2022/08/12

🛏概日リズム睡眠障害

夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計が固定されている睡眠障害

概日(がいじつ)リズム睡眠障害とは、夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計がセットされている睡眠障害。睡眠相後退症候群とも呼ばれています。

毎日の生活習慣の中で、この時間までに眠りたいと望む時間には眠ることができず、そのため、朝は起きなければいけない時間に目覚めることができません。しかし、休日や起きる時間がふだんより遅くてもよい日には、必要な睡眠時間が経過した後に自然と、すっきりと目覚めることができます。

つまり、体内時計(サーカディアンリズム)が他の人より後ろへずれた状態で固定されて、狂ったまま24時間のリズムを刻んでいるのです。

体内時計を正常な状態に戻すことが難しくなってしまう病理的な原因は、はっきりしていません。体の中にいくつも存在している体内時計を同調させる機能が正常に働いていないことが、誘因の一つと推測されています。

パソコンやテレビなど体内時計のリズムを狂わせてしまう強い光を夜遅い時間まで浴びていたり、知らないうちに毎日かなりの量のカフェインを摂取していたり、太陽の光を浴びることのないい生活が長いなど、体内時計の調節機能を阻害する要素が多い生活習慣を送っていることが、誘因になっているとも推測されています。

正常な人の場合、夏休みなどの長期休暇の間に少しずつ体内時計が遅れてしまっても、数日間、早寝早起きをすることで、苦痛なく体内時計を修正することができます。しかし、概日リズム睡眠障害と見なされる人は、体内時計が遅れた状態が2週間~1カ月以上も続き、修正しようとしても修正できません。

また、起きなければいけない時間に無理に早起きしても、体内時計は後ろへずれたままなので、頭がボーっとしたり、集中力が続きません。次第に朝起きることができなくなり、学校や会社に遅刻したり、欠席、欠勤するといった状態に陥ってしまうこともあります。

体内時計のリズムが後ろへずれて固定された状態になっていると、朝起きるのは苦痛だし、日中眠気を感じるしと睡眠不足状態になりがちですが、概日リズム睡眠障害は夜間眠れない不眠症ではありませんので、睡眠導入剤や睡眠薬など眠気を誘う薬では改善することができません。

さらに、日中の眠気を追い払うために、コーヒーや栄養ドリンクなどカフェインを多く含んでいるものを飲んでいると、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌が乱れてしまう結果、体内時計が正常に戻りにくくなります。

概日リズム睡眠障害の自己治療と医師による治療

自分でできる対策としては、生活習慣の改善による時間療法が有効です。夜は早く眠るための工夫をし、朝起きた時には太陽の光をしっかりと浴びる習慣をつけます。例えば、眠くなるための工夫として、食事は目標とする就寝時間の3時間前までにすませる、入浴は目標時間の1時間~30分前までにすませる、就寝30分前から部屋の明かりを落としてリラックスするなどがあります。目標とする起床時間には、カーテンを開けて太陽の光を部屋に取り込むように工夫します。

精神科や神経科、心療内科の医師によって行われる高照度光療法も、概日リズム睡眠障害の治療として有効です。毎日決まった朝の時間帯に太陽の光と同じ効果のある光を照射することで、メラトニンタイマーをリセットさせ、体内時計を早送りして調整する方法です。その際には、眠りのパターンやリズムを日誌などに書き留めておくことで眠りの状態を把握し、きちんと決められた期間続けることが必要です。

眠気を催すメラトニンの分泌量や働きが低下している場合には、メラトニンやギャバ(GABA)、ビタミン剤などといった薬を併用することもあります。

これらの治療でいったん睡眠時間帯が正常化しても、不規則な生活をすると再び入眠時間が遅れてしまうことが多いので、睡眠時間帯が安定するまで休日に夜更かししないように生活習慣を見直すことも大切となります。

🌋外耳道炎

外耳道に細菌が感染し、炎症が起こる疾患

外耳道(がいじどう)炎とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、細菌が感染して炎症が起こる疾患。

この外耳道炎は、外耳道の外側3分の1に位置する軟骨部外耳道に起こる限局性外耳道炎と、外耳道の内側の3分の2に位置する骨部外耳道に起こるびまん性(広汎性)外耳道炎とに分かれます。限局性外耳道炎が悪化し、膿瘍(のうよう)ができた場合は、耳せつと呼ばれます。

外耳道炎の症状は、限局性の場合、耳がツンとしたり、かゆかったり、熱いような感じがします。耳鳴りを伴うこともあります。この時に耳に触るとチクッとした痛みを感じるのが特徴で、これが耳を触らなくても痛む中耳炎と異なる点です。

口を開けたり、食事をした時にも、痛むことがあります。炎症がひどいと軽い難聴を伴うこともありますが、一般的には聴力に影響するようなことはありません。

症状が進んで膿瘍ができると、触らなくても痛むようになり、痛みも強くなってきます。時には痛くて夜眠れないということもありますが、炎症がピークを過ぎると膿瘍が破れて、膿(うみ)が出てしまい、痛みは自然に治まります。

びまん性の場合も、かゆかったり、熱いような感じがするのが一般的な自覚症状です。慢性化すると、かゆみがひどくなり、時に耳が詰まる感じがする耳閉感が出てきます。病変が鼓膜方向に進展すると、鼓膜の炎症、肥厚を合併することがあります。

子供の場合の症状としては、熱が出たり、不機嫌に泣き続けることがあります。耳を引っ張って痛がるのであれば外耳道炎、何もしなくても痛がるのであれば中耳炎と判断できます。

外耳道炎の原因は、耳かきや不潔な指先で外耳道をいじって傷を付けたため、そこから細菌、主にぶどう球菌が入り、その細菌に感染して起こるのが一般的です。中耳炎などで耳垂れ(耳漏)があると、その細菌が外耳道に侵入し、感染して起こることがあります。

また、洗髪時や水泳時などに水が耳に入ったままになって、細菌感染を起こすこともあります。白髪染めや化粧品なども、要注意です。さらに、免疫が低下した糖尿病の人にも起こりやすく、また治りにくいとされます。

外耳道炎を発症しても、炎症が軽度で元の外耳道が健康であれば、多くの場合は放置しても自然に治ります。1〜2日たっても症状が軽快しない場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

外耳道炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳介の後ろ下や前方の下部がはれていて、触ると痛く、耳垂れに血や膿が混じっていてもねばねばした粘液が混じっていないことなどから、判断します。

また、X線(レントゲン)検査で骨の部分に異常がなく、聴力検査で異常がないことも、判断の目安となります。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず耳垢を取り除きます。鼓膜内視鏡で耳の中を見ながら、耳垢鉗子(かんし)や耳専用の器具で耳垢をつまんだり、細い吸引管で耳垢を吸い取ります。耳垢が硬くて取り除きにくい場合は、薬で耳垢を軟らかくしてから洗浄、吸引する方法を行います。

耳垢を取り除いた後は、外耳道の消毒を行って清潔にした上で、抗生剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を含んだ軟こうの塗布、抗生剤の内服を行います。

耳の痛みがある場合には、鎮痛剤を服用して痛みを抑えます。耳のかゆみがある場合には、かゆみ止めを服用してかゆみを抑えます。ほとんどの症例は、容易に治ります。

軽快した後は、再発防止のためにも耳かきや綿棒の使用を制限します。健康な状態であれば、耳垢は自然に排出される仕組みになっているので、耳掃除を頻繁にやる必要はなく1~2週間に1度くらいで十分です。

🗻外耳道外骨腫

外耳道の深部の骨部外耳道の骨が増殖して、隆起する疾患

外耳道外骨腫(がいじどうがいこつしゅ)とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道に長期間冷水刺激が加わることにより、骨部外耳道の骨が増殖して隆起が生じた疾患。サーファーズイヤーとも呼ばれます。

外耳道でも、耳の穴の入り口は軟骨部外耳道で、深部の鼓膜に近い部分が骨部外耳道に相当します。

外耳道外骨腫は古くから潜水夫や、頻繁に水泳を行う人に多いことが知られていましたが、特にサーファーに好発することから1977年にサーファーズイヤーと命名されました。

日本でのサーフィンの起源は、第2次大戦後日本に駐留した米軍兵士が神奈川県や千葉県で行ったのが始まりといわれ、国内でのサーフィンの歴史は60年前後と考えられます。1990年代に起こった世界的なロングボードサーフィンのリバイバルブーム以降、日本でもサーフィン愛好者は増加しています。

外耳道外骨腫は、水上スポーツ愛好家、水中スポーツ愛好家、職業ダイバーのほか、サウナ愛好家にも認められることがあります。サウナ愛好家の中には、サウナで温まった後に、冷水に飛び込むことを習慣とするケースがあり、そのような場合にも外耳道外骨腫が形成されることがあります。

競技会に参加するような熱心なサーファーを対象とした調査では、日本人のプロサーファーの81パーセント、アマチュアサーファーの54パーセント、両者の平均で59・8パーセントに外耳道外骨腫の形成が認められました。また、サーフィン経験が同程度の場合、男性のほうが女性よりも高度の病変が形成されることが多いことがわかりました。

原因は、外耳道に長期間にわたって加わる冷水刺激と考えられます。サウナ愛好家にも認められることから、外耳道に加わる寒暖差が外耳道外骨腫の形成に関与している可能性も示唆されます。サーフィン経験年数や頻度が多いほど、また海水温の低い地域のサーファーほど高度な病変が形成されやすくなります。耳に強い冷たい風を受ける影響もあると考えられます。

外耳道に冷水の侵入が繰り返されたり、強い冷たい風を受ける刺激で、基本的には両側の耳の骨部外耳道の骨が炎症を起こして増殖し隆起するために、外耳道が狭くなっていきます。

形成される外耳道外骨腫は、層状の緻密(ちみつ)な骨で、骨細胞に富み、骨髄腔が乏しいことが特徴とされます。1つ、あるいは2つの外耳道外骨腫が形成されることも、3つ以上形成されることもあります。

発症初期には自覚症状に乏しく、高度の外耳道の狭窄(きょうさく)に至っても、いくらか透き間が開いていれば難聴はほとんど起こりません。ただし、外耳道炎を起こしたり、外耳道外骨腫と鼓膜の間に耳垢(みみあか)がたまることにより、外耳道が閉塞(へいそく)した場合は、急に伝音(でんおん)難聴を来すことがあります。

そのほか、外耳道から水が抜けにくい、耳痛、耳鳴り、頭痛、かゆみなどの症状も起こりますが、必ずしも外耳道外骨腫の程度とは相関しません。

サーフィンやマリンスポーツなどの後、耳の穴から水がいつまでも抜けない、右耳だけが聞こえにくい気がするなど、耳に違和感を覚えたら、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

外耳道外骨腫の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、処置用顕微鏡で耳の中を観察し、聴力検査を行います。側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道骨と同濃度の結節性、あるいはびまん性の外耳道外骨腫の隆起を認めることで確定できます。手術の実施を予定している場合は、側頭骨CT検査で、外耳道に近接している顔面神経の走行と、骨の削除範囲を入念に確認します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の狭窄が軽度で無症状であれば手術は行わず、点耳薬などの保存的治療で対応します。サーフィンやマリンスポーツをやめたとしても、一度形成された外耳道外骨腫は小さくならないと考えられています。

外耳道炎を繰り返したり、難聴などの症状が強い場合は、基本的に全身麻酔の下、耳内切開ないし耳後切開による手術を実施し、ノミやドリル、あるいは超音波装置といった手術具を使用して隆起した骨を削り、外耳道を広げます。

外耳道の皮膚の温存に努めて、骨部外耳道の骨面露出を最低限に抑えれば、通常、別の部位の皮膚を移植する遊離植皮などは必要ありません。外耳道外骨腫の程度が左右の耳で大きく異なる場合には、治療期間にも左右差が生じることがあります。手術後、完治するまでには時間がかかります。

予防としては、外耳道への冷たい海水の侵入刺激や、風による蒸散熱の冷却により骨増殖が増進するので、冬期や海水温の低い海域でのサーフィン中止、型を取った耳栓の装用が有効です。

市販されている耳栓も、シリコン製の耳栓や粘土形状の耳栓、大きなサイズや小さなサイズ、外部からの音を聞き取れる耳栓とさまざまなものがありますので、自分の耳に一番適した耳栓を探すとよいでしょう。

⛰外耳道湿疹

耳の穴の入り口から鼓膜までの外耳道の皮膚にできる湿疹の総称

外耳道湿疹(がいじどうしっしん)とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚にできる湿疹の総称。

湿疹は、かゆみを伴う皮膚の炎症の総称で、浮腫(ふしゅ、むくみ)、紅斑(こうはん)、丘疹、水疱(すいほう)、膿疱(のうほう)など湿潤を主な症状とし、痂皮(かひ、かさぶた)、鱗屑(りんせつ)などもみられます。

湿疹は体のどの部位の皮膚にもできますが、耳の穴の入り口から鼓膜まで2センチから2・5センチほどの長さがあり、軽くS状に曲がっている外耳道のうちでも、外側3分の1に位置する軟骨部外耳道は皮膚の直下に軟骨があるために、外的刺激に対して弱く、浮腫や紅斑を生じやすい特徴があります。

また、外耳道には柔らかい毛があり、汗腺の一種の耳垢腺(じこうせん)と皮脂腺という二種類の腺から常に分泌物が出ていて、細菌が入り込むと付着しやすい環境になっているため、顔面や頭部の湿疹が波及して、外耳道に湿疹が起こることもあります。中耳炎などの耳垂れ(耳漏)が原因で、その細菌が侵入して、外耳道に湿疹が起こることもあります。

洗髪時や水泳時などに水が耳に入ったままになって、細菌感染を起こし、外耳道に湿疹が起こることもあります。白髪染めや整髪剤などの化学物質をつけた刺激などが原因で、外耳道に湿疹が起こることもあります。

本来、耳には自浄作用があり、耳垢腺と皮脂腺の分泌物と、は表面がはげた皮膚が混じった耳垢(みみあか)を自然と体外へ排出する働きがありますが、耳かきや綿棒、不潔な指先で必要以上に外耳道をいじることで、外側3分の1に位置する軟骨部外耳道や、内側3分の2に位置する骨部外耳道の皮膚が傷付き、入り込んだ細菌によって、湿疹が起こることもあります。

細菌感染や外傷以外にも、衣服や装身具に付属する金属や、補聴器で使うシリコンなどが接触することによるアレルギー、耳垢腺や皮脂腺の分泌異常、アトピー性皮膚炎などが原因で、外耳道に湿疹が起こることもあります。原因が特定できないケースも少なくありません。

外耳道湿疹にはさまざまな症状がありますが、耳のかゆみ、耳の詰まる感じのほか、透明な耳垂れが出ることもあります。細菌が感染すると、耳の痛みが生じ、はれてくることもあります。外傷では、炎症を伴うため、耳を押したり、引っ張ったりすると、耳の痛みを生じ、食事の際の咀嚼(そしゃく)による痛みも感じます。

耳は体の中でも傷付きやすい部位の1つですが、少々の炎症であれば自然に治ることもあります。しかし、悪化してしまう可能性があるため、外耳道の中にかゆみや違和感が生じる場合には、耳鼻咽喉(いんこう)科を早めに受診することが勧められます。

外耳道湿疹の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、視診、問診、触診を行い、外耳道湿疹の原因を見極めます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の消毒を行って清潔にした上で、抗生剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を含んだ軟こうの塗布、抗生剤の内服を行います。

耳の痛みがある場合には、鎮痛剤を内服して痛みを抑えます。耳のかゆみがある場合には、かゆみ止めを服用してかゆみを抑えます。

先行する上気道感染があり、中耳炎の合併が疑われる場合には、中耳炎の治療を併せて行います。金属などに接触することによるアレルギーが疑われる場合には、原因物質を突き止め、それとの接触を回避します。

軽快した後は、再発防止のためにも耳かきや綿棒の使用を制限します。健康な状態であれば、耳垢は自然に排出される仕組みになっているので、耳掃除を頻繁にやる必要はなく1~2週間に1度くらいで十分です。

また、耳に極力水を入れないよう心掛けることも大切です。

🏔外耳道真菌症

外耳道に、アスペルギルスなどの真菌が寄生し、かゆみや詰まった感じがする疾患

外耳道真菌(がいじどうしんきん)症とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、アスペルギルス、カンジダなどの真菌が寄生する疾患。

真菌はカビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、葉緑素を持たない真核生物であり、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。この真菌には、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。

外耳道真菌症は外耳道炎の一種で、多くの外耳道炎が耳かきなどで傷付けた外耳道の皮膚表面に細菌が寄生、繁殖して炎症が発生するのに対し、外耳道真菌症は傷付いた外耳道の皮膚表面に真菌が入り込んで寄生、繁殖するものです。

耳掃除のやりすぎ、強く耳掃除をする習慣、汚れた耳かきの使用、爪(つめ)による耳の穴のいじりすぎなどで皮膚に傷が付いた時点で、外耳道にある自浄作用がなくなると、外耳道湿疹(しっしん)、または細菌による外耳道炎を発症し、ここに真菌が入り込んで外耳道真菌症に進展するケースが少なくありません。

また、わずかな耳垂れ(耳漏)の出る慢性中耳炎、抗生剤やステロイド剤の長期投与、外耳道への水の侵入、中耳炎手術後に、外耳道真菌症が起こることもあります。

発症すると、白色、黒色、黄色、青緑色の膜状、または耳垢(みみあか)のような物質が外耳道に大量に、繰り返し付着し、時に、その表面が白色または黄色の粉を吹いたようになることがあります。これらの物質は、真菌が作る菌膜です。耳垢を除去すると、発赤、びらん、湿潤が現れます。

自覚症状としては、耳の中のかゆみが頑固に続き、耳の穴が詰まったように感じる耳閉塞(へいそく)感、耳内異物感がみられます。耳の痛み、耳垂れ、白・黒・黄色などの菌糸を含むフワフワ状の耳垢、外耳道の肥厚、外耳道の充血、難聴がみられることもあります。また、慢性中耳炎に併発する場合は、多量の耳垂れが出てくることもあります。

外耳道真菌症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、耳鏡検査、検鏡を行うほか、真菌培養検査を実施し、寄生しているアスペルギルスなどの真菌の種類を確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、刺激の少ない消毒薬で十分に真菌を清掃した後、抗真菌剤を患部に塗ります。同時に、ブロー液という薬で外耳道を一定時間満たす、耳浴と呼ばれる治療を行うこともあります。

真菌が原因のため、治療には1カ月から数カ月の通院が必要になります。症状が治まったと自己判断して、短期間で治療を中断した場合には再発につながりますから、こまめに通院することが必要です。

日常生活では、できるだけ患部を乾燥させるよう外耳道を湿らせないように努め、耳掃除などで再度外耳道に傷が付くと再発することがあるので、必要以上の耳掃除はやめます。耳かきにも真菌が付着している恐れがあり、使い回すと家族にも迷惑をかける恐れがあるので、思い当たる耳かきは捨てるようにします。

👂外耳道真珠腫

外耳道に耳垢をためた真珠腫という袋ができ、耳の器官や骨を破壊する疾患

外耳道真珠腫(がいじどうしんじゅしゅ)とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道に、上皮の脱落物である耳垢(みみあか)を異常にためた真珠腫という袋ができ、耳の器官や骨を破壊する疾患。

40歳以上の人の片側の耳に起こることが多い疾患ですが、両側の耳に起こることも、比較的若い人に起こることもあります。

外傷、耳垢からの刺激、炎症からの刺激などによって、外耳道の上皮の一部が深部の組織である間質のほうへ袋のような形で陥没し入り口が狭くなると、陥没した上皮が常に出す耳垢は出てゆくことができずに袋の中にたまり続け、耳垢をためた袋はどんどん大きくなっていきます。

このようにして、内部に耳垢をためた袋が外耳道にできたものを真珠腫と呼んでいます。感染を伴わない真珠腫は真珠のような白いきれいな色をしており、真珠腫が大きくなる様子も真珠が大きくなるのに似ているため、外耳道真珠腫という疾患名が付けられました。

真珠腫の増殖が止まらないと、外耳道の表面に露出を始めて管腔を狭くしてゆき、外耳道の下と後ろの壁にびらん(ただれ)を起こします。また、真珠腫は骨を溶かす性質が強いため、肥大化した真珠腫が間質のさらに奥の骨を破壊しながら増殖を続ける場合があります。

症状としては、慢性の鈍い耳の痛み、耳垂れ(耳漏)が起こります。鼓膜は正常なことが多く、真珠腫による外耳道の栓塞(せんそく)や難聴が起こることはありません。

しかし、骨の破壊が進行する方向によって中耳へ進展すると、難聴、めまい、開口障害、顔面神経まひなどを起こすこともあります。

外耳道真珠腫を放置しても、すぐに命にはかかわるようなことはありませんが、難聴やめまい、進行すると顔面神経まひの原因となることもあるので、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して、真珠腫の除去を行ってもらうことが勧められます。

外耳道真珠腫の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、処置用顕微鏡による観察で外耳道深部の拡大と白い真珠腫を認めれば、比較的容易に判断できます。外耳道深部の拡大が明らかで、処置用顕微鏡で死角が生じる部位の観察には、中耳内視鏡が有用です。真珠腫の進展範囲、骨破壊の有無は、CT(コンピュータ断層撮影)検査で評価します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、処置用顕微鏡やファイバースコープを用いて、増殖する真珠腫を定期的に除去し、抗生剤の点耳や内服を行います。

患部が広がっている場合や、骨が壊死(えし)を起こし骨破壊が進行している場合、手術によって真珠腫の摘出と病的骨組織の除去を行います。皮膚欠損部は上皮化を促進するために、側頭骨筋膜や人工皮膚を用いてカバーします。

外耳道真珠腫では自浄作用が落ちているため、真珠腫が増殖しやすいので数カ月ごとの定期的な除去が必要です。放置すると外耳道の骨の破壊が進行するため、必ず指示された受診頻度を守るようにしてもらいます。

🦻外耳道閉鎖症

耳の穴、つまり外耳道が骨や結合組織で閉じてしまう疾患

外耳道(がいじどう)閉鎖症とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道が閉じてしまう疾患。内耳には異常がありません。

外耳道が骨で閉ざされる場合と、結合組織で閉ざされる場合とがあり、頻度は骨で閉ざされる場合のほうが高く、骨性閉鎖とも呼ばれます。また、両側の耳の外耳道が閉ざされる場合と、片側の耳の外耳道だけが閉ざされる場合とがあります。

さらに、先天性の外耳道閉鎖症と、後天性に起こる外耳道閉鎖症とがあります。

先天性のものは、胎生6カ月ごろまでに完成する第1鰓溝(さいこう)という外耳道の元になる組織が管腔化する際の障害によって、外耳道の閉鎖が起こるといわれています。耳介奇形、小耳(しょうじ)症などの奇形を合併することが多く、耳の近くの顔面や中耳にもさまざまな形態異常を伴うことがあります。

そして、ほとんどは外耳道が骨で閉ざされていて耳の穴がないため、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳へ音が伝わらず、その側の耳に中等度以上の伝音(でんおん)難聴があります。

生後に起こる後天性のものは、外傷、やけど、外部からの慢性的な刺激、外耳や中耳の慢性の炎症、中耳手術後の感染などのために、肉芽(にくげ)という新しい結合組織になる増殖物が盛り上がり、外耳道をふさぐために起こります。

外耳道の骨の増殖が原因で起こることもあり、例えば、長期間にわたってサーフィンをする人は冷たい波を頻繁に耳に受けることにより、外耳道の骨が増殖して外耳道が徐々に狭くなり、ひどくなると外耳道閉塞症に至ることがあります。古くから潜水夫や、水泳愛好者に多いことが知られていましたが、特に最近はサーファーに好発することからサーファーズイヤーとも呼ばれるまでになりました。

後天性の外耳道閉鎖症の症状としては、外耳道が結合組織や骨で閉ざされるため、音が中耳へ伝わらず、伝音難聴になり、聴力レベルが60デシベル程度となります。

外耳道閉鎖症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科、ないし形成外科の医師による診断では、視診のほか、単純X線検査、断層X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道の状態、中耳の耳小骨の状態や形態異常の有無、鼻咽腔の炎症の有無などを調べます。また、聴力検査または聴性脳幹反応(ABR)の検査を行います。

耳鼻咽喉科、ないし形成外科の医師による治療では、両側の耳の外耳道が閉ざされている場合と、片側の耳の外耳道だけが閉ざされている場合とでは、方針が大きく変わります。

閉鎖が片側の耳の外耳道だけで、もう一方の耳の聴力が正常であれば、当面は手術の必要がありません。先天性であっても、言語の発達に全く問題は起こりませんし、閉鎖しているほうの耳に補聴器を使う必要もありません。高校生ぐらいまで待って手術を行ってもいいとされますが、早く治したいのであれば、急性中耳炎が起こりにくくなる8~9歳くらいで手術することも可能です。

先天性で、しかも両側の耳の外耳道が閉鎖している場合は、言語の発達する時期に十分な聴力を確保するために、できるだけ早くから骨導補聴器を使用し始めるとともに、鼓室外耳道形成術という手術をできるだけ早い時期に実施します。

手術は、ふつう全身麻酔をして行います。手術の方法には、骨を削って外耳道を作成する外耳道形成術と、音を伝えるための鼓膜や耳小骨を作り聴力を回復させる鼓室形成術があります。4〜5歳くらいで、片側ずつ外耳道形成術を行い、鼓室形成術も行える場合は聴力も改善できます。

先天性の場合、顔面神経が耳の側頭骨の中で異常な走行の仕方をしていることがあり、この時は難しい手術になるので、熟練した耳鼻咽喉科医に手術をしてもらうことが望まれます。

耳介の形態異常である小耳症を伴っている時は、耳鼻咽喉科と形成外科の医師が緊密な連絡を取り、手術の時期や回数、方法などについて慎重に検討し、8~9歳になってから、主に形成外科の医師が耳介形成術を行ってから外耳道形成術を行います。

これらの手術を行っても、長い時をへると再び外耳道が狭くなったり、聴力が悪化したりすることもあり、再手術が必要になることもあります。

後天性の外耳道閉鎖症の場合は、傷などが治ってからふさがった部分を広げる手術をします。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...