2022/08/03

🇸🇲ミュンヒハウゼン症候群

重症慢性型の虚偽性障害で、疾患を装うのが特徴

ミュンヒハウゼン症候群とは、自分に周囲の関心を引き寄せるために虚偽の話をしたり、自らの体を傷付けたり、疾患を装ったりする重症慢性型の虚偽性障害。

1951年にイギリスの医師、リチャード・アッシャーによって発見され、ビュルガーの著作から「ほら吹き男爵」の異名を持ったドイツ貴族・ミュンヒハウゼンにちなんで、疾患名が付けられました。自分以外の子供や配偶者などを傷付けたり、病人に仕立て上げて、周囲の関心を引き寄せる虚偽性障害は、代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれます。

ミュンヒハウゼン症候群の発症者は、疾患を創作、もしくはすでに罹患(りかん)している疾患を殊更に重症であるように誇張し、病院に通院、入院します。一つの疾患の問題が解決したり、虚偽が見破られたり、小康状態に陥ると、さらに新たな疾患を作り出します。例えば、心筋梗塞(こうそく)、吐血、喀血(かっけつ)、下痢、不明熱、幻覚、妄想、心的外傷後ストレス障害。

重篤な発症者と見せ掛けるために、自傷行為や検査検体のすり替え、偽造工作といったものを繰り返し行うこともあります。発症者の腹壁には縦横に傷跡が走っていたり、指や手足が切断されていることもあります。下痢、不明熱は、自分で大腸菌などのバクテリアを注入したことが原因である場合もしばしばあります。

発症者はけがや疾患という口実を利用して、周囲の人間関係を操作することを目的に、同情をかったり、懸命に疾患と闘っている姿を誇示します。また、疾患に関わること、関わらないことに関係なく、独特の世界を作り上げるエピソードを創作する空想虚言癖を伴うことが多くみられます。エピソードによる病歴は多彩であり、多種多様な既往歴を話すことが多くみられます。ただし、そのエピソードや時期に関してはあいまいなことが多く、時期や内容も話す相手によって異なることが多くみられます。

発症者は、自らの診断と病院の診断が異なった場合、病院をすぐに変えるドクターショッピングを日常的に繰り返し、検査や手術などを繰り返します。また、さまざまな診療科を受診するなどの行動をとる場合があります。

そのため、病院遍歴を調べなければミュンヒハウゼン症候群を見付けることは難しく、主に入院、検査時の自傷行為、検体のすり替えの目撃、発覚などによって、初めて疑いが持たれるケースが多くなります。大半の症例は、精神科ではなく内科、外科といった診療科で発見されます。

ストレスおよび境界性人格障害がしばしば関連があるとされますが、正確な原因は不明。罹患する切っ掛けは小児期の手術の経験であることが多く、その時の記憶から周囲の同情や気を引くために、手術や入院を要する疾患を作り出す行為を繰り返すことが認められています。幼い頃に、精神的な虐待、身体的な虐待を経験しているケースもあります。治療による薬剤や手術の副作用が蓄積されていくため、予後はよくありません。

似たような疾患に詐病が存在しますが、疾患を装うことによって主として経済的利益の享受や病欠などを目的とするため、大きなリスクを避ける傾向にあります。ミュンヒハウゼン症候群では、疾患を装うことによって同情を引くといった精神的利益を目的とするため、手術や検査といったリスクをいとわず、むしろ積極的に協力する点が大きな違いとして挙げられます。

ミュンヒハウゼン症候群の検査と診断と治療

医師による診断は、身体疾患を除外するために必要なあらゆる検査を含め、病歴と診察に基づいて行われます。

治療が成功することは、まれです。決定的な治療法が存在せず、医師と発症者が協力して問題を解決できるということを伝えるのは有益なものの、自分で自分を重症の疾患にしようとして自らの体を傷付けたり、手術を受けたり、薬剤を飲んだりするので、さまざまな副作用、機能障害が出てくる危険があります。

発症者は、治療への要求が満たされることによって最初は症状緩和をみても、その要求はエスカレートするのが典型であり、ついには医師の意思や能力の範囲を超えてしまいます。治療の要求に正面から対決したり拒否したりすると、しばしば怒りの反応を導くことがあり、一般には医師や病院を替えてしまいます。

精神科治療は通常拒否されたり避けられたりしますが、危機打開の最低限の手助けとして、障害を早くに認識し、危険な処置や、過剰または不要な薬物の使用を避けるようにという助言と、フォローアップケアは受け入れられることがあります。

🇲🇹ミリタリーネック

首の骨である頸椎が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれが起こる障害

ミリタリーネックとは、首の骨である頸椎(けいつい)が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれなどが起きる障害。アーミーネック、ストレートネックとも呼ばれます。

通常、頸椎は前に向かって軟らかに湾曲している前湾構造をしており、これにより頭の重さを分散させ、体全体のバランスを取っています。しかし、パソコンや携帯電話、スマートフォンを使うなどで前かがみになって、うつむく姿勢を続けていると、頸椎が頭の重さを支えられなくなるために、生理的に正常な前湾構造が失われてゆがみ、真っすぐな状態に近くなるミリタリーネックとなります。

生理的に正常な頸椎の前湾角度は30~40度であるのに対して、ミリタリーネックになった頸椎の前湾角度は30度以下を示します。つまり、首の骨である頸椎の形は、陸軍の軍人が頭のてっぺんからかかとまで真っすぐな姿勢になる気を付けをして、あごを手前に引いたような状態になります。

ミリタリーネックになると、歩行などの緩やかな動作を行う際にも、分散しない頭の重さが常時、首回りの筋肉に加わることになります。この負担が長期間にわたって継続すると、首回りの筋肉や神経を徐々に圧迫し、血流も悪くなって、肩凝りや手のしびれが起きることがあります。

パソコンや携帯電話、スマートフォンの普及と比例して発症するケースが多くなっている点も、ミリタリーネックの大きな特徴であり、仕事中に限らず休憩中や移動中も画面を見詰める20~40歳代の働き盛りに多く、特に女性は男性の2倍ほど多いといわれています。女性は首が細いため、筋肉の疲労が蓄積しやすいのが原因と見なされます。

ミリタリーネックの症状としては、肩凝り、手のしびれ、頭痛、めまいのほか、首の痛み、首の傾き、首の動かしにくさ、上方の向きにくさ、寝違い、枕の不一致、吐き気、自律神経失調症などがあります。

また、ミリタリーネックが引き金となって、頸椎の椎間板の一部が後方へずれて神経を圧迫する頸椎椎間板ヘルニアや、頸椎の椎間板と椎骨の変性によって脊髄や神経根が圧迫される頸椎症が起きることもあります。

ただし、一時的に症状が改善したように感じられるケースや、症状が度々治まるケースもあることから、症状が慢性化しない限りミリタリーネックを見極めることが難しい面もあります。

ミリタリーネックの検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、頸椎の形状を確認します。頸椎の前湾の角度が少なく、生理的に正常な前湾の角度の欠如が確認された場合は、ミリタリーネックと確定されます。

確定された場合は、さらにMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、症状の進行状況を確認します。また、ミリタリーネックが要因となって頸椎に負担がかかり、合併する可能性を持つ頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などの有無も確認します。

整形外科の医師による治療では、前かがみになって、うつむくという不適当な姿勢を長時間継続することが大きな要素を占める障害のため、姿勢を改め、スマートフォンの画面を見詰め続けたりする悪い習慣を避けることが根本となります。根本を解決しない限り、どのような治療を行っても再発の危険性がぬぐえないためで、実際、ミリタリーネックを発症した人の半数以上が再発を経験しています。

具体的には、パソコンを使って長時間のデスクワークをする人の場合は、画面を視線の高さに合わせるようにし、負担のかかる前かがみの姿勢が続かないようにしていきます。また、一定時間おきにストレッチを行い、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげるようにしていきます。重症ではない限り、姿勢に注意しストレッチを行うことで十分改善できます。

継続的な負担から頸部に炎症を起こし、痛みが強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤や筋弛緩(きんしかん)剤を用いて治療します。局所の安静のために、頸椎固定用のカラー(えり巻き式補装具)を首に装着することもあります。

ミリタリーネック対策の矯正枕(まくら)もあり、睡眠時を利用して、首に当たる部位の枕の高さを調節することによって、首に正常な湾曲を強要させて矯正していきます。背筋を強制的に伸ばす働きを持つ姿勢矯正ベルトもあります。

そのほかの理学療法としては、外部から温めることによって血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するホットパックなどの温熱療法、首の牽引(けんいん)と休止を繰り返すことによって首の痛みや手のしびれを緩和する頸椎牽引療法、低周波治療、レーザー治療などがあります。

🇲🇹慢性膀胱炎

膀胱内の粘膜の炎症が慢性的に持続している疾患

慢性膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱内の粘膜の炎症が慢性的に持続している疾患。ほとんどが細菌の感染によって起こります。

膀胱炎には大きく分けて、慢性膀胱炎と急性膀胱炎があります。大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌が感染して起こる急性膀胱炎は多くの場合、頻尿、排尿痛、尿の混濁、残尿感といった症状が現れるのに対し、慢性膀胱炎では、それらの症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。

この慢性膀胱炎には、急性膀胱炎から移行するものと、初めから慢性的な症状が現れるものとがあります。また、原因となる基礎疾患のない慢性単純性膀胱炎と、原因となる基礎疾患がある慢性複雑性膀胱炎とがあります。

慢性単純性膀胱炎は、急性膀胱炎の症状が慢性的に続く膀胱炎のことです。中年女性に多いとされています。

一方、慢性複雑性膀胱炎は、何らかの基礎疾患が原因となり、尿の流れが滞りがちな状態や、異物により細菌の感染が持続する状態において発症する膀胱炎のことです。原因となる基礎疾患には、前立腺(ぜんりつせん)肥大症や前立腺がん、膀胱結石、尿路結石、膀胱腫瘍(しゅよう)、尿道カテーテル留置などがあります。

例えば、前立腺肥大症で残尿を伴う場合は、膀胱内の細菌が排出されずに繁殖を続けるので、慢性複雑性膀胱炎になることがあります。膀胱結石の場合は、異物である膀胱内の結石に細菌がくっついているため、細菌の繁殖、感染が長く続き、慢性複雑性膀胱炎になります。尿道カテーテルを留置している場合は、留置後1週間で異物であるカテーテルに細菌がくっつくので、慢性複雑性膀胱炎は必発です。

慢性膀胱炎の原因菌となるのは、大腸菌以外の緑膿(りょくのう)菌、腸球菌、ブドウ球菌などの割合が急性膀胱炎よりも高く、複数の細菌が感染していることもあります。また、結核菌によるものもあります。細菌の感染以外のものとして、がんに対する放射線治療後に起こる放射線性膀胱炎や、原因が不明な間質(かんしつ)性膀胱炎という疾患があります。

慢性膀胱炎の症状としては、下腹部の不快感、頻尿、排尿痛、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛、血尿、尿失禁など急性膀胱炎と同様の症状があり、それが持続したり繰り返したりします。排尿後に何となくすっきりしなかったり、尿の混濁があったりするだけで、ほとんど症状がないことも少なくありません。

症状がはっきりしないこともありますが、膀胱炎の症状が長く続く時や繰り返す時、血尿が続く時、発熱を伴う時などには、原因となる疾患がないか検査したほうがよい場合もあります。このような時には、泌尿器科の専門医を受診することが勧められます。

医師による慢性膀胱炎の診断は、症状と尿検査から行われ、通常、血液検査やX線検査では異常は認められません。原因となる基礎疾患がある慢性複雑性膀胱炎が疑われる場合には、超音波検査、排せつ性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)、膀胱鏡検査などの検査も行われます。また、細菌培養を行って原因菌を調べることは、適切な治療のためにも大切です。

医師による治療では、原因菌に有効な抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。慢性複雑性膀胱炎の場合には、基礎疾患を治療しない限り、完治しません。特に基礎疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

🇬🇷本態性腎出血

腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血の総称

本態性腎出血(ほんたいせいじんしゅっけつ)とは、腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血。特発性腎出血とも呼ばれます。

本態性とは、原因が明らかではないという意味で、特発性とほぼ同義です。

目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的血尿が現れ、数時間から数日続きます。腎臓からの出血といっても、体内に血液がたまるわけではありません。一般に男性に多く、20〜30歳代の比較的若年者に多くみられます。

なお、ナットクラッカー(クルミ割り)現象による腎出血は、以前は本態性腎出血に含まれていましたが、左側の腎臓の静脈がそばの2本の動脈に圧迫されることで、静脈の流れが悪くなってうっ血が起こり、それが血尿の原因になると明らかになったため、現在では含まれません。

本態性腎出血も、何らかの原因で片側の腎臓内の微少な血管が破れ、軽いうっ血が起こることなどが原因と考えることもできます。

明らかな原因や誘因がなく、急に真っ赤な尿が現れるため、驚いてしまうことが多いようです。一度だけの場合もありますが、数日間続くこともあります。また、再発することもあります。

真っ赤な尿のすべてが、本態性腎出血ではありません。原因を特定できない本態性腎出血は、肉眼的血尿の発症者の約10人に1人にみられるだけです。

他の肉眼的血尿の原因となる疾患として、膀胱(ぼうこう)炎などの尿路感染症、尿管結石などの尿路結石症、膀胱がんなどの尿路悪性腫瘍(しゅよう)、急性糸球体(しきゅうたい)腎炎やIgA腎症などの糸球体腎炎、膀胱や尿道に異物が入って炎症を起こす尿路異物などが挙げられます。

また、健常者でも激しい運動後、一時的に肉眼的血尿を認めることがあります。いずれにおいても血尿が認められた時、特に持続したり、何度も再発したりする場合には、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。

本態性腎出血の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、まず他の原因による肉眼的血尿を除外します。具体的な検査としては、尿沈渣(ちんさ)、尿細胞診、尿細菌培養、超音波、CT、MRI、静脈性腎盂(じんう)造影(IVP)、膀胱鏡などを行います。他の原因を除外することにより、本態性腎出血と診断を確定します。

本態性腎出血と診断されたら、腎臓の働きに関しては正常で、健康人と何ら変わることはありません。また、貧血になったり、IgA腎症のように将来、腎臓の働きが悪くなるといった恐れはないのが普通です。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

自然に治ることも多いものの、安静が第一です。肉眼的血尿が見られる間は、血尿を増やしてしまう恐れがある過労や風邪などに注意しながら、1日の平均的な成人の尿量である1~1・5リットルを保つために十分な水分補給を心掛けます。飲酒や激しい運動も、控えたほうがよいでしょう。

🇮🇹扁平母斑

先天的もしくは後天的に、体のさまざまな部位に生じる茶色の平らなあざ

扁平母斑(へんぺいぼはん)とは、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざ。いわゆる茶あざで、カフェオレ斑とも、カフェオレ・スポットとも呼ばれます。

ほくろのように、皮膚から盛り上がることはありません。そのために、盛り上がりのないあざという意味で、扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーのような黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざという意味で、カフェオレ班、カフェオレ・スポットと呼ばれます。

色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、扁平母斑が生じます。大きさや形はさまざまで、類円形から紡錘形、辺縁がギザギザした不正型の小さいあざが多数集まっていたり、面状に分布する比較的均一な大きいあざであったりします。淡褐色から褐色のあざの中に、直径1ミリ程度の小さな黒色から黒褐色の点状色素斑が多数混在することもあります。

ほとんど、生まれ付きに存在するか幼児期に発生しますが、思春期になって発生する場合もあり、遅発性扁平母斑とも呼ばれます。

思春期になって発生する場合には、毛が同時に生えてくることが多く見られ、ベッカー母斑と呼ばれています。特に男性の肩甲部や胸部の片側に、少し濃い発毛を伴うベッカー母斑も発生します。海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。

先天性、遅発性の扁平母斑とも通常、悪性化することはありません。

しかし、生まれた時から丸い扁平母斑が6個以上ある場合には、神経線維腫(しゅ)症1型(レックリングハウゼン病)のこともあります。神経、目、骨など皮膚以外の場所にも症状が出てくる可能性がある症候群で、早めに総合病院の皮膚科を受診したほうがよいでしょう。

扁平母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。顔や腕など、肌の露出部にあって気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

扁平母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)が疑われる場合は、神経線維腫や聴神経腫瘍、骨格異常の有無など検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、病変が浅いので、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、扁平母斑が消失したり軽快します。

レーザー治療の長所は治療を行った部位に傷跡ができにくいことですが、すべての扁平母斑に有効ではありません。思春期になって発生する遅発性扁平母斑では、多くのケースで効果を認めます。ベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが重要になります。

先天性の扁平母斑では、思春期以降に色調が強くなって認識したケースでレーザーが効くのはまれで、レーザーを照射してしばらくは消えていたものが、次第に再発する場合もしばしばあります。再発の程度は、テスト治療で推測できます。

しかし、先天性の扁平母斑でも乳幼児期からレーザー治療を行うと、再発が少なく効果を認めることが多くなります。そのため、有効率を高めるために、皮膚が薄い0歳児からレーザー治療を行う医療機関が増えてきました。

レーザー治療が無効で扁平母斑がすぐに再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術が行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

🇵🇹分裂膝蓋骨

正常では1つの骨である膝蓋骨が、先天的に2つ以上に分裂している状態

分裂膝蓋骨(しつがいこつ)とは、正常では1つの骨である膝蓋骨が先天的に2つ以上に分裂している状態。二分(にぶん)膝蓋骨とも呼ばれます。

膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋骨は、下肢の中央、大腿(だいたい)骨の下端にあり、大腿四頭筋腱(けん)と膝蓋腱(膝蓋靭帯〔じんたい〕)により上下から支えられています。膝の屈伸運動、歩行に重要な働きを担っています。

分裂膝蓋骨は、通常1個の骨化核から生じる膝蓋骨の骨形成が先天的に妨げられて、癒合不全を生じ、2つ以上に分裂して生じると考えられています。

出生100人のうち約5人に生じ、9対1で男性に多く、両膝に分裂がある例は約40パーセントです。

分裂のタイプは数種類ありますが、大腿四頭筋の外側広筋が付着している膝蓋骨の外側上方に分裂がある型がほとんどを占めます。

膝蓋骨が2つ以上に分裂しているからといって、必ず痛みがあるわけではなく、ほとんどの場合は、痛みなどの症状を伴うことなく日常生活を送れます。

しかし、激しいスポーツ活動や、事故や転倒などで膝を床や地面に強くぶつけた打撲が切っ掛けで、膝蓋骨の分裂した部分に大きな負担が加わって炎症が発生し、膝蓋骨の上部などに痛みが現れることがあります。

激しいスポーツが切っ掛けとなる場合は、成長期に当たる10~17歳の男性に多くみられるのが特徴です。

痛みが発生しやすいスポーツとしては、野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、短距離走などの陸上競技が挙げられ、これらの急激なダッシュや急停止など、特に太ももの筋肉である大腿四頭筋を酷使する運動では、膝蓋骨に付着している大腿四頭筋によって何度も繰り返し引っ張られて、膝蓋骨の分裂した部分に負荷が蓄積したり、異常可動性が生じたりした結果、痛みが起こります。

現れる症状は、ジャンプやランニング時の膝蓋骨の外側上方もしくは下端の痛みで、押すと痛む圧痛や、骨の隆起などもみられます。痛みや機能障害を伴う分裂膝蓋骨を、特に有痛性分裂膝蓋骨と呼びます。

スポーツ活動が思うようにできなくなったり、ひどい場合には、歩行時や階段昇降時に痛みを伴ったり、膝に水がたまって日常生活にも支障を来すこともあります。

分裂膝蓋骨の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査で、2個または2個以上に分裂した膝蓋骨を確認した場合に、分裂膝蓋骨と判断します。

有痛性分裂膝蓋骨では、触診で膝蓋骨の分裂部分に骨性の盛り上がりを感知することがあります。癒合不全により骨の位置のずれ(転位)がある場合は、異常可動性を感知することもあります。また、膝蓋骨の分裂部分に一致して、はっきりとした圧痛と叩打(こうだ)痛を認めます。

整形外科の医師による治療では、症状が軽度であれば、痛みが治まるまでスポーツ活動を中止して安静を保つことで、自然と痛みは治まります。

より積極的な治療では、炎症を抑え、膝への負担を軽減するための保存的療法が主となります。炎症を抑える目的では、消炎鎮痛剤入りのシップ薬や塗り薬による薬物療法、患部を温める温熱療法を行います。

痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤を内服したり、分裂部周囲にステロイド剤と局所麻酔剤を注射すると、痛みが軽快することがあります。

膝の負担を軽くするには、膝をテーピングやサポーターで固定する装具療法、大腿四頭筋をストレッチングしたり膝周辺の筋肉を鍛える運動療法が効果的です。

これらの治療法でも痛みなどの症状が改善されない時や、何度も再発を繰り返す時は、膝蓋骨の一部を摘出または縫合する手術を行います。

予防法としては、膝への負担を減らすことが第一です。スポーツ活動前後のウォームアップとクールダウンはしっかり行い、膝を急激に動かしたり、ジャンプ動作を繰り返したり、長時間のランニングを行うなど、膝を酷使する無理な運動は避けるようにします。

🇪🇸頻尿

排尿をした後、すぐに尿意を感じ、排尿回数が多くなる状態

頻尿とは、排尿をした後、一定の時間の経過を待たず、すぐに尿意を感じ、排尿回数が異常に多くなる状態。1日で、起床時に10回以上の排尿、就寝時に2回以上の排尿があることが、頻尿の目安となります。

水分を大量に摂取した場合に排尿回数が多くなるのは、体内に急激に増えた水分を排出しようとする一時的、生理的な反応で、頻尿には相当しません。尿崩症や糖尿病などで1日の尿量が3~15 リットル近くにもなるなどの内分泌異常や、慢性腎不全(じんふぜん)などの疾患によって尿量自体が増え、排尿回数も多くなるのは、頻尿ではなく1日の尿量が多い多尿に相当します。

成人の膀胱(ぼうこう)容量は500ミリリットルほどで、普通は300ミリリットルほどの尿がたまると尿意を感じることになります。そして、成人の1日の排尿量は通常、1〜2リットルであり、起床時に排尿をする回数は7回程度です。就寝時の場合、若い時には一度も排尿はありませんが、高齢者になると腎臓の尿濃縮力の低下により一回ぐらいはあるようになります。

頻尿には、膀胱が敏感になり、尿がほんの少したまると不快感を覚えて尿をしたくなるケースや、疾患などが原因となって膀胱そのものの容量が普通より小さくなり、すぐに尿をしたくなるケース、医学的に認められる疾患がないのに心理的要因によって症状だけが出るケースがあります。

膀胱が敏感になり、尿が少したまるとすぐに尿意を催すケースの大部分は、膀胱炎によるものです。膀胱の粘膜が炎症を起こすために、その部分の神経が過敏になり、尿が少したまるだけで尿意を感じます。多くは排尿時の痛みを伴い、尿が濁っています。また、排尿後もまだ尿が残っているようで、不快感を覚えます。

膀胱炎は女性に多く、原因の大部分は細菌感染で、大腸菌が最も多く、ブドウ球菌、連鎖(状)球菌などによることもあります。膀胱は細菌に対して抵抗力があるので、単に細菌が侵入してきただけでは炎症は起こりにくいのですが、体力の低下、尿の停滞、排尿の我慢のしすぎ、便秘、不潔な性交、妊娠、冷えなどが誘因になって発症します。

同じような症状で男性に多いのは、尿道炎と前立腺(ぜんりつせん)炎です。

膀胱の容量が小さくなり、すぐに尿意を催すケースは、60歳以上の男性に起こる前立腺肥大症でよく起こります。尿道付近の前立腺組織が肥大して尿道が圧迫されることにより、最初の症状として夜間の排尿回数が多くなります。これは、排尿しても全部が出切らずに、50〜150ミリリットルほど残るために、相対的に膀胱容量が小さくなったのと同じになって頻尿が起こってくるものです。

同様の症状はこのほか、前立腺がん、慢性腎不全、膀胱が尿道に移行する部分の筋肉が硬くなる膀胱頸部(けいぶ)硬化症、あるいは、膀胱結核や間質性膀胱炎、膀胱の治療のための放射線照射などにより膀胱の筋層が繊維化して、膀胱の容量が小さくなる委縮膀胱でもみられます。

女性の場合、妊娠すると膀胱が子宮によって圧迫されるので、頻尿となります。同様に、進行した子宮がんでも、頻尿を起こします。

そのほかに、内分泌膀胱症というのがあります。この疾患は、女性の膀胱頸部の刺激によって、頻尿と排尿不快感を起こすものです。月経に関係があり、月経が始まる1〜2週間前から症状が起こり、月経が終わると症状はなくなります。

さらに、やせた若い女性にしばしば認められる遊走腎(ゆうそうじん)というのがあります。この疾患は、腎臓が下がることから、腰痛とともに頻尿を起こすものです。

尿意は神経系によって起こされるので、脳腫瘍(しゅよう)や脳梗塞(こうそく)、脳出血などの脳血管障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害、パーキンソン病などの脳の障害で排尿を調節している神経系が障害された場合にも、頻尿を起こします。これら神経系の障害で膀胱の活動性が過剰になり、尿意切迫感を主症状として、頻尿、夜間頻尿、切迫性尿失禁を伴うこともある排尿障害は、神経因性膀胱、あるいは神経因性過活動膀胱と呼ばれます。

医学的に認められる疾患がないのに、心理的要因によって頻尿の症状だけが出るケースは、膀胱神経症(神経性頻尿、過敏性膀胱)で起こります。夜間は排尿の回数が多いわけではないのに、昼間は頻繁に尿意を催すという場合は、膀胱神経症が疑われます。この場合は、排尿痛も残尿感もなく、また尿の検査をしても何の異常も認められません。

一般に、女性に多くみられます。神経質で几帳面(きちょうめん)、強迫的傾向にある人によくみられ、何かに熱中していれば、尿のことが気にならず、尿意も起こりません。なお、膀胱は精神的な影響を受けやすい器官ですので、軽い膀胱炎にかかった後も、少しの精神的刺激によって、尿意をたびたび感じるようになることがあります。

頻尿など排尿に関係した症状などで日常生活に支障がある場合は、不安がらずにまず泌尿器科などを受診します。

頻尿の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、一般的には問診、直腸診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、頻尿の原因を探ります。

泌尿器科の医師による治療は、頻尿の原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。

急性膀胱炎の場合には、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

慢性膀胱炎の場合には、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

慢性膀胱炎の治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

細菌性の尿道炎の治療では、抗生物質が有効ですが、短期間で治らず、しばしば慢性化します。慢性化しても、それほど強い症状は続きません。強い症状はなくても、ぐずぐずして治りにくいのが、慢性尿道炎の特徴です。

強い痛みや不快症状がある急性(細菌性)前立腺炎は、入院して鎮痛剤で痛みや不快症状を抑え、同時に感染菌に効く強力な抗生物質による治療を行います。前立腺は薬物移行が悪いため、治療効果が得られるまでに時間がかかることも多く、敗血症に移行することもあるので注意が必要です。また、再発を繰り返すと慢性化してしまうので、医師の指示通り、服薬や治療を継続しなければなりません。

逆に、慢性前立腺炎は大事に至ることはありません。慢性(細菌性)前立腺炎では、抗菌剤を4~12週間程度服用します。また、前立腺のマッサージで、分泌腺内にたまっている膿性分泌物を排出させます。

慢性(非細菌性)前立腺炎でも、細菌感染の可能性もある場合には、抗菌剤を4〜8週間程度服用します。細菌の可能性がない場合や、前立腺痛では、筋弛緩(しかん)剤、温座浴などの温熱治療、漢方薬が用いられます。さらに、精神科医との連携も必要な場合があります。

前立腺肥大症が頻尿の原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法が行われます。

前立腺肥大症の薬物療法は、近年では薬の開発もかなり進んでおり、効果があることが確認されています。治療に使用される薬には、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)、抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン剤)、生薬・漢方薬の3種類があります。

α1受容遮断薬は、交感神経の指令を届けにくくし、筋肉の収縮を抑えて尿道を開き排尿をしやすくする薬で、ミニプレスが代表です。抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンの働きを抑制する薬で、プロスタール、パーセリンなどが一般的です。その効果は服用してから3カ月程かかり、前立腺を20~30パーセントぐらい縮小させることができます。生薬・漢方薬は、植物の有効成分のエキスを抽出したもので、むくみを取ったり、抗炎症作用などの効果があります。

前立腺肥大症の手術療法には、経尿道的前立腺切除術(TURP)、レーザー治療、温熱療法などがあります。

経尿道的前立腺切除術は、先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。レーザー治療は、尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして、肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。温熱療法は、尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF波やマイクロ波を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。

委縮膀胱が頻尿の原因の場合は、委縮した膀胱を大きくするために、膀胱を切り取って腸管を利用した膀胱拡大術が行います。内分泌膀胱症が頻尿の原因の場合は、男性ホルモンを用いて治療します。

遊走腎が頻尿の原因の場合は、症状が軽ければ治療を行わず、そのまま経過観察します。症状の強い場合には、腹帯、コルセットなどを使用して腹壁筋の緊張を保持します。同時に、腹筋、背筋を強化するための運動療法を行うこともあります。やせている人は、腎臓の周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持、補強を行うために体重を増加させます。

神経因性膀胱(神経因性過活動膀胱)が頻尿の原因の場合は、基礎疾患に対する治療が可能ならばまずそれを行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、手や腹圧による膀胱訓練、カテーテルによる自己導尿、さらに神経ブロックや手術などを行うことになります。

膀胱神経症(神経性頻尿、過敏性膀胱)が頻尿の原因の場合は、膀胱の過敏性を和らげ、余分な収縮を抑える抗コリン薬を服用したり、心因的な要素が強い時には抗不安薬や自律神経調整薬などを服用することもあります。

抗コリン薬の服用期間中には、排尿記録を基に目標を決めて、排尿間隔を開け、一回量を増やすような生活を心掛けます。服薬を中止することによる頻尿の再発を心配することはありません。精神面が大きく作用する膀胱神経症の場合、数週間の服用で頻尿の習慣が消え、服薬を中止しても大丈夫な人が多いものです。改善したら、予防法など考えず、排尿回数に無関心になることが最大の予防法といえるでしょう。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...