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2022/08/18

🇫🇲知的障害

出生時や乳幼児期に知的能力が低下した状態

知的障害とは、知的能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態で、発達障害の1つ。かつては、精神薄弱とか精神遅滞という言葉が使われていましたが、日本の法律用語、行政用語では、知的障害という表現で統一されるようになっています。

知的能力とは、実際の日常生活において自分で物事を判断したり、必要に応じて適切な行動を行う能力であるといえます。一般的には、金銭の管理、読み書き、計算など、頭脳を使う知的行動を指します。臨床的には、知能検査、ないし幼児では発達検査を行って、知能指数が70以下の場合には、知的障害としてさまざまな援助の対象とされます。

療育手帳が交付され、各種料金の免除などの特典が与えられ、障害年金や特別障害者手当などの制度も利用できます。

知的能力の低下した状態には、痴呆(ちほう)もあります。こちらは、いったん知的能力が正常に発達した後に、何らかの理由で二次的に低下するもので、老年痴呆はその代表例です。知的障害は痴呆と違って、生まれた時点、あるいは早期の乳幼児期に知的能力の発達そのものがあまり進まない状態です。

知的障害とはどのような障害なのか、日本の法律では定義はされていませんが、厚生労働省の平成17年調査によると、知的障害のある人は54万7000人で、そのうち施設で暮らしている人が12万8000人、地域で暮らしている人は41万9000人です。現在、日本国内で運営されている施設は、3600を数えています。

知的障害を起こす要因は、おおまかに3つに分けて考えられています。

1つは生理的要因で、体には特別の異常が見られませんが、脳の発達障害によって知能が低い水準に偏ったと考えられるものです。生理的要因の知的障害がある親からの遺伝や、知的障害がない親から偶然に、知能指数が低くなる遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因。

知的障害者の大部分はこのタイプで、合併症はないことが多く、健康状態はおおむね良好です。本人、家族などの周囲とも、障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多く見受けられます。

次は病理的要因で、脳に何らかの病気あるいは損傷があって、知能の発達が妨げられるものです。例えば、乳幼児期の脳外傷、髄膜炎や脳炎などの感染症、フェニールケトン尿症などの代謝異常症、ダウン症などの染色体異常などがあり、出産の際の障害も重要なものです。胎児の時期に母親が風疹(ふうしん)、梅毒などに感染することや、有機水銀など体外から入った物質の中毒によるものもあります。

この病理的要因で知的障害を起こす場合、脳性麻痺(まひ)やてんかんなどの脳の障害や、心臓病などの内部障害を合併していることも多く、身体的にも健康ではないことが多くなります。

第3は心理的、社会的要因で、知的発達に著しく不適切な環境に置かれている場合であり、養育者の虐待や会話の不足がその典型例です。リハビリによって知能が回復することが可能。

症状の現れ方については、ダウン症などの 染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。身体発達に異常がない場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多く認められます。

言葉の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。知的能力の遅れだけではなく、社会生活への適応にも難のあることがみえてきます。

読み書き、計算など限定された部分の発達障害や、全体としての発達が水準以下だけれど部分的にずば抜けた能力を発揮する子供は、療育の上では別に考えるのがよいでしょう。

また、かつての日本では知的障害を3段階に分けて、重度知的障害を白痴、中度知的障害を痴愚、軽度知的障害を軽愚と呼んでいましたが、現在では国際疾病分類に合わせて、最重度、重度、中度、軽度の4段階に分けています。

最重度は、知能指数ないし発達指数が20以下。重度は、知能指数ないし発達指数が20~35程度。中度は、知能指数ないし発達指数が35~50程度。軽度は、知能指数ないし発達指数が50~70程度。

知的障害の検査と診断と治療

兄弟姉妹と比べて、あるいは近所の子供と比べて、自分の子供は発達が遅いのではないかという心配があれば、成長障害や身体的な病気の有無も含めて、小児科医、児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師の診察を受ける必要があります。

医師による診断では、面接や診察、質問用紙、知的水準を測る知能検査、ないし幼児では発達検査などを行って、症状を調べます。これらの検査は、発達の遅れている点を明らかにするだけでなく、子供の優れた能力を見いだすことにもなります。

専門医であっても、一度の診察や検査で長期的な発達の予測をすることは困難です。時間を空けて診察し、発達の経過も併せて判断することが必要です。

しかしながら、フェニールケトン尿症や被虐待児など、ごく一部の場合を除けば、知的障害に対する医学的治療はありません。元来が知的機能の遅れであり、その基礎は大脳皮質に存在する神経細胞の働きの弱さにあるため、薬物によって治したり、知能段階を高めることは不可能とされています。

合併する身体の病気が予想される場合には、必要な検査を定期的に行うことがあります。例えば、てんかんの合併が考えられる場合には、脳波検査を行います。もちろん、合併症の症状を改善させる治療も行います。

知的障害に対する医学的治療はないため、治療の目標は一人ひとりの子供に応じた教育と訓練に置かれます。つまり、現在の知能に沿った生活能力を訓練して、その知能段階で生きていける能力を開発することが、目標となります。身体機能訓練、言語訓練、作業療法、心理カウンセリングなどを開始し、現実的で達成可能な目標を定め、教育と訓練を行うことにより、子供の持つ発達の可能性を最大限に発揮させることができます。

心理的な問題、自傷行為などの行動の問題に対しては、カウンセリングや環境の調整を行います。十分に行き届いた指導やサポートのためには、個別や少人数集団における特別な教育環境が必要になります。

長期的には、身の回りのことが一人でできるようになること、将来の職業につながるような技能を身に着け、社会に適応していくことが目標となります。

知的障害の子供の抱える問題点は、年齢や発達段階によって変化します。周囲の人にとって大切なことは、年齢や発達の段階によって直面するハンディキャップを理解し、子供の能力に見合った教育手段を選ぶことです。小児科医などの医師、発達相談、地域の発達支援プログラムなどを利用して、情報を得るとよいでしょう。

ある程度の障害のある子供には、療育手帳を交付してもらい、特別児童扶養手当の受給手続きを取ることも大切です。公的援助の内容と手続きについては、児童相談所に相談してください。

🇫🇲遅発月経

一般的な年齢より遅く、15歳以上18歳未満で初めての月経を迎える状態

遅発(ちぱつ)月経とは、一般的な開始年齢より遅れて、15歳以上18歳未満で初めての月経である初潮を迎える状態。晩発(ばんぱつ)月経とも呼ばれます。

月経は、ホルモン分泌の調整をする脳の視床下部と脳下垂体が卵巣を刺激し、それによって卵巣から分泌される女性ホルモンが子宮に働き掛けて起こる出血です。

女児が初めての月経である初潮を迎える時期にはそれぞれ個人差がありますが、一般的には、12歳が平均的な年齢とされ、14歳までにはほとんどの女児が月経を経験しています。

しかし、遅発月経の場合は、その平均的な年齢よりも遅れて月経が始まることになります。そして、18歳になっても月経が始まらない場合は、原発性無月経と呼ばれます。

15歳以上になっても初潮が起きないという場合は、乳房の発育に加えて恥毛や腋毛(えきもう)の発毛など、ほかの二次性徴も遅いのが普通です。12〜13歳になっても乳房の発育が始まらない、14歳になっても恥毛が発毛しない、そして遅発月経であるという場合は、遅発思春期(思春期遅発症)と呼ばれます。

遅発月経の原因には、さまざまなものが考えられます。体質が関係しているために、明白な原因がなく、ただ初潮が遅れているだけというような場合は、特に大きな問題はないといえるでしょう。

治療が必要になる原因には、視床下部や脳下垂体など中枢性の異常があり、刺激が弱いために卵巣からの女性ホルモンの分泌が年齢に応じて増加しないために、月経が起こりません。

また、生まれ付きの遺伝的なものとして、形態異常や染色体異常があると、月経が起こりません。

このうち形態異常には、膣(ちつ)閉鎖または処女膜閉鎖があります。膣や膣の入り口が閉鎖しているために、実際には月経があるのに、外へ流れ出てこないために、遅発月経と思われているものです。この場合は、脳下垂体や卵巣機能は正常のことが多く、女性ホルモン分泌は正常で二次性徴も認められて乳房などは発達しており、周期的な下腹部痛が繰り返されるのが特徴です。

そのほか、卵巣や子宮が先天的になかったり、発育が不完全の場合には、月経が起こりません。

染色体異常としては、ターナー症候群、精巣性女性化症候群、副腎(ふくじん)性器症候群などがあり、甲状腺(せん)機能低下症など疾患が原因のこともあります。

卵巣形成障害や染色体異常が原因の場合は、乳房の発育、恥毛や腋毛の発毛など、思春期に起こる二次性徴の出現がみられないことが特徴的です。

そのほか、無理なダイエットによるホルモンバランスの乱れ、激しいスポーツによるホルモンバランスの乱れが原因のこともあります。

遅発月経の場合は、結局18歳までに初潮を迎えることがなく、18歳を超えても月経の経験がない原発性無月経へと移行してしまうということが、少なくありません。そのために、遅発月経になる原因は、必然的に原発性無月経の原因と同じになります。

いずれにしても、15歳過ぎても初潮がない場合は、原発性無月経になる可能性がありますから、早めに婦人科、産婦人科、思春期外来を受診することが勧められます。

遅発月経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、思春期外来の医師による診断では、まずは問診によって、無月経や遺伝的疾患の家族歴、内科的疾患の有無、薬剤服用の有無を確認します。また、基礎体温を測り、排卵の有無も確認します。

問診、視診、内診などで、子宮や腟の存在の有無、二次性徴の発現の有無を調べた後、血液検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、腹腔(ふくくう)鏡検査、場合により染色体検査や慢性疾患の検査などを行い、遅発月経の原因を探ります。

婦人科、産婦人科、思春期外来の医師による治療では、原因が体質による単なる遅れだという診断がなされた場合、経過観察のみで特に治療は行いません。

染色体の異常や卵巣の異常が原因の場合は、性ホルモン補充療法により二次性徴の促進と維持を図ります。染色体に異常がない場合は、排卵誘発剤の投与などを行います。

また、膣や処女膜などの閉鎖が原因の場合は、手術療法で閉鎖部の切開を行います。内科的疾患が原因の場合は、その改善を図ります。ダイエットなどが原因の場合は、食生活の見直しやカウンセリングなどを行います。

🇫🇲遅発性尺骨神経まひ

原因となった損傷があってから、かなり遅れて尺骨神経まひを起こす疾患

遅発性尺骨神経まひとは、肘(ちゅう)関節周辺の損傷などの原因となった損傷があってから、かなり遅れて尺骨(しゃくこつ)神経まひを起こす疾患。

骨折、関節炎、先天的奇形、職業上で繰り返す外傷や脱臼(だっきゅう)、腫瘍(しゅよう)などによる肘関節周辺の損傷や変形により、肘(ひじ)の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が、肘の屈曲に際して引き伸ばされたり、圧迫されたり、摩擦されることによって、徐々にまひが起こり、手指のしびれや感覚障害、運動障害、筋力低下を生じます。

も多い原因は骨折で半数以上を占め、しかもその4分の3が上腕骨の骨折、中でも手首を甲側に曲げる筋肉が付いている上腕骨外側上顆(がいそくじょうか)の骨折によることが多く見受けられます。

肘関節周辺の損傷後、遅発性尺骨神経まひを発症するまでの期間は、数カ月後、数年後から数十年後にもおよびます。幼児期、小児期に原因となる損傷を受け、中年期、老年期に至ってようやく発症することも少なからず見受けられます。

腕に走る大きな神経の1つである尺骨神経は、肘の内側にある上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)という骨の出っ張りの後ろを通り、その先にある骨と靭帯(じんたい)などで形成された肘部管という狭いトンネルをくぐって、手に伸びていきます。トンネル内は狭くゆとりがないため、慢性的な引き伸ばしや圧迫などが加わると、容易に尺骨神経まひを生じます。一般に、まひは利き手側に起こり、両手に同時に発症することはめったにありません。

尺骨神経の働きは、手首の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリつける内転、親指以外の4本の指を外に開く外転、4本の指を互いにくっつける内転です。知覚神経は、小指、薬指の小指側半分、手のひらの小指側半分を支配します。

尺骨神経が引き伸ばされたり、圧迫されて遅発性尺骨神経まひを発症すると、ほとんどの場合は最初、小指と薬指の小指側半分のしびれや痛み、感覚障害が起こってきます。また、尺骨神経は手のひら側と甲側の両方を支配しているので、指全体がしびれるのが特徴です。寝て起きた際にしびれていることが、しばしばあります。肘周辺のだるさ、前腕内側の痛みやしびれが出現することもあります。

尺骨神経の障害が進むと、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋が委縮して、やせてきます。特に、手の骨と骨との間の筋肉がやせるので、指を開いたり閉じたりする力が弱くなったり、親指の内転困難によって親指と人指し指で物をつまむ力が弱くなったり、はしが使いづらくなったりなど、細かい動きがうまくできない巧緻(こうち)運動障害が生じます。顔を洗うために手で水をすくったりする動作も、難しくなってきます。

そのほか、重症で慢性の尺骨神経まひでは、手の筋肉が固まって指が曲がったままになる鉤爪(かぎづめ)変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる独特の現象が起こることもあります。

小指や薬指にしびれや痛みがあり、肘の内側にある上腕骨内側上顆の後ろをたたくとしびれや痛みが走ったら、整形外科を受診して下さい。一般に、症状が軽いほど、早い回復が見込めます。手指の筋肉にやせ細りがあれば、急を要します。

遅発性尺骨神経まひの検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、損傷した神経の位置を特定するために、神経伝導試験を行います。親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮や鉤爪変形、両手の親指と人差し指で紙をつまみ、紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支

配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、超音波(エコー)検査などを必要に応じて行います。

変形性頸椎(けいつい)症、前斜角筋症候群などの筋委縮性疾患による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害などとの鑑別が必要で、問診で首の痛みや肩凝りがあるかなどを聞くこともあります。

整形外科の医師による治療は通常、筋肉の硬直を防ぐために理学療法で治療します。超音波治療、電気治療、ストレッチング、アイスマッサージ、アイシングを主に行い、夜間に肘が過度に曲がるのを避けるために添え木で固定したり、肘の負担を避ける肘用のパッドを着用したりします。

肘の圧迫や長時間の肘の屈曲など、明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善と局所の安静で軽快することが多い傾向にあります。ビタミン剤の内服も有効と考えられます。障害を受けている神経の周囲にブロック注射を行うこともあります。

小児期の骨折によって生じ、肘を伸展させると過剰に外側に反る外反肘など、肘関節周辺の骨折や腫瘍などにより肘関節に変形を起こしている場合や、筋委縮を起こしている場合では、手術が必要になります。手術方法には、腫瘍の切除、腱弓(けんきゅう、オズボーンバンド)の切開、内側上顆の切除、神経の前方移行術などがあります。

腱弓の切開は、尺骨神経を圧迫している膜状の組織を切る手術です。ほかの手術に比べて簡単ですが、再発する場合があります。手術後は、1週間ほど肘を固定します。

内側上顆の切除は、肘を曲げた時に内側上額で尺骨神経が引っ張られ、圧迫されないように、内側上顆を切除します。手術後は、1週間程度の肘の固定が必要です。

神経の前方移行術は、尺骨神経を内側上顆の後ろから前側に移す手術です。手術方法には、前側の皮膚の下に神経を移す皮下前方移行術と、指を握る筋肉の下に移す筋層下前方移行術があります。皮下前方移行術では3週間程度、筋層下前方移行術では1カ月程度、それぞれ肘を固定します。

神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

手術後は、神経の回復を促すために、ビタミンB12剤を服用したり、低周波療法などを行うこともあります。回復の早さは、神経の障害の程度によって異なります。

🇼🇸遅発性内リンパ水腫

片方の耳に重度の感音難聴が起こった後、長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を起こす疾患

遅発性内リンパ水腫(すいしゅ)とは、片方の耳に重度の感音難聴が起こった後、数年〜数十年以上の長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を起こし、症状を繰り返す疾患。

原因はよくわかっていませんが、外界の音を感じ取ったり、自らの体の傾きや回転を感知したりする内耳において、その感覚細胞の周りを満たす内リンパ液が過剰に増えることによると考えられています。

先行する重度感音難聴を起こす原因疾患としては、流行性耳下腺(じかせん)炎、外傷、上気道感染、ジフテリア、ウイルス感染、内耳炎、先天性一側聾(いっそくろう)、若年性一側聾などが主なものです。流行性耳下腺炎による片方の耳の重度感音難聴に、遅発性内リンパ水腫が合併して発症する頻度は、15~20パーセントといわれています。

遅発性内リンパ水腫は、先行する重度感音難聴側の耳が原因で起こる同側型と、聞こえのよい側の耳が原因で起こる対側型とに分類されます。まれに、両側型もあります。

同側型の場合は、すでに難聴になっているため、メニエール病によく似た回転性めまい発作の繰り返しが主な症状です。めまいがひどい時には、吐き気、嘔吐(おうと)も伴います。

対側型の場合は、回転性めまい発作の繰り返しと、聞こえのよい側の耳に新たな難聴や耳鳴りが起こります。難聴や耳鳴りも繰り返し、軽くなったり消失したりします。

昔から難聴があってめまいを繰り返すようになったり、聞こえがよいほうの耳の聴力が悪化した場合には、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが重要です。遅発性内リンパ水腫の診断は、専門医でも難しい場合が少なくありません。

遅発性内リンパ水腫の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、聴力検査を行って片耳または両耳に高度難聴ないし全聾を認め、平衡機能検査を行って機能低下を認めることで、遅発性内リンパ水腫と判断します。また、補助検査として内リンパ水腫を調べる検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、同様の病態を示すメニエール病に準じて行います。根本的な治療法は見付かっていないため、回転性めまい発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法が基本になります。

回転性めまい発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、ステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)中心の薬による治療が行われます。

具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢(まっしょう)血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。

背景に自律神経失調やストレスがある場合は、自律神経調節薬や抗不安剤などを用います。

薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われます。

対側型では、聞こえのよい側の耳の聴力変動や、その悪化が問題になり、めまいに加えて日常生活に大きな影響を及ぼすため、予後は決してよいとはいえません。薬で治らない場合には、長期的にみると両耳の高度難聴になることも考えられます。

遅発性内リンパ水腫の確立された予防方法はありませんが、体調やストレスなどが発症の誘因となりやすいため、普段から規則正しい生活をして、ストレスをためないように心掛けることが重要です。

🇼🇸遅発性扁平母斑

思春期前後になってから肩などに生じる褐色調のあざで、発毛を伴うことも

遅発性扁平母斑(へんぺいぼはん)とは、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。 ベッカー母斑とも呼ばれます。

いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平母斑に類似しており、色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、遅発性扁平母斑が生じます。

多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。

女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。

発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。

海水浴や強い日光にさらされた後などに、遅発性扁平母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。

遅発性扁平母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

遅発性扁平母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。

Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースで遅発性扁平母斑(ベッカー母斑)が消失したり軽快します。

有毛性の遅発性扁平母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。

有毛性の遅発性扁平母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。

医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。

レーザー治療が無効で遅発性扁平母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

🇼🇸遅発閉経

一般的な停止年齢より遅れて、55歳以降になって閉経する状態

遅発(ちぱつ)閉経とは、女性が55歳以降になって閉経する状態。晩発(ばんぱつ)閉経とも呼ばれます。

閉経の年齢は個人によって異なりますが、一般的には45~56歳くらい、平均では2012年度で52・2歳、遅い人でも60歳前には閉経に至るといわれています。かつては平均閉経年齢は50歳といわれていましたが、平均寿命や健康寿命が延びているように、平均閉経年齢も延長しています。

そもそも閉経とは、女性が性成熟期の終わりに達し、更年期になって卵巣の活動性が次第に消失し、卵巣における卵胞の消失によって月経が永久に停止することをいい、その時期を閉経期といいます。

女性によっては、一度月経が停止したのに半年後に再開するケースもあるため、無月経になってから1年以上経過したことを目安に閉経と見なされます。

遅発閉経で、55歳以降になって月経が続いているということは、ほかの女性よりも長く女性ホルモンを分泌できる恩恵を受けられるということで、骨粗鬆(こつそしょう)症などになる可能性は低く、一見QOL(生活の質)はよいように思われます。

一方、生殖機能にかかわる女性ホルモンには、乳がんの増殖を促す作用があり、分泌期間が長いと発症しやすくなります。子宮体がんや卵巣がんを発症するリスクも、高まるといわれています。

月経の経血量が多いタイプの女性が、閉経が遅い傾向にあります。特に、子宮の筋肉にできる良性腫瘍(しゅよう)である子宮筋腫(きんしゅ)が原因で経血量が多い女性は、卵巣から出る女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が多い傾向があり、閉経時期が50歳代半ば以降になることもあります。

子宮筋腫があると、それまで月経トラブルがなかった女性でも、更年期に経血量が増えたり、突然大量出血することもあります。

子宮筋腫などで貧血を伴う場合は、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。単なる遅発閉経の場合は、特に治療の必要はないものの、乳がん、子宮体がん、卵巣がんの危険因子として挙げられているので、少なくとも年1回程度の定期検診は欠かさず受けることが勧められます。

遅発閉経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、子宮筋腫が疑われる場合、触診に続いて、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、子宮内部の様子を外から観察し、確定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、単なる遅発閉経の場合、経過を観察します。

子宮筋腫によって貧血がある場合、薬物療法と摘出手術という2つの方法がありますが、根本的な治療は手術になります。

薬物療法は、ホルモン剤によって、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を一時的に停止させる方法です。Gn-RH製剤と呼ばれる薬が使われ、月1回注射を打つ方法、1日に2~3回、鼻に噴霧する方法などがあります。これによって、子宮筋腫の重さを半分から3分の2くらいまで縮小させることができます。

しかしながら、この方法では人工的に閉経したのと同じような状態を作るため、更年期障害が現れ、骨粗鬆症のリスクも高めることになります。Gn-RH製剤を使うのは、半年が限度とされています。その後、半年治療を中断すれば、骨も元に戻り、骨粗鬆症のリスクも低下しますが、子宮筋腫もまた元の大きさ近くに戻りますので、根本的な治療にはなりません。最近は、閉経が間近な女性などに対して、補助的な意味合いで使われることも多いようです。

また、子宮に栄養を供給する子宮動脈を人工的に詰まらせ、子宮筋腫を栄養不足にすることで小さくする、子宮動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。X線でモニターしながら、大腿(だいたい)部の動脈から子宮動脈まで細い管を挿入し、詰め物で血管に栓をします。まだ一般的な治療ではなく、一部の施設で試みられている段階です。

手術で子宮筋腫を摘出する場合は、子宮筋腫のみを摘出して子宮を残す方法と、子宮ごと子宮筋腫を摘出する方法とがあります。どの方法を選ぶかは、筋腫の状態、症状の程度などによって決定されます。

手術の方法も、おなかにメスを入れる開腹手術だけではなく、腟(ちつ)から子宮を取る手術や、腹腔(ふくくう)鏡など内視鏡によって開腹せずに行う手術もあります。

🇳🇨茶あざ

先天的もしくは後天的に、皮膚の表面に生じる褐色調の平らなあざ

茶あざとは、先天的もしくは後天的に、皮膚の表面に生じる褐色調の平らなあざ。

一般的に茶あざと呼ばれているものの大多数は扁平母斑(へんぺいぼはん)ですが、類似するベッカー母斑などもあります。

扁平母斑は、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の皮膚表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざ。ほくろのように、皮膚から盛り上がることはありません。そのために、盛り上がりのないあざという意味で、扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーのような黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざという意味で、カフェオレ班、カフェオレ・スポットとも呼ばれます。

色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、扁平母斑が生じます。大きさや形はさまざまで、類円形から紡錘形、辺縁がギザギザした不正型の小さいあざが多数集まっていたり、面状に分布する比較的均一な大きいあざであったりします。淡褐色から褐色のあざの中に、直径1ミリ程度の小さな黒色から黒褐色の点状色素斑が多数混在することもあります。

ほとんど、生まれ付きに存在するか幼児期に発生しますが、思春期になって発生する場合もあり、遅発性扁平母斑とも呼ばれます。

思春期になって発生する茶あざには、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざであるベッカー母斑もあります。多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。

女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。扁平母斑と同様に、皮膚から盛り上がることはありません。

発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。

先天性扁平母斑、遅発性扁平母斑、ベッカー母斑とも通常、悪性化することはありません。

しかし、生まれた時から丸い扁平母斑が6個以上ある場合には、神経線維腫(しゅ)症1型(レックリングハウゼン病)の主症状のこともあります。神経、目、骨など皮膚以外の場所にも症状が出てくる可能性がある症候群で、早めに総合病院の皮膚科を受診したほうがよいでしょう。

扁平母斑、ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。顔や腕など、肌の露出部にあって気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

茶あざの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)が疑われる場合は、神経線維腫や聴神経腫瘍、骨格異常の有無など検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による扁平母斑の治療では、病変が浅いので、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、母斑が消失したり軽快します。

医療レーザー治療の長所は治療を行った部位に傷跡ができにくいことですが、すべての扁平母斑に有効ではありません。思春期になって発生する遅発性扁平母斑では、多くのケースで効果を認めます。

先天性の扁平母斑では、思春期以降に色調が強くなって認識したケースでレーザーが効くのはまれで、レーザーを照射してしばらくは消えていたものが、次第に再発する場合もしばしばあります。再発の程度は、テスト治療で推測できます。

しかし、先天性の扁平母斑でも乳幼児期からレーザー治療を行うと、再発が少なく効果を認めることが多くなります。そのため、有効率を高めるために、皮膚が薄い0歳児からレーザー治療を行う医療機関が増えてきました。

レーザー治療が無効で扁平母斑がすぐに再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術が行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

ベッカー母斑の治療でも、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。

有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。

有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。

医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。

レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合にも、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削術、植皮術などが行われます。

🇬🇫中咽頭がん

口を開ければ見える扁桃や、その周辺に発生する咽頭がん

中咽頭(ちゅういんとう)がんとは、口を開ければ見える扁桃(へんとう)や、その周辺の舌の付け根などに発生するするがん。ほとんどは、中咽頭の表面を覆っている薄く平らな形をした偏平上皮細胞から発生します。

鼻や口の奥にある部分を咽頭といいます。咽頭は全長約13センチの中空の管で、鼻の後方から始まって、気管、食道の入り口まで連続しています。咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に分類されていて、中咽頭とは口の後方に位置する咽頭の中間部分のことをいいます。

空気や食べ物が気管や食道に送られる際には、この中咽頭の中を通過していきます。中咽頭には、これら呼吸作用、嚥下(えんげ、えんか)作用のほかに、言葉を作る構音作用があります。

中咽頭がんは、頭頸(けい)部がんの約10パーセントにすぎません。その頭頸部がんの発生頻度は少なく、がん全体の約5パーセントと見なされています。日本では年間1000〜2000人程度に、中咽頭がんが発生していると推定されています。男性が女性よりも3〜5倍多く発症し、好発年齢は50〜60歳代。

中咽頭がんは、咽頭粘膜の偏平上皮細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。近年、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいるものの、なぜ細胞が無秩序に増える悪性の細胞に変わるのか、まだ十分わかっていません。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら、ほかの臓器に広がり、多くの場合腫瘤(しゅりゅう)を形成します。ほかの臓器にがんが広がることを転移と呼びます。

中咽頭がんの原因として最も因果関係がはっきりしているのは、喫煙習慣と過度の飲酒です。従って、長期の飲酒歴、喫煙歴のある人は注意を要します。

その初期には、自覚症状がほとんどありません。進行すると、扁桃部のはれ、咽頭の異物感、咽頭痛、嚥下痛などの症状で気付きます。さらに、発声障害、出血、呼吸困難、嚥下障害などの深刻な症状が出現してきます。首のリンパ節への転位も比較的多く出現し、のどの症状より先に首のしこりに気付くこともあります。

しかし、がんのできる部位や大きさにより症状が出にくい場合もあり、症状がないからといって安心はできません。 偏平上皮細胞から発生するがんのほか、まれには唾液分泌腺(せん)などの腺組織から生じる腺がん、およびそれに類するがんも発生します。また、この部位には悪性リンパ腫がしばしばみられるが、中咽頭がんとは別に取り扱われます。

中咽頭がんの検査と診断と治療

医師による診断では、内視鏡検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、最終的には組織片を調べて確定します。

初期のがんでは、放射線治療で十分に治る可能性があります。進行したがんでは、手術が必要になります。

両側の首にリンパ節転移がある場合や、片側でも多数のリンパ節がはれている場合には、肺転移が多いために、手術や放射線治療の前後に抗がん剤による治療が行われます。抗がん剤による治療はある程度の効果は得られるものの、単独でがんを根治するだけの力はないので、現在のところ手術や放射線治療に比べると補助的な治療と位置づけられています。

近年では、放射線治療と抗がん剤の同時併用療法が注目されています。

🇬🇫肘関節脱臼

肘の関節が外れ、肘関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失った状態

肘関節脱臼(ちゅうかんせつだっきゅう)とは、外力が働くことによって、肘(ひじ)の関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失った状態。いわゆる肘の関節が外れた状態のことです。

肘関節の脱臼は、人体に起こる脱臼の中では、肩関節の脱臼に次いで多く起こっています。

肘関節は、上腕骨と、2本の前腕骨である橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃくこつ)とで形成される関節で、上腕骨の内側の滑車という部分と、尺骨の肘頭や滑車切痕(せっこん)というくぼんだ部分とが強く絡み合って、肘の曲げ伸ばしの運動を行っています。

この肘関節全体は、関節包という靱帯(じんたい)状の線維で覆われており、さらにその上に内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側側副(がいそくそくふく)靱帯、そして橈骨輪状靱帯などが補強しています。

これらの軟部組織が骨を支える力が弱いために、転倒などに際して外力が働くことによって、肘関節の脱臼が起こりやすくなっています。特に、骨自体がまだしっかりしていない子供に多くみられます。

脱臼した後、前腕骨の肘に近いほうの端が前方(内側)に動いているか、後方(外側)に動いているかによって、前方脱臼、後方脱臼に分類されます。より多く起こっているのは肘関節後方脱臼で、肘関節の後方(外側)のほうが前方(内側)よりも、肘を曲げ伸ばしする時の力に対する抵抗力が強く、通常やや反り返る程度まで伸展できることがあだとなっています。

肘関節後方脱臼は、肘を伸ばした状態で手を突いて転倒し、さらに前腕が外側にねじられるような形になった際に、肘が過伸展されることにより、骨が関節包を突き破って起こります。

転倒によるほか、柔道やレスリングなどの格闘技において、手を突いた際や、腕の固め技である腕ひしぎ十字固め、アームロックを受けた際、あるいは交通事故などによる外傷でも、後方脱臼は起こります。

肘関節後方脱臼が起こると、ほとんどの場合、痛みが生じるとともに肘の曲げ伸ばしができなくなります。外見上も肘の変形が明らかで、脱臼した直後には、骨が関節包を突き破って後方(外側)に飛び出している部分がはっきりとわかりますが、はれが次第に大きくなるので、飛び出している部分がわかりにくくなります。

場合によっては、尺骨神経まひを合併することもあります。血管損傷を合併することはめったにありませんが、すぐに整復しないとフォルクマン拘縮を起こすことがあります。骨折の合併がある場合は、尺骨の鉤状(こうじょう)突起、橈骨頭部分の骨折を起こしやすく、たまに上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)、外側上顆(がいそくじょうか)なども骨折することがあります。

一方、肘関節前方脱臼は極めてまれに起こり、例えば自動車の運転中に肘を曲げた状態で窓にかけていて、外の物に肘をぶつけた際に、起こります。多くの場合は、尺骨の肘頭骨折も合併します。

肘関節前方脱臼を起こすと、前腕骨の肘に近いほうの端が前方(内側)に動いて、肘を触った時に尺骨の肘頭ではなく上腕骨の先端が飛び出していることがわかります。

転倒や事故による受傷後、肘関節の明らかな変形が認められる場合は、骨折も疑い、アイシングと固定を行い,速やかに整形外科を受診することが勧められます。

肘関節脱臼の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、受傷時の状況と、肘の症状から、肘関節脱臼を疑います。脱臼と骨折の判別のために、異なった2方向から撮影するX線(レントゲン)検査を行うこともあります。

必要に応じて、他のX線撮影や関節造影検査(アルトログラフィー)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査を追加し、関節包や靱帯、筋肉、骨軟部組織の損傷程度を調べることもあります。

整形外科の医師による治療では、まず、脱臼した骨を素手で元の位置に戻す徒手整復を試みます。

肘関節後方脱臼の場合、肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引(けんいん)すると、通常は簡単に整復されます。その後、肘関節の安定性をチェックし安定している場合は、肘関節を曲げた状態でギプス固定をします。通常、1~3週間程度で完治します。

整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯損傷などが疑われます。このような場合、少し長めに2〜3週間程度のギプス固定を行うことで回復することもありますが、手術で靭帯の縫合が必要なこともあります。

手術には、関節鏡視下手術と通常の直視下手術があります。関節鏡視下手術のほうが体に負担がかからず、手術後の痛みが少ないために普及してきています。いずれの手術でも、はがれたり切れたりした靱帯や関節包などの軟部組織を元の位置に縫い付ける方法や、骨や腱で補強する方法などがあります。

肘関節前方脱臼の場合、腕を長軸方向に牽引し、前腕骨の肘に近いほうの端を後方へ押して整復します。その後、尺骨の肘頭骨折を合併しているケースでは、動揺関節や可動域制限などの後遺症を残すこともあるため、手術を行います。

2022/08/17

🇬🇫虫刺症(虫刺され)

虫に皮膚を刺されてできる傷

虫刺(ちゅうし)症とは、虫に皮膚を刺された時にできる傷であり、外傷の一つ。虫刺されとも呼ばれます。

傷は、ハチ、蚊、ノミ、ダニ、ブヨ、アリなどに刺されて、皮膚に注入される虫の唾液腺(だえきせん)物質に対するアレルギー反応です。主に腕や足の外側に多く、引っかき壊して水膨れを作ったり、皮膚がむけたり、出血したり、かさぶたとなります。幼児が主で、春夏に著しく、秋冬にはよくなるのが普通です。

同じ虫刺症といっても、人間を刺す虫の種類は多く、その毒性の強弱、あるいは刺された人の毒物に対する反応の差により、症状が異なります。

◆ハチ◆

一般的には、ハチに刺された場合は、その強い毒性のために、刺された部位が強い痛みとかゆみとともに、大きく赤く膨れ上がり、治るのに数日かかります。特に、ハチの毒液の成分に対し、アレルギーを持っている人は、反応が強いと、血圧低下、呼吸困難などのショック症状を起こすこともあります。反応が異常に強い時は、ショック死することもあります。

しかし、ショックを起こすのはハチだけではなく、蚊でも、その毒液の成分にアレルギーのある人は、ショックを起こすことがありますので、注意が必要です。

◆蚊◆

蚊による虫刺症は、一番ポピュラーなもの。普通は刺されたところが、銅貨大くらいまでに赤くはれ、強いかゆみがありますが、数時間以内に治まります。ただ反応の強い人では、水膨れになったり、数カ月間に渡って硬いしこりが残って、かゆみの非常に強い固定じんましんといわれる皮膚病になることがあります。

国内ではあまりないものの、海外では蚊に刺されてマラリア病やフィラリア症に感染することがありますので、海外旅行をする時は注意が必要です。

◆ノミ◆

ノミもまた、刺す虫の代表的なもの。最近は衛生設備の整備により、人ノミはあまり都会ではみられなくなり、現在よくみられるのは、犬、猫につく犬ノミ、猫ノミの虫刺症です。

このノミは元来、人につくことはないのですが、たまたま地面や畳などに落ちていると、人の足について刺したりします。かゆみの強い、赤いボツボツと水膨れができます。

◆ダニ◆

ダニは非常に種類の多い昆虫ですが、虫刺症と一番関係が深いのは家ダニです。家ダニはネズミに寄生していて、ネズミがいなくなると人を刺します。

最近は家屋が密閉されたために、昔ほどネズミはみられなくなり、家ダニの被害も減っているものの、食品を扱っている店などでは、ネズミも多く、そのネズミの移動によって被害に遭うことがあります。

野鳥に寄生しているトリサシダニ類は、鳥が巣を捨てると人を刺します。畳やカーペットの下に巣くうコナダニ類では、ツメダニが人を刺すことがあります。

これらの非常に小さくて、肉眼ではなかなか見付けにくいダニ類は、皮膚の軟らかいところを好んで刺しますので、軟らかい部分に赤いボツボツがあれば、ダニの虫刺症も考えられます。

山や草原を歩いている時に、体長1~2センチのマダニに刺されることがあります。激しい痛みと赤いはれを起こします。しかも、虫体が皮膚の中に深く食い込んでいて、一度刺されるとなかなか引き離すことができません。手術的に周囲の皮膚と一緒に虫を切り取るか、1~2週間放置して、虫が満腹になり、自然に離れるのを待つしか手はないようです。

日本海側の河川領域のネズミに寄生するダニ類のアカツツガムシ、全国の山林にいるネズミに寄生するフトゲツツガムシ、タテツツガムシによる虫刺症により、ツツガムシ病を起こすこともあります。発病すると、高熱とリンパ腺のはれと同時に、全身に淡紅色から淡紫紅色の大小の紅斑(こうはん)が生じます。刺された部位の中央に、かさぶたのついた大豆(だいず)より大きな潰瘍(かいよう)を持つしこりができるのが、ツツガムシ病の特徴です。

◆南京虫◆

南京虫(トコジラミ)は、家屋の透き間や、織物、紙の間などに潜んでいて、夜間に活動して人を刺します。刺されると、強いかゆみと痛みがあり、やや大きな赤いしこりがたくさんできます。

都会では、南京虫による虫刺症はあまりみることがなくなっているものの、織物や紙を扱う職業の人は刺されることが多いようです。また、家具について移動するため、新築の家でも油断することはできません。

虫刺症の検査と診断と治療

虫刺症(虫刺され)の治療には、抗ヒスタミン剤含有軟こうを塗布します。炎症症状の強い時は、短期間のステロイド外用剤の塗布が有効です。特に、テープ状のものを発疹(はっしん)の大きさに切って張り付けるのが、効果的です。

しかし、慢性の硬い結節ではなかなか治りません。これにはステロイドの注射薬を少量ずつ、一つ一つの結節に直接注射する方法もあります。引っかくのが疾患を悪化させ、長引かせるもとですから、かゆみ止めの飲み薬も必要な場合があります。

ハチの場合は、刺された直後には、毒を中和する意味でアンモニア水の塗布が有効です。刺されて時間がたち、赤く膨れ上がっている時には、ステロイド外用剤の塗布、あるいは短期間のステロイド剤の内服を行います。

虫刺症の予防法は、虫に刺されないように注意すればすむことです。蚊に刺されそうな場所に出掛ける時には、市販されている虫よけの外用剤を使います。

家庭における予防法としては、生活環境からのノミ、ダニなどの駆虫が第一で、まず家の大掃除をして、畳、カーペットは直接日に干し、さらに駆虫剤を散布します。部屋は風通しをよくして、湿気を払います。飼っている犬、猫の虫退治、家の中や周囲にいるネズミの退治、鳥の巣の取り除きも行います。

かいてあまり傷にならないように、週2回はつめを切る、寝る時に手袋をするなどの工夫も必要です。

🇻🇺中耳炎

耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に炎症

中耳炎とは、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に起こる炎症。急性中耳炎と慢性中耳炎とに分けられます。

急性中耳炎は、ウイルスや細菌の感染によって起こります。成人より小児に多い疾患で、風邪やアレルギーが誘因となります。

耳と鼻の奥をつなぐ耳管から、鼻やのどの連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿(かのう)菌が中耳腔(くう)に入って炎症が起こると、耳が痛み、耳の詰まった感じ、耳鳴り、難聴に加え、発熱、全身倦怠(けんたい)、頭痛が起こり、鼓膜が赤くはれます。やがて、鼓膜が破れて耳垂れが出る場合もありますが、そのころになると痛みも和らぎます。

急性中耳炎がひどくなって乳様突起にまで炎症が及んだ場合には、耳の後ろがはれて、触る激しく痛み、熱も高く、頭痛など全身症状が悪化します。これを乳様突起炎といいます。近年では、抗生物質などの進歩で乳様突起炎のケースは少なくなりました

鼻を強くかまない、安静にする、入浴を控えるなどを心掛ければ、急性中耳炎のほとんどは、一週間くらいで治ります。急性中耳炎のうちによく治療し、耳垂れを主症状とする慢性中耳炎にならないように、心掛けたいものです。

慢性中耳炎は、耳垂れ、すなわち耳漏が主症状で、同じ中耳の炎症でも、耳痛、耳鳴り、発熱を伴う急性中耳炎とは、かなり様子が違っています。

慢性中耳炎の多くは、小児期からの持ち越しです。この慢性中耳炎には、2つの型があります。1つは、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿菌の感染による慢性化膿性中耳炎。もう1つは、鼓膜に穴が開く穿孔(せんこう)から、回りの上皮が中耳に入り込んで、上皮の剝脱(はくだつ)角化物がたまり、腫瘍(しゅよう)のようにみえる真珠腫性中耳炎。

症状としては、鼓膜に穿孔があり、持続的に耳垂れが出ます。真珠腫性では、耳垂れに悪臭があります。耳垂れの刺激で外耳道炎を起こしやすく、多くは難聴を伴います。経過中にめまいを起こせば、内耳炎の併発が疑われ、発熱や激しい頭痛があれば、脳合併症の疑いもあります。急いで、専門医に診てもらいます。

中耳炎の検査と診断と治療

急性中耳炎では、鼓膜を検査し、その色、はれ具合から簡単に診断がつきます。外耳道炎を併発し、外耳道がはれて見えにくい時は、診断がやや難しいことがあります。

急性中耳炎の治療に当たる多くの医師は、全例にアモキシシリンなどの抗生物質による治療を行っています。自然に治癒するか、悪化するかどうかを予測するのが、難しいためです。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげます。フェニレフリンが入ったうっ血除去薬も、効果があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギーによる中耳炎の場合は有効ですが、風邪による中耳炎には効果はありません。

痛みや熱が激しかったり、長引く場合、また鼓膜のはれがみられる場合には、鼓膜切開を行って、耳垂れを中耳腔から排出します。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。中耳炎を繰り返し起こす場合は、鼓膜を切開して、耳だれを排出する鼓膜チューブを設置する必要があります。

慢性中耳炎の診断は、比較的簡単で、鼓膜の穿孔、耳垂れの有無が目標になります。耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

治療では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。

急性中耳炎のうちによく治療し、慢性中耳炎にならないように心掛けたいものです。

🇻🇺中手骨頸部骨折

拳を握った状態での殴打により、自らの中手骨の頸部が折れる外傷

中手骨頸部(ちゅうしゅこつけいぶ)骨折とは、ボクシングや空手などのスポーツで、拳(こぶし)を握った状態で相手や物を殴打することによって、自らの手のひらの骨である中手骨の頸部が折れる外傷。ボクサー骨折とも呼ばれます。

パンチ力の強いボクシング選手が、対戦相手の頭を強く殴打し、拳を握った状態でできる平らな面で、親指以外の4本指の第2、第3関節の間の部分、いわゆるナックルパートで正確に当たっていない場合に、よく発生します。

実際には、ボクシングでの発生は意外に少なく、一般の人がけんか相手やゲームセンターのパンチングマシーンを殴打して発生するケースがほとんどを占めます。また、乗り物のハンドルを握ったまま正面から交通事故に遭うなどしたケースでも、衝撃による外力が手指の付け根にある中手指節関節(MP関節)から中手骨の長軸に向かうことで発生します。

ボクシング選手では人差し指や中指の中手骨に、一般の人では薬指や小指の中手骨に発生することが多く、外傷の衝撃後に激痛、特定部位の圧痛、手の甲や時に指先までのはれ、変形、手や手指の機能不全、運動障害などが急激に現れます。

とりわけ、中手骨頸部の骨頭が手のひら側に曲がる屈曲変形を来すため、拳がつぶれた状態になります。後遺症として、指の動きが悪くなる、握ると指が重なる、指の力が弱くなるなどが現れることもあります。

ボクサー骨折が発生した際は、応急処置として患部を氷などで冷やしてはれを抑え、患部を固定し、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。

患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指の中手骨を骨折した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。

中手骨頸部骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、手指の付け根の中手指節関節(MP関節)にあって、手を握ると本来は盛り上がる拳がへこんでいて、痛みやはれを認めることで、中手骨頸部骨折と判断します。

X線(レントゲン)検査を行うと、中手骨頸部に骨折線を確認でき、特に側面から見た画像で骨折の屈曲変形が明らかに認められます。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、屈曲変形を手で整復した上で、スプリント材で手全体にスプリント固定を施し、三角巾などを使って吊(つ)り包帯での挙上を行います。

屈曲変形の整復状態を保存療法で保持するのが困難な場合は、ピンなどを用いて中手骨頸部を固定する手術的処置を行います。腱の損傷を合併した場合も、手術的処置を行います。

予防法としては、ボクシングでは正確にナックルパートで当たるように打つこと、厚めのグローブを使用することなどです。

🇻🇺中手骨骨幹部骨折

手の甲の部分に5本存在する中手骨の中央部に生じる骨折

中手骨(ちゅうしゅこつ)骨幹部骨折とは、手の甲の部分に5本存在する中手骨の中央部に生じる骨折。

手は人間が生活する上で最も使用する頻度の高い体の一部であり、けがをしやすい部位です。親指側の第1中手骨から小指側の第5中手骨まで、手の甲に5本存在する中手骨も、けがをしやすい部位で、骨折も日常でよく発生します。

中手骨の骨折は折れる部位によって、指の関節に近いほうから頸部(けいぶ)骨折、骨幹部骨折、基底部骨折に分類されていますが、このうち骨幹部骨折は物が手の甲に当たるなど、強い力が直接骨に加わったり、手をひねる力が加わったりして発生します。

強い力が直接骨に加わると横骨折、手をひねる力が加わると斜骨折を発生し、ともに手の甲が著しくはれ、痛みのために指を動かしにくくなります。

また、横骨折の場合は、指の骨にまたがる骨間筋の収縮作用によって、骨折部の背側がくの字に屈曲変形します。

斜骨折の場合は、骨折による骨のねじれが生じ、指を曲げた時に隣の指と重なる現象、すなわち指交差あるいは回旋変形が現れます。この変形は、指を真っすぐに伸ばした状態ではわかりにくいことが特徴です。骨が短くなる短縮変形もよく発生します。

中手骨骨幹部骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、症状から中手骨骨幹部骨折と判断し、X線(レントゲン)検査を行って確認します。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、まずは、手で徒手整復して骨を元の位置に戻すことを試みます。

次に、ギプスや添え木(シーネ)による固定を行います、骨折を固定しつつ指を積極的に動かすギプス療法や、ガルベストン中手骨装具などによる装具療法を行うこともあります。

固定には4〜6週間程度を要しますが、期間は年齢、骨折の性質、部位、固定法によって異なり、変形、短縮した場合は再骨折が起きやすいため、より期間を要します。

ギプスなどでは治すことのできない骨折の場合は、手術でネジ(スクリュー)、プレート、鋼線などいろいろな金属固定材料を用いて骨折部を固定します。その後、ギプス固定などを施し、骨折が治癒した後に固定具のネジ、プレート、鋼線を除去します。

骨折による骨のねじれが生じている場合は、手術で骨切りを行って矯正することもあります。

🇼🇸中手骨骨折

手の甲の部分に5本存在する中手骨に生じる骨折

中手骨(ちゅうしゅこつ)骨折とは、手の甲の部分に5本存在する中手骨に生じる骨折。

手は人間が生活する上で最も使用する頻度の高い体の一部であり、けがをしやすい部位です。親指側の第1中手骨から小指側の第5中手骨まで、手の甲に5本存在する中手骨も、けがをしやすい部位で、骨折も日常でよく発生します。

中手骨の骨折は折れる部位によって、指の関節に近いほうから中手骨頸部(けいぶ)骨折、中手骨骨幹部骨折、第1中手骨基底部骨折などに分類されています。

中手骨頸部骨折は、拳を握った状態での殴打により、自らの中手骨の頸部が折れる外傷

中手骨頸部骨折は、ボクシングや空手などのスポーツで、拳(こぶし)を握った状態で相手や物を殴打することによって、自らの手の甲の骨である中手骨の頸部が折れる外傷。ボクサー骨折とも呼ばれます。

パンチ力の強いボクシング選手が、対戦相手の頭を強く殴打し、拳を握った状態でできる平らな面で、親指(母指)以外の4本指の第2、第3関節の間の部分、いわゆるナックルパートで正確に当たっていない場合に、よく発生します。

実際には、ボクシングでの発生は意外に少なく、一般の人がけんか相手やゲームセンターのパンチングマシーンを殴打して発生するケースがほとんどを占めます。また、乗り物のハンドルを握ったまま正面から交通事故に遭うなどしたケースでも、衝撃による外力が手指の付け根にある中手指節関節(MP関節)から中手骨の長軸に向かうことで発生します。

ボクシング選手では人差し指や中指の中手骨に、一般の人では薬指や小指の中手骨に発生することが多く、外傷の衝撃後に激痛、特定部位の圧痛、手の甲や時に指先までのはれ、変形、手や手指の機能不全、運動障害などが急激に現れます。

とりわけ、中手骨頸部の骨頭が手のひら側に曲がる屈曲変形を来すため、拳がつぶれた状態になります。後遺症として、指の動きが悪くなる、握ると指が重なる、指の力が弱くなるなどが現れることもあります。

ボクサー骨折が発生した際は、応急処置として患部を氷などで冷やしてはれを抑え、患部を固定し、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。

患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指の中手骨を骨折した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。

中手骨骨幹部骨折は、手の甲の部分に5本存在する中手骨の中央部に生じる骨折

中手骨骨幹部骨折は、手の甲の部分に5本存在する中手骨の中央部に生じる骨折。

この骨幹部骨折は、物が手の甲に当たるなど、強い力が直接骨に加わったり、手をひねる力が加わったりして発生します。

強い力が直接骨に加わると横骨折、手をひねる力が加わると斜骨折を発生し、ともに手の甲が著しくはれ、痛みのために指を動かしにくくなります。

また、横骨折の場合は、指の骨にまたがる骨間筋の収縮作用によって、骨折部の背側がくの字に屈曲変形します。

斜骨折の場合は、骨折による骨のねじれが生じ、指を曲げた時に隣の指と重なる現象、すなわち指交差あるいは回旋変形が現れます。この変形は、指を真っすぐに伸ばした状態ではわかりにくいことが特徴です。骨が短くなる短縮変形もよく発生します。

第1中手骨基底部骨折は、親指の中手骨の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼も生じる外傷

第1中手骨基底部骨折は、親指(母指)の先端部から根元に向かって強い力が加わったことにより、親指の中手骨の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼(だっきゅう)も生じる外傷。ベネット骨折、母指CM関節脱臼骨折とも呼ばれます。

ボクシングやけんかでパンチを出して自らの親指の先端部に衝撃が加わった時や、野球でボールが親指の先端部に当たった時、スキーでストックを握った状態で手を突いた時、自転車やバイクのハンドルを握ったまま転倒して親指の根元を打撲した時などに発生します。

母指CM関節は第1手根中手骨関節とも呼ばれ、親指の手前の甲の骨である第1中手骨と、親指の手根骨で手首にある第1手根骨(大菱形骨〔だいりょうけいこつ〕)の間にある関節で、親指が他の指と向き合って、物をつまんだり、握ったりなどの動作をする上で、大きな働きを担っています。

第1中手骨基底部骨折が発生すると、関節周辺に、はれや痛みが起こり、親指を動かしにくくなります。さらに、第1中手骨の根元に連結する筋肉である長母指外転筋が、親指を手首の方向に引っ張るので、第1中手骨の根元が外側に脱臼してきて、親指が変形してきます。

適切に治療せずにほうっておくと、脱臼を繰り返したり、関節の変形を生じたり、不安定性が残って痛みの原因となることがあります。けがで親指の根元に、はれや痛みが起こったら、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。

中手骨骨折の検査と診断と治療

同じ中手骨骨折でも、中手骨頸部骨折、中手骨骨幹部骨折、第1中手骨基底部骨折では、それぞれ骨折する部位が異なり、治療方法も異なります。

中手骨頸部骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、手指の付け根の中手指節関節(MP関節)にあって、手を握ると本来は盛り上がる拳がへこんでいて、痛みやはれを認めることで、中手骨頸部骨折と判断します。

X線(レントゲン)検査を行うと、中手骨頸部に骨折線を確認でき、特に側面から見た画像で骨折の屈曲変形が明らかに認められます。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、屈曲変形を手で整復した上で、スプリント材で手全体にスプリント固定を施し、三角巾などを使って吊(つ)り包帯での挙上を行います。

屈曲変形の整復状態を保存療法で保持するのが困難な場合は、ピンなどを用いて中手骨頸部を固定する手術的処置を行います。腱の損傷を合併した場合も、手術的処置を行います。

予防法としては、ボクシングでは正確にナックルパートで当たるように打つこと、厚めのグローブを使用することなどです。

中手骨骨幹部骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、症状から中手骨骨幹部骨折と判断し、X線(レントゲン)検査を行って確認します。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、まずは、手で徒手整復して骨を元の位置に戻すことを試みます。

次に、ギプスや添え木(シーネ)による固定を行います、骨折を固定しつつ指を積極的に動かすギプス療法や、ガルベストン中手骨装具などによる装具療法を行うこともあります。

固定には4〜6週間程度を要しますが、期間は年齢、骨折の性質、部位、固定法によって異なり、変形、短縮した場合は再骨折が起きやすいため、より期間を要します。

ギプスなどでは治すことのできない骨折の場合は、手術でネジ(スクリュー)、プレート、鋼線などいろいろな金属固定材料を用いて骨折部を固定します。その後、ギプス固定などを施し、骨折が治癒した後に固定具のネジ、プレート、鋼線を除去します。

骨折による骨のねじれが生じている場合は、手術で骨切りを行って矯正することもあります。

第1中手骨基底部骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、症状から第1中手骨基底部骨折と判断し、X線(レントゲン)検査を行って確認します。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、手で徒手整復して骨を元の位置に戻し、整復した状態が維持できる場合は、親指(母指)と人差し指(示指)を離した格好でギプス固定を施します。ギプス固定期間は、約4~5週間となります。

痛みに対しては、消炎鎮痛剤の内服、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の関節内注射を行います。

整復した状態が維持できず、骨折部がずれたり、関節内の骨片が安定しない場合は、鋼線と呼ばれる金属で骨を固定する手術か、金属のネジ(スクリュー)で骨を固定する手術を行います。その後、ギプス固定を施し、骨折が治癒した後に固定具の鋼線、ネジを除去します。

痛みが強く、脱臼、亜脱臼を伴う高度な関節の変形が見られる場合には、第1手根骨(大菱形骨)の一部を取り除いて関節を作り直す関節形成術、関節を動かないように固定する関節固定術、人工関節を使う人工関節置換術などの手術を行います。

🇹🇴中手骨短縮症

手の甲の部分に5本存在する中手骨が先天的に短縮する疾患

中手骨(ちゅうしゅこつ)短縮症とは、手の甲の部分に5本存在する中手骨が先天的に短縮する疾患。短指症、指短縮症の一種です。

先天的に短縮する骨は手の甲の部分の中にあって外観ではわからない中手骨ですが、実際には手指が短縮して、引っ込んでいるように見えます。

出生直後から短縮が明らかな場合と、10歳前後で短縮が明らかになる場合があります。乳幼児期には明らかでなく、10歳前後で短縮が明らかになるのは、中手骨の末端部分の骨端線の早期閉鎖が原因となり、成長するに従って中手骨に生じる発育障害が顕著となるためです。

両側の手の手指に生じることがあり、また、1つの手指のみならず複数の手指に生じることもあります。

短縮した手指では、手を握った際に本来は盛り上がる拳(こぶし)、つまり、手指の付け根にある中手指節関節(MP関節)の突出が認められません。こうした変形で、手の握り動作や、手指のつまみ動作といった機能面に支障が出ることもあります。

中手骨短縮症は、露出部である手指に症状が現れるため、外見上の問題で発症者を悩ませる深刻な疾患といえます。ついつい人目が気になり行動が消極的になってしまい、有意義な日常生活を送ることに支障を来すという場合は、整形外科、形成外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。

中手骨短縮症の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による診断では、視診により手指の短縮が明らかで、容易に判断できます。

X線(レントゲン)検査を行うと、短縮した手指に相当する中手骨が短縮していること、それによって手指の付け根に位置する中手指節関節(MP関節)がほかの手指に比べて近位に位置していることを認めます。

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による治療では、発症者や家族の希望、学業や仕事の都合を参考にして手術時期を決定し、中手骨を延長する手術を行うことが第1選択となります。

実際に手術している時期は、小学校高学年から中学生以降がほとんどです。早い時期に手術を行った場合、まだ手が小さいため高度な手術操作が要求される一方、骨の再生のスピードが速いという利点があります。逆に、骨の成長が終了した成人で手術を行った場合、手が大きく手術は比較的容易である一方、骨の再生のスピードがやや緩慢で治療期間が長くなりがちという問題が生じます。

中手骨を延長する手術には、骨移植法(一期的延長法)と骨延長法(仮骨延長法)の2つがあります。

骨移植法は、短縮した中手骨を骨切りし、一期的に骨切り部を延長した後に開いた透き間に、腰の部分などから取った骨を移植する方法です。一期的に延長するため、神経血管障害が生じる恐れがあるので、延長可能な距離が10ミリまでと制限されます。

骨延長法は、5〜6センチ程度の長さの創外固定器というものを用いて、短縮した中手骨をゆっくりと延長させてゆく方法です。骨本来の再生機能を利用して、骨切り部をゆっくりと延長させてゆくことによって、延長された透き間に少しずつ新たな骨(仮骨)が形成されてゆきます。骨移植法と比較すると、創外固定器の装着期間がやや長い面はありますが、別の部分から骨を取る必要がないという長所のため、近年では広く選択されるようになっています。

🇹🇴中心性網膜症

網膜の中心部に水がたまって浮腫になる疾患で、働き盛りの男性に好発

中心性網膜症とは、網膜の中心部にある黄斑(おうはん)に水がたまって、浮腫(ふしゅ)になる疾患。正式には、中心性漿液(しょうえき)性網脈絡膜症といいます。

目の網膜は外から入ってきた光が像を結ぶところで、特に黄斑部は物を見る上で最も大切なところです。この網膜の外側に、栄養分を供給する血管の豊富な脈絡膜と呼ばれる組織があり、通常は網膜色素上皮層と呼ばれる層が脈絡膜からの水漏れを防いでいます。この網膜色素上皮層の機能が何らかの原因で弱まることがあると、脈絡膜の血管から血液中の水分が染み出て、網膜下にたまることで浮腫が生じます。網膜が浮き上がった状態になり、このような状態を限局性の網膜剥離(はくり)といいます。

正確な原因はよくわかっていませんが、どんな人に起こりやすいかはわかっています。30~50歳代の働き盛りの男性で、正視ないし軽い屈折異常の人、要するに眼のいい人に起こりやすいことが知られています。忙しい人や忙しい時に起こる傾向がみられるため、ストレスが誘因になるともいわれています。それ以外には、妊娠時に起きることもあり、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の副作用で起きることもあります。

両方の目に同時に発症することはまれで、通常は片方の目に発症します。主な自覚症状は、物を見ようとすると中心部が暗く、または白くかすんで見えにくい、ゆがんで見える、視力が低下する、物が小さく見えるなどの症状が出ます。治った後も、何となく見えにくいという症状がしばらく続くことが多いようです。治癒と再発を繰り返したり、何年かして再発することも珍しくありません。

中心性網膜症の症状に気付いたら、とりあえずは眼科を受診して下さい。本当に中心性網膜症であるなら、ほとんどは良好な経過をたどり自然に治ることが多いものの、新生血管黄斑症などより性質の悪い疾患で似たような症状が出るものもあるので、きちんと診断を受ける必要があります。

中心性網膜症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、眼底検査で黄斑部に限局性の網膜剥離が見付かったら中心性網膜症を疑います。血管からのしみ出しの部分を見付け、新生血管黄斑症と区別するためには、フルオレセインという造影剤を用いた蛍光眼底造影検査を行います。この中心性網膜症が高齢者に起こり、加齢黄斑変性という疾患と区別する必要がある際には、インドシアニングリーンという別の造影剤を使った蛍光眼底造影検査も行います。

また、OCT(光干渉断層計)という近赤外線を利用した機器で眼底の検査を行えば、網膜の断面の観察ができ、網膜疾患、特に黄斑部病変の精密な診断が早期かつ正確に行うことができるようになっています。

中心性網膜症は、元来そんなに性質が悪いわけではなく、大抵は2~3カ月で自然に治る傾向があります。そのため、しばらくの間は経過観察をするのが、眼科の医師による治療の基本です。消炎薬、循環改善薬、ビタミン剤などの内服で黄斑部のはれをとる治療が行い、経過観察をすることもあります。

内服治療で症状がなかなか改善されない場合や、早く治したいという場合には、レーザー網膜光凝固術を行い、網膜色素上皮層の弱まっている部分をレーザーで焼いて補強します。しかし、水漏れの部分が黄斑の中心である中心窩(か)に近すぎるとレーザー光凝固はできません。

🇹🇴中心性網膜脈絡症

網膜中心部の黄斑がむくんだり、はれたりする眼疾

中心性網膜脈絡症とは、網膜の中心部の最も対象物が見える黄斑(おうはん)に、円形のむくみ、はれが生じる疾患。

黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに異常が発生すると、視力の低下がさらに深刻になります。

この黄斑に円形のむくみ、はれが生じる中心性網膜脈絡症は、網膜とその外側の脈絡膜との間に位置し、水分を通さない膜である色素上皮細胞層に小さな裂け目ができ、ここを通って脈絡膜からの水分が網膜の下にたまることで、発症します。

30歳代、40歳代の目をよく使う男性に多くみられ、片目に多く起こります。その大部分は、過労、睡眠不足、情緒不安などの後に発症するのが特徴。

症状が現れた目だけで対象物を見ると、真ん中が丸く黒い影になって見えなくなったり、小さく見えたり、あるいは大きく見えたり、ゆがんで見えたり、ぼけて見えたりします。

この中心性網膜脈絡症で失明したりすることはありませんが、再発しやすく、むくみ、はれのひいた後も、網膜にシワができて物が多少ゆがんで見えることがあります。

中心性網膜脈絡症の検査と診断と治療

まず、心身の過労を避け、睡眠を十分にとり、規則正しい生活をすることが必要です。生活の摂生を守らないと、症状が悪化したり、治癒が遅れたりします。再発しやすい疾患なので、眼科の専門医を受診します。

医師による検査としては、眼底検査、蛍光眼底検査などが行われます。眼底検査は、眼底にある網膜の状態を詳しく調べるために行われます。検査の前に目薬をさして、瞳孔(どうこう)を開きます。まぶしくて近くが見えない状態が約3時間続きますが、自然に元に戻ります。

蛍光眼底検査は、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底写真を撮ります。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになりますから、水分が漏れている色素上皮細胞層の裂け目から蛍光色素が漏れてくるのがわかります。

そのほか、主として脈絡膜の血液循環を調べるための特殊な造影検査もあります。

医師による薬物療法としては、消炎剤、血液循環ホルモン、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)や、栄養剤などの内服、または注射があります。

むくみ、はれが強い場合や、再発を繰り返す場合には、蛍光眼底検査で見付けた水漏れ部分に、光凝固療法を行います。この治療は、水漏れ部分にレーザー光線を当てて病変部を固め、水漏れの広がりを止めるものです。一般的に3週間程度で、むくみ、はれがひきます。しかし、光凝固療法も、検査の結果水漏れ部分が黄斑部の中心窩に近い場合には、行うことができないこともあります。

完治するには、数カ月から1年程度かかりますので、日常生活は規則正しく無理をしないようにします。また、定期的に眼底検査を受けるようにします。

🇫🇯虫垂炎

盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、腹部の痛みを感じる疾患

虫垂炎とは、盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、上腹部の鈍痛、右下腹部の激痛を感じる疾患。俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれています。

盲腸は大腸の始まりの部分で、先端から少し上に小腸が大腸につながる回盲部があり、小腸で消化された便が回盲弁から大腸に入り、上行結腸に向かって移動します。虫垂は盲腸の先端に突起している部分で、直径1cm以下、長さ5~10cm程度のミミズのような細い管状のものです。

虫垂炎は俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれていますが、盲腸炎は実際のところ、虫垂炎の炎症が盲腸にまで及んだもののことをいいます。従って、正しくは虫垂炎と盲腸炎とは異なるものの、虫垂炎がひどくなってから発見された場合は、症状が進んで盲腸炎になっている可能性は十分にあります。

虫垂炎の根本的な原因は、現在も不明とされています。一般的に有力視されているのは、暴飲暴食、胃腸炎、便秘、過労などによって、虫垂内部のリンパ組織が増殖したり、体内で作られた糞石(ふんせき)といわれる結石が虫垂にたまったりすると、虫垂の中が狭くなって血行障害を引き起こし、そこに細菌やウイルスが感染することで炎症を起こすという説です。家族内の体質が誘因となると考えられていますが、まだ確実なことはわかっていません。

炎症を起こすと突発的に腹痛が起こるのが特徴で、最初は上腹部の不快感や鈍痛を感じ、その後に右下腹部の激痛を感じ、その場所が限定されてきます。へそから右の腰骨までの線上の外側3分の1の部分を押すと痛みを覚え、この痛みが限定された部分を圧痛点と呼びます。圧痛点には、マックバーネー圧痛点、ランツ圧痛点、キュンメル圧痛点があります。

そのほか、発熱、食欲減退、吐き気、便秘、嘔吐(おうと)などがみられ、歩いたり飛んだりすると右下腹のつれるような痛みが走ります。症状が悪化すると、虫垂に穴が開いて、うみが横隔膜や骨盤内にでき、全身にも高熱が生じて脈が速まり、血圧も低下してショック状態となります。最悪の場合は、死亡することがあります。

消化管の外科的な疾患としては最も多いものの一つで、10~20歳代の青少年期に多く、全体的には約5パーセントの人がかかると推定されます。

虫垂炎の検査と診断と治療

腹部が痛むなど異変を感じた場合は、早めに医療機関を受診するようにします。虫垂炎の専門科は、消化器科か外科。初期症状だけでよくわからないという場合は、とりあえず内科、子供であれば小児科を受診してもよいでしょう。発症後放置して、治療が遅れてしまうと、虫垂の穿孔(せんこう)や腸管の癒着、腹膜炎を併発する可能性があります。

医師の側では、まず症状、病歴、生活習慣などについて問診し、腹部を触診して痛みの場所を明らかにし、腹膜炎の併発がないかを調べます。腹膜炎がある場合の特徴は、患部を押さえた手を離すと痛みが響いたり、触っただけでおなかが硬くなったりします。

ほかに発熱の確認と、血液検査で白血球数や血清アミラーゼが高値であることを確認をします。炎症が進行したものでは、腹部超音波検査や腹部CT検査で虫垂の形態的な変化を確認するほか、糞石がないか、腹水がたまっていないか、卵巣嚢腫(のうしゅ)などがないかを確認することがあります。

初期で軽度の場合には、抗生物質の投与などの内科的治療も行われますが、虫垂炎は再発の可能性が高いため、ほとんどは外科的手術により、虫垂の摘出を行います。従来は右下腹部を数cmに渡って切開する開腹手術をしていましたが、近年では腹腔(ふくくう)鏡で手術をすることも可能になっています。

腹腔鏡での手術は、傷が極めて小さく、退院までの日数も短縮できます。しかし、炎症の激しい虫垂炎や過去に腹部の手術を受けたことがある人には向いていません。疾患の状態によって、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらを選択するかが決まってきます。

手術後の食事は、炎症の程度によって異なります。炎症が軽症の場合は、術後翌日から水分を取り、おならが出れば流動食の食事を開始します。炎症が重症の場合でも、術後2~4日程度で食事を開始することができます。

虫垂の穿孔が起こり、 炎症が注意の周囲の臓器や周囲に及び、腹膜炎を起こしている場合には、おなかを大きく切開する開腹手術が必要で、治療にも長い期間が必要になります。虫垂周辺の膿汁(のうじゅう)や腹水を取り除き、おなかの中を十分洗浄して、腹腔内の浸出液を体外に誘導し排出するための管を入れて起きます。管を入れる時は、傷口を縫い合わせず、開いたままで治します。管をいつ抜き取るかは、状態によって異なりますが、通常開いた傷が治癒するまで2~3週間を要します。 

🇲🇭中枢神経系原発リンパ腫

中枢神経系の脳、脊髄、髄膜や眼球の中に悪性リンパ腫ができる疾患

中枢神経系原発リンパ腫(しゅ)とは、中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜、眼球などの中に悪性リンパ腫ができる疾患。

リンパ腫は、リンパ系に悪性腫瘍、すなわちがんが発生する疾患です。リンパ系は免疫系の一部で、リンパ液、リンパ管、リンパ節、脾臓(ひぞう)、胸腺(きょうせん)、扁桃(へんとう)、骨髄から構成されています。このリンパ系は、蛋白(たんぱく)質を豊富に含むリンパ液の流れを体に循環させ、バクテリア、ウイルス、老廃物などを集めます。これらをリンパ管を通して、リンパ節に運び、リンパ節の中のリンパ球という感染と戦う細胞でろ過して取り除きます。リンパ液は静脈の毛細血管に吸収され、老廃物などは最終的には体から排出されます。

リンパ球の集団の一部の細胞が悪性化し、それが中枢神経系の内部でリンパ腫を引き起こすものと考えられています。しかし、リンパ節のような組織の存在しない中枢神経系や眼球内に、悪性リンパ腫が発生する原因は、わかっていません。

中枢神経系原発リンパ腫は、脳、脊髄、髄膜のいずれかより発生します。また、その位置が脳に非常に近いことから、眼球からも中枢神経系原発リンパ腫が発生することがあり、これは眼内リンパ腫と呼ばれます。

この中枢神経系原発リンパ腫にかかる危険因子としては、膠原(こうげん)病、免疫不全疾患、臓器移植、加齢などによる免疫不全、ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルス感染などがあります。

脳に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち脳リンパ腫が前頭葉、後頭葉、脳深部、脳幹などに生じると、脳腫瘍によって、頭蓋(とうがい)内の圧力が高まるために起こる頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの症状が起こります。

脳腫瘍ができた部位によっても症状が異なり、前頭葉に腫瘍があると知能低下(認知症)や失語症、性格変化、尿失禁など、後頭葉に腫瘍があると視野障害など、脳幹に腫瘍があると運動まひ、眼球運動障害などが生じます。

数日から何週間単位で進行する亜急性を示すものが多く、一度症状が出たら悪化するのは早いと考えなければなりません。

眼球内に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち眼内リンパ腫が生じると、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血など自覚症状が起こります。

眼内リンパ腫が生じた場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。

脊髄に中枢神経系原発リンパ腫が生じると、首や背中や下肢の痛み、骨格筋が委縮して筋力が低下するミオパチー、膀胱(ぼうこう)直腸障害などが起こります。

中枢神経系原発リンパ腫の検査と診断と治療

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腫瘍を形成する白っぽい病変として描出され、造影剤を用いると多くの場合、はっきりわかります。

腫瘍を形成する病変は、前頭葉、側頭葉、小脳、脳深部に多く認められ、脳の中に2個以上のリンパ腫が同時にできる多発例もしばしば認められます。

脳にだけリンパ腫ができたのか、脳ではない体のどこかに発生したリンパ腫が脳に転移したのかを区別するのは、困難です。

検査が終わってリンパ腫が疑われた場合は、すぐに定位脳手術という方法で腫瘍の一部分を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。

硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。

硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。

また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の治療では、メトトレキセートという抗がん剤を投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

脳腫瘍ができた部位によりますが、腫瘍の切除手術は行いません。脳リンパ腫の場合、周囲組織との境目が明確でないため完全切除は難しく、大きく切除すると脳機能に多大な影響を与えかねないためです。

残念ながら、いずれの治療法を選択しても再発率や死亡率は高いものです。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。

局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートを眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。

いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。

🇹🇻中枢性思春期早発症

性腺刺激ホルモンの影響を受けて性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴が早く起こる疾患

中枢性思春期早発症とは、下垂体(脳下垂体)から性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンが分泌され、それにより性腺からの女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴の成熟が通常の思春期よりも2〜3年程度早い年齢で起こる疾患。

真性思春期早発症、脳性思春期早発症、ゴナドトロピン依存性思春期早発症とも呼ばれます。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が、思春期の開始です。この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣( 睾丸〔こうがん〕)が4ミリリットル以上の大きさになった時が、思春期の開始です。この精巣の発育が9歳未満で起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

この中枢性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン〔GnRH〕または 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕)の分泌が高進し、これが下垂体からの性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン(黄体形成ホルモン〔LH〕および卵胞刺激ホルモン〔FSH〕)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、二次性徴が早く起こります。

また、中枢性思春期早発症は、胚芽腫(はいがしゅ)・過誤腫・星状細胞腫などの脳腫瘍(しゅよう)や脳炎後遺症、水頭症などによる器質性思春期早発症と、明らかな原因が認められない特発性思春期早発症の2つに大きく分けられます。

女子に起こるものの多くは、原因不明の特発性思春期早発症ですが、男子に起こるものは、脳腫瘍などによる器質性思春期早発症が多くみられます。

女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。女子に男子の約3〜5倍多く、起こります。

原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛、視野狭窄(きょうさく)などが起こることがあります。

未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

中枢性思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性腺刺激ホルモンや性ホルモンの分泌状態、頭部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳腫瘍などの病変の有無、腹部超音波(エコー)検査で副腎や卵巣の腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

ホルモン検査では、性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇が認められるとともに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)負荷試験( 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕テスト)では、性腺刺激ホルモンの思春期レベルの反応が認められます。また、骨年齢が促進し、成長率も高くなります。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、GnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

器質性思春期早発症の場合、脳腫瘍が原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。手術により切除が難しい場合は、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を行います。

しかし、過誤腫が原因であれば、腫瘍そのものによる圧迫症状などがなければ、薬物療法を行います。また、脳炎後遺症、水頭症が原因であれば、薬物療法を行います。

🟧「酒のエナジードリンク割りは危険」、農水省が注意喚起 過去には中毒死も

 酒とエナジードリンクを一緒に飲むとカフェインの過剰摂取による健康被害につながりかねないとして、農林水産省が注意喚起しています。5月8日に問い合わせが相次いだことを受けての対応で、同省は直前に人気ユーチューバーが酒とエナジードリンクを一緒に飲む動画を投稿した影響とみています。 ...