視野欠損で、眼痛や充血などの自覚症状がない虹彩炎が見付かることもあります。

虹彩炎の検査と診断と治療

虹彩炎(虹彩毛様体炎)の症状があれば、すぐに眼科医を受診します。経過が長引くと、白内障や緑内障が起きたり、脈絡膜、硝子体(しょうしたい)、まれに視神経、網膜にまで変化が及ぶので、注意します。

医師は細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査を行い、前房内に炎症細胞が認められることにより診断します。重症な虹彩炎では、前房内にフィブリンが認められたり、水晶体と虹彩の癒着を認めることがあります。フィブリンとは、血液の凝固にかかわる蛋白(たんぱく)質で、長時間血管に存在すると血流障害を起こします。

眼圧や眼底の異常の有無の確認も、検査で行います。

虹彩炎(虹彩毛様体炎)の治療としては、まず第一に、瞳孔を大きく開かせる散瞳という処置を行います。散瞳には、硫酸アトロピンやトロピカミドなどの点服薬を用います。この処置を怠ると、瞳孔が水晶体に癒着した状態になり、これに白内障や緑内障を合併すれば、視力障害の最大の原因にもなります。

もう一つの治療は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)や非ステロイド系の消炎剤の点眼や内服で、一時的に炎症を鎮めることが可能。これを早期より積極的に行えば、自然治癒と相まって、白内障、続発性緑内障などの後遺症を残さずにすみます。

そのほか、炎症の強さや原因によって、全身の治療が必要な場合がありますし、サルコイドーシス、リウマチなどの原因疾患の治療も大事です。

🇿🇦好酸球性胃腸炎

胃腸の壁に血液中の好酸球が浸潤して慢性炎症を引き起こし、胃腸の正常な機能が障害される疾患

好酸球性胃腸炎とは、血液中の好酸球の消化管壁への浸潤を特徴とする炎症性消化器疾患。好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、アレルギーや寄生虫感染の時に重要な働きをする細胞です。

詳しい原因は不明ですが、胃や腸に入ってきた飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、胃壁や腸壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって胃や腸の正常な機能が障害されます。

病変は胃、十二指腸、小腸などに好発し、食道や大腸にも病変を認める場合もあります。

好酸球性胃腸炎にはかなり長い潜行期間があると見なされ、顕性化すると発熱、全身倦怠(けんたい)感、疲れやすさを覚え、少量の食物で上腹部の膨満感と停滞感を来して十分に食事が取れなくなります。

下痢、腹痛、胸痛、嘔吐(おうと)がみられ、胃や小腸から出血するようになり、特に胃の前庭部と十二指腸の上部に、びらん、むくみ、発赤、潰瘍(かいよう)、出血が現れます。

炎症が胃や腸の粘膜に及ぶと、腹水が生じることがあります。病変の広がりと程度によって、軽度から重度の飲食物の消化障害、栄養物の吸収障害と蛋白(たんぱく)質喪失胃腸症を来し、次第に鉄欠乏性貧血と低蛋白血症が目立つようになります。

小腸の病変が強いと、繊維性狭窄(きょうさく)のために腸の内容物である飲食物や消化液の通過障害が起こる腸閉塞(へいそく)となることもあります。

なお、好酸球性胃腸炎の発症者は、喘息(ぜんそく)などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

まれな疾患ですが、小児から高齢者までのあらゆる年齢層に生じ、20歳代から50歳代の年齢層に好発しています。

下痢、腹痛が繰り返しみられ、胃薬の効果がない時には、好酸球性胃腸炎を疑い、消化器科、消化器内科、内科を受診することが勧められます。

好酸球性胃腸炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科の医師による診断では、胃や十二指腸などの粘膜組織を採取して調べる生検を行って好酸球の浸潤の存在を認め、腹水中の多数の好酸球の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増多、喘息などのアレルギー疾患の病歴、内視鏡検査によるびらん、むくみ、発赤の存在、腹部超音波検査またはCT検査による胃や腸壁の肥厚の存在も確認します。

鑑別する疾患としては、硬性がん、メネトリエ病、胃の平滑筋腫(しゅ)または平滑筋肉腫、悪性リンパ腫、多発性内分泌腺(せん)腫、好酸球性肉芽腫などがあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による治療では、消化管の安静や保存的治療を行います。

消化管の安静としては、牛乳、卵、肉、魚などの食事性アレルギーの原因になりやすい食物を除いた除外食を摂取し、糖質を主にした輸液を中心にします。

保存的治療としては、早期に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)のプレドニゾロンを1日30〜40mg 程度で使用します。効果のあるケースでは、1週間も使用すれば症状は改善するので、それから徐々に減量し、4週程度で終了するのが一般的です。胃腸症状は急速に軽症化し、腹水は消失、末梢血液中の好酸球はほとんど認められなくなります。

同時に、胃酸の分泌を促す物質の働きを抑える作用や止血作用のあるシメチジン製剤と、胃酸を中和する制酸剤を併用することもあります。制酸剤はシメチジン製剤の効果を増強するとともに、粘膜保護の役割を果たします。

消化管の狭窄、閉塞が起こっている場合は、外科手術を行うこともあります。

🇿🇦好酸球性筋膜炎

腕や脚の皮膚に痛みを伴う炎症とはれが起き、皮膚が次第に硬くなっていく疾患

好酸球性筋膜炎とは、腕や脚の皮膚に痛みを伴う炎症とはれが起き、その部位の皮膚が次第に硬くなっていく、まれな疾患。

疾患名のうち好酸球性という部分は、発症初期に好酸球と呼ばれる細胞が血液中に多くみられることに由来します。好酸球は免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、このアレルギー反応による炎症の一因にもなる細胞です。

筋膜炎は、皮膚の下にある丈夫な線維組織で、筋肉を包む筋膜の炎症を意味しています。

好酸球性筋膜炎は主に40~50歳の中年男性に発症し、女性や小児が発症する場合もあります。原因は不明ですが、自己免疫反応により、皮下組織から筋膜に損傷が生じるために引き起こされると推定されます。

通常の初期症状は、皮膚の痛み、炎症、はれであり、とりわけ腕の内側や脚の前面に多くみられます。時には、顔面、胸部、腹部の皮膚が侵されることもあります。

激しい運動を行った後や、外傷を契機として、最初の症状に気付くことがあります。症状は通常、徐々に進行していきます。数週間後には、炎症を起こした皮膚が硬くなり始め、最終的にはオレンジの皮のような感触になります。

皮膚が徐々に硬くなっていくにつれて、腕や脚が動かしにくくなります。やがては、腕や脚の関節の運動制限のために関節拘縮が起こり、動かせなくなってしまうこともあります。

また、筋肉痛や関節痛が起こる場合もあります。まれに、腕が侵された場合には、手根管症候群を発症することもあります。手根管症候群は、手首の手のひら側にある骨と靭帯(じんたい)に囲まれた手根管というトンネルの中で、神経が慢性的な圧迫を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす疾患です。

時には、血液中の赤血球と血小板の数が著しく減少することがあり、疲労を感じやすくなったり、出血が起きやすくなる傾向が現れます。

その好酸球性筋膜炎の症状は一見、皮膚や内臓が硬くなるのを特徴とする膠原(こうげん)病の1つである強皮症(全身性硬化症)と類似しています。しかし、30〜50歳代の女性に多くみられる強皮症と違って、手指の硬化はなく、全身の皮膚が真っ白から青紫色になり、やがて赤くなるレイノー症候群や、内臓の病変も伴いません。

好酸球性筋膜炎の検査と診断と治療

内科、皮膚科、リウマチ科の医師による診断では、圧痛を伴う腕や脚の皮膚の硬化から好酸球性筋膜炎を疑い、血液検査で血液中の好酸球の数の増加、免疫グロブリンの上昇、赤血球沈降速度(ESR)の高進を確認します。

通常、自己抗体である抗核抗体やリウマチ因子は認められません。時に関節痛を伴いますが、明らかな関節炎はX線(レントゲン)検査で認められません。

診断を確定するには、侵された皮膚とその下にある筋膜、筋肉の組織の一部を採取して、顕微鏡で観察する検査である生検を行います。病変部の病理組織では、筋膜周囲のリンパ球、組織球、好酸球の炎症細胞の浸潤があり、筋膜が肥厚して、線維化が見られます。疾患名が示すように好酸球が浸潤するのが特徴的ですが、好酸球の浸潤が認められないケースも30パーセント程度あります。

内科、皮膚科、リウマチ科の医師による治療では、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が有用で、通常、最も標準的なプレドニゾロンを1日20~60mg内服します。自覚症状の改善に伴って減量し、2~4年の維持療法で1日5mg前後の内服の後は、治療の必要がなくなります。

生命予後は良好ですが、治療が遅れると組織の委縮や瘢痕(はんこん)化、関節拘縮が残存することがあります。副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)で、組織の委縮や瘢痕化を回復させることはできません。

一部の発症者者は別の血液疾患を併発することがあるため、血液検査による経過観察が推奨されます。

副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の内服とともに、体の運動機能を保つため理学療法を行いますが、激しい運動は控えます。日常生活の注意としては、安静と運動をバランスよく行い、ストレス、過労を避けるようにします。

🇱🇸好酸球性消化管疾患

血液中の好酸球が消化管の粘膜に浸潤して、種々の症状を来す疾患の総称

好酸球性消化管疾患とは、血液中の好酸球が消化管の粘膜に浸潤して、種々の症状を来す疾患の総称。EGID(Eosinophilic Gastro-Intestinal Disorders)とも呼ばれます。

好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、このアレルギー反応による炎症の一因にもなる細胞です。

この好酸球が引き起こす好酸球性消化管疾患は、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に大きく分けられます。

好酸球性食道炎の患者が2000年以降、欧米諸国で急増し、病態の解析や治療に関する研究が進んだことにより、日本でも好酸球性消化管疾患が注目されるようになりました。

欧米では好酸球性消化管疾患のほとんどが好酸球性食道炎ですが、日本では好酸球性胃腸炎のほうが多く認められています。

好酸球性食道炎は、血液中の好酸球の食道壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。詳しい原因は不明ですが、飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、食道壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって食道の正常な機能が障害されます。

胸痛、胸焼け、食物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害、食物のつかえ感、腹痛などが主な症状です。進行すると、食道粘膜の下層にむくみや繊維化が起こり、食道の狭窄(きょうさく)によって食べ物の通過障害を起こすことがあります。

また、好酸球性食道炎の発症者は、喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

日本では比較的まれですが、近年は男性を中心として患者数が増加しています。発症者の平均年齢は49歳。

胸焼けや食物のつかえ感など好酸球性食道炎と類似した症状を示す疾患に、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる逆流性食道炎があります。医療機関で逆流性食道炎と診断されて、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用しても症状が改善しない患者の一部には、好酸球性食道炎が含まれるとみられています。

好酸球性食道炎を疑い、診断・治療機器の整った大学病院などの内科、気管食道科を受診することも勧められます。

一方、好酸球性胃腸炎は、血液中の好酸球の消化管壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。こちらも詳しい原因は不明ですが、胃や腸に入ってきた飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、胃壁や腸壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって胃や腸の正常な機能が障害されます。

病変は胃、十二指腸、小腸などに好発し、食道や大腸にも病変を認める場合もあります。

好酸球性胃腸炎にはかなり長い潜行期間があると見なされ、顕性化すると発熱、全身倦怠(けんたい)感、疲れやすさを覚え、少量の食物で上腹部の膨満感と停滞感を来して十分に食事が取れなくなります。

下痢、腹痛、胸痛、嘔吐(おうと)がみられ、胃や小腸から出血するようになり、特に胃の前庭部と十二指腸の上部に、びらん、むくみ、発赤、潰瘍(かいよう)、出血が現れます。

炎症が胃や腸の粘膜に及ぶと、腹水が生じることがあります。病変の広がりと程度によって、軽度から重度の飲食物の消化障害、栄養物の吸収障害と蛋白(たんぱく)質喪失胃腸症を来し、次第に鉄欠乏性貧血と低蛋白血症が目立つようになります。

小腸の病変が強いと、繊維性狭窄のために腸の内容物である飲食物や消化液の通過障害が起こる腸閉塞(へいそく)となることもあります。

なお、好酸球性胃腸炎の発症者は、喘息などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

まれな疾患ですが、小児から高齢者までのあらゆる年齢層に生じ、20歳代から50歳代の年齢層に好発しています。

下痢、腹痛が繰り返しみられ、胃薬の効果がない時には、好酸球性胃腸炎を疑い、消化器科、消化器内科、内科を受診することが勧められます。

好酸球性消化管疾患の検査と診断と治療

内科、気管食道科の医師による好酸球性消化管疾患のうちの好酸球性食道炎の診断では、食道粘膜の組織を採取して調べる生検を行って、好酸球の浸潤の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増加、内視鏡検査による食道の壁の肥厚、縦方向のしまや白い斑点(はんてん)、環状狭窄の存在なども確認します。

鑑別する疾患としては、胸焼けや食物のつかえ感などで類似した症状を示す逆流性食道炎が重要です。逆流性食道炎は、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる疾患です。

内科、気管食道科の医師による好酸球性食道炎の治療では、アレルギー反応を起こす原因と考えられる抗原の除去が基本となります。食事療法として、抗原と疑われる食品を検査して特定し、その食品を除いた食事を用いる方法、検査は行わず一般的に抗原となりやすい牛乳、卵、肉、魚などの食品を除いた食事を用いる方法、アミノ酸成分栄養食を用いる方法の3種類があります。

薬物療法として、好酸球による炎症を抑えることを目的に、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の吸入剤が主に用いられます。吸入剤は局所的に作用するため副作用が少なく、気管に吸い込まず、いったん口の中にため、唾液(だえき)と一緒に飲み込みます。重症の人には、ステロイド剤の内服剤を用いることもあります。

また、食道の運動機能が低下して胃酸の逆流症状を併発する場合、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を補助的に使用することもあります。

食事療法、薬物療法で症状が改善しない場合や、食べ物のつかえや嚥下障害が強い場合は、狭くなった食道を広げる外科手術を行うこともあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による好酸球性消化管疾患のうちの好酸球性胃腸炎の診断では、胃や十二指腸などの粘膜組織を採取して調べる生検を行って好酸球の浸潤の存在を認め、腹水中の多数の好酸球の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢血液中の好酸球の増多、内視鏡検査によるびらん、むくみ、発赤の存在、腹部超音波検査またはCT検査による胃や腸壁の肥厚の存在も確認します。

鑑別する疾患としては、硬性がん、メネトリエ病、胃の平滑筋腫(しゅ)または平滑筋肉腫、悪性リンパ腫、多発性内分泌腺(せん)腫、好酸球性肉芽腫などがあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による好酸球性胃腸炎の治療では、消化管の安静や保存的治療を行います。

消化管の安静としては、牛乳、卵、肉、魚などの食事性アレルギーの原因になりやすい食物を除いた除外食を摂取し、糖質を主にした輸液を中心にします。

保存的治療としては、早期に副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)のプレドニゾロンを1日30〜40mg 程度で使用します。効果のあるケースでは、1週間も使用すれば症状は改善するので、それから徐々に減量し、4週程度で終了するのが一般的です。胃腸症状は急速に軽症化し、腹水は消失、末梢血液中の好酸球はほとんど認められなくなります。

同時に、胃酸の分泌を促す物質の働きを抑える作用や止血作用のあるシメチジン製剤と、胃酸を中和する制酸剤を併用することもあります。制酸剤はシメチジン製剤の効果を増強するとともに、粘膜保護の役割を果たします。

消化管の狭窄、閉塞が起こっている場合は、外科手術を行うこともあります。

🇱🇸好酸球性食道炎

食道壁の粘膜に血液中の好酸球が浸潤して慢性炎症を引き起こし、食道の機能が障害される疾患

好酸球性食道炎とは、血液中の好酸球の食道壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、アレルギーや寄生虫感染の時に重要な働きをする細胞です。

詳しい原因は不明ですが、飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、食道壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって食道の正常な機能が障害されます。

胸痛、胸焼け、食物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害、食物のつかえ感、腹痛などが主な症状です。進行すると、食道粘膜の下層にむくみや繊維化が起こり、食道の狭窄(きょうさく)によって食べ物の通過障害を起こすことがあります。

また、好酸球性食道炎の発症者は、喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

欧米を中心にここ20年くらいで知られるようになった疾患であり、日本では比較的まれですが、近年は男性を中心として患者数が増加しています。発症者の平均年齢は49歳。

好酸球性食道炎の検査と診断と治療

内科、気管食道科の医師による診断では、食道粘膜の組織を採取して調べる生検を行って、好酸球の浸潤の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増加、内視鏡検査による食道の壁の肥厚、縦方向のしまや白い斑点(はんてん)、環状狭窄の存在なども確認します。

鑑別する疾患としては、胸焼けや食物のつかえ感などで類似した症状を示す逆流性食道炎が重要です。逆流性食道炎は、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる疾患です。

内科、気管食道科の医師による治療では、アレルギー反応を起こす原因と考えられる抗原の除去が基本となります。食事療法として、抗原と疑われる食品を検査して特定し、その食品を除いた食事を用いる方法、検査は行わず一般的に抗原となりやすい牛乳、卵、肉、魚などの食品を除いた食事を用いる方法、アミノ酸成分栄養食を用いる方法の3種類があります。

薬物療法として、好酸球による炎症を抑えることを目的に、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の吸入剤が主に用いられます。吸入剤は局所的に作用するため副作用が少なく、気管に吸い込まず、いったん口の中にため、唾液(だえき)と一緒に飲み込みます。重症の人には、ステロイド剤の内服剤を用いることもあります。

また、食道の運動機能が低下して胃酸の逆流症状を併発する場合、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を補助的に使用することもあります。

食事療法、薬物療法で症状が改善しない場合や、食べ物のつかえや嚥下障害が強い場合は、狭くなった食道を広げる外科手術を行うこともあります。

🇸🇿好酸球性中耳炎

中耳の粘膜に好酸球が浸潤し、にかわ状の滲出液がたまる中耳炎の一種

好酸球性中耳炎とは、中耳の粘膜から、血液中の白血球の一種である好酸球が浸潤し、にかわ状の粘度の高い滲出(しんしゅつ)液がたまる中耳炎の一つ。

好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、高度の浸潤があると組織障害を引き起こし、気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎などの疾患を引き起こす一因にもなる細胞です。

好酸球性中耳炎は、多くの場合は成人発症型の気管支喘息に合併して発症しますが、好酸球性副鼻腔(ふくびくう)炎から発症する場合もあります。

にかわ状の粘度の高い貯留液が中耳腔にたまることにより、 難聴(伝音難聴)や耳閉感、耳鳴りなどが生じます。特に気管支喘息の発作時に増悪することが多く、発作の軽快とともに耳の症状が治まることもあります。

しかし、音を感じる内耳にも障害を与えることがあり、この場合は耳鳴り、めまいが生じ、治癒不能な難聴(感音難聴)を引き起こすこともたびたびあります 。

細菌感染が合併すると、鼓膜肥厚、鼓膜穿孔(せんこう)、膿性耳漏(のうせいじろう)、肉の塊である肉芽(にくげ)などができることがあります。

40~50歳代での発症が多く、女性にやや多くみられます。好酸球性中耳炎は、進行が速く難治性で、難聴を生じるリスクも高く、発症者の約5割が聴力の低下を来しているといわれます。約8割は両耳に発症し、片側もしくは両側とも聴力を失う可能性もあります。

好酸球性中耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、中耳にたまった貯留液中の好酸球を確認します。

鼓膜の視診と聴力検査を行うこともあります。鼓膜の視診では、耳鏡を使って状況などを観察します。聴力検査では、音を聴神経へ伝える外耳・中耳・鼓膜に障害が生じたために起こる伝音難聴か、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる感音難聴かを調べて、症状の進行状況を把握します。

耳と鼻の間にある細い管の働きを調べる耳管機能検査を行うこともあります。

また、よく似た疾患に好酸球性多発血管炎性肉芽腫(しゅ)や好酸球増多症、ウェゲナー肉芽腫症に伴う中耳炎があり、これらと区別します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、抗菌剤や鼓膜切開など従来の中耳炎に対する治療法の効果が乏しいため、鼓膜換気のためのチューブ留置や中耳の洗浄、中耳内へのステロイド剤の局所投与、ステロイド剤の内服による全身投与などを行います。

ただし、まだ治療法は確立はされていません。ステロイド剤の局所投与や内服などで、一時的には改善しますが、再発を繰り返すケースが多くみられます。

感音難聴が生じた場合も、ステロイド剤の投与を行いますが、必ずしも聴力改善が認められるわけではありません。通常手術は無効ですが、高度の細菌感染を伴う場合には手術を行うこともあります。

また、多くの場合に気管支喘息を伴うため、内科や呼吸器科の医師と連携した治療も行います。

🇸🇿好酸球性肉芽腫

血液を作る骨髄の細胞のうち、組織球と呼ばれる大型の細胞が増殖した疾患

好酸球性肉芽腫(にくげしゅ)とは、血液を作る骨髄の細胞のうち、組織球と呼ばれる大型の細胞が増殖した疾患。骨腫瘍(こつしゅよう)によく似た骨腫瘍類似疾患の1つです。

ほとんどが20歳以下、特に10歳未満の子供にに多くみられ、骨に単発性、時には多発性の骨破壊が起こり、痛みをもって発症します。

原因は不明ですが、組織をとって顕微鏡で見る検査をすると、組織球と呼ばれる細胞や、白血球の一種である好酸球が出現しているのが確認できるので、何らかの関係があるのではないかと考えられています。

成長痛のようにいろいろな部位が痛むのではなく、発症した一定の部位だけが痛みます。よく発症する部位は、ももの太い骨である大腿(だいたい)骨や、腕の上部の骨である上腕骨など、大きくて長い管状の骨である長管骨です。そのほか、鎖骨、骨盤、脊椎(せきつい)などにも発症します。

脊椎に発症した場合は、脊椎がもろくなるために、しばしばつぶれて扁平(へんぺい)になります。これはカルベ扁平椎と呼ばれます。

カルベ扁平椎は1つの脊椎だけに病変がみられ、ほかの脊椎に病変が波及しないこと、骨端(こったん)症のように一定期間の破壊の後に修復し、脊椎の高さも発症前の状態に戻ることが特徴です。

この好酸球性肉芽腫自体は良性なので、経過観察のみで改善消失することが知られ生命の危険はありませんが、他の治療が困難な疾患と区別するため、整形外科、内科、小児科を受診しきちんとした診断をしてもらうことが大切です。

好酸球性肉芽腫の検査と診断と治療

整形外科、内科、小児科の医師による診断では、X線検査を行うと、はっきりとした特徴的な骨破壊の写真像がみられます。

X線写真像が骨の悪性腫瘍や骨髄炎に似ているので、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行い、診断が確定します。顕微鏡で見ると、組織球の周囲には、エオジンという染色液によく染まる赤い細胞質と2つのそろった核が特徴の好酸球が増えています。

整形外科、内科、小児科の医師による治療では、骨折予防の処置を行った上で、X線検査による経過観察を行います。

痛みがよくならず、X線検査でも軽快が認められず、骨折の危険性が高い時には、骨破壊の部分を取り除く掻爬(そうは)手術や、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の使用、あるいは少量の放射線を病変に照射するといった方法が行われます。

好酸球性肉芽腫の予後は良好で、自然消退が期待できます。

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