2022/08/12

🇷🇺巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)

首や頭に向かう動脈に炎症が起こる疾患

巨細胞性動脈炎とは、頸(けい)動脈とその分枝の動脈、特に側頭動脈に炎症が起こる血管炎。疾患で障害された血管に、巨細胞という特徴ある細胞が認められ、側頭(そくとう)動脈炎とも呼ばれます。

高齢者にみられ、50歳以上で発症し60〜70歳代にピークがあります。日本では比較的まれな疾患で、欧米の白人に多いことが知られています。

側頭部の皮下を走っている側頭動脈などに炎症が起こる原因は、まだわかっていません。遺伝病ではありません。特定疾患(難病)の1つに指定されていますが、発症者への医療費給付は行われていません。

片側または両側の側頭部に、脈拍に合わせたズキズキする頭痛を自覚するようになり、こめかみの血管がはれて痛みます。場合によっては、食事をする時に、あごの関節や舌、口の回りに痛みが起ることがあります。それらの部位に行く動脈の流れが悪くなったためで、夜間に悪化しやすいことが知られています。典型的な場合には、側頭部に発赤を認め、ヒモのように細長い形態に肥厚した側頭動脈が触れます。

また、発症者の半数に、全身の筋肉痛や朝のこわばりなど、リウマチ性多発筋痛症に似た症状がみられます。巨細胞性動脈炎とリウマチ性多発筋痛症の両者は、極めて近似した疾患と考えられています。

そのほか、発熱や倦怠(けんたい)感、食欲不振などの全身症状もあります。目の血管に炎症が及ぶと、視力障害を起こし、時に失明することさえあります。大動脈にも障害が起こることがあり、間欠性跛行(はこう)、解離性大動脈瘤(りゅう)などをみることがあります。

巨細胞性動脈炎の検査と診断と治療

強い頭痛を感じたら、早めに神経内科あるいは脳外科の専門医の診察を受け、診断を確実にして、早期から適切な治療を受けるようにします。

血液検査では、血沈が著しく高進していることが多くみられます。血管撮影では、頸動脈系に狭窄(きょうさく)、閉鎖などを認めます。診断を確実にするには、側頭動脈の組織を取って調べる生検により、巨細胞を含む肉芽腫(にくげしゅ)を認めることが必要になります。

治療には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が用いられます。このステロイド療法により、視力障害までの進行が予防できます。失明の恐れがある場合には、大量の薬剤による治療が必要となります。その後、薬剤を次第に減らしていきます。

ステロイド療法で十分に血管の炎症が抑えられない場合や、薬剤の漸減に伴って血管の炎症が再燃する場合には、免疫抑制剤を併用することがあります。一般に予後は良好ですが、治療を開始した時期、病状の広がりによって、その経過はさまざまです。

🇦🇲カーパルトンネル症候群

手首にあるカーパルトンネル内で神経が圧迫されて、手や指がしびれ、痛みが起こる疾患

カーパルトンネル症候群とは、手首の手のひら側にある骨と靭帯(じんたい)に囲まれたカーパルトンネル(手根管〔しゅこんかん〕)の中で、神経が慢性的な圧迫を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす疾患。手根管症候群とも呼ばれます。

カーパルトンネルは、手関節部にある手根骨と横手根靱帯で囲まれた伸び縮みのできない構造になっており、その中を1本の正中神経と、9本の指を動かす筋肉の腱(けん)が滑膜性の腱鞘(けんしょう)を伴って通っています。

初期には人差し指、中指がしびれ、痛みが出ますが、最終的には親指から薬指にかけての親指側にしびれ、痛みが出ます。

このしびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと指がしびれ、痛みます。ひどい時は夜間の睡眠中に、痛みやしびれで目が覚めます。この際に手を振ったり、指を曲げ伸ばしすると、楽になります。手のこわばり感もあります。

進行すると親指の付け根の母指球筋という筋肉がやせてきて、親指と人差し指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。細かい作業が困難になり、縫い物がしづらくなったり、細かい物がつまめなくなります。

原因が見いだせない特発性というものが多く、原因不明とされています。妊娠期や出産期、更年期の女性に多く生じるのが特徴で、骨折などのけが、仕事やスポーツでの手の使いすぎ、腎不全のために人工透析をしている人などにも生じます。腫瘍(しゅよう)や腫瘤(しゅりゅう)などの出来物でも、生じることがあります。

妊産婦と中年の女性にはっきりした原因もなく発症する特発性のカーパルトンネル症候群は、女性のホルモンの乱れによる滑膜性の腱鞘のむくみが誘因と考えられ、カーパルトンネルの内圧が上がり、圧迫に弱い正中神経が偏平化して症状を示すと見なされています。

けがによるむくみや、手の使いすぎによる腱鞘炎などでも、同様に正中神経が圧迫されて症状を示すと見なされています。

最近では、パソコンの使用者が多いアメリカや日本で、カーパルトンネル症候群が増えていることが注目されています。パソコンは、手首を不自然な位置に置いたまま動かします。そして、長い時間キーを打ち、マウスを操作することは、手首に大きな負担をかけます。また、キーを打つ際に、無意識に力を入れている人もいます。こうして特定の筋肉や腱だけを繰り返し使うことで、手首を傷めてしまうのです。

パソコンだけでなく、レジスター係、食肉加工業者、電気組み立て工、建築施工業者、板金工、自動車修理工、調理員、包装・箱詰め作業者、音楽家、針仕事・編み物作業者、農業従事者、歯科衛生士なども、仕事での手の使いすぎによってカーパルトンネル症候群を発症する可能性がある職業です。

指にしびれ、痛みがあり、朝起きた時にひどかったり、夜間睡眠中に目が覚めるようなら、整形外科を受診することが勧められます。

カーパルトンネル症候群の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、手首の手のひら側を打腱器などでたたくとしびれ、痛みが指先に響きます。これをチネル(ティネル)サイン陽性といいます。手首を手のひら側に最大に曲げて保持し、1分間以内にしびれ、痛みが悪化するかどうかをみる誘発テストを行い、症状が悪化する場合はファレンテスト陽性といいます。母指球筋の筋力低下や筋委縮も診ます。

補助検査として、電気を用いた筋電図検査を行い、カーパルトンネル(手根管)を挟んだ正中神経の伝導速度を測定します。正中神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が、カーパルトンネル症候群では長くなります。知覚テスターという機器で感覚を調べると、カーパルトンネル症候群では感覚が鈍くなっています。 腫瘤が疑われるものでは、エコーやMRIなどの検査を行います。

首の病気による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害、手指のほかの腱鞘炎との鑑別も行います。

整形外科の医師による治療では、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服薬、塗布薬、仕事やスポーツの軽減、手首を安静に保つための装具を使用した局所の安静、腱鞘炎を治めるためのカーパルトンネル腱鞘内へのステロイド剤注射など、保存的療法が行われます。

保存的療法が効かない難治性のものや、母指球筋のやせたもの、腫瘤のあるものなどは、手術が必要になります。以前は手のひらから前腕にかけての大きな皮膚切開を用いた手術が行われていましたが、現在はその必要性は低く、靭帯を切ってカーパルトンネルを開放し、神経の圧迫を取り除きます。カーパルトンネルの上を4~5cm切って行う場合と、カーパルトンネルの入り口と出口付近でそれぞれ1~2cm切って内視鏡を入れて行う場合とがあります。

とりわけ母指球筋のやせたものは、手術を含めた早急な治療が必要となります。母指球筋のやせた状態が長く続くと、カーパルトンネルを開放する手術だけでは回復せず、腱移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。

🇦🇲外陰炎

いろいろな原因により、女性性器の外陰部に発生する炎症

外陰炎とは、いろいろな原因によって女性性器の外陰部に発生する炎症。

外陰とは、性器の外側の部分である恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称です。この外陰部に、細菌やウイルス、かびなどの病原体が感染したり、薬物などの化学物質や腟からの下り物などが刺激になって、急性、慢性の炎症を引き起こします。

外陰単独に発生することもありますが、多くの場合は膣炎を合併しており、その下り物の刺激に体の抵抗力の低下が加わって発症しています。糖尿病やアレルギーのある人は、特になりやすい傾向があります。また、高齢者や子供のように外陰部の皮膚や粘膜が弱い人でも、発症しやすくなります。

初期の症状としては、かゆみですが、炎症が進むと赤くはれて痛みます。ただれたりすると、少量の出血をみます。炎症が慢性化すると、皮膚や粘膜が白っぽくなり、頑固なかゆみが続きます。

外陰炎の検査と診断と治療

外陰部のかゆみが現れて2〜3日しても治らない時は、婦人科あるいは産婦人科を受診します。頑固なかゆみが続く時は、外陰部の粘膜が白く硬くなる硬化性苔癬(たいせん)や悪性病変も考えられるので、必ず受診するようにします。

医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰や腟分泌物中の病原体を検出します。糖尿病があると発症しやすいため、しばしば再発するような時は、糖尿病の有無も調べます。

治療では、原因に応じて、細菌やウイルス、かびに効く抗生物質の入った軟こうを用います。時には、かゆみを止める抗ヒスタミン剤や、ステロイドホルモン含有の軟こうを用います。高齢者のように外陰や腟粘膜の弱い場合は、ホルモン剤を投与して強化を図ります。

なお、外陰炎がある時は、局所を化粧せっけんなどで洗うと症状が悪化するので、お湯で洗い流すだけにするか、無刺激性のせっけんを使用するようにします。

🇦🇿外陰がん

女性性器の外陰部にできる、比較的まれながん

外陰がんとは、女性性器の外陰部にできる皮膚がんの一種。あまり多いものではなく、頻度は女性性器がんの3~4パーセントです。

外陰とは性器の外側の部分である大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称で、外陰がんのほとんどは大陰唇に発生します。

日本での年間発生数は10万人当たり0.5人以下で、高齢者に多く、50歳代から増え始め、60歳代、70歳代が最も多くなります。近年は、平均寿命の延びとともにやや増えています。

原因はいまだ不明な点が多いのですが、妊娠や出産経験のない人に多く、若いころに梅毒や尖圭(せんけい)コンジロームなど性病にかかった人がなりやすく、外陰白板症からがんに進むことがあります。また、肥満、高血圧、糖尿病のある人に多いようです。

症状としては、外陰部、特に大陰唇や陰核、小陰唇などに硬いしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)ができ、頑固なかゆみが出てきます。腫瘤の周囲に、白斑(はくはん)を伴うこともあります。

次第に腫瘤が大きくなると、表面にびらんや潰瘍(かいよう)ができ、引っかいて出血することがあります。痛みや、排尿時の灼熱(しゃくねつ)感なども出てきます。 さらに、太ももの付け根の鼠径(そけい)リンパ節がはれてきます。

外陰がんの検査と診断と治療

外陰部の腫瘤や、頑固に続くかゆみなどがある場合には、積極的に婦人科を受診します。

医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰部の皮膚は乾燥していて細胞診には向かないため、初期のものでは、疑わしい部位の組織の一部を採取して調べる生検を行います。潰瘍を形成するようになったものでは、細胞診でも診断できます。

治療は主に手術療法で、腫瘤を広範囲に切除し、周囲のリンパ節や鼠径部のリンパ節も切除します。がんが外陰部を超えたり、他の臓器に広がっている場合は、子宮、腟と一緒に直腸、膀胱(ぼうこう)も切除することもあります。これらの手術の後、太ももなどの皮膚を移植する外陰形成術も行われます。

進行がんでは、手術療法に放射線療法と抗がん剤による化学療法を併用して、治療に当たる場合もあります。

🇦🇿外陰上皮内腫瘍

ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器の外陰部に丘疹ができる疾患

外陰上皮内腫瘍(しゅよう)とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型と18型が感染して、性器の外陰部に丘疹(きゅうしん)ができる疾患。外陰上皮内腫瘍は婦人科での呼び名で、皮膚科ではボーエン様丘疹と呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。

感染後3週間から6カ月程度で、男性では陰茎と陰嚢(いんのう)、女性では大陰唇、小陰唇、陰核、腟前庭(ちつぜんてい)、処女膜など性器の外陰部や、肛門(こうもん)周囲などに、2ミリから1センチくらいの黒褐色の丘疹、すなわちいぼが多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。丘疹は、外陰部の扁平(へんぺい)上皮細胞が異型化して増殖したものです。

症状としては、外陰部のはれ、かやみ、痛みを生じます。

同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、外陰上皮内腫瘍と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。

また、外陰上皮内腫瘍の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。

しかし、比較的若い人に生じた外陰上皮内腫瘍が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ヒト乳頭腫ウイルスは自然消滅します。

10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセント子宮頸(けい)がんや、外陰がん、肛門がんなどを発症するリスクがあります。

外陰上皮内腫瘍の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。

外陰上皮内腫瘍の検査と診断と治療

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。判断が難しい場合は、丘疹の一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、丘疹が小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。

一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がん、外陰がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。

なお、外陰上皮内腫瘍を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。

🇹🇲外因性眼内炎

けがや手術により目にできた傷口から直接、細菌や真菌が侵入して起こる目の感染症

外因性眼内炎とは、けがや手術などにより目にできた傷口から直接、細菌や真菌(カビなど)、原生動物が侵入して起こる目の感染症。健常な人や目の手術を受けたことがない人に発症することは、ほとんどありません。

一方、体のほかの部分に感染していた細菌や真菌、原生動物が血流に乗って、目に侵入して起こる目の感染症は、内因性眼内炎です。

外因性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目の手術による外因性眼内炎のほとんどは、術後2日から3日ほどで発症します。原因となる微生物によっては、術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

症状が出たら、早めに眼科を受診します。細菌によるものは数時間から数日の単位で、真菌によるものは数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

外因性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる微生物が入った可能性が強いとして、外因性眼内炎と判断します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因微生物を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤または抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

眼内炎の原因であると判明した微生物に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤や抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤や抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇹🇲外因性細菌性眼内炎

けがや手術により目にできた傷口から直接、細菌が侵入して起こる目の感染症

外因性細菌性眼内炎とは、細菌が手術の切開部や眼球のけがから直接、目に侵入し、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

目の手術による外因性細菌性眼内炎のほとんどは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性球菌が原因となって、手術後2日から3日ほどで発症します。プロピオニバクテリウム・アクネスというグラム陽性桿菌(かんきん)や、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌が原因となる場合は、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

眼球のけがによる外因性細菌性眼内炎は、グラム陽性球菌のほか、土壌中にも存在するグラム陽性桿菌、緑膿(りょくのう)菌などのグラム陰性桿菌が原因となって、発症します。

外因性細菌性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

外因性細菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる細菌が入った可能性が強いとして、外因性細菌性眼内炎と判断します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べ、瞳孔(どうこう)を開いた散瞳下の精密眼底検査を行います。

続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る外因性真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

後に、感染の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...