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2022/08/23

🇹🇯滲出性網膜炎

網膜の血管の異常により血液から脂肪物質や水分が漏れ、網膜内や網膜下にたまる疾患

滲出(しんしゅつ)性網膜炎とは、眼球内の網膜の血管に異常が起きて、血液中の脂肪物質や水分が漏れ、網膜の中や網膜の下にたまる疾患。コーツ病とも呼ばれます。

原因は不明ですが、遺伝性要因はないとされ、全身の合併症はみられません。

2歳以降の小児や10歳以下の就学児に発症することが多く、主に男子の片目だけに発症することが多いのも特徴です。ただし、女子の発症や、両眼性の発症、成人になってからの発症がみられることもあります。

網膜の毛細血管が何らかの理由で拡張や蛇行をして、細い動静脈の拡張、毛細血管瘤(りゅう)の形成、血管の閉塞(へいそく)、出血、網膜のはれ、黄白色の滲出斑(はん)がみられます。脂肪物質や水分からなる黄白色の滲出物が網膜の下にたまると、網膜裂孔を伴わない滲出性網膜剥離(はくり)になります。

このような変化は通常、片目の眼底の周辺部から始まり、網膜の中心の黄斑部へとゆっくりと進行し、視力が低下したりや視野が狭くなります。変化が黄斑部に及ぶと、視力は極端に低下します。

さらに重症になると、滲出性網膜剥離が網膜全体に広がります。最終的に、網膜剥離が長引く、あるいは緑内障、硝子体(しょうしたい)出血、白内障を起こすなどの慢性の変化によって光覚を失うだけでなく、眼球が委縮することもあります。

片目が正常なことが多いために、小さな子供では視力の低下に気が付かずに、発見が遅れることがあります。片目の視力低下が長引くと斜視を起こすので、斜視によって疾患に気付くこともあります。

また、網膜剥離のために白色瞳孔(どうこう)となり、瞳孔の中にある白い部分が外から見ても光っていてわかることで、疾患に気付くこともあります。この白色瞳孔は、同じく子供の目の疾患である網膜芽細胞腫(しゅ)でも現れるので、区別をする必要があります。

進行した滲出性網膜炎のケースは治療が難しく、視力の低下が長期間続くと回復は困難。周囲が早めに疾患を見付けることが大切です。

滲出性網膜炎の検査と診断と治療

眼科、あるいは小児眼科の医師による診断では、眼底検査や蛍光眼底検査を行い、眼底の特徴ある黄白色の滲出性変化と網膜血管の異常によって確定します。滲出性網膜剥離のために白色瞳孔がある場合には、CT(コンピュータ断層撮影)、超音波診断、MRI(磁気共鳴映像法)などを行い、網膜芽細胞腫と鑑別します。

眼科、あるいは小児眼科の医師による治療では、初期で滲出斑や滲出性網膜剥離が軽症であれば、レーザー光凝固や冷凍凝固などで異常な血管を凝固して滲出性変化を抑制できる場合があります。あまりに進行してしまうと、レーザー凝固や冷凍凝固は効果がありません。滲出性網膜剥離を起こしている場合は、硝子体手術を行うことがあります。

治療で疾患が落ち着いても、成長とともに再発することがあるため、定期的に眼科などを受診する必要があります。

🇲🇴正常眼圧緑内障

眼圧が正常範囲なのに、緑内障と同じ変化をみせる眼疾

正常眼圧緑内障とは、眼圧が正常範囲にあるにもかかわらず、視神経の委縮や視野の欠損など緑内障と同じ変化を認める疾患。現在の日本で最も多いタイプの緑内障で、約7割を占めるといわれています。

普通の緑内障では、眼圧が10~21mmHgの正常値を超えて視神経を圧迫し、視野が欠損します。正常眼圧緑内障では、無治療時の眼圧が21mmHg以下と正常範囲であるにもかかわらず、普通の緑内障と同様の症状が現れます。

原因はまだよくわかっていませんが、眼底にある視神経乳頭の眼圧に対する耐性が低い、視神経乳頭の血液の流れが悪い、目の循環に障害があるなどの原因が考えられています。近視の強い人や、血縁に緑内障の発症者がいる人はなりやすい、という説もあります。40歳以降に好発します。

目が重い、目が疲れやすい、肩が凝るなどの症状が出ることもありますが、多くはかなり進行するまで無症状です。気が付かないうちに徐々に視神経が侵され、中期〜末期になると視野欠損を自覚します。

>視野の欠損の初めは通常、光の感度が落ちる程度で、いきなり黒い物が出現するわけではありません。また、両目で物を見る場合には脳が不具合を補正する両眼視機能が働くために、たとえ片方の目に視野の欠けがあったとしても消失してしまいます。両眼視機能には視力を向上させる働きもあり、片目だけの時よりも、両目で見ると少し視力が上がるため、片目の視神経の50パーセントを失っても、まだ自覚症状がありません。

初期の視野欠損の段階では、視野の中心部分から欠けていくことは、まずありません。通常、中心の少し上あたりか、鼻側から欠けていき、次に、耳側のほうが欠けていきます。視野の中心部分は、網膜の黄班(おうはん)部や中心窩(か)に映っている映像で、黄斑部や中心窩は視神経の線維が強くできているためです。最終的には、中心部分だけが見えるため、まるで筒からのぞいているような見え方になります。

強度の近視では、初期の段階で視野の中心部分が欠ける中心暗点が出現し、視力が低下することがあり注意が必要です。

正常眼圧緑内障の検査と診断と治療

正常眼圧緑内障は急速に進行することはありませんが、自覚症状が出にくいため、かなり進行してから発見されることもあります。一度、欠損した視野は回復しませんので、検診で早期発見し、根気よく治療を行なうことが大切です。特に、近視の強い人や血縁に緑内障発症者がいる人では、30歳すぎからの検診が勧められています。

医師による診断では、眼圧が正常範囲の緑内障であるため眼圧検査では発見できず、眼底検査と視野検査が発見の決め手となります。原因となるような脳腫瘍(しゅよう)や脳梗塞(こうそく)がないかどうかを調べることもあります。

治療では、ビタミンB12の内服、ないしカルシュウム拮抗(きっこう)剤の内服が行われます。眼圧が正常範囲でも視神経に負担がかかっている場合、あるいは眼圧が正常範囲を超えている場合には、眼圧下降剤の点眼が行われます。視野の欠損が進行した場合には、レーザー治療や手術も行われます。

2022/08/22

🇸🇪雪眼炎(雪目)

スキー場などで紫外線が作用して、目の角膜に生じる炎症

雪眼炎とは、スキー場や雪山などで多量の紫外線を含む太陽光線の反射を受けて、角膜に起こる炎症。雪目、雪盲(ゆきめくら)、光誘発角膜炎とも呼ばれます。

いわば、目の日焼けであり、スキーやスノーボード、雪山登山をする際に、サングラスやゴーグルをかけないで長時間過ごすと、雪面による多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。太陽光線以外に、電気溶接の火花や殺菌灯の光線によっても起こります。

多くは、紫外線に目がさらされて10時間ぐらいして発症します。そのため、スキーなどをしている日中はあまり自覚症状がなく、夜半から真夜中にかけて急に目が痛み出し、目が開けられなくなることもあるので、慌ててしまうケースが多くみられます。

角膜は神経が豊富なため、痛みが非常に強く出るのが特徴ですが、両目のまぶたがはれて、常に涙が流れ出ている状態となり、白目の表面を覆う結膜は充血します。角膜の表面には細かい多数の傷がつき、全体に薄く白濁が起こることもあります。

キラキラと目を開けていられないような好天気の日に、一日中ゲレンデや雪山にいても雪眼炎にならない人がいる一方で、どんよりと曇った日に数時間スキーやスノーボードをしただけで雪眼炎になる人もいます。一般的に、若い人のほうが雪眼炎になりにくく、年齢が上がってくると目が紫外線に弱くなる傾向があります。

雪眼炎の検査と診断と治療

雪眼炎(雪目)になった際には、アスピリンやセデスなどの鎮痛剤を内服し、なるべく目を閉じた状態を保ち、冷やしたタオルを目に当てて休みます。涙は出るほうがよいので、目を水で洗わないようにします。通常、痛みは次第に和らぎますが、翌日も強い痛みが続く時には、眼科で適切な治療を受けます。

医師による検査では、特殊な染色液で染めると角膜表面は点状に染まります。治療では、ヒアルロン酸の入った角膜を保護する目薬を主に使います。そのほか、抗生剤の目薬や眼軟こうも併用します。黒目の表面は修復能が高いので普通、数日で症状は回復します。

過度の紫外線は、シミやシワといった肌の老化を早めると同様、目の老化とも関連が深く、白内障や加齢性黄斑変性を進行させると考えられています。これを防止するためには、目にも紫外線対策が必要になります。

スキー場や雪山を始め紫外線にさらされるような場所では、帽子をかぶり、UVカット加工したサングラスやゴーグルをかけたり、紫外線カットのコンタクトレンズを用います。また、太陽光線、電気溶接の火花、殺菌灯の光線を直視しないように気を付けます。

2022/08/21

🇲🇾先天性黄斑変性症

眼球内部の網膜にある黄斑に、進行性の変性がみられる遺伝性の疾患群

先天性黄斑(おうはん)変性症とは、眼球内部の網膜にある黄斑に進行性の変性がみられる目の疾患の総称。黄斑ジストロフィーとも呼ばれ、ジストロフィーとは遺伝子の異常により組織や臓器が徐々に変性することを指します。

先天性黄斑変性症と一口にいっても疾患の種類は多数あり、先天網膜分離症(若年網膜分離症)、錐体(すいたい)ジストロフィー、卵黄状黄斑変性(卵黄状黄斑ジストロフィー)、スタルガルト病(黄色斑眼底)、網膜色素変性症、オカルト黄斑ジストロフィー、家族性ドルーゼン(網膜ジストロフィー)、家族性滲出(しんしゅつ)性硝子体(しょうしたい)網膜症などがあり、症状もそれぞれ異なります。先天性黄斑変性症のいくつかでは、どの遺伝子に異常があるのかがわかっています。

眼球内部にある黄斑は、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。

この黄斑に変性がみられると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに変性がみられると、視力の低下がさらに深刻になります。

先天性黄斑変性症には、網膜よりさらに外側に位置している脈絡膜から、異常な血管である新生血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることが原因で起こる滲出型と、新生血管は関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型(委縮型)の二つのタイプがあります。二つのタイプとも、両目の黄斑に変性がみられます。

新生血管とは、網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞の下や上に伸びる新しい血管です。正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。

滲出型の初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。

非滲出型(委縮型)の場合は、黄斑の変性が強く現れた状態で、網膜色素上皮細胞が委縮したり、脈絡膜の血管に委縮性の変化が生じて、徐々に視力が低下します。疾患の種類によって違いますが、視力低下のほか、見ようとする物の中心部分がぼやけたり、中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点、物がゆがんで見える変視症、明るい光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)、色覚異常などの症状が現れます。症状が進んでくると、視力が0・1~0・2まで下がるなど顕著な視力低下が起こります。最終的には、中心部が全く見えなくなってしまいます。

先天性黄斑変性症は疾患の種類によって、ある程度年齢が高くなってから症状が現れることも、幼少時にすでに発症していて気付いた時にはかなり進行していることもあります。

先天性黄斑変性症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいること、薬物や感染症など外因がないことなどが重要な手掛かりになります。フルオレセイン蛍光眼底検査、網膜電図などの電気生理学的検査も、診断を確実にするには必須です。異常を起こす遺伝子が突き止められている先天性黄斑変性症のいくつかでは、遺伝子の検索も決め手になります。

残念ながら、先天性黄斑変性症の多くでは有効な治療法は見いだされていませんので、視力の大幅な低下を避けることはできません。

新生血管が生えてくることが原因で起こる滲出型の場合、治療の方法は新生血管の位置によって変わってきます。新生血管が中心窩から離れているケースでは、新生血管をレーザーで焼く光凝固が治療の方法となります。新生血管が中心窩に近いケースでは、治療が困難な例が多くなります。新生血管のレーザー光凝固を行うと中心窩も損傷を受けて、さらに視力が低下する危険性が高いからです。そこで、新生血管の栄養血管の光凝固、抗血管新生薬などの治療法が行われます。

先天性黄斑変性症の多くでは、症状に応じて遮光眼鏡、弱視眼鏡、拡大読書器、望遠鏡などの補助具を使用することが有用で、周辺視野と残った中心視を活用できます。その他のリハビリテーションも重要です。

いつの日か、先端的医療の進歩が根本的な治療法を可能にすることも期待されていますが、弱視学級や盲学校での勉学、職業訓練など、将来を見通して現実的に対応することが有益でしょう。

2022/08/19

🇴🇲偽近視

目の疲労によって、一時的に近視と同じ症状を生じる状態

偽近視(にせきんし、ぎきんし)とは、目の中の毛様体筋の持続的緊張が起こり、近視と同じ症状を生じるに至った状態。仮性近視、調節緊張性近視とも呼ばれ、近視に含めない考えで単に調節緊張とも呼ばれます。

目には、近くを見る時に網膜上に正しく焦点を合わせるため、毛様体筋を働かせて水晶体を厚くし、屈折を強くする調節力が備わっています。子供などが試験前の猛勉強や読書、ゲームなどで、近い距離に長時間視点を合わせた場合には、毛様体筋の緊張が続いて一時的に水晶体が元の厚さに戻りにくくなり、軽い近視と同じ偽近視になります。文字や画面の距離の近すぎのほか、照明や姿勢の不良も原因となり、軽い遠視がある子供がなりやすい傾向があります。

子供の偽近視は、あまり長時間近くを見ないように心掛けるだけで、いずれは治ります。しかし、偽近視を放置して、同じような目に悪い生活習慣を続けると、症状はますます悪化して本当の近視になります。

偽近視にもかかわらず、眼鏡やコンタクトレンズを使用してしまった際にも、毛様体筋の緊張がなく、水晶体が薄くても楽に近くが見えるような目に適応し、本当の近視になります。学校の健康診断などで視力の低下が指摘された時は、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを作る前に、まずは眼科で正確な屈折検査を受け、本当の近視なのか一時的な偽近視なのかを調べることが大切です。

授業の合間に行われることが多い学校の健康診断の場合は、教科書などの近くの文字を見た後にすぐ目の検査をすることになり、調節力が大人より強い子供では近くにピントがあったままになってしまい、遠くが見えない偽近視を生じていることもある点に、留意が必要です。

大人になると、毛様体筋の緊張が長時間続きにくくなるため、偽近視は起こりにくくなります。ただし、パソコンを始めたりして目を酷使すると、大人でも偽近視になりやすいので注意が必要です。時々、パソコン作業を中止して目を休めたり、遠くを見る必要があります。

偽近視の検査と診断と治療

子供の近視が増えている時勢ですが、子供の近視は大人の近視と違い、一時的な偽近視の場合があります。視力が低下したからといって、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを使用するのではなく、本当の近視なのか一時的な偽近視なのかを眼科で検査する必要があります。

眼科では、裸眼視力の測定、機械による屈折力の測定、眼鏡をかけての矯正視力の測定を行います。機械による屈折検査で近視がみられ、これを矯正する眼鏡をかけて視力が1・0以上あれば、近視です。調節をまひさせる点眼薬をさして、もう一度屈折検査を行い、屈折度が1D(ディオプター)以上遠視側、すなわち近視度が少ない方向に変化すれば、偽近視と診断されます。

わざとピントが合わないようにした眼鏡を20分ほどかけて、調節ができない状態から偽近視を診断する雲霧(うんむ)法が行われることもあります。

偽近視と診断されると、ミドリン、もしくはサンドールという調節をまひさせる点眼薬を処方されます。この点眼薬を何日か寝る前にさすことにより、寝ている間に目の回りの筋肉である毛様体筋がリラックスし、近視が改善することがあります。ミドリンは本来、眼底を検査するために用いられる薬ですが、硬くなった毛様体筋を緩めることを目的に、濃度を薄めて用いられています。

偽近視ではない軽度近視の始まりの場合は、調節をまひさせるミドリンの点眼で近視を改善することは困難なものの、進行を遅らせる可能性はあります。しかし、教室の黒板の字が見えにくいなどの不都合が生じた時点で、眼鏡やコンタクトレンズを作ることになります。

偽近視の進行を予防する一般的な注意事項としては、悪い姿勢や暗い照明の下で、勉強、読書、ゲームなどをしないことです。目に疲れが出たら、こまめに目薬を点眼するのも効果的です。そのほか、ブルーベリーなどのサプリメントの効果が期待できるのも偽近視の特徴ですので、積極的に服用します。ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、視覚機能を高めるということから、近年とても注目されているところです。

🇲🇲封入体結膜炎

性行為によって、微生物のクラミジア・トラコマーティスが目に感染し、引き起こされる結膜炎

封入体結膜炎とは、性行為によって、細菌よりも微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物が目に感染し、引き起こされる結膜炎。クラミジア結膜炎とも呼ばれます。

封入体結膜炎という疾患名は、まぶたの裏側から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。

同じクラミジア・トラコマーティスによって引き起こされる結膜炎にトラコーマがありますが、こちらはクラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こり、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。

封入体結膜炎は、クラミジア・トラコマーティス血清型D、E、F、G、H、I、J、Kによって起こり、成人に多くみられます。同じクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kは、性行為により性器に感染して性器クラミジア感染症も引き起こします。

>封入体結膜炎はほとんどの場合、性器にクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kの感染を持っている人との性行為の後、発症します。まれに、汚染されたプールの水から伝染し、発症することもあります。また、新生児が母親から産道感染して、発症することもあります。

2〜19日の潜伏期の後、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性の炎症として、まぶたがはれ、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが出ます。

かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。下のまぶたの眼瞼結膜には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。

眼球の黒目の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れることもあります。

目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。

非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。

通常、初めは片目だけに症状が現れることが多いものの、放置しておくと両目ともに症状が現れることもあります。

目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。

出生時に、母親の産道を通る際に感染した新生児では、生後1週間前後で発症し、まぶたのはれ、充血、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜という分泌物の塊が結膜にできます。

中耳炎や肺炎を合併することもあります。性器クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に産道のクラミジア・トラコマーティスが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。

なお、新生児の封入体結膜炎では、眼瞼結膜に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。

封入体結膜炎に気付いた、早めに眼科の専門医の診察を受けることが勧められます。

封入体結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、症状の視診と目の検査を行います。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。

また、点眼麻酔後、結膜表面から綿棒で擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が見付かります。血液検査でクラミジア・トラコマーティス抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジア・トラコマーティスを培養する方法もありますが、時間がかかります。

性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為と封入体結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器に性器クラミジア感染症があります。

眼科の医師による治療では、クラミジア・トラコマーティスに有効な、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の点眼剤や、眼軟こうが用いられます。

点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟こうは長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。

重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、抗生物質の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、女性では子宮の入り口に当たる子宮頸管(けいかん)、尿道などでクラミジア・トラコマーティスが増殖しているからです。

治療の原則は、抗生物質の眼軟こうを8週、抗生物質の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジア・トラコマーティスそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。

封入体結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。

さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、ほかのタオル類と別にしておかなくてはいけません。

封入体結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーの検査、治療も必要です。

🇧🇹光誘発角膜炎

スキー場、海水浴場などで紫外線が作用して、目の角膜に生じる炎症

光誘発角膜炎とは、スキー場や雪山、海水浴場などで多量の紫外線を含む太陽光線の反射を受けて、角膜に生じる炎症。雪目、雪眼炎、雪盲(ゆきめくら)とも呼ばれます。

いわば、目の日焼けであり、冬にスキーやスノーボード、雪山登山をする際に、サングラスやゴーグルをかけないで長時間過ごすと、雪面による多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。

夏に海水浴場に赴いて水泳や日光浴、ビーチバレーをする際にも、サングラスをかけなかったりサンバイザーをかぶらないで長時間過ごすと、海面に反射した多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。

太陽光線以外に、電気溶接の火花や殺菌灯の光線によっても、角膜に炎症が起こることもあります。

多くは、紫外線に目がさらされて10時間ぐらいして発症します。そのため、スキーなどをしている日中はあまり自覚症状がなく、夜半から真夜中にかけて急に目が痛み出し、目が開けられなくなることもあるので、慌ててしまうケースが多くみられます。

角膜は神経が豊富なため、痛みが非常に強く出るのが特徴ですが、両目のまぶたがはれて、常に涙が流れ出ている状態となり、白目の表面を覆う結膜は充血します。角膜の表面には細かい多数の傷が付き、全体に薄く白濁が起こることもあります。

キラキラと目を開けていられないような好天気の日に、一日中ゲレンデや雪山、海水浴場にいても光誘発角膜炎にならない人がいる一方で、どんよりと曇った日に数時間スキーやスノーボードをしただけで光誘発角膜炎になる人もいます。一般的に、若い人のほうが光誘発角膜炎になりにくく、年齢が上がってくると目が紫外線に弱くなる傾向があります。

光誘発角膜炎の検査と診断と治療

光誘発角膜炎(雪目)になった際には、アスピリンやセデスなどの鎮痛剤を内服し、なるべく目を閉じた状態を保ち、冷やしたタオルを目に当てて休みます。涙は出るほうがよいので、目を水で洗わないようにします。通常、痛みは次第に和らぎますが、翌日も強い痛みが続く時には、眼科で適切な治療を受けます。

眼科の医師による検査では、特殊な染色液で染めると角膜表面は点状に染まります。治療では、ヒアルロン酸の入った角膜を保護する目薬を主に使います。そのほか、抗生剤の目薬や眼軟こうも併用します。角膜の表面の上皮細胞は修復能が高いので普通、数日で症状は回復します。

過度の紫外線は、シミやソバカス、シワといった肌の老化を早めると同様、目の老化とも関連が深く、白内障や加齢性黄斑変性を進行させると考えられています。これを防止するためには、目にも紫外線対策が必要になります。

スキー場や雪山、海水浴場を始め紫外線にさらされるような場所では、帽子をかぶり、UVカット加工したサングラスやゴーグルをかけたり、紫外線カットのコンタクトレンズを用います。また、太陽光線、電気溶接の火花、殺菌灯の光線を直視しないように気を付けます。

2022/08/18

🇰🇿ビタミン欠乏症

ビタミンの欠乏で、いろいろな疾患が出現

欠乏症を起こす主なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ニコチン酸、およびビタミンCです。

ビタミン欠乏症は、食べ物から摂取するビタミンの量が体の必要とするビタミン量を満たさないか、あるいは、摂取する量は十分でも体内への吸収や利用が十分でない時に起こります。前者は発育期や授乳で消費が多い時など、後者は胃や腸の一部を手術で切り取った後などが相当します。

ビタミンA欠乏症(夜盲症)

夜盲(やもう)症とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる疾患。俗に、鳥目(とりめ)と呼ばれます。

先天性では、幼児期より徐々に発症するものと、発症しても生涯進行しないものがあります。後天性では、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシンという物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。夜盲症が進行すると、結膜や角膜の表面が乾燥して白く濁り、失明することもあります。

なお、ビタミンAは発育の促進、皮膚の保護の機能とも関係しているので、これが欠乏すると、乳幼児の発育が遅れたり、皮膚がカサカサになったりすることもあります。

ビタミンB1欠乏症(かっけ)

かっけ(脚気)とは、ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢(まっしょう)神経障害を来す疾患。心不全によって下肢のむくみが、末梢神経障害によって上下肢のしびれが起きます。

ビタミンB1は、糖質の代謝に重要なビタミンです。白米を主食として副食の少ない食事を長期間続けた際や、重労働、妊娠、授乳、甲状腺(せん)機能高進症などでビタミンB1の消費が一時的に増大した際に、糖質の分解産物であるピルビン酸や乳酸が蓄積されて、かっけが起こります。

かっけの症状としては、初めは体がだるい、手足がしびれる、動悸(どうき)がする、息切れがする、手足にしびれ感がある、下肢がむくむなどが主なものです。進行すると、足を動かす力がなくなったり、膝(ひざ)の下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射が出なくなり、視力も衰えてきます。

かつては、かっけ衝心(しょうしん)といって、突然胸が苦しくなり、心臓まひで死亡することもありましたが、現在ではこのような重症例はほとんどありません。

しかし、三食とも即席ラーメンを食べるといったような極端に偏った食生活によるかっけなどが、最近は若い人に増えてきています。インスタント食品やスナック菓子には脂質とともに糖質も多く含まれているのですが、この糖質の消費に必要なビタミンB1の摂取量が足りていないのです。また、過度なダイエットや欠食、外食によって、女子大学生の血中総ビタミンB1の値が非常に低いことも報告されています。

さらに、糖尿病の発症者と、高齢の入院患者にも、かっけが増えてきているといいます。糖尿病の場合は、血液中の糖質に対するビタミンB1の相対的な不足が原因となり、高齢の入院患者の場合は、高カロリー(糖質)の輸液に対してやはりビタミンB1の不足が原因となります。食事の代わりに酒を飲むといったアルコール依存症の人も、ビタミンB1欠乏症になる確率が高いと見なされています。

なお、ビタミンB1の欠乏症には、欧米に多いウェルニッケ・コルサコフ症候群もあります。こちらは中枢神経が侵される重症の欠乏症で、蛋白(たんぱく)質、脂質中心の食生活で、アルコールを多飲する人に多発します。症状は、意識障害、歩行運動失調、眼球運動まひ、健忘症など。

ビタミンB2欠乏症

ビタミンB2欠乏症とは、ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏によって、皮膚や粘膜にトラブルが現れたり、子供の発育が悪くなったりする疾患。

ビタミンB2には皮膚を保護する働きがあるので、欠乏すると皮膚や粘膜にいろいろな症状が現れてきます。例えば、唇の周囲やふちがただれたり、舌が紫紅色にはれたり、肛門(こうもん)や外陰部などの皮膚と粘膜の移行部のただれなどもみられます。目の充血や眼精疲労などの症状のほか、進行すると白内障を起こすこともあります。 脂漏性皮膚炎も認められ、鼻の周囲や顔の中央部に脂ぎった、ぬか状の吹き出物ができます。重症になると、性格変化や知能障害が現れることがあります。

ビタミンB2にはまた、子供の発育を促す働きがあるので、欠乏した子供では成長不良につながります。成長期には、必要量を十分取らなければなりません。

ビタミンB2は、体内で糖質、蛋白(たんぱく)質、脂肪をエネルギー源として燃やすのに、不可欠な水溶性ビタミンです。ビタミンB2欠乏症は、アルコールの多飲、糖質過剰摂取、激しい運動、労働、疲労などで、現れることがあります。多量の抗生物質や経口避妊薬、ある種の精神安定薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬などを長期に服用した時にも、現れることがあります。また、心臓病、がん、糖尿病、肝炎、肝硬変などの慢性疾患や吸収不良によって、ビタミンB2欠乏症のリスクが高くなります。血液をろ過する血液透析や腹膜透析でも、同様です。

ビタミンD欠乏症(くる病)

くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。

カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)

ニコチン酸欠乏症とは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患。ナイアシン欠乏症とも呼ばれ、とうもろこしを主食とする中南米などの地域ではペラグラとも呼ばれています。

ニコチン酸は、ナイアシンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、蛋白(たんぱく)質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。糖質、脂質、蛋白質の代謝に不可欠な栄養素であり、また、アルコールや、二日酔いのもとになるアセトアルデヒドを分解します。人為的にニコチン酸を摂取することで、血行をよくし、冷え性や頭痛を改善しますし、大量に摂取すれば血清のコレステロールや中性脂肪を下げる薬理効果もあります。

ニコチン酸欠乏症はとうもろこしを主食とする人に多い疾患ですが、日本では、不規則な食事をするアルコール多飲者にみられます。酒を飲むほどニコチン酸が消費されますので、つまみを食べずに大量に飲む人は、栄養不良に注意が必要です。特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が不足すると、ニコチン酸の合成能力が低下します。

遺伝病であるハートナップ病の人も、トリプトファンが腸から吸収されないために、ニコチン酸欠乏症を発症します。

症状としては、日光に当たることによって手や足、首、顔などに皮膚炎が起こります。同時に、舌炎、口内炎、腸炎などを起こし、そのために食欲不振や下痢なども起こします。その後、頭痛、めまい、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全による錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。

日本では普通の食事をしている限り、重症にはなりません。食欲減退、口角炎、不安感などの軽いニコチン酸欠乏症が見られる程度です。

ビタミンC欠乏症(壊血病)

壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって、出血性の障害が体内の各器官で生じる疾患。ビタミンC欠乏症とも呼ばれます。

水溶性ビタミンであるビタミンCは、血管壁を強くしたり、血液が凝固するのを助けたりする作用を持っています。また、生体内の酸化還元反応に関係し、コラーゲンの生成や骨芽細胞の増殖など、さまざまな作用も持っています。

成人におけるビタミンCの適正摂取量は、1日に100mgとされています。日本人はもともとビタミンCの摂取量が多く欠乏症になりにくいのですが、3~12カ月に渡る長期、高度のビタミンC欠乏があると、壊血病が生じます。妊娠や授乳時では、ビタミンCの必要量も増えます。

ビタミンCが欠乏すると、毛細血管が脆弱(ぜいじゃく)となって、全身の皮下に点状の出血を起こしたり、歯肉に潰瘍(かいよう)ができたり、関節内に出血を起こしたりします。また、消化管や尿路から出血することもあります。一般症状として、全身の倦怠感(けんたいかん)や関節痛、体重減少が現れます。

小児においても、壊血病は生じます。特に生後6~12カ月間の人工栄養の乳児に発生し、モラー・バーロー病とも呼ばれています。現れる症状は、骨組織の形成不全、骨折や骨の変形、出血や壊死(えし)、軟骨や骨境界部での出血と血腫(けっしゅ)、歯の発生障害などです。

ビタミン欠乏症の検査と診断と治療

ビタミンA欠乏症(夜盲症)

ビタミンA欠乏性の夜盲症以外の場合、治療法が確立しておらず、光刺激を防ぐ対策を必要とします。遮光眼鏡を使用したり、屋外での作業を控えるなどです。

ビタミンA欠乏性では一般に、ビタミンAを経口で服用し、ビタミンAを多く含む食品を適度に取ります。ビタミンAには、レバーやウナギなど動物性のものに含まれるレチノールと、主に緑黄色野菜などの植物性食品に含まれβ-カロチンの2種類があります。ただし、過度に摂取するのは、ビタミンA中毒を引き起こすのでよくありません。

ビタミンB1欠乏症(かっけ)

かっけの検査では、ハンマーなどで膝の下を軽くたたく、膝蓋腱反射を利用した方法が広く知られています。足がピクンと動けば正常な反応で、何も反応がなければかっけの可能性がありますが、診断を確定する検査ではありません。

かっけの治療では、ビタミンB1サプリメントを投与します。なお、かっけの症状は回復したようにみえても、数年後に再発することがあるので注意が必要です。

ビタミンB1はいろいろな食べ物の中に含まれているので、偏食さえしなければ、欠乏症を起こすことはほとんどありません。過度のダイエット、朝食や昼食を抜く、外食で食事をすませる、インスタント食品に偏るなどの食生活では、ビタミンB1の不足を招き、かっけになりやすくなります。

ただし、ビタミンB1が不足していても、他の栄養素のバランスがいい場合は、すぐにかっけにはなりません。食生活に偏りがあって、疲労感や倦怠(けんたい)感が続いている場合は、潜在的ビタミンB1欠乏症と考えて、食生活を改善する必要があります。

お勧めなのは玄米食。玄米にはビタミンB1が多く含まれているからで、玄米を精米した白米ではほぼ全部のビタミン類が取り除かれています。玄米のほかにビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、枝豆、えんどう豆、大豆(だいず)、ごま、ピーナッツなどがあります。これらをうまく組み合わせて、ビタミンB1を摂取していきましょう。

ビタミンB2欠乏症

医師による診断は、現れた症状や全身的な栄養不良の兆候に基づいて行います。尿中のビタミンB2排出量を測定し、1日40μg以下であれば欠乏症です。血中のビタミンB2濃度の測定も行われます。

治療では、ビタミンB2を症状が改善されるまで、経口で服用します。ビタミンB2の1日所要量は成人男性で1・2mg、成人女性で1・0mgとされており、1日10mgを経口で服用すると症状は完全に改善します。他のビタミン欠乏症を伴うことも多く、その場合はビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸なども服用すると、より効果的です。

なお、ビタミンB2吸収不良を生じている場合、血液透析や腹膜透析を受けている場合は、ビタミンB2サプリメントを日常から摂取する必要があります。

ビタミンD欠乏症(くる病)

確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。

ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)

ニコチン酸欠乏症の治療は、ニコチン酸を含むビタミンB群の投与です。ニコチン酸アミドを1日50〜100mg投与し、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6も併用して投与します。ビタミンB群は、お互いに協力しあって活動しているため、それぞれの成分だけではなく、ビタミンB群としてまとめて投与することが望ましい栄養素でもあります。

ニコチン酸の過剰症は特にありませんが、合成品のニコチン酸を100mg以上摂取すると、皮膚がヒリヒリしたり、かゆくなることがあります。とりわけ、ニコチン酸の摂取に際して注意が必要なのは、糖尿病の人です。ニコチン酸はインシュリンの合成に関与し、大量に摂取すると糖質の処理を妨げてしまいます。 一部の医薬品との相互作用を示唆するデータもあるため、すでに他の薬を服用中の場合は主治医に相談の上、ニコチン酸を摂取する必要があります。

ビタミンC欠乏症(壊血病)

乳児では1日100mg、成人では1日1000mgのビタミンCを投与すると、症状の改善が認められます。ただ、長期に投与すると尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)が生じることがあり、注意が必要です。

予防としては、新鮮な果物や野菜を十分に取ります。また、煮すぎない、ゆですぎない、ミキサーに長時間かけないなど、調理によるビタミンCの破壊に気を付ければ、まず壊血病の心配はありません。

🇹🇲ビタミンB2欠乏症

皮膚や粘膜のトラブルと子供の発育不良

ビタミンB2欠乏症とは、ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏によって、皮膚や粘膜にトラブルが現れたり、子供の発育が悪くなったりする疾患。

ビタミンB2には皮膚を保護する働きがあるので、欠乏すると皮膚や粘膜にいろいろな症状が現れてきます。例えば、唇の周囲やふちがただれたり、舌が紫紅色にはれたり、肛門(こうもん)や外陰部などの皮膚と粘膜の移行部のただれなどもみられます。目の充血や眼精疲労などの症状のほか、進行すると白内障を起こすこともあります。 脂漏性皮膚炎も認められ、鼻の周囲や顔の中央部に脂ぎった、ぬか状の吹き出物ができます。重症になると、性格変化や知能障害が現れることがあります。

ビタミンB2にはまた、子供の発育を促す働きがあるので、欠乏した子供では成長不良につながります。成長期には、必要量を十分取らなければなりません。

ビタミンB2は、体内で糖質、蛋白(たんぱく)質、脂肪をエネルギー源として燃やすのに、不可欠な水溶性ビタミンです。ビタミンB2欠乏症は、アルコールの多飲、糖質過剰摂取、激しい運動、労働、疲労などで、現れることがあります。多量の抗生物質や経口避妊薬、ある種の精神安定薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬などを長期に服用した時にも、現れることがあります。また、心臓病、がん、糖尿病、肝炎、肝硬変などの慢性疾患や吸収不良によって、ビタミンB2欠乏症のリスクが高くなります。血液をろ過する血液透析や腹膜透析でも、同様です。

ビタミンB2欠乏症の検査と診断と治療

医師による診断は、現れた症状や全身的な栄養不良の兆候に基づいて行います。尿中のビタミンB2排出量を測定し、1日40μg以下であれば欠乏症です。血中のビタミンB2濃度の測定も行われます。

治療では、ビタミンB2を症状が改善されるまで、経口で服用します。ビタミンB2の1日所要量は成人男性で1・2mg、成人女性で1・0mgとされており、1日10mgを経口で服用すると症状は完全に改善します。他のビタミン欠乏症を伴うことも多く、その場合はビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸なども服用すると、より効果的です。

なお、ビタミンB2吸収不良を生じている場合、血液透析や腹膜透析を受けている場合は、ビタミンB2サプリメントを日常から摂取する必要があります。

🇷🇪白内障

眼球の中の水晶体の混濁による視力障害

「白そこひ」と通称される白内障は、眼球の中の水晶体の濁りによって、視力障害を起こしている状態です。

 水晶体というのは、凸レンズ形の透明体で、よく人間の目に例えられるカメラでいえば、レンズに相当する部分です。位置しているのは、眼球中の黒い部分である瞳(ひとみ)の後ろ。直径9mm、厚さ4mm。中身は、蛋白質と水分から構成され、周辺部の「皮質」と中心部の「核」に分かれています。そして、この水晶体は膜に包まれていて、膜の前面が「前嚢(ぜんのう)」、後面が「後嚢(こうのう)」と呼ばれています。 

 正常な水晶体は透明で、光をよく通します。しかし、さまざまな原因で水晶体を構成する蛋白質が変性して、白く濁ってくるのが、白内障です。

 水晶体が濁ると、光がうまく通過できなくなったり、光が乱反射して、眼球の中にあって視神経の分布している網膜に鮮明な像が結べなくなり、視力が低下します。 

 さまざまな原因で起こる白内障の中で、最も多いのは加齢によるものであり、これを「老人性(加齢性)白内障」と呼んでいます。個人差はあっても、誰でも年をとるにつれ、水晶体は濁ってきます。老人性白内障は一種の老化現象ですから、高年齢の人ほど多く発症します。

 最近では、アトピー性皮膚炎や糖尿病などの合併症として、若い人の発症が増えています。そのほか、母親の胎内で風疹(ふうしん)に感染するなどが原因で、生まれつき白内障になっているケースや、目のけがや薬剤の副作用から白内障を起こすケースもあります。

 目の中の水晶体の濁り方は一人ひとり違うため、白内障の症状はさまざまです。

 「目がかすむ」のが主症状ですが、次のような

1、「かすんで見える」

2、「まぶしくなる」、「明るいところで見えにくい」

3、「一時的に近くが見えやすくなる」、「眼鏡が合わなくなる」

4、「二重、三重に見える」

 といった症状があれば、白内障の疑いがあります。

 白内障だけでは、痛みや充血はありません。また、水晶体の濁り方は一人ひとり異なりますが、水晶体の周辺部の皮質から濁りが始まるケースが多く、中心部の核が透明であれば、視力は低下しません。また、白内障の初期には、視野の中心は正常に見えるために、気が付かないこともあります。

 濁りが中心部に広がると、「まぶしく感じる」、「目がかすむ」、「霧の中にいるようにぼやける」ようになります。中心部の核から濁り始めると、「一時的に近くが見えやすくなる」ことがあり、その後「目がかすむ」ようになります。

白内障の種類と原因

◆先天性白内障

 生まれつき水晶体に濁りのある人は、少なくありません。けれども、その濁りがひどくて、視力に影響の出るような白内障の人は、2000~3000人に1人くらいと見なされています。

 先天性白内障の原因としては、妊娠初期における母親の風疹への感染のほか、遺伝などが考えられます。親側の予防策としては、家族に先天性白内障のある人同士の結婚は避けること、妊娠初期の健康に注意することなどが大切です。

 普通、症状は進行しませんが、まれに進行する場合もあります。医師による治療法としては、手術で混濁した水晶体を取り出すか、混濁が一部である場合には、瞳の周りにある虹彩(こうさい)を切り、透明な部分まで瞳を広げるなどの処置が施されます。

 手術をしても、片側の目だけの先天性白内障では、視力はあまりよくなりません。ほかの合併症のない両眼性のケースでは、正常な視力を得ることも珍しくありません。

◆老人性(加齢性)白内障

 老人性白内障というのは、中年以後に起こる白内障で、原因のはっきりしないものを指します。50歳以上の人の視力障害では、原因の大半を占めています。視力障害は、水晶体の濁りが広がって瞳にかかるようになると、起こってきます。

 60代では60パーセント、80代ではほとんどの人が、発症しています。また、70歳以上の人では、その数パーセントが手術を必要とする程度の白内障になっている、と見なされています。特定の予防策はありませんが、全身状態を健康に保つことが大切です。

◆併発白内障

 併発白内障とは、全身的疾患、あるいは目にほかの病気があることが原因となって、生じる白内障を指します。

 原因となる病気には、ぶどう膜炎、緑内障手術後、網膜色素変性症などの目の病気、アトピー性皮膚炎、糖尿病、手足の筋肉が強直するテタニー症などの全身疾患があり、放射線の影響や、ある種の薬物投与などによる副作用として起きてくる場合もあります。治療法は、老人性白内障と同じです。

◆外傷性白内障 

 外傷性白内障とは、外傷によって直接、水晶体を傷つけたり、打撲などで間接的に水晶体に障害を受けて、生じる白内障を指します。治療法は、手術以外にはありません。 

白内障の治療と手術

◆手術前の検査 

 日常生活に支障がない程度であれば、点眼薬や内服薬により、白内障の進行を遅らせます。これらの薬剤は、水晶体が濁るスピードを遅くするもので、症状を改善したり、視力を回復させることはできません。薬物療法にははっきりした効果が認められていないのが、現状なのです。

 点眼薬を使用する際の注意点は、「点眼回数と量を守ること」、「容器の先が、まぶたやまつげに触れないようすること」の二点です。

 白内障が進行して、日常生活に不自由を感じるようであれば、手術を受けることを考えましょう。「視力が低下して、仕事に支障がある」、「外ではまぶしくて、極端に見えづらい」、「視力が0.7以下になって、運転免許の更新ができない」といった時に相当しますが、手術の時期は自身が不便を感じて、「手術して治したい」と思った時です。医学的には、いつでもよいのです。

 ただし、目の手術を受ける場合は、全身状態が手術の結果に影響をおよぼします。事前に全身の検査をして、高血圧や糖尿病などがある際は、十分に全身管理を行って、調子のよい時に手術を受けます。

 白内障以外の病気がある場合は、医師が手術方法を工夫したり、全身状態をみて手術の時期を決めます。手術を考える時は、医師とよく相談しましょう。

 白内障の手術を受ける前には、手術が問題なく行えるかを調べ、目に合う眼内レンズを選ぶために、さまざまな検査が行われます。眼内レンズは一カ所にピントが固定されているので、手術前に医師と相談して、自分のライフスタイルに合った度数を選んでもらうことが大切です。

 主な検査は、

1、視力、眼圧、屈折検査

2、眼底検査……網膜の状態を調べる

3、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査……水晶体の濁りの状態を調べる

4、角膜内皮細胞検査……眼球の全面を覆う透明な膜である、角膜の内皮細胞が減っていないかを調べる

5、眼軸長検査……眼内レンズの度数を決める

6、問診、血液検査

 などで、水晶体の濁りが進行している場合は、網膜の電気的検査、超音波検査なども行われます。

◆手術

 一般的には、手術後の管理も含めて3~4日間ほど入院します。最近では、患者側の全身状態や手術後の通院に問題がなければ、日帰り手術を実施している施設もあります。

 日帰り手術には、手術する医師側、手術を受ける患者側に、いくつかの条件が必要となります。手術を行う医師は、手術後の容体に対して夜間でも敏速な対応ができ、適切なアドバイスが可能でなくてはなりません。

 日帰り手術を受ける患者は、「通院できる人」、「重篤な合併症がない人」、「家族の協力が得られる人」などが条件となります。日帰り手術を希望される場合は、担当する医師とよく相談してください。

 現在、白内障の手術は主に、超音波水晶体乳化吸引術によって、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し、人工の眼内レンズを入れるという方法で、九割以上が行われています。白内障が進行して、核が固くなっている場合は、水晶体嚢外摘出術によって、水晶体の核を丸ごと取り出すこともあります。

 超音波水晶体乳化吸引術においては、

1、眼球を3mm切開し、水晶体の前嚢を切り取る 

2、水晶体の核と皮質を超音波で砕き、吸引して取り出す。後嚢と、水晶体の位置を固定している水晶体小帯(チン小帯)は残す

3、残した後嚢の中に、眼内レンズを挿入する

 といった処置がとられます。

 挿入する眼内レンズは、直径6mmほどで、後嚢に固定するためにループがついています。眼内レンズをいったん挿入すれば、取り替える必要はありません。

 手術は、局所麻酔で行われます。手術時間は目の状態にもより異なりますので、担当医師にお尋ねください。手術を受ける時は、医師を信頼し、不安にならずに精神的安定を心掛けましょう。目の手術というと怖いイメージがありますが、白内障の手術は進歩し、材質のよい眼内レンズも開発されているので、安心して手術を受けてください。

◆手術後の注意点 

 白内障の手術直後は、「目が充血する」ことがあります。また、「目がゴロゴロする」、「涙が出る」、「目がかすむ」などの症状が出ることもあります。これらの症状は、数日から1~2週間で治まります。

 手術後1~3カ月は、手術で起きた炎症を抑え、感染を防ぐために、医師の指示どおりに点眼薬を使用します。

 手術の翌日からでも、疲れない程度に目を使ってもかまいません。ただし、挿入した眼内レンズには、ピントを合わせる調節力がないので、眼鏡が必要になります。手術後2週間~2カ月頃には、視力が回復し安定してくるので、この時期に自分の視力に合った眼鏡を作ります。

 術後の見え方で、色調の違和感やまぶしさを感じることがあります。色調の違和感は次第に慣れていきますが、まぶしさが続くようであれば、症状を緩和させるために色付きの眼鏡の使用をお勧めします。

 仕事への復帰は早い時期にできますが、本人の全身状態や仕事の種類などによって違ってくるので、医師に相談してください。手術後の注意点としては、「入浴や洗顔は1週間くらい避ける」、「 目を押したり、こすったりしない」、「 転ばない、ぶつけない」がポイントです。 

 白内障の手術後、数カ月~数年して、また「まぶしくなる」、「目がかすむ」ことがあります。「後発白内障」といわれるもので、手術の際に残しておいた水晶体の後嚢が濁ってくるために起こります。

 後発白内障は手術の必要がなく、レーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。視力はすぐに回復し、入院の必要もありません。

🇲🇻麦粒腫(ものもらい)

まぶたの分泌腺に起こる急性の化膿性炎

<麦粒腫(ばくりゅうしゅ)とは、まぶたの縁などが赤くはれて、痛む急性の化膿(かのう)性炎症。俗称で、ものもらいとも呼ばれます。

原因は、主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染です。まぶたの表面についている細菌が、まぶたの分泌腺(せん)である皮脂腺、瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)、アポクリン腺に入り、感染して化膿が生じます。

まつげの根元にある皮脂腺や、汗を出すアポクリン腺に感染した場合を外麦粒腫、特殊な皮脂腺の一つである瞼板腺(マイボーム腺)に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。

まぶたの不衛生、コンタクトレンズの汚れ、目をこする行為などが、細菌感染を引き起こす要因として挙げられます。また、風邪と同様に、季節の変わり目、寝不足や体調不良で疲れがたまっている時に、生じやすい性質があります。

初めは、まぶたに局所的な赤みが出現して、はれ、しばしば軽度の痛み、かゆみを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、はれ、痛みが強くなり、熱を持ったりすることもあります。まぶたの内側にできる内麦粒腫では、かなり痛みがありますが、まぶたの外側にできる外麦粒腫では、まばたきをした時に異物感がある程度です。

化膿が進むと、はれた部分が自然に破れて、うみが出ることがあります。うみが出てしまえば、その後症状は回復に向かい、多くは自然に治癒します。しかし、うみがたまって大きくなった時には、切開してうみを出す治療が必要になることも。

まれに、眼窩蜂窩織(がんかほうかしき)炎、敗血症など重い疾患を引き起こすことがあります。ものもらいの局所をいじらないようにして安静にし、早めに治療を受けることが大切となります。

熱が出た時は、入院治療が必要なこともあります。繰り返して再発する時は、ほかに糖尿病や免疫疾患がないかを調べる必要があります。

なお、「ものもらい」という俗称から伝染病のような印象を受けますが、普通に皮膚表面に存在する細菌によって起こるため、他人に伝染することはありません。

「ものもらい」は関東などの俗称で、大阪などにおける「めばちこ」、京都などにおける「めいぼ」「めぼ」、あるいは「めばち」、「めこじき」、「めかんじん」、「めんぼう」など、地方によってさまざまな呼び方をされています。

「ものもらい」、「めこじき」、「めかんじん」の呼び名は、かつての日本に他人から物を恵んでもらうと、この疾患が治癒するという迷信が存在したことに由来します。「めばちこ」は、この疾患の発症者が目をぱちぱちさせる様子に由来するのではないか、と推測されています。

麦粒腫の検査と診断と治療

麦粒腫(ものもらい)の多くは、そのまま安静にしておけば自然に治癒します。しかし、「ものもらいができたな」と思った時には、放置せずに薬剤師や眼科医に早めに相談をするのがお勧めです。「そのうちに」と放置しておいて、はれや、かゆみがひどくなると面倒です。

特に、化膿が悪化した場合には、まぶたの切開によってうみの排出を必要とすることがあるので、はれがひどい場合には、眼科を受診します。うみを出すために針などでつつくと、かえって悪化する原因になるので、注意して下さい。

医師による治療は、抗生物質が入った点眼液や眼軟膏(なんこう)の処方が主で、場合により抗生物質の飲み薬を服用することもあります。なお、麦粒腫用の市販薬も、販売されています。

治療を開始して2~3日で症状が軽くなり、4~5日すると治るのが普通です。この時期は、かゆくても、まぶたを触らないようにします。コンタクトレンズの装用も控えるようにします。かゆみが強い時は、目の周りを冷やすと少し落ち着きます。

手が汚かったり、栄養不足など、環境によっては再発することもあります。家庭でも、患部の清潔とバランスの取れた食事を心掛けます。

日常の麦粒腫予防対策としては、前髪が目に掛からないようにする、コンタクトレンズを不潔な指で脱着しない、目の周りをしっかりと化粧しない、花粉症でかゆくてもあまり目をこすらない、などが挙げられます。

🇼🇸近目

遠くがはっきり見えず、近くがよく見える目の状態

近目(ちかめ)とは、遠方からの平行光線が網膜よりも前で像を結ぶために、遠くの物がはっきり見えず、近くの物がよく見える状態。近目は俗語で、医学用語としては近視を使うほか、近眼(きんがん)、近視眼とも呼ばれます。

角膜や水晶体の屈折力と、角膜頂点から網膜までの長さである眼軸(がんじく)長との相対関係において、屈折力が強すぎるか、眼軸長が長すぎるために、近目が起こると考えられています。角膜や水晶体の屈折力が強すぎるために起こる近目は、屈折性近視と呼ばれます。眼軸が長すぎるために起こる近目は、軸性近視と呼ばれます。大部分の近目は、軸性近視です。

近目の原因は現在のところ、よくわかっていませんが、遺伝的な要素と環境的な因子が関係すると考えられています。

眼軸の長さは、成長に伴い伸びていきます。新生児は眼軸の長さが短く、生まれた直後には軽い遠目(とおめ)、すなわち遠視の状態になっています。遠目とは網膜の後方でピントが合うため、遠くを見る時はもちろん、近くを見る時も調節しないとはっきり見えない目のことですが、新生児は角膜や水晶体の屈折力が強くなっているので、それほどひどくはありません。

眼球の発達とともに、眼軸の長さが伸びると角膜や水晶体の屈折力が弱くなり、全体のバランスが調整されるようになって、屈折異常のない目である正視になっていくことが多いものです。しかし、これらのバランスが崩れると、近目になると考えられています。

親が近目の場合、子供が近目になる可能性は比較的高く、遺伝的な要素が複雑に絡んでいると考えられます。一般的な近目の場合、環境的な因子も影響すると考えられています。勉強、読書、テレビ、コンピューターゲームといった近くを見る作業を長く続けていると、目が疲れ、好ましくないのはいうまでもありません。しかし、こういったことが近目の原因になるかどうか、はっきりした証明はありません。

近目は、適当な凹レンズの眼鏡、コンタクトレンズで矯正すれば、正視と同じように遠くの物も見えるようになります。

凹レンズで矯正しても、子供が遠くも近くも見にくくしているようであれば、病的近視の可能性があります。近目のごく一部である病的近視は、幼児期の段階から始まって進行します。眼軸が異常に長くて近目の度が強いため、眼鏡をかけてもあまりよく見えるようにはなりません。

また、眼球がかなり大きくなっているため、網膜が引き伸ばされて非常に薄くなっており、目をちょっと打っただけで、網膜の中心部がひび割れや出血によって委縮したり、網膜が眼底からはがれてくる網膜剥離(はくり)などの症状を起こします。このような病的近視は、発生する原因がまだ不明で、遺伝が関与しているともいわれます。

なお、近目のごく始まりの状態を仮性近視、あるいは偽近視といいます。若年者が照明や姿勢の不良のもとで、長い時間続けて本を読むなど、目を近付けての作業を続けた際、近目になりかけの状態のまま、毛様体筋という調節に関係する筋肉の緊張が続き、軽い近目状態になっているものです。

仮性近視の場合は、時々作業を中止して遠方を見て、目を休める必要があります。また、正確な屈折検査を受け、必要なら眼鏡、コンタクトレンズを使用します。

近目の検査と診断と治療

大部分の近目(近視)は疾患ではなく、遠くが見えにくいだけの普通の目です。現代社会では、近くを見る作業が多いため、近くがよく見える近目が有利な場合もあります。日ごろから目をいたわる生活を心掛け、見えにくくなってきたら眼科医に相談します。

近目の矯正は、凹レンズの眼鏡やコンタクトレンズを用いて行われるのが一般的。凹レンズにはピントが合う焦点を遠くにする働きがあり、適切な度の凹レンズを用いれば、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになりますので、正常の視力まで矯正できます。眼鏡やコンタクトレンズを作る場合は、眼科医に目の疾患や異常などを検査してもらった上で、適切なものを処方してもらいます。

近目になったからといって、日常生活に支障を来さなければ、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを用いる必要はありません。教室の黒板の字が見えにくくなるような不都合が生じてきた場合に、用いればよいのです。 また、眼鏡では常にかける必要はなく、黒板や遠くを見る時など必要に応じてかければよいのです。眼鏡をかけたり外したりしても、近目の度が進むようなことはありません。

コンタクトレンズは、角膜の表面に接触させて用いるレンズで、目立たないことから眼鏡をかけたくない人に好まれています。左右の視力に差がありすぎて眼鏡が使えない場合でも矯正でき、眼鏡のように曇ったりせず、視野が広くなるという優れた点があります。一方、慣れるまでに時間がかかったり、異物感があったり、角膜を傷付けることがあったりという欠点があります。レンズの取り扱いや管理なども大変なので、小学生などには眼鏡を用いることが勧められます。

近目の治療には、点眼薬を用いる方法や手術的方法もあります。点眼薬を用いる治療法は、近目になりかけの仮性近視、偽近視の時期に行われることがあります。仮性近視では、近くを長く見続けた結果、毛様体筋が異常に緊張して水晶体が厚くなり、一時的に近目の状態になっているので、点眼薬で目の調節を休ませます。

手術的方法には、角膜周辺部分をメスで放射状に8本切開する放射状角膜切開術や、エキシマレーザーで角膜の中央部を凹面状に削る角膜切除術などがあります。放射状角膜切開術は、手術結果を予測できない点や、不正乱視の発生、切開創が弱いなどの欠点がみられます。角膜切除術は、光線の通るひとみの角膜を切除するため、切除した部分に薄い濁りが出ます。

また、手術的方法は強度の近目では効果が弱く、安定した視力が得られない場合もありますので、治療を受ける場合は、十分説明を聞いて納得してから受けます。

病的近視に対しては、現在のところ有効な治療方法はなく、研究が続けられています。網膜剥離や眼底出血などが起こらないように注意し、起きた場合は早急に手術する必要があります。

目は、非常に大切です。目を疲れさせないように、日ごろから目の健康を心掛けます。

正しい姿勢で、勉強や読書をします。背筋をきちんと伸ばし、目と字の距離は30センチくらい離します。勉強や読書を1時間したら、10分間くらい目を休ませます。本は、寝転んで読まないようにします。テレビを見たら、しばらく目を休ませます。パソコン作業やコンピューターゲームなどは、40分以上続けないようにします。

照明は、明るすぎたり、暗すぎたりすることのないよう注意します。読書や勉強をするには普通、300ルクスが必要です。蛍光灯のスタンドでは、15~20ワットの明るさに相当します。

運動や散歩などを行い、遠くを見る習慣をつけ、目に負担のかからない生活を送るようにします。栄養のバランスを考えて、緑黄色野菜などを十分に取り入れた食生活を送ります。

2022/08/17

🇹🇴中心性網膜症

網膜の中心部に水がたまって浮腫になる疾患で、働き盛りの男性に好発

中心性網膜症とは、網膜の中心部にある黄斑(おうはん)に水がたまって、浮腫(ふしゅ)になる疾患。正式には、中心性漿液(しょうえき)性網脈絡膜症といいます。

目の網膜は外から入ってきた光が像を結ぶところで、特に黄斑部は物を見る上で最も大切なところです。この網膜の外側に、栄養分を供給する血管の豊富な脈絡膜と呼ばれる組織があり、通常は網膜色素上皮層と呼ばれる層が脈絡膜からの水漏れを防いでいます。この網膜色素上皮層の機能が何らかの原因で弱まることがあると、脈絡膜の血管から血液中の水分が染み出て、網膜下にたまることで浮腫が生じます。網膜が浮き上がった状態になり、このような状態を限局性の網膜剥離(はくり)といいます。

正確な原因はよくわかっていませんが、どんな人に起こりやすいかはわかっています。30~50歳代の働き盛りの男性で、正視ないし軽い屈折異常の人、要するに眼のいい人に起こりやすいことが知られています。忙しい人や忙しい時に起こる傾向がみられるため、ストレスが誘因になるともいわれています。それ以外には、妊娠時に起きることもあり、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の副作用で起きることもあります。

両方の目に同時に発症することはまれで、通常は片方の目に発症します。主な自覚症状は、物を見ようとすると中心部が暗く、または白くかすんで見えにくい、ゆがんで見える、視力が低下する、物が小さく見えるなどの症状が出ます。治った後も、何となく見えにくいという症状がしばらく続くことが多いようです。治癒と再発を繰り返したり、何年かして再発することも珍しくありません。

中心性網膜症の症状に気付いたら、とりあえずは眼科を受診して下さい。本当に中心性網膜症であるなら、ほとんどは良好な経過をたどり自然に治ることが多いものの、新生血管黄斑症などより性質の悪い疾患で似たような症状が出るものもあるので、きちんと診断を受ける必要があります。

中心性網膜症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、眼底検査で黄斑部に限局性の網膜剥離が見付かったら中心性網膜症を疑います。血管からのしみ出しの部分を見付け、新生血管黄斑症と区別するためには、フルオレセインという造影剤を用いた蛍光眼底造影検査を行います。この中心性網膜症が高齢者に起こり、加齢黄斑変性という疾患と区別する必要がある際には、インドシアニングリーンという別の造影剤を使った蛍光眼底造影検査も行います。

また、OCT(光干渉断層計)という近赤外線を利用した機器で眼底の検査を行えば、網膜の断面の観察ができ、網膜疾患、特に黄斑部病変の精密な診断が早期かつ正確に行うことができるようになっています。

中心性網膜症は、元来そんなに性質が悪いわけではなく、大抵は2~3カ月で自然に治る傾向があります。そのため、しばらくの間は経過観察をするのが、眼科の医師による治療の基本です。消炎薬、循環改善薬、ビタミン剤などの内服で黄斑部のはれをとる治療が行い、経過観察をすることもあります。

内服治療で症状がなかなか改善されない場合や、早く治したいという場合には、レーザー網膜光凝固術を行い、網膜色素上皮層の弱まっている部分をレーザーで焼いて補強します。しかし、水漏れの部分が黄斑の中心である中心窩(か)に近すぎるとレーザー光凝固はできません。

🇹🇴中心性網膜脈絡症

網膜中心部の黄斑がむくんだり、はれたりする眼疾

中心性網膜脈絡症とは、網膜の中心部の最も対象物が見える黄斑(おうはん)に、円形のむくみ、はれが生じる疾患。

黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに異常が発生すると、視力の低下がさらに深刻になります。

この黄斑に円形のむくみ、はれが生じる中心性網膜脈絡症は、網膜とその外側の脈絡膜との間に位置し、水分を通さない膜である色素上皮細胞層に小さな裂け目ができ、ここを通って脈絡膜からの水分が網膜の下にたまることで、発症します。

30歳代、40歳代の目をよく使う男性に多くみられ、片目に多く起こります。その大部分は、過労、睡眠不足、情緒不安などの後に発症するのが特徴。

症状が現れた目だけで対象物を見ると、真ん中が丸く黒い影になって見えなくなったり、小さく見えたり、あるいは大きく見えたり、ゆがんで見えたり、ぼけて見えたりします。

この中心性網膜脈絡症で失明したりすることはありませんが、再発しやすく、むくみ、はれのひいた後も、網膜にシワができて物が多少ゆがんで見えることがあります。

中心性網膜脈絡症の検査と診断と治療

まず、心身の過労を避け、睡眠を十分にとり、規則正しい生活をすることが必要です。生活の摂生を守らないと、症状が悪化したり、治癒が遅れたりします。再発しやすい疾患なので、眼科の専門医を受診します。

医師による検査としては、眼底検査、蛍光眼底検査などが行われます。眼底検査は、眼底にある網膜の状態を詳しく調べるために行われます。検査の前に目薬をさして、瞳孔(どうこう)を開きます。まぶしくて近くが見えない状態が約3時間続きますが、自然に元に戻ります。

蛍光眼底検査は、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底写真を撮ります。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになりますから、水分が漏れている色素上皮細胞層の裂け目から蛍光色素が漏れてくるのがわかります。

そのほか、主として脈絡膜の血液循環を調べるための特殊な造影検査もあります。

医師による薬物療法としては、消炎剤、血液循環ホルモン、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)や、栄養剤などの内服、または注射があります。

むくみ、はれが強い場合や、再発を繰り返す場合には、蛍光眼底検査で見付けた水漏れ部分に、光凝固療法を行います。この治療は、水漏れ部分にレーザー光線を当てて病変部を固め、水漏れの広がりを止めるものです。一般的に3週間程度で、むくみ、はれがひきます。しかし、光凝固療法も、検査の結果水漏れ部分が黄斑部の中心窩に近い場合には、行うことができないこともあります。

完治するには、数カ月から1年程度かかりますので、日常生活は規則正しく無理をしないようにします。また、定期的に眼底検査を受けるようにします。

🇲🇭中枢神経系原発リンパ腫

中枢神経系の脳、脊髄、髄膜や眼球の中に悪性リンパ腫ができる疾患

中枢神経系原発リンパ腫(しゅ)とは、中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜、眼球などの中に悪性リンパ腫ができる疾患。

リンパ腫は、リンパ系に悪性腫瘍、すなわちがんが発生する疾患です。リンパ系は免疫系の一部で、リンパ液、リンパ管、リンパ節、脾臓(ひぞう)、胸腺(きょうせん)、扁桃(へんとう)、骨髄から構成されています。このリンパ系は、蛋白(たんぱく)質を豊富に含むリンパ液の流れを体に循環させ、バクテリア、ウイルス、老廃物などを集めます。これらをリンパ管を通して、リンパ節に運び、リンパ節の中のリンパ球という感染と戦う細胞でろ過して取り除きます。リンパ液は静脈の毛細血管に吸収され、老廃物などは最終的には体から排出されます。

リンパ球の集団の一部の細胞が悪性化し、それが中枢神経系の内部でリンパ腫を引き起こすものと考えられています。しかし、リンパ節のような組織の存在しない中枢神経系や眼球内に、悪性リンパ腫が発生する原因は、わかっていません。

中枢神経系原発リンパ腫は、脳、脊髄、髄膜のいずれかより発生します。また、その位置が脳に非常に近いことから、眼球からも中枢神経系原発リンパ腫が発生することがあり、これは眼内リンパ腫と呼ばれます。

この中枢神経系原発リンパ腫にかかる危険因子としては、膠原(こうげん)病、免疫不全疾患、臓器移植、加齢などによる免疫不全、ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルス感染などがあります。

脳に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち脳リンパ腫が前頭葉、後頭葉、脳深部、脳幹などに生じると、脳腫瘍によって、頭蓋(とうがい)内の圧力が高まるために起こる頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの症状が起こります。

脳腫瘍ができた部位によっても症状が異なり、前頭葉に腫瘍があると知能低下(認知症)や失語症、性格変化、尿失禁など、後頭葉に腫瘍があると視野障害など、脳幹に腫瘍があると運動まひ、眼球運動障害などが生じます。

数日から何週間単位で進行する亜急性を示すものが多く、一度症状が出たら悪化するのは早いと考えなければなりません。

眼球内に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち眼内リンパ腫が生じると、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血など自覚症状が起こります。

眼内リンパ腫が生じた場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。

脊髄に中枢神経系原発リンパ腫が生じると、首や背中や下肢の痛み、骨格筋が委縮して筋力が低下するミオパチー、膀胱(ぼうこう)直腸障害などが起こります。

中枢神経系原発リンパ腫の検査と診断と治療

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腫瘍を形成する白っぽい病変として描出され、造影剤を用いると多くの場合、はっきりわかります。

腫瘍を形成する病変は、前頭葉、側頭葉、小脳、脳深部に多く認められ、脳の中に2個以上のリンパ腫が同時にできる多発例もしばしば認められます。

脳にだけリンパ腫ができたのか、脳ではない体のどこかに発生したリンパ腫が脳に転移したのかを区別するのは、困難です。

検査が終わってリンパ腫が疑われた場合は、すぐに定位脳手術という方法で腫瘍の一部分を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。

硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。

硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。

また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の治療では、メトトレキセートという抗がん剤を投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

脳腫瘍ができた部位によりますが、腫瘍の切除手術は行いません。脳リンパ腫の場合、周囲組織との境目が明確でないため完全切除は難しく、大きく切除すると脳機能に多大な影響を与えかねないためです。

残念ながら、いずれの治療法を選択しても再発率や死亡率は高いものです。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。

局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートを眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。

いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。

🇧🇳ただれ目(眼瞼縁炎)

まぶたの縁に起こり、再発を繰り返す炎症

ただれ目とは、まぶたの縁のまつ毛の毛根を中心に、炎症が起きて赤くなる疾患。正式には、眼瞼縁(がんけんえん)炎と呼ばれます。

原因には、体質、環境、感染、ビタミン不足、化粧品や薬剤に対するアレルギー反応などが考えられています。再発を繰り返し、長期経過をたどるものが多いようです。

主に黄色ブドウ球菌がまつ毛の毛根、汗腺(せん)、皮脂腺に感染することで発症し、目やにが出て、まぶたの縁が赤くなり、小さいぽつぽつとした湿疹(しっしん)、膿疱(のうほう)ができ、かゆみを伴います。場合によっては、湿疹が破れたり、皮脂腺の分泌が少ないために黄色いかさぶたが付着することもあり、目の回りの皮膚がかさかさになってきます。

体質的なアレルギーが原因で発症した場合は、ひどいかゆみを伴ってきます。再発を繰り返すことが多く、よくなったり悪くなったりしながら何年間も続くことがよくあります。まぶたが厚くなったり変形したりすることや、まつ毛の生え方の方向が不ぞろいになる睫毛乱生(し ょうもうらんせい)を起こすこともあります。重症化すると、まつ毛の欠損が起こることもあります。

ただれ目の検査と診断と治療

ただれ目の症状が現れたら、慢性にならないように早めに医師の治療を受けるようにします。途中で治療をやめると、再発を繰り返すこともあります。

細菌感染によるただれ目の治療では、目の回りを洗浄した上で、抗生物質を点眼します。また、抗菌剤の点眼薬を利用したり、かさぶたができた部分に抗生物質あるいは副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の軟こうを塗る方法もあります。

アレルギーによるただれ目の治療では、 化粧品や点眼薬、目の回りに付着した物など原因となっている物の使用をやめたり、取り除くことで治るため、全身検査を行って調べることもあります。原因となる物質には多くのものがあり、再発を防ぐためにも検査によって特定しておくとよいでしょう。薬剤や食物により、発疹やじんましんなどアレルギーを起こしたことのある人は、医師に報告しておくとよく、原則的に再使用すべきではありません。

場合によっては、まつ毛を抜いて治療をしたり、抗生物質の全身投与を行います。治りにくい場合では、自己免疫療法を行うこともあります。ビタミン不足によるものでは、ビタミン剤の局所および全身投与を行います。

日常生活における注意としては、目の回りに異常が見られたら、手でこすったりせずに安静を心掛け、清潔にして感染を広げないようにします。せっけんなどを使ってもよいのですが、なるべく皮膚に刺激が少ないものを利用するようにします。予防にも、顔を洗って清潔を心掛けることが一番。ビタミン不足など栄養問題があると、ただれ目を起こしやすくなりますから、日ごろから食事のバランスを保つことも心掛けます。

🇳🇿先天性進行性夜盲

夜間や暗い場所で目がよく見えなくなる先天性夜盲のうち、病状が進行するタイプの総称

先天性進行性夜盲とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる遺伝性の夜盲のうち、病状が進行するタイプの総称。網膜色素変性症、白点状網膜症 (白点状網膜炎)などを含みます。

夜盲症とも呼ばれ、俗に鳥目とも呼ばれる夜盲には、先天性夜盲と後天性夜盲があります。先天性夜盲にはさらに、幼児期より徐々に発症して病状が進行する進行性夜盲と、発症しても生涯進行しない停止性夜盲とがあります。進行性夜盲には、網膜色素変性症などがあり、停止性夜盲には、小口(おぐち)病、眼底白点症(白点状眼底)、狭義先天停止性夜盲症などがあります。

一方、後天性夜盲は、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシン(視紅)という物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。

後天性夜盲の場合は夜間や暗い場所で見づらくなることで気付きますが、先天性夜盲の場合は物心がつくころに気付くことが多く、生まれ付き視力障害が強い場合は、家族が気付いて眼科を受診することが多いようです。

先天性夜盲の一疾患であり、先天性進行性夜盲の一疾患でもある網膜色素変性症は、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患。夜盲を来す疾患の中でも特に重要なもので、通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

一般的に、幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲が主です。生活環境によっては、夜盲に気が付きにくいことも多いようです。

最初に、視野狭窄(きょうさく)が起こることもあります。人にぶつかりやすくなったり、車の運転で支障が出たりといったことが、視野が狭くなっていることに気付く切っ掛けになります。

最初に夜盲を起こした人も徐々に進行すると、視野が周辺部から狭くなってきます。続いて、視力の低下を自覚するようになり、色覚の異常を自覚する場合もあります。この視力低下や色覚異常は、後から出てくるのが典型的です。

なお、ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力、すなわち眼科でレンズを使用して測定する視力のことです。裸眼視力の低下は、疾患の進行や網膜の能力と関係ありません。

進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になります。

この網膜色素変性症では、目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜に存在している各種の細胞のうち、視細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激である電気信号に変える働きを担当しています。電気信号は視神経から脳へ伝達され、人間は物を見ることができるわけです。

視細胞には、大きく分けて二つの種類の細胞があります。一つは網膜の中心部以外に多く分布している杆体(かんたい)細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や、視野の広さなどに関係した働きをしています。もう一つは網膜の中心部である黄斑(おうはん)に分布して錐体(すいたい)細胞で、この細胞は主に中心の視力や色覚などに関係しています。

網膜色素変性症では、二種類の視細胞のうち杆体細胞が主に障害されることが多いために、暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてくるのです。

視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって、網膜色素変性症は起こるとされています。遺伝が関係する場合、血族結婚の子供に多くみられ、いろいろな遺伝形式をとることが知られています。

しかし、明らかな遺伝傾向が確認できる人は全体の50パーセントで、後の50パーセントの人では確認できず、親族に誰も同じ疾患の人がいません。その遺伝が確認できない場合でも、体を作っているさまざまな物質の設計図に当たる遺伝子のどこかに異常があると考えられ、ほとんどは何らかの形で遺伝と関係するものと捕らえるべきです。

遺伝傾向が確認できる人のうち最も多いのは、常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35パーセント程度を占めます。次に多いのが、常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10パーセント。最も少ないのが、X連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)を示すタイプで、全体の5パーセント程度となっています。少し特殊になりますが、ミトコンドリア遺伝を示すタイプもあります。常染色体性の遺伝では、発病に性差がほとんどみられません。

以上のタイプの遺伝傾向が確認できる場合、原因となる遺伝子異常には多くの種類があり、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型があるため、症状も多彩となっています。

基本的には進行性の疾患ですが、症状の進行の早さにも個人差がみられます。さらに、症状の起こる順序や組み合わせにも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚の異常を自覚し、後になって夜盲を自覚する人もいます。

他の目の疾患も合併します。水晶体が濁ってくる白内障は高齢になると増える疾患ですが、網膜色素変性症の一部の人では、より若い時から起こるために見づらくなることもあります。白内障の治療は 通常の手術と同じように行うことができます。

網膜色素変性症を発症してから長い経過の後に、矯正視力0・1以下の字が読みにくい状態になる人は多いのですが、暗黒になる人はあまり多くありません。

網膜色素変性症と同じく先天性夜盲の一疾患であり、先天性進行性夜盲の一疾患でもある白点状網膜症 (白点状網膜炎)は、常染色体劣性遺伝の疾患で成人になってから発症し、眼底に無数の小白点が散在して認められます。

加齢とともに白点は目立たなくなっていきますが、進行性の夜盲、視野狭窄、視力障害が生じることもあり、症状は網膜色素変性症に類似します。

先天性進行性夜盲の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、視力検査、視野検査、暗順応検査(暗い場所で、どれだけ対応できるかを調べる検査)、網膜電位検査、眼底検査などを行い、どのタイプの夜盲であるのかを判定します。

同じ網膜色素変性症であっても、それぞれの遺伝子異常に対応した型があり、症状も多彩で、症状の進行の早さにも個人差がありますので、医師の側が進行度をみるためには当然、1回の診察だけでは診断が不可能です。定期的に何回か診察や検査を受けて初めて、その人の進行度を予想することができます。

網膜色素変性症の人の眼底を検査すると、灰白調に混濁し、黒い色素斑(はん)が多数散在しています。網膜電位図検査で波形が平坦(へいたん)化することから、診断は比較的容易です。

網膜色素変性症、白点状網膜症 (白点状網膜炎)など先天性進行性夜盲には、現在のところ、網膜の機能を元の状態に戻したり、確実に進行を止める根本的な治療法はありません。対症的な治療法として、遮光眼鏡の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬の内服、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。

通常のサングラスとは異なるレンズを用いている遮光眼鏡は、明るいところから急に暗いところに入った時に感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、明るいところで感じる眩(まぶ)しさを軽減したりします。

ビタミンAは、アメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されています。しかし、この効果についてはさらなる検討が必要と見なされ、通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。

循環改善薬の内服による治療は、必ずしも全員に対して有効であるわけではありません。内服によって、視野が少し広がったり、明るくなる人もみられます。

確実な治療法がない現在、大切となるのは、非常に進行の遅い眼科疾患であることを理解して視力や視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野検査結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力や視野を有効に使い生活を工夫することです。

補助器具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読んだり、書いたりすることが可能です。コンピューターの音声ソフトを使えば、インターネットに接続したり、メールを送受信することも可能です。

さらに、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜など、網膜色素変性症を治療するための研究が、主として動物実験で行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても行える治療法とはなっていませんが、その成果は次第に上がってきています。

アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な網膜色素変性症の遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を長く作り続ける細胞を入れた小さなカプセルを、目の中に埋め込む治療も試みられています。

日本ではまだ、これらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始っています。

網膜色素変性症は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0・6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、担当医に相談して下さい。

🇩🇴匐行性角膜潰瘍(突き目)

目を突いた時の傷に細菌が感染して、潰瘍を生じる眼疾

匐行(ふくこう)性角膜潰瘍(かいよう)とは、目を突いたために起こる角膜の外傷。匐行性とはある方向に進行していくという意味で、突き目とも呼ばれます。

普通は、稲や麦の穂、木の小枝、草の葉などで、黒目の表面を覆う角膜を突いたとしても、傷が小さく細菌感染が起こらなければ、角膜の表面は修復能が高いため2〜3日で完全に治ります。しかし、何かで突いた時やゴミが刺さった時などに角膜にできた傷に、細菌が感染すると潰瘍ができます。

もともと慢性涙嚢(るいのう)炎のある場合は、細菌が常駐しているために特に潰瘍ができやすくなります。 感染する細菌は、ブドウ球菌、肺炎双球菌、緑膿(りょくのう)菌のことが多く、緑膿菌や真菌(かび)が感染すると重症になります。

急激な眼痛、まぶしさ、異物感などの刺激症状が強く起こります。涙が出て、まぶたははれ、白目の表面を覆う結膜は充血します。頭痛も起こり、視力はかなり低下します。

進行は早く、角膜の中央部にできた潰瘍は周囲および深部に向かって進行し、角膜の後方の前房にうみがたまり、適切な治療が行われないと、角膜に穴が開いて失明することもあります。

潰瘍が進んで細菌が眼内にまで移行し、炎症がぶどう膜、硝子体(しょうしたい)などに波及した場合には全眼球炎となり、眼球全体がしぼむことがあります。こうなると、治ってからも、黒目を覆う角膜が白く濁ったり、時にはこぶのように突き出して角膜ぶどう腫(しゅ)を残すことがあります。角膜ぶどう腫は、虹彩(こうさい)が角膜に癒着して混濁、膨張したものです。

潰瘍があまり進まなかった時は、濁りも限局しているので、瞳(ひとみ)の中心部に濁りが残らなければ、視力もそれほど障害されません。潰瘍が進んで角膜の全面に濁りが残った場合は、視力が著しく低下します。

匐行性角膜潰瘍(突き目)の検査と診断と治療

目を何かで突いた時は、軽くても早くに眼科医の診察を受けます。手当が遅れると失明することもありますが、初期に適切な治療を受ければ、大部分は治ります。ゴミが刺さった時は、こすらずに目を閉じて涙で流したり、水で目を洗ったりします。それでも異物感が残れば、早くに眼科医の診察を受けます。

治療としては、角膜異物があれば除去し、抗生物質の点眼や、眼球への注射、内服、静脈注射を行います。虹彩炎が起こるのを防ぐために、アトロピンの点眼を行って瞳を広げます。

黒目を覆う結膜が白濁し、混濁が全面に残った場合は、 潰瘍が治まった状態で角膜移植を行います。

2022/08/16

🇵🇦慢性結膜炎

結膜の充血、目やにが長く続く状態

慢性結膜炎とは、結膜の軽い充血、目やにが続く状態。急性結膜炎より症状は軽いものですが、なかなか治りにくいことがあります。

結膜とは、まぶたの裏側から白目の表面を覆っている薄い膜のことで、この部分に起こる炎症を総称して結膜炎といい、症状が比較的急激に現れる急性結膜炎と、発症が緩やかでいつごろかわからない慢性結膜炎とに大きく分けられます。

慢性結膜炎の原因はいろいろで、細菌の感染、真菌(かび)の感染、アレルギー、機械的刺激、薬品類の化学的刺激、涙液の分泌が低下するドライアイなどによるものがあります。細菌類では、ブドウ球菌類や緑膿(りょくのう)菌が主な原因となります。

症状としては、結膜の軽い充血があり、少し目やにが出ます。また、流涙、異物感、不快感、かゆみ、目が乾いた感じなどがあることがあります。目やには、急性結膜炎ほどではなく、朝の起床時に目頭やまつげに少量ついている程度のことがほとんど。

時々、症状がひどくなることもあります。コンタクトレンズの使用などが原因となって、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜に、ぶつぶつの乳頭ができたり、小さな砂状の結晶である結膜結石ができることもあります。

なお、白目が赤く充血してはいるものの結膜炎ではないものに、虹彩(こうさい)毛様体炎、強膜炎、上強膜炎などがあります。目だけではなく全身の疾患の一つの現れである場合がありますので、気を付けなければいけません。

慢性結膜炎の検査と診断と治療

ひどくない程度でも不快な症状が持続するようなら、眼科専門医の診察を受けます。

医師の診断では、目やにの中の細菌培養を始め、結膜からこすり取った細胞のサンプルや目やにの構成成分の顕微鏡検査などが行われます。ドライアイが疑われれば、涙液分泌能検査が行われます。

治療としては、細菌性、真菌性では抗菌剤の点眼が行われます。非ステロイド性消炎剤や消炎酵素剤の点眼も行われます。アレルギー性でかゆみの強い場合は、初めはステロイド剤の点眼で強力に炎症を抑え、次いで非ステロイド性の抗アレルギー剤、消炎剤や消炎酵素剤の点眼で病状の鎮静化が図られます。

ドライアイでは、人工涙液の点眼、乾燥予防などが行われます。結膜結石では、結膜から露出すると異物感の原因となるので、点眼麻酔をして針先などで除去します。

慢性結膜炎は、急性結膜炎に比べるとなかなか頑固で、治りにくいものです。根気よく治療し、睡眠、食事にも気を配り、体調を整えることが必要となります。急性結膜炎の場合と同様、洗眼はかえって好ましくありません。

充血を除く目的のみで点眼薬を連用するのも、副作用を招いたり、後にかえって充血を招いたりすることがあるので、好ましくありません。

🇹🇼閉塞隅角緑内障

突然眼圧が高くなり、激しい目の痛みや頭痛が生じる緑内障

閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障とは、眼内液である房水の出口を虹彩(こうさい)の根部がふさぎ、房水の流出が障害されて、急激に眼圧が上昇する疾患。緑内障発作、急性閉塞隅角緑内障とも呼ばれ、放置すれば短期間に失明する可能性がある疾患です。

房水の出口である前房隅角部が狭くなっている場合に、起こりやすくなります。その原因としては、生まれ付きの素因、また、強い遠視や老化のために、水晶体が膨らんで虹彩を持ち上げ、隅角部が狭くなることが挙げられます。さらに、精神的過労、睡眠不足、精神的な興奮、さまざまな生活上の誘因も考えられます。

高頻度でみられるのは、50歳以上の遠視の女性です。

自覚症状としては、急激な視力障害と、裸電球を見ると回りに虹(にじ)が見える虹視が特徴的。黒目の白濁、白目の充血、瞳孔(どうこう)の散大が起こるほか、激しい眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などを伴うこともあります。頭痛や嘔吐が激しい時は、ほかの内科的疾患と誤りやすいので、注意が必要です。

この閉塞隅角緑内障の経過は急激で、視神経の急激な血行不良から神経線維が一気に、大量に死滅し、時には1日で失明してしまいます。発作が起きたら、数時間以内に専門医を受診します。

閉塞隅角緑内障の検査と診断と治療

閉塞隅角緑内障(緑内障発作)では、目の症状以外に頭痛、吐き気、嘔吐などの全身症状がみられるため、眼科以外の内科や脳外科などの診療科を受診してしまうことがありますが、視覚障害がないかどうかの確認をすることが重要です。

眼科の医師による検査では、通常は60〜80mmHgの急激な眼圧上昇と、隅角検査で閉塞隅角、充血や瞳孔の散大を認めます。

治療では、まず目を冷やし、グリセリンの内服、縮瞳剤の点眼、高浸透圧剤の点滴などで、眼圧を下げるようにします。しかし、多くは再発するため、眼圧が下がったら、房水の出口を閉じている周囲虹彩切除を主とした手術や、レーザーによる虹彩切開を行います。

最初は片方の目だけに発作が起こっても、早晩、両目に起こることが多いので、予防のために、もう一方の目の虹彩切除、またはレーザー切開が必要です。

あらかじめ、閉塞隅角緑内障を起こす危険性があることがわかれば、予防的処置を講ずることができますので、強い遠視の人、40歳すぎの人、眼球の前部にある前房が浅い、眼球が小さいなど生まれ付きの素因があると指摘されたことのある人では、定期的に緑内障の眼圧検査を受けることが大切です。

日常生活では、紅茶、酒、コーヒーなどを大量にとることを控え、水分も控えます。加えて、精神的ストレスのたまらない生活を送るように心掛けます。

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