2022/08/03

🇱🇺嚢胞性二分脊椎

先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害

嚢胞性二分脊椎(のうほうせいにぶんせきつい)とは、先天的に脊椎骨(椎骨)が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害の一つ。顕在性二分脊椎、開放性二分脊椎とも呼ばれます。

日本国内での発症率は、1万人に5人から6人と見なされています。

母胎内で、脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる神経管が作られる妊娠の4~5週ごろに、何らかの理由で神経管の下部に閉鎖障害が発生した場合に、脊椎骨が形成不全を起こします。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。脊椎を構成している一つひとつの骨である脊椎骨は、椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓の2つからなっています。本来、後方部分の椎弓は発育の途中に左右から癒合しますが、完全に癒合せず左右に開いて分裂しているものが、二分脊椎に相当します。

神経組織である脊髄や脊髄膜が、分裂している椎弓からはみ出し、皮膚が腫瘤(しゅりゅう)、すなわちこぶのように突き出します。これを嚢胞性二分脊椎といいます。

逆に、椎弓が分裂している部位がへこんでいることもあります。これを潜在性二分脊椎といいます。

二分脊椎は、仙骨、腰椎に多く発生し、胸椎、頸椎に発生することはまれです。

二分脊椎の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因としては、胎生早期におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、喫煙、放射線被爆(ひばく)、遺伝要因としては、人種、葉酸を代謝する酵素の遺伝子多型が知られています。

出生した新生児に嚢胞性二分脊椎が発生している場合、二分脊椎の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。

多くは、脳脊髄液による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭症(すいとうしょう)を合併しているほか、脳の奇形の一種であるキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。

嚢胞性二分脊椎の治療には、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる生涯にわたる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

嚢胞性二分脊椎の検査と診断と治療

脳神経外科、小児外科の医師による診断では、嚢胞性二分脊椎の場合、妊娠4カ月以降の超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には腰背部の腫瘤により病変は容易に明らかになります。脊椎部と頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、嚢胞の中の脊髄神経の有無、水頭症の有無を確認します。

また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

脳神経外科、小児外科の医師による治療では、嚢胞性二分脊椎の場合、生後2、3日以内に背中に露出した形になっている脊髄や脊髄膜を感染から守るために、皮膚と脊髄神経を分離し、皮膚を縫合する閉鎖手術を行います。

仙骨、腰椎、胸椎、頸椎などの奇形が発生した部位により、症状には重度から軽度まで個人差はありますが、下肢障害に対しては車いす、補装具などによる装具療法、理学療法、整形外科的手術による対処を行い、排尿・排便障害に対しては導尿、浣腸(かんちょう)、摘便(洗腸)、下剤、機能訓練による対処を行います。重症例では呼吸障害、嚥下障害による栄養障害への対処、知的障害への療育を行います。

🇧🇪脳瘤

頭蓋骨の欠損部から頭蓋内容物の一部が飛び出した状態

脳瘤(のうりゅう)とは、頭蓋骨(とうがいこつ)と硬膜の欠損があり、そこから頭蓋内容物の一部が脱出した状態。潜在性二分頭蓋とも呼ばれます。

先天性の脳奇形の一つで、新生児1万人に1人程度発生しています。原因は、胎児における遺伝子異常や、妊婦におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏が考えられています。

母胎内で、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経系のもとになる神経管が妊娠の4~5週ごろに作られ、その神経管が閉鎖した後に、脳組織の周囲にあって、頭蓋骨の一部を作る間葉(かんよう)組織の形成不全によって、頭を形作る骨格である頭蓋骨と、脳を取り巻く髄膜の1つである硬膜に欠損が生じ、頭蓋内容物の一部が頭蓋外へ脱出します。

脱出した頭蓋内容物には、脳組織が含まれている髄膜脳瘤や、脳組織が含まれず髄膜や脳脊髄液のみの髄膜瘤、髄膜と脳脊髄液と脳室が含まれる脳嚢(のうのう)瘤などがあります。小さな脳瘤は、頭血腫という分娩(ぶんべん)の際に胎児の頭が強く圧迫されるために、頭蓋骨と髄膜との間に生じる血液の塊に類似しているものの、小さな脳瘤の基部に頭蓋骨の欠損が認められる点で異なります。

脳瘤の約9割は頭蓋円蓋部に発生し、残り約1割は頭蓋底部に発生します。通常、正中部に発生し、後頭部と鼻腔(びこう)を結ぶ線に沿うあらゆる部位から、頭蓋内容物の一部が脱出しますが、後頭部にできるケースがほとんどです。極めてまれに、前頭部または頭頂部に非対称的にみられることもあります。

頭蓋円蓋部や鼻腔前頭部に発生する脳瘤は外表上で認められやすく、鼻腔や副鼻腔内に発生する脳瘤は外表上では認められません。

まれに、後頭と頸椎(けいつい)の移行部に脳瘤が発生して、頸椎椎弓が欠損し、後頭部と背部が癒合して頸部が背側に過伸展する後頭孔脳脱出や、脳幹や小脳が脱出するキアリ奇形Ⅲ型を示すことがあります。

後頭部に発生する髄膜脳瘤では、小脳虫部欠損(ダンディー・ウォーカー症候群)や、ほかの脳形成異常を合併しやすく、脳組織の一部が頭蓋外へ脱出するため、約3割に頭蓋骨が先天的に小さく変形を伴う小頭症を合併します。脳形成異常、脳組織の大きな脱出、小頭症などは、発達や知能面での予後不良の誘因になります。

後頭孔脳脱出やキアリ奇形Ⅲ型の生命予後は、不良です。頭蓋底部に発生した脳瘤では、閉塞(へいそく)性の呼吸障害、脊髄液漏による反復性の髄膜炎などを示します。

脳瘤の位置、大きさよって、現れる症状はさまざまですが、重篤な奇形を合併していることが多く、過半数が自然流産するか、人工妊娠中絶を受けるかしており、仮に出生しても24時間以内に死亡します。

妊婦の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、胎児の脳瘤の診断がつくことがあり、脳瘤の位置、大きさによっては、出産後の手術による修復が可能なこともあります。

しかし、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。

出生前診断で発見された場合には、産道通過の際に胎児の脳瘤が破れるのを予防する目的で、帝王切開を行う場合もあります。

脳瘤の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による脳瘤の診断では、妊婦の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、胎児の脳瘤の診断がつくことがあります。

胎児が脳瘤と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工妊娠中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはまれな状況となっています。

脳神経外科、脳外科の医師による脳瘤の治療では、脳瘤が破れて細菌感染を来したり、脳出血やくも膜下出血を生じるのを防ぐために、脳瘤を手術で修復します。脳瘤を脳血管から切り離すか、脳瘤の中にコイルを詰めて大きくなるのを抑えます。

🇳🇱脳リンパ腫

脳のどこにでもできる悪性リンパ腫

脳リンパ腫(しゅ)とは、前頭葉、後頭葉、脳深部、脳幹など、脳のどこにでもできる悪性リンパ腫。正式名称は、中枢神経系原発悪性リンパ腫です。

全身に広がっているリンパ組織のうち、リンパ節ではなく、脊髄(せきずい)や眼球などに発生するリンパ腫を中枢神経系原発リンパ腫といい、その中でも脳に発生したものが脳リンパ腫に相当します。

脳腫瘍(しゅよう)の約3パーセントを占めるとされていますが、近年、発生率が増加傾向を示しています。中高年者に多くみられ、50歳以上が80パーセントを占めます。

リンパ系組織がない脳に悪性リンパ腫が発生する要因は、解明されていません。炎症などで脳内に浸潤してきたリンパ球が腫瘍化するという説や、ほかで発生したリンパ腫が免疫学的に保護されている脳内にだけ残ったという説などがあります。

悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と、それ以外の非ホジキンリンパ腫に大別されますが、脳リンパ腫のほとんどが非ホジキンリンパ腫の一種のB細胞由来のびまん性大型B細胞リンパ腫であり、悪性のBリンパ球が脳の中で勢いよく増えます。

この脳リンパ腫にかかる危険因子としては、膠原(こうげん)病、免疫不全疾患、臓器移植、加齢などによる免疫不全、ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルス感染などがあります。

主な症状は、脳腫瘍によって、頭蓋(とうがい)内の圧力が高まるために起こる頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)など。

脳腫瘍ができた部位によっても症状が異なり、前頭葉に腫瘍があると知能低下(認知症)や失語症、性格変化、尿失禁など、後頭葉に腫瘍があると視野障害など、脳幹に腫瘍があると運動まひ、眼球運動障害などが生じます。

数日から何週間単位で進行する亜急性を示すものが多く、一度症状が出たら悪化するのは早いと考えなければなりません。

脳リンパ腫の検査と診断と治療

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腫瘍を形成する白っぽい病変として描出され、造影剤を用いると多くの場合、はっきりわかります。

腫瘍を形成する病変は、前頭葉、側頭葉、小脳、脳深部に多く認められ、脳の中に2個以上のリンパ腫が同時にできる多発例もしばしば認められます。

脳にだけリンパ腫ができたのか、脳ではない体のどこかに発生したリンパ腫が脳に転移したのかを区別するのは、困難です。

検査が終わってリンパ腫が疑われた場合は、すぐに定位脳手術という方法で腫瘍の一部分を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による治療では、メトトレキセートという抗がん剤を投与した後に、全脳に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

脳腫瘍ができた部位によりますが、腫瘍の切除手術は行いません。脳リンパ腫の場合、周囲組織との境目が明確でないため完全切除は難しく、大きく切除すると脳機能に多大な影響を与えかねないためです。

残念ながら、いずれの治療法を選択しても再発率や死亡率は高いものです。

🇨🇭乗り物酔い(動揺病)

船など乗り物に乗っている最中に、気分が悪くなる症状

乗り物酔いとは、船、飛行機、バス、車、タクシー、電車など、いろいろな乗り物に乗っている最中に気分が悪くなる症状。船酔い、空酔い、バス酔いとも呼ばれ、近年では動揺病、加速度病とも呼ばれています。

遊園地のジェットコースターやコーヒーカップなどの乗り物でも、症状が出ることもあります。軽いめまいのほかに、顔面が蒼白(そうはく)になったり、首や額、手のひらに冷や汗をかいたり、吐き気を伴ったりします。吐き気を感じると同時に生つばが出てきて、ため息や生あくびが出てきます。次第に無気力になり、頭の重みや頭痛が出てくる場合もあります。

生つばが出た状態が続くと、突然、嘔吐(おうと)を起こします。さらに悪化した場合には、下痢を起こすこともあり、あまりにも嘔吐を繰り返すと脱水症状に陥り、点滴が必要になることもあります。

一般的には、乗り物から降りた場合、しばらくすると症状は回復し、後遺症も残りません。

ふだんは乗り物酔いをしない人でも、体調次第で起こることがありますし、めまいを起こしやすい人は、乗り物にも酔いやすい傾向があります。乗り物別の酔いやすさには個人差があり、例えば車には全く酔わない人でも船には酔いやすかったり、飛行機や電車には全く酔わないのに車には酔いやすいという人もいます。急ブレーキ、急発進を行う乱暴な運転、渋滞、上り斜面、つづら折りのカーブ、効きすぎる暖房、効きが悪い冷房などが長時間続いた場合には、とりわけ発生しやすくなります。

乗り物酔いが起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、乗り物に乗っている時の振動、加速、減速などによって、耳の奥にある内耳の三半規管と前庭という平衡器官が連続的に刺激されて起こると考えられています。

体の平衡、すなわちバランスは、静止時でも運動時でも、脳やほかの神経系、目でも調節されますが、耳がたいへん重要な役割を果たしています。耳では、三半規管と前庭が体の平衡を調節していて、三半規管は主に回転運動に関係し、前庭は上下、前後の運動に関係しています。三半規管と前庭が病的に侵されると、立つことも歩くこともできず、めまいが起こります。

三半規管と前庭が強く刺激された例が乗り物酔いで、この平衡器官は呼吸や循環器をつかさどる自律神経系とも連絡しているために、乗り物酔いでは気分が悪くなり、吐き気、嘔吐、冷や汗などの症状が出てくるのです。

なお、何日も繰り返し刺激されていると、乗り物酔いの症状は急激に消失していきます。例えば、日本からヨーロッパまでの長期間の航海に出た時、最初の数日間は激しい乗り物酔いの症状を示した人でも、しばらくたつと消えてしまいます。つまり、慣れていない乗り物に乗ったとしても、何度も同じ体験を繰り返すと次第に乗り物酔いの症状が軽減し、最終的にはその乗り物に乗っても症状が出なくなります。

乗り物酔いの治療法と予防法

乗り物酔いの治療の基本は、不安感を抱かないことです。酔うかもしれないという不安を抱かないようにして、楽しみながら乗るべきです。周りの人も、不用意に不安がらせないことです。

どうしても不安が強い時は、乗り物に乗る30分前ごろに酔い止めの薬を飲んでおきます。この内服薬は抗ヒスタミン剤が代表的で、眠気やだるさの副作用が伴うために、これに無水カフェインを含ませている薬もあります。内服液になっているものや、水なしで内服できるチュアブルタイプの薬もありますが、内容はやはり抗ヒスタミン剤が主体で、どの薬も症状が出る前に内服することが大切です。

欧米では、スコポラミンという副交感神経遮断(しゃだん)剤を皮膚に張るタイプもありますが、眠気が生じ、しかも記憶障害が起こることがあるために日本では許可されていません。

乗り物に酔わないためのポイントを紹介します。

きちんと睡眠をとっておく。空腹のまま乗り物に乗らない。脂肪分の多い食品を避けて食べすぎず、酒や乳製品、炭酸飲料を飲みすぎずに、適度な食事をとっておく。乗る前にトイレをすませておく。厚着をせず、風通しのよい楽な服装をする。きついネクタイやベルト、帽子、体を圧迫する下着は避ける。乗り物の中では、読書や携帯メール、携帯ゲーム機のプレイなど、眼球の動きを細かくするような行為はしない。一点を凝視せず、遠くの景色をぼんやりと見る。窓を開けて、風に当たる。船なら甲板に出て空気を吸う。気分をリラックスさせ、深くゆっくりと呼吸する。周りの人と話す、好きな音楽を聞く、歌を歌う、合唱するなどで気分をそらす。後ろ向きの座席を避け、進行方向が見える前の方に座る。気分が悪くなったら、早めにシートを倒すか横になる。

以上のポイントを一つずつ実践するとともに、何より気を強く持つことが大事です。酔うかもしれないと思っていると、本当に酔ってしまいます。予防に最善を尽くしたから大丈夫と自信を持って、乗り物に乗るようにします。

🇱🇮猫鳴き症候群

5番染色体の短腕の欠損により引き起こされ、新生児が猫の鳴き声に似た泣き声を発する重度の先天性障害

猫(ねこ)鳴き症候群とは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p)の一部分が欠損していることが原因で引き起こされ、罹患(りかん)した新生児が出生時に猫の鳴き声のような泣き声を発するのを特徴とする重度の先天性障害。

5p(ごぴー)モノソミー、5pー(まいなす)症候群、5p欠失症候群、レジューン症候群とも呼ばれます。

常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が5pモノソミーに相当し、猫鳴き症候群を引き起こします。

5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。

5pモノソミーから引き起こされる猫鳴き症候群の主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。

まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。

猫鳴き症候群は、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。

猫鳴き症候群に罹患した新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。

新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。

身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。

🇸🇰寝違え

就寝中の首の不良姿勢によって起こる急性の痛み

寝違えとは、前夜まで何ともなかったのに、朝起きると首が痛くて回らない状態。ただし寝違えという医学用語はなく、頸部(けいぶ)周囲の靭帯(じんたい)や筋肉の急性炎症による頸痛の総称といえます。

就寝中の頸部の不良姿勢によって起こります。通常は頸部に痛みが生じたり違和感を覚えた場合には、目が覚めたり無意識のうちに首の姿勢を変えますが、疲労や睡眠不足あるいは泥酔状態で就寝すると、これらの反応がなくなり、不自然な姿勢で眠り続けることがあります。または、窮屈なソファーで寝たり、椅子に座ったまま不自然な姿勢で寝てしまった時に、頸部周囲の靭帯や筋肉の一部分への負担が大きくなって炎症を起こします。

また、強い精神的ストレスを受けたり、内臓の不調があったりと、必ずしも頸部周辺に原因があるわけではないケースもあります。寝違えを繰り返しやすい人の中には、慢性的な肩凝りの悪化が関係しているケースもあります。結果的に、頭を支え、動かす際に働く筋肉が過緊張したり、関節に負荷がかかり、周辺の組織が痛むといった状態になるのです。

寝違えの症状は、起床時にある一定の姿勢をとった時、首から肩、背中の上部辺りに痛みが生じます。軽度の場合は、顔を向けられる範囲がいつもより多少狭く、動かすに連れて痛みが増していきます。重症な場合は、顔を真上へ向けて天井を見る、真下へ向けて床を見る、左右に傾ける、左右を振り向くといった動きすべてが制限され、少しでも動かすと激痛が走るようになります。

痛みとともに、手足などの末端器官のしびれ症状などを併発している場合は、神経系の障害が原因となっていることもあります。例えば、頸椎椎間板(けいついついかんばん)変性症といって頸椎のクッション役を果たしている椎間板が薄くなったり、変形性頸椎症といって椎体に骨のとげができたり、椎体の後ろを走っている後縦(こうじゅう)靱帯が骨化しているような、いわゆる老化現象による神経系の障害が、背景の原因となっていることも少なくありません。

軽度の寝違えの場合、その症状はほとんど一時的なもので、数日もすれば局所の炎症が治まって自然に治ります。寝違えの症状があまりにも長引くような場合は、神経系の障害や、骨のほかの疾患が疑われることもあるので、念のために整形外科の医師の診察を受けるとよいでしょう。

寝違えの検査と診断と治療

医師の診察では、腱(けん)反射などのチェックが正常であった場合に、通常の寝違えと判断します。逆に、腱反射などが鈍かったり、反応しない場合は、神経系の障害が原因と考えます。寝違えの症状と神経系の障害の症状は酷似しているので、正しい見極め、判断が重要です。

通常の寝違えの治療は、消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)薬の内服、パップ剤の張り付け、電気刺激やレーザー照射による鎮痛処置、局所注射、神経ブロックなどを行います。また、首用のカラーをつけて頸椎を固定することも効果があります。

注意点としては、炎症が起きて痛みが発生している初期段階で、マッサージなどを行わないことです。マッサージを行うと血行が促進され、炎症を拡大させて症状の悪化を招くケースが大半だからです。マッサージなどの処置は、炎症が治まった回復期に入ってから行うようにします。

なお、手足などのしびれ症状がある場合は、各部位よりも頸椎損傷を確認します。頸椎の神経は人体のさまざまな部分に関与しているため、頸部のダメージであっても体の各部に症状が現れるのが、特徴となっています。頸椎損傷の原因は、突発的な外力による負担だけが原因とは限らず、慢性的な姿勢などによる神経の圧迫などが原因である場合もあります。そのため、日常生活の見直しから治療を始めます。

🇨🇿熱傷(やけど)

熱湯など高熱の物質に接した際に生じる皮膚の損傷

熱傷とは、熱湯、炎、蒸気、湯たんぽなど、高熱の物質に接した時に生じる皮膚の損傷。やけどとも呼びます。

数ある外傷のうち、最も危険な結果を招くことがあり、厳重な予防が必要です。最も多いのは家庭内で起こる熱傷ですが、重症例は火事や工場災害で多くみられます。

症状としては、熱傷の重症度を、その広さと深さにより判定します。ことに、皮膚が焼けた深さは、第1〜3度で表されます。

第1度(表皮熱傷)は、いわゆる日焼けの状態で、放っておいても治ります。

第2度(真皮熱傷)では、水疱(すいほう)ができ、深いものでは潰瘍(かいよう)を形成し、手術が必要となります。

第3度の熱傷では、焼けた深さが皮下組織に達して、皮膚は全く死んでいますので、自然に治ることはありません。

そのほか、熱傷は部位により治療が難しかったり、気管に火や煙を吸い込んで起こる気道熱傷のように、死亡率が非常に高くなるものもあります。年齢も救命に大きく関係し、年齢が低いほど重症です。

熱傷の検査と診断と治療

熱傷では、受傷した場合すぐ水で冷やすことが治療の第一歩です。大きな熱傷では、衣服を脱がす前に水をかけ、冷やしてから救急隊に連絡し、専門医に連れていってもらうことです。

重症の熱傷では、全身治療による救命がまず問題となります。

局所的な治療としては、軟こうを塗布するのが主となりますが、成分が不明の軟こうなどは感染を助長することがあるので避けます。軽い熱傷のように見える場合でも、感染を起こすと深くなり瘢痕(はんこん)を残すので、形成外科医の治療を受けます。

一般に、熱傷で死んだ皮膚を切り取って、自分自身の健康な皮膚を植える植皮の手術は、瘢痕の状態に応じて行います。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...